IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エッペンドルフ アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7439190ピペット・チップとともに使用するためのピペット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】ピペット・チップとともに使用するためのピペット
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20240219BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
B01L3/02 D
G01N1/00 101K
【請求項の数】 26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022125487
(22)【出願日】2022-08-05
(65)【公開番号】P2023024958
(43)【公開日】2023-02-21
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】21190341.4
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591121683
【氏名又は名称】エッペンドルフ エスイー
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
【住所又は居所原語表記】Barkhausenweg 1, 22339 Hamburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・テッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン・ビクモハマディ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・モリトール
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・ヴィルマル
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト・ライヒムート
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-108973(JP,A)
【文献】特表2013-503032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 3/02
G01F 11/00-46
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペット・チップとともに使用するためのピペットであって、
・縦長のシャーシ(3,87)と、
・少なくとも1つのピペット・チップを着脱可能に保持するための装置(80,111)と、
・液体試料を前記ピペット・チップに吸入し試料を前記ピペット・チップから吐出するための変位要素を変位させる駆動装置(36)と、
・調整済のピペット容積を表示する表示装置(41,103)と、
前記シャーシ(3,87)を包囲するピペット・ハウジング(6,90)であって、前記シャーシの長手方向が前記ピペット・ハウジングの長手方向に整列し、かつ前記シャーシに接続されているピペット・ハウジング(6,90)と、を備え、
・前記シャーシ(3,87)は、一列に並んで配置され互いに接続されている複数のシャーシ要素(7.1~7.4;91.1~91.4)によって構成され、
・前記駆動装置(36)の構成部品が、第1のシャーシ要素に接続されており、前記表示装置(41,103)の構成部品が、第2のシャーシ要素に接続されており、少なくとも1つのピペット・チップを着脱可能に保持する前記装置(80,111)の少なくとも1つの構成部品が、第3のシャーシ要素に接続されている
ことを特徴とする、ピペット。
【請求項2】
前記シャーシ要素(7.1~7.4;91.1~91.4)がすべて管状である、請求項1に記載のピペット。
【請求項3】
変位要素を変位させる駆動装置(36)構成部品のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されており、かつ/または、調整済のピペット容積を表示する表示装置(41,103)の構成部品のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されており、かつ/または、少なくとも1つのピペット・チップを排出するための排出装置(69.1,69.2;113)の構成部品のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されており、かつ/または、少なくとも1つのピペット・チップを着脱可能に保持する装置(90,111)の構成部品のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されており、かつ/または、ピペット・ハウジング内にシャーシ要素を着脱可能に保持する装置(21.1~21.3)の構成部品のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されている、請求項1または2に記載のピペット。
【請求項4】
第1のアセンブリが、シャーシ要素と、前記駆動装置(36)構成部品のうちの少なくとも1つを備え、かつ/または、第2のアセンブリが、シャーシ要素と、前記表示装置(41,103)の構成部品のうちの少なくとも1つを備え、かつ/または、第3のアセンブリが、シャーシ要素と、前記排出装置(69.1,69.2;113)の構成部品のうちの少なくとも1つとを備え、かつ/または、第4のアセンブリが、シャーシ要素と、少なくとも1つのピペット・チップを着脱可能に保持する装置(80,111)の構成部品のうちの少なくとも1つを備え、かつ/または、第5のアセンブリが、シャーシ要素と、ピペット・ハウジング内にシャーシ要素を着脱可能に保持する装置(21.1~21.3)の構成部品のうちの少なくとも1つとを備える、請求項3に記載のピペット。
【請求項5】
前記駆動装置(36)が、複数の構成部品からなり、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されている第1のサブアセンブリを備え、かつ/または、前記表示装置(41,103)が、複数の構成部品からなり、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されている第2のサブアセンブリを備え、かつ/または、前記排出装置(69.1,69.2;113)が、複数の構成部品からなり、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されている第3のサブアセンブリを備え、かつ/または、少なくとも1つのピペット・チップを着脱可能に保持する前記装置(80,111)が、複数の構成部品からなり、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されている第4のサブアセンブリを備え、かつ/または、前記ピペット・ハウジング内に前記シャーシ要素を着脱可能に保持する前記装置(21.1~21.3)が、複数の構成部品からなり、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されている少なくとも1つの第5のサブアセンブリを備える、請求項3または4に記載のピペット。
【請求項6】
前記ピペット・ハウジング内に前記シャーシ要素を着脱可能に保持する前記装置(21.1~21.3)が前記第4のシャーシ要素に接続されているか、そのように構成されている、請求項3から5のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項7】
前記駆動装置(36)の構成部品および/または表示装置(41,103)の構成部品が、第1のシャーシ要素に接続されており、かつ/または、前記駆動装置(36)の構成部品、および/または前記排出装置(69.1,69.2;113)の構成部品が、第2のシャーシ要素に接続されており、かつ/または、前記駆動装置(36)の構成部品が第3のシャーシ要素に接続されており、かつ/または、前記排出装置(69.1,69.2;113)の構成部品が、第4のシャーシ要素に接続されている、請求項3から6のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項8】
前記第1のシャーシ要素(7.1,91.1)が前記第2のシャーシ要素(7.2,91.2)の上に配置され、前記第2のシャーシ要素(7.2,91.2)が前記第3のシャーシ要素(7.3,91.3)の上に配置され、前記第3のシャーシ要素(7.3,91.3)が前記第4のシャーシ要素(7.4,91.4)の上に配置されている、請求項6または7に記載のピペット。
【請求項9】
前記駆動装置(36)の構成部品、前記表示装置(41,103)の構成部品、前記排出装置(69.1,69.2;113)の構成部品、少なくとも1つのピペット・チップを着脱可能に保持する前記装置(80,111)の構成部品、および前記ピペット・ハウジング内にシャーシ要素を着脱可能に保持する装置(21.1~21.3)の構成部品のうち少なくとも1つ、および/または少なくとも1つのサブアセンブリが、それに接続されているシャーシ要素(7.1~7.4;91.1~91.4)の内部および/または側面に少なくとも部分的に配置されている、請求項3から8のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項10】
駆動装置が、前記第1のシャーシ要素(7.1)の雌ねじに係合し、前記第1のシャーシ要素(7.1)の長手方向に調節可能であるねじ付きスピンドル(27)と、調整スリーブ(33,36)であって、前記第1のシャーシ要素(7.1)に回転可能に装着され、互いに対して前記長手方向に変位可能なように前記ねじ付きスピンドル(27)に接続されて連動して回転し、前記第1のシャーシ要素(7.1)から上方へ突出する調整つまみを有する、調整スリーブ(33,36)と、前記長手方向に延びる前記ねじ付きスピンドル(27)の貫通内径部を貫通する昇降ロッド(37)であって、前記ねじ付きスピンドルの下面にある第1の停止部に接触するまで周縁にある少なくとも1つの凸部とともに変位可能であり、前記凸部の下に前記駆動要素を形成し、上端部の操作つまみを有する前記第1のシャーシ要素から突出している、昇降ロッド(37)と、を有する、請求項6または8から9のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項11】
前記第2のシャーシ要素(7.2)が前記第1のシャーシ要素(7.1)の下端部に保持されており、カウンタ(41)が前記第2のシャーシ要素(7.2)のケースおよび前記第1のシャーシ要素(7.1)のケースにある保持装置に保持されている、請求項6または8から10のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項12】
前記第3のシャーシ要素(7.3)が前記第1のシャーシ要素(7.1)および/または前記第2のシャーシ要素(7.2)の下端部に接続されており、通路を有するオーバーストローク・システム(52)が前記第3のシャーシ要素(7.3)の内部に配置されており、この通路を通って前記昇降ロッド(37)が下方へ延びており、下方へ変位する間、凸部(39)が前記オーバーストローク・システム(52)の頂部にある第2の停止部に当接した後、前記昇降ロッド(37)はオーバーストロークばね(55)の効果に反してさらに下方へ変位可能である、請求項10に記載のピペット。
【請求項13】
前記第4のシャーシ要素(7.4)が管状連結要素であり、接続用スピゴット(75)を有する下部(73)が前記管状連結要素に挿入され、前記下部(73)は少なくとも1つの変位要素変位チャンバに有し、ピペット・チップを着脱可能に保持するために変位チャンバに接続されているスピゴット(77)を有する、請求項6または8から12のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項14】
前記下部(73)が、前記管状連結要素を連結するための前記接続用スピゴット(75)内に昇降ロッド(37)の下端部に連結されているドライブ・ロッド(84)を備え、このドライブ・ロッドはシリンダ(76.1)内で変位可能に配置されている少なくとも1つのピストン(76.2)に接続されており、前記シリンダ(76.1)は前記下部(73)に配置され、前記下部(73)から突出するピペット・チップを着脱可能に保持するために下端部でスピゴット(77)に接続されている、請求項13に記載のピペット。
【請求項15】
シリンダ(76.1)が互いに平行に箱状の下部シャーシ(74)に保持され、前記下部シャーシは頂部で前記接続用スピゴット(75)に接続され下部ハウジングを形成する、請求項14に記載のピペット。
【請求項16】
前記第1のシャーシ要素(7.1)が、計量容積を調整する調整つまみを備えた計量容積を調整する調整装置(33,36)であって、この調整つまみは前記第1のシャーシ要素(7.1)から上方へ突出し前記第1のシャーシ要素に回転可能に装着されている調整装置(33,36)と、前記調整された計量容積を調整するための調整装置(33,36)に連結されているカウンタ(41)とを有する、請求項7または8に記載のピペット。
【請求項17】
第2のシャーシ要素(91.2)が回転スリーブ(105)を前記ケースに回転可能に支持し、計量ストロークを行い、かつピペット・チップをスピゴット(111)から排出するための作動要素(106)が前記第2のシャーシ要素(91.2)に配置されている、請求項11に記載のピペット。
【請求項18】
切替装置が前記第2のシャーシ要素(91.2)に接続されており、この切替装置は、特定の下方へのストロークによって前記作動要素(106)を連続的に変位させる間に異なる方向にチップ・ピストンを変位させるピストン昇降ロッドを変位させるために、前記作動要素(106)に連結されている、請求項17に記載のピペット。
【請求項19】
第3のシャーシ要素(91.3)が、歯付きロッド(108.1,108.2)と、昇降ロッド(109)と、前記歯付きロッドを前記昇降ロッドに連結させる歯車機構とに接続されており、ピストン排出ロッド(113)および表示スリーブを調整する装置のためのガイドを有する、請求項7、8または16から18のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項20】
ピペット・チップを前記スピゴット(111)から排出するための排出装置が、前記第1のシャーシ要素(91.1)および/または前記第4のシャーシ要素(91.4)の上で案内される、請求項17に記載のピペット。
【請求項21】
隣接するシャーシ要素(7.1~7.4;91.1~91.4)が、以下の態様の少なくとも1つで互いに接続されている、請求項1から20のいずれか一項に記載のピペット:着脱可能に、着脱不可能にあるいはある程度着脱可能に、かつ/または、しっかりと結合した状態で、確動的または非確動的に。
【請求項22】
前記駆動装置(36)の構成部品、前記表示装置(41,103)の構成部品、前記排出装置(69.1,69.2;113)の構成部品、少なくとも1つのピペット・チップを着脱可能に保持する前記装置(80,111)の構成部品、および前記ピペット・ハウジング内にシャーシ要素を着脱可能に保持する装置(21.1~21.3)の構成部品のうち少なくとも1つ、および/またはそのアセンブリが、以下の態様の少なくとも1つで前記シャーシ要素(7.1~7.4;91.1~91.4)に接続されている、請求項1から21のいずれか一項に記載のピペット:着脱可能に、着脱不可能にあるいはある程度着脱可能に、かつ/または、確動的にまたは非確動的に、あるいはしっかりと結合した状態で。
【請求項23】
前記ピペット・ハウジング(6,90)が、以下の態様の少なくとも1つで前記シャーシ(3,87)に接続されており、かつ/または、前記下部ハウジングが以下の態様の少なくとも1つで前記下部シャーシ(74)に接続されている、請求項15に記載のピペット:着脱可能に、着脱不可能にあるいはある程度着脱可能に、かつ/または、確動的にまたは非確動的に、あるいはしっかりと結合した状態で。
【請求項24】
隣接するシャーシ要素(7.1~7.4;91.1~91.4)が、前記隣接するシャーシ要素を互いに特定の配置または位置に保持する位置決め要素を有し、前記位置決め要素が、2つの磁石からか1つの磁石からのどちらかから形成される少なくとも1組の磁気部品と、1つの強磁性部品を備える、請求項1から23のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項25】
少なくとも1つのシャーシ要素(7.1~7.4;91.1~91.4)が、位置リブまたは位置面を有し、これを用いて前記シャーシ要素または複数のシャーシ要素を容易に検査用ゲージに入れることができる、請求項1から24のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項26】
前記ピペット・ハウジング(6,90)が、前記シャーシ(3,87)の下端部に接続されている、請求項1から25のいずれか一項に記載のピペット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペット・チップとともに使用するためのピペットに関する。
【0002】
ピペットは、特に、選択された容積の液体を計量するために、医学的、分子生物学的、および、製薬的用途で、科学工業用の実験室において利用される。この液体は、特に、単一の液体成分からなる均質(単相)液体、または複数の液体成分(溶液)の均質混合物であってもよい。さらに、この液体はまた、ある液体と別の液体(エマルジョン)または固体(懸濁液)との不均一な(多相)液体混合物であってもよい。
【0003】
既知のピペットは、ピペット・チップをクランプ嵌めするために、下端部にスピゴット(アタッチメント)を備えたステム形のピペット・ハウジングを有する。スピゴットは、たいていは、円錐形、円筒形、または部分的に円錐形および円筒形の凸部であり、「作業円錐部」とも呼ばれている。ピペット・チップは、下端部に先端開口部と上端部に装着用開口部とを備えた小さな中空チューブであり、ピペット・チップはそれによってスピゴットに固締可能である。液体をピペット・チップに吸入し、そこから吐出する。一体型ピストンのないピペット・チップと、一体型ピストンのあるピペット・チップとが知られている。液体を吸入したり吐出したりすることは、ピペットによって制御される。容積の固定されたピペットは、一定容積をピペット操作する役割を果たす。可変ピペットでは、計量する容積を調節することが可能である。容積を調節するために、調整装置を用いて駆動装置の走行を調整することができる。その調整装置に連結されている機械的カウンタが、その調節された容量を表示する役割をする。このピペット・チップは、使用後、アタッチメントから取り外して、新しいピペット・チップと交換可能である。その結果、後続のピペット操作での相互汚染を防ぐことができる。ピペットには、たいてい排出装置があり、この排出装置によって、つまみを作動させることによってピペット・チップに触れることなくピペット・チップを排出することができる。
【0004】
エア・クッション式ピペットには、たいていピストン-シリンダ装置がピペット・ハウジング内にあり、この装置はチャネルによってスピゴットの貫通孔に接続されている。エア・クッション式ピペットのピペット・チップ(エア・クッション式ピペット・チップ)には、一体型ピストンがない。駆動装置を用いてシリンダ内でピストンを変位させることによって、スピゴットに固締されているピペット・チップに液体を吸入し、そこからその液体を吐出するために、エア・クッションが移動する。エア・クッション式ピペットを用いるひとつの欠点は、吸入された液体の重さが原因となりエア・クッションの長さが変化することや、温度や空気圧や空気湿度が変化することにより、計量誤差が生じることである。エアゾールによるピペットの汚染もまた、問題となり得る。
【0005】
容積式ピペットは、一体型ピストンを有するピペット・チップ(容積式ピペット・チップ)とともに使用される。このタイプのピペットは、ピペット・チップを固締するスピゴットと、一体型ピストン(チップ・ピストン)に連結可能な、ピストンを移動させるための駆動装置とを有する。ピストンは液体と直接接触するようになるので、エア・クッションの悪影響がなくなる。容積式ピペットは、特に、高蒸気圧、高粘度、または高密度の液体の計量や、汚染を避けるためにエアゾールの存在しないことが重要となる分子生物学における用途に適している。
【0006】
ピペットは、原則として、ユーザが使用中に片手で保持し操作可能である携帯式の装置である。筋力を用いて駆動装置を駆動させる手動式ピペットが知られている。さらに、電動モータによって駆動するピペットが知られており、このピペットでは、駆動装置は、電動モータならびにこの電動モータを制御するための制御電子機器を備える。
【0007】
使い捨てまたは再利用の、エア・クッション式または容積式ピペット・チップは、プラスチックまたはガラスからなる。
【0008】
エア・クッション式ピペット・チップとともに使用するためのエア・クッション式ピペットが欧州特許第2633915B1号に記載されており、容積式ピペット・チップとともに使用するための容積式ピペットが欧州特許公開第3560596A1号に記載されている。
【0009】
従来のピペットの場合、ピペット・チップをクランプ嵌めするためのスピゴット、駆動装置の構成部品、および該当する場合には、さらなる構成部品がピペット・ハウジングに直接保持されている。したがって、ピペット・ハウジングは、ピペットの構成部品にとって支持構造体としての役割を果たすものである。結果として、ピペット操作中に発生する力はすべて、ハウジング上の様々な位置に伝達される。その結果、ハウジングは精巧な設計でなければならず、ハウジングを製造するための射出成形ツールが複雑で高価になる。さらに、ピペットのすべての構成部品をハウジング内またはハウジング上で組み立てなければならないため、組立てが全般的に複雑になる。別の結果は、ハウジングの材料は結果として生じる力を吸収するのに適しているものでなければならないため、その材料の選択が制限されることである。特に、軟性のハウジング材料は使用できず、その用途の利点は活用できない。さらに、ピペットの構成部品をハウジングの異なる位置に固締すると、オートクレーブに問題が生じる可能性がある。
【0010】
欧州特許公開第2578317B1号および米国特許第9,180,446号は、支持構造体を備えた手動式計量装置を記載しており、この計量装置は、下端部にシリンジやピペット・チップを着脱可能に保持する装置を備え、この計量装置では、シリンジやピペット・チップ内の流体を変位させるためのピストン用駆動装置が、シリンジやピペット・チップを着脱可能に保持する装置の上にある支持構造体に固締されている。支持構造体は、平行で離間した長手部材を有する細長いフレームによって、駆動装置を作動させる際に生じる力がフレーム内に伝わるように形成されている。ハウジングは、駆動装置とフレームとを包囲し、好ましくは、ハウジングにかかる応力を緩和するために、フレームに数点でのみ組み立てられている。異なるフレーム部分の長手部材は、連動式接続構造体を有し、これらの接続構造体を相互に接続する固締装置が設けられている。ディスペンサの例示的実施形態を詳細に記載する。これは、シリンジとともに使用するための容積式変位システムであり、シリンジのシリンダが固定されており、液体を吸入するために、ピストンが昇降レバーを用いてシリンダからわずかに引き出される。吸入した液体を送るために、調節可能な段のサイズを有する歯付きロッド・ラチェット装置を用いて、ピストンがシリンダ内にさらに押し込まれる。一体型ピストンを有するピペット・チップや一体型ピストンのないピペット・チップと比較して、このシリンジの容積はたいてい明らかに大きい。ピペット・チップを着脱可能に保持する装置が平行で離間した長手部材を有する細長いフレームの下端部に配置され、中で変位可能なピストンとこのピストン用の駆動装置とを有するシリンダが、ピペット・チップを着脱可能に保持する装置の上方に固締されているピペットもまた、記載されている。
【0011】
欧州特許公開第3399215A1号は、支持構造体を備えたスピンドル装置を有する電子式ハンド・ディスペンサを記載しており、支持構造体には駆動スピンドル用案内要素が固定的に接続され、駆動スピンドル用電気駆動モータが固締されている。この支持構造体は、ハウジングおよび/またはフレーム(シャーシ)、および/または支持部であり、単一の構成部品または複数の構成部品からなる。
【0012】
独国特許第112016006174T5号は、ピペット・チップ用のアタッチメントが保持されている、前面ハウジングと背面ハウジングを有する二重ハウジング設計として構成されているユニット・ハウジングを有するマルチチャネル・ピペットの下部を記載している。前面カバーと背面カバーとを有する排出装置のカバーが、ユニット・ハウジングを受容する。
【0013】
欧州特許第1015110B1号は、硬質プラスチック製のフレームを有し、クッション性のある膜に埋め込まれてユーザの手のひらに心地よく収まるようになっているピペットを記載している。このフレームは管状であり、駆動装置の構成部品と、カウンタと、容積調整リングの調整をカウンタに伝達するための歯車機構とが、一列に並んで配置されており、フレーム内で部分的に連動する。容積調整リングは、内部に変位可能なピストンを有するシリンダが配置されたピペットの下部と、膜ならびに中にフレームが埋め込まれたピペットの上部との間に取り付けられる。ピペットの組立ては精巧である。
【0014】
欧州特許第3159397B1号は、自動ピペット装置のピペット・ヘッドを記載しており、このピペット・ヘッドは、中で変位可能なピストンならびにピストン用の電気駆動モータを第1のフレームに有するスピンドル装置を備えたシリンダを有する。第2のフレームは、スピンドル装置を用いて第1のフレームに対して移動可能であり、この第2のフレームに、シリンダに装着されているピペット・チップを押し離すためにチップ・エジェクタが配置されている。
【0015】
このような背景に対して、本発明の基礎を形成する目的は、組立てが簡単であるピペット・チップとともに使用するための、使用中に生じる力を捕捉し、かつピペット・ハウジングの設計をより自由にすることのできるピペットを提供することである。
【0016】
本目的は、請求項1の特徴を有するピペットによって達成される。ピペットの有利な実施形態は、従属請求項において示されている。
【0017】
本発明による、ピペット・チップとともに使用するためのピペットは、
・縦長のシャーシと、
・少なくとも1つのピペット・チップを着脱可能に保持するための装置(80,111)と、
・液体試料を前記ピペット・チップに吸入し試料を前記ピペット・チップから吐出するための変位要素を変位させる駆動装置(36)と、
・調整済のピペット容積を表示する表示装置(41,103)と、
シャーシを包囲するピペット・ハウジングであって、シャーシの長手方向がピペット・ハウジングの長手方向に整列し、かつシャーシに接続されているピペット・ハウジングと、を備え、以下を特徴とする:
・シャーシは、一列に並んで配置され互いに接続されている複数のシャーシ要素によって構成され、
・前記駆動装置(36)の構成部品が、第1のシャーシ要素に接続されており、前記表示装置(41,103)の構成部品が、第2のシャーシ要素に接続されており、少なくとも1つのピペット・チップを着脱可能に保持する前記装置(80,111)の少なくとも1つの構成部品が、第3のシャーシ要素に接続されている。


【0018】
本発明によるピペットの場合、シャーシは、互いに接続されている複数の管状シャーシ要素を有する。このシャーシはフレームとも呼ばれ、シャーシ要素はフレーム要素とも呼ばれる。シャーシ要素によって、構成部品が接続されているシャーシ要素からなるアセンブリを段階的に組み立てることが可能となるので、構成部品がなくならないようにシャーシ要素に保持される。構成部品は、ピペットの機能に関連する構成部品のすべてであってもよい。ピペットの機能に関連する構成部品は、少なくとも、ピペット・チップを着脱可能に保持する装置の構成部品および駆動装置の構成部品を備える。任意選択的に、別の装置の追加的な構成部品、特に、調整された計量容積を表示する表示装置の構成部品、および/または少なくとも1つのピペット・チップをそれが固締されているスピゴットから排出する排出装置の構成部品が存在する。ピペット・ハウジングがシャーシに接続されている。
【0019】
主な利点は、構成部品をシャーシ要素に接続することによって、すべての力がシャーシによって吸収できることである。ここで、シャーシ要素に高強度材料を使用することが可能である。というのは、ピペットの特定の設計や触覚特性を実現するためにハウジングに望ましい材料をシャーシに使用する必要がないからである。その結果、力を吸収するために必要な強度を放棄することなく、従来のピペットでは考慮されていなかった材料をハウジングに使用することが可能である。シャーシ要素が対応する高強度材料から構成可能であるということは、駆動装置の移動距離の再現可能な精度も保証できることを意味する。さらなる利点は、構成部品を異なるシャーシ要素上で別々に予め組み立てることができることであり、その結果、組立てが容易になる。組立てをさらに容易にするために、構成部品がなくならないように構成部品をシャーシ要素上に予め組み立てることができる。アセンブリ(「仮アセンブリ」または「モジュール」とも呼ばれる)は、1つ以上の構成部品や、それぞれの場合において、1つのシャーシ要素から形成することが可能であり、これを組立て中に独立して検査することができ、品質保証の利点を有する。保守や修理を行うためにピペットを完全にまたは部分的に分解することは、シャーシ要素やそれに接続されている構成部品からピペットを構成することによってもまた容易になる。アセンブリは個別に保守したり修理したりすることが可能である。さらに、下部を受けるためのシャーシ要素を構成することができ、これにより、今日までハウジング内で別々に締結しなければならなかった保持リングを交換することが可能となる。モジュール構造のために、異なるピペットを同様の組立て工程によって構成することができ、個々の構成部品またはシャーシ要素および構成部品からなるアセンブリを交換したり省略したりすることによって、機能的アセンブリを変更することができる。さらに、様々なピペットに対して多くの同一の部品を使用することが可能である。さらなる利点は、ピペットの基本的な枠組を少なくとも部分的に再利用できるため、さらなるピペットの開発費用が削減される。
【0020】
シャーシが複数の管状シャーシ要素を含むという事実は、シャーシが特に安定的に実行可能となり、比較的低い材料支出で比較的高い力に耐える。さらに、管状シャーシ要素は、管状シャーシ要素の相互への接続が特に簡潔で安定的であることが好ましい。さらなる利点は、管状シャーシ要素がピペットの種々の管状または棒状の構成部品を省スペースで受容するのに特に適していることである。さらに、構成部品が保護されるように、構成部品を管状シャーシ要素内に収容可能であることは有利である。最後に、例えば、上下続きの管状ピペット・ハウジングの下部開口部または上部開口部を通して押し込むことによって、管状ピペット・ハウジングの部品をシャーシの端部に押し付けることによって、あるいは複数のシェルからなる管状ピペット・ハウジングのシェルにシャーシを挿入することによって、管状シャーシ要素およびそれに接続された構成部品を有するシャーシを管状ピペット・ハウジングに簡単に挿入することができる。このことによっても、ピペットの分解が容易になる。
【0021】
本出願の意味における管状シャーシ要素は、円形のシリンダ、すなわち、円形断面とは異なる断面と別の長尺中空体とを有するシリンダであり、中空体の長さは、中空体の長手方向軸に垂直な中空体の最大寸法よりも大きくてもよく、小さくてもよく、あるいは等しくてもよい。管状シャーシ要素はまた、シリンダまたは別の長尺中空体の部分またはセグメントであってもよい。さらに、管状シャーシ要素は、その表面に対して内側に突出した構造体および/または外側に突出した構造体を有していてもよく、その結果、これらはシリンダまたは簡潔な長尺中空体の形態から逸脱する。管状シャーシ要素は、長手方向に一列に並んで配置され少なくとも1つの管状部および1つの非管状部を有するシャーシ要素であってもよく、管状部は非管状部に接続されている。例えば、管状シャーシ要素は、1つ以上の棒状部を介して互いに接続されている複数の環状部またはリングセグメント形状部、あるいは1つ以上の棒状部に接続されている単一の環状部またはリングセグメント形状部のみを有していてもよい。シャーシ要素の環状部またはリングセグメント形状部は、好ましくは別の管状シャーシ要素に接続されている。
【0022】
本発明の一実施形態によると、シャーシ要素のすべてが管状である。このことによって、比較的少ない材料費で特に安定したシャーシを得ることができる。
【0023】
別の実施形態によると、シャーシが、複数の管状シャーシ要素に加えて、1つ以上の非管状シャーシ要素を備える。非管状シャーシ要素は、特に、1つ以上のロッド(例えば、長方形の外形、円形の外形、十字形の外形、U字形の外形、C字形の外形、T字形の外形を有し、いずれの場合も中実な横断面または中空の横断面を有する)から、または1つ以上のフレーム(例えば上述のタイプのロッドから形成される)から形成されるシャーシ要素を備える。非管状シャーシ要素は、1つ以上のプレートによって形成されるこれらのシャーシ要素をさらに備えていてもよい。非管状シャーシ要素は、特に、2つの管状シャーシ要素間の距離範囲を跨ぐことが可能であり、あるいはシャーシの上端部または下端部に配置することが可能である。
【0024】
別の実施形態によると、シャーシが、正確には2つ、正確には3つ、または正確には4つの管状シャーシ要素を備える。
【0025】
別の実施形態によると、変位要素を変位させる駆動装置のうちの少なくとも1つの構成部品が、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されており、かつ/または、調整済のピペット容積を表示する表示装置のうちの少なくとも1つの構成部品が、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されており、かつ/または、少なくとも1つのピペット・チップをスピゴットから排出するための排出装置のうちの少なくとも1つの構成部品が、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されており、かつ/または、少なくとも1つのピペット・チップを着脱可能に保持する装置のうちの少なくとも1つの構成部品が、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されており、かつ/または、ピペット・ハウジング内にシャーシ要素を着脱可能に保持する装置のうちの少なくとも1つの構成部品が、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されている。これにより、ピペットの組立てや分解がさらに容易になる。
【0026】
別の実施形態によると、第1のアセンブリが、シャーシ要素と、駆動装置のうちの少なくとも1つの構成部品を備え、かつ/または、第2のアセンブリが、シャーシ要素と、表示装置のうちの少なくとも1つの構成部品を備え、かつ/または、第3のアセンブリが、シャーシ要素と、排出装置のうちの少なくとも1つの構成部品とを備え、かつ/または、第4のアセンブリが、シャーシ要素と、少なくとも1つのピペット・チップを着脱可能に保持する装置のうちの少なくとも1つの構成部品を備え、かつ/または、第5のアセンブリが、シャーシ要素と、ピペット・ハウジング内にシャーシ要素を着脱可能に保持する装置のうちの少なくとも1つの構成部品と、を備える。
【0027】
別の実施形態によると、駆動装置が、複数の構成部品からなり、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されている第1のサブアセンブリを備え、かつ/または、表示装置が、複数の構成部品からなり、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されている第2のサブアセンブリを備え、かつ/または、排出装置が、複数の構成部品からなり、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されている第3のサブアセンブリを備え、かつ/または、少なくとも1つのピペット・チップを着脱可能に保持する装置が、複数の構成部品からなり、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されている第4のサブアセンブリを備え、かつ/または、ピペット・ハウジング内にシャーシ要素を着脱可能に保持する装置が、複数の構成部品からなり、少なくとも1つのシャーシ要素に接続されている少なくとも1つの第5のサブアセンブリを備える。このことによって、第1のプレアセンブリ工程で少なくとも1つのサブアセンブリを予め組み立てることができ、第2のプレアセンブリ工程で少なくとも1つのシャーシ要素を用いて少なくとも1つのサブアセンブリを予め組み立てることができ、組立てや分解がさらに容易になる。
【0028】
少なくとも1つのサブアセンブリを予め組み立てることは、同じシャーシ要素に少なくとも1つの構成部品を予め組み立てることと組み合わせてもよい。
【0029】
別の実施形態によると、駆動装置の構成部品(作動要素、ねじ付きスピンドル、スピンドル・ナット、および昇降ロッドなど)が、第1のシャーシ要素に接続されており、かつ/または、表示装置の構成部品(カウンタおよび/または移送ユニットおよび/または工場キャリブレーション用装置など)が、第2のシャーシ要素に接続されており、かつ/または、駆動装置の構成部品(オーバーストローク・システムおよび/またはカスタマ・キャリブレーションなど)および/または排出装置の構成部品が、第3のシャーシ要素に接続されており、かつ/または、少なくとも1つのピペット・チップを着脱可能に保持する装置の少なくとも1つの構成部品(下部用の管状連結要素など)が、第4のシャーシ要素に接続されているか、そのように構成されている。これは、エア・クッション式ピペットの有利な一実施形態である。
【0030】
別の実施形態によると、駆動装置の構成部品(ねじ付きスピンドルやスピンドル・ナット)および/または表示装置の構成部品(カウンタなど)が、第1のシャーシ要素に接続されており、かつ/または、駆動装置の構成部品(作動要素、および/または昇降ロッドおよび/または様々な方向に昇降ロッドの変位を切り替える切替装置など)および/または排出装置の構成部品(回転スリーブなど)が、第2のシャーシ要素に接続されており、かつ/または、駆動装置の構成部品(昇降ロッドを変位させる歯付きロッドやピニオンなど)が第3のシャーシ要素に接続されており、かつ/または、排出装置の構成部品(排出ロッドおよび/またはロック・スリーブなど)および/または少なくとも1つのピペット・チップを着脱可能に保持する装置の構成部品(スピゴットなど)が、第4のシャーシ要素に接続されている。これは、容積式ピペットの有利な一実施形態である。
【0031】
別の実施形態によると、第1のシャーシ要素が第2のシャーシ要素の上に配置され、第2のシャーシ要素が第3のシャーシ要素の上に配置され、第3のシャーシ要素が第4のシャーシ要素の上に配置されている。
【0032】
別の実施形態によると、少なくとも1つの構成部品および/または少なくとも1つのサブアセンブリが、それに接続されている管状シャーシ要素の内部および/または側面に少なくとも部分的に配置されている。
【0033】
エア・クッション式ピペットの別の実施形態によると、駆動装置がねじ付きスピンドルを有し、このねじ付きスピンドルは第1のシャーシ要素の雌ねじに係合し、第1のシャーシ要素の長手方向に調節可能である。別の実施形態によると、駆動装置が調整スリーブを有し、この調整スリーブは第1のシャーシ要素に回転可能に装着され、互いに対して長手方向に変位可能なようにねじ付きスピンドルに接続されて連動して回転し、この調整スリーブは、第1のシャーシ要素から上方へ突出する調整つまみを有する。別の実施形態によると、駆動装置が、調整スリーブに同心円状に配置されており外周歯を有するキャッチ・スリーブを有し、調整スリーブは、周縁に直径の異なる2つの円周歯を有し、駆動装置が直径の異なるピニオンを備えた移送ユニットを有し、調整スリーブまたは伝達装置を上方位置から下方位置に変位させることによって、移送ユニットの種々のピニオンを調整スリーブおよびキャッチ・スリーブの歯に係合させることができ、その結果、調整スリーブとキャッチ・スリーブとの間での異なるギア倍率(gear multiplications)を調整することができる。本実施形態では、キャッチ・スリーブがまた第1のシャーシ要素に回転可能に装着されており、このキャッチ・スリーブが互いに対して長手方向に変位可能なようにねじ付きスピンドルに接続されて連動して回転する。別の実施形態によると、駆動装置が、長手方向に延びるねじ付きスピンドルの貫通内径部を貫通する昇降ロッドを有し、昇降ロッドはねじ付きスピンドルの下面にある第1の停止部に接触するまで周縁にある少なくとも1つの凸部とともに変位可能であり、凸部の下に駆動要素を形成し、上端部の操作つまみを有する第1のシャーシ要素から突出している。その結果、駆動装置の主要な構成部品は、第1のシャーシ要素に接続されている。
【0034】
調整スリーブとキャッチ・スリーブとを調整可能に変換できるピペットの詳細は、欧州特許出願第19191903.4号に記載されている。この点に関して、欧州特許出願第19191903.4号を参照し、これによってその内容は本願に組み込まれるものとする。
【0035】
エア・クッション式ピペットの別の実施形態によると、第2のシャーシ要素が第1のシャーシ要素の下端部に保持されており、カウンタが第2のシャーシ要素のケースおよび第1のシャーシ要素のケースにある保持装置に保持されている。このことによって、カウンタを予め組み立て、それを駆動装置に接続することが簡単となる。別の実施形態によると、移送ユニットが、第2のシャーシ要素の枠および第1のシャーシ要素のケースにある保持装置に保持されている。
【0036】
エア・クッション式ピペットの別の実施形態によると、第3のシャーシ要素が第1のシャーシ要素および/または第2のシャーシ要素の下端部に接続されており、通路を有するオーバーストローク・システムが第3のシャーシ要素の内部に配置されており、この通路を通って昇降ロッドが下方へ延びており、下方へ変位する間、凸部がオーバーストローク・システムの頂部にある第2の停止部に当接した後、昇降ロッドはオーバーストロークばねの効果に反してさらに下方へ変位可能である。このことによって、オーバーストローク・システムを予め組み立て、それを昇降ロッドに連結することが簡単となる。
【0037】
エア・クッション式ピペットの別の実施形態によると、第4のシャーシ要素が管状連結要素であり、接続用スピゴットを有する下部が連結要素に挿入され、下部は少なくとも1つの変位要素を変位チャンバに有し、ピペット・チップを着脱可能に保持するために変位チャンバに接続されている中空スピゴットを有する。シャーシの下端部にある管状連結要素は、スピゴット形状の連結要素を下部の上端部に連結するのに特に適している。
【0038】
エア・クッション式ピペットの別の実施形態によると、下部が、管状連結要素を連結するための接続用スピゴット内に昇降ロッドの下端部に連結されているドライブ・ロッドを備え、ドライブ・ロッドはシリンダ内で変位可能に配置されている少なくとも1つのピストンに接続されており、このシリンダは下部に配置され、下部から突出するピペット・チップを着脱可能に保持するために下端部でスピゴットに接続されている。本実施形態では、下部は接続用スピゴットを介してシャーシに接続可能であり、特に全体として安定的な構造を形成する。昇降ロッドをドライブ・ロッドに連結することが特に容易となる。マルチチャネル・ピペットの場合、ドライブ・ロッドは、複数のピストン-シリンダユニットのピストンのピストン・ロッドに底部で接続されている十字部材から上方へ突出していてもよく、それらのシリンダは、それぞれの場合、ピペット・チップを着脱可能に保持するために中空スピゴットに接続されている。シングルチャネル・ピペットの場合、ドライブ・ロッドは、同時にピストン-シリンダユニットのピストンのピストン・ロッドであってもよく、そのシリンダは、ピペット・チップを着脱可能に保持するために中空スピゴットに接続されている。
【0039】
別の実施形態によると、シングルチャネルのみまたはマルチチャネルを有する下部が、接続用スピゴットを介して連結要素に連結されている。各チャネルは、スピゴットを下端部に有するシリンダ内で変位可能に配置されているピストンによって形成されている。シングルチャネルのみを有する下部が、ピペットとともに、シングルチャネル・ピペット(それぞれの場合そのスピゴットのみにシングル・ピペット・チップが固締可能である)を形成する。マルチチャネルを有する下部はマルチチャネル・ピペットを形成し、そのスピゴットにマルチピペット・チップが同時に固締可能である。
【0040】
別の実施形態によると、マルチ・シリンダが互いに平行に箱状の下部シャーシに保持され、下部シャーシは頂部で接続用スピゴットに接続され下部ハウジングを形成する。本実施形態では、下部がまたシャーシを備えている。
【0041】
容積式ピペットの別の実施形態によると、第1のシャーシ要素が、計量容積を調整する調整つまみを備えた計量容積を調整する調整装置であって、この調整つまみは第1のシャーシ要素から上方へ突出し第1のシャーシ要素に回転可能に装着されている調整装置と、調整された計量容積を調整するための調整装置に連結されているカウンタとを有する。容積式ピペットの場合、調整装置およびカウンタは第1のシャーシ要素に有利に配置可能である。
【0042】
容積式ピペットの別の実施形態によると、第2のシャーシ要素が回転スリーブをケースに回転可能に支持し、計量ストロークを行い、かつピペット・チップをスピゴットから排出するための作動要素が第2のシャーシ要素に配置されている。ピペット・チップの計量および排出の両方が、作動要素を用いて制御可能である。回転スリーブおよび作動要素の詳細は、欧州特許出願第19150808.4号に記載されている。この点に関して、欧州特許出願第19150808.4号を参照し、これによってその内容は本願に組み込まれるものとする。
【0043】
容積式ピペットの別の実施形態によると、切替装置が第2のシャーシ要素に接続されており、この切替装置は、特定の下方へのストロークによって作動要素を連続的に変位させる間に異なる方向にチップ・ピストンを変位させるピストン昇降ロッドを変位させるために、作動要素に連結されている。切替装置の詳細は、欧州特許出願第20181406.8号に記載されている。この点に関して、欧州特許出願第20181406.8号を参照し、これによってその内容は本願に組み込まれるものとする。
【0044】
別の実施形態によると、第3のシャーシ要素が、歯付きロッドと、昇降ロッドと、歯付きロッドを昇降ロッドに連結させる歯車機構とに接続されており、ピストン・エジェクタおよび表示スリーブを調整する装置のためのガイドを有する。歯付きロッドは様々な方向に昇降ロッドを変位させる役割をし、切替装置とともに動作する。切替装置を第2のシャーシ要素に配置し、歯付きロッドを第3のシャーシ要素に固締して案内することによって、組立て中に歯付きロッドと切替装置とを簡単に連結することができる。別の実施形態によると、歯車機構が複数の平行の歯列を備えた多段歯付きロッドと、昇降ロッドに固定的に接続されているさらなる歯付きロッドと、直径が同じか異なっており共通のシャフトに固定的に接続されて連動して回転する2つのピニオンとを備え、2つのピニオンのうちの一方が多段歯付きロッドの歯列の歯と噛合し、2つのピニオンの他方がさらなる歯付きロッドの歯と噛合する。多段歯付きロッドを用いて、多段歯付きロッドと昇降ロッドに固定的に接続されている歯付きロッドとの間でギア倍率(gear multiplications/gear reductions)が異なるピペットを、様々な歯車の組を使用することによって実現可能である。その結果、公称容積の異なるピペット・チップ用のピペットが、公称容積を送るための同じサイズの操作経路を備えることができる。このような組立てによって、歯車の並進/歯車の減速が異なる歯車の組を挿入することによって、様々なピペットの変形体を実現しやすくなる。歯付きロッドおよび昇降ロッドの詳細や、これらを連結する歯車機構の詳細は、欧州特許出願第20181406.8号に記載されている。この点に関して、欧州特許出願第20181406.3号(特に15頁から17頁、および27頁から28頁)を参照し、これによってその内容は本願に組み込まれるものとする。
【0045】
別の実施形態によると、第4のシャーシ要素が、下端部に一体型ピストンを有するピペット・チップをクランプ嵌めするための突出形スピゴットを有する。
【0046】
別の実施形態によると、ピペット・チップをスピゴットから排出するための排出装置が、第1のシャーシ要素および/または第4のシャーシ要素上で案内される。このことによって、排出装置を予め簡単に組み立てることが可能となる。排出装置およびスピゴットの詳細は、欧州特許出願第19150847.2号に記載されている。この点に関して、欧州特許出願第19150847.2号を参照し、これによってその内容は本願に組み込まれるものとする。
【0047】
以下の実施形態によると、エア・クッション式ピペットおよび容積式ピペットの両方を構成することができる。
【0048】
別の実施形態によると、隣接するシャーシ要素が以下の態様の少なくとも1つで互いに接続されている:着脱可能に、着脱不可能にあるいはある程度着脱可能に(接続要素を破壊することを含む)、かつ/または、しっかりと結合した状態で、確動的または非確動的に。シャーシ要素は互いに着脱可能に接続されることが好ましい。このことは結果として、隣接するシャーシ要素同士の接続を、特に簡単で固定された安全なものとする。
【0049】
別の実施形態によると、構成部品および/またはそのアセンブリが、以下の態様の少なくとも1つでシャーシ要素に接続されている:着脱可能に、着脱不可能にあるいはある程度着脱可能に(接続要素を破壊することを含む)、かつ/または、確動的にまたは非確動的に、あるいはしっかりと結合した状態で。構成部品および/またはそのアセンブリはシャーシ要素に着脱可能に接続されることが好ましい。このことは結果として、構成部品および/またはそのアセンブリのシャーシ要素への接続を、特に簡単で固定された安全なものとする。
【0050】
別の実施形態によると、隣接するシャーシ要素が、隣接するシャーシ要素を互いに特定の配置または位置に保持する位置決め要素を有する。別の実施形態によると、位置決め要素が、少なくとも1組の掛止装置を備え、隣接するシャーシ要素がそれぞれ1組の掛止装置のうちの1つを有し、その掛止装置を特定の配置または位置に互いに掛止することによって隣接するシャーシ要素が互いに保持可能である。別の実施形態によると、位置決め要素が、2つの磁石からか1つの磁石からのどちらかから形成される少なくとも1組の磁気部品と、強磁性部品を備え、隣接するシャーシ要素はそれぞれ1組の磁気部品を有する。
【0051】
別の実施形態によると、少なくとも1つのシャーシ要素が少なくとも1つの突出型の位置リブまたは位置面を外側に有し、これを用いてシャーシ要素または複数のシャーシ要素を容易に検査用ゲージに入れることができ、難しい寸法検査が無理なく短時間で可能となる。このことはまた、製造中に組み立てる力の検査も可能になる。
【0052】
別の実施形態によると、ピペット・ハウジングが、以下の態様の少なくとも1つでシャーシに接続されており、かつ/または、下部ハウジングが以下の方法の少なくとも1つで下部シャーシに接続されている:着脱可能に、着脱不可能にあるいはある程度着脱可能に(接続要素を破壊することを含む)、かつ/または、確動的にまたは非確動的に、あるいはしっかりと結合した状態で。ピペット・ハウジングがシャーシに着脱可能に接続されていることが好ましい。その結果、それぞれのシャーシとハウジングとの接続が特に固定された簡単で確実なものとなり、種々のハウジングへ大きな力がかかることが回避される。
【0053】
別の実施形態によると、ピペット・ハウジングがシャーシの1つの箇所に接続されている。好ましい実施形態によると、この箇所は、ピペット・ハウジングの内周にある円周の連続線にある複数の点または面である。別の実施形態によると、ピペット・ハウジングがシャーシの下端部に接続されている。別の実施形態によると、ピペット・ハウジングが単一のシャーシ要素にのみ、または2つの隣接するシャーシ要素に接続されている。このことによって、ピペット・ハウジングを介して伝達されるシャーシに作用する力が回避される。さらに、このことには、ピペット・ハウジングの熱膨張がシャーシ要素に保持されているピペットの機能に関連する構成部品に影響を及ぼさないという利点がある。
【0054】
別の実施形態によると、それぞれ構成部品を備えたすべてのシャーシ要素からなるシャーシがピペット・ハウジングに挿入可能なように、ピペット・ハウジングが構成されている。このことによって、ピペットの組立てが簡単になる。さらに、このことによって、構成部品を備えたシャーシがピペット・ハウジングに取り付けられる前の組立て完了前に検査やキャリブレーションなどの調整作業を行うことができる。
【0055】
本出願では、「上部」および「下部」、ならびに「垂直」および「水平」という用語や、これらに由来する例えば「上」、「下」、および「一方を他方の上に」などの用語は、スピゴットが垂直に向いており、ピペット・ハウジングの下向きの端部に位置する、ピペットの配置を示す。
【0056】
例示的実施形態の添付の図面を参照しつつ、本発明を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】エア・クッション式ピペットの上部の縦断面図。
図2】同じピペットの構成部品が接続されているシャーシ要素の分解組立図。
図3】同じシャーシ要素の分解組立図。
図4図3のシャーシ要素が互いに接合されている側面図。
図5図2の構成部品が部分的に互いに接合されているシャーシ要素の側面から斜めに見た斜視図。
図6図2の構成部品に接続されているシャーシ要素が互いに接合されている側面図。
図7】排出装置の第1の例示的実施形態とともに接合されている、構成部品に接続されているシャーシ要素を、側面から斜めに見た斜視図。
図8】排出装置の第2の例示的実施形態とともに接合されている、構成部品に接続されているシャーシ要素を、側面から斜めに見た斜視図。
図9】同じピペットのオーバーストローク・システムを備えたシャーシ要素の、下方および側面から斜めに見た分解組立図。
図10】同じピペットのカウンタを備えたシャーシ要素を左側から見た斜視図。
図11】同じピペットのカウンタを備えたシャーシ要素を右側から見た斜視図。
図12】下部ハウジングのない同じピペットの下部を示す部分破断正面図。
図13】容積式ピペットの正面図。
図14図13に対して90度回転させた面内にある、長手方向軸に沿った同じ容積式ピペットの側面図。
図15】構成部品を備え予め組み立てられている同じピペットのシャーシ要素の、下方および側面から斜めに見た斜視図。
図16】同じ容積式ピペットの第1のシャーシ要素の、下方および側面から斜めに見た斜視図。
図17】構成部品を備えた同じシャーシ要素の、下方および側面から斜めに見た斜視図。
図18】同じピペットの第2のシャーシ要素の上部を、下方および側面から斜めに見た斜視図。
図19】構成部品を備えた同じシャーシ要素の、下方および側面から見た斜視図。
図20】同じピペットの第3のシャーシ要素の上部を、下方および側面から斜めに見た斜視図。
図21】構成部品を備えた同じシャーシ要素の、下方および側面から見た斜視図。
図22】同じピペットの第4のシャーシ要素の上部を、下方および側面から斜めに見た斜視図。
図23】構成部品を備えた同じシャーシ要素の、下方および側面から見た斜視図。
図24図22のアセンブリの図16のカウンタへの連結を、下方および側面から斜めに見た斜視図。
【0058】
図1から図11によると、エア・クッション式ピペット1.1が、シャーシ3と、構成部品4(表示リングなど)と、アセンブリ5(図2のカウンタなど)と、管状ピペット・ハウジング6とを備える上部2を有する。
【0059】
シャーシ3は、互いに着脱可能に接続されている4つの管状シャーシ要素7.1、7.2、7.3、7.4を備える。シャーシ3が、直径の大きな上部中空円柱部8.1、8.2によって境界が定められている上部分9.1を頂部に有し、直径の小さな下部中空円柱部8.3、8.4によって境界が定められている下部分9.2を底部に備える、第1のシャーシ要素7.1を備える(図3を参照のこと)。その間には、上方へ突出している円蓋12が、中央の貫通孔11を有するプレート10に配置されている。頂部では、上部中空円柱部8.1、8.2が、下方へ開口したポケット14を有する円弧状の横材13によって、一方側で互いに接続されている。
【0060】
略環状の第2のシャーシ要素7.2がその下に配置されており、第1のシャーシ要素7.1の下部分9.2へと下から押すことが可能である。差込み接続部16の軸方向および円周方向に向く溝15.1、15.2が、第1のシャーシ要素7.1の下部分9.2の内側に構成されている。第2のシャーシ要素7.2は、ケースの外方へ突出するコンソール17.1、17.2を有する(図2図10図11を参照のこと)。
【0061】
第3のシャーシ要素7.3が、第2のシャーシ要素7.2の下に配置されており、頂部に差込み接続部16の凸部19を備えた管状部18を有し、外周にある溝15.1、15.2を補完する(図3を参照のこと)。底部には、第3のシャーシ要素7.2が、端部でフック21.1、21.2、21.3とともに下方へ突出している3つの脚部20.1、20.2、20.3を備える。第3のシャーシ要素7.3の管状部18は外周に雄ねじ22を有し、その上に、外方に突出する軸受スピゴット23を有する。
【0062】
第4のシャーシ要素7.4は環状の構造体であり、その下に配置されている。第4のシャーシ要素7.4は、頂部に周縁の横材24を有し、その下に複数の開口部25.1、25.2、25.3をケース内に有する。
【0063】
第1のシャーシ要素7.1に接続させるために、第2のシャーシ要素7.2が第1のシャーシ要素7.1の下部分9.2へと押される。ここで、2つのシャーシ要素7.1、7.2間の掛止を最小限にすることが効果的である。
【0064】
第3のシャーシ要素7.3が、差込み接続部16を介して第1のシャーシ要素7.1および第2のシャーシ要素7.2に接続されている。
【0065】
フック21.1、21.2、21.3が第4のシャーシ要素7.4の開口部25.1、25.2、25.3に係合されるまで、第4のシャーシ要素7.4が第3のシャーシ要素7.3の脚部20.1、20.2、20.3へ押されることによって、第4のシャーシ要素7.4は接続される。
【0066】
シャーシ要素7.1、7.2、7.3、7.4を互いに接続する前に、これらは構成部品4およびアセンブリ5を備えていてもよい。
【0067】
中空のねじ付きスピンドル27が第1のシャーシ要素7.1の円蓋12にある雌ねじ26に下から螺合される。外方へ突出しているキャッチ羽根29.1、29.2を有するキャッチ28が、ねじ付きスピンドル27の上端部に連動して回転させるために接続されている。キャッチ・スリーブ30が上から円蓋12へ押されるが、キャッチ・スリーブ30は軸溝31.1、31.2を内周に有し、この溝がキャッチ羽根29.1、29.2を受ける。キャッチ・スリーブ30は、下端部の外側に円周歯32を有する(図1を参照のこと)。
【0068】
下部調整スリーブ33が上からキャッチ・スリーブ30へ押されるが、下部調整スリーブ33は底部の周縁に異なる直径の2つの円周歯34.1、34.2を有する。
【0069】
軸受シェル35が、第1のシャーシ要素7.1の下部調整スリーブ33と上部分9.1との間に挿入される。上部調整スリーブ36は上から下部調整スリーブ33へ押されるか、別の方法でそれに固定的に接続され、この上部調整スリーブは頂部で調節ホイールとともに第1のシャーシ要素7.1から突出している。
【0070】
昇降ロッド37が、下からねじ付きスピンドル27内に案内され、この昇降ロッドはバルジ状のカラー39とともにねじ付きスピンドル27の下面をスライド可能であり、上部停止部40を形成する。
【0071】
カウンタ41、移送ユニット42、および駆動歯車43を、第2のシャーシ要素7.2のコンソール17.1、17.2へ上から押すことができる。移送ユニット42はシャフト44であり、この上に複数のピニオン45.1、45.2が配置されている。駆動歯車43が、共通のシャフト47に直径の異なる2つの平歯車46.1、46.2を備える(図2図5から図8図10図11を参照のこと)。
【0072】
カウンタ41、移送ユニット42および駆動歯車43の頂部には、上方に円弧状に突出するリブ49を有する軸受プレート48が配置されている。さらに、工場キャリブレーション用装置50が第2のシャーシ要素7.2に組立てられている。
【0073】
第2のシャーシ要素7.2を第1のシャーシ要素7.1へ押し付けると、円弧状のリブ51がポケット14に係合する。さらに、調整スリーブ33、36がその最高位置に配置されると、移送ユニット42のピニオン45.1および45.2が、歯34.1および32と係合するようになる。その最低位置に変位すると、ピニオン45.2は歯34.2および32と係合するようになり、ピニオン45.1は係合が外れる。このことによって、調整スリーブ33、36とキャッチ・スリーブ30との間でギア倍率(gear multiplications)が異なるようになる。
【0074】
オーバーストローク・システム52の下部停止部51は、第3のシャーシ要素7.3に下から挿入される。下部停止部51は、外方へ突出する凸部53を有し、この凸部53は第3のシャーシ要素7.3の内周にある溝54に挿入される。さらに、オーバーストロークばね55が、下部停止部51に下から挿入される。最後に、ディスク56がオーバーストロークばね55に下から押圧され、このディスクは周縁から突出するラッチ・ノーズ57を有し、このラッチ・ノーズ57は第3のシャーシ要素7.3の内周でラッチ孔58に掛止する。ディスク56はオーバーストロークばね52用の軸受である(図1図5図6を参照のこと)。
【0075】
下部停止部51およびディスク56はそれぞれ、昇降ロッド37を挿入するための中央貫通孔59、60を有する。
【0076】
上縁部に周縁歯62を有する表示リング61が、第3のシャーシ要素7.3の雄ねじ22に螺合される。表示リング61の上縁部は傾斜しており、その傾斜は第3のシャーシ要素7.3の雄ねじ22のピッチに対応している。冠歯64の駆動要素63が軸受スピゴット歯23へ押し付けられ、その冠歯は表示リング61の上縁部にある歯62に噛合する。駆動要素63は、カスタマ・キャリブレーション用ツールを取り付けるための内部六角形65を有する。
【0077】
第3のシャーシ要素7.3を第1のシャーシ要素7.1および第2のシャーシ要素7.2に接続する前に、第3のシャーシ要素7.3の内方へ突出するショルダ67の底部に支持され、第2のシャーシ要素7.2の内方へ突出した凸部68を頂部で押圧する差込みばね66が、第3のシャーシ要素7.3に上から挿入される。差込みばね66によって差込み接続部が連結位置に確保される。
【0078】
第4のシャーシ要素7.4が第3のシャーシ要素の脚部にあるフックにスナップ嵌めすることによって、第4のシャーシ要素7.4が第3のシャーシ要素に接続される。
【0079】
最後に、排出装置69.1、69.2が、予め組み立てられたシャーシ3に外側から配置され、そのうちの2つの実施形態が図7および図8に示されている。
【0080】
予め組み立てられている構成部品4およびアセンブリ5とともに接合されているシャーシ3が、上からピペット・ハウジング6に押し込まれる。ピペット・ハウジング6は、3つの突出する凸部70.1、70.2、70.3を内周の下部領域に有する。第4のシャーシ要素7.4の周縁の横材の下面が凸部70の頂部に支持され、第3のシャーシ要素7.3のフック21.1、21.2、21.3がピペット・ハウジングの凸部の下にスナップ嵌めするまで、シャーシ3がピペット・ハウジング6に押し込まれる。最後に、下からこの配置を確保するために、付勢ばね71が第4のシャーシ要素7.4に挿入され、第3のシャーシ要素の凸部により上端部が掛止されて、脚部20.1、20.2、20.3を内部で支持する。付勢ばね71は、ピペットの下部との接続を確立するのにも役立つ。
【0081】
ピペット1.1の下部と接続するために、第4のシャーシ要素7.4(下縁部の連結フレーム)が、その下縁部に内方へ突出する周縁ショルダ72を有する。
【0082】
図12によると、ピペットの下部73が、垂直面で接合される前部および後部のハウジング・ケース74.1、74.2から形成される、箱状の下部シャーシ74を有する。下部73は管状の接続用スピゴット75を有し、接続用スピゴット75は下部シャーシ74の上縁部から上方へ突出している。接続用スピゴット75は、2つのハウジング・ケース74.1、74.2のうちの1つに一体的に接続されている。
【0083】
下部73では、8個の平行のピストン-シリンダ装置76が一列に配置されている。各ピストン-シリンダ装置76はシリンダ76.1を有し、ピストン・ロッド76.3を介してピストン・ディスク76.4に連結されたピストン76.2がこの中に入り込む。
【0084】
底部では、各シリンダ76.1は、ピペット・チップを計量部品78に取り付けるために、下方へ突出したスピゴット77に一体に接続される。各スピゴット77は、ピストン76.2が変位可能なシリンダ76.1の内部空間に頂部で接続されている貫通内径部を有し、貫通内径部はスピゴット77の下端部の開口部に底部で開口している。
【0085】
各計量部品78は、スピゴット77とシリンダ76.1との間に円周凸部79を有する。
【0086】
計量部品78の円周凸部79は、下部73の水平下壁80にある貫通孔79の上縁部に支持されている。シリンダ76.1は、下部73の水平支持プレート82の別の貫通孔81を通ってさらに上へ案内される。
【0087】
コイルばねとして実装されているばね要素83が、円周凸部79で底部を支持され支持プレート82の下面で頂部を支持されており、各シリンダ76.1上で案内される。
【0088】
ドライブ・ロッド84が、接続用スピゴット75に挿入され、このドライブ・ロッドは受け器85.1を有する十字部材85に底部で接続されており、受け器85.1にはピストン・ディスク76.4が挿入されている。
【0089】
下部73はさらに、垂直な板状エジェクタ部86.1、86.2を下縁に有し、前縁に向かって開口する貫通開口部86.5、86.6を有する2部からなる水平停止部86.3、86.4と、板状エジェクタ部86.1の上縁から上方へ突出する作動要素86.7とを備える、2部からなるエジェクタ86を備える。
【0090】
下部73および2部からなるエジェクタ86ならびにピペットへこれらを連結する詳細は、欧州特許公開第2735369A1号に、特に段落55および段落62から83、ならびに図1から図10から理解可能である。一代替実施形態は、本発明の内容において同様に使用可能であるが、上述の特許の段落91から段落98および図11から図16に詳しく記載されている。この点に関して、欧州特許出願第2735369A1号を参照し、これによってその内容は本願に組み込まれるものとする。
【0091】
接続用スピゴット75を第4のシャーシ要素7.4に挿入することによって、下部73をピペット1.1の上部2に接続可能である。
【0092】
図13から図24によると、容積式ピペット1.2が、構成部品88およびアセンブリ89がそれに接続されているシャーシ87と、シャーシ87および構成部品88およびアセンブリ89を包囲するピペット・ハウジング90とを有する。
【0093】
シャーシ87は、4つの管状シャーシ要素91.1、91.2、91.3、91.4を備える。
【0094】
シャーシ87は、頂部に第1のシャーシ要素91.1を備え、この第1のシャーシ要素91.1は外周に円周溝92を有し、第2のシャーシ要素91.1に接続するために、周縁に外方に突出するカラー93をさらに有する。
【0095】
第2のシャーシ要素91.2は、その上端部に、第1のシャーシ要素91.1の溝92とカラー93とを接続するために、内方へ突出するフランジ94を有する。第1のシャーシ要素91.1および第2のシャーシ要素91.2は、フランジ94を溝92に螺合することによって互いに着脱可能に接続することが可能である。
【0096】
第2のシャーシ要素91.2は、その下端部に、第3のシャーシ要素91.3に回転可能に接続するためのスロット94を有し、第3のシャーシ要素91.3はスロット94をケースに接続するための外方へ突出する羽根95を有する。
【0097】
第3のシャーシ要素91.3は下端部の周縁にスロット96を有し、第4のシャーシ要素91.4は、第3のシャーシ要素91.3と第4のシャーシ要素91.4とを回転可能に接続するためにこれらのスロットを補完する凸部97を有する。
【0098】
シャーシ要素91.1~91.4は、互いに独立して構成部品88およびアセンブリ89を備えていてもよい。第1のシャーシ要素91.1は、ピペット容積調整装置98を備えていてもよい。これは、フランジに接続可能なスピンドル・ナット99と、第1のシャーシ要素91.1の下端部にある主要面とを有する。案内チューブ100がスピンドル・ナット99から下方へ突出している。ねじ付きスピンドルがスピンドル・ナット99へねじ込まれ、このねじ付きスピンドルは、第1のシャーシ要素91.1の上端部から突出する調整つまみ101を頂部に備えている。上部ハウジング・カバー102が第1のシャーシ要素の上端部に固定されている。
【0099】
カウンタ103が、歯車機構を介してねじ付きスピンドルに連結され、第1のシャーシ要素の開口面に組み立てられる。
【0100】
伝達機構104および回転スリーブ105が第2のシャーシ要素91.2に挿入される。さらに、伝達機構が作動要素106に接続される。第2のシャーシ要素31.2が、ピストン昇降ロッドの上昇運動と下降運動とを切り替える装置を備える。
【0101】
2つの歯付きロッド108.1、108.2と、歯を上端部に有するピストン昇降ロッド109と、歯車駆動装置110とが、第3のシャーシ要素91.3に装着されている。
【0102】
最後に、スピゴット111ならびにロック・スリーブ112およびピストン排出ロッド113が第4のシャーシ要素91.4に組み立てられている。
【0103】
予め組み立てられているアセンブリは、シャーシ要素91.1~91.4を接続することによって互いに接続され、シャーシ87はピペット・ハウジング90に設置されている。
【符号の説明】
【0104】
1.1 エア・クッション式ピペット
2 上部
3 シャーシ
4 構成部品
5 アセンブリ
6 ピペット・ハウジング
7.1、7.2、7.3、7.4 シャーシ要素
8.1、8.2 上部中空円柱部
8.3、8.4 下部中空円柱部
9.1 上部分
9.2 下部分
10 プレート
11 貫通孔
12 円蓋
13 横材
14 ポケット
15.1、15.2 溝
16 差込み接続部
17.1、17.2 コンソール
18 管状部
19.1、19.2 凸部
20.1、20.2、20.3 脚部
21.1、21.2、21.3 フック
22 雄ねじ
23 軸受スピゴット
24 横材
25.1、25.2、25.3 開口部
26 雌ねじ
27 ねじ付きスピンドル
28 キャッチ
29.1、29.2 キャッチ羽根
30 キャッチ・スリーブ
31.1、31.2 軸溝
32 歯
33 下部調整スリーブ
34.1、34.2 歯
35 軸受シェル
36 上部調整スリーブ
37 昇降ロッド
39 カラー
40 上部停止部
41 カウンタ
42 移送ユニット
43 駆動歯車
44 シャフト
45.1、45.2 ピニオン
46.1、46.2 平歯車
47 シャフト
48 軸受プレート
49 リブ
50 工場キャリブレーション用装置
51 下部停止部
52 オーバーストローク・システム
53 凸部
54 溝
55 オーバーストロークばね
56 ディスク
57.1、57.2、57.3 掛止用突片
58.1、58.2、58.3 ラッチ孔
59、60 貫通孔
61 表示リング
62 歯
63 駆動要素
64 冠歯
65 内部六角形
66 差込みばね
67 ショルダ
68 凸部
69.1、69.2 排出装置
70 凸部
71 付勢ばね
72 ショルダ
73 下部
74 下部シャーシ
74.1、74.2 ハウジング・ケース
75 接続用スピゴット
76 ピストン-シリンダ装置
76.1 シリンダ
76.2 ピストン
76.3 ピストン・ロッド
76.4 ピストン・ディスク
77 スピゴット
78 計量部品
79 円周凸部
80 下壁
81 貫通孔
82 支持プレート
83 ばね要素
84 ドライブ・ロッド
85 十字部材
85.1 受け器
86 エジェクタ
86.1、86.2 板状エジェクタ部
86.3、86.4 水平停止部
86.5、86.6 貫通開口部
86.7 作動要素
87 シャーシ
88 構成部品
89 アセンブリ
90 ピペット・ハウジング
91.1、91.2、91.3、91.4 管状シャーシ要素
92 溝
93 カラー
94 フランジ
95 羽根
96 スロット
97 凸部
98 ピペット容積調整装置
99 スピンドル・ナット
100 案内チューブ
101 調整つまみ
102 上部ハウジング・カバー
103 カウンタ
104 伝達機構
105 回転スリーブ
106 作動要素
108.1、108.2 歯付きロッド
109 ピストン昇降ロッド
110 歯車駆動装置
111 スピゴット
112 ロック・スリーブ
113 ピストン排出ロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24