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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】集中力の維持及び/又は向上のための剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20240219BHJP
   A61K 36/02 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240219BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 1/14 20060101ALN20240219BHJP
   A61P 25/02 20060101ALN20240219BHJP
   A61P 25/20 20060101ALN20240219BHJP
   A61P 37/04 20060101ALN20240219BHJP
【FI】
A23L33/135
A61K36/02
A61P43/00
C12N1/12 C
A61P1/14
A61P25/02
A61P25/20
A61P37/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022130960
(22)【出願日】2022-08-19
(62)【分割の表示】P 2018069534の分割
【原出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2022161991
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2017236506
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-11530
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 満智子
(72)【発明者】
【氏名】福ヶ迫 久仁衛
(72)【発明者】
【氏名】大木 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】大谷 和由
【審査官】川崎 良平
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00 -33/29
A61K 31/716
A61K 35/00 -35/768
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーグレナを含有する、ユーグレナの乾燥重量として一日あたり0.1~10000 mg/kg体重での摂取に用いるためであり且つ集中力の維持及び/又は向上のための剤。
【請求項2】
前記ユーグレナがユーグレナ・グラシリスである、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
前記ユーグレナがユーグレナ・グラシリスEOD-1株(受託番号FERM BP-11530)である、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項4】
前記ユーグレナが乾燥粉末形態である、請求項1~3のいずれかに記載の剤。
【請求項5】
心身活動時の集中力の向上、心身活動時の集中力の持続力の向上、事務的作業における集中力の向上、及び事務的作業における集中力の持続力の向上からなる群より選択される少なくとも1種のために用いられる、請求項1~4のいずれかに記載の剤。
【請求項6】
食品組成物である、請求項1~5のいずれかに記載の剤。
【請求項7】
食品添加剤である、請求項1~5のいずれかに記載の剤。
【請求項8】
医薬である、請求項1~5のいずれかに記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律神経バランス改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
自律神経は、交感神経と副交感神経の2つの神経系から構成されており、呼吸、消化、
体温調節等の不随意機能の調節を司っている。交感神経は、通常、ストレスの多い状況下での活動において活性化され、心身をそのような活動に適した状態にする。一方、副交感神経は、通常、安静時、リラックス時において活性化され、心身を回復及び休息に適した状態にする。ストレスが恒常的に続く、不規則な生活が続く等の理由により、この2つの
神経系のバランスが崩れ、様々な体調不良、疾患等に繋がるといわれている。
【0003】
ユーグレナは、ミドリムシ属(=ユーグレナ属)に属する微細藻類であり、食品材料として利用されている。また、ユーグレナ抽出物を皮膚に適用することも行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表第2008-526954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自律神経バランスの乱れにより、交感神経が活性化すべき活動下でも交感神経が適切に活性化しない状態、副交感神経が活性化すべき回復及び休息下でも副交感神経が適切に活性化しない状態が生じ得る。このような状態であると、集中力を発揮すべき状況下でも集中力がより低くその持続力がより低い状態になり、また睡眠の質、免疫力、及び便通がより低減されてしまう。また、これら以外にも、様々な体調不良、疾患等を招くことになると考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、自律神経バランス改善剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意研究した結果、ユーグレナが、自律神経バランス改善作用を有することを見出した。この知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明が完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の態様を包含する:
項1. ユーグレナを含有する、自律神経バランス改善剤.
項2. 前記ユーグレナがユーグレナ・グラシリスである、項1に記載の自律神経バランス改善剤.
項3. 前記ユーグレナがユーグレナ・グラシリスEOD-1株(受託番号FERM BP-11530)である、項1又は2に記載の自律神経バランス改善剤.
項4. 前記ユーグレナが乾燥粉末形態である、項1~3のいずれかに記載の自律神経バランス改善剤.
項5. 睡眠の質的改善、集中力向上、免疫力向上、及び便通改善からなる群より選択される少なくとも1種のために用いられる、項1~4のいずれかに記載の自律神経バラン
ス改善剤.
項6. 食品組成物である、項1~5のいずれかに記載の自律神経バランス改善剤.
項7. 食品添加剤である、項1~5のいずれかに記載の自律神経バランス改善剤.
項8. 医薬である、項1~5のいずれかに記載の自律神経バランス改善剤.
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自律神経バランス改善剤を提供することができる。これにより、交感神経が活性化すべき活動下でも交感神経が適切に活性化しない状態、副交感神経が活性化すべき回復及び休息下でも副交感神経が適切に活性化しない状態を改善することができる。また、自律神経バランスを改善することにより、集中力を発揮すべき状況下において集中力をより高め、さらにその持続力をより高めることができ、さらに睡眠の質、免疫力、便通等を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験例1の試験デザイン及び試験フローを示す。図中、対照食はコーンスターチを含有するカプセル錠であり、試験食はユーグレナ乾燥粉末を含有するカプセル錠である。
図2】自覚症しらべによる疲労感の評価用アンケート用紙を引用して示す。
図3】日本語版便秘評価尺度(CAS)を引用して示す。
図4】起床時睡眠感覚調査票MA版(以下、OSA 睡眠調査票)を引用して示す。
図5】安静時(PVT検査前)と事務的作業時(PVT検査中)におけるLF/HF値を示す。0Wは対照食及び試験食の摂取前であり、2Wは対照食摂取後であり、4Wは試験食摂取後である(以下の図においても同様である)。
図6】OSA睡眠調査票の回答結果より、日々変動する睡眠感を統計的に尺度化した値を算出した結果を示す。
図7】検査日の実質睡眠時間(=(起床時刻-就寝時刻)-入眠までの時間)を示す。
図8】PVT検査における平均反応時間を示す。横軸中、試験回数1回目は試験開始から0~5分間の測定結果を示し、試験回数2回目は試験開始から5~10分間の測定結果を示し、試験回数3回目は試験開始から10~15分間の測定結果を示し、試験回数4回目は試験開始から15~20分間の測定結果を示し、試験回数5回目は試験開始から20~25分間の測定結果を示す。
図9】PVT検査における、反応時間500ms以上となった回数の平均値を示す。横軸中、試験回数1回目は試験開始から0~5分間の測定結果を示し、試験回数2回目は試験開始から5~10分間の測定結果を示し、試験回数3回目は試験開始から10~15分間の測定結果を示し、試験回数4回目は試験開始から15~20分間の測定結果を示し、試験回数5回目は試験開始から20~25分間の測定結果を示す。
図10】自覚症しらべによる疲労感の総スコアを示す。
図11】唾液中の分泌型免疫グロブリンA(s-IgA)の濃度を示す。
図12】日本語版便秘評価尺度(CAS)を用いた、便秘の各項目の評価結果(各項目別のスコア)を示す。
図13】日本語版便秘評価尺度(CAS)を用いた、便秘の各項目の評価結果(総スコア)を示す。
図14】試験例2の試験デザイン及び試験フローを示す。図中、対照食はコーンスターチを含有するカプセル錠であり、試験食はユーグレナ乾燥粉末を含有するカプセル錠である。
図15】唾液中のs-IgAの濃度の変化率を示す。摂取前後(「0w又は8w」と「4w又は12w」との間)の有意差、及び試験食群と対照食群との有意差について、p値が0.1未満であることを*で示し、p値が0.05未満であることを**で示す。
図16】s-IgA分泌速度の変化率を示す。摂取前後(「0w又は8w」と「4w又は12w」との間)の有意差、及び試験食群と対照食群との有意差について、p値が0.05未満であることを**で示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0012】
本発明は、その一態様において、ユーグレナを含有する、自律神経バランス改善剤(本明細書において、「本発明の剤」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0013】
1.ユーグレナ
ユーグレナは、ミドリムシ属(=ユーグレナ属)に属する微細藻類であり、その限りにおいて特に制限されない。ユーグレナとして、具体的には、例えばEuglena gracilis(ユーグレナ・グラシリス)、Euglena longaEuglena caudataEuglena oxyurisEuglena
tripterisEuglena proximaEuglena viridisEuglena sociabilisEuglena ehrenbergiiEuglena desesEuglena pisciformisEuglena spirogyraEuglena acusEuglena geniculataEuglena intermediaEuglena mutabilisEuglena sanguineaEuglena stellataEuglena terricolaEuglena klebsiEuglena rubraEuglena cyclopicolaなどが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより確実に発揮できるという観点
から、好ましくはユーグレナ・グラシリスが挙げられ、より好ましくはユーグレナ・グラシリスEOD-1株[2013年6月28日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター{NITE-IPOD(郵便番号292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号
室)}にブダペスト条約の規定下で、受託番号FERM BP-11530として国際寄託済み]が挙
げられる。
【0014】
ユーグレナの形態は、ユーグレナの細胞体又はその成分の大半を含むものである限り、特に制限されない。ユーグレナの形態としては、例えばユーグレナの乾燥粉末形態、ユーグレナの懸濁液、ユーグレナエキス等が挙げられ、中でも、好ましくはユーグレナの乾燥粉末形態が挙げられる。
【0015】
ユーグレナの乾燥状態におけるパラミロン含有率は、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。
【0016】
2.ユーグレナ製造方法
ユーグレナは、液体に含まれたユーグレナを培養する工程(培養工程)を含む方法により、大量に調製することが可能である。培養工程は、例えば公知の方法(例えば、特許第5883532号公報に記載の方法)に従って行うことができる。該培養工程では、典型的には
、水と、ユーグレナと、ユーグレナが利用できる栄養素とを含む液体(培養液)を撹拌しつつ好気条件でユーグレナ属微細藻類を培養する。
【0017】
栄養素としては、糖類(グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)などの単糖類、又は、スクロース(ショ糖)、マルトース(麦芽糖)などの二糖類)、ミネラル類(例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛、モリブデン、銅、リン、窒素、硫黄、又は、ホウ素など)、ビタミンB類(例えばビタミンB1(チアミン)、
ビタミンB2(リボフラビン)、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサール、又はピリドキサミン)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、葉酸、ビ
オチンなど)などが挙げられる。培養液中の栄養素の濃度は、ユーグレナの生存、増殖等が可能な濃度である限り特に制限されない。
【0018】
培養工程の光条件は特に制限されず、培養工程は明条件と暗条件のいずれで行われてもよい。従属栄養培養にて培養する際には暗条件で培養される。明条件としては、藻類を増
殖させるための通常の光強度を採用することができる。暗条件としては、例えば10μmol/m2/s未満、好ましくは光が全く当たらない完全な暗所条件が挙げられる。
【0019】
培養工程における培養温度は、ユーグレナが増殖できる温度であれば、特に限定されない。該培養温度(培養液の温度)としては、例えば、20℃~35℃が採用される。
【0020】
培養工程における液体のpHは、ユーグレナが増殖できるpHであれば、特に限定されない。ユーグレナが増殖できるpHとしては、例えば3.0~5.5が採用される。
【0021】
培養工程の後に、液体の遠心分離や重力分離などによってユーグレナを濃縮することが好ましい。得られたユーグレナは、所望の形態に応じて、追加の処理(例えば、液体への懸濁、エキス抽出、乾燥粉末化等)に供することができる。
【0022】
3.用途
ユーグレナは、自律神経バランス改善作用を有することから、自律神経バランス改善剤の有効成分として、利用することができる。これにより、交感神経が活性化すべき活動下でも交感神経が適切に活性化しない状態を改善することができ、副交感神経が活性化すべき回復及び休息下でも副交感神経が適切に活性化しない状態を改善することができる。前者について、より具体的には、交感神経が活性化すべき活動下、例えば事務的作業時におけるLF/HF値をより向上することができる。後者について、より具体的には、回復及び休
息下におけるLF/HF値をより低減することができる。上記観点から、自律神経バランス改
善とは、自律神経バランス適正化、自律神経バランス調整、特に心身活動状況に応じた自律神経バランス適正化、自律神経バランス調整と言い換えることもできる。
【0023】
また、ユーグレナは、集中力を発揮すべき状況下において集中力をより高め、さらにその持続力をより高めることができ、さらに睡眠の質、免疫力、便通等を改善することができる。この観点から、ユーグレナは、例えば、以下に列挙する用途:
(A)睡眠の質的改善
(A1)起床時眠気の改善
(A2)入眠改善
(A3)睡眠持続性改善
(A4)夢み改善
(A5)睡眠による疲労回復感の改善
(B)集中力向上
(B1)集中力持続
(B2)心身活動時の集中力及びその持続力の向上
(B3)事務的作業における集中力及びその持続力の向上
(C)免疫力向上
(C1)呼吸器疾患に対する予防効果の向上
(C2)疲れ、体力低下、老化、睡眠不足等により引き起こされる、免疫機能低下の抑制(D)便通改善
(D1)排便後の不快感(残便感等)の低減
(D2)腹痛改善
(D3)腹部のハリの低減
(D4)排便困難性の低減
に利用することができる。なお、上記用途中、括弧内に数字が記載された項目の用途((A1)、(B1)等の用途)は、括弧内のアルファベットが同一であり且つ括弧内に数字が記載されていない項目の用途((A)、(B)等の用途)の下位概念に相当する。
【0024】
ユーグレナは、好ましくは、その自律神経バランス改善作用に基づいて、上記上位概念
の用途(A)~(D)の内の複数(2~4つ、より好ましくは3~4つ、さらに好ましくは4つ
全て)の用途を含む包括的な用途に利用することができる。
【0025】
さらには、以下に列挙する用途、目的、対象:
(a1)肩こり、イライラなど自律神経の乱れによる様々な症状や不眠などに対して
(a2)健やかな眠りをもたらし、翌朝起床時の疲労感(疲れやだるさの感覚)を軽減する(a3)夜間の良質な睡眠(起床時の疲労感や眠気を軽減)をサポートする
(a4)起床時の疲労感や眠気を軽減する
(a5)健やかな眠り(寝つきの向上)に役立つ
(a6)夢みが良い
(a7)睡眠の満足度
(a8)めざめがすっきり
(a9)深い睡眠をとるために
(a10)睡眠リズムの乱れに
(a11)さわやかな目覚めのために
(a12)すこやかな睡眠のために
(a13)一過性のストレス低減
(a14)睡眠リズムの乱れが中高年の内蔵脂肪を増加させる
(a15)質の良い睡眠のために
(a16)副交感神経を活性化させて良い眠りを
(a17)自律神経を定常化させる
(a18)睡眠の質の向上により免疫力が向上する
(a19)熟睡できる
(a20)寝つきが悪い方に
(a21)夜間によく起きてしまう方に
に利用することができる。
【0026】
さらには、以下に列挙する用途、目的、対象:
(b1)集中力が持続します
(b2)集中力を持続させ、ミスを減らします
(b3)交感神経を活性化
(b4)スポーツのお供に
(b5)勉強のお供に
(b6)会議のお供に
(b7)運転のお供に
(b8)研究のお供に
に利用することができる。
【0027】
さらには、以下に列挙する用途、目的、対象:
(d1)ストレス緩和効果
(d2)副交感神経活性化によりリラックスできる
(d3)ストレス緩和により便通改善
(d4)安静時のリラックス効果向上
(d5)気分転換をサポートします
(d6)お腹のハリをなくします
(d7)お腹のスッキリ感を向上
(d8)排便後の満足感向上
(d9)残便感をなくします
(d10)リラックスによる便通改善
に利用することができる。
【0028】
なお、「改善」とは、症状又は状態の好転又は緩和、症状又は状態の悪化の防止又は遅延、症状又は状態の進行の逆転、防止又は遅延をいう。
【0029】
本発明の剤は、各種分野において、例えば食品添加剤、食品組成物(健康食品、健康増進剤、栄養補助剤(サプリメントなど)を包含する)、医薬などとして用いることができる。
【0030】
本発明の剤は、通常は経口摂取されるが、これに限定されるものではない。
【0031】
本発明の剤の形態は、特に限定されず、用途に応じて、各用途において通常使用される形態をとることができる。
【0032】
本発明の剤の形態としては、用途が食品添加剤、医薬、健康増進剤、栄養補助剤(サプリメントなど)などである場合は、例えば錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などが挙げられる。
【0033】
本発明の剤の形態としては、用途が食品組成物の場合は、液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えばジュース、清涼飲料、茶、スープ、豆乳などの飲料、サラダ油、ドレッシング、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、ケーキミックス、粉末状または液状の乳製品、パン、クッキーなどが挙げられる。
【0034】
本発明の剤は、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、食品添加剤、食品組成物、医薬、健康増進剤、栄養補助剤(サプリメントなど)などに配合され得る成分である限り特に限定されるものではないが、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、着色料、香料、キレート剤などが挙げられる。
【0035】
本発明の剤におけるユーグレナの含有量は、用途、使用態様、適用対象の状態などに左右されるものであり、限定はされないが、例えば0.0001~100質量%、好ましくは0.001~50質量%とすることができる。
【0036】
本発明の剤の適用(例えば、投与、摂取、接種など)量は、薬効を発現する有効量であれば特に限定されず、通常は、ユーグレナの乾燥重量として、一般に一日あたり0.1~10000 mg/kg体重である。上記適用量は1日1回以上(例えば1~3回)に分けて適用するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減することもできる。
【実施例
【0037】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0038】
製造例1
ユーグレナ・グラシリスEOD-1株(独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託
センター(NITE-IPOD)の乾燥粉末(神鋼環境ソリューション製、パラミロン含有率70%
以上)を下記配合でカプセル錠としたものを試験食とし、対照食としてコーンスターチを配合したカプセル錠を製造した。
【0039】
【表1】
【0040】
試験例1
試験概要は以下のとおりである。また、試験デザイン及び試験フローを図1に示す。図1中、対照食及び試験食は製造例1で製造したカプセル錠である。
・試験期間 : 対照食2週間、試験食2週間
・試験食の摂取量 : ユーグレナ乾燥粉末換算で 500mg/day
・対照食の摂取量 : 試験食と同量
・被験者 : 男性3名( Age 39.7歳、BMI 22)
【0041】
<被験者の選択>
同意を取得した被験者候補に、スクリーニング検査として便通、疲労等に関するアンケートを行った。スクリーニング検査の結果から、下記選択基準を満たし、便通不良と疲労の自覚があり、且つ下記のいずれの除外基準にも抵触しない適格な者(3名)を選択した
【0042】
選択基準
(1) 年齢が20歳以上60歳未満の男性の方
(2) 週の排便回数が週に5日以下の方
(3) 疲労やストレスを感じておられる方
(4) 健康な方で、現在何等かの疾患で治療をしていない方
(5) 非喫煙者の方
除外基準
(1) 現在、何等かの慢性疾患を患い薬物治療を受けている方
(2) 食品にアレルギー症状を示す恐れのある方
(3) 便秘薬、整腸薬および排便訴求のサプリメント類を日常的に摂取している方(難消化性デキストリン、オリゴ糖、食物繊維リッチなど)
(4) 重篤な疾患の既往歴・現病歴のある方
(5) 高度の貧血のある方
(6) 過去4週間以内に、健康食品を変更した方、あるいは新たに使い始めた方
(7) 過去4週間以内に、屋外での長時間の作業、運動、海水浴、レジャーなど、日常生活
を超えて紫外線を浴びた方、あるいは試験期間中にその予定がある方
(8) 夜勤および昼夜交代制のお仕事の方
(9) 同意取得時に、病気の治療や予防等のために病院やクリニックに通って処置(ホルモン補充療法、薬物療法、運動療法、その他)を受けている方、あるいは治療が必要と判断される方
(10) 糖代謝、脂質代謝、肝機能、腎機能、心臓、循環器、呼吸器、内分泌系、神経系の
重篤な疾患あるいは精神疾患の既往歴をお持ちの方
(11) アルコールおよび薬物依存の既往歴をお持ちの方
(12) 化粧品および食品に対してアレルギーの発症の恐れがある方
(13) 同意取得日前4週間以内に、他のヒト試験に参加している方、あるいはこの試験の実施予定期間中に他のヒト試験に参加する予定がある方
【0043】
<試験内容>
選択した被験者について、摂取開始前(以下、0w)検査として、ベースラインの測定を行った。まず、被検者にコップ1杯の水を摂取させた後に環境試験室にて20分間以上安静
待機させることにより、被検者を馴化した。馴化後、被検者にうがいをさせてから、検査(唾液中の免疫グロブリン濃度の測定、自律神経バランス(LF/HF)の測定、PVT検査、及びアンケート)を行った。検査終了後、対照食を被験者へ手渡し、摂取方法を説明し、規定日から摂取を開始させた。
【0044】
対照食の摂取期間は2週間とし、摂取開始から摂取2週後(2wと略)の検査日に試験実施機関に来場させ、0w検査と同様に検査を実施した。検査終了後、試験食を被験者へ手渡し、規定日から摂取を開始させた。
【0045】
試験食の摂取期間は2週間とし、摂取開始から摂取2週間後(4wと略)の検査日に試験実施機関に来場させ、0w及び2w検査と同様に検査を実施した。
【0046】
また、被験者には摂取期間を通して試験食の摂取状況や体調の変化などを日誌に記録させ、各検査日に記入済みの日誌を回収した。なお、毎回の検査は、おおむね同じ時間帯に行った。
【0047】
<検査項目>
(1) PVT(Psychomoter Vigilance Task, 精神負荷タスク)検査 表示器の点灯に対する反応時間を経時的に測定し、疲れによる履行能力の変化を評価した。試験には米国A.M.I
社製の精神動態覚醒水準課題テストプログラムを用いた。画面上に繰り返し表示される課題に対する被験者の反応時間(点灯に対する反応時間)を測定した。1回5分間の課題を行い、これを連続して5回行った(合計25分間)。
【0048】
(2) 自律神経バランス(LF/HF)の測定
生体信号収録装置 Polymate (株式会社ミユキ技研)を用いて、PVT検査前・検査中・
検査後の心拍変動(R-R 間隔)から、副交感神経の活性度を評価した。
【0049】
(3) 唾液測定
PVT検査及び自律神経バランスの測定の前に唾液を採取し、唾液重量測定、及びELISA法を用いて唾液中の分泌型免疫グロブリンA(s-IgA)濃度の測定を実施した。s-IgAの濃度
は、免疫力の指標となる値である。
【0050】
(4) アンケート
(4-1) 疲労感の評価。日本産業衛生学会産業疲労研究会が公開している「自覚症調べ」を用いた。本アンケートのアンケート用紙の内容を図2において引用する。
【0051】
(4-2) 便秘の評価。日本語版便秘評価尺度(CAS)を用いた。本アンケートのアンケー
ト用紙の内容を図3において引用する。
【0052】
(4-3) 睡眠の評価。OSA睡眠調査票を用いた。本アンケートのアンケート用紙の内容を
図4において引用する。該アンケートの設問番号と、各評価項目との対応関係を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
(4-5) 上記以外に、睡眠時間(就寝時刻・起床時刻・入眠までに要した時間)、及びOA機器使用時間について、回答してもらった。
【0055】
<試験結果>
(a) 自律神経バランスの測定の結果
安静時(PVT検査前)と事務的作業時(PVT検査中)におけるLF/HF値を図5に示す。図
5に示されるように、ユーグレナ摂取により、安静時は副交感神経がより活性化(リラックス度がより向上)し、事務的作業時には交感神経がより活性化した。このことから、ユーグレナが自律神経バランス改善(定常化)作用を有することが示唆された。
【0056】
(b) 睡眠の評価結果
OSA睡眠調査票の回答結果より、日々変動する睡眠感を統計的に尺度化した値を算出し
た。算出は、被検者とは別の母集団(選択、排除を行っていない母集団)の平均点が50点となるようにして行った。この結果を図6に示す。また、検査日の実質睡眠時間(=(起床時刻-就寝時刻)-入眠までの時間)を図7に示す。
【0057】
図6に示されるように、ユーグレナ摂取により、入眠しやすくなり、睡眠による疲労回復効果が高まり、起床時の眠気が低減した。また、睡眠時間に大きな変動はないこと(図7)から、睡眠の質が向上したことが示唆された。これらの結果は、安静時のリラックス度が向上(副交感神経が活性化)したことによる結果であると考えられた。
【0058】
(c) 集中力の評価結果
PVT検査における、5分ごとの平均反応時間と反応時間500ms以上となった回数の3人の平均値を、図8及び9に示す。また、自覚症しらべによる疲労感の総スコアを図10に示す。
【0059】
図8及び9に示されるように、ユーグレナ摂取により、集中力が向上し、さらにその持続時間がより長くなった。また、ユーグレナ摂取により事務的作業後の疲労感は低減すること(図10)から、ユーグレナ摂取による集中力の向上及びその持続時間の延長は、身体に過剰な負荷をかけるものではないことが示唆された。これらの結果は、事務的作業時に交感神経がより活性化したことによる結果であると考えられた。
【0060】
(d) 唾液測定の結果
唾液中の分泌型免疫グロブリンA(s-IgA)濃度を図11に示す。
【0061】
図11に示されるように、ユーグレナ摂取により、s-IgA濃度が向上した、すなわち免
疫力が向上した。この結果は、自律神経バランスの改善(定常化)、睡眠の質的改善による結果であると考えられた。
【0062】
(e) 便通の評価結果
日本語版便秘評価尺度(CAS)の各項目の評価結果を図12に示し、総スコアを図13
に示す。
【0063】
図12及び13に示されるように、ユーグレナ摂取時において、便秘の状態・程度に関するCAS項目(お腹がはった感じ(膨れた感じ)、直腸に便が充満している感じ、便の排
出状態、滲み出る水様便、総スコア)の評価点が低減した。この結果より、ユーグレナ摂取により自律神経バランスが改善することで、便の状態・程度も改善されることが示唆された。
【0064】
試験例2
試験概要は以下のとおりである。また、試験デザイン及び試験フローを図14に示す。図14中、対照食及び試験食は製造例1で製造したカプセル錠である。
・試験期間 : 対照食4週間→ウォッシュアウト4週間→試験食4週間、又は試験食4週間→ウォッシュアウト4週間→対照食4週間
・試験食の摂取量 : ユーグレナ乾燥粉末換算で 500mg/day
・対照食の摂取量 : 試験食と同量
・被験者 : 男性7名
【0065】
<試験内容>
被験者を2群に分けた。各群の被験者について、摂取開始前(以下、0w)検査として、
ベースラインの測定を行った。まず、被検者にコップ1杯の水を摂取させた後に環境試験
室にて20分間以上安静待機させることにより、被検者を馴化した。馴化後、被検者にうがいをさせてから、唾液中の免疫グロブリン測定検査を行った。具体的には次のようにして行った。まず、無味の滅菌綿を被検者の口内に入れ、1分間口中で保持させた後に、回収
した。続いて、回収した無味の滅菌綿から得られた唾液について、重量測定に基づいて容量を算出し、さらにELISA法により唾液中のs-IgA濃度を測定した。s-IgA濃度と唾液容量
で乗した値をs-IgA重量とし、s-IgA重量を唾液回収時間(1分間)で除した値をs-IgA分泌速度とした。検査終了後、対照食または試験食を手渡し、摂取方法を説明し、規定日から摂取を開始させた。
【0066】
対照食又は試験食の摂取期間は4週間とし、摂取開始から摂取4週後(4wと略)の検査日に試験実施機関に来場させ、0w検査と同様に唾液中の免疫グロブリン測定検査を行った。検査終了後は、試験食及び対照食のいずれも渡さなかった。
【0067】
ウォッシュアウト期間は4週間とし、4wからさらに4週間後(8wと略)の検査日に試験実施機関に来場させ、0w及び4w検査と同様に唾液中の免疫グロブリン測定検査を行った。検査終了後、0wに対照食を手渡した群には試験食を手渡し、0wに試験食を手渡した群には対照食を手渡し、規定日から摂取を開始させた。
【0068】
試験食又は対照食の摂取期間は4週間とし、摂取開始から摂取4週間後(12wと略)の検
査日に試験実施機関に来場させ、0w、4w及び8w検査と同様に唾液中の免疫グロブリン測定検査を行った。
【0069】
また、被験者には摂取期間を通して試験食及び対照食の摂取状況や体調の変化などを日誌に記録させ、各検査日に記入済みの日誌を回収した。なお、毎回の検査は、おおむね同じ時間帯に行った。
【0070】
<試験結果>
s-IgA濃度及びs-IgA分泌速度それぞれについて、試験食又は対照食摂取前(0w又は8w)の測定値に対する、試験食又は対照食摂取後(4w又は12w)の測定値の平均値(変化率)
を算出した。摂取前後(「0w又は8w」と「4w又は12w」との間)の有意差はWilcoxon sign
ed-rank testで求め、試験食群と対照食群との有意差はMann-Whitney U test で求めた。s-IgA濃度の変化率を図15に示し、s-IgA分泌速度の変化率を図16に示す。
【0071】
図15及び16に示されるように、ユーグレナ摂取により、s-IgA濃度及びs-IgA分泌速度が向上した。このことから、ユーグレナ摂取により、分泌されるs-IgAの「量」が増加
することが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16