(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】含フッ素ピラゾール化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 417/04 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
C07D417/04 CSP
(21)【出願番号】P 2021556024
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2020040923
(87)【国際公開番号】W WO2021095577
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019206403
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】清野 淳弥
(72)【発明者】
【氏名】青津 理恵
(72)【発明者】
【氏名】小金 敬介
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/041360(WO,A1)
【文献】特表2006-504662(JP,A)
【文献】特表2014-514360(JP,A)
【文献】特表2016-539945(JP,A)
【文献】特開平05-230029(JP,A)
【文献】特表2012-507482(JP,A)
【文献】BARGAMOVA, M. D. et al.,5-Fluoro-substituted pyrazoles,Izvestiya Akademii Nauk SSSR, Seriya Khimicheskaya,1990年,11,2583-2589
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される、含フッ素ピラゾール化合物。
【化1】
(上記一般式(1)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zは窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を含
み、縮合環構造である、芳香族複素環を表す。)
【請求項2】
前記環Zを構成するπ電子数が
10個または14個である、請求項1に記載の含フッ素ピラゾール化合物。
【請求項3】
前記環Zは、前記ヘテロ原子として少なくとも窒素原子を含み、
前記環Zを構成するπ電子数が
10個である、請求項1または2に記載の含フッ素ピラゾール化合物。
【請求項4】
下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【化2】
(上記一般式(1)~(3)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
環Zは窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を含
み、縮合環構造である、芳香族複素環を表す。)
【請求項5】
下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【化3】
(上記一般式(1)、(3)および(4)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xはハロゲン原子、-OA
1、-SO
mA
1(mは0~3の整数である)、または-NA
1A
2を表し、
A
1、A
2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表し、
環Zは窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を含
み、縮合環構造である、芳香族複素環を表す。)
【請求項6】
前記含フッ素ピラゾール化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われる、請求項4または5に記載の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【請求項7】
前記環Zを構成するπ電子数が
10個または14個である、請求項4から6までの何れか1項に記載の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【請求項8】
前記環Zは、前記ヘテロ原子として少なくとも窒素原子を含み、
前記環Zを構成するπ電子数が
10個である、請求項4から7までの何れか1項に記載の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ピラゾール化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、含フッ素ピラゾール化合物は種々の生物活性を有することが報告されている。なかでも、ピラゾール環の1位に置換基として複素環を有し、ピラゾール環の3位および5位に置換基を有する化合物について、医薬・農薬分野においての使用が有望視されている。
【0003】
より具体的には、非特許文献1には、1-(2-ピリジル)-ピラゾール構造を有する化合物がアワヨトウやコナガの殺虫活性を有することが報告されている。非特許文献2には、1-(3-ピリジル)-ピラゾール構造を有する化合物がストレス応答キナーゼ(Transforming growth factor beta-activated kinase 1(TAK1))の阻害活性を有することが報告されている。
【0004】
従って、生物活性等の有用な活性の向上を期待して、ピラゾール環の1位に複素環の置換基を有し、ピラゾール環の3位および5位に置換基を有し、さらにピラゾール環の4位にトリフルオロメチル基を有する化合物の開発に興味が持たれていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Journal of Heterocyclic Chemistry,2019年、56巻、1330~1336頁
【文献】European Journal of Medicinal Chemistry、2019年、163巻、660~670頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ピラゾール環の1位に複素環の置換基を有し、3位および5位に置換基を有する化合物について、さらに4位にトリフルオロメチル基を導入するためには、基質の反応性や反応選択性を厳密に制御する必要があり、従来からこのような化合物の製造例は報告されていなかった。このため、1位に複素環の置換基を有し、3位および5位に置換基を有し、さらに4位にトリフルオロメチル基を有する含フッ素ピラゾール化合物に関する更なる開発が待望されていた。
【0007】
そこで、本発明者らは、特定の原料を反応させることにより、ピラゾール環の1位に複素環構造、4位にトリフルオロメチル基、3位および5位に特定の置換基を導入できることを発見し、本発明を完成させるに至ったものである。すなわち、本発明は、従来から知られていなかった、1位に複素環構造、4位にトリフルオロメチル基、3位および5位に特定の置換基を有する新規な含フッ素ピラゾール化合物、および、該含フッ素ピラゾール化合物を簡易的に製造することが可能な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1]下記一般式(1)で表される、含フッ素ピラゾール化合物。
【化1】
(上記一般式(1)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zは窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を含む芳香族複素環を表す。)
[2]前記環Zを構成するπ電子数が6個、10個または14個である、上記[1]に記載の含フッ素ピラゾール化合物。
[3]前記環Zは、前記ヘテロ原子として少なくとも窒素原子を含み、
前記環Zを構成するπ電子数が6個または10個である、上記[1]または[2]に記載の含フッ素ピラゾール化合物。
[4]下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【化2】
(上記一般式(1)~(3)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
環Zは窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を含む芳香族複素環を表す。)
[5]下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程を有する、含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【化3】
(上記一般式(1)、(3)および(4)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xはハロゲン原子、-OA
1、-SO
mA
1(mは0~3の整数である)、または-NA
1A
2を表し、
A
1、A
2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表し、
環Zは窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を含む芳香族複素環を表す。)
[6]前記含フッ素ピラゾール化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われる、上記[4]または[5]に記載の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
[7]前記環Zを構成するπ電子数が6個、10個または14個である、上記[4]から[6]までの何れか1つに記載の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
[8]前記環Zは、前記ヘテロ原子として少なくとも窒素原子を含み、
前記環Zを構成するπ電子数が6個または10個である、上記[4]から[7]までの何れか1つに記載の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
1位に複素環構造、4位にトリフルオロメチル基、3位および5位に特定の置換基を有する新規な含フッ素ピラゾール化合物、および、該含フッ素ピラゾール化合物を簡易的に製造することが可能な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(含フッ素ピラゾール化合物)
本発明の含フッ素ピラゾール化合物は下記一般式(1)で表される。
【化4】
(上記一般式(1)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zは窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を含む芳香族複素環を表す。)
【0011】
本発明の含フッ素ピラゾール化合物は、ピラゾール環の1位上に芳香族複素環Zの基、ピラゾール環の3位、4位、および5位上に特定の置換基(-OR、-CF3、-F)を有するため、構造拡張性の観点から優れた効果を有することができる。特に、所望の生物活性(例えば、ホルモンや酵素の阻害活性、殺菌活性、殺虫活性、除草活性)を期待できる。特に、殺菌活性としては、人体、イネ等の農作物に有害な作用を及ぼす菌の殺菌活性を挙げることができる。ピラゾール環の1位上に位置する芳香族複素環Zはヘテロ原子として窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも一種の原子を含み、該環Zはさらに置換基を有していても、有していなくてもよい。環Zは、ヘテロ原子の数・種類、環の大きさ、環原子数、環Zを構成するπ電子数、置換基の数・種類・有無等により、含フッ素ピラゾール化合物に所望の特性を付与することができる。また、ピラゾール環の3位および5位上の置換基は異なる基(-ORと-F)であるため、これらの基が脱離または反応して非対称な構造へ容易に誘導体化を行うことができ、中間体としての使用も期待することができる。より具体的には、酸性条件下で含フッ素ピラゾール化合物を反応させることにより-ORを修飾して誘導体を得ることができる。また、塩基性条件下で含フッ素ピラゾール化合物を反応させることにより-Fを修飾して誘導体を得ることができる。一実施形態の含フッ素ピラゾール化合物は例えば、有機半導体、液晶などの電子材料の分野において有用である。
【0012】
Rは炭素数1~12の、炭素原子および水素原子からなる炭化水素基であれば特に限定されず、鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基などを挙げることができる。鎖状炭化水素基は合計の炭素数が1~12であれば特に限定されず、分岐した鎖状炭化水素基であっても、分岐していない鎖状炭化水素基であってもよい。芳香族炭化水素基は合計の炭素数が5~12であれば特に限定されず、置換基を有する芳香族炭化水素基であっても、置換基を有さない芳香族炭化水素基であってもよい。また、芳香族炭化水素基は、縮合多環構造を有していてもよい。脂環式炭化水素基は合計の炭素数が3~12であれば特に限定されず、置換基を有する脂環式炭化水素基であっても、置換基を有さない脂環式炭化水素基であってもよい。また、脂環式炭化水素基は、橋かけ環構造を有していてもよい。
【0013】
鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等のアルキニル基等を挙げることができる。
【0014】
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
【0015】
脂環式炭化水素基としては、飽和又は不飽和の環状の炭化水素基が挙げられ、環状の炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等を挙げることができる。
【0016】
好ましくはRは、炭素数1~10のアルキル基であるのがよい。Rが炭素数1~10のアルキル基であることにより、含フッ素ピラゾール化合物の原料である一般式(2)のフルオロイソブチレン誘導体、および一般式(4)のフルオロイソブタン誘導体を容易に調製することができる。
【0017】
環Zは、窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を含む芳香族複素環を表す。環Zは、ヘテロ原子である窒素原子、酸素原子、および硫黄原子のうちの少なくとも一つの原子を環原子として含む芳香族複素環であれば特に限定されない。環Zは1種類、2種類、または3種類のヘテロ原子を含む。また、環Zは単環構造であっても、縮合環構造であってもよい。
【0018】
典型的には環Zを構成するπ電子数は4n+2(nは正の整数である)であるが、π電子数は6個、10個または14個であることが好ましい。環Zはヘテロ原子として少なくとも窒素原子を含み、環Zを構成するπ電子数が6個または10個であることがより好ましい。環Zが上記のような構成を有することにより、含フッ素ピラゾール化合物の極性や平面性が制御されることで、動態が改善され、より有効な生物活性を付与することができる。
【0019】
より具体的には、環Zから構成される基として、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ナフチリジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、トリアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、フロピリジル基、フロピリミジニル基、チエノピリジル基、チエノピリジニル基、ピロロピロリル基、クロロトリフルオロメチルピリジル基等を挙げることができる。
これらの基の中でも、環Zから構成される基は、2-ベンゾチアゾリル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、3-クロロ-5-トリフルオロメチル-2-ピリジル基であることが好ましい。環Zから構成される基中の環原子にはさらに置換基が結合していても、置換基が結合していなくてもよい。環原子に結合する置換基としては例えば、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-CnF2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA1、-SOmA1(mは0~3の整数である)、-NA1A2、-COOA1または-CONA1A2(A1、A2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す)を挙げることができる。
【0020】
(含フッ素ピラゾール化合物の製造方法)
一実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法は、
(a)下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程
を有する。
【化5】
(上記一般式(1)~(3)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
環Zは窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を含む芳香族複素環を表す。)
好ましくは、上記(a)の含フッ素ピラゾール化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われるのが好ましい。上記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、上記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で反応させるのが好ましい。フッ化物イオン捕捉剤はフッ素イオンを捕捉する機能を有する物質であれば特に限定されず、フッ化物イオン捕捉剤としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、テトラメチルアンモニウム、トリフルオロ酢酸、ヘプタフルオロ酪酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、N,N-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホニルイミド、テトラフェニルホウ酸、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩を挙げることができる。フッ化物イオン捕捉剤に由来するカチオンは、反応中に一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体から遊離したフッ素イオンを捕捉し、有機溶媒への溶解性の低い塩として析出させることで反応が促進され、高い収率で、上記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得ることができるものと考えられる。
【0021】
上記工程(a)の上記一般式(1)および(3)において、環Zは単環構造であっても、縮合環構造であってもよい。環Zを構成するπ電子数が6個、10個または14個であることが好ましく、環Zはヘテロ原子として少なくとも窒素原子を含み、環Zを構成するπ電子数が6個または10個であることがより好ましい。また、上記一般式(1)および(2)におけるRは炭素数1~10のアルキル基を表すことが好ましい。環Zから構成される基中の環原子にはさらに置換基が結合していても、置換基が結合していなくてもよい。環原子に結合する置換基としては例えば、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-CnF2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA1、-SOmA1(mは0~3の整数である)、-NA1A2、-COOA1または-CONA1A2(A1、A2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す)を挙げることができる。
【0022】
一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)で表される化合物との、上記(a)の反応は、下記反応式(A)として表される。
【化6】
【0023】
上記反応式(A)において、一般式(3)の化合物はそれぞれ、塩の形態であってもよい。塩の形態となる場合、一般式(3)の化合物のアミジノ基を構成するアミノ部分(-NH2)およびイミノ部分(=NH)のうち少なくとも一方の部分が、カチオン化され(-NH3
+)および(=NH2
+)となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F-、Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0024】
一実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法では例えば、ハロゲン化水素捕捉剤の存在下で上記(a)の反応を一段階で行うことができる。このため、簡易的に上記一般式(1)の含フッ素ピラゾール化合物を得ることができる。なお、上記(a)の反応では、フルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)の化合物のアミジノ基との間で環状のピラゾール構造が形成される。該ピラゾール構造の1位には、一般式(3)の化合物の環構造Zに由来する基が位置する。また、該ピラゾール構造の3位、4位および5位にはそれぞれ、フルオロイソブチレン誘導体に由来する-OR、CF3、およびFが位置する。
【0025】
ハロゲン化水素捕捉剤は、上記(A)の反応式において一般式(3)の化合物中のアミジノ基に由来する水素原子と、一般式(2)のフルオロイソブチレン誘導体に由来するフッ素原子とから形成されるフッ化水素(HF)を捕捉する機能を有する物質である。ハロゲン化水素捕捉剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムや、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、メチルトリアザビシクロデセン、ジアザビシクロオクタン、ホスファゼン塩基といった有機窒素誘導体を用いることができる。
【0026】
上記(a)の反応時の反応温度は、0~100℃が好ましく、5~50℃がより好ましく、10~20℃がさらに好ましい。上記(a)の反応時の反応時間は、1~48時間が好ましく、2~36時間がより好ましく、4~24時間がさらに好ましい。
【0027】
上記(a)の反応で使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルエチレン尿素、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、スルホランといった非プロトン性極性溶媒、または、水といったプロトン性極性溶媒とジクロロメタン、トルエン、ジエチルエーテルといった非水溶性溶媒との二相系溶媒などを挙げることができる。また、上記(a)の反応の触媒として、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドといった第四級アンモニウムハライド、第四級ホスホニウムハライド、クラウンエーテル類などを使用することができる。
【0028】
他の実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法は、
(b)下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得る工程
を有する。
【化7】
(上記一般式(1)、(3)および(4)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
Xはハロゲン原子、-OA
1、-SO
mA
1(mは0~3の整数である)、または-NA
1A
2を表し、
A
1、A
2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表し、
環Zは窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも一種のヘテロ原子を含む芳香族複素環を表す。)
好ましくは、上記(b)の含フッ素ピラゾール化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われるのが好ましい。上記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、上記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で反応させるのが好ましい。フッ化物イオン捕捉剤はフッ素イオンを捕捉する機能を有する物質であれば特に限定されず、フッ化物イオン捕捉剤としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、テトラメチルアンモニウム、トリフルオロ酢酸、ヘプタフルオロ酪酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、N,N-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホニルイミド、テトラフェニルホウ酸、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩を挙げることができる。フッ化物イオン捕捉剤に由来するカチオンは、反応中に一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体から遊離したフッ素イオンを捕捉し、有機溶媒への溶解性の低い塩として析出させることで反応が促進され、高い収率で、上記一般式(1)で表される含フッ素ピラゾール化合物を得ることができるものと考えられる。
【0029】
上記工程(b)の一般式(1)および(3)において、環Zは単環構造であっても、縮合環構造であってもよい。環Zを構成するπ電子数が6個、10個または14個であることが好ましく、環Zはヘテロ原子として少なくとも窒素原子を含み、環Zを構成するπ電子数が6個または10個であることがより好ましい。また、上記一般式(1)および(4)におけるRは炭素数1~10のアルキル基を表すことが好ましい。環Zから構成される基中の環原子にはさらに置換基が結合していても、置換基が結合していなくてもよい。環原子に結合する置換基としては例えば、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-CnF2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA1、-SOmA1(mは0~3の整数である)、-NA1A2、-COOA1または-CONA1A2(A1、A2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す)を挙げることができる。
【0030】
一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、一般式(3)で表される化合物との、上記(b)の反応は、下記反応式(B)として表される。
【化8】
【0031】
上記反応式(B)において、一般式(3)の化合物はそれぞれ、塩の形態であってもよい。塩の形態となる場合、一般式(3)の化合物のアミジノ基を構成するアミノ部分(-NH2)およびイミノ部分(=NH)のうち少なくとも一方の部分が、カチオン化され(-NH3
+)および(=NH2
+)となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F-、Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0032】
Xであるハロゲン原子としては、F、Cl、Br、Iを挙げることができる。Xである-OA1、-SOmA1(mは0~3の整数である)に含まれるA1は水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。Xである-NA1A2に含まれるA1、A2はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。A1、A2が炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。
【0033】
他の実施形態の含フッ素ピラゾール化合物の製造方法では例えば、上記(B)の反応を一段階で行うことができる。このため、簡易的に上記一般式(1)の含フッ素ピラゾール化合物を得ることができる。なお、上記(b)の反応では、フルオロイソブタン誘導体(4)と、一般式(3)の化合物のアミジノ基との間で環状のピラゾール構造が形成される。該ピラゾール構造の1位には、一般式(3)の化合物の環構造Zに由来する基が位置する。また、該ピラゾール構造の3位、4位および5位にはそれぞれ、フルオロイソブタン誘導体に由来する-OR、CF3、およびFが位置する。
【0034】
上記(b)の反応時の反応温度は、0~100℃が好ましく、5~50℃がより好ましく、10~20℃がさらに好ましい。上記(b)の反応時の反応時間は、1~48時間が好ましく、2~36時間がより好ましく、4~24時間がさらに好ましい。上記(b)の反応では、上記(a)と同様のハロゲン化水素捕捉剤を使用できる。
【0035】
上記(b)の反応で使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルエチレン尿素、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、スルホランといった非プロトン性極性溶媒、または、水といったプロトン性極性溶媒とジクロロメタン、トルエン、ジエチルエーテルといった非水溶性溶媒との二相系溶媒などを挙げることができる。また、上記(b)の反応の触媒として、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドといった第四級アンモニウムハライド、第四級ホスホニウムハライド、クラウンエーテル類などを使用することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例】
【0037】
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ベンゾチアゾリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
氷水冷下、THF(テトラヒドロフラン)100gに、2-ヒドラジノベンズチアゾール5g(30mmol)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム29g(91mmol)、および1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン8.3g(39mmol)を加えてTHF溶液1を得た。続いて、上記THF溶液1中に、内温が10℃を越えないようにして、ターシャリーブチルイミノトリピロリジノホスホラン37g(120mmol)のTHF溶液2を60g、滴下した。THF溶液1と2の混合溶液を室温まで昇温したまま約72時間、保持することで5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ベンゾチアゾリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールを製造した。その後、ヘキサン-酢酸エチル=7:3(体積比)の混合溶媒を用いたシリカゲルのカラム精製により、下記式(C)で表される5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ベンゾチアゾリル)-4-トリフルオロメチルピラゾール(分子量317.26)を950mg、単離した。5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ベンゾチアゾリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの単離収率は10%であった。
【0039】
【0040】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):317([M]+)
1H-NMR(300MHz、CDCl3) δppm:7.97(d,1H)、7.84(d,1H)、7.51(dt,1H)、7.40(dt,1H)、4.07(s,3H)
19F-NMR(300MHz、C6F6) δppm:-58.9(d,3F)、-114.2(dd,1F)
【0041】
(実施例2)
5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ピリジル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
氷水冷下、THF(テトラヒドロフラン)100gに、2-ヒドラジノピリジン5g(46mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン13g(60mmol)を加えてTHF溶液1を得た。続いて、上記THF溶液1中に、内温が10℃を越えないようにして、ジアザビシクロウンデセン27g(180mmol)のTHF溶液2を40g、滴下した。THF溶液1と2の混合溶液を室温まで昇温したまま約72時間、保持することで5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ピリジル)-4-トリフルオロメチルピラゾールを製造した。その後、ヘキサン-酢酸エチル=7:3(体積比)の混合溶媒を用いたシリカゲルのカラム精製により、下記式(D)で表される5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ピリジル)-4-トリフルオロメチルピラゾール(分子量261.18)を360mg、単離した。5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ピリジル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの単離収率は3%であった。
【0042】
【0043】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):261([M]+)
1H-NMR(300MHz、CDCl3) δppm:8.32(d,1H)、7.67(dt,1H)、7.50(d,1H)、7.09(m,1H)、3.86(s,3H)
19F-NMR(300MHz、C6F6) δppm:-58.1(d,3F)、-115.7(dd,1F)
【0044】
(実施例3)
5-フルオロ-3-メトキシ-1-(3-ピリジル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
氷水冷下、THF(テトラヒドロフラン)100gに、3-ヒドラジノピリジン塩酸塩5g(34mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン9.5g(45mmol)を加えてTHF溶液1を得た。続いて、上記THF溶液1中に、内温が10℃を越えないようにして、ジアザビシクロウンデセン27g(180mmol)のTHF溶液2を40g、滴下した。THF溶液1と2の混合溶液を室温まで昇温したまま約72時間、保持することで5-フルオロ-3-メトキシ-1-(3-ピリジル)-4-トリフルオロメチルピラゾールを製造した。その後、ヘキサン-酢酸エチル=7:3(体積比)の混合溶媒を用いたシリカゲルのカラム精製により、下記式(E)で表される5-フルオロ-3-メトキシ-1-(3-ピリジル)-4-トリフルオロメチルピラゾール(分子量261.18)を621mg、単離した。5-フルオロ-3-メトキシ-1-(3-ピリジル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの単離収率は7%であった。
【0045】
【0046】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):261([M]+)
1H-NMR(300MHz、CDCl3) δppm:8.92(s,1H)、8.61(d,1H)、7.93(m,1H)、7.44(m,1H)、4.02(s,3H)
19F-NMR(300MHz、C6F6) δppm:-58.5(d,3F)、-119.7(dd,1F)
【0047】
(実施例4)
実施例1の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパンを使用した、5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ベンゾチアゾリル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
氷水冷下、THF(テトラヒドロフラン)100gに、2-ヒドラジノベンズチアゾール5g(30mmol)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム39g(120mmol)、および1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパン9.1g(39mmol)を加えてTHF溶液1を得た。続いて、上記THF溶液1中に、内温が10℃を越えないようにして、ターシャリーブチルイミノトリピロリジノホスホラン49g(160mmol)のTHF溶液2を80g、滴下した。THF溶液1と2の混合溶液を室温まで昇温したまま約72時間、保持した。得られた化合物の分析結果は、実施例1の生成物と同様であった。
【0048】
(実施例5)
実施例2の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパンを使用した、5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ピリジル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
氷水冷下、THF(テトラヒドロフラン)100gに、2-ヒドラジノピリジン5g(46mmol)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパン14g(60mmol)を加えてTHF溶液1を得た。続いて、上記THF溶液1中に、内温が10℃を越えないようにして、ジアザビシクロウンデセン36g(240mmol)のTHF溶液2を80g、滴下した。THF溶液1と2の混合溶液を室温まで昇温したまま約72時間、保持した。得られた化合物の分析結果は、実施例2の生成物と同様であった。
【0049】
(実施例6)
実施例3の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパンを使用した、5-フルオロ-3-メトキシ-1-(3-ピリジル)-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
氷水冷下、THF(テトラヒドロフラン)100gに、3-ヒドラジノピリジン塩酸塩5g(34mmol)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-プロパン10g(45mmol)を加えてTHF溶液1を得た。続いて、上記THF溶液1中に、内温が10℃を越えないようにして、ジアザビシクロウンデセン34g(220mmol)のTHF溶液2を60g、滴下した。THF溶液1と2の混合溶液を室温まで昇温したまま約72時間、保持した。得られた化合物の分析結果は、実施例3の生成物と同様であった。
【0050】
(実施例7)
1-(3-クロロ-5-トリフルオロメチル-2-ピリジル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの製造
テトラヒドロフラン15mlに3-クロロ-2-ヒドラジニル-5-(トリフルオロメチル)ピリジン0.5g(2.4mmol)を溶解させた溶液中に、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド2.3g(7.2mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン0.6g(2.8mmol)と1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン1.1g(7.2mmol)を加え室温で17.6時間攪拌して反応液を得た。この後、反応液をカラム精製し、下記式(F)で示される1-(3-クロロ-5-トリフルオロメチル-2-ピリジル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾール(分子量:363.62)を0.1g(0.2mmol)得た。1-(3-クロロ-5-トリフルオロメチル-2-ピリジル)-5-フルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルピラゾールの単離収率は28.0%であった。
【化12】
【0051】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):363.6([M]+)
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δppm:8.78(dd,J=2.2,1.1Hz,1H),8.20(d,J=1.8Hz,1H),4.01(s,3H)
【0052】
(試験例)
・イネいもち病に対する評価試験
実施例2で作製した5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ピリジル)-4-トリフルオロメチルピラゾールをアセトンに溶かし、100,000ppmの5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ピリジル)-4-トリフルオロメチルピラゾールを含有するアセトン溶液を調製した。このアセトン溶液1mlに滅菌水を加えて50mlとし、2000ppm被験液を調製した。2000ppm被験液を、別途作製したオートミール培地に1000μl滴下処理した後、風乾させた。続いて、8mmのイネいもち病ディスクを、菌叢がオートミール培地の処理面に接するように設置した。その後、オートミール培地を25℃の恒温室に7日間静置した後、菌糸の伸長長さを調査した。下記式に従って算出した防除価は80であり、実施例2で作製した5-フルオロ-3-メトキシ-1-(2-ピリジル)-4-トリフルオロメチルピラゾールは優れた殺菌活性を有することを確認できた。
防除価={(無処理の菌糸伸長長さ平均-処理済の菌糸伸長長さ平均)/無処理の菌糸伸長長さ平均 }×100。
なお、上記式において「無処理」とは、被験液として滅菌水のみを培地に滴下処理したことを表す。
「処理済」とは、設定濃度に希釈調整処理を行った被験液を培地に滴下処理したことを表す。