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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】結束テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/21 20180101AFI20240219BHJP
   B65D 63/10 20060101ALI20240219BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C09J7/21
B65D63/10
H01B7/00 301
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021546905
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2020034848
(87)【国際公開番号】W WO2021054311
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2019170770
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】楯 洋亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃純
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳明
(72)【発明者】
【氏名】吉村 大輔
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060512(JP,A)
【文献】特開2011-088654(JP,A)
【文献】特開2006-210228(JP,A)
【文献】特開平11-335637(JP,A)
【文献】国際公開第98/058032(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/052595(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/069577(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/136201(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/21
B65D 63/10
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなる基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面上に設けられた、粘着剤を含む粘着層と、
を含む結束テープであって、
前記不織布が、熱可塑性エラストマーを少なくとも一部に含む繊維から形成されたものであり、
前記不織布のテープ長手方向の引張破断強度(A1)が20N/10mm以上であることを特徴とする結束テープ。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマーが、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1に記載の結束テープ。
【請求項3】
前記不織布を形成する繊維が、前記熱可塑性エラストマーからなる請求項1又は2に記載の結束テープ。
【請求項4】
前記不織布を形成する繊維が、さらにポリオレフィンを含む請求項1又は2に記載の結束テープ。
【請求項5】
前記不織布のテープ長手方向の引張破断強度(A1)が40N/10mm未満である請求項1から4のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項6】
前記不織布のテープ短手方向の引張破断強度(A2)が20N/10mm未満である請求項1から5のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項7】
前記不織布のテープ長手方向の引張破断強度(A1)と、前記不織布のテープ短手方向の引張破断強度(A2)との比(A2/A1)が、0.8未満である請求項1から6のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項8】
前記不織布のテープ長手方向の引張破断伸び(B1)が100~295%である請求項1から7のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項9】
前記不織布のテープ短手方向の引張破断伸び(B2)が100~400%である請求項1から8のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項10】
前記不織布のテープ長手方向の引張破断伸び(B1)と、前記不織布のテープ短手方向の引張破断伸び(B2)との比(B2/B1)が、0.1~2である請求項1から9のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項11】
前記不織布のテープ長手方向の引張弾性率(C1)が1MPa未満である請求項1から10のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項12】
前記不織布を構成する繊維の繊維径が1~40μmである請求項1から11のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項13】
前記不織布の目付が50~200g/mである請求項1から12のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項14】
前記基材層の厚みが200~500μmである請求項1から13のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項15】
前記結束テープの厚みが220~600μmである請求項1から14のいずれか一項に記載の結束テープ。
【請求項16】
下記吸音性の評価方法により測定される減衰値が5.5dB以上である請求項1から15のいずれか一項に記載の結束テープ。
(吸音性の評価方法)
ドイツ自動車メーカー各社の統合規格であるLV312-1第5.5.5節の「防音材」と同様の方法にて試験を行って、減衰値を算出した。具体的には、板厚0.3mm、寸法350mm×190mmのアルミ板を直径290mmの半円状に湾曲させた。次に、直径8mmの鋼棒をアルミ板頂点の上方20mmの位置から0.16Nの荷重で落下させた。その際、衝撃位置から50mm上方に設置したマイクで衝撃時のノイズ(単位:dB)を測定した。鋼棒単体で測定したノイズに対し、鋼棒の衝撃位置に粘着テープサンプル(寸法25mm×50mm)を1層貼り付けて測定したときのノイズを測定し、その差を減衰値とした。
【請求項17】
ワイヤーハーネス用の結束テープである請求項1から16のいずれか一項に記載の結束テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の配線には、電線類を結束テープ等で所定の形状に束ねたワイヤーハーネスと呼ばれるものが用いられている。このようなワイヤーハーネスは、通常、エンジンルーム内や、ボディーと内装材との間などの狭い隠蔽個所に設置されており、エンジンの振動や走行時の揺れによって振動し、周辺の壁などに接触して打音や擦過音を発する課題がある。一方、電気自動車の普及に伴いワイヤーハーネスの径は増大しているが、設計自由度の観点から結束テープを巻いた状態でも屈曲させられることが求められている。
【0003】
ワイヤーハーネス用の結束テープには、通常、ポリ塩化ビニルテープを基材としたものが多く用いられているが、耐熱性、吸音性、屈曲可能な柔軟性が求められる用途においては不適切である。ポリ塩化ビニルの代替物として例えば、特許文献1には、機械的又は湿式配置で強化されたウェブに、結合剤を添加した不織布からなる基材層を備える接着テープを用いることで、ワイヤーハーネスが周辺の壁等に接触した際に、前記不織布がクッション材となって、打音や擦過音を低減することができることが記載されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、芳香族ビニル系エラストマー、スチレン系共重合体と、スチレン系樹脂とを含有するフィルム基材の片面に粘着剤層を形成した結束用粘着テープが、耐熱性や柔軟性を有することが記載されている。さらに、例えば特許文献3には、熱可塑性樹脂からなり、100%引張モジュラスが50MPa以下であるシートが周方向に巻かれたワイヤーハーネス用の保護チューブが、屈曲性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2004-524376号公報
【文献】特開2008-143976号公報
【文献】特開2018-152983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、結束テープは結束作業時にテープの長手方向に引っ張りながら対象物を結束するため、結束作業時にテープが長手方向において破断しないことが求められている。さらに、結束作業完了時にはテープを所望長さにて切断することが必要であるため、テープの短手方向(幅方向)に破断しやすい特性も求められている。
【0007】
本発明は、吸音性能が高く、かつ、結束作業時におけるテープの破断が抑制された結束テープを提供することを目的とする。特に、ワイヤーハーネスの結束テープとして有用な耐熱性、吸音性、テープ長手方向の耐破断性及びテープ短手方向の易破断性を兼ね備える結束テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を含む。
【0009】
[1]不織布からなる基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面上に設けられた、粘着剤を含む粘着層と、
を含む結束テープであって、
前記不織布が、熱可塑性エラストマーを少なくとも一部に含む繊維から形成されたものであり、
前記不織布のテープ長手方向の引張破断強度(A1)が20N/10mm以上であることを特徴とする結束テープ。
【0010】
[2]前記熱可塑性エラストマーが、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも一種である[1]に記載の結束テープ。
【0011】
[3]前記不織布を形成する繊維が、前記熱可塑性エラストマーからなる[1]又は[2]に記載の結束テープ。
【0012】
[4]前記不織布を形成する繊維が、さらにポリオレフィンを含む[1]又は[2]に記載の結束テープ。
【0013】
[5]前記不織布のテープ長手方向の引張破断強度(A1)が40N/10mm未満である[1]から[4]のいずれかに記載の結束テープ。
【0014】
[6]前記不織布のテープ短手方向の引張破断強度(A2)が20N/10mm未満である[1]から[5]のいずれかに記載の結束テープ。
【0015】
[7]前記不織布のテープ長手方向の引張破断強度(A1)と、前記不織布のテープ短手方向の引張破断強度(A2)との比(A2/A1)が、0.8未満である[1]から[6]のいずれかに記載の結束テープ。
【0016】
[8]前記不織布のテープ長手方向の引張破断伸び(B1)が100~295%である[1]から[7]のいずれかに記載の結束テープ。
【0017】
[9]前記不織布のテープ短手方向の引張破断伸び(B2)が100~400%である[1]から[8]のいずれかに記載の結束テープ。
【0018】
[10]前記不織布のテープ長手方向の引張破断伸び(B1)と、前記不織布のテープ短手方向の引張破断伸び(B2)との比(B2/B1)が、0.1~2である[1]から[9]のいずれかに記載の結束テープ。
【0019】
[11]前記不織布のテープ長手方向の引張弾性率(C1)が1MPa未満である[1]から[10]のいずれかに記載の結束テープ。
【0020】
[12]前記不織布を構成する繊維の繊維径が1~40μmである[1]から[11]のいずれかに記載の結束テープ。
【0021】
[13]前記不織布の目付が50~200g/mである[1]から[12]のいずれかに記載の結束テープ。
【0022】
[14]前記基材層の厚みが200~500μmである[1]から[13]のいずれかに記載の結束テープ。
【0023】
[15]前記結束テープの厚みが220~600μmである[1]から[14]のいずれかに記載の結束テープ。
【0024】
[16]下記吸音性の評価方法により測定される減衰値が5.5dB以上である[1]から[15]のいずれかに記載の結束テープ。
(吸音性の評価方法)
ドイツ自動車メーカー各社の統合規格であるLV312-1第5.5.5節の「防音材」と同様の方法にて試験を行って、減衰値を算出した。具体的には、板厚0.3mm、寸法350mm×190mmのアルミ板を直径290mmの半円状に湾曲させた。次に、直径8mmの鋼棒をアルミ板頂点の上方20mmの位置から0.16Nの荷重で落下させた。その際、衝撃位置から50mm上方に設置したマイクで衝撃時のノイズ(単位:dB)を測定した。鋼棒単体で測定したノイズに対し、鋼棒の衝撃位置に粘着テープサンプル(寸法25mm×50mm)を1層貼り付けて測定したときのノイズを測定し、その差を減衰値とした。
【0025】
[17]ワイヤーハーネス用の結束テープである[1]から[16]のいずれかに記載の結束テープ。
【0026】
[18]不織布からなる基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面上に設けられた、粘着剤を含む粘着層と、
を含む結束テープであって、
前記不織布のテープ長手方向の引張破断強度(A1)が20N/10mm以上、40N/10mm未満であり、
下記吸音性の評価方法により測定される減衰値が5.5dB以上であることを特徴とする結束テープ。
(吸音性の評価方法)
ドイツ自動車メーカー各社の統合規格であるLV312-1第5.5.5節の「防音材」と同様の方法にて試験を行って、減衰値を算出した。具体的には、板厚0.3mm、寸法350mm×190mmのアルミ板を直径290mmの半円状に湾曲させた。次に、直径8mmの鋼棒をアルミ板頂点の上方20mmの位置から0.16Nの荷重で落下させた。その際、衝撃位置から50mm上方に設置したマイクで衝撃時のノイズ(単位:dB)を測定した。鋼棒単体で測定したノイズに対し、鋼棒の衝撃位置に粘着テープサンプル(寸法25mm×50mm)を1層貼り付けて測定したときのノイズを測定し、その差を減衰値とした。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、吸音性能が高く、かつ、結束作業時におけるテープの破断が抑制された結束テープを提供することができる。特に、ワイヤーハーネスの結束テープとして有用な耐熱性、吸音性、テープ長手方向の耐破断性及びテープ短手方向の易破断性を兼ね備える結束テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[結束テープ]
本発明に係る結束テープは、基材層と、粘着層とを少なくとも含み、中間層等の他の層を含んでもよい。前記基材層は不織布からなる。前記粘着層は、前記基材層の少なくとも一方の面上に設けられており、粘着剤を含む。ここで、前記不織布は、熱可塑性エラストマーを少なくとも一部に含む繊維から形成される。また、前記不織布のテープ長手方向の引張破断強度(A1)は、20N/10mm以上である。
【0029】
本発明者等は鋭意検討した結果、基材層としての不織布が熱可塑性エラストマーを少なくとも一部に含む繊維から形成されたものであり、かつ、不織布のテープ長手方向の引張破断強度(A1)が20N/10mm以上であることにより、高い吸音性能を有し、かつ、結束作業時におけるテープの破断を抑制できる結束テープを提供できることを見出した。本発明において、基材層である不織布を熱可塑性エラストマーを少なくとも一部に含む繊維から形成されたものとすることで、前記不織布の衝撃緩和性が増し、例えばワイヤーハーネスが周辺の壁等に接触した際に高い吸音性能を発現することができる。また、不織布のテープ長手方向の引張破断強度(A1)が20N/10mm以上であることにより、結束作業時にテープ長手方向にテープを引っ張った場合にもテープが破断せず、結束作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0030】
本発明の好ましい態様として、不織布のテープ短手方向の引張破断強度(A2)が20N/10mm未満であることにより、結束作業完了時にテープの短手方向(幅方向)においてテープを所望長さにて容易に切断することができる。また、本発明の他の好ましい態様として、前記不織布のテープ長手方向の引張破断強度(A1)と、前記不織布のテープ短手方向の引張破断強度(A2)との比(A2/A1)が、0.8未満であることにより、テープ長手方向の耐破断性と、テープ短手方向の易破断性とをより好適に両立させることができる。本発明に係る結束テープは、特に高い吸音性能が求められ、かつ、結束作業時におけるテープの破断抑制が要求されるワイヤーハーネス用の結束テープとして有用である。以下、本発明の詳細について説明する。
【0031】
(基材層)
本発明に係る結束テープにおける基材層は、不織布からなる。前記不織布は、熱可塑性エラストマーを少なくとも一部に含む繊維から形成される。すなわち、前記不織布は、熱可塑性エラストマー繊維から形成されたものでもよく、熱可塑性エラストマーの部位及び熱可塑性エラストマー以外の部位を含む繊維から形成されたものでもよい。
【0032】
熱可塑性エラストマーは、加熱により軟化して流動性を示し、冷却するとゴム状に戻る性質を有し、常温ではゴム弾性を示すエラストマーである。熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されないが、例えばオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、エステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)等が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0033】
オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)としては、例えばエチレンプロピレンジエンゴム分散ポリプロピレン(PP+EPDM)等が挙げられる。ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)としては、例えばポリエステル系TPU、ポリエーテル系TPU等が挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)としては、例えばスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)等が挙げられる。エステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えばポリエーテルエステル-ポリエステルブロック共重合体(TPC-EE)、ポリエーテルエステルブロック共重合体(TPC-ET)、ポリエステルブロック共重合体(TPC-ES)等が挙げられる。ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)としては、例えばポリアミド-ポリエーテルエステル-ポリエステルブロック共重合体(TPA-EE)、ポリアミド-ポリエステルブロック共重合体(TPA-ES)、ポリアミド-ポリエーテルエステルブロック共重合体(TPA-ET)等が挙げられる。
【0034】
不織布を形成する繊維は、前記熱可塑性エラストマーからなってもよく、前記熱可塑性エラストマー以外に他の成分を含むものでもよい。他の成分としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。これらの他の成分は、一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。特に、不織布を形成する繊維は、熱可塑性エラストマーに加えて、さらにポリオレフィンを含むことが、強度向上の観点から好ましい。
【0035】
不織布を形成する繊維が熱可塑性エラストマー及び他の成分を含む場合、繊維の質量(100質量%)に対する熱可塑性エラストマーの質量の割合は、吸音性向上の観点から、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。該割合の範囲の上限は特に限定されないが、例えば90質量%以下であることができ、80質量%以下であることもできる。
【0036】
不織布は、熱可塑性エラストマーを少なくとも一部に含む繊維に加えて、熱可塑性エラストマーを含まない他の繊維をさらに含んでもよい。該他の繊維としては、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維等が挙げられる。これらの他の繊維は、一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。例えば不織布は、熱可塑性エラストマーを少なくとも一部に含む繊維と、前記他の繊維としてのポリオレフィン繊維との混繊であってもよい。
【0037】
不織布が、前記熱可塑性エラストマーを少なくとも一部に含む繊維と、前記他の繊維とを含む場合、繊維全体の質量(100質量%)に対する熱可塑性エラストマーを少なくとも一部に含む繊維の質量の割合は、吸音性向上の観点から、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。また、不織布は、熱可塑性エラストマーを少なくとも一部に含む繊維のみから形成されていてもよい。
【0038】
不織布を構成する繊維の繊維径は、強度と柔軟性の観点から、1~40μmが好ましく、5~30μmがより好ましい。前記繊維径が1μm以上であることにより、不織布のテープ長手方向の引張破断強度(A1)として20N/10mm以上が得られやすい。また、前記繊維径が40μm以下であることにより、結束時の柔軟性が得られやすい。なお、前記繊維径は、顕微鏡で500倍の拡大写真を取り、任意の10本の直径を測定し、その平均値である。
【0039】
本発明において、不織布のテープ長手方向の引張破断強度(A1)は20N/10mm以上である。前記引張破断強度(A1)が20N/10mm以上であることにより、結束作業時においてテープ長手方向における破断が抑制される。ここで、「テープ長手方向」とは、テープの長尺方向、すなわちテープを引き出す方向であり、「不織布のテープ長手方向」とは、不織布のMD方向(縦方向)である。前記引張破断強度(A1)は22N/10mm以上が好ましく、24N/10mm以上がより好ましく、25N/10mm以上がさらに好ましい。前記引張破断強度(A1)の範囲の上限は、テープを所望長さにて切断する際にテープ短手方向(幅方向)に切断しやすい観点から、40N/10mm未満が好ましく、37N/10mm以下がより好ましく、35N/10mm以下がさらに好ましい。
【0040】
不織布のテープ短手方向の引張破断強度(A2)は、20N/10mm未満であることが好ましい。前記引張破断強度(A2)が20N/10mm未満であることにより、結束作業完了時にテープ短手方向においてテープを所望長さにて容易に切断することができる。ここで、「テープ短手方向」とは、テープの幅方向、すなわちテープを引き出す方向に対して垂直な方向であり、「不織布のテープ短手方向」とは、不織布のTD方向(横方向)である。前記引張破断強度(A2)は18N/10mm以下がより好ましく、16N/10mm以下がさらに好ましい。前記引張破断強度(A2)の範囲の下限は、結束物屈曲時のテープ割れを防ぐ観点から、1N/10mm以上が好ましく、1.5N/10mm以上がより好ましく、2N/10mm以上がさらに好ましい。なお、本発明において引張破断強度(A1)及び(A2)は、JIS Z0237(2009)(ISO29864:2007)の8に従い温度23℃、相対湿度50%の環境下にて、試験片の幅を10mm、標線間隔を100mmとし、300mm/分の速度で引張った際に、試験片が破断したときの強度である。
【0041】
前記引張破断強度(A1)と、前記引張破断強度(A2)との比(A2/A1)は、0.8未満であることが好ましい。前記比(A2/A1)が0.8未満であることにより、テープ長手方向の耐破断性と、テープ短手方向の易破断性とをより好適に両立させることができる。テープ短手方向の易破断性をより高めるために、前記比(A2/A1)は0.7以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましい。前記比(A2/A1)の範囲の下限は、特に限定されないが、例えば0.01以上であることができる。
【0042】
不織布のテープ長手方向の引張破断伸び(B1)は、100~295%であることが好ましい。前記引張破断伸び(B1)が100%以上であることにより、結束物の屈曲性が良い。また、前記引張破断伸び(B1)が295%以下であることにより、テープ短手方向の易破断性を保つことができる。前記引張破断伸び(B1)は、150~290%であることがより好ましく、180~280%であることがさらに好ましい。
【0043】
不織布のテープ短手方向の引張破断伸び(B2)は、100~400%であることが好ましい。前記引張破断伸び(B2)が100%以上であることにより、結束物の屈曲性が良い。また、前記引張破断伸び(B2)が400%以下であることにより、テープ短手方向の易破断性を保つことができる。前記引張破断伸び(B2)は、120~370%であることがより好ましく、140~350%であることがさらに好ましい。なお、本発明において引張破断伸び(B1)及び(B2)は、JIS Z0237(2009)(ISO29864:2007)の8に従い温度23℃、相対湿度50%の環境下にて、試験片の幅を10mm、標線間隔を100mmとし、300mm/分の速度で引張った際に、試験片が破断したときの伸びである。
【0044】
前記引張破断伸び(B1)と、前記引張破断伸び(B2)との比(B2/B1)は、0.1~2であることが好ましい。前記比(B2/B1)は、0.3~1.5であることがより好ましく、0.5~1.3であることがさらに好ましい。
【0045】
不織布のテープ長手方向の引張弾性率(C1)は、1MPa未満であることが好ましい。前記引張弾性率(C1)が1MPa未満であることにより、高い吸音性が得られる。前記引張弾性率(C1)は0.8MPa以下がより好ましく、0.6MPa以下がさらに好ましい。前記引張弾性率(C1)の範囲の下限は、テープ長手方向の耐破断性の観点から、0.005MPa以上が好ましく、0.007MPa以上がより好ましく、0.01MPa以上がさらに好ましい。なお、本発明において引張弾性率(C1)は、前記引張破断伸び(B1)及び(B2)の測定から、歪5~10%間の引張応力と歪の比で、線形回帰により算出される値である。
【0046】
不織布の目付は、50~200g/mであることが好ましい。前記目付が50g/m以上であることにより、テープ長手方向の耐破断性が得られやすい。また、前記目付が200g/m以下であることにより、結束時の柔軟性が得られやすい。前記目付は、70~180g/mであることがより好ましく、90~160g/mであることがさらに好ましい。
【0047】
基材層の厚み、すなわち不織布の厚みは、200~500μmであることが好ましい。前記厚みが200μm以上であることにより、高い吸音性が得られる。また、前記厚みが500μm以下であることにより、クッション性を保ちつつ結束後の柔軟性が得られやすくなる。前記厚みは、300~470μmであることがより好ましく、350~450μmであることがさらに好ましい。なお、本発明において各層およびテープ全体の厚みは、JIS B 7503に規定するダイヤルゲージを用いて3箇所測定し、その平均値を算出することで得られる。
【0048】
不織布としては、特に限定されないが、例えばスパンボンド法で作製された不織布、スパンレース法で作製された不織布、メルトブロー法で作製された不織布等を用いることができる。これらの中でも、機械的強度の観点から、スパンボンド法で作製された不織布を用いることが好ましい。不織布は単層であってもよく、複数の層からなる積層不織布であってもよい。積層不織布の場合、複数の方法で作製された不織布を積層させたものであってもよい。
【0049】
(粘着層)
本発明に係る粘着層は、前記基材層の少なくとも一方の面上に設けられており、粘着剤を含む。粘着剤としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、従来結束テープに用いられている粘着剤を適宜用いることができる。粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも粘着剤としては、粘着強度の制御や耐熱性の観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0050】
前記アクリル系粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマーを主成分とする粘着剤が挙げられる。前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有不飽和単量体との重合体等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸を意味する。
【0051】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルアクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、sec-ブチルアクリレート、sec-ブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルアクリレート、n-オクチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、n-ノニルアクリレート、n-ノニルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソノニルメタクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
カルボキシル基含有不飽和単量体としては、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なものであれば、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
前記アクリル系ポリマーは、上記に例示したような(メタ)アクリル酸アルキルエステルやカルボキシル基含有不飽和単量体以外のその他のモノマーを含む共重合体とすることもできる。
【0054】
その他のモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル等の含窒素(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニリテン、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
粘着剤として、アクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤を用いる場合、アクリル系粘着剤に含まれる低分子量成分が基材層の不織布を透過する現象(裏抜け)を防止する観点から、前記アクリル系ポリマーが架橋されていることが好ましい。アクリル系ポリマーの架橋方法としては、例えば、活性エネルギー線(紫外線、電子線等)を照射する方法、任意の架橋剤を添加する方法等が挙げられる。
【0056】
任意の架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、多官能イソシアネート系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アミノ樹脂系架橋剤、過酸化物系架橋剤等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、前記スチレン系ブロック共重合体の水素添加物(SIPS、SEBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリイソブチレン(PIB)、及びブチルゴム(IIR)等からなる群より選択される少なくとも1つのゴム成分に、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂等からなる群より選択される少なくとも1つの粘着付与剤を適宜配合した粘着剤等が挙げられる。
【0058】
シリコーン系粘着剤としては、例えば、シリコーンゴムに、シリコーンレジンやシリコーンオイル等を適宜配合した粘着剤等が挙げられる。
【0059】
ウレタン系粘着剤としては、例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール等のポリオールと、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン等が挙げられる。
【0060】
粘着層は、前記粘着剤に加えて任意の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、軟化剤、粘着付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、滑剤、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体や脂環式系共重合体等の石油系樹脂、クマロン-インデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂またはこれらの水添物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
粘着層の厚みとしては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、5~100μmが好ましく、10~70μmがより好ましい。また、粘着層は単層であってもよく、複数であってもよい。粘着層が複数の層から構成される場合、粘着層の総厚みが前記範囲内となるように各層の厚みが調整されることが好ましい。また、粘着層は基材層の一方の面上に設けられていてもよく、両方の面上に設けられていてもよい。
【0063】
(中間層)
本発明に係る結束テープは、前記基材層と前記粘着層との間に中間層を有していてもよい。中間層としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、各種フィルム、クロス等を用いることができる。
【0064】
(結束テープの厚み)
本発明に係る結束テープの厚みは、特に限定されないが、例えば220~600μmであることが好ましく、300~500μmであることがより好ましい。前記厚みが220μm以上であることにより、高い吸音性が得られる。また、前記厚みが600μm以下であることにより、衝撃緩和性を保ちつつ結束後の柔軟性が得られやすくなる。
【0065】
(吸音性)
本発明に係る結束テープは、下記吸音性の評価方法により測定される減衰値が5.5dB以上であることが好ましく、5.7dB以上であることがより好ましく、6dB以上であることがさらに好ましい。前記減衰値が5.5dB以上であることにより、特にワイヤーハーネス用の結束テープとして用いた場合にも、結束テープが十分な吸音性を示す。
【0066】
<吸音性の評価方法>
ドイツ自動車メーカー各社の統合規格であるLV312-1第5.5.5節の「防音材」と同様の方法にて試験を行って、減衰値を算出した。具体的には、板厚0.3mm、寸法350mm×190mmのアルミ板を直径290mmの半円状に湾曲させた。次に、直径8mmの鋼棒をアルミ板頂点の上方20mmの位置から0.16Nの荷重で落下させた。その際、衝撃位置から50mm上方に設置したマイクで衝撃時のノイズ(単位:dB)を測定した。鋼棒単体で測定したノイズに対し、鋼棒の衝撃位置に粘着テープサンプル(寸法25mm×50mm)を1層貼り付けて測定したときのノイズを測定し、その差を減衰値とした。
【0067】
(用途)
本発明に係る結束テープは、吸音性能が高く、かつ、結束作業時におけるテープの破断を抑制できるため、これらの性能が要求される分野、例えば、自動車等のワイヤーハーネス用の結束テープとして好適に用いることができる。なお、当然ながら本実施形態の結束テープは、その用途がワイヤーハーネス用に限定されるわけではない。
【0068】
(その他の実施態様)
本発明に係る結束テープの他の態様は、不織布からなる基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面上に設けられた、粘着剤を含む粘着層と、を含む結束テープであって、前記不織布のテープ長手方向の引張破断強度(A1)が20N/10mm以上、40N/10mm未満であり、前記吸音性の評価方法により測定される減衰値が5.5dB以上であることを特徴とする結束テープである。本態様においても、高い吸音性能と、前記引張破断強度(A1)に基づく結束作業時におけるテープの破断抑制効果とが得られる。
【0069】
[結束テープの製造方法]
本発明に係る結束テープの製造方法は特に限定されないが、例えば、粘着剤を基材層に直接塗布して粘着層を形成する方法、一旦、別のシートに塗布した粘着剤を前記基材層に転写する方法等が挙げられる。基材層や別のシートへの粘着剤の塗布方法としては、例えば、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、キスコート法、リバースキスコート法、エアナイフコート法等が挙げられる。
【実施例
【0070】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例で得られた結束テープの吸音性は前記方法により評価した。また、該結束テープの結束性及び手切れ性は以下の方法により評価した。
【0071】
[結束性]
外径2mmの電線19本からなる外径約10mmの電線束に、結束テープをハーフラップで50cmの区間で巻付ける結束作業を行った。結束テープの結束性は以下の基準で評価した。
〇:結束作業時に結束テープが破断しない。
×:結束作業時に結束テープが破断する。
【0072】
[手切れ性]
結束テープを短手方向に手で引裂いて手切れ性試験を行った。手切れ性は以下の基準で評価した。なお、評価が「〇」又は「△」であれば、実用上問題なく使用できる。
〇:結束テープを手でテープ短手方向に容易にちぎることができる。
△:結束テープを手でテープ短手方向にちぎることができる。
×:結束テープを手でテープ短手方向にちぎることが困難である。
【0073】
[実施例1]
基材層として、表1に示される、エチレンプロピレンジエンゴム分散ポリプロピレンからなるオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO、商品名:「FULXUS(登録商標)FX-TPO-J160」、西田技研社製)を原料として、スパンボンド法により目付150g/mで形成された不織布A(繊維:TPO)を準備した。一方、水溶性のアクリル酸エステルエマルジョン(商品名:「アクリセット(登録商標)SKE-4851」、(株)日本触媒製)100質量部に対し、エポキシ硬化剤(商品名:「TETRAD(登録商標)-C」、三菱ガス化学(株)製)1質量部を配合してアクリル系粘着剤のエマルジョンを調製した。塗工量が固形分で40g/mとなるように前記エマルジョンをシリコーン系剥離紙(商品名:「KP-8」、リンテック(株)製)に塗工し、前記不織布Aの表面に転写して粘着層を形成し、厚み420μmの結束テープを得た。得られた結束テープの吸音性、結束性及び手切れ性を、前記方法により評価した。結果を表2に示す。
【0074】
[実施例2]
基材層として、表1に示される、ポリプロピレン(PP、商品名:「Moplen(登録商標) HP461Y」、Lyondellbasell社製)95質量%と、ポリエステル系ウレタン熱可塑性エラストマー(TPU:商品名「エラストラン(登録商標)ET690」、BASF社製)5質量%と、を原料として、スパンボンド法により目付100g/mで形成された不織布B(繊維:PP+TPU)を用いた。それ以外は、実施例1と同様に結束テープを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0075】
[実施例3]
基材層として、表1に示される、ポリプロピレン(PP、商品名:「Moplen(登録商標) HP461Y」、Lyondellbasell社製)95質量%と、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)であるスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(商品名:「KRATON(登録商標)G1633E」、KratonPorymer社製)5質量%と、を原料として、スパンボンド法により目付150g/mで形成された不織布C(繊維:PP+TPS)を用いた。それ以外は、実施例1と同様に結束テープを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0076】
[実施例4]
基材層として、表1に示される、ポリプロピレン(PP、商品名:「Moplen(登録商標) HP461Y」、Lyondellbasell社製)95質量%と、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)であるポリアミド-ポリエーテルエステル-ポリエステルブロック共重合体(商品名:「TPAE-10」、T&K TOKA社製)5質量%と、を原料として、スパンボンド法により目付120g/mで形成された不織布D(繊維:PP+TPAE)を用いた。それ以外は、実施例1と同様に結束テープを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0077】
[比較例1]
基材層として、表1に示される、ポリプロピレン(PP、商品名:「Moplen(登録商標) HP461Y」、Lyondellbasell社製)95質量%と、ポリエステル系ウレタン熱可塑性エラストマー(TPU:商品名「エラストラン(登録商標)ET690」、BASF社製)5質量%と、を原料として、スパンボンド法により目付72g/mで形成された不織布E(繊維:PP+TPU)を用いた。それ以外は、実施例1と同様に結束テープを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0078】
[比較例2]
基材層として、表1に示される、ポリプロピレン(PP、商品名:「Moplen(登録商標) HP461Y」、Lyondellbasell社製)95質量%と、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)であるスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(商品名:「KRATON(登録商標)G1633E」、KratonPorymer社製)5質量%と、を原料として、スパンボンド法により目付45g/mで形成された不織布F(繊維:PP+TPS)を用いた。それ以外は、実施例1と同様に結束テープを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0079】
[比較例3]
基材層として、表1に示される、ポリプロピレン(PP、商品名:「Moplen(登録商標) HP461Y」、Lyondellbasell社製)95質量%と、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)であるスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(商品名:「KRATON(登録商標)G1633E」、KratonPorymer社製)5質量%と、を原料として、スパンボンド法により目付70g/mで形成された不織布G(繊維:PP+TPS)を用いた。それ以外は、実施例1と同様に結束テープを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0080】
[比較例4]
基材層として、表1に示される、ポリプロピレン(PP、商品名:「Moplen(登録商標) HP461Y」、Lyondellbasell社製)95質量%と、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)であるスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(商品名:「KRATON(登録商標)G1633E」、KratonPorymer社製)5質量%と、を原料として、スパンボンド法により目付100g/mで形成された不織布H(繊維:PP+TPS)を用いた。それ以外は、実施例1と同様に結束テープを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0081】
[比較例5]
基材層として、表1に示される、PET繊維からなるステッチボンド不織布Iを用いた以外は、実施例1と同様に結束テープを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
基材層として不織布A~Dを用いた実施例1~4の結束テープでは、結束性が良好であり、かつ吸音性能が高かった。特に、基材層として不織布A~Cを用いた実施例1~3の結束テープでは、手切れ性も良好であった。不織布A~CはA2/A1が0.8未満であり、テープ長手方向に対してテープ短手方向の引張破断強度が低いためと考えられる。
【0085】
一方、基材層として不織布E~Hを用いた比較例1~4の結束テープでは、実施例1~4の結束テープと比較して結束性及び吸音性能が低かった。また、基材層として不織布Iを用いた比較例5の結束テープでは、結束性は良好であったが、吸音性能が低かった。不織布を構成する繊維がPET繊維であるためと考えられる。