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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】呼吸器
(51)【国際特許分類】
   A62B 9/00 20060101AFI20240219BHJP
   A62B 7/02 20060101ALI20240219BHJP
   B63C 11/22 20060101ALN20240219BHJP
【FI】
A62B9/00 Z
A62B7/02
B63C11/22
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022195457
(22)【出願日】2022-12-07
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 晋士
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-205784(JP,A)
【文献】特開2022-071853(JP,A)
【文献】特開昭57-203457(JP,A)
【文献】特開2020-127815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 9/00
B63C 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着装者が背負う背負い具に設けられるガスボンベの一次側のガスを減圧して二次側の面体へ送る呼吸器であって、前記面体と接続される配管を備え、前記配管は長手方向に伸縮可能な伸縮部を有し、前記配管は給気ラインおよび検圧ラインの少なくともいずれかであり、
前記伸縮部は、蛇腹形状の外ホースと、前記外ホースの中に挿入されている内ホースとを備え、前記内ホースは一次側の接続具に固定されており、前記内ホースは二次側の接続具には固定されておらず、
前記外ホースが伸縮することにより、前記背負い具と前記面体との距離が変化しても前記給気ラインおよび前記検圧ラインの少なくともいずれかが前記背負い具と前記面体との動きを妨げることがなく、前記外ホースの中に前記内ホースが設けられているため、前記蛇腹形状の前記外ホースでのホース内壁面との摩擦や空気同士の摩擦によるエネルギーの損失を防止することができる、呼吸器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、呼吸器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消防隊員は、火事が起こっている現場など危険な場所での救助活動を行う。そのため、消防隊員は、救助活動を行う際に呼吸器を着装しておく。
【0003】
このような呼吸器は、たとえば、特開2019-205784号公報(特許文献1)において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-205784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の呼吸器では、着装者の動きを妨げることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある局面に従うと、着装者が背負うガスボンベのガスを減圧して面体へ送る呼吸器であって、前記面体と接続される配管を備え、前記配管は長手方向に伸縮可能な伸縮部を有する。
【0007】
このように構成された呼吸器においては、配管は長手方向に伸縮可能な伸縮部を有するため、配管の必要な長さが変化したとしてもこの変化量を伸縮部によって吸収することができる。その結果、面体の位置が変化したとしても着装者の動きを妨げることがない。
【0008】
好ましくは、前記伸縮部は、蛇腹状部分を有する。この場合蛇腹状部分を採用することで簡単な構成で伸縮部を形成することができる。
【0009】
好ましくは、前記伸縮部は、前記蛇腹状部分内に設けられた内ホースを有する。この場合、伸縮部内の内ホース内を空気が流れることで空気がスムーズに伸縮部内を流れる。さらに、伸縮部が内ホースよりも内側に変形することがないため、伸縮部の変形時における動きの妨げを防止することが可能となる。蛇腹形状は長手方向に断面積が変動しつづけて伸縮性を形成する一方で、内部を流れる空気がホース壁面や流れる空気同士の摩擦でエネルギーを損失するという新たな課題を抱える。内ホースは伸縮部と異なり断面積を変化させないストレートな構造をしている一方で、内ホースは伸縮による変化量を吸収できないため、並列に接続すると内ホースの伸縮性でホース全体の伸縮性に制限を加えることになるため、内ホースの片端を面体に固定しないことにより、内ホースが伸縮部の変形によることがない構造とする。
【0010】
好ましくは、前記配管は、給気ラインまたは検圧ラインの少なくともいずれかである。この場合、給気ラインおよび検圧ラインのいずれかにおいて面体の動きを妨げることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に従う面体11および背負い具300を着装した着装者201の斜視図である。
図2図2は、実施の形態に従う面体11および背負い具300を着装した着装者201の斜視図である。
図3図3は、シコロ240を持ち上げた状態の着装者201の図である。
図4図4は、実施の形態に従う呼吸器400を有する背負い具300を着装者201の側から見た第一の斜視図である。
図5図5は、実施の形態に従う呼吸器400を有する背負い具300を下部332のカバーを外して着装者201の側から見た第二の斜視図である。
図6図6は、給気ライン210に設けられる伸縮部500の平面図である。
図7図7は、図6中のVII-VII線に沿った断面図である。
図8図8は、縮んだ状態の伸縮部500の斜視図である。
図9図9は、縮んだ状態の伸縮部500の一部断面を含む斜視図である。
図10図10は、伸びた状態の伸縮部500の一部断面を含む斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0013】
図1および図2は、実施の形態に従う面体11および背負い具300を着装した着装者201の斜視図である。図3は、シコロ240を持ち上げた状態の着装者201の図である。
【0014】
図1から図3で示すように、実施の形態に従う面体11および背負い具300を着装した着装者201の斜視図である。着装者201は防護服200を着用している。着装者201の頭部は、ヘルメット230、面体11および、シコロ240により保護されている。着装者201は背負い具300を背負っている。背負い具300にはガスボンベ250が着装されている。防護服200の体前面241あるいは面体11にプレッシャーデマンド弁が設けられていない。
【0015】
背負い具300は上部331から下部332へ延びている。上部331から下部332に向かって延びる形状のガスボンベ250はバンドにより背負い具300に固定されている。背負い具300の2つの棒状部の間にガスボンベ250の先端が挿入されている。酸素を含む呼吸用気体であるたとえば空気が、吸気ガスとして大気圧よりも高い圧力でガスボンベ250に圧縮充填される。
【0016】
背負い具300の下部332にはバイパス弁スイッチ301および陽圧ロックスイッチ302が設けられている。バイパス弁スイッチ301はガスボンベ250から排出された高圧のガスを、プレッシャーデマンド弁を経由せずに面体11へ導くためのスイッチである。
【0017】
陽圧ロックスイッチ302は、給気ライン210から面体11へ供給される陽圧を停止するためのものである。着装者201が面体11を取り外した状態では、給気ライン210からのガスが面体11は供給され続けるため、供給されたガスは何ら利用されず大気に放出されることになる。これを防止するために、陽圧ロックスイッチ302を操作して給気ライン210からのガスの供給を遮断することで、ガスが無駄に消費されることを抑制できる。
【0018】
背負い具300の下部332にはガードバーが設けられる。ガードバーは背負い具300の下部332を保護すると共に、背負い具300を地面上で自立させることができる。
【0019】
面体11は、人体の頭部に着装されて使用されるものであり、着装状態において、着装者の顔面を覆うように構成される面体本体21と、面体本体21を着装者の頭部に固定するための締め紐22とを含んで構成される。
【0020】
面体本体21は、人体の顔面を被覆可能なサイズを有する無色透明の板状部材である前面板31と、着装状態において、前面板31を、着装者の顔面の前方に、着装者の顔面から適度な間隔をあけて支持する支持体32とを含んで構成される。この前面板31は、アイピースとも称される部材である。
【0021】
面体11には、回転機構100が取り付けられる。回転機構100は、給気ライン210および検圧ライン220と前面板31との中間に位置する部材である。給気ライン210および検圧ライン220に回転機構100の一方端が接続される。前面板31に回転機構100の他方が接続される。
【0022】
図4は、実施の形態に従う呼吸器400を有する背負い具300を着装者201の側から見た第一の斜視図である。図5は、実施の形態に従う呼吸器400を有する背負い具300を下部332のカバーを外して着装者201の側から見た第二の斜視図である。実施の形態に従う呼吸器400を有する背負い具300を着装者201の側から見た第二の斜視図である。
【0023】
図4および図5で示すように、背負い具300は、本体330を有する。
本体330は上部331から下部332へ長手方向に延びる。上部331には一対の第一突出部336および第二突出部337が設けられる。第一突出部336にベルト孔338が設けられる。第二突出部337にベルト孔339が設けられる。
【0024】
上部331は長手方向の上半分をいい、下部332は長手方向の下半分をいう。すなわち、本体330は、着装者の首側に位置する上部331と着装者の腰側に位置する下部332とを有する。
【0025】
本体330には、ガスボンベ250を位置決めするための4つのクッション307が設けられている。クッション307の間には蓋体335が設けられている。
【0026】
本体330には、接続具310が設けられる。接続具310は本体330に対して回転軸を回転中心として回転可能に設けられる。接続具310の先端には継手315およびコネクタ314が設けられる。コネクタ314はガスボンベ250に接続される。
【0027】
本体330には張出部303が設けられている。張出部303にはベルト孔309が形成されている。張出部303は、バイパス弁スイッチ301および陽圧ロックスイッチ302を覆うように設けられている。
【0028】
本体330にはホース312が接続されている。ホース312の先端には表示装置313が取り付けられている。表示装置313がガスボンベ250内の空気の残量または残圧を表示する。
【0029】
2つの案内部351,352の間に給気ライン210および検圧ライン220が配置されている。
【0030】
プレッシャーデマンド弁380は呼吸に応じて、大気圧よりもわずかに高い圧力の空気を面体11に供給する機能を有する。
【0031】
プレッシャーデマンド弁380は検圧ライン220により面体11と接続されているため、着装者201の呼吸によってプレッシャーデマンド弁380のケース内の圧力が変動する。ケースの圧力が変動すると、ダイヤフラムが圧力の変動を受けて形状が変形する。プレッシャーデマンド弁380の給気口は、給気ライン210により面体11とつながっている。面体11に供給された空気によって面体11内の圧力が変動し、変動した圧力を検圧ライン220を介してプレッシャーデマンド弁380内の検圧口で検知し、この圧力変動によってダイヤフラムが動く。本体330にはドレインプラグが設けられている。ドレインプラグを開くことによってプレッシャーデマンド弁380内に溜まった水を排出することができる。
【0032】
図1および図2ではシコロ240が下されていたので、回転機構100が現れなかったが、図3ではシコロ240が持ち上げられているため、回転機構100、給気ライン210および検圧ライン220が露出する。給気ライン210および検圧ライン220は、好ましくは着装者201の左側に配置される。これは、着装者201は右肩で消火用のホースを担ぐからであり、右側に給気ライン210および検圧ライン220を設けると消火用のホースに干渉するからである。
【0033】
図6は、給気ライン210に設けられる伸縮部500の平面図である。図7は、図6中のVII-VII線に沿った断面図である。
【0034】
呼吸器400の一次側(調整器側)(プレッシャーデマンド弁380側)から二次側(面体11側)に送気するホースである給気ライン210においてホースの内壁と外壁との摩擦低減と伸縮性を兼ね備えた二重構造が伸縮部500である。伸縮部500は検圧ライン220に設けられてもよい。
【0035】
蛇腹形状の外ホース530が一次側固定具520により一次側外ホース接続具540に固定されている。蛇腹形状の外ホース530が二次側固定具510により二次側外ホース接続具2101に固定されている。
【0036】
外ホース530の中に内ホース560が挿入されている。内ホース560は一次側固定具520により一次側の内ホース接続具2102に固定されている。内ホース560は二次側外ホース接続具2101には固定されていない。
【0037】
一次側外ホース接続具2102の外周には溝が設けられており、その溝にはOリング550が嵌まっている。Oリング550により一次側外ホース接続具2102と外ホース530との間の気密を保つことができる。
【0038】
伸縮部500は背負い具300と面体11との間の給気ライン210または検圧ライン220のいずれかに設けられている。給気ライン210および検圧ライン220の両方に伸縮部500が設けられていてもよい。二次側外ホース接続具2101および一次側外ホース接続具2102に、給気ライン210および検圧ライン220のいずれかを構成する配管が接続される。
【0039】
図8は、縮んだ状態の伸縮部500の斜視図である。図9は、縮んだ状態の伸縮部500の一部断面を含む斜視図である。図10は、伸びた状態の伸縮部500の一部断面を含む斜視図である。
【0040】
外ホース530が伸縮することにより、背負い具300と面体11との距離が変化しても給気ライン210および検圧ライン220が背負い具300と面体11との動きを妨げることがない。外ホース530の中に内ホース560が設けられているため、蛇腹形状の外ホース530でのホース内壁面との摩擦や空気同士の摩擦によるエネルギーの損失を防止することができる。
【0041】
なお、内ホース560はこの実施の形態では一次側において固定されていたが、一次側においてフリーで二次側において内ホース560が固定されていてもよい。
【0042】
この実施の形態における呼吸器は、いわゆる開放式の呼吸器である。開放式呼吸器においてはガスボンベ250内の空気は、減圧弁、プレッシャーデマンド弁380もしくはデマンド弁を経由して面体11へ供給される。面体11内の空気は大気へ排出されるため、プレッシャーデマンド弁380に戻されることはない。これに対して、閉鎖循環式呼吸器に上記の構成を適用することが可能である。閉鎖循環式の呼吸器では、閉鎖回路が設けられている。そのため、ガスボンベ250の酸素は減圧弁およびデマンド弁を介して閉鎖回路に供給されます。閉鎖回路から面体11にガスが供給され、面体11から閉鎖回路へガスが戻される。戻されたガスは二酸化炭素吸収剤によって二酸化炭素が吸収され、不足した量に応じたガスが閉鎖回路に供給される。
【0043】
すなわち、閉鎖回路において気体を循環させるガスの回路の一部分に伸縮部500を設けることができる。外ホース530は、たとえばゴムにより構成される。高温で使用される場合があるのであれば、耐熱ゴムによって構成されることが好ましい。
【0044】
この実施の形態では、給気ライン210および検圧ライン220が設けられる例を示したが、少なくとも給気ライン210が設けられていればよく、検圧ライン220は必ずしも設ける必要はない。
【0045】
(付記1)
着装者201が背負うガスボンベ250のガスを減圧して面体11へ送る呼吸器400であって、面体11と接続される配管としての給気ライン210または検圧ライン220を備え、給気ライン210または検圧ライン220は長手方向に伸縮可能な伸縮部500を有する、呼吸器400。
【0046】
(付記2)
前記伸縮部500は、蛇腹状部分としての外ホース530を有する、付記1に記載の呼吸器400。
【0047】
(付記3)
前記伸縮部500は、前記蛇腹状部分内に設けられた内ホース560を有する、付記2に記載の呼吸器400。
【0048】
(付記4)
前記配管は、給気ラインまたは検圧ラインの少なくともいずれかである、付記1から3のいずれか1項に記載の呼吸器400。
【0049】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
11 面体、21 面体本体、22 締め紐、31 前面板、32 支持体、100 回転機構、200 防護服、201 着装者、210 給気ライン、220 検圧ライン、230 ヘルメット、240 シコロ、241 体前面、250 ガスボンベ、300 背負い具、301 バイパス弁スイッチ、302 陽圧ロックスイッチ、303 張出部、307 クッション、309,338,339 ベルト孔、310 接続具、312 ホース、313 表示装置、314 コネクタ、315 継手、330 本体、331 上部、332 下部、336 第一突出部、337 第二突出部、380 プレッシャーデマンド弁、400 呼吸器、500 伸縮部、510 二次側固定具、520 一次側固定具、530 外ホース、540 外ホース接続具、550 Oリング、560 内ホース、2101 二次側外ホース接続具、2102 一次側外ホース接続具。
【要約】
【課題】着装者の動きを妨げない呼吸器を提供する。
【解決手段】着装者が背負うガスボンベのガスを減圧して面体へ送る呼吸器であって、面体と接続される配管を備え、配管は長手方向に伸縮可能な伸縮部を有する。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10