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▶ グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニムの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】免疫原性コンジュゲート及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/61 20170101AFI20240219BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 39/095 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 39/015 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 39/108 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 39/112 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 39/07 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 39/106 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 39/10 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 39/04 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 39/104 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20240219BHJP
【FI】
A61K47/61
A61P37/04 ZNA
A61K39/095
A61K39/015
A61K39/108
A61K39/112
A61K39/00 Z
A61K39/02
A61K39/07
A61K39/106
A61K39/10
A61K39/04
A61K39/104
A61P31/04
A61K47/62
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022105784
(22)【出願日】2022-06-30
(62)【分割の表示】P 2019527901の分割
【原出願日】2017-11-23
(65)【公開番号】P2022130637
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】1619946.5
(32)【優先日】2016-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1712096.5
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルフィニ,レンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ミコリ,フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】サウル,アラン ジェームズ
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/083583(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/184860(WO,A1)
【文献】特表2014-520801(JP,A)
【文献】特表2004-527235(JP,A)
【文献】Research Journal of Microbiology,2007年,Vol.2, No.5,pp.436-444
【文献】Vaccine,1999年,Vol.17,pp.2951-2958
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 39/00-39/44
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも抗原に結合された少なくとも表面糖成分を有する、機能性TolRタンパク質を発現しない大腸菌、サルモネラ菌又は赤痢菌の細菌株に由来する未変性の外膜小胞(nOMV)を含む免疫原性コンジュゲート。
【請求項2】
前記大腸菌、サルモネラ菌又は赤痢菌の細菌株が、msbB、htrB、ddg及び/又はPagP遺伝子の変異をさらに含む、請求項1に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項3】
第1の抗原に結合された少なくとも表面糖成分を有するnOMVを含み、前記第1の抗原は、第1の抗原とは異なる第2の抗原に結合されている、請求項1に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項4】
第1の抗原に結合された少なくとも表面糖成分及び第1の抗原とは異なる第2の抗原に結合された少なくとも別の表面糖成分を有するnOMVを含む、請求項1に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項5】
前記抗原が、免疫原性ポリペプチド又は免疫原性多糖である、請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項6】
前記nOMV及び前記抗原が、同じ又は異なる細菌株由来である、請求項1~5のいずれか一項に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、大腸菌ポリペプチド抗原;N.メニンギティディスポリペプチド抗原;連鎖球菌ポリペプチド抗原;並びにマラリア原虫ポリペプチド抗原からなる群から選択される、請求項5に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項8】
前記大腸菌ポリペプチド抗原が、CTF1232、405及び3526からなる群から選択される、請求項7に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項9】
前記N.メニンギティディスポリペプチド抗原が、NHBA、NadA、NsPA、NhhA、App及びfHbpからなる群から選択される、請求項7に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項10】
前記連鎖球菌ポリペプチド抗原が、A群連鎖球菌由来のGAS25(Slo)、GAS40(SpyAD)及びGAS57(SpyCEP)抗原からなる群から選択される、請求項7に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項11】
前記マラリア原虫ポリペプチド抗原が、熱帯熱マラリア原虫由来のPfs25である、請求項7に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項12】
前記多糖が、インフルエンザ菌B型多糖;ナイセリア・メニンギティディス血清群A、C、W135、X及びY多糖;肺炎球菌血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F及び33F多糖;チフス菌(Salmonella enterica serovar Typhi)Viを含むサルモネラ菌多糖、全長又は断片(fViと示される)のいずれか;ストレプトコッカス・アガラクチア血清型Ia、Ib及びIII多糖;化膿連鎖球菌多糖;赤痢菌種多糖;並びにA及びB群連鎖球菌多糖からなる群から選択される細菌性莢膜多糖である、請求項5に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項13】
前記nOMVがGMMA小胞である、請求項1~12のいずれか一項に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項14】
前記nOMVを、機能性TolRタンパク質を発現しない大腸菌、サルモネラ菌又は赤痢菌の遺伝子改変された細菌株から産生させるステップ、
そのようにして産生されたnOMVの表面上の糖成分を活性化するステップ、及び
活性化糖成分を選択された抗原に直接結合するステップ、又は
活性化糖成分を二価リンカー基に結合して、nOMV-リンカーコンジュゲートを形成し、その後それを選択された抗原に結合するステップ、
を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の免疫原性コンジュゲートを調製する方法。
【請求項15】
前記nOMVの表面上の糖成分を活性化するステップが、前記nOMV表面糖成分の1つ以上のヒドロキシル基のアルデヒド官能基への酸化を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記酸化が、アルカリサルファイトによりクエンチされる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アルカリサルファイトがNa 2 SO 3 である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項に記載の免疫原性コンジュゲート及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む、免疫原性組成物。
【請求項19】
医薬としての使用のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の免疫原性コンジュゲート又は請求項18に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
脊椎動物において免疫応答を誘導するための使用のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の免疫原性コンジュゲート又は請求項18に記載の免疫原性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「未変性」の、非界面活性剤抽出された外膜小胞(nOMV)を抗原にコンジュゲートし、免疫化のために特に有用であるnOMV-抗原コンジュゲートを形成する分野のものである。
【背景技術】
【0002】
担体への抗原のコンジュゲーションは、免疫原性、とりわけ糖に対する免疫原性を改善するための確立された手順である。例えば、細菌性莢膜糖は、いくつかの重要な特性を欠いている免疫応答を引き起こす天然のT細胞非依存性抗原である。担体成分へのコンジュゲーションは、これらの糖をT細胞依存性抗原に変換し、次にそれは免疫学的記憶効果をもたらすことができ、幼児においても有効な免疫応答を惹起できる。
【0003】
そのようなコンジュゲートでのタンパク質担体の1つの公知の起源は、承認されたインフルエンザ菌(H. influenzae)Bコンジュゲートワクチンにおいて担体として含まれている、N.メニンギティディス(N.meningitidis)血清群B由来の外膜タンパク質複合体(OMPC)である(例えば、EP-0467714、Merck & co.を参照されたい)。OMPCは、タンパク質コンジュゲートにおける担体としても使用されている。先行技術によれば、OMPCは、選択された抗原とのコンジュゲーションをよりよく実施するために活性化又は化学的に修飾され得る、タンパク質残基を介して抗原にコンジュゲートされる。
【0004】
Wu et al. (PNAS USA 2006; 103(48): 18243-18248)は、Pfs25H(ヒトマラリア伝播阻止タンパク質)のOMPCへのコンジュゲーションが、マウスにおいて抗Pfs25H ELISA反応性を生じることにおいて、Pfs25H単独の同様の用量よりも>1,000倍強力であったPfs25H-OMPCコンジュゲートワクチンをもたらしたことを報告している。OMPCのPfs25Hタンパク質へのコンジュゲーションは、スキーム1に示されるとおりマレイミド活性化Pfs25HをOMPC中のチオール化外膜タンパク質と反応させることによって達成され得る(一般的参考文献として、例えばWO2006/124712を参照されたい)。
【0005】
【化1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その方法が有効な合成経路を表し得るとしても、検討される小胞を純粋な形態では得ることは困難であるかもしれず、それらは通常、苦労を要する工程により回収される。同様に、選択された抗原との結合は、好適な小胞タンパク質の存在及び活性化を必要とし、それは、表面タンパク質組成物を変化させる可能性があるという、界面活性剤又は化学物質の小胞単離の際の使用に照らした追加的課題を課す。したがって、先行技術の課題を克服し、容易で簡便な手順によって達成可能である、免疫原性化合物として有用な新規コンジュゲートを供給する必要がまだある。
【0007】
本出願人は、nOMVが、選択された抗原に糖成分を介して結合される場合、本明細書でより詳細に後述するとおり、このようにして得られるコンジュゲートは、顕著な免疫原性を備え、信頼性があり簡便な工程によって得ることができることをここに見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の態様では本発明は、界面活性剤を含まない工程によって得られ、少なくとも外来性の選択された抗原に結合された少なくとも未変性表面糖成分を有する未変性の外膜小胞(nOMV)を含む、免疫原性nOMV-抗原コンジュゲートに言及する。
【0009】
さらなる態様では、本発明は、
i)一般的にnOMV表面に結合した少なくともnOMV糖成分を活性化するステップ、及び
ii)このようにして得られた活性化糖を少なくとも1つの選択された抗原に結合するステップ
を含む、前記コンジュゲートを調製する方法に言及する。
【0010】
好ましい実施形態によれば、nOMV-表面結合糖は、酸化によって活性化され、次に選択された抗原に、より好ましくは還元的アミノ化条件下で、結合される。
【0011】
追加的態様では、本発明は、医薬としての、特に免疫原性化合物としての使用のため、又は免疫原性組成物若しくはワクチンの調製のための上記コンジュゲートにも言及する。
【0012】
またさらなる態様では、本発明は、上に示すコンジュゲート及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体又はアジュバントを含む免疫原性組成物又はワクチン、並びに前記組成物又はワクチンの投与を含む脊椎動物において免疫応答を生じさせるための方法、に言及する。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、免疫原性コンジュゲートの調製のためのnOMVの使用にも言及する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1はソンネ菌(S. sonnei)についての-OAg構造を示す図である。
図2A図2は、ネズミチフス菌(S. typhimurium)nOMVにコンジュゲートされた断片化Vi(fVi)糖による免疫後の抗Vi(図2A)及び抗OAg(図2B)IgG力価を、前記nOMVと物理的に混合したfVi又はより伝統的な担体CRM197にコンジュゲートしたfVi(アルハイドロゲル(Alhydrogel)を用いて製剤化)と比較して示す図である。CD1雌マウス[5週齢(群あたり8匹)]を、0及び28日目に1μg Vi/用量で皮下免疫した。力価は、0、14、28及び42日目に測定された。
図2B図2Aの続きである。
図3図3は、種々の担体にコンジュゲートされたCTF1232ポリペプチド(アルハイドロゲルを用いて製剤化)による免疫後の抗CTF1232 IgG力価を示す図である。CD1雌マウス[5週齢(群あたり8匹)]に、研究0、21及び38日目に30μlのワクチン(鼻孔あたり15μl)を用いて鼻腔内ワクチン接種した。血清は、0、14、35及び52日目に収集した。用量は、0.5μg CTF1232であった。
図4A図4は、ネズミチフス菌1418 ΔtolR nOMVにコンジュゲートされたPfs25ポリペプチドによる免疫後の抗Pfs25 IgG力価を、単独の又は前記nOMVと物理的に混合したPfs25と比較して示す図である。CD1雌マウス[5週齢(群あたり8匹)]を、0及び28日目に0.1μg Pfs25/用量(図4A、アルハイドロゲルを含む)又は1μg Pfs25/用量(図4B、アルハイドロゲルを含まない)により皮下免疫した。力価は、0、14、28及び42日目に測定された。図4Cは、10及び0.5μg nOMV/用量にそれぞれ対応する2及び0.1μg Pfs25/用量を使用した抗OAg IgG力価を示す図である(アルハイドロゲルを用いて製剤化)。同様に、CD1雌マウス[5週齢(群あたり8匹)]を、0及び28日目に皮下免疫した。
図4B図4Aの続きである。
図4C図4Bの続きである。
図5A図5は、RO6C単独、又はネズミチフス菌1418 ΔtolR nOMV小胞にコンジュゲートされたRO6C(アルハイドロゲルを用いて製剤化)による免疫後の抗RO6C IgG力価(図5A)及び抗OAg IgG力価(図5B)を示す図である。リサイクルコンジュゲートは、第1のコンジュゲーションバッチから未コンジュゲートRO6Cをリサイクルすることによって調製された。CD1雌マウス[5週齢(群あたり8匹)]は、0及び28日目に皮下免疫され、1、4及び20μg RO6Cの用量が使用された。コンジュゲートのためのnOMVの対応する用量は、それぞれ13μg、52μg及び258μgであった(リサイクルコンジュゲートのために4μg RO6C及び32μg nOMV)。IgG力価は0、14、28及び42日目に測定された。
図5B図5Aの続きである。
図6A図6a:本発明の実施形態に従い、クエンチ反応を伴って又は伴わずに、ネズミチフス菌nOMVをPfs25抗原とコンジュゲートすることによって産生された本発明のnOMVコンジュゲートによりマウスにおいて誘導された抗Pfs25 IgG応答(0及び28日目に用量あたり200μLでSC注射、0、14、27及び42日目に採血)。
図6B図6b:本発明の実施形態に従い、クエンチ反応を伴って又は伴わずに、ネズミチフス菌nOMVをPfs25抗原とコンジュゲートすることによって産生された本発明のnOMVコンジュゲートによりマウスにおいて誘導された抗OAg応答(0及び28日目に用量あたり200μLでSC注射、0、14、27及び42日目に採血)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の理解を促進するために、いくつかの用語及び句を下に定義する。次の用語及び句(過去、現在などの時制を含む)の当業者が認識する同義語又は代替語は、具体的に記載されていない場合でも企図される。
【0016】
本開示及び特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に異なって定める場合を除いて、複数形を含み、すなわち「a」は、別段示される場合を除いて「1つ以上」を意味する。
【0017】
用語「約」又は「およそ」は、大体、おおよそ又はその辺りを意味する。用語「約」又は「およそ」は、値が測定又は決定される方法、すなわち測定系の限界又は特定の目的、例えば供給される製剤中の栄養素の量、のために必要な精度に部分的に依存する、当業者によって決定された特定の値についての許容可能な文脈上の誤差範囲にあることをさらに意味する。用語「約」又は「およそ」が数値範囲と共に使用される場合、それは、記載される数値より上又は下に境界を広げることによって範囲を変更する。例えば「約0.2と5.0mg/mlとの間」は、数値範囲の境界が0.2より下及び5.0より上に拡張され、それにより当該特定数値が範囲内と同じ機能的結果を達成することを意味する。例えば「約」及び「およそ」は、当技術分野における実施ごとに、1以内又は1を超える標準偏差の範囲を意味し得る。あるいは「約」及び「およそ」は、所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、より好ましくは1%までの範囲を意味し得る。
【0018】
「A及び/又はB」などの句において使用される場合、用語「及び/又は」は、「A及びB」、「A又はB」、「A」及び「B」を含むことが意図される。同様に「A、B及び/又はC」などの句において使用される場合、用語「及び/又は」は、次の実施形態:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)のそれぞれを包含することが意図される。
【0019】
別段の指定がない限り、「A%~B%」「A~B%」「A%からB%」「AからB%」「A%~B」「A%からB」という表現はいずれも、それらの通常の慣例的な意味を有する。一部の実施形態ではこれらの表現は同義である。
【0020】
用語「実質的に」又は「実質的な」は、記載される標準としてすべての重要な態様において記載される又は特許請求される状態が機能することを意味する。したがって「実質的に含まない」は、数値がいくらかの不純物又は物質の存在を示していても、含まない状態としてすべての重要な態様において機能する状態を包含することを意味する。「実質的な」は、90%より大きな、好ましくは95%より大きな、最も好ましくは99%より大きな値を一般に意味する。明細書において及び特許請求の範囲において、特定の値が使用される場合、別段述べられている場合を除いて、用語「実質的に」は、特定の値についての許容可能な誤差範囲を含むことを意味する。
【0021】
「有効量」は、参照される効果又は結果を生じるのに十分な量を意味する。「有効量」は、述べられる目的に関連する公知の技術を使用して経験的に及び日常的なやり方で決定され得る。
【0022】
本明細書において使用される場合、「異種」は、2つ以上の参照される分子又は構造が異なる生物由来であることを意味する。例えば、異種抗原は、それが付加されるnOMV小胞とは異なる生物由来であるものである。本明細書において使用される場合「同種」は、2つ以上の参照される分子又は構造が同じ生物由来であることを意味する。
【0023】
本明細書において使用される場合、「外来性」は、2つ以上の参照される分子又は構造が天然では互いに関連していないことを意味する。例えば、本明細書におけるnOMV表面糖に対して「外来性」であることが本明細書において意図される選択された抗原は、表面糖に天然では又は生来はコンジュゲートしない抗原を意味し、したがって、抗原及び糖(又はnOMV分子)が同じ生物に起源を有する場合であっても、当該抗原はnOMV分子に天然ではコンジュゲートされていない。このように外来性抗原は、異種抗原である必要はないが、異種抗原は外来性抗原である。
【0024】
「配列同一性」は、パラメーターであるギャップオープンペナルティー=12及びギャップ伸長ペナルティー=1を用いるアフィンギャップ検索を使用して、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)において実行されるスミス-ウォーターマン相同検索アルゴリズムによって決定され得るが、好ましくは、デフォルトパラメーター(例えばギャップオープニングペナルティー=10.0、及びギャップ伸長ペナルティー=0.5、EBLOSUM62スコアリングマトリクスを使用)を使用してニードルマン-ブンシュグローバルアラインメントアルゴリズム(例えばRubin (2000) Pediatric. Clin. North Am. 47:269-285を参照されたい)によって決定される。このアルゴリズムは、EMBOSSパッケージにおけるニードルツールにおいて好都合に実行される。本出願が特定の配列番号への配列同一性に言及する場合、同一性は配列番号の全長にわたって算出されることが意図される。
【0025】
用語「w/w%」は、示されるとおり、異なる構成成分に対する、又は組成物の全内容物に対する、所与の構成成分の重量百分率を示す。
【0026】
類似的に、用語「v/v%」は、示されるとおり、異なる構成成分に対する、又は組成物の全内容物に対する、所与の構成成分の体積百分率を示す。
【0027】
用語「-OAg」(O-抗原)は、本発明による適切な抗原(一般にAgと示される)とのコンジュゲーションのために有用である、検討されるnOMVの表面上のリポ多糖(LPS)又はリポオリゴ糖(LOS)に存在する抗原官能基を示して本発明において使用される。より詳細には、LPSは、リピドA(LPSの毒性の原因である)、コアオリゴ糖、及び-OAg鎖(反復グリカンポリマーであり細菌の血清学的特異性の主な原因)として知られる3個の異なる部分によって一般に形成される。
【0028】
用語「直鎖又は分岐C1~Cxアルキル又はアルケニル基」は、1~x個の炭素原子を有する二価飽和又は不飽和直鎖又は分岐アルキル又はアルケニル基をその意味に含む。例えば、二価C1~C10アルキル又はアルケニル基という用語は、メチル、エチル、ビニル、アリルなどの1~10個の炭素原子を有する二価飽和又は不飽和アルキル又はアルケニル基をその意味に含む。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「糖(saccharide (or sugar))成分」は、単糖類及び多糖単位をその意味に含む。糖成分は、開及び閉(環)形態で存在でき、閉形態が本明細書の構造式で示されるが、開形態も本発明によって包含されることは、理解されるであろう。同様に、糖成分はピラノース及びフラノース形態で存在してよく、ピラノース形態が本明細書の構造式で示されているが、フラノース形態も包含されることは、理解されるであろう。糖成分のさまざまなアノマー形態も包含される。
【0030】
用語「オリゴ糖」は、3~10個の単糖単位を有する多糖をその意味に含む。
【0031】
別段規定される場合を除いて、用語「ポリペプチド」は、選択された抗原として作用可能である任意の長さのポリペプチドを指す。本発明のポリペプチドを形成するアミノ酸ポリマーは、直鎖又は分岐であってよく、修飾アミノ酸を含んでよく、非アミノ酸によって割り込まれていてよい。用語は、天然で又は介入によって、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は、任意の他の操作若しくは改変(標識成分とのコンジュゲーションなど)によって改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。同様に定義内に含まれるのは、例えばアミノ酸の1つ以上の類似体(例えば非天然アミノ酸などが挙げられる)及び当技術分野において公知の他の改変を含有するポリペプチドである。ポリペプチドは、一本鎖又は会合鎖として存在してよい。
【0032】
「平均分子量」は、通常の算術平均によって得られた平均分子量、又は個々の成分、例えばポリペプチド誘導体の場合はアミノ酸の分子質量の平均を示すことが意図される。
【0033】
用語「莢膜多糖/糖」(CPS)は、細菌の細胞エンベロープ外側に位置する層において見出され得る、細菌細胞自体の外側エンベロープの一部である糖を示す。CPSは、幅広い細菌の最も外側の表面上に、及び一部の場合では真菌においてさえ発現される。
【0034】
別段規定される場合を除いて、用語「コンジュゲーション」は、特にnOMVと選択された抗原成分とを参照した、対象となる実体の結合又は連結を示す。
【0035】
「免疫学的有効量」によって、その量の個体への投与が、単一用量又は一連のものの一部としてのいずれでも、治療又は予防のために有効であることが意味される。この量は、治療される個体の健康及び身体の状態、年齢、治療される個体の分類学的群(例えば非ヒト霊長類、霊長類など)、抗体を合成する個体の免疫系の能力、所望の防御の程度、ワクチンの製剤、治療する医師による医学的状況の評価及び他の関連要因に応じて変動し得る。その量は、日常的な試験を通じて決定され得る比較的幅広い範囲内にあることが予測される。
【0036】
本明細書において用語「nOMV」は、培地から単離された又は細胞からそぎ取られた小胞を示し、それらは、界面活性剤又は変性剤に曝露されていない、すなわち界面活性剤で抽出されていない、無傷の膜小胞である。本発明のnOMVは、外膜タンパク質(OMP)及びリポ多糖(LPS)を天然膜環境におけるそれらの未変性立体構造及び正しい配向で示し、通常細胞質成分を欠いている。
【0037】
対照的に、用語「OMV」又は「dOMV」は、グラム陰性細菌の外膜の破壊によって、典型的にはそれらから小胞を形成する界面活性剤抽出工程によって得られる種々のプロテオリポソーム小胞(proteoliposomic vesicle)を包含する。外膜タンパク質複合体(例えば、ナイセリア・メニンギティディス由来OMPC)は、dOMVと同様の三次元構造及び組成を有し、界面活性剤抽出手順を介して単離されることから、そのような定義内にあると考えられる(例えばEP0467714、US4,271,147、US4,459,286及びUS4,830,852を参照されたい)。界面活性剤抽出工程は、LPS及びリン脂質を、免疫防御リポタンパク質と共に除去する。そのような除去は、未変性の小胞構造を変化させ、凝集を促進する。凝集は、方法開発の観点から結果として課題を生じる可能性がある(収率、製造の一貫性及び安定性)。明確に均一なサイズ分布(動的光散乱DLS技術による測定で、典型的には20~250nmの範囲)によって特徴付けられるnOMVとは異なり、dOMVは、界面活性剤によって誘発された小胞凝集によって生じる明確でない不均一なサイズ分布を有する(通常、動的光散乱DLS技術による測定で、550~5500nmの範囲)(一般的参考文献として、Vaccine 28, 2010, 4810を参照されたい)。界面活性剤抽出工程は細菌細胞溶解の結果として細胞質タンパク質の、OMV含有組成物(例えば、ワクチン)への混入も生じる。
【0038】
先行技術の方法によれば、dOMV及びnOMVは、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用してサイズ、形状及び、不純物又は非OMV材料の混入(dOMVの場合は小胞凝集又は界面活性剤の残留物など)の全体的外観の観点から分析及び記載され得る。dOMVとnOMVとの間の差異に関する詳細な参考文献として、例えばvan de Waterbeemd (2013) J. Prot. Res. "Quantitative Proteomics Reveals Distinct Differences in the Protein Content of Outer Membrane Vesicle Vaccines";及びJ. Klimentova et al. Microbiological Research 170 (2015) 1-9 "Methods of isolation and purification of the outer membrane vesicles from gram-negative bacteria"を参照されたい。
【0039】
上に記載されるとおり第一の態様では、本発明は、非界面活性剤抽出性の未変性の外膜小胞(nOMV)の表面に存在する糖成分に結合された選択された抗原を含むコンジュゲートに言及する。注目すべきことに、本発明によるnOMVは、例えばデオキシコール酸抽出により、又はEmpigen BB(例えばUS4,707,543を参照されたい)などの双性イオン性界面活性剤を使用して得られた先行技術のdOMVとは異なり、界面活性剤を実質的に使用せずに回収及び単離される。対照的に、界面活性剤抽出ステップが一連の理由のために本発明では望ましくない場合があり、その中で、本明細書に後述される選択された抗原とのコンジュゲーションのために実際に有用であり得る、小胞上に存在するリポ多糖(LPS)/リポオリゴ糖(LOS)の量を界面活性剤が低減する、という事実は、強調されるべきである。
【0040】
さらに詳細には、nOMVは、細菌増殖の際に自発的に形成され、培養培地に放出される天然膜小胞である。それらは、例えば、ブロス培養培地中で細菌を培養し、ブロス培養培地中のより小さなnOMVから全細胞を分離し(例えばろ過によって又は細胞だけをペレット化し、より小さな小胞をペレット化しない低速遠心分離によって)、次に細胞枯渇培地からnOMVを回収すること(例えばろ過によって、示差沈降又は凝集によって、小胞をペレット化する高速遠心分離によって)によって得られる。nOMVの製造における使用のための株は、培養で産生されるnOMVの量に基づいて一般に選択されてよい。本nOMVは、界面活性剤を含まない手順に続いて回収及び単離されたという事実によって特徴付けられる。好ましくは、本nOMVは、発酵ブロス中に放出され、遠心分離及びそれに続くろ過ステップを使用して精製される(一般的参考文献として、例えばClin Vaccine Immunol. 2016 Apr; 23(4): 304-314を参照されたい)。さらに好ましくは、本nOMVは、発酵ブロス中に放出され、次の2つの連続するタンジェンシャルフローろ過(TFF)ステップ:(i)nOMVを含有する培養上清が細菌から分離される精密ろ過、及び(ii)nOMVが可溶性タンパク質から分離される限外ろ過(一般的参考文献として、例えばPLoS One. 2015; 10(8): e0134478を参照されたい)を使用して精製される。このように得られたnOMVは、次に本発明において、追加的精製/単離ステップを伴わずに直接使用され得る。ここで検討されるnOMVは、動的光散乱DLS技術によって測定された20~250nmを含む好ましいサイズ分布を有する。
【0041】
一部の実施形態によれば、nOMVは、野生型細菌から調製されるか、又は一般的に免疫原性を増加させる(例えば、免疫原を高発現するように)、毒性を低減する、莢膜糖合成を阻害する、免疫優性抗原発現を下方制御する等のように遺伝子操作された細菌から調製される。それらは、高ブレブ形成(hyperblebbing)株からも調製され得る。本発明のnOMVはまた、それらの表面上に外因性タンパク質を発現し、またエンドトキシンを枯渇していてもよい。
【0042】
好ましくは、本発明において使用されるnOMVは、小胞産生を増強し、任意選択で抗原(例えばリピドA)を除去若しくは改変し、及び/又は同種抗原若しくは他の生物由来の抗原を過剰発現するようにも変異している、遺伝子改変された細菌株から産生される。前記好ましいnOMVは、例えばPLoS One. 2015; 10(8): e0134478に記載のとおり、膜抗原の一般化モジュール(GMMA)としても公知である。
【0043】
小胞の自発的生成の増強は、例えば、膜完全性の維持に関与するタンパク質の標的化欠失によって達成され得る。nOMVの外側表面は、それが由来する細菌の外側表面に実質的に対応し、膜に関して膜抗原(例えばリポ多糖、リポオリゴ糖及びリポタンパク質が挙げられる)を維持していることが観察されている。有利なことに、本発明において使用されるnOMVは(界面活性剤抽出されたdOMVとは異なり)、これらの外膜構成成分をその未変性立体構造及び正しい配向で保持しており、それらが由来する細菌株に対する免疫原性を良好に維持している。
【0044】
一般に、本発明における使用のためのnOMVは、任意の好適な細菌から調製されてよく、ここで好ましい細菌として、以下に限定されないが:ナイセリア属(Neisseria)(例えば、特にA、B、C、X、Y若しくはW135を含む任意の血清群のN.メニンギティディス、又は非病原性ナイセリア由来)、赤痢菌(Shigella)(ソンネ菌、フレキシネル菌(S.flexneri)、志賀赤痢菌(S.dysenteriae)又はボイド菌(S.boydii)など)、サルモネラ・エンテリカ各血清型(パラチフス(Paratyphi)A菌、B菌若しくはC菌、腸炎菌(Enteritidis)、チフス菌(Typhi)又はネズミチフス菌など)、インフルエンザ菌(例えば、無莢膜型インフルエンザ菌))、コレラ菌(Vibrio cholerae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、マイコバクテリウム・スメグマチス、(Mycobacterium smegmatis)、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)BCG、大腸菌(Escherichia coli)、バクテロイデス属(Bacteroides)(ポルフィロモナス属(Porphyromonas)を含む)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、ゼノラブダス・ネマトフィルス(Xenorhabdus nematophilus)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)又はボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)が挙げられる。
【0045】
特に好ましい細菌は、ソンネ菌、フレキシネル菌、サルモネラ菌及び髄膜炎菌(meningococcus)、特に髄膜炎菌血清群Bのうちの少なくとも1つから選択される。
【0046】
病原性赤痢菌株は、病原特性を媒介する220kbプラスミドを保有している。この「病原性プラスミド」は、標的上皮細胞に対する付着因子、侵入プラスミド抗原、virF、virGなどを包含する、赤痢菌病原性のいくつかの態様についての遺伝子をコードしていることが示されている。本発明において使用される赤痢菌は、病原性プラスミドを保有していても保有していなくてもよい。そのプラスミドの非存在は、工業培養の際に株を安定させ、病原性因子を除去することによって株を弱毒化し(それにより製造の安全性を向上させ)、ShET-2エンテロトキシン(プラスミド上のospD3又はsen遺伝子によってコードされている)の存在を回避し、リピドAのアシル化を担うmsbB遺伝子の第2のコピーであるmsbB2の存在を回避することができる。病原性プラスミドの非存在も、リポ多糖を破壊し得る。しかし、-OAgに関する生合成遺伝子は、変異した病原性プラスミドの維持によって、又はさらなるプラスミドへの組込み若しくは細菌性染色体へのクローニングによって、好ましくは保持されるべきである。
【0047】
サルモネラ菌に関する限り、特に好ましい株は、ネズミチフス菌、腸炎菌及びパラチフスA型から選択される。
【0048】
髄膜炎菌nOMVも好ましい。そのような小胞は、任意の髄膜炎菌株から調製され得る。小胞は、血清群B株から好ましくは調製されるが、当技術分野において公知の手順により、A、C、W135又はYのうちの1つなどのB以外の血清群から調製することも好ましい。株は、任意の血清型(例えば1、2a、2b、4、14、15、16など)、任意の血清亜型(例えばP1.4)及び任意の免疫型(例えばL1、L2、L3、L3,7、L3,7,9、L10など)のものであってよい。髄膜炎菌は、高侵入性及び高病原性系列、好ましくは次の7種の高病原性系列:サブグループI;サブグループIII;サブグループIV-1;ET-5複合体;ET-37複合体;A4クラスター;系列3のいずれかを含む任意の好適な系列由来であってよい。最も好ましくはOMVは、NZ98/254株、又はP1.4 PorA血清亜型を有する別の株から調製される。
【0049】
別の実施形態では、本発明のために有用なnOMVを調製するための細菌は、例えば小胞産生を増強するため、1つ以上の所望の抗原を発現するため、及び/又は望ましくない遺伝子(例えば、毒素をコードしているもの若しくはエンドトキシンなどの毒性産物を生成することに関与している酵素をコードしているもの)をノックアウト若しくは改変するために操作された変異株であってよい。
【0050】
この方向において、本発明のための他の好ましいnOMVは、サルモネラ菌、特に、機能性TolRタンパク質を発現しないネズミチフス菌(サルモネラ・エンテリカ血清型チフィムリウム(Salmonella enterica serovar Typhimurium)としても知られる)によって産生される。
【0051】
小胞が大腸菌、赤痢菌又はサルモネラから調製される場合、その細菌は、TolA、TolB、TolQ、TolR及びPalタンパク質のうち4種以下を発現し得る。よって天然の5種のタンパク質のTol-Pal系からの少なくとも1つのタンパク質は、存在しなくてもよく、培養培地における増殖の際に、5種すべてのTol-Palタンパク質を発現する同じ細菌よりも多量の外膜小胞を培地中に放出する細菌をもたらす。好ましくはTolRは発現されないが、他の4種のタンパク質は発現されてよい(すなわちΔTolR株)。
【0052】
好ましい実施形態では、大腸菌、赤痢菌又はサルモネラにおける5種のTol-Palタンパク質のうちの少なくとも1つは、例えばタンパク質をコードする遺伝子の欠失又は不活性化によって除去される。それにより細菌は、TolA、TolB、TolQ、TolR及びPalタンパク質の0、1、2、3又は4種を発現し得る。5種のタンパク質の内の1つの除去で十分であり得るが、その場合細菌はこれらのタンパク質の内の4つだけを発現する。好ましくはTolRタンパク質が例えば出発株のtolR遺伝子の不活性化によって除去される。それにより好ましい細菌は、tolA+ tolB+ tolQ+ TolR- Pal+であってよい。
【0053】
一部の実施形態では細菌は、5種すべてのTol-Palタンパク質を発現するが、少なくとも1つは高ブレブ形成を生じるように変異している。例えばTolA、TolQ、TolR及び/又はPalタンパク質は、タンパク質が、その膜局在性を保持しているが、Tol-Pal系の他のメンバーとのその相互作用は破壊されるように変異し得る。それにより細菌は、TolA、TolQ及びTolRを内膜中の膜貫通タンパク質として保持し、Palタンパク質を外膜中のペリプラズムに面するリポタンパク質として保持するが、TolA、TolQ、TolR及び/又はPalタンパク質のうちの少なくとも1つは変異しており、完全には機能性でない。
【0054】
さらに、他の変異が、例えば-OAg官能基が所望の免疫応答のために意図されない場合、又は-OAgが異種抗原に対する免疫原性に否定的な影響を与える可能性がある場合に、例えばOAg欠損株を生じるように存在してよい。この方向で、可能性がある変異は、大腸菌、赤痢菌又はサルモネラ株におけるΔgalU、ΔgalE又はΔwbaPであってよい。
【0055】
さらに好ましい一実施形態では、髄膜炎菌は、機能性MltAタンパク質を発現しない。髄膜炎菌におけるMltA(膜結合型溶解性トランスグリコシラーゼ、GNA33としても知られる)のノックアウトは、多量のnOMVを、それらを容易に精製できる培養培地に自発的に放出する細菌を提供する。例えば小胞は、(i)小胞がそれらのサイズが異なることに基づいて細菌から分離され、小胞がろ液に通過する第1ろ過ステップ、及び(ii)小胞が残余分に保持される第2ろ過ステップを含む2段階サイズろ過工程を使用して精製できる。
【0056】
本発明では、-OAgが防御抗原として作用できることから前記nOMVの表面上の-OAgの存在が、二価ワクチン提供することに有利であることを本発明者らが観察した(例えば、サルモネラ及び赤痢菌由来のnOMV)ことから、-OAgがnOMV上に存在することが好ましい。一部の好ましい株は、ペンタ又はテトラ-アシル化低毒性LPSを有し、それはmsbB、htrB、ddg及び/又はPagPの変異後に、結合された-OAgを含む(例えばRossi O et al, Clin Vaccine Immunol. 2016 Apr 4;23(4):304-14及びRossi O et al, J Biol Chem. 2014 Sep 5;289(36):24922-35を参照されたい。
【0057】
ナイセリア属菌では、株は、好ましくは改変fur遺伝子を有する。本実施形態によれば、変異ナイセリア属菌は、LPSのリピドA部分を毒性にすることに関与する少なくとも1つの遺伝子、特にlpxl1遺伝子の発現を低減又はそのスイッチを切るように操作されている。このように生じたnOMVは、アシル化リピドAの低アシル化形態への変換のために、野生型株に対して低減された毒性を示す。
【0058】
同様に、本発明のための好ましい変異ナイセリア属菌は、莢膜糖合成又は排出に関与する少なくとも1つの遺伝子、特にsynX及び/又はctrA遺伝子の発現を低減する又はそのスイッチを切るように操作されている。このように生じたnOMVは、さまざまな血清型に対して交差防御を示すことができ、そのことは当業者によって特に認められている。
【0059】
好ましい実施形態では株は、例えばFukusawa et al. (1999), Vaccine 17:2951-2958において開示されているノックアウト及び/又は高発現変異の1つ以上を含み得る。例えば、その中の指針及び命名法に従って、下方制御及び/又はノックアウトのために有用な遺伝子として:(a)Cps、CtrA、CtrB、CtrC、CtrD、FrpB、GalE、HtrB/MsbB、LbpA、LbpB、LpxK、Opa、Opc、PilC、PorB、SiaA、SiaB、SiaC、SiaD、TbpA、及び/若しくはTbpB;(b)CtrA、CtrB、CtrC、CtrD、FrpB、GalE、HtrB/MsbB、LbpA、LbpB、LpxK、Opa、Opc、PhoP、PilC、PmrE、PmrF、SiaA、SiaB、SiaC、SiaD、TbpA、及び/若しくはTbpB;(c)ExbB、ExbD、rmpM、CtrA、CtrB、CtrD、GalE、LbpA、LpbB、Opa、Opc、PilC、PorB、SiaA、SiaB、SiaC、SiaD、TbpA、及び/若しくはTbpB;又は(d)CtrA、CtrB、CtrD、FrpB、OpA、OpC、PilC、PorB、SiaD、SynA、SynB、SynX及び/若しくはSynCが挙げられる。
【0060】
上に述べたとおり、本コンジュゲートは、少なくとも1つのnOMV表面糖成分(好ましくは、関連した-OAgに含まれる)を、1つ以上の外来性の、すなわち小胞の一部を形成しない、選択された抗原と結合することによって得られる。
【0061】
nOMV糖成分に関する限り、本明細書に詳細に後述されるとおり、それはnOMVの表面(例えばLPS又はLOS中)に天然で存在する-OAg官能基の一部であってよく、又は異なるnOMV表面部分内、例えばCPSに存在してもよいことは注目されるべきである。有利なことに、任意の適切な抗原は、本発明のnOMV-抗原コンジュゲートを得るために、好ましくは(多)糖又はポリペプチドの形態で、nOMVにコンジュゲートされ得る。いずれの場合でも、1つ以上の選択された抗原の結合は、前記抗原を認識し、nOMV中の1つ以上の構成成分をも認識し、それにより多価ワクチンの調製のために好都合に有用である免疫応答を生じさせることができる免疫原性コンジュゲートをもたらす。抗原は、宿主に投与された場合に、その抗原を認識する免疫応答を惹起するのに十分高い濃度で本コンジュゲート中に含まれる。さらに免疫応答は、好ましくは、抗原が由来する病原体に対して、さらにより好ましくは下に列挙する病原体の1つに対して防御的である。
【0062】
本発明の一実施形態では、nOMVは少なくとも1つの同種抗原、すなわちnOMVが由来するのと同じ生物由来の抗原、にコンジュゲートされる。さらに好ましい実施形態では、選択された抗原は、異種抗原であり、すなわちnOMVが由来する生物と異なる生物由来の抗原である。
【0063】
いずれの場合でも抗原は、任意の免疫原性ポリペプチド、すなわち対象に投与された場合に免疫応答を惹起できるポリペプチドから一般に選択される。本発明で使用されるポリペプチドは、コンジュゲーションのために好適な官能基、好ましくはアミノ又はチオール基、さらにより好ましくは一般式:-NH2若しくは-SHを有する残基又は側鎖を有するアミノ酸を含む。これらの残基は、抗原に天然で存在していてよく、又はそれらはコンジュゲーションの目的のために人工的に導入されてよい。好ましいアミノ酸残基として、以下に限定されないが:アルギニン、リシン、アスパラギン、グルタミン、システイン及びヒスチジンが挙げられる。コンジュゲーションのために最も好ましいアミノ酸残基は、リシンである。実際、その-NH2側鎖は、nOMV糖成分由来の活性化された酸化-OHと反応でき、それにより、本明細書に詳細に開示される方法により還元的アミノ化によって得られたアルデヒド基と反応できる。
【0064】
ポリペプチド抗原は、実質的に純粋又は実質的に単離された形態(すなわち、他のポリペプチドを実質的に含まない)で好ましくは調製される。それらは、種々の手段、例えば化学合成(少なくとも部分的には)によって、プロテアーゼを使用する長いポリペプチドの消化によって、RNAからの翻訳によって、細胞培養物から(例えば、組換え発現から又は天然培養物から)の精製によってなどによって調製されてよい。大腸菌宿主における組換え発現は、有用な発現経路である。ポリペプチド抗原は、種々の形態(例えば、未変性、融合、グリコシル化、非グリコシル化、脂質付加、ジスルフィド架橋など)であってよい。
【0065】
本発明で使用されるポリペプチド抗原は、好ましくは少なくとも1kDa、より好ましくは少なくとも3.5kDa、さらにより好ましくは10~80kDaの平均分子量を有する。さらにより好ましくは、平均分子量は15~75kDaを含む。
【0066】
本発明によるnOMVへのコンジュゲーションのためのさらに好ましいポリペプチド抗原は、真菌性、細菌性、原生動物又はウイルスポリペプチド由来のエピトープを含む。好ましい原生動物ポリペプチドは、マラリア原虫(Plasmodium)(熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)など)由来である。特に好ましい細菌性ポリペプチドは、大腸菌、N.メニンギティディス及び連鎖球菌属(Streptococci)(S.アガラクチア(S.agalactiae)、肺炎球菌(S.pneumoniae)、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)など)から選択される。
【0067】
好ましい大腸菌ポリペプチド抗原として、CTF1232、405及び3526が挙げられる。非限定的な好ましい例として、赤痢菌又はサルモネラ由来nOMVは、腸内毒素原性大腸菌(ETEC)及び赤痢菌/サルモネラの両方をカバーする二価ワクチンを生成するために、本発明によりCTF1232にコンジュゲートされてよい。
【0068】
一実施形態では検討されるN.メニンギティディスポリペプチドは、哺乳動物に投与された場合、髄膜炎菌に対して殺菌性である抗体応答を惹起できる。本発明での使用のために好ましいN.メニンギティディスポリペプチドは、下に詳細に記載されるとおり:NHBA、NadA、NsPA、NhhA、App及びfHbpのうちの少なくとも1つから選択される。
【0069】
NHBA抗原
NHBA抗原は、遺伝子NMB2132(GenBankアクセッション番号GI:7227388;本明細書では配列番号2)として髄膜炎菌血清群B株MC58に関する公表されたゲノム配列に含まれた。多数の株由来のNHBA抗原の配列が、その後、公表されている。NHBA抗原の種々の免疫原性断片も報告されている。本発明での使用のための好ましいNHBA抗原は、(a)配列番号2に対して50%以上の同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又はそれ以上)を有するか、及び/又は(b)配列番号2の少なくとも「n個」連続したアミノ酸の断片を含み、ここで「n個」が7個以上である(例えば8個、10個、12個、14個、16個、18個、20個、25個、30個、35個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個以上)、アミノ酸配列を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号2由来のエピトープを含む。本発明の最も有用なNHBA抗原は、対象への投与後に、配列番号2のアミノ酸配列からなる髄膜炎菌ポリペプチドに結合できる抗体を惹起できる。本発明での使用のための有利なNHBA抗原は、対象への投与後に殺菌性抗髄膜炎菌抗体を惹起できる。
【0070】
NadA抗原
NadA抗原は、遺伝子NMB1994(GenBankアクセッション番号GI:7227256;本明細書では配列番号3)として髄膜炎菌血清群B株MC58に関する公表されたゲノム配列に含まれた(例えばTettelin et al. (2000) Science 287:1809-1815を参照されたい)。多数の株由来のNadA抗原の配列が、その後、公表されており、ナイセリアアドヘシンとしてのタンパク質の活性は、十分考証されている。NadAの種々の免疫原性断片も報告されている。本発明での使用のための好ましいNadA抗原は、(a)配列番号3に対して50%以上の同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又はそれ以上)を有するか、及び/又は(b)配列番号3の少なくとも「n個」連続したアミノ酸の断片を含み、ここで「n個」が7個以上である(例えば8個、10個、12個、14個、16個、18個、20個、25個、30個、35個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個以上)、アミノ酸配列を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号3由来のエピトープを含む。本発明の最も好ましいNadA抗原は、対象への投与後に、配列番号3のアミノ酸配列からなる髄膜炎菌ポリペプチドに結合できる抗体を惹起できる。本発明での使用のための有利なNadA抗原は、対象への投与後に殺菌性抗髄膜炎菌抗体を惹起できる。配列番号7は、そのような断片の1つである。
【0071】
NspA抗原
NspA抗原は、遺伝子NMB0663(GenBankアクセッション番号GI:7225888;本明細書では配列番号4)として髄膜炎菌血清群B株MC58に関する公表されたゲノム配列に含まれた(例えばTettelin et al. (2000) Science 287:1809-1815を参照されたい)。多数の株由来のNspA抗原の配列が、その後、公表されている。NspAの種々の免疫原性断片も報告されている。本発明での使用のための好ましいNspA抗原は、(a)配列番号4に対して50%以上の同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又はそれ以上)を有するか、及び/又は(b)配列番号4の少なくとも「n個」連続したアミノ酸の断片を含み、ここで「n個」が7個以上である(例えば8個、10個、12個、14個、16個、18個、20個、25個、30個、35個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個以上)、アミノ酸配列を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号4由来のエピトープを含む。本発明の最も好ましいNspA抗原は、対象への投与後に、配列番号4のアミノ酸配列からなる髄膜炎菌ポリペプチドに結合できる抗体を惹起できる。本発明での使用のための有利なNspA抗原は、対象への投与後に殺菌性抗髄膜炎菌抗体を惹起できる。
【0072】
NhhA抗原
NhhA抗原は、遺伝子NMB0992(GenBankアクセッション番号GI:7226232;本明細書では配列番号5)として髄膜炎菌血清群B株MC58に関する公表されたゲノム配列に含まれた(例えばTettelin et al. (2000) Science 287:1809-1815を参照されたい)。多数の株由来のNhhA抗原の配列が、その後、公表されており、例えばWO00/66741及びWO01/55182、NhhAの種々の免疫原性断片が報告されている。Hsfとしても知られている。本発明での使用のための好ましいNhhA抗原は、(a)配列番号5に対して50%以上の同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又はそれ以上)を有するか、及び/又は(b)配列番号5の少なくとも「n個」連続したアミノ酸の断片を含み、ここで「n個」が7個以上である(例えば8個、10個、12個、14個、16個、18個、20個、25個、30個、35個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個以上)、アミノ酸配列を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号5由来のエピトープを含む。本発明の最も好ましいNhhA抗原は、対象への投与後に、配列番号5のアミノ酸配列からなる髄膜炎菌ポリペプチドに結合できる抗体を惹起できる。本発明での使用のための有利なNhhA抗原は、対象への投与後に殺菌性抗髄膜炎菌抗体を惹起できる。
【0073】
App抗原
App抗原は、遺伝子NMB1985(GenBankアクセッション番号GI:7227246;本明細書では配列番号6)として髄膜炎菌血清群B株MC58に関する公表されたゲノム配列に含まれた(例えばTettelin et al. (2000) Science 287:1809-1815を参照されたい)。多数の株由来のApp抗原の配列が、その後、公表されている。Appの種々の免疫原性断片も報告されている。本発明での使用のための好ましいApp抗原は、(a)配列番号6に対して50%以上の同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又はそれ以上)を有するか、及び/又は(b)配列番号6の少なくとも「n個」連続したアミノ酸の断片を含み、ここで「n個」が7個以上である(例えば8個、10個、12個、14個、16個、18個、20個、25個、30個、35個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個以上)、アミノ酸配列を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号6由来のエピトープを含む。本発明の最も好ましいApp抗原は、対象への投与後に、配列番号6のアミノ酸配列からなる髄膜炎菌ポリペプチドに結合できる抗体を惹起できる。本発明での使用のための有利なApp抗原は、対象への投与後に殺菌性抗髄膜炎菌抗体を惹起できる。
【0074】
fHbp抗原
H因子結合タンパク質は、3種のバリアント(v1、v2及びv3)として存在し、本発明は、これらのいずれも好ましい実施形態として使用できる。
【0075】
v1 fHbpは、(a)配列番号8に対して少なくともk'%の同一性を有するアミノ酸配列、及び/又は(b)配列番号8の断片を好ましくは含む。k'は、同一性の百分率を指し、1から100までの任意の数として定められ得る。アミノ酸又は核酸配列に関して、一般に、本出願において使用される同一性は、具体的な参照体に対し、少なくとも40%から始まり、より高い百分率、すなわち70%、75%、80%等までである。
【0076】
断片は、配列番号8由来の少なくとも1つのエピトープを好ましくは含む。好ましくはv1 fHbpは、v1株に対して、例えばMC58株(ATCCから「BAA-335」として入手可能である)に対して殺菌性である抗体を惹起できる。
【0077】
v2 fHbpは、(a)配列番号1に対して少なくともk'%の同一性を有するアミノ酸配列、及び/又は(b)配列番号1の断片を好ましくは含む。「k」及び断片についての情報は上に示されている。断片は、配列番号1由来の少なくとも1つのエピトープを好ましくは含む。好ましくはv2 fHbpは、v2株に対して、例えばM2091 (ATCC 13091)株に対して殺菌性である抗体を惹起できる。
【0078】
v3 fHbpは、(a)配列番号9に対して少なくともk'%の同一性を有するアミノ酸配列、及び/又は(b)配列番号9の断片を好ましくは含む。「k」及び断片についての情報は上に示されている。断片は、配列番号9由来の少なくとも1つのエピトープを好ましくは含む。好ましくはv3 fHbpは、v3株に対して、例えばM01-240355株に対して殺菌性である抗体を惹起できる。
【0079】
A群連鎖球菌(Group A Streptococcus)(GAS)、B群連鎖球菌(Group B Streptococcus)(GBS)及び肺炎連鎖球菌属(Pneumococcus)由来の抗原も同等に好ましい。非限定的な例として、GAS25(Slo)、GAS40(SpyAD)及びGAS57(SpyCEP)抗原は、本発明の一部の実施形態によりコンジュゲートに組み込まれてよい。
【0080】
マラリア原虫抗原は、さらに好ましい。これらは、任意の好適な種由来であってよく、好ましい種は、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫及び卵形マラリア原虫から選択される。
【0081】
さらに別の好ましい抗原は、寄生生物の接合子及びオーキネート形態の表面に発現される熱帯熱マラリア原虫の有性段階抗原であるPfs25(配列番号10)である。別の好ましい抗原は、伝播阻止ワクチン候補であるPfs48/45である。近年、伝播阻止抗体に関する3個の公知のエピトープを含有している、Pfs48/45のC末端10システイン断片(10C)が、GLURP(RO)、無性血液段階抗原グルタミン酸リッチタンパク質、のN末端部分とのキメラとして作製された。得られた融合タンパク質(RO10C)は、げっ歯類において高レベルの伝播阻止抗体を惹起した(Theisen et al. (2014) Vaccine 32:2623-2630を参照されたい)。Shing et al. (2015) Vaccine 33:1981-1986は、正しくフォールドされたコンフォーマーの収量を増加させる末端切断型6C-断片を含有するキメラについて記載している。RO6C構築物は、ラットにおいて高力価伝播阻止抗体を惹起できた。RO6C(配列番号11)は、本発明によりコンジュゲートされ得る好ましい抗原である。
【0082】
別の好ましい抗原は、スポロゾイト周囲タンパク質(CSP;配列番号12)である。
【0083】
CSP由来のより短いペプチドも、本発明によりコンジュゲートされてよい。例えば、CSP由来の12アミノ酸(NANP)3ペプチド(配列番号13)は、好ましい実施形態で使用され得る。
【0084】
さらに別の好ましい実施形態では、抗原は糖類種である。実際に本発明は、1つ以上の選択された糖抗原をnOMVにコンジュゲートするためにも好適であり、それにより糖は、それらの全長天然形態で使用され得る。代替として、特定のサイズの画分も有利に選択され得る。したがって糖は、それらの天然の長さから断片化されてもよく、任意選択でこれらの断片のサイズ画分が使用されてもよい。さらに糖は、天然原料から精製された糖に限定されず、合成又は半合成糖が代わりに使用されてよい。
【0085】
好ましい糖抗原は、細菌性莢膜糖(CPS)である。これらとして、以下に限定されないが、インフルエンザ菌B型;ナイセリア・メニンギティディス血清群A、C、W135、X及びY;肺炎球菌血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F及び33F;チフス菌(Salmonella enterica serovar Typhi) を含むサルモネラのVi、全長又は断片(fViと示される)のいずれか;ストレプトコッカス・アガラクチア血清型Ia、Ib及びIII;化膿連鎖球菌、赤痢菌種、A及びB群連鎖球菌(それぞれGAS及びGBS)、のうちの少なくとも1つから選択される莢膜糖が挙げられる。より好ましい糖抗原は、ナイセリア・メニンギティディス血清群A及びC由来である。したがって、本発明の実施形態によれば、nOMVは、MenB由来のGMMAであり、選択された抗原はMenA又はMenC由来の莢膜糖である。さらなる追加的実施形態では、本発明は、多糖残基を介してMenA抗原由来の莢膜糖にコンジュゲートされたMenB由来のGMMAに言及しており、ここで前記GMMAは、異なる多糖残基を介してMenC抗原にもコンジュゲートされており、それにより、より詳細に後述するとおり、二官能基化GMMA小胞を得る。
【0086】
いずれの場合でも、及び上に述べたとおり、選択された抗原は、同じ細菌株に由来するか又は異なる細菌株にさえ由来するnOMVにコンジュゲートされてよく、それにより多価コンジュゲートを提供する。これに関して、本発明のより好ましい実施形態では、nOMV及び糖抗原は、異なる細菌株由来である。
【0087】
他の好ましい糖抗原は、βグルカンであり、C.アルビカンス(C.albicans)に対する防御のために特に有用である(一般的参考文献として、Sandlin et al. (1995) Infect. Immun., 63:229-37を参照されたい)。
【0088】
他の好ましい糖抗原は、A群連鎖球菌(GAS)に対する防御のためのポリラムノースオリゴ糖である。未変性のGAS糖は、NAcGlcNで置換されたポリラムノース骨格を有する。ポリラムノースの合成オリゴ糖、又は未変性のGAS糖の構造を有するオリゴマーを、本発明によりnOMVにコンジュゲートしてもよい。
【0089】
好ましい実施形態によれば、本発明のnOMVコンジュゲートは、選択された抗原に直接結合されたnOMV表面糖成分を含み、ここで直接の結合は、本願の実施例4に例示されるとおり、糖成分の活性化とその後の選択された抗原との直接反応(例えば還元的アミノ化による)によって達成され得る。同等に好ましい実施形態では、nOMVは、本明細書においてより詳細に記載され、実施例3において例示されるとおり、選択された抗原に間接的に、すなわちリンカー成分を介して、結合される。
【0090】
本発明のコンジュゲートは、マウスにおける研究によって実証され、実験パートを含む本明細書によって裏付けられるとおり、免疫原性である。有利なことに、コンジュゲートされた抗原に対する免疫応答を誘導できることに加えて、本発明のコンジュゲートは、nOMV構成成分に対する免疫応答も誘導でき、それによりその多価免疫原性組成物の調製のための良好な候補である。実際、nOMVの表面に存在する糖成分を通じた選択された抗原のコンジュゲーションは、dOMVとは異なり、それら自体の免疫応答を誘導するnOMVの能力に対しネガティブな影響を与えないことが驚くべきことに観察された。したがって、本発明のコンジュゲートは、nOMV及びコンジュゲートされた異種抗原の両方が良好な免疫原性を示し、ワクチン調製のために好適な例えば二価免疫原性物質として有用であり得る。同様に、例えば本願実施例5及び6において裏付けられるとおり、本発明のコンジュゲートがマウスにおいて、抗OAg IgG応答には影響を与えずに、高い抗抗原特異的IgG応答を誘導することが有利に見出された。本発明のコンジュゲートは、例えば実施例3~6に記載のとおり、未コンジュゲート抗原と比較してさらにいくつかの利点を与える。
【0091】
前述のとおり、さらなる態様では、本発明は、nOMV表面糖成分を活性化する第1のステップ、及びそれによって得られた活性化小胞を少なくとも1つの選択された抗原に対し、任意選択で二価リンカーを介して、結合する第2のステップを含む、上述のコンジュゲートを調製する方法に言及する。
【0092】
本方法によれば、nOMV上の少なくとも1つの糖成分は、1つの選択された抗原(上述のもの)にコンジュゲートされ、本発明のコンジュゲートを形成する。異なる実施形態によれば、2つ以上の糖成分は2つ以上の異なる選択された抗原にコンジュゲートされ、それにより、多価免疫原性組成物の調製のために特に好適な2つ以上の異なる抗原にコンジュゲートされたnOMV誘導体を提供する。上に示されるとおり、結合ステップは、典型的にはnOMV表面糖成分及び/又は選択された抗原を活性化することを含む。同様に、結合ステップは、下に詳述するとおり、nOMV糖成分と選択された抗原との間にリンカーを導入することを含み得る。したがって一実施形態では、本発明の方法は、(i)nOMV表面上の糖成分を活性化するステップ;及び(ii)活性化成分を選択された抗原と直接結合して、本発明のnOMVコンジュゲートを得るステップを含む。
【0093】
代替的実施形態として、本発明の方法は、(i)nOMV表面上の糖成分を活性化するステップ;(ii)活性化成分を二価リンカー基に結合して小胞-リンカーコンジュゲートを形成するステップ;及び(iii)選択された抗原を小胞-リンカーコンジュゲートに結合して本発明のnOMVコンジュゲートを形成するステップを含む。
【0094】
別の代替的実施形態として、本発明の方法は、(i)nOMV表面上の糖成分を活性化するステップ;(ii)抗原リンカーコンジュゲートを形成するように選択された抗原を二価リンカー基に結合するステップ;及び(iii)本発明のnOMVコンジュゲートを形成するようにステップ(i)の活性化成分を抗原リンカーコンジュゲートに結合するステップを含む。
【0095】
別の代替的実施形態として、本発明の方法は、(i)nOMV表面上の糖成分を活性化するステップ;(ii)活性化成分を二価リンカー基に結合して小胞-リンカーコンジュゲートを形成するステップ;(iii)選択された抗原を二価リンカー基に結合して抗原-リンカーコンジュゲートを形成するステップ;及び(iv)ステップ(ii)のリンカー成分をステップ(iv)の抗原-リンカーコンジュゲートに結合して本発明のnOMVコンジュゲートを形成するステップを含む。
【0096】
nOMV糖成分に関する限り、それが-OAg官能基の、又はnOMVの表面に天然で存在するコア領域の、一部であってよく(例えばLPS若しくはLOS中)、又は異なるnOMV表面部分、例えばCPS内に存在してもよいことに注目すべきである。これらのすべての好ましい場合では、本発明の方法は、前記糖成分と選択された抗原との結合を簡易かつ効果的な方法で可能にし、それにより本発明の顕著な免疫原性活性を備えた最終nOMVコンジュゲートをもたらす。有利なことに、-OAgの存在は、選択された抗原に対する応答に実質的に干渉しない。比較の実施例9a~cは、本方法がdOMVに適用される場合、抗原とのコンジュゲーションは生じず、それにより望ましい小胞-抗原コンジュゲートの形成が妨げられることを示している。
【0097】
nOMVが調製される由来種に応じて、種々の糖成分(四糖、五炭糖及び六炭糖を包含する)は、活性化及びそれに続くコンジュゲーションのために使用され得る。好ましくは、-OAg部分若しくはコア領域を介したリポ多糖、又は莢膜糖は、活性化及びその後のコンジュゲーションのために使用され得る。好ましい糖成分は、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、リボース、アベクオース、ガラクトサミン、グルコサミン、マンノサミン、シアル酸、スルホキノボース、エリトロース、トレオース、アラビノース、ラムノース、ソルボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、タガトース又はケト-デオキシオクツロソネート(deoxyoctulosonate)のうちの少なくとも1つから選択される。nOMV上の糖成分は、TEMPO又は過ヨウ素酸塩などの好適な酸化剤の存在下で、糖のヒドロキシル基を酸化し、カルボニルアルデヒド官能基を形成することによって、好ましくは活性化される。後者は、アルカリ過ヨウ素酸塩又はメタ過ヨウ素酸、より好ましくはNaIO4から好ましくは選択される。酸化剤は、好ましくは、0.5mMから20mMまで、好ましくは3mMから20mMまでの範囲の濃度の水溶液として使用され、さらにより好ましくは、10~20mM、及び0.5~5mM又は3~5mMの濃度である。一部の実施形態による他の活性化反応は、CDAP(例えば、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート)などのシアニル化試薬、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン(norborane)、p-ニトロ安息香酸、N-ヒドロキシスクシンイミド、S-NHS、EDC及びTSTUの存在下で生じる。
【0098】
一般に、多糖が酸化される場合、利用可能な全ての糖が酸化される必要はない。実際に、天然糖構造の少なくとも一部、特に、有用な抗原がある場所は、保持されることが望ましい場合がある。同様に注目されるのは、上に詳述される特有のnOMV組成及び立体構造のために、多糖成分は、高度に反応性の酸化nOMV中間体種の形成をもたらす本方法によって好都合に活性化され得るという事実である。好ましい実施形態では、目的の所与の糖成分について、酸化された残基の割合は、1%から100%、好ましくは10~50%又は20~40%又は20~35%の範囲でよく、一方、-OAg構造内の20~35%の酸化は、特に好ましい。この方向において、前記範囲の-OAg構造完全性への影響がわずかか又は実質的になく、効率的なコンジュゲーションを可能にすることが見出されている。同様に、より高いnOMV酸化程度がより低い-OAgサイズに対応することが注目され、未変性-OAg構造及び特異的免疫応答を惹起するその能力に大きな影響があることを意味している。酸化された残基の割合は、高速アニオン交換クロマトグラフィー-パルスドアンペロメトリー検出器(HPAEC-PAD)によって、酸化前及び後の無傷の糖残基を比較することによって決定され得る。この方向において、例えば本実施例2、表2cに示されるとおり、酸化剤及びnOMVの濃度が、pHと共に酸化ステップの全般的遂行に影響を与える場合があることが見出された。したがって、好ましい実施形態では酸化剤は、出発nOMVを超える過剰で使用され、ここで酸化に供され得る単糖の数に対して3:1又は2:1のモル過剰は特に好ましい。酸化剤は、0.5mM~20mM、好ましくは3mM~20mMの範囲の濃度の水溶液として好ましくは使用され、ここで濃度、10~20mM及び0.5~5mM又は3~5mMは、さらにより好ましい。
【0099】
nOMVの濃度は、好ましくは0.2~5mg/mLの間に含まれる。
【0100】
好ましくはpHは、4から8の間に含まれるが、5から7の値は特に好ましい。この範囲にまでpHは、酢酸塩/リン酸塩(phospate)などの緩衝剤を使用して調整されてよい。
【0101】
前記パラメーターは、供される糖成分について20%から35%の間で含まれる好ましい程度の酸化を有するように好都合に設定され得る。これは、糖成分構造に実質的に影響を与えることなく、選択された抗原との効率的なさらなるコンジュゲーションを有することを可能にする。
【0102】
例えば、-OAg官能基中のRha残基は、例えばNaIO4を使用する下のスキーム2に示されるとおり、酸化されてよい。
【0103】
【化2】
【0104】
酸化ステップは、例えば検討されるnOMVの量及び種類に応じて、典型的には、室温(例えば約15℃~約40℃)で好適な時間、例えば30分間~3時間を含む時間にわたり、実施される。いずれの場合でも、実質的なnOMV交差反応及び/又は凝集が生じなかったことが見出された。これは、本明細書に詳細に記載されるとおり選択された抗原とのその後のコンジュゲーションステップの有効性のためにも極めて重要である。
【0105】
酸化後、nOMVは、形成されたCHO基を除去することによって酸化nOMVを安定化させるために、例えばNaBH4を用いる還元ステップに任意選択で供されてよい。安定化された酸化nOMVは、次いで保存され、及び/又はさらに特徴付けられ得る。
【0106】
典型的には、本方法の活性化ステップ後に、得られた酸化nOMVは、例えば4℃、110000rpm、30分間の超遠心分離法によって、単離及び精製させ、続いて選択された抗原と反応させる。
【0107】
したがって好ましい実施形態では、方法は、
(i)nOMV表面上の糖成分を、好ましくは酸化により活性化するステップ;
(i-2)このようにして得られた酸化nOMVを単離するステップ;及び
(ii)ステップ(ii)の酸化nOMVを、少なくとも選択された抗原と、任意選択で二価リンカーを介して結合するステップ
を含む。
【0108】
さらに好ましい実施形態では、方法は、アルカリサルファイト、好ましくはNa2SO3の存在下で実施される。これは、Na2SO3を用いた酸化反応をクエンチすることによって、工程を1ステップで実施することが可能であり、すなわち実施例5に例示されるように、中間体酸化nOMVの単離(上記ステップ(i-2))を回避できるので、特に有利である。これは、時間を節約し、それにより最終コンジュゲートを簡易かつ効果的な方法で得る。実際に、例示される実施形態によれば、活性化ステップ(i)後にその反応は、適切な量のアルカリサルファイトを用いてクエンチされ、過剰の酸化剤を中和するために適切な時間(一般に、5~20分間を含む)反応させる。その後、選択された抗原は、ステップ(ii)により混合物に直接加えられ(すなわち酸化nOMVの単離を伴わない)、それにより本発明のnOMVコンジュゲートを得る。
【0109】
代替として、酸化ステップによって得られた糖成分のカルボニルアルデヒド基は、選択された抗原と、又は、場合によってはリンカーと(この場合、選択された抗原に次いで結合され得る小胞-リンカーコンジュゲートをもたらす)反応できる適切な官能基を形成するように次にさらに改変されてよい。
【0110】
選択された抗原は、典型的には、使用されるnOMVに対して1:1のw/w比で、室温にて、適切な期間、例えば2時間~24時間を含む期間にわたり加えられる。抗原がリンカーを用いて誘導体化される場合、反応は、例えば本願実施例3に示されるとおり、nOMVを超える過剰の抗原、好ましくは2:1又はより好ましくは3:1のw/w比を使用して好都合に実施される。
【0111】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法は、(i)糖成分を酸化させるステップ;及び(ii)選択された抗原残基上のアミノ基と酸化成分とを反応させるステップを含む。さらにより好ましくは、前記選択された抗原残基は、選択された抗原のポリペプチド内のリシン残基上のアミノ-NH2基である。
【0112】
好ましくは、nOMVの酸化糖成分と抗原のアミノ基、好ましくは遊離-NH2基との結合は、還元的アミノ化、より好ましくはNaBH3CNを使用して、例えば当技術分野において公知の手順により、達成される。NaBH3CNは、酸化nOMVに対して3対1/3、好ましくは1対1を含む重量(w/w)で使用される。実際に、NaBH3CNは、選択された抗原と共に酸化nOMV中間体産物には直接加えてもよく、例示的に下のスキーム3及び4に一般に例示するように、酸化ラムノース単位を介してマラリア膜タンパク質Pfs25又はR06CにそれぞれコンジュゲートされるnOMVを使用して実施される。
【0113】
【化3】
【化4】
【0114】
代替的実施形態として、選択された抗原は、リンカー基を導入することによって、又は抗原上の官能基を、nOMV上の活性化糖成分との反応若しくは使用する場合は小胞-リンカーコンジュゲートのリンカーとの反応のために好適な別の官能基に変換することによって、のいずれかで改変してもよい。特に、選択された抗原が糖である場合、リンカーが糖鎖に沿った複数の位置で導入されることを意味する無作為に(r)、又はリンカーが糖鎖の還元末端に(すなわち1カ所だけに)導入されることを意味する選択的に(s)のいずれかにより、リンカーとの反応によって抗原は改変されてもよい。好ましい実施形態ではリンカーは、例えば実施例3において示されるとおり、選択された抗原の末端位置に選択的に導入される。
【0115】
抗原の選択的改変は、fViを抗原として使用するスキーム5に一般に示されるとおり、NaBH3CNの存在下でのアジピン酸ジヒドラジド(ADH)を用いた反応によって好ましくは達成される。抗原の無作為改変は、fViを抗原として使用するスキーム6に示されるとおり、例えばNHS/EDACを使用することによる抗原上の1つ以上のカルボン酸基の活性化、及びそれに続くADHを用いる反応によって好ましくは達成される。この種のコンジュゲーション反応は、例示的に、ADHを用いる反応によって-NH2を含むように改変されたfViに酸化ラムノース単位を介してコンジュゲートされるnOMVを使用して、下のスキーム7において例示される。
【0116】
【化5】
【化6】
【0117】
本発明の代替的実施形態は、a)アミノ基、好ましくは-NH2を含むように選択された抗原を改変するステップ;b)上に考察したとおり、糖成分のヒドロキシル基を酸化することによってnOMVを活性化するステップ、及びc)上に考察したとおり、酸化糖成分を、ステップa)の改変抗原に対し、好ましくは、還元的アミノ化によって結合するステップを含む方法に言及する。
【0118】
本発明の代替的実施形態は、活性化nOMVの酸化糖成分を改変抗原に結合し、それにより本発明のnOMVコンジュゲートを作製することを含む、nOMV-抗原コンジュゲートの作製方法に言及し、ここで抗原はアミノ基、好ましくは-NH2を含むように改変され、nOMVは糖成分のヒドロキシル基を酸化することによって活性化された。本発明のさらなる実施形態では、反応ステップは、還元的アミノ化である。
【0119】
上に詳細に記載されたとおり、本発明のnOMVコンジュゲートは、選択された抗原に直接結合された活性化nOMV表面糖成分を含む。
【0120】
同等に好ましい実施形態では、活性化nOMV表面糖成分は、選択された抗原に間接的に、例えばリンカーユニットを介して、結合される。後者は、一般に、nOMV(活性化糖成分を介して)と反応するために1つの官能基、及び選択された抗原と反応するために別の官能基を使用する、二官能性リンカーである。リンカーは、一般式(I):
X-L-X' (I)
のヘテロ二官能性リンカー又はホモ二官能性リンカーであってよく、
式中、
X及びX'基は、独立して、互いに同じ又は異なっており、活性化nOMV表面糖成分及び選択された抗原とそれぞれ反応し;
Lは連結スペーサー、好ましくは一般式(II):
-L'-L2-L'- (II)
の連結スペーサーであり、
式中、
2つのL'基は、独立して、互いに同じ又は異なっており、かつ、カルボニル(C=O)、エステル(-C(O)O-)又はアミド基(-C(O)NR1-)から選択され、式中、R1は、H若しくは直鎖、又は少なくとも3個の炭素原子を含む場合には1個~10個の炭素原子を有する分岐環状C1~C10アルキル基(例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10)であり;
L2は、1~10個の炭素原子を有し、好ましくはC4炭素原子を有し、さらにより好ましくは直鎖形態である、直鎖又は分岐C1~C10アルキル基である。
【0121】
X基は、-NH2、-NH-NH2、-O-NH2、任意選択で置換スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド及びNオキシスクシンイミド残基から好ましくは選択される。
【0122】
nOMV及び選択された抗原の両方との反応に同じ官能基が関与する場合、一般式(I)の二官能性リンカーを使用することが好ましく、式中、2つのX基の両方は同じである。
【0123】
nOMV糖成分上及び選択された抗原上の官能基が両方ともアルデヒドである場合、-NH2、-NH-NH2又は-O-NH2反応基から選択されるXを有するホモ官能性リンカーを使用することは好ましい。さらに好ましい実施形態では、リンカーは、一般式:
【化7】
のアジピン酸ジヒドラジド(ADH)である。
【0124】
リンカーは、上に記載されるとおり還元的アミノ化によってnOMV及び/又は抗原と反応し得る。
【0125】
選択された抗原のアミン基との反応のために特に有用な好ましい二官能性リンカーは、ハロゲン化アクリロイル、好ましくは塩化物、グルタル酸ジスクシンイミジル、ジスクシンイミジルスベレート及びエチレングリコールビス[スクシンイミジルスクシネート]から選択される。
【0126】
他のさらに好ましいリンカーは、β-プロピオンアミド、ニトロフェニル-エチルアミン、ハロゲン化ハロアシル、グリコシド誘導体連結、6-アミノカプロン酸から選択される。
【0127】
さらに好ましい実施形態では、リンカーは、N-ヒドロキシスクシンイミド、Nオキシスクシンイミドから、またさらにより好ましくはアジピン酸N-ヒドロキシスクシンイミドジエステル(SIDEA)から選択される。
【0128】
nOMV及び抗原との反応に異なる官能基(nOMV上のアミン及び抗原上のチオールなど)が関与する場合、ヘテロ二官能性リンカーが異なる官能基の両方と選択的に反応できるように使用されることは理解される。この場合、好ましいヘテロ二官能性リンカーは、スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート (SPDP)、スクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート (LC-SPDP)、スルホスクシンイミジル6-(3'-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド)ヘキサノエート (スルホ-LC-SPDP)、4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン (SMPT)、スルホスクシンイミジル6-[α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエアミデオ(tolueamideo)]ヘキサノエート (スルホ-LC-SMPT)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート (SMCC)、スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート (スルホ-SMCC)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル (MBS)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル (スルホ-MBS)、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート (SIAB)、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート (スルホ-SIAB)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドフェニル)ブチレート (SMPB)、スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドフェニル)ブチレート (スルホ-SMPB)、N-γ-マレイミドブチリル-オキシスクシンイミドエステル (GMBS)、N-γ-マレイミドブチリル-オキシスルホスクシンイミドエステル (スルホ-GMBS)、スクシンイミジル6-((((4-(ヨードアセチル)アミノ)メチル)シクロヘキサン-1-カルボニル)アミノ)ヘキサノエート (SIACX)、スクシンイミジル6[6-(((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサノイル)アミノ]ヘキサノエート (SIAXX)、スクシンイミジル4-(((ヨードアセチル)アミノ)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート (SIAC)、並びにスクシンイミジル6-[(ヨードアセチル)アミノ]ヘキサノエート (SIAX)及びp-ニトロフェニルヨードアセテート (NPIA)ののうちの少なくとも1つから選択される。
【0129】
さらなる実施形態では、その方法は、未反応の選択された抗原を、特にポリペプチドの形態にある場合、リサイクルする可能性を含む。この範囲まで、コンジュゲーション混合物由来の未反応抗原をコンジュゲーションステップにおいて好都合にリサイクルすることができ、それにより本発明のコンジュゲートの全体的な製造効率を改善し、顕著な免疫原性をなお備えた最終コンジュゲートを得られることが見出された(本願実施例6を参照されたい)。
【0130】
上に詳細に説明されたとおり、本方法は、同様にコンジュゲートされた誘導体の調製のための以前の方法(例えば、dOMVから出発)と比較した場合に、より少ないステップが必要である簡易かつ便利な方法で本発明のnOMVコンジュゲートの調製を可能にする。したがって本発明は、上に記載される実施形態に従って本発明の方法によって得られた(又は得られる)nOMVコンジュゲートにも言及する。特に、本方法は、ポリペプチド抗原誘導体化の高価なステップを必ずしも必要とせず、また出発小胞の抽出(例えば、界面活性剤を使用する)又は変性を実施しない。本発明のnOMVの製造及び精製は、実際、伝統的担体タンパク質についてよりも高価でなく、dOMVの製造よりロバストで一貫している。本発明において使用されるnOMVは、例えば2つの簡易なタンジェンシャルフローろ過ステップを使用し、界面活性剤抽出手順を回避して高収率で製造され得る。追加的に未反応の選択された抗原は、実施例6に例示されるとおり、方法における使用のためにコンジュゲーション混合物からリサイクルすることができ、それによりコンジュゲートの調製の効率を改善する。同様に本発明は、多価ワクチン、すなわち本明細書により詳細に記載されるようにnOMV及び選択された抗原を適正に選択することにより複数の免疫原(典型的には異なる病原体由来)を含むワクチンを調製する容易な方法を提供する。実際、その多用途性のために、本方法は、さまざまな供給源(例えば、サルモネラ、赤痢菌及び髄膜炎菌)由来のnOMVに好都合かつ効果的に適用でき、タンパク質及び糖抗原の両方に成功裏に適用される。最終的に本方法が、高免疫原性コンジュゲートの調製を可能にするだけでなく、nOMV完全性及びサイズ分布を実質的に変化させないことは注目されるべきである。これは、nOMV凝集物の非存在が本方法の良好な収率並びに全般的一貫性及びロバスト性を可能にすることから、当業者によって特に評価される。
【0131】
本発明は、選択された小胞の表面上に異なる抗原の多価提示を可能にする、種々に官能基化されたnOMVコンジュゲートの調製のためにも有用である。
【0132】
したがって、好ましい実施形態によれば、本発明は、少なくとも第1の抗原に結合された少なくとも表面糖成分を有する、上に記載される未変性の外膜小胞を含むコンジュゲートであって、前記第1の抗原は、一般式(I):
nOMV----Ag1-Ag2 (I)
の第2の異なる抗原に結合されている、コンジュゲートに言及する。
【0133】
この方向において、2つの選択された抗原(本明細書においてAg1及びAg2として示される)は、抗原-抗原誘導体(Ag1-Ag2)をもたらすように一つに結合されてもよく、それは次に、上に記載される還元的アミノ化手順により、選択されたnOMV表面糖成分に結合され得る。
【0134】
代替的に、nOMV表面糖は、上に記載される還元的アミノ化手順を介して、選択されたAg1に最初に結合されてOMV-Ag1コンジュゲートをもたらし、次に、第2のAg2が前記nOMV-Ag1コンジュゲートに結合されて上の一般式(I)のコンジュゲートをもたらすことができる。
【0135】
いずれの場合でも、好ましい未変性の外膜小胞は、GMMA小胞であり、より好ましくはナイセリアMenB由来である。Ag1及びAg2は、上に記載の好ましい抗原から選択されてよく、タンパク質又は多糖成分である。好ましくは、本明細書において意図される多官能基化のために使用される抗原は、両方ともタンパク質若しくは両方とも多糖、又はさらにタンパク質若しくは糖である。
【0136】
いずれの場合でも、抗原とnOMV糖成分との間の結合は、直接行われてもよく、又は活性化剤若しくは本明細書に記載される実施形態による好適なリンカーを使用することによって行われてもよい。
【0137】
したがって、より好ましい実施形態によれば、本発明は、上の一般式(I)のコンジュゲートに言及し、式中、Ag1は(NANP)3タンパク質抗原を含み、Ag2はPfs25タンパク質抗原を含み、より好ましくはネズミチフス菌から得たnOMV粒子を有する。
【0138】
より詳細には、前記コンジュゲートは、
a) EMCSを使用してPfs25抗原を活性化し、下に記載される活性化Pfs25中間体:
【化8】
をもたらすステップ、
b) 前記活性化Pfs25中間体と(NANP)3とを結合し、Pfs25-EMCS-(NANP)3誘導体:
【化9】
をもたらすステップ、
c)そのような誘導体のPf25部分を未変性の外膜小胞中間体と、上に記載された実施形態に従って還元的アミノ化反応により反応させ、GMMA-Pfs25-(NANP)3コンジュゲートをもたらすステップ、
を含む方法によって好ましくは調製される。
【0139】
ウエスタンブロット分析は、コンジュゲートの形成を確認し、その際、Pfs25はGMMA表面糖成分に結合され、凝集は検出されない。
【0140】
さらなる実施形態によれば、本発明は、一般式(II):
Ag1---nOMV---Ag2 (II)
によって示されるコンジュゲートをもたらすように、上に記載される還元的アミノ化手順により第1の抗原(Ag1)に結合された少なくとも表面糖成分、及び上に記載される還元的アミノ化手順により第2の異なる抗原(Ag2)に結合された少なくとも表面糖成分を有する、未変性の外膜小胞を含む免疫原性コンジュゲートに言及する。
【0141】
好ましい実施形態によれば、上の一般式(II)において、nOMVはMenB由来のGMMAであり、Ag1は髄膜炎菌(meningoccal)血清群C由来の莢膜多糖であり、Ag2は膜炎菌血清群C由来の莢膜多糖である。
【0142】
式(II)のコンジュゲートは、本発明による還元的アミノ化手順を使用し、特定の官能基化パターンを使用することによってnOMVの選択的多官能基化を有利に提供できる。当業者は、提案された技術の多用途性に照らして、本発明が、nOMV、好ましくはGMMAの、2つより多い異なる抗原を用いた、多官能基化のために好適に使用され得ることを認識する。異なる抗原を選択する可能性に加えて、本発明は、異なる量の抗原の導入も可能にし、それにより、例えば選択された抗原又はnOMVに対する抗原/nOMV比を調節することができる。
【0143】
さらなる態様では、本発明は、医薬としての、具体的には免疫原性物質としての、さらにより好ましくは本明細書に示される病原体の1つ以上に対する使用のための、上に記載されたnOMV-抗原コンジュゲートに言及する。言い換えると、本発明は、免疫原性組成物の製造のための本nOMVコンジュゲートの使用に言及する。
【0144】
さらなる態様では、本発明は、したがって、本発明のコンジュゲート及び少なくとも1つの追加的な薬学的に許容される担体、賦形剤又はアジュバントを含む免疫原性組成物、好ましくはワクチンに言及する。一般に、薬学的に許容される担体又は賦形剤は、組成物を投与されている患者に有害な抗体の産生をそれ自体は誘導せず、過剰な毒性なしに投与され得る任意の物質であってよい。薬学的に許容される担体及び賦形剤は、当技術分野において使用されるものであり、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体が挙げられる。湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質も、先行技術によるそのようなビヒクル中に存在してよい。
【0145】
本発明は、本発明のコンジュゲートを哺乳動物又は他の脊椎動物に投与することを含む、脊椎動物、好ましくは哺乳動物において免疫応答を生じさせる方法も提供する。本発明は、そのような方法における使用のための本発明のコンジュゲートも提供する。免疫応答は、好ましくは防御的であり、好ましくは抗体を含む。方法は、追加免疫(booster)応答を生じ得る。哺乳動物は、好ましくはヒトである。疾患が予防される対象は、本発明のコンジュゲートを投与される対象と同じでない場合がある。例えば、コンジュゲートは、子孫を防御するために雌(妊娠前又は妊娠中)に投与されてよい(いわゆる「母子免疫」)。本発明のコンジュゲートは、他の哺乳動物、例えばウシ、ヒツジ及びブタ(特にサルモネラ属種に対して)並びに魚及び家禽を含む他の非哺乳動物脊椎動物を免疫するためにも使用され得る。
【0146】
本発明は、治療における使用のためのコンジュゲート(例えば、免疫原性組成物として又はワクチンとして)を提供する。本発明は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物において免疫応答を生じさせるための方法に使用するためのコンジュゲートも提供する。本発明は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物において免疫応答を生じさせるための医薬の製造におけるコンジュゲートの使用も提供する。使用及び方法は、上に記載されたコンジュゲート中の抗原及びnOMVに応じて、種々の疾患を予防/治療するために特に有用である。本発明の好ましいコンジュゲートは、ヒト対象の許容割合に対して、各抗原成分についての抗体保有率に関する判定基準を上回る抗体力価を患者に付与できる。それを超えると宿主が抗原に対して抗体陽転したと考えられる関連抗体力価を有する抗原は、周知であり、そのような力価は、WHOなどの組織によって公表されている。対象の統計的に有意な試料の好ましくは80%超、より好ましく90%超、さらにより好ましくは93%超、最も好ましくは96~100%が、抗体陽転する。
【0147】
本発明の免疫原性組成物は、一般に、患者に直接投与される。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内若しくは組織の間質腔への)によって、又は直腸内、経口、経膣、局所、経皮的、鼻腔内、眼内、耳内、肺内又は他の粘膜内投与によって達成され得る。筋肉内投与は、例えば大腿又は上腕に対するものが好ましい。注射は、針(例えば、皮下針)を介してよいが、無針注射を代替的に使用してもよい。典型的な筋肉内用量は、約0.5mlである。本発明は、全身免疫及び/又は粘膜免疫を惹起するために使用されてよい。投薬治療は、単回投薬スケジュール又は複数回投薬スケジュールであってよい。複数投薬は、初回免疫スケジュール及び/又は追加免疫スケジュールにおいて使用されてよい。初回投薬スケジュールの後に追加投薬スケジュールを行ってもよい。各初回免疫投薬の間(例えば、4~16週間の間)、及び初回免疫と追加免疫との間の好適なタイミングは、日常的に決定され得る。
【0148】
感染は身体の種々の領域を冒し、そのため本発明の組成物は、種々の形態で調製されてよい。例えば組成物は、液体溶液又は懸濁液のいずれかで注射可能として調製されてよい。注射前の液体ビヒクルへの溶解又は懸濁に好適な固体形態も調製されてよい。組成物は、例えば軟膏、クリーム又は粉剤として局所投与用に調製されてよい。組成物は、例えば、錠剤若しくはカプセルとして、又はシロップ(任意選択で風味付けられる)として経口投与のために調製されてよい。組成物は、例えば微粉末又はスプレーを使用する吸入剤として肺への投与のために調製されてよい。組成物は、座薬又は膣座薬として調製されてよい。組成物は、例えば滴下剤として経鼻、耳又は眼への投与のために調製されてよい。非経口注射のために好適な組成物は、最も好ましい。組成物は、好ましくは滅菌されている。それは、好ましくは発熱物質不含有である。それは、例えばpH6からpH8の間で、一般におおよそpH7で好ましくは緩衝化される。本発明の組成物は、ヒトに対して等張性であってよい。免疫原性組成物は、本発明のコンジュゲートの免疫学的有効量、及び必要に応じて他の特定の構成成分のいずれかを含む。投薬治療は、単回投薬スケジュール又は複数回投薬スケジュール(例えば追加免疫投薬を含む)であってよい。組成物は、他の免疫調節剤と組み合わせて投与されてよい。
【0149】
本発明の組成物において任意選択で使用され得るアジュバントとして、以下に限定されないが、不溶性金属塩、水中油型乳液(例えばMF59又はAS03、両方ともスクアレンを含有)、サポニン、LPSの無毒性誘導体(モノホスホリルリピドA若しくは3-O-脱アシル化MPLなど)、免疫賦活性オリゴヌクレオチド、解毒化細菌性ADP-リボシル化毒素、微小粒子、リポソーム、イミダゾキノロン又はその混合物が挙げられる。免疫賦活剤として作用する他の物質は、例えばWatson, Pediatr. Infect. Dis. J. (2000) 19:331-332において開示されている。水酸化アルミニウム及び/又はリン酸アルミニウムアジュバントの使用は、特に好ましい。これらの塩として、オキシ水酸化物及び水酸化リン酸が挙げられる。塩は、任意の好適な形態(例えばゲル、結晶、アモルファスなど)を取っていてよい。
【0150】
1つの病原体由来のnOMV及び第2の病原体由来の選択された抗原を含む本発明のコンジュゲートは、多価ワクチンとして有用であり得る。組み合わされ得る病原体の対(一方は抗原として、及び他方はnOMV小胞として)として、以下に限定されないが、N.メニンギティディス及び非チフス性サルモネラ(例えばネズミチフス菌又は腸炎菌);熱帯熱マラリア原虫及び非チフス性サルモネラ;チフス菌及び非チフス性サルモネラ; ETEC及び赤痢菌種;A群連鎖球菌(GAS)及びN.メニンギティディス;並びにGAS及び非チフス性サルモネラ、が挙げられる。
【0151】
本発明の好ましい対は、下の表Aに示される。
【0152】
【表A】
【0153】
したがって、本nOMV-抗原コンジュゲートは、表Aに列挙される病原体に対する免疫原性物質として特に有用である。
【0154】
1つの病原体由来のnOMV及び第2の病原体由来の選択された抗原を含む本発明のコンジュゲートは、多価ワクチンの調製のための免疫原性化合物として有用であり得る。よって本発明は、本発明のコンジュゲートと、以下のさらなる抗原:
- N.メニンギティディス血清群A、C、W135及び/又はY由来の糖抗原、
- 肺炎球菌由来の糖抗原、
- 不活化ウイルスなどの、A型肝炎ウイルス由来抗原、
- 表面及び/又はコア抗原などの、B型肝炎ウイルス由来抗原、
- ジフテリアトキソイド、例えばCRM197変異体などの、ジフテリア抗原、
- 破傷風トキソイドなどの、破傷風抗原
- 百日咳ホロ毒素(PT)及び百日咳菌由来の線維状ヘマグルチニン(FHA)などの、百日咳菌由来抗原、任意選択でパータクチン及び/又は凝集原2及び3と併用
- インフルエンザ菌A又はB型由来の糖抗原、
- IPVなどの、ポリオ抗原
- 麻疹、流行性耳下腺炎及び/又は風疹抗原、
- ヘマグルチニン及び/又はノイラミニダーゼ表面タンパク質などの、インフルエンザ抗原
- モラクセラ・カタラーリス由来の抗原、
- ストレプトコッカス・アガラクチア(B群連鎖球菌)由来のタンパク質抗原、
- ストレプトコッカス・アガラクチア((B群連鎖球菌)由来の糖抗原、
- 化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)由来の抗原、
- 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来の抗原
のうちの1つ以上とを含む組成物を提供する。
【0155】
本発明は、その範囲にいかなる限定も加えることなく以下の実験パートによってここに記載される。
【実施例
【0156】
実験パート
実施例1
nOMV産生
本実験パートにおいて使用した好ましいnOMVは、ネズミチフス菌又はソンネ菌のΔtolR株から調製されたGMMAであり、それは例えば、Clin Vaccine Immunol. 2016 Apr; 23(4): 304-314及びPLoS One. 2015; 10(8): e0134478においてそれぞれ開示されるとおりである。
【0157】
前記nOMVの特徴付けは、下の表2に示されるとおりであった。
【0158】
【表2】
【0159】
実施例2
nOMV酸化
種々の酸化条件を試験した。例えばnOMV ΔtolR 1418の酸化について、範囲5~20mMのNaIO4濃度を試験した。-OAg鎖長への酸化の効果を評価した。鎖長は、酸化が進行するに従って低減した。より高いNaIO4濃度は、OAgサイズを低減させる傾向があった。NaIO4モル濃度を増加させることは、5から45%の高い酸化レベルをもたらすだけでなく(方法に関与する主たる糖としてラムノースを用いて)、-OAg鎖長を低減したことが実証された。同時に小胞サイズ分布に変化はなく、小胞の完全性は維持されていた。
【0160】
これを動的光散乱(dls)、ナノ粒子トラッキング分析(NTA)及び高速液体サイズ排除クロマトグラフィー/多角度光散乱(HPLC-SEC/MALS;表2aを参照されたい)によって検証された。nOMV上のNH2基が還元的アミノ化条件下で、産生されたCHO基と反応せず、より大きな交差結合粒子(表2b)を生じることも検証された。
【0161】
【表2a】
【0162】
【表2b】
【0163】
nOMVを含まない還元的アミノ化条件下では、いくつかの抗原(例えばfHbp、Pfs25及びCTF1232)について検証されたとおり、コンジュゲートする外来性抗原は凝集しない。
【0164】
さらに、Pfs25などのタンパク質の立体構造にさもなければ影響を与え得るS-S結合をNaBH3CNが還元しないことが実証された。Pfs25を模倣コンジュゲーション条件によってNaBH3CNを用いて処理し、同じ反応を比較のために還元剤としてDTTを用いて実施した。室温で一晩混合した後、NaBH3CNを用いて処理したPfs25のSDS PAGE及びHPLC-SECによる分析は、DTTを用いて処理したPfs25とは対照的に、新鮮Pfs25と比較してタンパク質の変化を示さなかった。同じ結果は、タンパク質をNABH3CN又はDTTの存在下でヨードアセトアミド(IAA)を用いて処理された場合にMALDI-MS分析によって確認された。
【0165】
ネズミチフス菌三重変異体nOMV(ネズミチフス菌2192 nOMV ΔtolR ΔPagP ΔmsbB)でのさらなる実験は、低NaIO4濃度(3~5mM)が良好な酸化レベルを得るのに十分であったことを示した。nOMV濃度範囲0.2~4mg/mL、pH範囲5~8及びNaIO4濃度範囲0.5~5mMを使用した例示的結果を、表2cに示す。生じた小胞をnOMV回収%、ラムノース酸化%、nOMVサイズ及びOAgサイズについて評価した。
【0166】
【表2c】
【0167】
同様のnOMV回収率が、マイクロビシンコニン酸プロテインアッセイ(マイクロBCA)によって試験されたとおり、すべての反応条件について見られた。試験した反応条件でnOMV交差結合(crosslinking)又は凝集を生じたものはなかったことがさらに検証された。
【0168】
ラムノース酸化割合は、nOMV濃度及びNaIO4濃度の両方により影響を受け、より低いnOMV濃度及びより高いNaIO4濃度は、より高率のラムノース酸化をもたらす傾向があった。したがって、一般に、nOMV濃度及び/又はNaIO4濃度は、ラムノース(又は他の糖)の所望の酸化率を達成するために操作され得る。
【0169】
異なる-OAgサイズ及びラムノース酸化レベルを示す小胞を比較するために、表5の実行(run)5、14及び16からの小胞をNaBH4で処理してアルデヒド(CHO)基を除去し、nOMV小胞を安定化させ、ラムノース酸化レベル及び-OAgサイズを処理後に再度評価した。結果を下の表2dに示す。
【0170】
【表2d】
【0171】
結果は、還元ステップが-OAg長さ又はnOMV酸化の程度に影響を与えなかったことを示している。同様の結果が別個の実験において得られた。
【0172】
実施例3
nOMV-Agコンジュゲーションステップ(fVi-ネズミチフス菌nOMV;リンカーを介した間接コンジュゲーション)
fViを無作為(r)又は選択的に(s)のいずれかでADHリンカーとの反応によって改変した。改変fViは、次に、還元的アミノ化を使用して酸化ネズミチフス菌nOMVにコンジュゲートした。fViがADHを用いて無作為に活性化された場合、fVi対nOMVの1:1の重量比をコンジュゲーションにおいて使用し、一方3:1の重量比をfViが末端でADHにより誘導体化された場合に使用した。コンジュゲートは全タンパク質含有量(nOMV回収)を決定するためのマイクロBCA/ローリーアッセイを使用して特徴付けした。高速アニオン交換クロマトグラフィー-パルスドアンペロメトリー検出器(HPAEC-PAD)を全Vi含有量(nOMV干渉無し)を決定するために使用した。高速液体クロマトグラフィーサイズ排除クロマトグラフィー(HPLC-SEC、TSK gel 3000 PWxlカラムを使用)を、示差屈折率(dRI)を使用して遊離Vi%を算出するために使用し、動的光散乱/高速液体クロマトグラフィー-サイズ排除クロマトグラフィー/多角度静的光散乱(DLS/HPLC-SEC MALS)を、サイズを決定するために使用した。本コンジュゲーション方法のコンジュゲーション条件の、nOMVあたりのfVi鎖の最終数への影響を、ナノ粒子トラッキング分析(NTA)によるnOMVの数と併せてHPAEC-PAD回収データを検討して評価した。
【0173】
結果を表3に示す。
【0174】
【表3】
【0175】
48.5kDa fViをpH4.5で用いた還元的アミノ化の実施は、10mM及び20mMのNaIO4の両方において、より高いpHと比較して、より高いfVi/nOMV比及びnOMVあたりでより多いfVi鎖をもたらした。無作為改変されたfViでは、沈殿がpH4.5で生じ、その沈殿は選択的に改変されたfViを用いた実施では回避された。全般に、選択的化学は、nOMV回収を改善し、沈殿を回避する方法として確認された。沈殿は、avMW≦23kDa、低pH、無作為改変fVi鎖を用いたfViについては観察されなかった。
【0176】
20mMの代わりに10mMのNaIO4を用いたnOMVの酸化は、コンジュゲート回収率の改善をもたらした。NaIO4濃度の増加は、最終コンジュゲートの特徴に影響を与えなかった。
【0177】
23kDa fViを使用する場合、nOMVに対してより低いfVi比が得られ、コンジュゲーションのために使用されたfVi-ADHの低い誘導体化割合と関連している可能性があった(fVi反復単位の11%)。
【0178】
fVi-ADHのpH及び活性化の程度をnOMVあたりで連結されたfVi鎖の数の調節のための変数として同定した。
【0179】
実施例3a
Vi-ネズミチフス菌nOMVコンジュゲート(リンカーを介した間接コンジュゲーション)
上の表3によるコンジュゲート1及び5(それぞれVi:nOMVのw/w比0.45及び0.44を有する)をマウスにおいて試験した。比較のために、CRM197も担体として使用し、fVi+nOMVの単純混合物も試験した。
【0180】
マウスをコンジュゲート(1μg Vi用量)及びアルハイドロゲルアジュバントを用いて0及び28日目に皮下免疫した。抗Vi IgG力価を0、14、28及び42日目に測定し、結果を図2Aに示す。nOMVは、CRM197に劣らないが、未コンジュゲート混合物より顕著に良好であった。
【0181】
-OAgに対するIgG力価も評価した。図2Bは、単独又はViにコンジュゲートされた小胞についての抗OAg力価を示している。コンジュゲーションは、-OAg応答を少し低減したが応答は顕著なままであった。
【0182】
実施例4
nOMV-Agコンジュゲーションステップ(ETEC CTF1232-ネズミチフス菌ΔtolR 1418又はソンネ菌1790 nOMV;リンカーを用いない直接コンジュゲーション)
CTF1232は、大腸菌抗原である(配列番号14、2種類のnOMV小胞にコンジュゲートされたC-末端ヘキサ-ヒスチジンタグを含む)。ポリペプチドは、小胞における酸化糖への連結のために使用できる5個のリシン残基を含む。
【0183】
CTF1232へのコンジュゲーションのために、小胞を過ヨウ素酸ナトリウム(ネズミチフス菌用に20mM、ソンネ菌用に40mM)を含む100mM酢酸ナトリウム(pH5)中で2時間、暗所にて室温で酸化した。ネズミチフス菌での酸化は、約30%のRha単位が酸化されてラムノース(Rha)残基が優先された(マンノースと比較して算出)。ソンネ菌での酸化はLPS分子のコア領域に影響を与えた。
【0184】
ネズミチフス菌ΔtolR 1418又はソンネ菌1790 nOMVいずれか由来の500μg酸化小胞(測定された全タンパク質)を、500μgのCTF1232と1~2mgのNaBH3CNと、室温で週末を挟んで反応させた。コンジュゲーション後の未反応抗原の定量に基づいて、nOMV表面に存在する抗原をネズミチフス菌において<36%、及びソンネ菌において<31%と算出した。
【0185】
結果は、還元的アミノ化化学がポリペプチド抗原の小胞へのコンジュゲーションのために好適であることを示した。CTF1232抗原を2つの小胞の酸化LPSにコンジュゲートした。
【0186】
マウスをタンパク質単独、タンパク質及び赤痢菌nOMVの混合物、又はコンジュゲートにより免疫した。アルハイドロゲルアジュバントを全ての群において使用した。免疫は、鼻腔内に0、21及び38日目に投与され、免疫応答を0、14、35及び52日目に評価した。抗CTF1232 IgG力価を図3に示す。
【0187】
14日目に、1418nOMV-CTF1232コンジュゲートは、タンパク質単独(p=0.0005)又はnOMVとの物理的混合物(p=0.042)よりも有意に高い応答を誘導できた(ダンの事後分析を用いるクラスカル-ウォリス検定)。抗CTF1232力価における改善に加えて、コンジュゲートは、二価ワクチンであることのさらなる利点を有する。1790nOMV-CTF1232と1418nOMV-CTF1232コンジュゲートとの間に大きな差異は観察されず、サルモネラ及び赤痢菌nOMVの両方がETEC抗原のための良好な担体として作用できることを意味している。
【0188】
実施例5
nOMV-Agコンジュゲーションステップ(Na2SO3の存在下でのPfs25-ネズミチフス菌nOMVコンジュゲーション)
マラリア抗原Pfs25を2つの異なる化学によって、すなわちSH-マレイミド又はクリック化学によりタンパク質へ又はNaIO4酸化OAgへにより、ネズミチフス菌nOMV小胞にコンジュゲートした。酸化-OAgへの連結のために、1:1比のnOMV:Pfs25を、PBS中2.6mg/mlのPfs25濃度で、室温での一晩インキュベーションで使用した。コンジュゲート形成は、過剰のNaIO4をNa2SO3を用いてクエンチし(濃度10mMが本実験において、10分間使用された)、続いて同じポットへのPfs25の直接添加(0.2mg/ml最終濃度)を行う場合にも得られた。図4Aは、3種のコンジュゲート;Pfs25単独;又は小胞と物理的に混合したPfs25、に応答した抗Pfs25 IgG力価を示している。全ての構築物は、アルハイドロゲルを用いて製剤化された。マウスを0及び28日目に0.1μg Pfs25/用量で皮下免疫した。抗Pfs25 IgG力価を0、14、28及び42日目に測定した。
【0189】
Pfs25単独は、nOMV-SH-Pfs25(p=0.001)及びnOMV-ox-Pfs25コンジュゲート(p=0.0095)より有意に低い抗Pfs25 IgG抗体応答を誘導した。nOMVと物理的に混合したPfs25は、nOMV-SH-Pfs25及びnOMV-ox-Pfs25(それぞれp=0.0038及びp=0.0282)よりも低い応答を同様に誘導した(ダンの事後分析を用いるクラスカル-ウォリス検定)。興味深いことに、nOMV上の糖構成成分により連結されたPfs25(nOMV-ox-Pfs25コンジュゲート)は、nOMV上のタンパク質に連結されたPfs25 (nOMV-SH-Pfs25及びnOMV-click-Pfs25)と同様の、そしてPfs25単独又はnOMVに物理的に混合されたPfs25よりも高い、抗体応答を誘導した。
【0190】
Pfs25-NOMVコンジュゲート由来血清は、標準的な膜栄養アッセイ(membrane-feeding assay)によって試験した場合に伝播阻止活性を示した(SMFA;nOMV-SH-Pfs25及びnOMV-ox-Pfs25について1:8希釈で伝播低減活性>90%、1:16希釈で維持)。
【0191】
nOMVへのPfs25の連結は、抗OAg IgG応答に影響しなかった。使用した化学が-OAg構造及び長さに影響を有する場合、還元的アミノ化によって得られたコンジュゲートも、高抗OAg IgG力価を維持した。したがって、ネズミチフス菌nOMV上の外来性抗原の存在は、抗OAg IgG応答に影響を与えない(図4Cを参照されたい)。
【0192】
第2の研究では、Pfs25-nOMVコンジュゲート(還元的アミノ化によって産生)の免疫原性をアルハイドロゲルを用いずに、1μg Pfs25の用量で、nOMVに物理的に混合されたPfs25と比較した。
【0193】
図4Bは、図4Aについてと同じ免疫スケジュールを使用して、Pfs25-nOMVコンジュゲートによってマウスにおいて誘導された抗Pfs25 IgG応答を、アルハイドロゲルを用いずにnOMVに物理的に混合されたPfs25と比較して示している。
【0194】
コンジュゲートは、nOMVと混合されたタンパク質よりも有意に高い抗Pfs25 IgG応答を誘導できた(p=0.0002;マン-ホイットニー両側分析)。
【0195】
実施例6
RO6C-ネズミチフス菌nOMVコンジュゲート(リサイクルステップ)
マラリア原虫RO6C抗原を還元的アミノ化を使用して酸化ネズミチフス菌nOMV小胞にコンジュゲートした。さらなるコンジュゲートを第1のコンジュゲーションバッチから未反応RO6Cをリサイクルし、それをコンジュゲーションのために再使用することによって作製した。全タンパク質に対するRO6Cの比を競合的ELISAによって測定したところ、非リサイクルコンジュゲートについて7.2%、リサイクルコンジュゲートについて11.1%であった。比較のために、RO6C単独を使用した。全ての構築物は、アルハイドロゲルを用いて製剤化された。
【0196】
マウスを0及び28日目に皮下免疫した、1、4及び20μgのRO6Cの用量を使用した。リサイクルコンジュゲートを4μgのRO6C用量で試験した。抗RO6C IgG力価を0、14、28及び42日目に測定し、その結果を図5Aに示す。42日目に、RO6C単独と比較して、より高い抗RO6C IgG応答がnOMV-RO6Cコンジュゲートによって誘導された(マンホイットニー検定、1μmg用量でp=0.05、4μg用量でp=0.03、及び20μg用量でp=0.04)。さらに、nOMV-RO6Cコンジュゲートは、抗RO6C IgG応答を用量依存的様式で惹起した(スピアマン順位、p=0.001、42日目)。すべての構築物(すべての用量で)が応答をブーストする能力を示した(14日目~42日目)。4μg用量での非リサイクル及びリサイクルコンジュゲートをマンホイットニー両側検定によって比較し、非リサイクルのものに劣らない応答を誘導するリサイクルコンジュゲートの能力を示した。
【0197】
-OAgに対するIgG力価も評価した。図5Bは、非リサイクル及びリサイクル小胞についての抗OAg IgG力価を示している。RO6C用量1、4及び20μgに対応するnOMV用量は、それぞれ13μg、52μg及び258μgであった。リサイクルコンジュゲートについて、nOMV用量は32μgであった(RO6C用量4μgに対応する)。
【0198】
実施例7a~c:比較例
実施例7a
dOMV(ナイセリア・メニンギティディスB群由来)のfHbp v3との反応(反応無し)
本実施例のdOMVを界面活性剤抽出工程によって調製し、ここでデオキシコール酸(deoxhycholate)を選択された界面活性剤として使用する。それにより得られた界面活性剤抽出小胞を本発明の方法により、選択された抗原(fHbp)と反応させた。具体的には、0.96mg/mL濃度のdOMVを、NaIO4を10mMで用いて30分間、室温で暗所にてインキュベートした。過剰のNaIO4を最終濃度20mMのNa2SO3により、15分間、室温でクエンチした。fHbp(dOMVとfHbpとのw/w比1:1、dOMV濃度0.335mg/mL)及びNaBH3CN(3mg)を反応混合物に直接加えた。一晩室温で穏やかに撹拌後、コンジュゲートを超遠心(110000rpm、4℃、1時間)によって精製し、PBS中に再懸濁し、SDS PAGE/ウエスタンブロットによって分析した。
【0199】
実施例7b
nOMV(ナイセリア・メニンギティディスB群由来)のfHbp v3との反応(本発明のnOMV-fHbpコンジュゲートの形成)
本実施例のnOMVを、Koeberling et a. Vaccine (2014) 32:2688に記載のとおり、いかなる界面活性剤も使用することなく調製した。それにより得られた抽出小胞を、本発明の方法により選択された抗原(fHbp)と反応させた。具体的には、濃度0.96mg/mLのnOMVを5mM NaIO4と30分間、室温で暗所にてインキュベートした。過剰のNaIO4を最終濃度20mMのNa2SO3により、15分間、室温でクエンチした。fHbp(dOMVとfHbpとのw/w比1:1、dOMV濃度0.335mg/mL)及びNaBH3CN(3mg)を反応混合物に直接加えた。一晩室温で穏やかに撹拌後、コンジュゲートを超遠心(110000rpm、4℃、1時間)によって精製し、PBS中に再懸濁し、SDS PAGE/ウエスタンブロットによって分析した。SDS PAGE/抗fHbpウエスタンブロット分析では、nOMVを用いた還元的アミノ化化学によってのみコンジュゲート形成が確認され、dOMVを用いた還元的アミノ化化学では確認されなかった。10%SDS pageゲル。
【0200】
実施例7c
実施例7bの手順に従ったnOMV(サルモネラ由来)のfHbp v1との反応
実施例7bと同じ実験をネズミチフス菌由来nOMVを使用して実施し、同様の結果が得られ、本発明のnOMV-fHbpコンジュゲートが得られた。
【0201】
実施例8
本発明に従った、(NANP)3-SH-Pfs25を使用する多官能基化nOMVの調製
Pfs25タンパク質を次の手順によりEMCSリンカーで誘導体化した。PBS緩衝液中、濃度2.6mg/mLのPfs25をEMCSリンカーに加えた(EMCSリンカーとPfs25 Lys残基とのモル比0.3)。反応物を室温で4時間混合した。得られた誘導体化タンパク質(Pfs25-EMCS)をPD10カラムによって10mM NaH2PO4 pH6に対して精製した。MALDI-TOF MSによる分析は、Pfs25分子あたりEMCSリンカー平均4個が導入されたことを明らかにした。(NANP)3とEMCSリンカーとのモル比3:1、Pfs25濃度0.7mg/mLとなるように(NANP)3をPfs25-EMCSの溶液に加えた。反応物を室温で一晩混合した。この後、Pfs25-(NANP)3誘導体をPBS緩衝液に対しVivaspin 10Kによって精製した。SDS PAGE/ウエスタンブロット及びMALDI-TOF MSによる分析では、産物形成が確認された。100mM NaH2PO4、pH6.5中のネズミチフス菌nOMV(濃度2.1mg/mL)を5mM NaIO4と共に30分間、25℃で暗所にてインキュベートした。過剰のNaIO4を最終濃度10mMのNa2SO3により、10分間、室温でクエンチした。Pfs25-(NANP)3(nOMVとPfs25-(NANP)3とのw/w比1:1、nOMV濃度0.45mg/mL)及びNaBH3CNを反応混合物に直接加えた。一晩室温で穏やかに撹拌後、コンジュゲートを超遠心(110000rpm、4℃、30分間)によって精製し、PBS中に再懸濁し、SDS PAGE/ウエスタンブロットによって分析し、コンジュゲート形成を確認した。
【0202】
実施例9
本発明の実施形態に従った、クエンチを用いて又は用いずにネズミチフス菌nOMV粒子をPfs25抗原にコンジュゲートすることによって得られた本発明のコンジュゲートのin-vivoデータ
CD1雌マウスを、クエンチステップを用いて又は用いずにPfs25抗原にコンジュゲートした全タンパク質ネズミチフス菌nOMV粒子2.5μgを用いて0及び28日目に皮下免疫した(実施例5を参照されたい)。両方のコンジュゲートは、競合的ELISAにより20%に近い、全タンパク質に対するPfs25のw/w比を示し、アルハイドロゲル(0.7mg/mL Al3+)に吸着した。抗Pfs5及び抗OAg IgG力価を0、14、27及び42日目に測定した。すべての時点で、2つのコンジュゲートは、図6aに示すとおり、同様の抗Pfs25 IgG応答を誘導し(マンホイットニー検定)。同様に、図10bに示すとおり、コンジュゲートは、同様の抗OAg IgG応答を誘導できた。還元的アミノ化によるコンジュゲーションにおけるクエンチのステップは、マウスにおいて誘導された免疫応答に影響を与えることなく導入することができ、それによりGMMA酸化中間体精製を回避することができる。
【0203】
実施例10
nOMV(ナイセリア・メニンギティディスB群由来)とMenCとの反応(本発明のnOMV-MenCコンジュゲートの形成)
MenC多糖を100mM AcONa pH4.5中に濃度40mg/mLで可溶化した。ADHリンカー及びNaBH3CNを、MenC/ADH/NaBH3CNのw/w比1:1.2:1.2でそれぞれ加えた。混合物を30℃で一晩加熱し、次にG10カラムによって脱塩した。TNBS比色分析法及びHPAEC-PADによる特徴付けは、100%誘導体化を示した。
【0204】
fHbpを過剰発現しているMenB GMMAを、100mM NaH2PO4 pH6中の濃度8.5mg/mLで、5mM NaIO4と共に30分間、室温で暗所にてインキュベートした。過剰NaIO4を最終濃度10mMのNa2SO3により、15分間、室温でクエンチした。ADHリンカーにより予め末端誘導体化したMenCオリゴ糖(GMMAとMenCとのw/w比1:10、GMMA濃度7.7mg/mL)及びNaBH3CNを反応混合物に直接加えた。一晩室温で穏やかに撹拌後、コンジュゲートを超遠心(110000rpm、4℃、1時間)によって精製し、PBS中に再懸濁した。SDS PAGE/ウエスタンブロットによる分析では、コンジュゲート形成が確認され、マイクロBCA及びHPAEC-PADによる分析では、MenC多糖とタンパク質との重量比が0.11に等しいことが明らかになった。
【0205】
実施例11
nOMV(ナイセリア・メニンギティディスB群由来)とMenAとの反応(本発明のnOMV-MenAコンジュゲートの形成)
MenA OSを100mM AcONa pH6.5中に濃度40mg/mLで可溶化した。ADHリンカー及びNaBH3CNを、MenA/ADH/NaBH3CNのw/w比1:1.2:1.2でそれぞれ加えた。混合物を30℃に5日間加熱し、次にG10カラムによって脱塩した。TNBS比色分析法及びHPAEC-PADによる特徴付けは、90%誘導体化を示した。fHbpを過剰発現しているMenB GMMAへのコンジュゲーションは、MenC多糖について記載されたとおりに実施した。
【0206】
実施例11
MenA及びMenCとのnOMV(ナイセリア・メニンギティディスB群由来)のコンジュゲートの調製
MenA-及びMenC-MenB GMMAコンジュゲートの合成について記載されたのと同じコンジュゲーション条件を同じGMMA粒子上の両方の多糖のコンジュゲーションのために使用した。GMMAを既に記載のとおり酸化し、Na2SO3によるクエンチ後、MenA-ADH及びMenC-ADHを同時にそれぞれMenA/MenC/GMMAのw/w比8:8:1で加えた。
シークエンスリスティング
>配列番号1[fHbp v2]
>配列番号2[NHBA]
>配列番号3[NadA]
>配列番号4[NspA]
>配列番号5[NhhA]
>配列番号6[App]
>配列番号7[NadA断片]
>配列番号8[fHbp v1]
>配列番号9[fHbp v3]
>配列番号10[Pfs25]
>配列番号11[RO6C]
>配列番号12[CSP]
>配列番号13[(NANP)3]
>配列番号14[CTF1232]
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
【配列表】
0007439174000001.app