(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】カプレートに対する不飽和C18石鹸の比を最小限に抑えながらC10石鹸を含むバー組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 9/20 20060101AFI20240219BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20240219BHJP
A01N 37/02 20060101ALI20240219BHJP
A01N 37/06 20060101ALI20240219BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240219BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240219BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20240219BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240219BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240219BHJP
C11D 9/26 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C11D9/20
A01N25/00 101
A01N37/02
A01N37/06
A01P3/00
A61K8/36
A61K8/365
A61Q5/02
A61Q19/10
C11D9/26
(21)【出願番号】P 2021551565
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(86)【国際出願番号】 EP2020053435
(87)【国際公開番号】W WO2020177988
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アガークヘッド,アジート・マノハール
(72)【発明者】
【氏名】チャンダー,プレーム
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ニティーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ,コナー・パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ウー,グオホイ
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0097387(US,A1)
【文献】特開平09-059692(JP,A)
【文献】特開昭50-046708(JP,A)
【文献】国際公開第2016/012163(WO,A1)
【文献】特表平10-503234(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0130960(US,A1)
【文献】特開2020-075887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00- 19/00
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)25~85重量
%のC
8~C
24脂肪酸石鹸であって、
(i)バー組成物全体の重量で7%または15%以
上のC
10石鹸、および
(ii)不飽和C
18石鹸を含み、C
10(カプレート)石鹸に対する前記不飽和C
18石鹸の重量比が0.8~0.1である、C
8~C
24脂肪酸石鹸と、
b)前記組成物の重量で1~45%の有機および無機補助材料と、
c)前記組成物の重量で5~30
%の水と、
を含む石鹸バー組成物であって、不飽和C
18石鹸に対するC10石鹸の過剰が少なくとも6%であり、
前記不飽和C
18石鹸がそのヒドロキシ誘導体を含む、石鹸バー組成物。
【請求項2】
不飽和C
18脂肪酸石鹸が、1、2もしくは3個の不飽和基を有する不飽和C
18脂肪酸石鹸、またはその混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
30秒の接触時間で、1.2以上の、大腸菌ATC
C 10536のlog
10減少をもたらす、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記有機および無機補助材料が、充填剤、ポリオール、塩およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
C
10石鹸に対する不飽和C
18石鹸の比がより高いバーに対して抗細菌活性を増強するための、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、前記活性が、
「Chemical Disinfectants and Antiseptics-Quantitative Suspension Test for the Evaluation of Basic Bactericidal Activity of Chemical Disinfectants and Antiseptics-Test Method and Requirements(Phase 1)」(「化学消毒剤および防腐剤-化学消毒剤および防腐剤の基本的な殺菌活性を評価するための定量懸濁液試験-試験方法および要件(フェーズ1)」)と題された欧州規格EN 1040:2005に従って25℃でタイムキルアッセイを行うことによって決定される使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な鎖長の脂肪酸エステル(トリグリセリド油のグリセロール塩基に連結された)を含む、トリグリセリド油の鹸化(例えば、中和)によって典型的に調製される脂肪酸系石鹸バーに関する。本発明はさらに、抗細菌活性を増強するために、他のものを最小限に抑えながら(鎖長の量および/または特定の脂肪酸エステルの飽和または不飽和のレベルの両方を最小限に抑えることを含む)、石鹸を形成するエステルの最小量の特定の鎖長(例えば、C10)の新規な組合せを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
市販の石鹸バーは、本発明の石鹸バーのこの成分を説明する目的のために当技術分野で通常理解される意味を有する1つ以上の「石鹸」:モノカルボキシ脂肪酸の一価塩を従来含む。上記のように、それらは、典型的にはトリグリセリド油の鹸化によって形成される。塩の対イオンは、一般にナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンおよびアルカノールアンモニウムイオンを含むが、当技術分野で知られている他の好適なイオンを含み得る。最終的な石鹸バーはまた、ユーザの皮膚のクレンジングおよび/またはコンディショニングを行うために、任意の補助成分、例えば、保湿剤、湿潤剤、水、充填剤、ポリマー、染料、芳香剤などを含み得る。
【0003】
典型的には、従来の石鹸バー中の石鹸成分は、長さが約8炭素原子~24炭素原子、好ましくは12炭素原子~約18炭素原子の脂肪酸のアルキル基の鎖長を有する長鎖脂肪酸の塩を含む。石鹸の(1または複数の)アルキル鎖の特定の長さは、クレンジング能力、泡立ち能力、コストなどを含む様々な理由のために選択される。比較的短い鎖長の石鹸は、比較的長い鎖長の石鹸よりも水溶性であり(すなわち、疎水性が低い)、多くの泡を生成することが知られている。比較的長い鎖長の石鹸は、多くの場合、コスト上の理由のために、および石鹸バーに構造を提供するために選択される。
【0004】
そのような従来の石鹸バーに抗細菌特性をもたらすためには、一般に、石鹸バーに殺菌剤または抗細菌剤を加える必要がある。したがって、例えば、トリクロサン(すなわち、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシ-ジフェニルエーテル)およびトリクロカルバニリドなどの抗微生物剤を含有するバーが知られている。ただし、抗細菌効果を達成するために石鹸バーに抗細菌剤を加えると、抗細菌剤自体のコストのため、および石鹸バーの製造コストが増大するため、石鹸バーのコストが増大する可能性がある。
【0005】
抗微生物活性を増強する別の方法には、低総脂肪物質バー(例えば、脂肪酸石鹸が高レベルの有機溶媒および/または電解質に置き換えられている)の使用によるものがある。
【0006】
いずれもUnileverの国際公開第2017/016803号および国際公開第2017/016807号は、10~30%の石鹸と、20~45%の水溶性有機溶媒と、20~40%の水と、3~20%の電解質とを含み、低総脂肪物質(「TFM」)バーを形成するクレンジングバーを開示している。Unileverの国際公開第2017/016802号も、可溶性界面活性剤のレベルが低下したことに起因するこのバーの抗微生物的な利点を示している。
【0007】
多くの他の参考文献が、広く開示されている量のカプリン酸石鹸(C10石鹸)および/または不飽和酸石鹸、例えば、オレエート(例えば、シス配置の1個の不飽和基を有するC18)を含有する石鹸バーを開示している。
【0008】
ただし、(任意の鎖長の)不飽和石鹸の全体のレベルを同時に最小限に抑えながら、C10石鹸の特定の最低レベルを維持することと、特にC10石鹸に対するC18不飽和の比を最小限に抑えることとの間の関係は認識されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2017/016803号
【文献】国際公開第2017/016807号
【文献】国際公開第2017/016802号
【発明の概要】
【0010】
予想外にも、本出願人らは、ここで、典型的には25~85%、好ましくは30~75%の脂肪酸石鹸を含む脂肪酸石鹸バーでは、カプレート(C10石鹸)の量が、バー組成物全体の重量で7%~32%、または8%~32%、または9%もしくは10%~32%、または11%もしくは12%もしくは13%もしくは14%もしくは15%~32%、または16~32%であることを見出した。上位レベルは、31%または30%または29%または28%または25%であり得る。上記の上位および下位の範囲は、交換可能に使用することができる。好ましい範囲は、組成物の重量で8~24%である。さらに同時に、不飽和C18脂肪酸石鹸、特にオレエート(ただし、1つ以上の不飽和基を有するC18を含み得る)のレベルは、C10(カプレート)脂肪酸石鹸に対する不飽和C18の比が、好ましくは1.2以下(0.2または0.1または0%という低さ)、さらに好ましくは1.1以下または1.05以下または1.0以下または0.80以下、さらに好ましくは0.55以下、さらになお好ましくは0.30以下(例えば、0~0.30の、カプレート石鹸に対するオレエートの比)に保持されるように制限される。このバー組成物の抗細菌活性は、例えば、比がさらに高い、例えば1.35であるバーよりも顕著に増強される。
【0011】
存在する石鹸が多くなれば、同じ比で死滅の効果が高くなることに留意されたい。したがって、例えば、60重量%の石鹸と1:1の比とを有するバーは、40重量%の石鹸と、カプレートに対する不飽和C18の同じ比とを有するバーよりも効果的である。
【0012】
好ましいバーは、組成物の重量で8%~28%または8%~24%のカプレートと、1.1~0または1.05~0または1.0~0の、カプレートに対する不飽和C18脂肪酸石鹸の比とを有する。C18不飽和脂肪酸石鹸に対して過剰のカプレートを有することが好ましい。本発明のバーでは、不飽和C18に対するカプレートの過剰は、少なくとも6%、または時には10%以上、または14%以上である。
【0013】
石鹸対イオンは、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属であっても、例えば、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンであってもよい。
【0014】
我々が言及する不飽和C18脂肪酸石鹸は、1、2または3個の不飽和基およびそれらの混合物を有し得る。それらはまた、不飽和C18石鹸のヒドロキシ誘導体、例えば、ヒドロキシオレエートと、リシノール酸の石鹸とを含む。典型的には、C18オレエート石鹸(1個の不飽和基)が最も主要なC18石鹸であるが、C18石鹸は、エライジン酸の石鹸(この構成では1つの不飽和を有するC18石鹸)、または1つを超える不飽和結合を有する脂肪酸(例えば、リノール、アルファリノール)に基づくC18石鹸も含み得る。好ましくは、0.2%未満、さらに好ましくは0.1%未満の、3個の不飽和基を有するC18脂肪酸のレベル。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、C10石鹸が上記のようにバーの8%~32%を構成し、C10石鹸に対するC18不飽和石鹸の比が、同様に上記のように1.2~0.1、または1.1~0.1、好ましくは1.05~0.1である脂肪酸石鹸バー(例えば、25~85重量%の脂肪酸石鹸を含むバー)に関する。
【0016】
さらに具体的には、本発明は、
a)25~85重量%、好ましくは35~75重量%のC8~C24脂肪酸石鹸であって、
(i)バー組成物全体の重量で8%または15%以上、さらに好ましくは16~32%のC10石鹸、および
(ii)不飽和C18石鹸を含み、C10(カプレート)石鹸に対する前述の不飽和C18石鹸の比が1.2~0.1である、C8~C24脂肪酸石鹸と、
b)組成物の重量で1~45%の有機および無機補助材料と、
c)組成物の重量で5~30%、好ましくは13~28%の水と、
を含む石鹸バー組成物に関する。
【0017】
さらになお具体的には、本発明は、
a)25~85重量%、好ましくは28~76%のC8~C24脂肪酸石鹸と、
ここで、
(i)C10石鹸が、バー組成物全体の重量で8%または9%または10%または15%以上、さらに好ましくは16~32%を構成し、
(ii)ヒドロキシを有するC18不飽和分子または他の誘導体(例えばヒドロキシオレイン酸)が含まれる、不飽和C18石鹸(好ましくは1、2または3個の不飽和基を有する)およびその混合物のレベルが、C10(カプレート)石鹸に対する不飽和C18石鹸の比が1.2または1.1または1.05または0.80または0.55または0.30であるようなレベルであり、
b)1~45重量%、好ましくは2~45重量%の有機および無機補助材料と、
c)5~30重量%、好ましくは13~28重量%の水と、
を含む石鹸バー組成物に関する。
【0018】
C10脂肪酸石鹸レベルを高く維持すること(例えば、C10脂肪酸石鹸に対する不飽和C18の低い比を維持するために)は、当業者がそうする理由を有するものではなく、したがってそのような濃縮された量の供給はないことに留意されたい。濃縮された量のC10脂肪酸石鹸は容易に天然にも生じない。例えば、ナッツ油では、C10石鹸は最大6~7重量%の量で存在する。
【0019】
さらに具体的には、本発明のバーは、25~85重量%のC8~C24脂肪酸石鹸の塩基を含む。脂肪酸石鹸と、さらに存在し得る任意の他の界面活性剤とは、ヒトの皮膚との常用的な接触に適しているべきである。
【0020】
用語「石鹸」は、本明細書ではその一般的な意味で使用され、すなわち、脂肪族、アルカンまたはアルケンモノカルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカノールアンモニウム塩である。ナトリウムカリウム、マグネシウム、モノ-、ジ-およびトリ-エタノールアンモニウムカチオン、またはそれらの組合せが、本発明の目的に最も適している。一般に、ナトリウム石鹸が本発明の組成物に使用されるが、石鹸の最大約15%がカリウム石鹸、マグネシウム石鹸またはトリエタノールアミン石鹸であり得る。本明細書で有用な石鹸は、約8~約24個の炭素原子を有する天然または合成脂肪族(アルカンまたはアルケン)酸の周知のアルカリ金属塩である。それらは、約8~約24個の炭素原子を有する飽和または不飽和炭化水素のアルカリ金属カルボキシレートとして記載され得る。
【0021】
脂肪酸石鹸は、様々な脂肪酸であり得る脂肪酸、典型的にはC8~C24の鎖長を有する脂肪酸部分を含有する脂肪酸から製造される。少なくとも一定量のC10を有すること、C10に対するオレエートの規定された比を維持すること、オレエート以外の不飽和C18を最小限に抑えること、ならびにC10石鹸および不飽和脂肪酸石鹸の規定されたモル比を維持することという規定された要件を前提として、脂肪酸ブレンドは、比較的純粋な量の1つ以上の脂肪酸を含有し得る。好適な脂肪酸には、限定するものではないが、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストエライジン酸(myristelaidic acid)、ペンタデナン酸(pentadenanoic acid)、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ヘプタデセン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ガドレイン酸、ベヘン酸およびリグノセリン酸ならびにそれらの異性体が含まれる。いくつかの好ましい形態では、脂肪酸ブレンドは、14個の炭素原子の飽和脂肪酸部分鎖長を有する低レベルの脂肪酸(ミリスチン酸)を有する。
【0022】
典型的には、脂肪酸石鹸の鎖長は、出発脂肪または油供給原料に応じて変化する(本明細書の目的のために、「油」および「脂肪」は、文脈上別段の要求がある場合を除き、交換可能に使用される)。比較的長い鎖の脂肪酸石鹸(例えば、C16パルミチンまたはC18ステアリン)は、獣脂油およびパーム油から典型的に得られ、比較的短い鎖の石鹸(例えば、C12ラウリン)は、例えば、ココナッツ油またはパーム核油から典型的に得られ得る。製造される脂肪酸石鹸はまた、上記のように、本発明の要件を前提として、飽和または不飽和(例えば、オレイン酸)であってもよい。
【0023】
典型的には、比較的長い分子量の脂肪酸石鹸(例えば、C14~C22石鹸)、特に比較的長い飽和石鹸は、不溶性であり、他の可溶性石鹸によって生成される泡をさらにクリーミーかつさらに安定にするのを助けることができるという事実にもかかわらず、良好な泡体積を生じない。逆に、比較的短い分子量の石鹸(例えば、C8~C12)および不飽和石鹸(例えば、オレイン酸由来)は素早く泡立つ。ただし、比較的長い鎖の石鹸(典型的には飽和であるが、オレインなどのあるレベルの不飽和を含んでいてもよい)は、それらが構造を維持し、容易に溶解しないという点で望ましい。不飽和石鹸(例えば、オレイン)は、短鎖石鹸のように可溶性であり、素早く泡立つが、比較的長い鎖の石鹸のように、密度が高くなり滑らかさが増した泡を形成する。
【0024】
石鹸原料は、典型的には、7%以上、特に8%以上のレベルのC10脂肪酸材料(例えば、パーム核油(PKO)、ココナッツ油)のレベルを有しない。これらの7重量%未満のC10石鹸レベルは、本発明のバーの好ましいレベルを下回る。例えば、総脂肪物質が76%のバーは、4%のC10脂肪酸石鹸で限界に達する。PKO/ココナッツ油の70/30混合物である一般的な市販のバーでは、このレベルはおそらく1.7%である。さらに、C18石鹸のレベルは、典型的には約30%であり、C10石鹸のレベルよりもはるかに高い。高C10、低C18石鹸(例えば、C10に対する不飽和C18の低い比)の利点の知識がなければ、そのようなバーを製造する理由はない。室温条件で速効性の抗細菌効果を実現するためにそのようにする利点、および本出願人らが認識している限り、この利点は当技術分野では認識されていない。そのため、そのような原料を選択または設計する理由はない。
【0025】
典型的には、比較的長い分子量の飽和脂肪酸石鹸(例えば、C14~C22石鹸は、不溶性であり、他の可溶性石鹸によって生成される泡をさらにクリーミーかつさらに安定にするのを助けることができるという事実にもかかわらず、良好な泡体積を生じないことに留意すべきである。
【0026】
有機および無機補助材料
バー組成物に使用される補助材料の総レベルは、石鹸バー組成物の重量で50%以下、好ましくは1~50%、さらに好ましくは1~45%、さらになお好ましくは3~45%の量であるべきである。
【0027】
使用され得る好適なデンプン質材料には、天然デンプン(natural starch)(トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ、タピオカなどに由来)、アルファ化デンプン、様々な物理的および化学的に修飾されたデンプンならびにそれらの混合物が含まれる。天然デンプン(natural starch)という用語は、化学的または物理的な修飾に供されておらず、生デンプンまたは天然デンプン(native starch)としても知られるデンプンを意味する。
【0028】
好ましいデンプンは、トウモロコシ(maize)(トウモロコシ(corn))、キャッサバ、小麦、ジャガイモ、米およびそれらの他の天然源由来の天然(natural)デンプンまたは天然(native)デンプンである。アミロースとアミロペクチンとの比が異なる生デンプン:例えば、トウモロコシ(maize)(25%アミロース);モチトウモロコシ(waxy maize)(0%);高アミローストウモロコシ(maize)(70%);ジャガイモ(23%);米(16%);サゴ(27%);キャッサバ(18%);小麦(30%)など。生デンプンは、直接使用するか、デンプンがゼラチン化されるか、部分的にまたは完全にゼラチン化されるように、バー組成物を製造するプロセス中に修飾することができる。
【0029】
別の好適なデンプンはアルファ化されており、これは、本発明のバー組成物中の成分として加えられる前にゼラチン化されたデンプンである。様々な温度でゲル化する様々な形態、例えば、冷水分散性デンプンが利用可能である。1つの好適な市販のアルファ化デンプンは、National Starch Co.(Brazil)によりFARMAL(登録商標)CS 3400の商品名の下に供給されているが、同様の特徴を有する他の市販の材料が適している。
【0030】
ポリオール
別の有機補助剤は、ポリオール、またはポリオールの混合物であり得る。ポリオールとは、高度に水溶性であり、好ましくは水に自由に溶解できる、複数のヒドロキシル基(少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ)を有する化合物を示すために本明細書で使用される用語である。
【0031】
比較的低分子量の短鎖ポリヒドロキシ化合物、例えば、グリセロールおよびプロピレングリコール;糖、例えば、ソルビトール、マンニトール、スクロースおよびグルコース;修飾炭水化物、例えば、加水分解デンプン、デキストリンおよびマルトデキストリン、ならびにポリマー合成ポリオール、例えば、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリオキシエチレングリコール(PEG)およびポリオキシプロピレングリコール(PPG)を含む多くの種類のポリオールが利用可能である。
【0032】
特に好ましいポリオールは、グリセロール、ソルビトールおよびそれらの混合物である。
【0033】
ポリオールのレベルは、その材料特性が高速製造(毎分バー300~400本)に、およびパーソナルウォッシングバーとしての使用に適している熱可塑性塊を形成するのに重要であり得る。例えば、ポリオールのレベルが低すぎると、押出温度(例えば、40℃~45℃)で塊が十分に可塑性でない可能性があり、バーは比較的高いふやけおよび摩耗率を示す傾向がある。逆に、ポリオールのレベルが高すぎると、通常のプロセス温度で高速によってバーに形成するには柔らかくなりすぎる場合がある。
【0034】
好ましい実施形態では、本発明のバーは、0~35重量%、好ましくは0.5~15重量%のポリオールを含む。好ましいポリオールには、上記のように、グリセロール、ソルビトールおよびそれらの混合物が含まれる。
【0035】
補助剤系は、材料の1つまたは組合せを含む不溶性粒子を含んでいてもよい。不溶性粒子とは、固体微粒子形態で存在し、パーソナルウォッシングに適した材料を意味する。好ましくは、鉱物(例えば、無機)または有機粒子がある。
【0036】
不溶性粒子は、チクチク感または顆粒として知覚されるべきではなく、したがって、300ミクロン未満、さらに好ましくは100ミクロン未満、最も好ましくは50ミクロン未満の粒径を有するべきである。
【0037】
好ましい無機微粒子材料には、タルクおよび炭酸カルシウムが含まれる。タルクは、層状シリケート構造と、Mg3Si4(OH)22の組成とを有するケイ酸マグネシウム鉱物材料であり、水和形態で入手可能であり得る。タルクは、板状の形態を有し、本質的に親油性/疎水性である、すなわち、水ではなく油によって濡れる。
【0038】
炭酸カルシウムまたはチョークは、カルサイト、アラゴナイトおよびバテライトの3つの結晶形態で存在する。カルサイトの天然形態は菱面体または立方体であり、アラゴナイトについては針状または樹状であり、バテライトについては回転楕円体である。
【0039】
商業的には、沈殿炭酸カルシウムとして知られる炭酸カルシウムまたはチョークは、水酸化カルシウムの水性懸濁液に炭酸ガスをバブリングする炭酸化方法によって生成される。このプロセスでは、炭酸カルシウムの結晶型は、カルサイト、またはカルサイトとアラゴナイトとの混合物である。
【0040】
他の任意の不溶性無機微粒子材料の例には、アルミノシリケート、アルミネート、シリケート、ホスフェート、不溶性スルフェート、ボレートおよび粘土(例えば、カオリン、陶土)ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0041】
有機微粒子材料には、不溶性多糖類、例えば、高架橋または不溶化デンプン(例えば、コハク酸オクチル(octyl succinate)などの疎水性物質との反応による)およびセルロース;合成ポリマー、例えば、様々なポリマー格子および懸濁ポリマー;不溶性石鹸ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0042】
バー組成物は、バー組成物の重量で0.1~25%、好ましくは5~15重量%のこれらの鉱物または有機粒子を含むことが好ましい。
【0043】
水
本発明のバーは、5~30重量%、好ましくは13~28重量%の水を含む。
【0044】
任意の成分
合成界面活性剤:バー組成物は、非石鹸合成型界面活性剤(洗剤)、いわゆる合成洗剤を含んでいてもよい。合成洗剤は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性または双性イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤を含むことができる。
【0045】
バー中に存在する合成界面活性剤のレベルは、バー組成物の総重量に基づいて、一般に25%未満、好ましくは15%未満、好ましくは最大10%、最も好ましくは0~7%である。
【0046】
アニオン性界面活性剤は、例えば、脂肪族スルホネート、例えば、第一級アルカン(例えば、C8~C22)スルホネート、第一級アルカン(例えば、C8~C22)ジスルホネート、C8~C22アルケンスルホネート、C8~C22ヒドロキシアルカンスルホネートもしくはアルキルグリセリルエーテルスルホネート(AGS)、または芳香族スルホネート、例えば、アルキルベンゼンスルホネートであり得る。アルファオレフィンスルホネートは、別の好適なアニオン性界面活性剤である。
【0047】
アニオン性物質はまた、アルキルスルフェート(例えば、C12~C18アルキルスルフェート)、特に、第一級アルコールスルフェートまたはアルキルエーテルスルフェート(アルキルグリセリルエーテルスルフェートを含む)であってもよい。
【0048】
アニオン性界面活性剤はまた、スルホン化脂肪酸、例えば、アルファスルホン化獣脂脂肪酸、スルホン化脂肪酸エステル、例えば、アルファスルホン化牛脂脂肪酸メチルまたはそれらの混合物であり得る。
【0049】
アニオン性界面活性剤は、アルキルスルホスクシネート(モノ-およびジアルキル、例えば、C6~C22スルホスクシネートを含む);アルキルおよびアシルタウレート、アルキルおよびアシルサルコシネート、スルホアセテート、C8~C22アルキルホスフェートおよびホスフェート、アルキルホスフェートエステルおよびアルコキシルアルキルホスフェートエステル、アシルラクテートまたはラクチレート、C8~C22モノアルキルスクシネートおよびマレエート、スルホアセテート、ならびにアシルイセチオネートであってもよい。
【0050】
別のクラスのアニオン性物質は、C8~C20アルキルエトキシ(1~20EO)カルボキシレートである。
【0051】
別の好適なアニオン性界面活性剤は、C8~C18アシルイセチオネートである。これらのエステルは、アルカリ金属イセチオネートと、6~18個の炭素原子および20未満のヨウ素価を有する混合脂肪族脂肪酸との反応によって調製される。混合脂肪酸の少なくとも75%は12~18個の炭素原子を有し、最大25%は6~10個の炭素原子を有する。アシルイセチオネートはアルコキシル化イセチオネートであってもよい。
【0052】
アシルイセチオネートは、存在する場合、一般に、組成物全体の重量の約0.5%~約25%の範囲にある。
【0053】
一般に、アニオン性成分は、バー組成物に使用される合成界面活性剤の大部分を占める。
【0054】
本発明に使用され得る両性洗剤は、少なくとも1つの酸基を含む。これは、カルボン酸基またはスルホン酸基であり得る。それらは第四級窒素を含み、したがって第四級アミド酸である。それらは、一般に、7~18個の炭素原子のアルキル基またはアルケニル基を含むべきである。好適な両性界面活性剤には、アンホアセテート、アルキルおよびアルキルアミドベタイン、ならびにアルキルおよびアルキルアミドスルホベタインが含まれる。
【0055】
アンホアセテートおよびジアンホアセテートはまた、使用され得る可能な双性イオン性および/または両性化合物に包含されることが意図されている。
【0056】
好適な非イオン性界面活性剤には、疎水性基および反応性水素原子を有する化合物、例えば、脂肪族アルコールまたは脂肪酸とアルキレンオキシド、特にエチレンオキシド単独またはプロピレンオキシドとの反応生成物が含まれる。例には、脂肪族(C8~C18)第一級または第二級の直鎖または分岐アルコールとエチレンオキシドとの縮合生成物、およびエチレンオキシドと、プロピレンオキシドとエチレンジアミンとの反応生成物との縮合によって作製された生成物が挙げられる。他のいわゆる非イオン性洗剤化合物には、長鎖第三級アミンオキシド、長鎖第三級ホスフィンオキシドおよびジアルキルスルホキシドが含まれる。
【0057】
非イオン性物質は、アルキル多糖およびアルキル多糖アミドなどの糖アミドであってもよい。
【0058】
カチオン性洗剤の例には、ハロゲン化アルキルジメチルアンモニウムなどの第四級アンモニウム化合物がある。
【0059】
使用され得る他の界面活性剤は、Parran Jr.の米国特許第3,723,325号、ならびにSchwartz、PerryおよびBerchによる「Surface Active Agents and Detergents」(第I巻および第II巻)に記載されており、これらはいずれも参照により本出願に組み込まれる。
【0060】
仕上げ補助材料
これらは、バーの審美的品質、特に視覚的、触覚的および嗅覚的特性を直接的(香料)または間接的(防腐剤)に改善する成分である。多種多様な任意の成分を本発明のバー組成物に組み込むことができる。補助剤の例には、限定するものではないが、香料;乳白剤、例えば、脂肪アルコール、エトキシル化脂肪酸、固体エステルおよびTiO2;染料および顔料;真珠光沢化剤、例えば、TiO2被覆雲母および他の干渉顔料;板状ミラー粒子、例えば、有機グリッター;感覚惹起剤、例えば、メントールおよびショウガ;防腐剤、例えば、ジメチロールジメチルヒダントイン(Glydant XL1000)、パラベン、ソルビン酸など;例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などの酸化防止剤;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびエチドロン酸三ナトリウムの塩;乳化安定剤;補助増粘剤;緩衝剤;ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0061】
真珠光沢化剤のレベルは、バー組成物の総重量に基づいて、約0.1%~約3%、好ましくは0.1%~0.5%、最も好ましくは約0.2~約0.4%であるべきである。
【0062】
皮膚有益剤
ここで強調される特定のクラスの任意の成分は、皮膚および毛髪の健康および状態を促進するために含まれる皮膚有益剤である。潜在的な有益剤には、限定するものではないが、脂質、例えば、コレステロール、セラミドおよびプソイドセラミド;抗微生物剤、例えば、トリクロサン;日焼け止め剤、例えば、シンナメート;他の種類のスクラブ剤粒子、例えば、ポリエチレンビーズ、クルミ殻、アンズ種子、花弁および種子、およびシリカおよび軽石などの無機物;追加の軟化剤(皮膚軟化剤)、例えば、長鎖アルコール、およびラノリンのようなワックス;追加の保湿剤;皮膚調色剤;皮膚栄養素、例えば、ビタミンC、DおよびEのようなビタミン類、およびベルガモット、ウンシュウミカン、ショウブなどの精油;アボカド、ブドウ、ブドウ種子、ミルラ、キュウリ、クレソン、カレンデュラ、エルダーフラワー、ゼラニウム、リンデンの花、アマランサス、海藻、イチョウ、チョウセンニンジン、ニンジンの水溶性または水不溶性抽出物;ホウセンカ(impatiens balsamina)、カムカム、アルピナの葉および他の植物抽出物、例えば、アメリカマンサク(witch-hazel)、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0063】
組成物はまた、追加の皮膚(頭皮を含む)効果を提供する様々な他の活性成分を含むことができる。例には、抗アクネ剤、例えば、サリチル酸およびレゾルシノール;硫黄含有DおよびLアミノ酸、およびそれらの誘導体および塩、特にそれらのN-アセチル誘導体;抗しわ活性物質、抗皮膚萎縮活性物質および皮膚修復活性物質、例えば、ビタミン類(例えば、A、EおよびK)、ビタミンアルキルエステル、ミネラル、マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛および他の金属成分;レチノイン酸およびエステルおよび誘導体、例えば、レチナールおよびレチノール、ビタミンB3化合物、αヒドロキシ酸、βヒドロキシ酸、例えば、サリチル酸およびその誘導体;皮膚鎮静剤、例えば、アロエベラ、ホホバオイル、プロピオン酸誘導体および酢酸誘導体、フェナム酸誘導体;人工日焼け剤、例えば、ジヒドロキシアセトン;チロシン;チロシンエステル、例えば、エチルチロシネートおよびグルコースチロシネート;美白剤、例えば、アロエ抽出物およびナイアシンアミド、α-グリセリル-L-アスコルビン酸、アミノチロキシン(aminotyroxine)、乳酸アンモニウム、グリコール酸、ヒドロキノン、4ヒドロキシアニソール、皮脂刺激剤、例えば、ブリオノール酸、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)およびオリザノ(orizano);皮脂阻害剤、例えば、アルミニウムヒドロキシクロリド、コルチコステロイド、デヒドロ酢酸およびその塩、ジクロロフェニルイミダゾールジオキソラン(Elubiolから入手可能);抗酸化作用、プロテアーゼ阻害;皮膚引き締め剤、例えば、ビニルピロリドンのターポリマー、(メタ)アクリル酸、および長鎖アルキル(メタ)アクリレートから構成される疎水性モノマー;かゆみ止め剤、例えば、ヒドロコルチゾン、メトジリジン(methdilizine)およびトリメプラジン発毛阻害;5-αレダクターゼ阻害剤;落屑を促進する薬剤;抗糖化剤;フケ防止剤、例えば、亜鉛ピリジンチオン;毛髪成長促進物質、例えば、フィナステリド、ミノキシジル、ビタミンD類似体およびレチノイン酸、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0064】
電解質
石鹸バーは、0.5重量%~5重量%の電解質を含む。好ましい電解質には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物、サルフェートおよびホスフェートが含まれる。理論に束縛されることを望むものではないが、電解質は、固化した石鹸塊を構造化し、また共通イオン効果によって溶融塊の粘度を増加させるのに役立つと考えられている。電解質を含まない比較用の石鹸バーの方が柔らかいことが見出された。塩化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムが最も好ましい電解質であり、さらに好ましくは0.6~3.6重量%、最も好ましくは1.0~3.6重量%である。
【0065】
ポリマー
石鹸バーは、アクリレートまたはセルロースエーテルから選択されるポリマーを0.1~5重量%含み得る。好ましいアクリレートには、架橋アクリレート、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸ナトリウムが含まれる。好ましいセルロースエーテルには、カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロースが含まれる。ポリマーの総量が5重量%を超えない限り、これらのポリマーの組合せも使用され得る。
【0066】
アクリレート
好ましいバーは、0.1~5%のアクリレートを含む。さらに好ましいバーは、0.15~3%のアクリレートを含む。アクリレートポリマーの例には、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2,798,053号に記載されているような、ポリアリルスクロースによって架橋されたアクリル酸のポリマーおよびコポリマーが挙げられる。他の例には、ポリアクリレート、アクリレートコポリマーまたはアルカリ膨潤性エマルジョンアクリレートコポリマー(例えば、Rohm and Haas製のACULYN(登録商標)33;Lubrizol Inc.製のCARBOPOL(登録商標)Aqua SF-1)、疎水変性アルカリ膨潤性コポリマー(例えば、Rohm and Haas製のACULYN(登録商標)22、ACULYN(登録商標)28およびACULYN(登録商標)38)が挙げられる。市販のアクリル酸の架橋ホモポリマーには、Lubrizol Inc.から入手可能なCARBOPOL(登録商標)934、940、941、956、980および996カルボマーが含まれる。他の市販の架橋アクリル酸コポリマーには、Lubrizol Inc.から入手可能なCARBOPOL(登録商標)Ultrezグレードシリーズ(Ultrez(登録商標)10、20および21)およびETDシリーズ(ETD 2020および2050)が含まれる。
【0067】
CARBOPOL(登録商標)Aqua SF-1が特に好ましいアクリレートである。この化合物は、3つの構造単位、すなわち、3~10個の炭素原子を有する1つ以上のカルボン酸モノマーと、1つ以上のビニルモノマーと、1つ以上のモノまたはポリ不飽和モノマーとを有するわずかに架橋されたアルカリ膨潤性アクリレートコポリマーである。
【0068】
セルロースエーテル
好ましいバーは、0.1~5%のセルロースエーテルを含む。さらに好ましいバーは、0.1~3%のセルロースエーテルを含む。好ましいセルロースエーテルは、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびカルボキシアルキルセルロースから選択される。さらに好ましいバーは、ヒドロキシアルキルセルロースまたはカルボキシアルキルセルロースを含み、特に好ましいバーは、カルボキシアルキルセルロースを含む。
【0069】
好ましいヒドロキシアルキルセルロースには、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびエチルヒドロキシエチルセルロースが含まれる。
【0070】
好ましいカルボキシアルキルセルロースには、カルボキシメチルセルロースが含まれる。カルボキシメチルセルロースがカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩の形態であることが特に好ましい。
【0071】
ワックスおよびポリアルキレングリコール
好ましいワックスには、パラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスが含まれる。ポリアルキレングリコールが使用される場合、好ましいバーは、0.01~5重量%、さらに好ましくは0.03~3重量%、最も好ましくは0.5~1重量%のポリアルキレングリコールを含み得る。好適な例には、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールが挙げられる。好ましい市販品には、The Dow Chemical Companyによって販売されているPOLYOX(登録商標)がある。
【0072】
本発明の好ましい組成物は、
1)25~85重量%の石鹸、好ましくはナトリウム石鹸と、
2)0~35重量%のポリオール、好ましくはグリセリン、ソルビトールまたは混合物と、
3)0~25重量%の粒子と、
4)10~30重量%の水と、
を含む。
【0073】
プロトコル
インビトロ抗微生物プロトコル
石鹸スラリーの調製
微細なチーズおろし器を用いて、評価する固形石鹸バーを小さなチップにすりおろす。石鹸バーチップを水と10重量%で混合し、磁気撹拌プレート上で25℃で一晩撹拌した。混合を通してボルテックスを維持するように、撹拌バーの寸法を選択することが重要である。インビトロタイムキルアッセイのために新たに均一なゲル状石鹸スラリーを調製し、使用した。
【0074】
細菌
American Type Culture Collectionから、凍結乾燥培養物として大腸菌(Escherichia coli)ATCC 10536を得た。各実験の前に、トリプトソイ寒天(TSA)画線プレート上で37.0℃で24時間かけて、新鮮な試験培養物を2回増殖させた。次いで、効力試験の直前に、トリプトン塩化ナトリウムを用いて大腸菌懸濁液を調製した。
【0075】
インビトロタイムキルアッセイ
参照により本明細書に組み込まれる「Chemical Disinfectants and Antiseptics-Quantitative Suspension Test for the Evaluation of Basic Bactericidal Activity of Chemical Disinfectants and Antiseptics-Test Method and Requirements(Phase 1)」と題された欧州規格EN 1040:2005に従って、タイムキルアッセイを25℃で行った。この手順に従って、25℃で(上記のように調製した)石鹸溶液を用いて、1.5×108~5×108コロニー形成単位/ml(cfu/ml)での増殖期細菌培養物を処理した。試験試料の形成では、上記のように調製した8重量部の石鹸溶液と、1重量部の培養物および1重量部の水とを合わせた。10、20および30秒の曝露後、試料を中和して石鹸溶液の抗細菌活性を停止させた。次いで、試験溶液を段階希釈し、固体培地に播種し、24時間インキュベートし、生存細胞を計数した。殺菌活性は、0秒での細菌濃度に対するcfu/mlの対数減少として定義されている。石鹸溶液に曝露していない培養物は無処理対照として機能する。
【0076】
以下の式を使用して、log10減少を計算した:
log10減少=log10(対照数)-log10(試験試料生存細胞)
基材洗浄アッセイ
基材から細菌を除去するバー製剤の効果を決定するために、人工皮膚試料(ヒト皮膚の表面化学を模倣するように設計された合成基材である、IMS Corp.のVITRO-SKIN(商標))に対してインビトロ性能試験を行う。基材を調製するために、85%の水、15%のグリセリンのリザーバを備えた水和チャンバ内でVITRO-SKINの小片を一晩水和させた。約24時間後、VITRO-SKINの小片をチャンバから取り出し、周囲の温度および湿度で約1時間放置し、次いで、直径5cmの円形部分をXRFカップの対向する片の間に取り付けた。
【0077】
上記の一晩の増殖から得られた100ulの培養物を使用することによって、使用した各VITRO-SKINに1.5×108~5×108CFUの大腸菌を均一に接種した。VITRO-SKIN上で細菌を30分間乾燥させた。
【0078】
皮膚の洗浄を模倣するために、バー石鹸組成物を直径1cmの円柱に切断し、バーをDI水で濡らした。VITRO-SKINを0.7mlの水で濡らした後、XRFカップ内のVITRO-SKIN表面全体にわたってバー石鹸組成物を15秒間穏やかに擦りつけた。次いで、テフロン棒を用いてVITRO-SKINを45秒間擦り続けることによって泡を発生させた(例えば、バー石鹸組成物の非存在下で)。洗浄液を除去し、10mlの脱イオン水をXRFカップに加え、清浄なテフロン棒を用いて基材を30秒間擦ることによって、VITRO-SKINをすすいだ。すすぎ工程をもう1回繰り返した。
【0079】
すすぎ液を除去した後、10mlの氷冷D/Eブロスを各XRFカップに直ちに加えた。テフロンを用いてカップをしっかりと覆い、1分間激しく振盪して細菌を除去した。流体の段階希釈を行い、コロニー計数のためにトリプトソイ寒天上に37℃で24時間かけて播種した。次いで、CFU/mlを計数および計算し、結果をlog10 CFUとして報告した。log10(CFU/ml)値が小さいほど、基材から細菌を除去するバーの効率が向上する。
【0080】
[実施例]
以下の実施例は、本発明の範囲内の実施形態をさらに説明および実証する。実施例は、例示のみを目的として与えられており、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく多くのその変形例が可能であるため、限定として解釈されるべきではない。
【0081】
表1:
不飽和C18石鹸(例えば、オレエート)/カプリン酸ナトリウム比に応じたタイムキル効果。
【0082】
混合物では、カプリン酸ナトリウムを一定レベルに維持し、16重量%のカプリン酸ナトリウムと、0~22重量%の範囲で変化するNa C
18石鹸とを含有する石鹸バーをシミュレーションする。
【表1】
【0083】
表1のデータによって実証されるように、不飽和C
18脂肪酸のNa石鹸は、カプレートに対する不飽和C
18石鹸の比が1.2未満であると、カプリン酸ナトリウムの殺生物性効果を抑制し始める(本発明者らは、大腸菌ATCC 10536に対する少なくとも1.0、好ましくは少なくとも1.2、さらに好ましくは少なくとも1.4のlog
10減少と定義した)。不飽和C
18のNa石鹸/カプリン酸ナトリウム比が1.3を超えて増加すると、カプリン酸ナトリウムはその殺生物性効果をほぼ完全に失った。試験溶液は、16.4重量%のバー含有量をシミュレーションする1.64重量%の一定濃度のカプリン酸ナトリウムと、0~17.2重量%のバー含有量範囲をシミュレーションする0~2.15重量%の濃度範囲の不飽和C
18のNa石鹸とを含有する。上記のように、C
10石鹸は、C
10に対するC
18不飽和の比が1.2以下である限り、7重量%と低くてよい。
【表2】
【表3】
【0084】
表2および表3のデータによって実証されるように、様々な短鎖石鹸を富化した石鹸バーのうち、カプリン酸ナトリウムを含む石鹸バーが最良の抗微生物タイムキル効果を有する。言い換えれば、これは驚くべき活性を有する最小レベルのC
10石鹸の使用である。死滅をもたらすのは25.64のC
10レベルである(C
10に対する特異的不飽和C
18の比は1.20である)。C
8、C
12およびC
14は、はるかに小さい活性をもたらす。
【表4】
【表5】
【0085】
表4および表5のデータによって実証されるように、抗微生物タイムキル効果は、石鹸バー製剤中のカプリン酸ナトリウム含有量とともに増加する。実施例は、8%という低いC
10レベルの作用を示す。重要なのは、オレエートのレベルをC
10と比較して低く維持することである。
【表6】
【0086】
表6は、15.2%と、様々な量のオレエートとを含む組成物をモデル化している。不飽和C
18(例えば、オレエート)が存在しない場合(C
10活性を妨げない)、実施例10は良好な抗微生物活性を示す(3.7のlog
10減少)。オレエートに対するC
10の比が低い限り、6.1%のオレエートの存在下でも活性は依然として良好である(実施例11)。比が高すぎる場合(比較例G)、効果は非常に低い。
【表7】
【0087】
【0088】
データは、組成物が、約8%のカプリン酸ナトリウムのレベルでは30秒で2.2のlog死滅を示すことを示している。
オレエートに対する
カプレートの比は0.76である。この製剤は本発明の範囲外である。
【表9】
【0089】
データは、組成物が、約7%のカプリン酸ナトリウムのレベルでは30秒で3.5のlog死滅を示すことを示している。カプレートに対するオレエート+リシノレエートの比は0.52である。