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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】冷却塔
(51)【国際特許分類】
   F28F 25/06 20060101AFI20240219BHJP
   F28F 25/04 20060101ALI20240219BHJP
   F28C 1/04 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
F28F25/06 A
F28F25/04
F28C1/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022055087
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023147530
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】篠倉 大貴
(72)【発明者】
【氏名】江崎 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岡 裕一
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-043086(JP,A)
【文献】特開2015-194320(JP,A)
【文献】実開昭61-192198(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 25/06
F28F 25/04
F28C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を冷却する熱交換部と、
前記熱交換部に温水を供給する温水供給部と、
前記温水供給部から前記熱交換部へ供給される温水を中継する温水槽とを備え、
前記温水槽は、前記熱交換部の上方に備えられ、前記温水供給部から供給される温水の流れ方向に沿って複数の散水孔が底壁に設けられ、該散水孔を介して前記熱交換部の複数箇所に温水を散水可能に構成されており、
前記温水槽には前記底壁より上方に向けて筒状に延びる側壁を備えた管状部材が更に備えられ、
前記管状部材が、温水を流入させる流入孔を有し、
前記流れ方向の上流側に位置する前記散水孔の少なくとも一部に前記管状部材が備えられ、
前記管状部材の前記側壁には、前記底壁よりも高い位置に前記流入孔が設けられ、
前記管状部材が備えられた前記散水孔では、温水の水位が前記流入孔に到達するまで温水の散水が阻止され、
前記管状部材の前記側壁に設けられた前記流入孔が、前記流れ方向の下流側に向けて開口している、冷却塔。
【請求項2】
温水を冷却する熱交換部と、
前記熱交換部に温水を供給する温水供給部と、
前記温水供給部から前記熱交換部へ供給される温水を中継する温水槽とを備え、
前記温水槽は、前記熱交換部の上方に備えられ、前記温水供給部から供給される温水の流れ方向に沿って複数の散水孔が底壁に設けられ、該散水孔を介して前記熱交換部の複数箇所に温水を散水可能に構成されており、
前記温水槽には前記底壁より上方に向けて筒状に延びる側壁を備えた管状部材が更に備えられ、
前記管状部材が、温水を流入させる流入孔を有し、
前記管状部材には、前記底壁よりも高い位置に設けられた前記流入孔である第1流入孔と、前記第1流入孔よりも更に高い位置に設けられた第2流入孔とを含む複数の前記流入孔が備えられ、
前記管状部材の前記側壁に、前記第1流入孔が備えられている、冷却塔。
【請求項3】
前記管状部材の上端が開口しており、該開口が前記第2流入孔として備えられている、請求項2に記載の冷却塔。
【請求項4】
前記管状部材には、前記第1流入孔よりも高く且つ前記第2流入孔よりも低い位置に第3流入孔が更に備えられている、請求項2又は3に記載の冷却塔。
【請求項5】
前記管状部材の前記側壁に設けられた前記流入孔が、前記流れ方向の下流側に向けて開口している、請求項乃至4のいずれか1項に記載の冷却塔。
【請求項6】
前記底壁は、前記温水供給部から落下した温水を受ける温水落下領域を有し、
前記温水落下領域よりも外側に設けられた全ての前記散水孔に前記管状部材が備えられている、請求項1乃至5の何れか1項に記載の冷却塔。
【請求項7】
前記管状部材が、前記底壁に着脱自在に備えられている、請求項1乃至6の何れか1項に記載の冷却塔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却塔は、工場の設備、ビル等の空調設備等から排出される温水を冷却して循環使用するために使用されている。
【0003】
冷却塔は、通常、温水を冷却する熱交換部を備え、該熱交換部は、供給された温水を外気と接触させて気化させる充填材により構成されている。そして、冷却塔は、温水の冷却効率を高めるために、熱交換部に温水を十分に行きわたらせるための工夫がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の冷却塔は、熱交換部の上方に備えられた温水槽を有し、該温水槽の底壁には、供給される温水の流れ方向に沿って複数の散水孔が設けられ、該散水孔を介して熱交換部の複数箇所に温水を散水可能に構成されている。更に、特許文献1の冷却塔は、温水槽の底壁より上方に向けて筒状に延び且つ上端が開口した管状部材が、温水の流れ方向の下流側に位置する散水孔に備えられている(特許文献1の図5)。かかる冷却塔によれば、温水槽の水位が管状部材の高さよりも低い場合には、管状部材が備えられた散水孔からの温水の散水が阻止される。よって、温水の供給量が少ない場合において、温水槽の水位低下が抑制される。また、温水の供給量が多く、温水槽の水位が管状部材の高さよりも高くなるような場合には、管状部材の上端の開口を介して、管状部材が備えられた散水孔からも温水が散水される。
【0005】
この他、特許文献2に記載の冷却塔は、特許文献1と同様の上端のみが開口した管状部材として、第1管状部材と、該第1の管状部材よりも高い位置で開口した第2管状部材とを備えている。これによって、水位の変化に応じて、段階的に散水量を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6190306号公報
【文献】実開昭61-192198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の冷却塔は、管状部材が備えられていない上流側の散水孔から温水が優先的に排出されるため、下流側に位置する散水孔を有効に機能させるという点において改善の余地がある。
【0008】
また、特許文献1及び特許文献2に記載の管状部材は、上端の開口1つのみを有するものであり、且つ、上端の開口面は水平方向に広がるものであるため(垂直方向における広がりがないため)、水位の変化に応じて温水の管内への流入量を変化させる機能に乏しいものである。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、上記課題のいずれかを解決するものである。すなわち、本発明は、温水槽における温水の流れ方向上流側から下流側にわたって散水孔を有効に機能させることに優れ、又は、温水の供給量に応じて散水量を変化させることに優れる冷却塔を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る冷却塔は、
温水を冷却する熱交換部と、
前記熱交換部に温水を供給する温水供給部と、
前記温水供給部から前記熱交換部へ供給される温水を中継する温水槽とを備え、
前記温水槽は、前記熱交換部の上方に備えられ、前記温水供給部から供給される温水の流れ方向に沿って複数の散水孔が底壁に設けられ、該散水孔を介して前記熱交換部の複数箇所に温水を散水可能に構成されており、
前記温水槽には前記底壁より上方に向けて筒状に延びる側壁を備えた管状部材が更に備えられ、
前記管状部材が、温水を流入させる流入孔を有し、
前記流れ方向の上流側に位置する前記散水孔の少なくとも一部に前記管状部材が備えられ、
前記管状部材の前記側壁には、前記底壁よりも高い位置に前記流入孔が設けられ、
前記管状部材が備えられた前記散水孔では、温水の水位が前記流入孔に到達するまで温水の散水が阻止される。
【0011】
斯かる構成によれば、管状部材が備えられた上流側の散水孔では、温水の水位が流入孔に到達するまで温水の散水が阻止されるため、上流側での散水が阻止された分の温水が下流側に流れる。
また、流入孔が管状部材の側壁に設けられているため、流入孔の下端から上端の間で温水の流入量を徐々に変化させることができる。
よって、温水槽における温水の流れ方向上流側から下流側にわたって散水孔を有効に機能させることができ、且つ、温水の供給量に応じて散水量を変化させることができる。
【0012】
また、本発明に係る冷却塔は、
温水を冷却する熱交換部と、
前記熱交換部に温水を供給する温水供給部と、
前記温水供給部から前記熱交換部へ供給される温水を中継する温水槽とを備え、
前記温水槽は、前記熱交換部の上方に備えられ、前記温水供給部から供給される温水の流れ方向に沿って複数の散水孔が底壁に設けられ、該散水孔を介して前記熱交換部の複数箇所に温水を散水可能に構成されており、
前記温水槽には前記底壁より上方に向けて筒状に延びる側壁を備えた管状部材が更に備えられ、
前記管状部材が、温水を流入させる流入孔を有し、
前記管状部材には、前記底壁よりも高い位置に設けられた前記流入孔である第1流入孔と、前記第1流入孔よりも更に高い位置に設けられた第2流入孔とを含む複数の前記流入孔が備えられ、
前記管状部材の前記側壁に、前記第1流入孔が備えられている
【0013】
斯かる構成によれば、高さ方向において形成位置の異なる第1流入孔と第2流入孔とが管状部材に設けられ、さらに、第1流入孔が管状部材の側壁に備えられているため、温水の供給量に応じて散水量を変化させることに優れるものとなる。
【0014】
また、本発明に係る冷却塔は、好ましくは、前記管状部材の上端が開口しており、該開口が前記第2流入孔として備えられている。
【0015】
斯かる構成によれば、管状部材が上記のような第2流入孔を備えることによって、温水槽からの温水のオーバーフローを抑制することができる。
また、1つの管状部材が流入量調整用の第1流入孔とオーバーフロー対策用の第2流入孔とを備えているため、流入量調整用の管状部材とオーバーフロー対策用の管状部材とを別々に備えている態様と比較して、管状部材の設置数を減少させることができる。そして、この減少分、流入孔の高さに到達しない水位での有効な散水孔の数を増やすことができる。
【0016】
また、本発明に係る冷却塔は、好ましくは、前記管状部材には、前記第1流入孔よりも高く且つ前記第2流入孔よりも低い位置に第3流入孔が更に備えられている。
【0017】
斯かる構成によれば、管状部材が上記のような第3流入孔を備えることによって、水位の変化に応じた温水の管内への流入量を変化させ易くなる。すなわち、温水の供給量に応じて、散水量を調整し易くなる。
【0018】
また、本発明に係る冷却塔は、好ましくは、前記管状部材の前記側壁に設けられた前記流入孔が、前記流れ方向の下流側に向けて開口している。
【0019】
斯かる構成によれば、側壁の流入孔が流れ方向の下流側に向けて開口していることによって、温水が管状部材の周りを迂回するように流入孔に流入することとなるため、当該散水孔からの散水が阻止され易くなる。よって、このように流入が阻止された温水が、下流側に更に流れ易くなる。また、上流側から流れてくる温水が、側壁に当たることで拡散し、全体に行きわたり易くなる。
【0020】
また、本発明に係る冷却塔は、好ましくは、
前記底壁は、前記温水供給部から落下した温水を受ける温水落下領域を有し、
前記温水落下領域よりも外側に設けられた全ての前記散水孔に前記管状部材が備えられている。
【0021】
斯かる構成によれば、より多くの散水孔を有効に機能させることができる。具体的には、温水落下領域内に設けられた散水孔は、管状部材が設けられなくとも、当然に散水に有効に機能する。このことに加えて、前記温水落下領域よりも外側に設けられた全ての散水孔に管状部材が備えられていることによって、管状部材の第1流入孔までの高さ分、温水槽の水位が維持され易くなるため、底壁の端部にまで温水が行きわたり易くなる。そして、底壁の端部にまで温水が行きわたった状態では、更なる温水の供給によって、底壁の全域において水位が上昇するため、全ての管状部材に温水が流入し易くなる。よって、多くの散水孔を有効に機能させることができ、しかも、散水に有効な各散水孔からの均一な散水が可能となる。
【0022】
また、本発明に係る冷却塔は、好ましくは、前記管状部材が、前記底壁に着脱自在に備えられている。
【0023】
斯かる構成によれば、管状部材が着脱自在であることによって、有効に機能する散水孔を増やすための調整がし易くなる。例えば、温水が流れ易い領域と流れにくい領域とが温水槽に生じている場合、管状部材の設置を最適化することが望まれる。このような場合、管状部材が着脱自在であることによって、最適化の作業が容易になる。
また、管状部材が着脱自在であることによって、管状部材の補修作業が容易となる。
【発明の効果】
【0024】
以上の通り、本発明によれば、温水槽における温水の流れ方向上流側から下流側にわたって散水孔を有効に機能させることができ、且つ、温水の供給量に応じて散水量を変化させることができる冷却塔を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態に係る冷却塔の断面図である。
図2】一実施形態に係る温水槽を上方から見たときの図であり、温水槽とともに緩衝部材を示す。
図3】一実施形態に係る冷却塔における管状部材の配置を示す図である。
図4図3の管状部材の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る冷却塔について説明する。なお、以下では、図1の冷却塔100において、水平面と平行な第1方向を左右方向(D1)と称し、左右方向に直交し且つ水平面と平行な第2方向を前後方向(D2)と称し、左右方向及び前後方向の両方に直交する第3方向を上下方向(D3)と称することがある。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る冷却塔100は、熱交換部1を収容する四角柱状の塔本体100aと、塔本体100aの内部に気流Fを生じさせる気流発生部2と、熱交換部1に温水を供給する温水供給部3と、温水供給部3から熱交換部1へ供給される温水を中継する温水槽4と、熱交換部1で冷却された温水を冷水として貯留する冷水槽5とを備えている。本実施形態の冷却塔100では、塔本体100aの中央部に上下方向に延びる四角柱状の空洞Vが設けられ、空洞Vの周りに熱交換部1が配置されている。また、本実施形態の冷却塔100は、空洞Vの上方に配置された気流発生部2と、熱交換部1の上方に配置された温水槽4と、熱交換部1の下方に配置された冷水槽5とを備えている。
【0028】
気流発生部2は、塔本体100aの上面部から上方に延びるように形成された大口径のノズル21と、ノズル21に収容された送風機22とを備えている。送風機22は、駆動時にノズル21の内部を上方に向けて移動する気流Fを発生させ得るように配されている。すなわち、気流発生部2は、空洞Vの空気を送風機22で吸い出して上方に移動させ得るように構成されている。
【0029】
温水供給部3は、温水槽4の上方に備えられている。温水供給部3は、温水槽4に温水を排出する温水排出部31を有する。温水排出部31は、温水槽4に向かって(下方に)開口した排出開口311を有する。
【0030】
熱交換部1は、温水を外気と接触させて冷却する複数の冷却部11を有する。各冷却部11は、上下方向に積み上げられたブロック状の充填材を複数有する。各充填材は、複数枚の充填材用シートで構成されている。充填材用シートは、平面視において平行四辺形に形成されており、一面側に複数の突起が設けられている。各充填材は、縦置きにされた複数の充填材用シートが前後方向に並べて配されることによってブロック状をなしている。また、各充填材は、一つの充填材用シートが突起の先端部を隣り合う他の充填材用シートに当接させることによって、それぞれの充填材用シートの間に気流Fの通路となり得る隙間を形成している。
【0031】
各冷却部11は、ブロック状の充填材が上下方向に複数段積み上げられることによって四角柱状をなしている。本実施形態では、空洞Vを介して左右方向の両側に、一対の冷却部11が設けられている。各冷却部11は、充填材の前記隙間が空洞Vに連通するように配置されている。そして、気流発生部2による空洞V内の空気の吸い出しに伴い、充填材の前記隙間に外気が誘引されることとなる。
【0032】
各冷却部11は、温水槽4から供給される温水を受け入れる平面視で矩形状の上面111を有する。上面111は、前後方向に延びる一対の長端縁と左右方向に延びる一対の短端縁とを有する。そして、各冷却部11では、前後方向に(上面111の長端縁の延びる方向に)充填材用シートが並んでいる。
【0033】
温水槽4は、各冷却部11の上方に1つずつ備えられている。各温水槽4の上方には温水供給部3の排出開口311が配されている。
【0034】
図2及び図3に示すように、各温水槽4は、冷却部11の上面111に対向する矩形状の底壁41と、底壁41の外周から立ち上がる周側壁42とを有する。底壁41は、水平面に沿って広がるように形成されている。より具体的には、底壁41の上面は、水平面に沿って広がるように形成されている。周側壁42は、左右方向に延びる一対の短壁部421と、前後方向に延びる一対の長壁部422とを有する。底壁41及び周側壁42は、内側に温水収容空間を形成している。なお、温水槽4から温水が溢れる水位を温水槽4の限界水位と称する。
【0035】
底壁41には、温水を散水するための円形状の複数の散水孔43が設けられている。複数の散水孔43は、温水の流れ方向に沿って形成されている。散水孔43(又は後述する管状部材7の流入孔72)に到達した温水は、重力の作用によって、散水孔43を介して(管状部材7の管内を通って)冷却部11の上面111に落下する。これによって、温水槽4は、各散水孔43を介して熱交換部1の複数箇所に温水を散水可能となっている。
【0036】
各散水孔43の開口面積は、温水供給部3の排出開口311の開口面積よりも小さい。
【0037】
本実施形態の複数の散水孔43は、前後方向D2及び左右方向D1に配列されることによって行列をなしている。具体的には、図2に示すように、前記行列は、前後方向D2に複数の散水孔43が並ぶ第1行~第M行(これらから選択される任意の行を第m行とする)と、左右方向D1に複数の散水孔43が並ぶ第1列~第N列(これらから選択される任意の列を第n列とする)とを有する。本実施形態の複数の散水孔43は、隣り合う第m行と第m+1行との散水孔43の形成位置が前後方向D2において揃っており、且つ、隣り合う第n列と第n+1列との散水孔43の形成位置が左右方向D1に揃っており、これによって碁盤目状をなしている。なお、隣り合う第m行と第m+1行との散水孔43の形成位置は、前後方向D2に位置ずれしていてもよく、隣り合う第n列と第n+1列との散水孔43の形成位置は、左右方向D1に位置ずれしていてもよい。
【0038】
本実施形態の冷却塔100は、温水供給部3の排出開口311から落下する温水の温水槽4の底壁41への勢いを緩衝する緩衝部材6を備えている。図2及び図3に示すように、本実施形態の緩衝部材6は、長方体状の箱型に形成されており、排出開口311と底壁41との間に配されて落下する温水の勢いを緩衝する底壁たる緩衝壁61と、緩衝壁61の外周から立ち上がる周側壁62と、緩衝壁61に対向する上壁63とを有する。緩衝部材6は、排出開口311から落下する温水を内部に受け入れるための受入孔631を上壁63に有する。また、緩衝部材6は、内部に受け入れた温水を温水槽4の底壁41に向けて排出する(落下させる)ための複数の排出孔611を緩衝壁61に有する。
【0039】
緩衝壁61は、温水槽4の底壁41よりも上方に配されている。また、緩衝壁61は、水平面に沿って広がるように形成されており、言い換えれば、温水槽4の底壁41と平行するように形成されている。本実施形態の緩衝壁61は、底壁41を左右方向D1にわたって覆うように形成されている。一方、本実施形態の緩衝壁61は、前後方向D2においては、中央領域に位置する散水孔43にのみ対向するように形成されている。
【0040】
ここで、本明細書では、温水槽4の底壁41において、排出孔611からの温水が直接落下する領域を温水落下領域と称する。本実施形態では、前記温水落下領域は、底壁41における排出孔611が対向する領域である。
【0041】
各排出孔611は、前後方向D2に延びる線状に形成されている。各排出孔611は、互いに平行するように形成されている。本実施形態の緩衝壁61は、複数の排出孔611が前後方向D2に延びる線状に形成されており、それによって、横格子状をなしている。
【0042】
本実施形態の緩衝部材6は、温水槽4の周側壁42に固定されている。具体的には、緩衝部材6の上壁63が温水槽4の一対の長壁部422の上方にまで延びている。そして、上壁63と各長壁部422とが、ボルト等の接合材によって固定されている。
【0043】
本実施形態の底壁41では、緩衝壁61の排出孔611から落下した温水は、底壁41の前後方向D2における中央部から各短壁部421及び各長壁部422に向かって流れる。また、各長壁部422に衝突した温水は、各長壁部422に沿って流れ得る。このように、本実施形態の温水槽4は、底壁41の前後方向D2(長壁部422の延びる方向)に沿って温水の流れが生じ易くなるように構成されている。このことから、本実施形態では、任意2つの散水孔43のうち、前後方向D2において前記温水落下領域に近い方の散水孔43が上流側の散水孔と称し、前後方向D2において前記温水落下領域から遠い方の散水孔43が下流側の散水孔と称することができる。
【0044】
図3図4に示すように、本実施形態の冷却塔100は、更に、温水槽4の底壁41より上方に向けて延びる円筒状の管状部材7を備えている。管状部材7は、温水槽4の底壁41から立ち上がる円筒状の側壁71を有し、管内に温水を流入させる複数の流入孔72が設けられている。複数の流入孔72は、側壁71を貫通する側壁流入孔721を含む。また、管状部材7は、上端が解放端となっており、管状部材7の内径(直径)に共通する直径を有する円形の上端流入孔722が設けられている。本実施形態の管状部材7は、複数の側壁流入孔721が設けられている。また、側壁71は、最も下方の側壁流入孔721の下端と底壁41との間に高さを設ける基端領域711を含む。なお、管状部材7に設けられる側壁流入孔721は、1つのみであってもよい。また、管状部材7には上端流入孔722が設けられていなくてもよい。すなわち、管状部材7は、上端において閉塞していてもよい。
【0045】
基端領域711は、底壁41を基端として上方に延びており、最も下方に位置する側壁流入孔721の下端に温水槽4の水位が到達するまで、管状部材7内への温水の流入を阻止する領域である。
【0046】
上端流入孔722は、側壁流入孔721よりも大きく形成されている。すなわち、管状部材7は、上下方向における形成位置が異なる2以上の流入孔72を有し、下方の流入孔72よりも上方の流入孔72の方が開口面積が大きくなるように形成されている。
【0047】
複数の側壁流入孔721は、上下方向における形成位置が異なるように設けられている。より具体的には、複数の側壁流入孔721は、第1の水位にて温水の流入を開始する第1の側壁流入孔721aと、前記第1の水位よりも高い第2の水位にて温水の流入を開始する第2の側壁流入孔721bと、前記第2の水位よりも高い第3の水位にて温水の流入を開始する第3の側壁流入孔721cとを含む。これによって、温水の供給量に応じて、散水量を変化させ易くなる。
【0048】
また、複数の側壁流入孔721は、形成位置が高くなるにつれて、開口面積が大きくなるように形成されている。より具体的には、図4に示すように、複数の側壁流入孔721は、第1の側壁流入孔721a、第2の側壁流入孔721b、第3の側壁流入孔721cの順に、開口面積が大きくなるように形成されている。これによって、温水の供給量に応じて、散水量をさらに変化させ易くなる。
【0049】
各側壁流入孔721は、管状部材7の半周以内に収まるように設けられていてもよく、管状部材7の1/4周以内に収まるように設けられていてもよい。各側壁流入孔721は、それぞれの中心位置が上下方向D3に延びる直線上に位置していてもよい。一方、各側壁流入孔721の中心位置が異なっている場合、上下方向に隣り合う側壁流入孔721のうち、下方の側壁流入孔721の上端が上方の側壁流入孔721の下端よりも上方に位置していてもよい。これによって、水位の上昇に際して絶え間なく温水の流入面積を増やし続けられることとなる。
【0050】
本実施形態の流入孔72は、円形状であるが、これに限らず、流入孔72は楕円状であってもよく、矩形状であってもよい。
【0051】
本実施形態の管状部材7は、散水孔43を包囲するように側壁71の外径が散水孔43の径よりも大きく形成されている。この他、管状部材7は、散水孔43に挿通可能なように側壁71の外径が散水孔43の径よりも小さく形成されていてもよい。この場合、側壁71は、外径が散水孔43に挿通可能に散水孔43の径よりも小さく形成された下端部と、前記下端部から上方に延びるよう形成され且つ外径が散水孔43の径よりも大きく形成されて、底壁41の上面に当接可能な当接部とを有することが好ましい。
【0052】
本実施形態の管状部材7は、さらに、側壁71を含む部材本体7aと、部材本体7aの下端から下方に延びるノズル部7bとを備えている。ノズル部7bは、散水孔43を通って底壁41の下方に延びるように備えられている。ノズル部7bは、排出する温水を四方に拡散するように構成されている。この他、ノズル部7bは、温水を直線状に排出するように構成されてもよく、この場合には、温水の落下方向に交差するように、ノズル部7bの下方に邪魔板が設けられていることが好ましい。これによって、冷却部11への温水の分散が促進される。
【0053】
管状部材7の底壁41から上方に露出した部分の高さ(底壁41から管状部材7の上端までの高さ)は、通常、温水槽4の限界水位未満であり、具体的には、限界水位の75%以下である。
【0054】
側壁流入孔721の個々の開口面積は、通常、ノズル部7bの開口面積よりも小さく、ノズル部7bの開口面積の80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。一方、上端流入孔722の開口面積は、ノズル部7bの開口面積以上であることが好ましく、ノズル部7bの開口面積の2倍以上であることがより好ましく、5倍以上であることがさらに好ましい。例えば、各流入孔72の開口面積は、ノズル部7bの開口面積が660mm(φ29)である場合、側壁流入孔721で50~452(φ8~24)mmであり、上端流入孔722で660mm~7850mmであることが好ましい。
【0055】
本実施形態の管状部材7は、底壁41から着脱可能に備えられている。なお、管状部材7は、底壁41と一体化されていてもよい。
【0056】
本実施形態では、前記温水落下領域の外側の全ての散水孔43に管状部材7が備えられている。すなわち、前記温水落下領域の外側に位置する1つの散水孔43に対して、1つの管状部材7が備えられている。
【0057】
なお、上記のような設置に限られず、管状部材7は、前記温水落下領域に位置する散水孔43には設けられておらず、且つ、前記温水落下領域の外縁から50cm以内の範囲に位置する全ての散水孔43に設けられていてもよい。この他、長壁部422の1/3の長さを半径Acmとして、排出開口311の中心から半径Acm以内の領域内の少なくとも一部の散水孔43に管状部材7が設けられていてもよく、長壁部422の1/4の長さを半径Bcmとして、排出開口311の中心から半径Bcm以内の領域内の少なくとも一部の散水孔43に管状部材7が設けられていてもよい。さらに、冷却塔100の使用時の状態を観察し、底壁41において温水が滞留し易い領域や、温水が流れ易い領域がある場合には、その領域における散水孔43に管状部材7を設けてもよい。そうすることで、一部の散水孔43へ温水が偏って流れることを阻止でき、上記領域よりも温水が流れにくい領域にも温水を行きわたらせ易くすることができる。すなわち、底壁41の全体に温水を行きわたらせ易くすることができる。
【0058】
本実施形態の管状部材7は、側壁流入孔721が温水の流れ方向の下流側に向けて開口するように配置されているが、必ずしも全ての側壁流入孔721が下流側に向けて開口している必要はなく、例えば、上流側に向けて側壁流入孔721が開口するものがあってもよく、長壁部422を向けて側壁流入孔721が開口するものがあってもよい。
【0059】
また、本実施形態の管状部材7は、その上端が温水槽4の限界水位よりも低くなるように配されている。これによって、温水が限界水位を超えること、すなわち、温水槽4から温水がオーバーフローすることが抑制される。
【0060】
本実施形態の冷却塔100によれば、温水の供給に伴って、少なくとも基端領域711の高さ分の水位が維持され、底壁41の全域が温水で満たされ易くなる。底壁41の全域に温水が行きわたった状態では、更なる温水の供給によって、温水槽4の全域にわたって水位が上昇するため、各管状部材7の同じ高さの流入孔72に同時に温水が流入し易くなる。よって、より多くの散水孔43を有効に機能させ易くなり、冷却部11の上面111への均一な散水が可能となる。
【0061】
なお、本発明に係る冷却塔は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る冷却塔は、上記の作用効果によって限定されるものではない。本発明に係る冷却塔は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0062】
例えば、管状部材は、中心軸周りに回転自在に設けられて、側壁流入孔の開口方向を調節自在であってもよい。
【0063】
また、管状部材は、前記部材本体とは別に前記側壁流入孔や前記上端流入孔の開口面積を調節するための調節部材を有していてもよい。前記調節部材は、前記側壁流入孔や前記上端流入孔に内嵌合可能で、前記側壁流入孔や前記上端流入孔よりも小さな開口を有する円環状であってもよい。また、前記調節部材は、前記側壁流入孔や前記上端流入孔よりも小さい形状に弾性変形可能で弾性復元力によって前記側壁流入孔や前記上端流入孔に装着可能な市販のゴムブッシングのようなものであってもよい。前記調節部材は、ゴム栓のように前記側壁流入孔や前記上端流入孔の開口面積をゼロにする(開口を閉塞する)ものであってもよい。
【0064】
前記部材本体は、複数の部材に分解可能であってもよい。前記部材本体は、前記底壁から円筒状になって上方に延びるベース部材と、該ベース部材よりさらに上方に延びる円筒状の延長部材とを備え、前記ベース部材が前記底壁に着脱自在で前記延長部材が前記ベース部に着脱自在であってもよい。これによって、当該管状部材は、深さの異なる複数種類の温水槽に共用可能となる。
【0065】
また、前記延長部材に側壁流入孔を設けることで、該側壁流入孔の数も調整可能となり得る。すなわち、前記ベース部材の上に複数の前記延長部材を上下方向に並べて積み上げられるようにし、複数の前記延長部材のそれぞれに前記側壁流入孔を形成するようにすれば、積み上げる延長部材の数だけ前記側壁流入孔の数を増やすことができる。なお、複数の延長部材は、互いに側壁流入孔の大きさや数が共通していても異なっていてもよい。また、上端の開口径が内径よりも小さい延長部材や、上端の閉塞された延長部材を前記調節部材として用いてもよい。
【0066】
また、前記部材本体は、一つの温水槽の形成に、太さ、側壁流入孔の径や数などが異なる複数種類のものを利用してもよい。
【0067】
これらの他、本発明の冷却塔は、緩衝部材6を備えていなくともよい。緩衝部材6を備えていない冷却塔は、温水槽4に、温水排出部31から直接に温水が供給されることとなる。この場合、前記温水落下領域は、底壁41における排出開口311が対向する領域である。
【0068】
また、管状部材7は、円筒状に限られず、角筒状であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
100:冷却塔、100a:塔本体、V:空洞、1:熱交換部、11:冷却部、111:上面、2:気流発生部、21:ノズル、22:送風機、F:気流、3:温水供給部、31:温水排出部、311:排出開口、4:温水槽、41:底壁、42:周側壁、421:短壁部、422:長壁部、43:散水孔、5:冷水槽、6:緩衝部材、61:緩衝壁、611:排出孔、62:周側壁、63:上壁、631:受入孔、7:管状部材、7a:部材本体、7b:ノズル部、71:側壁、711:基端領域、72:流入孔、721:側壁流入孔、722:上端流入孔
図1
図2
図3
図4