(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】粘着シート、繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイス
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240219BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20240219BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240219BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240219BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240219BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240219BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/06
B32B27/00 M
B32B7/022
B32B7/027
(21)【出願番号】P 2022000272
(22)【出願日】2022-01-04
(62)【分割の表示】P 2017243305の分割
【原出願日】2017-12-19
【審査請求日】2022-01-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小▲鯖▼ 翔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆行
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108498(JP,A)
【文献】国際公開第2016/196541(WO,A1)
【文献】特開2017-119795(JP,A)
【文献】特表2018-526470(JP,A)
【文献】特開2017-95657(JP,A)
【文献】特開2016-80773(JP,A)
【文献】特開2017-65217(JP,A)
【文献】特開2017-95653(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0122600(US,A1)
【文献】国際公開第2022/050009(WO,A1)
【文献】特表2018-524425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
H05B 33/00~ 45/60
H10K 50/00- 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層を構成する粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物を架橋してなる粘着剤であり、
前記粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合が、72%以下であり、
前記粘着剤層を、厚さ100μm、ヤング率4.5GPaの2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムで挟持してなる積層体を、80℃の雰囲気下、屈曲径3mmφにて30000回屈曲したときに、前記粘着剤層から染み出しが実質的に発生しない
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層を構成する粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物を架橋してなる粘着剤であり、
前記粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合が、42%以上、72%以下であり、
前記粘着剤層を、厚さ100μm、ヤング率4.5GPaの2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムで挟持してなる積層体を、23℃の雰囲気下、屈曲径3mmφにて30000回屈曲したときに、前記粘着剤層から染み出しが発生しない
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、40%以上、90%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層を構成する粘着剤の23℃における貯蔵弾性率G’が、0.005MPa以上、0.15MPa以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が、50万以上、200万以下であることを特徴とする請求項
1~4のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着シートのソーダライムガラスに対する粘着力が、3N/25mm以上、100N/25mm以下であることを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記粘着シートが、2枚の剥離シートを備えており、
前記粘着剤層が、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されている
ことを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項8】
繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材および他の屈曲性部材と、
前記一の屈曲性部材と前記他の屈曲性部材とを互いに貼合する粘着剤層と
を備えた繰り返し屈曲積層部材であって、
前記粘着剤層が、請求項1~
7のいずれか一項に記載の粘着シートの粘着剤層である
ことを特徴とする繰り返し屈曲積層部材。
【請求項9】
前記一の屈曲性部材および前記他の屈曲性部材の少なくとも一方が、表示素子であることを特徴とする請求項
8に記載の繰り返し屈曲積層部材。
【請求項10】
請求項
8または
9に記載の繰り返し屈曲積層部材を備えたことを特徴とする繰り返し屈曲デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰り返し屈曲されるデバイス用の粘着剤および粘着シート、ならびに繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デバイスの一種である、電子機器の表示体(ディスプレイ)として、屈曲可能なディスプレイが提案されている。かかる屈曲性ディスプレイは、例えば、湾曲させて円柱状の柱に設置するような据え置き型ディスプレイ用として、あるいは折り曲げたり丸めたりして持ち運べるモバイルディスプレイ用として、幅広い用途が期待されている。
【0003】
屈曲性ディスプレイの種類としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、基板としてプラスチックフィルムを用いた液晶ディスプレイ等が挙げられる。
【0004】
上記のような屈曲性ディスプレイにおいては、当該屈曲性ディスプレイを構成する一の屈曲可能な部材(屈曲性部材)と、他の屈曲性部材とを粘着シートの粘着剤層によって貼合することが一般的であると考えられる。ここで、屈曲不可能な従来のディスプレイ用の粘着シートとしては、例えば、特許文献1及び2に示されるものが知られている。
【0005】
屈曲性ディスプレイは、1回だけ曲面成形するのではなく、繰り返し屈曲させる(折り曲げる)場合がある。このような用途の繰り返し屈曲デバイスに従来の粘着シートを使用すると、粘着剤層と被着体との界面に浮きや剥がれが発生するという問題が生じる。
【0006】
特許文献3は、繰り返し屈曲させても粘着剤層の浮きや剥がれの発生を抑制することを課題とした積層体を開示しているが、その効果は必ずしも十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-174907号公報
【文献】特開2016-774号公報
【文献】特開2017-65217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、繰り返し屈曲デバイスに適用して繰り返し屈曲させた場合でも、粘着剤層と被着体との界面に浮きや剥がれが発生することを抑制することのできる繰り返し屈曲デバイス用粘着剤および粘着シート、ならびに繰り返し屈曲させた場合でも、粘着剤層と被着体との界面に浮きや剥がれが発生することを抑制することのできる繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための繰り返し屈曲デバイス用粘着剤であって、前記粘着剤からなる粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力に対する、前記1000%変位時から60秒後のせん断応力の割合(せん断応力残存率)が、72%以下であり、ゲル分率が、40%以上、90%以下であることを特徴とする繰り返し屈曲デバイス用粘着剤を提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)に係る粘着剤は、せん断応力残存率が上記のように小さいことにより、せん断応力緩和性に優れる。したがって、一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とそれらを貼合する、上記粘着剤からなる粘着剤層とからなる積層体について、屈曲状態と非屈曲状態とを繰り返しても、上記粘着剤層は両方の屈曲性部材に追従し易い。また、上記発明(発明1)に係る粘着剤は、上記のように比較的高いゲル分率を有することにより、繰り返し屈曲に耐え得ることのできる好適な凝集力を発揮する。それらの結果、上記積層体を繰り返し屈曲させた場合に、粘着剤層と屈曲性部材との界面に浮きや剥がれが発生することが抑制される。
【0011】
上記発明(発明1)においては、23℃における貯蔵弾性率G’が、0.005MPa以上、0.15MPa以下であることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)においては、前記粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物を架橋してなる粘着剤であることが好ましい(発明3)。
【0013】
第2に本発明は、繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、前記粘着剤層が、前記繰り返し屈曲デバイス用粘着剤(発明1~3)からなることを特徴とする粘着シートを提供する(発明4)。
【0014】
上記発明(発明4)においては、前記粘着シートのソーダライムガラスに対する粘着力が、3N/25mm以上、100N/25mm以下であることが好ましい(発明5)。
【0015】
上記発明(発明4,5)においては、前記粘着シートが、2枚の剥離シートを備えており、前記粘着剤層が、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されていることが好ましい(発明6)。
【0016】
第3に本発明は、繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材および他の屈曲性部材と、前記一の屈曲性部材と前記他の屈曲性部材とを互いに貼合する粘着剤層とを備えた繰り返し屈曲積層部材であって、前記粘着剤層が、前記粘着シート(発明4~6)の粘着剤層であることを特徴とする繰り返し屈曲積層部材を提供する(発明7)。
【0017】
上記発明(発明7)においては、前記一の屈曲性部材および前記他の屈曲性部材の少なくとも一方が、表示素子であることが好ましい(発明8)。
【0018】
第4に本発明は、前記繰り返し屈曲積層部材(発明7,8)を備えたことを特徴とする繰り返し屈曲デバイスを提供する(発明9)。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る返し屈曲デバイス用粘着剤および粘着シートは、繰り返し屈曲デバイスに適用して繰り返し屈曲させた場合でも、粘着剤層と被着体との界面に浮きや剥がれが発生することを抑制することができる。また、本発明に係る繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイスは、繰り返し屈曲させた場合でも、粘着剤層と被着体との界面に浮きや剥がれが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る繰り返し屈曲積層部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔繰り返し屈曲デバイス用粘着剤〕
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイス用粘着剤(以下、単に「粘着剤」という場合がある。)は、繰り返し屈曲デバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤である。繰り返し屈曲デバイスおよび屈曲性部材については、後述する。
【0022】
本実施形態に係る粘着剤は、当該粘着剤からなる粘着剤層の一方の面と他方の面とを互いに反対方向に1000%変位させたときの最大せん断応力(σmax)に対する、当該1000%変位時から60秒後のせん断応力(σ60)の割合((σ60/σmax)×100)が72%以下であり、ゲル分率が40%以上、90%以下であるものである。ここで、1000%変位とは、粘着剤の厚みに対して10倍変位させたときの変位量のことをいう。なお、本明細書において、上記せん断応力の割合を「せん断応力残存率」という場合がある。せん断応力およびゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0023】
本実施形態に係る粘着剤は、せん断応力残存率が上記のように小さいことにより、せん断応力緩和性に優れているということができる。一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とそれらを貼合する粘着剤層とからなる積層体を屈曲させた場合、屈曲の外側に位置する屈曲性部材と屈曲の内側に位置する屈曲性部材とでは、屈曲部の曲率が異なるため、互いにずれた位置関係になる。そのため、それらを貼合する粘着剤層には、せん断応力が発生する。上記の通り、本実施形態に係る粘着剤は、せん断応力緩和性に優れているため、屈曲状態と非屈曲状態とを繰り返しても粘着剤層は両方の屈曲性部材に追従し易い。また、本実施形態に係る粘着剤は、上記のように比較的高いゲル分率を有することにより、繰り返し屈曲に耐え得ることのできる好適な凝集力を発揮する。それらの結果、上記積層体を繰り返し屈曲させた場合に、粘着剤層と屈曲性部材との界面に浮きや剥がれが発生することが抑制される。このように、本実施形態に係る粘着剤は、繰り返し屈曲デバイスに適用して繰り返し屈曲させた場合でも、粘着剤層と被着体との界面に浮きや剥がれが発生することを抑制することができる。なお、上記繰り返し屈曲の回数としては、一例として3万回が例示される。
【0024】
浮き・剥がれ抑制の観点から、上記せん断応力残存率は、72%以下であることが好ましく、特に66%以下であることが好ましく、さらには64%以下であることが好ましい。なお、せん断応力残存率の下限値は特に限定されないが、通常は10%以上であることが好ましく、特に30%以上であることが好ましく、さらには42%以上であることが好ましい。
【0025】
本実施形態に係る粘着剤のゲル分率が40%未満であると、粘着剤層の凝集力不足により、繰り返し屈曲の際、屈曲端部から粘着剤または粘着剤を構成する成分の染み出しが発生し易い。また、本実施形態に係る粘着剤のゲル分率が90%を超えると、粘着剤層の柔軟性が低下し、繰り返し屈曲によって、粘着剤層と被着体との界面に浮きや剥がれが発生し易くなる。かかる観点から、本実施形態に係る粘着剤のゲル分率は、下限値として、40%以上であり、特に44%以上であることが好ましく、さらには48%以上であることが好ましい。また、当該ゲル分率は、上限値として、90%以下であり、80%以下であることが好ましく、特に72%以下であることが好ましい。
【0026】
本実施形態に係る粘着剤の種類は、上記の物性が満たされれば特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、前述した物性を満たし易く、粘着物性、光学特性等にも優れるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0027】
本実施形態に係る粘着剤は、特に、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋してなる粘着剤であることが好ましい。かかる粘着剤であれば、前述した物性を満たし易く、また、良好な粘着力および所定の凝集力が得られるため、耐久性にも優れたものとなる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0028】
(1)粘着性組成物Pの成分
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、分子内に反応性官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)とを含有することが好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することで、好ましい粘着性を発現することができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよいし、環状構造を有するものであってもよい。
【0030】
アルキル基の炭素数が2~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が-40℃以下であるもの(以下「低Tgアルキルアクリレート」という場合がある。)が好ましい。かかる低Tgアルキルアクリレートを構成モノマー単位として含有することにより、得られる粘着剤の柔軟性を向上させることができる。
【0031】
低Tgアルキルアクリレートとしては、例えば、アクリル酸n-ブチル(Tg-55℃)、アクリル酸n-オクチル(Tg-65℃)、アクリル酸イソオクチル(Tg-58℃)、アクリル酸2-エチルヘキシル(Tg-70℃)、アクリル酸イソノニル(Tg-58℃)、アクリル酸イソデシル(Tg-60℃)、メタクリル酸イソデシル(Tg-41℃)、メタクリル酸n-ラウリル(Tg-65℃)、アクリル酸トリデシル(Tg-55℃)、メタクリル酸トリデシル(Tg-40℃)等が好ましく挙げられる。中でも、より効果的に柔軟性を向上させる観点から、低Tgアルキルアクリレートとして、ホモポリマーのTgが、-45℃以下であるものであることがより好ましく、-50℃以下であるものであることが特に好ましい。具体的には、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、低Tgアルキルアクリレートを、下限値として30質量%以上含有することが好ましく、特に40質量%以上含有することが好ましく、さらには50質量%以上含有することが好ましい。上記低Tgアルキルアクリレートを上記の量で含有することにより、得られる粘着剤の柔軟性を良好に向上させることができ、せん断応力残存率をより低下させることができる。
【0033】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として上記低Tgアルキルアクリレートを、上限値として97質量%以下含有することが好ましく、特に92質量%以下含有することが好ましく、さらには87質量%以下含有することが好ましい。上記低Tgアルキルアクリレートを上記の量で含有することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に他のモノマー成分(特に反応性官能基含有モノマー)を好適な量導入することができる。
【0034】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が0℃を超えるモノマー(以下「高Tgアルキルアクリレート」という場合がある。)を併用することも好ましい。これにより、得られる粘着剤に適度な凝集性を付与し、耐久性を向上させることができる。
【0035】
上記高Tgアルキルアクリレートとしては、例えば、アクリル酸メチル(Tg10℃)、メタクリル酸メチル(Tg105℃)、メタクリル酸エチル(Tg65℃)、メタクリル酸n-ブチル(Tg20℃)、メタクリル酸イソブチル(Tg48℃)、メタクリル酸t-ブチル(Tg107℃)、アクリル酸n-ステアリル(Tg30℃)、メタクリル酸n-ステアリル(Tg38℃)、アクリル酸シクロヘキシル(Tg15℃)、メタクリル酸シクロヘキシル(Tg66℃)、アクリル酸フェノキシエチル(Tg5℃)、メタクリル酸フェノキシエチル(Tg54℃)、メタクリル酸ベンジル(Tg54℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg94℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg180℃)、アクリル酸アダマンチル(Tg115℃)、メタクリル酸アダマンチル(Tg141℃)、アクリル酸(Tg103℃)等のアクリル系モノマー、酢酸ビニル(Tg32℃)、スチレン(Tg80℃)等が挙げられる。上記の中でも、ガラス転移温度が高いながら粘着剤に適度な凝集性および粘着性を付与することができる観点から、特にアクリル酸イソボルニルが好ましい。なお、上記高Tgアルキルアクリレートには、後述する窒素原子含有モノマーは含まない。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として上記高Tgアルキルアクリレートを含有する場合、当該上記高Tgアルキルアクリレートを1質量%以上含有することが好ましく、特に3質量%以上含有することが好ましく、さらには5質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、当該上記高Tgアルキルアクリレートを30質量%以下含有することが好ましく、特に20質量%以下含有することが好ましく、さらには12質量%以下含有することが好ましい。低Tgアルキルアクリレートとともに、高Tgアルキルアクリレートを上記の量で併用することにより、得られる粘着剤は、好適な凝集性および柔軟性を発現し、所望の耐久性およびせん断応力残存率を満たし易くなる。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含有することで、当該反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基を介して、後述する架橋剤(B)と反応し、これにより架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着剤が得られる。当該粘着剤は、前述したゲル分率を満たし易いものとなる。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として含有する反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの反応性官能基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記反応性官能基含有モノマーの中でも、水酸基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーが好ましく、特に、水酸基含有モノマーを単独で使用するか、水酸基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーを併用することが好ましい。水酸基含有モノマーは、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の柔軟性を高く維持し易く、カルボキシ基含有モノマーは、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の粘着力を高くすることができる。
【0040】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の柔軟性の観点から、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の粘着力の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを、下限値として1質量%以上含有することが好ましく、特に3質量%以上含有することが好ましく、さらには5質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを、上限値として30質量%以下含有することが好ましく、特に25質量%以下含有することが好ましく、さらには20質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がモノマー単位として上記の量で反応性官能基含有モノマーを含有すると、架橋剤(B)との架橋反応により、得られる粘着剤の凝集力が適度なものとなり、前述したゲル分率を満たし易いものとなる。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを含まないことも好ましい。カルボキシ基は酸成分であるため、カルボキシ基含有モノマーを含有しないことにより、粘着剤の貼付対象に、酸により不具合が生じるもの、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)等の透明導電膜や、金属膜、金属メッシュなどが存在する場合にも、酸によるそれらの不具合(腐食、抵抗値変化等)を抑制することができる。
【0044】
ここで、「カルボキシ基含有モノマーを含まない」とは、カルボキシ基含有モノマーを実質的に含有しないことを意味し、カルボキシ基含有モノマーを全く含有しない他、カルボキシル基による透明導電膜や金属配線等の腐食が生じない程度にカルボキシ基含有モノマーを含有することを許容するものである。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下の量で含有することを許容するものである。
【0045】
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有することも好ましい。窒素原子含有モノマーを構成単位として重合体中に存在させることにより、粘着剤を凝集力の高いものとすることができる。特に、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上述した高Tgアルキルアクリレートと窒素原子含有モノマーとを併用することが好ましい。これにより、得られる粘着剤の凝集性を向上し、さらに耐久性を向上させることができる。
【0046】
上記窒素原子含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に適度な剛性を持たせる観点から、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が挙げられ、中でも、得られる粘着剤がより優れた粘着力および好適な凝集力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として窒素原子含有モノマーを含有する場合、当該窒素原子含有モノマーを0.5質量%以上含有することが好ましく、特に1質量%以上含有することが好ましく、さらには3質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、当該窒素原子含有モノマーを20質量%以下含有することが好ましく、特に15質量%以下含有することが好ましく、さらには10質量%以下含有することが好ましい。窒素原子含有モノマーの含有量が上記の範囲内にあると、得られる粘着剤が、凝集力が高く粘着力に優れたものとなる。特に、窒素原子含有モノマーを高Tgアルキルアクリレートと併用する場合に、窒素原子含有モノマーの含有量が上記の範囲内にあると、得られる粘着剤の凝集性がより好適なものとなり、前述したゲル分率を満たし易く、耐久性がより優れたものになる。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの前述した作用を阻害しないためにも、反応性官能基を含有しないモノマーが好ましい。かかるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0050】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の下限値は、20万以上であることが好ましく、特に40万以上であることが好ましく、さらには60万以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の下限値が上記であると、前述したゲル分率を満たし易く、粘着剤の耐久性がより優れたものとなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0051】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値は、200万以下であることが好ましく、特に150万以下であることが好ましく、さらには90万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値が上記であると、得られる粘着剤の柔軟性がより優れたものとなり、粘着剤のせん断応力残存率がより低下したものとなる。
【0052】
粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(1-2)架橋剤(B)
架橋剤(B)は、当該架橋剤(B)を含有する粘着性組成物Pの加熱等をトリガーとして、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋し、三次元網目構造を形成する。これにより、得られる粘着剤の凝集力が向上し、前述したゲル分率を満たし易く、粘着剤層が耐久性に優れたものとなる。
【0054】
上記架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、反応性官能基含有モノマーとの反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0056】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量の下限値は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.06質量部以上であることが好ましく、さらには0.12質量部以上であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量の下限値が上記の値であると、得られる粘着剤の凝集力が適度なものとなり、前述したゲル分率が満たされ易くなる。また、当該含有量の上限値は、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、特に3質量部以下であることが好ましく、さらには2質量部以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量の上限値が上記の値であると、得られる粘着剤は、好適な凝集性および柔軟性を発現し、所望の耐久性およびせん断応力残存率を満たし易くなる。
【0057】
さらに、粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量について、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部における、当該(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成するモノマー単位としての反応性官能基含有モノマーの質量に対する、架橋剤(B)の質量の比率は、0.001以上であることが好ましく、特に0.005以上であることが好ましく、さらには0.015以上であることが好ましい。また、当該比率は、0.12以下であることが好ましく、特に0.11以下であることが好ましく、さらには0.1以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤の架橋構造が適度なものとなり、前述したゲル分率が満たされ易くなる。
【0058】
(1-3)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0059】
粘着性組成物Pは、上記のシランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤層において、被着体である屈曲性部材との密着性が向上し、耐久性がより優れたものとなる。
【0060】
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
【0061】
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
粘着性組成物P中におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、1質量部以下であることが好ましく、特に0.5質量部以下であることが好ましく、さらには0.3質量部以下であることが好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤は、好適な粘着力を発揮し易くなり、被着体である屈曲性部材との密着性がより好ましいものとなる。
【0063】
(2)粘着性組成物Pの製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを混合するとともに、所望により添加剤を加えることで製造することができる。
【0064】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0065】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0066】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0067】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0068】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、ならびに所望により添加剤および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。
【0069】
なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0070】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0071】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0072】
(3)粘着剤の製造
本実施形態に係る粘着剤は、好ましくは粘着性組成物Pを架橋してなるものである。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0073】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。
【0074】
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
【0075】
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が十分に架橋されて架橋構造が形成され、粘着剤が得られる。かかる粘着剤は、前述したゲル分率を満たし易い、所定の凝集力を有するものとなる。
【0076】
(4)粘着剤の物性
本実施形態に係る粘着剤の23℃における貯蔵弾性率G’は、下限値として、0.005MPa以上であることが好ましく、特に0.01MPa以上であることが好ましく、さらには0.02MPa以上であることが好ましい。また、上記貯蔵弾性率G’の上限値は、0.15MPa以下であることが好ましく、特に0.10MPa以下であることが好ましく、さらには0.07MPa以下であることが好ましい。貯蔵弾性率G’が上記の範囲にあると、適度な凝集力および柔軟性を有する粘着剤となり易く、繰り返し屈曲デバイスを繰り返し屈曲させた場合に、粘着剤層と屈曲性部材との界面に浮きや剥がれが発生することがより効果的に抑制される。
【0077】
〔粘着シート〕
本実施形態に係る粘着シートは、繰り返し屈曲デバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤層を有し、当該粘着剤層が、前述した粘着剤からなるものである。
【0078】
本実施形態に係る粘着シートの一例としての具体的構成を
図1に示す。
図1に示すように、一実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0079】
(1)構成要素
(1-1)粘着剤層
粘着剤層11は、前述した実施形態に係る粘着剤から構成され、好ましくは、粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤から構成される。
【0080】
本実施形態に係る粘着シート1における粘着剤層11の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、下限値として3μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましく、さらには10μm以上であることが好ましい。粘着剤層11の厚さの下限値が上記であると、所望の粘着力を発揮し易く、繰り返し屈曲時における浮きや剥がれの発生を、より効果的に抑制することができる。また、粘着剤層11の厚さは、上限値として300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、特に100μm以下であることが好ましく、より薄い繰り返し屈曲デバイスを得ることができる観点から、さらには75μm以下であることが好ましい。粘着剤層11の厚さの上限値が上記であると、繰り返し屈曲による、粘着剤または粘着剤を構成する成分の粘着剤層からの染み出しを抑制することができる。なお、粘着剤層11は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0081】
(1-2)剥離シート
剥離シート12a,12bは、粘着シート1の使用時まで粘着剤層11を保護するものであり、粘着シート1(粘着剤層11)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1において、剥離シート12a,12bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0082】
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0083】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0084】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
【0085】
(2)物性
(2-1)ヘイズ値
本実施形態に係る粘着シート1の粘着剤層11のヘイズ値は、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、特に0.5%以下であることが好ましく、さらには0.3%以下であることが好ましい。粘着剤層11のヘイズ値が2%以下であると、透明性が非常に高く、光学用途(表示体用)として好適である。なお、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。
【0086】
(2-2)粘着力
本実施形態に係る粘着シート1のソーダライムガラスに対する粘着力は、下限値として3N/25mm以上であることが好ましく、特に9N/25mm以上であることが好ましく、さらには20N/25mm以上であることが好ましい。粘着シート1の粘着力の下限値が上記であると、繰り返し屈曲時における浮きや剥がれの発生を、より効果的に抑制することができる。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、通常は、100N/25mm以下であることが好ましく、75N/25mm以下であることがより好ましく、粘着シートの貼合ミスをした際、粘着シートの貼り直しを可能とするリワーク性の観点においては、50N/25mm以下であることが特に好ましい。なお、上記粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいい、具体的な試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0087】
(3)粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例として、上記粘着性組成物Pを使用した場合について説明する。一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0088】
粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12aを得る。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート12aと塗布層付きの剥離シート12bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1が得られる。この製造例によれば、粘着剤層11が比較的厚い場合であっても、安定して製造することが可能となる。
【0089】
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0090】
〔繰り返し屈曲積層部材〕
図2に示すように、本実施形態に係る繰り返し屈曲積層部材2は、第1の屈曲性部材21(一の屈曲性部材)と、第2の屈曲性部材22(他の屈曲性部材)と、それらの間に位置し、第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22を互いに貼合する粘着剤層11とを備えて構成される。
【0091】
上記繰り返し屈曲積層部材2における粘着剤層11は、前述した粘着シート1の粘着剤層11である。
【0092】
繰り返し屈曲積層部材2は、繰り返し屈曲デバイス自体であるか、または繰り返し屈曲デバイスの一部を構成する部材である。繰り返し屈曲デバイスは、繰り返しの屈曲(折り曲げを含む)が可能なディスプレイであることが好ましいが、これに限定されるものではない。かかる繰り返し屈曲デバイスとしては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、基板としてプラスチック基板(フィルム)を用いた液晶ディスプレイ、フォルダブルディスプレイ等が挙げられ、タッチパネルであってもよい。
【0093】
第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22は、繰り返しの屈曲(折り曲げを含む)が可能な部材であり、例えば、カバーフィルム、バリアフィルム、偏光フィルム、偏光子、位相差フィルム、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、電極フィルム、透明導電性フィルム、金属メッシュフィルム、フィルムセンサー、液晶ポリマーフィルム、発光ポリマーフィルム、フィルム状液晶モジュール、有機ELモジュール(有機ELフィルム)、電子ペーパーモジュール(フィルム状電子ペーパー)等が挙げられる。
【0094】
上記の中でも、第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22の少なくとも一方が、繰り返し屈曲可能な表示素子、具体的には、液晶ポリマーフィルム、発光ポリマーフィルム、フィルム状液晶モジュール、有機ELモジュール(有機ELフィルム)、または電子ペーパーモジュール(フィルム状電子ペーパー)であることが好ましい。
【0095】
第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22のヤング率は、それぞれ0.1~10GPaであることが好ましく、特に0.5~7GPaであることが好ましく、さらには1.0~5GPaであることが好ましい。第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22のヤング率がかかる範囲にあることで、各屈曲性部材について繰り返し屈曲させることが容易になる。
【0096】
第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22の厚さは、それぞれ10~3000μmであることが好ましく、特に25~1000μmであることが好ましく、さらには50~500μmであることが好ましい。第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22の厚さがかかる範囲にあることで、各屈曲性部材について繰り返し屈曲させることが容易になる。
【0097】
上記繰り返し屈曲積層部材2を製造するには、一例として、粘着シート1の一方の剥離シート12aを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11を、第1の屈曲性部材21の一方の面に貼合する。
【0098】
その後、粘着シート1の粘着剤層11から他方の剥離シート12bを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11と第2の屈曲性部材22とを貼合し、繰り返し屈曲積層部材2を得る。また、他の例として、第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22の貼合順序を入れ替えてもよい。
【0099】
〔繰り返し屈曲デバイス〕
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスは、上記の繰り返し屈曲積層部材2を備えたものであり、繰り返し屈曲積層部材2のみからなってもよいし、一または複数の繰り返し屈曲積層部材2と、他の屈曲性部材とを備えて構成されてもよい。一の繰り返し屈曲積層部材2と他の繰り返し屈曲積層部材2とを積層するとき、または繰り返し屈曲積層部材2と他の屈曲性部材とを積層するときには、前述した粘着シート1の粘着剤層11を介して積層することが好ましい。
【0100】
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスは、粘着剤層が前述した粘着剤からなるため、繰り返し屈曲させた場合(例えば3万回)において、粘着剤層11と屈曲性部材21,22との界面に浮きや剥がれが発生することが抑制される。
【0101】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0102】
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方または両方は省略されてもよく、また、剥離シート12aおよび/または12bの替わりに所望の屈曲性部材が積層されてもよい。
【実施例】
【0103】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0104】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル40質量部、アクリル酸n-ブチル45質量部、N-アクリロイルモルホリン5質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル5質量部およびアクリル酸5質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)70万であった。
【0105】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)1質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.28質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0106】
3.粘着シートの製造
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0107】
次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」)とを、当該軽剥離型剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、厚さ10μmの粘着剤層を有する粘着シート、すなわち、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:10μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
【0108】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
BA:アクリル酸n-ブチル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
IBXA:アクリル酸イソボルニル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
AA:アクリル酸
【0109】
〔実施例2~10,比較例1~3〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、架橋剤(B)の配合量、ならびに粘着剤層の厚さを表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0110】
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で作製した粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0111】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表2に示す。
【0112】
〔試験例2〕(貯蔵弾性率(G’)の測定)
実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層を複数層積層し、厚さ3mmの積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ3mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0113】
上記サンプルについて、JIS K7244-6に準拠し、粘弾性測定器(REOMETRIC社製,DYNAMIC ANALAYZER)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率(G’)(MPa)を測定した。結果を表2に示す。
測定周波数:1Hz
測定温度:23℃
【0114】
〔試験例3〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層について、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH-2000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0115】
〔試験例4〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合し、重剥離型剥離シート/粘着剤層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、100mm長に裁断した。
【0116】
23℃、50%RHの環境下にて、上記積層体から重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層をソーダライムガラス(川村久蔵商店社製,製品名「ソーダライムガラス」,厚さ:1.1μm)に貼付し、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で、PETフィルムと粘着剤層との積層体をソーダライムガラスから剥離したときの粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z 0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表2に示す。
【0117】
〔試験例5〕(せん断応力の測定)
実施例および比較例で調製した粘着性組成物の塗布溶液を使用して、粘着剤層の厚さを25μmとする以外、実施例1と同様にして、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:25μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。得られた粘着シートを、25mm×25mmの大きさに裁断した。上記粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、第1の引張部材としてのフロート板ガラス(30mm×100mm)の長手方向の一端部に貼付した。次いで、上記粘着シートから重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、第2の引張部材としてのフロート板ガラス(30mm×100mm)の長手方向の一端部に貼付した。このとき、第1の引張部材と第2の引張部材とが互いに反対方向に延在するように貼付した。そして、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で20分加圧し、その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置して、これをサンプルとした。
【0118】
引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を使用して、23℃、50%RHの環境下で、上記サンプルの面方向、第1の引張部材と第2の引張部材とを互いに反対方向に引張速度5mm/分で引っ張り、1000%変位させたときの最大せん断応力(σmax;kN)を測定するとともに、当該1000%変位時から60秒後のせん断応力(σ60;kN)を測定した。得られた結果から、最大せん断応力(σmax;kN)に対する、1000%変位時から60秒後のせん断応力(σ60;kN)の割合(せん断応力残存率)を、(σ60/σmax)×100の式から算出した。結果を表2に示す。
【0119】
〔試験例6〕(屈曲試験)
23℃、50%RHの環境下にて、実施例および比較例で作製した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:100μm,ヤング率:4.5GPa)の一方の面に貼合した。次いで、重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、別のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:100μm,ヤング率:4.5GPa)の一方の面に貼合した。そして、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。このようにして得たPETフィルム/粘着剤層/PETフィルムからなる積層体を、50mm幅、200mm長に裁断し、これをサンプルとした。
【0120】
得られたサンプルを、耐久試験機(ユアサシステム機器社製,製品名「面状体無負荷U字伸縮試験機」)を用いて、以下の条件で繰り返し屈曲させた。その後、粘着剤層と被着体との界面に浮き・剥がれがないか否か、また、粘着剤層から粘着剤の染み出しがないか否か、それぞれ目視により確認し、以下の基準により耐久性を評価した。結果を表2に示す。
【0121】
<試験条件>
屈曲径:3mmφ
屈曲回数:30000回
試験温度:23℃,80℃
<浮き・剥がれの評価基準>
◎…浮きおよび剥がれが発生しなかった。
〇…端部付近でわずかに浮きまたは剥がれが発生したが、実用上使用可能なレベルであった。
×…実用上使用できないレベルの浮きまたは剥がれが発生した。
<染み出しの評価基準>
◎…染み出しが発生しなかった。
〇…わずかに染み出しが発生したが、実用上使用可能なレベルであった。
×…実用上使用できないレベルの染み出しが発生した。
【0122】
【0123】
【0124】
表2から分かるように、実施例の粘着シートの粘着剤層は、2つの屈曲性部材を貼合して繰り返し屈曲させたときに、粘着剤層と屈曲性部材との界面に浮きや剥がれが発生することを抑制することができた。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、繰り返し屈曲デバイスを構成する一の屈曲性部材(例えば各種フィルム)と他の屈曲性部材(例えば表示素子)とを貼合するのに好適である。
【符号の説明】
【0126】
1…粘着シート
11…粘着剤層
12a,12b…剥離シート
2…繰り返し屈曲積層部材
21…第1の屈曲性部材
22…第2の屈曲性部材