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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/34 20060101AFI20240219BHJP
   B65D 53/04 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
B65D41/34
B65D53/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022198836
(22)【出願日】2022-12-13
(62)【分割の表示】P 2018141637の分割
【原出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2023024552
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】藤重 英治
(72)【発明者】
【氏名】松村 淳治
(72)【発明者】
【氏名】荒木 英司
(72)【発明者】
【氏名】高木 健司
(72)【発明者】
【氏名】河田 崇
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-051326(JP,A)
【文献】特開2013-082463(JP,A)
【文献】特開2016-026961(JP,A)
【文献】特開2015-081116(JP,A)
【文献】特開2016-011138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/34
B65D 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の天板部及び前記天板部の周縁部に設けられた筒状のスカート部を有するキャップ本体と、
前記キャップ本体と別体に、前記天板部と対向して前記キャップ本体内に設けられ、外径が前記スカート部の内径よりも小径に形成された密封部材と、
前記スカート部の周方向に複数設けられ、前記天板部から離れる方向の前記密封部材の移動を規制し、支持する複数の係止部と、
前記スカート部の周方向に複数設けられ、前記スカート部の内周面よりも径方向で内方に突出する、前記密封部材の径方向の移動を規制する、前記係止部と前記周方向で並ぶ規制部と、
を備え、
前記規制部は、前記スカート部の径方向で内方に向かって窪む凹部であり、
前記凹部は、軸線方向で前記天板部から離間する方向、且つ、径方向内方に向かって傾斜する傾斜面を有し、
前記規制部の数は、前記係止部の数よりも少なく、
前記複数の規制部の各々は、前記周方向で隣り合う前記係止部の間に配置され、
前記傾斜面は、前記係止部の前記密封部材と当接する部位よりも前記天板部側に位置するキャップ。
【請求項2】
複数の前記係止部の径方向最内端を連続する接円の直径は、複数の前記傾斜面の軸線方向での最下端を連続する接円の直径よりも小さく設定される、請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記密封部材は、外周縁が容器の口部と当接する密封部分よりも薄肉に形成される、請求項1又は請求項2に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶容器を閉塞するキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶容器の口部を密封するキャップは、キャップ本体の内面に口部と密着する樹脂材料により構成された密封部材を設ける構成が用いられていた。また、このようなキャップとして、キャップの開栓時の開栓トルクを低減するために、キャップ本体と密封部材とを非接着にする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。このように密封部材を非接着とする場合には、キャップ本体のスカート部に内方に突出する係止突起を形成することで、密封部材が脱落しないように密封部材を係止させる。
【0003】
このような密封部材は、例えば、キャップ本体内に溶融又は軟化した樹脂材料を供給し、金型にて所定の形状に成形することで製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-178421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した密封部材は、所定の形状に成形された後に収縮し、密封部材の外径がキャップ本体の内径よりも小径となることがある。キャップ本体に非接着の密封部材はキャップ本体内で径方向に移動できることから、キャップ本体に対して径方向に密封部材が移動し、容器の口部と密接する密封部分が口部と好適に当接せず、密封性が損なわれる虞がある。
【0006】
そこで本発明は、キャップ本体に非接着の密封部材の密封性を確保できるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様として、キャップは、円板状の天板部及び前記天板部の周縁部に設けられた筒状のスカート部を有するキャップ本体と、前記キャップ本体と別体に、前記天板部と対向して前記キャップ本体内に設けられ、外径が前記スカート部の内径よりも小径に形成された密封部材と、前記スカート部の周方向に複数設けられ、前記天板部から離れる方向の前記密封部材の移動を規制し、支持する複数の係止部と、前記スカート部の周方向に複数設けられ、前記スカート部の内周面よりも径方向で内方に突出する、前記密封部材の径方向の移動を規制する、前記係止部と前記周方向で並ぶ規制部と、を備え、前記規制部は、前記スカート部の径方向で内方に向かって窪む凹部であり、前記凹部は、軸線方向で前記天板部から離間する方向、且つ、径方向内方に向かって傾斜する傾斜面を有し、前記規制部の数は、前記係止部の数よりも少なく、前記複数の規制部の各々は、前記周方向で隣り合う前記係止部の間に配置され、前記傾斜面は、前記係止部の前記密封部材と当接する部位よりも前記天板部側に位置する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャップ本体に非接着の密封部材の密封性を確保できるキャップを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係るキャップの構成を一部断面で示す側面図。
図2】同キャップの構成を示す側面図。
図3】同キャップの構成を示す断面図。
図4】同キャップの構成を示す断面図。
図5】同キャップの要部構成を示す断面図。
図6】同キャップの要部構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るキャップ1について、図1乃至図6を用いて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るキャップ1の構成を一部断面で示す側面図である。図2は、キャップ1の構成を示す側面図である。図3は、キャップ1の構成を示す断面図である。図4は、キャップ1の構成をIV―IV線断面で示す断面図である。図5及び図6は、キャップ1の要部構成を模式的に示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、キャップ1は、缶容器100の口部110に取り付けられ、缶容器100の口部110に被冠した状態で巻締固着されることで、缶容器100を密封する。
【0012】
ここで、缶容器100は、飲料等を収容する所謂ボトル型容器である。例えば、缶容器100は、両面に樹脂製フィルムが積層されたアルミニウム合金や表面処理鋼板等の金属材料により構成される。缶容器100は、一方の端部が縮径された、異なる外径を有する円筒状に形成されている。缶容器100は、一方の端部に、収容した飲料を排出する口部110を有する。口部110は、その外周面に、缶容器100の底面側から端部に向かって、顎部111、雄螺子部112及びカール部113を有する。
【0013】
顎部111は、環状に突出することで構成される。カール部113は、雄螺子部112よりも小径に形成される。また、カール部113は、キャップ1の内径よりも小さく構成される。カール部113は、口部110の端部が1回以上折りたたまれることで構成される。カール部113は、缶容器100に収納された飲料を排出する開口部を構成する。
【0014】
図1及び図3に示すように、キャップ1は、キャップ本体11と、キャップ本体11内に別体に設けられた密封部材12と、を備えている。
【0015】
キャップ本体11は、アルミニウム合金等の金属材料に樹脂皮膜層を形成した材料によって構成される。キャップ本体11は、薄肉の平板状の当該材料をカップ状に絞り成形、ナーリング成形及びロールオン成形等の各成形が行われることで構成される。
【0016】
キャップ本体11は、円板状の天板部21と、天板部21の周縁部に一体に設けられた円筒状のスカート部22と、を備えている。キャップ本体11は、天板部21及びスカート部22が、円環状、且つ、曲面状の角部23によって一体に連続して構成される。
【0017】
天板部21は、円板状に構成され、主面が平面に構成される。スカート部22は、一端が角部23を介して天板部21と連続し、他端が開口して構成される。スカート部22は、天板部21側の端部から開口する端部まで、ベントスリット31aを有する複数のナール部31及び複数の凹部32、雌螺子部33及びタンパーエビデンスバンド部34と、を備える。
【0018】
図1乃至図4に示すように、複数のナール部31、複数の凹部32、雌螺子部33及びタンパーエビデンスバンド部34は、天板部21と、複数のナール部31、複数の凹部32、雌螺子部33及びタンパーエビデンスバンド部34が成形されていない円筒状のスカート部22と、角部23とから構成されるカップ状の成形品をナーリング成形やロールオン成形等の加工により形成される。
【0019】
ナール部31は、ベントスリット31aを有し、スカート部22の内周面から突出する。換言すると、ナール部31は、スカート部22の一部がスカート部22の径方向で内方向に向かって窪むことでスカート部22の内周面に一部が切欠した突起を構成する。
【0020】
複数のナール部31は、スカート部22の周方向に複数設けられる。ベントスリット31aは、開封時に缶容器100内のガス等を排出する切り込みである。ベントスリット31aは、ナール部31の天板部21側の端部が切断されることで形成される。
【0021】
このような複数のナール部31のベントスリット31a側の端部、換言すると複数のナール部31の天板部21側の端部の径方向最内端を連続する接円の直径が密封部材12の外径よりも小さく設定される。このため、複数のナール部31は、天板部21に配置された密封部材12の天板部21から離間する方向の移動を規制する係止部を構成する。
【0022】
凹部32は、スカート部22の一部が外周面側から内周面側に窪むことで構成される。具体的には、凹部32は、スカート部22の一部がスカート部22の径方向で内方に向かって窪むことで、スカート部22の内周面に突起を構成する。
【0023】
凹部32は、スカート部22の内方側に傾斜面32aを有する。傾斜面32aは、軸線方向で天板部21から離間する方向、且つ、径方向内方に向かって傾斜する。換言すると、凹部32は、天板部21から離間するに従って、スカート部22の内周面からの高さが増加することで、凹部32の内面が傾斜する。
【0024】
凹部32は、複数、好ましくは3以上、本実施形態においては4つ設けられる。例えば、凹部32は、略等間隔で、スカート部22の周方向に沿って配置される。複数の凹部32の傾斜面32aを連続する接円の直径は、少なくとも軸線方向の一部で密封部材12の外径と同一径に構成される。換言すると、複数の傾斜面32aは、軸線方向の一部で密封部材12の外周縁と当接可能に構成され、当接した密封部材12の径方向の移動を規制するとともに、密封部材12の径方向の位置決めを行う規制部である。即ち、複数の凹部32は、傾斜面32aに当接した密封部材12のキャップ本体11に対するセンタリングを行う。また、複数の傾斜面32aの軸線方向での最下端を連続する接円の直径は、複数のナール部31のベントスリット31a側の端部の径方向最内端を連続する接円の直径よりも大きく設定される。
【0025】
また、複数の凹部32は、少なくとも傾斜面32aの密封部材12の外径と同一径となる部位が、ナール部31のベントスリット31a側の端部である係止部よりもスカート部22の軸線方向で天板部21側に配置される。例えば、複数の凹部32は、複数のナール部31とともにスカート部22の周方向に配置されるとともに、複数のナール部31よりもスカート部22の軸線方向で天板部21側に配置される。
【0026】
本実施形態においては、図4に示すように、複数のナール部31は、13箇所に設けられ、複数の凹部32は、4箇所に設けられる。例えば、スカート部22の周方向において、三箇所で3つのナール部31が並び、そして一箇所で4つのナール部31が並ぶとともに、各ナール部31の列間に1つの凹部32が配置される。また、本実施形態においては、複数の凹部32は、スカート部22の複数のナール部31よりも天板部21側に配置される。
【0027】
雌螺子部33は、缶容器100の雄螺子部112と螺合可能に構成される。雌螺子部33は、缶容器100とともに成形される。即ち、雌螺子部33は、缶容器100に取り付けられる前のキャップ1においては成形されておらず、缶容器100と一体に組み合わされたときに成形される。
【0028】
タンパーエビデンスバンド部34は、キャップ1が缶容器100から離間する方向であって、且つ、キャップ1の軸方向で、缶容器100の顎部111と係合する。また、タンパーエビデンスバンド部34は、キャップ1の開封時に破断して、スカート部22から脱離するための破断部34aを有する。即ち、タンパーエビデンスバンド部34は、スカート部22の端部側に破断部34aを残してスリットが形成されることで構成され、雌螺子部33と同様に、缶容器100と一体に組み合わされたときに、缶容器100の顎部111の形状に賦形されることで、顎部111に係合する。
【0029】
密封部材12は、キャップ本体11と別体に構成される。即ち、密封部材12は、天板部21及びスカート部22に対向して配置され、そして、キャップ1と非接着である。具体的には、密封部材12は、円板状に構成され、キャップ本体11のスカート部22に設けられたナール部31の内接円の径よりも大径の外径を有する。また、密封部材12は、スカート部22の内周面から径方向に突出する凹部32の傾斜面32aの少なくとも一部、具体例として傾斜面32aの軸線方向で中央部の内接円の径と同一の外径を有する。
【0030】
密封部材12は、スカート部22の内周面から径方向に突出するナール部31のベントスリット31aが設けられた端部と、キャップ本体11の軸線方向で係合することで、キャップ本体11に一体に設けられる。また、密封部材12は、スカート部22の内周面から径方向に突出する凹部32の傾斜面32aと、キャップ本体11の径方向で係合することで、キャップ本体11の軸線上に中心が位置するように、センタリングされる。
【0031】
密封部材12は、円板状の摺動層41と、摺動層41に一体に積層された円板状の密封層42と、を備えている。密封部材12は、摺動層41及び密封層42が異なる樹脂材料で一体に成形されることで構成される。密封部材12は、厚さが一様な平板部12aと、天板部21側の外周縁の外面が曲面で構成された曲面部12bと、を備えている。換言すると、密封部材12は、円板状に形成され、天板部21側の稜部が所定の曲率の曲面で構成される。また、密封部材12は、外周縁側を構成する曲面部12bが平板部12aよりも厚さが薄く構成されるとともに、曲面部12bが中心側から外周縁に向かって漸次厚さが薄くなり、曲面部12bの先端、即ち外周縁が他部よりも最も薄肉に構成される。平板部12aは、曲面部12b側の一部が缶容器100の口部110と当接する密封部分を構成する。平板部12aは、例えば、密封部分が他の部位よりも肉厚に構成される。
【0032】
摺動層41は、密封層42よりも相対的に硬度が高い(硬い)樹脂材料によって構成される。また、摺動層41は、キャップ本体11の樹脂皮膜層と接着性及び粘着性を有さない樹脂材料により構成される。即ち、摺動層41は、天板部21と非接着であり、そして、天板部21と接触した状態で天板部21を摺動する。
【0033】
摺動層41に用いられる樹脂材料は、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。本実施形態においては、摺動層41は、例えば、ポリプロピレン樹脂によって構成される。なお、摺動層41に用いられる樹脂材料には、顔料、滑剤、軟化剤等を適宜添加することができる。
【0034】
摺動層41は、キャップ本体11の天板部21と対向して、キャップ本体11と別体に設けられる。摺動層41は、用いられる樹脂材料により、キャップ本体11の天板部21と摺動可能に構成される。摺動層41は、円板状に構成される。摺動層41の外径は、スカート部22の内径よりも小径であり、複数のナール部31の内接円よりも大径であり、複数の凹部32の傾斜面32aの軸線方向で一部を通る内接円と同一径であり、そして、口部110のカール部113の外径よりも大径に構成される。
【0035】
摺動層41は、厚さが一様な第1平板部41aと、天板部21側の外周縁の外面が曲面により構成された第1曲面部41bと、第1曲面部41bの密封層42側に設けられた突起部41cと、を備えている。第1平板部41aは、摺動層41の中心から口部110のカール部113と対向する部位よりも外周側までの部分の厚さが一様に構成される。
【0036】
第1曲面部41bは、口部110のカール部113と対向する部位よりも外周側から外周縁までの部分の厚さが、外周縁に向かって厚さが漸次減少して構成される。突起部41cは、摺動層41の軸方向及び天板部21の面方向に対して傾斜してスカート部22の開口する端部側に向かって湾曲又は傾斜する円環状の突起状に構成される。突起部41cは、第1曲面部41bから先端に向かって厚さが漸次減少する。
【0037】
密封層42は、摺動層41よりも相対的に硬度が低い(軟らかい)樹脂材料により構成される。密封層42に用いられる樹脂材料は、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、より好適にはスチレン系エラストマーとポリプロピレン樹脂のブレンド材、低密度ポリエチレンとスチレン系エラストマーのブレンド材、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。本実施形態においては、密封層42は、例えば、スチレン系エラストマーとポリプロピレン樹脂の混合材料によって構成される。なお、密封層42に用いられる樹脂材料には、顔料、滑剤、軟化剤等を適宜添加することができる。
【0038】
密封層42は、口部110と対向する側の摺動層41の主面に一体に設けられる。密封層42は、円板状に構成される。密封層42の外径は、口部110のカール部113の外径よりも大径に構成されるとともに、摺動層41の外径と略同一に構成される。
【0039】
密封層42は、口部110と対向する部位の厚さが他よりも肉厚に構成された第2平板部42aと、天板部21側の外周縁の外面が曲面で構成された第2曲面部42bと、第2曲面部42bの摺動層41側とは反対側の主面に設けられた環状の窪み42cと、を備える。第2平板部42aは、カール部113と対向する主面が平面に構成される。例えば、第2平板部42aは、摺動層41の第1平板部41aと同一径に構成される。第2平板部42aは、第1平板部41aとともに、密封部材12の平板部12aを構成する。
【0040】
第2曲面部42bは、例えば、第2平板部42aのカール部113と対向する主面と面一の主面を有する。第2曲面部42bは、口部110のカール部113と対向する部位よりも外周側から外周縁までの部分の厚さが、外周縁に向かって厚さが漸次減少して構成される。第2曲面部42bは、第1曲面部41b及び突起部41c上に積層される。第2曲面部42bは、第1曲面部41b及び突起部41cとともに、密封部材12の曲面部12bを構成する。
【0041】
窪み42cは、例えば、断面が半円状の環状の窪みである。窪み42cは、密封部材12がキャップ本体11にセンタリングされたときに、例えば、ナール部31のベントスリット31a側の端部と当接する。
【0042】
このような密封部材12は、天板部21を上に向けた状態にキャップ1を配置し、密封部材12が天板部21よりも下方に落下した際に、ナール部31のベントスリット31a側の端部と当接することで、ナール部31によって係止され、重力方向で下方への移動が規制される。また、密封部材12は、キャップ1が缶容器100から取り外されるときに、ナール部31によって支持されることで、口部110から離れ、キャップ本体11とともに移動する。
【0043】
このように構成されたキャップ1の製造方法について、以下簡単に説明する。先ず、例えば、金属板材料からカップ上のキャップ本体11を成形する。次に、キャップ本体11を天板部21が重力方向で下側に位置する姿勢で下金型上に配置する。次に、天板部21上に、溶融又は軟化した摺動層41用の樹脂材料を供給し、上金型で供給された樹脂材料を圧縮成形し、摺動層41を成形する。次に、摺動層41上に溶融又は軟化した密封層42用の樹脂材料を供給し、上金型で供給された樹脂材料を圧縮成形し、摺動層41上に密封層42を成形する。その後、キャップ本体11のスカート部22に、ナール部31、凹部32、ベントスリット31a及びタンパーエビデンスバンド部34等を成形する。このような工程によりキャップ1が製造される。
【0044】
また、製造されたキャップ1は、缶容器100の口部110に装着するときに、キャップ1の天板部21が上方となる姿勢とする。このとき、密封部材12が凹部32の天板部21側の傾斜面32aに当接しながら下降することで、密封部材12は、キャップ本体11の中央部に位置決めされ、そして、一定の距離だけ下降すると、ナール部31の端部に支持され、下降する方向の移動が規制される。この状態でキャップ1が口部110に被冠されると、密封部材12の密封層42の所定の部位が口部110と対向する。この状態で、キャップ本体11の角部23を絞り成形しながら、スカート部22をロールオン成形することで、キャップ1が缶容器100の口部110に巻締固着される。
【0045】
このように構成されたキャップ1によれば、スカート部22に密封部材12のキャップ1の径方向への移動を規制するための凹部32を複数、好適には3箇所以上設ける構成とすることで、密封部材12を凹部32の傾斜面32aに当接させて、密封部材12のキャップ本体11内における径方向の位置決めを行うことが可能となる。即ち、複数の凹部32により、密封部材12のキャップ本体11内の径方向の変位を抑制し、キャップ本体11に対する密封部材12の径方向の位置を一定とすることができる。この結果、キャップ1を缶容器100の口部110に被冠させたときに、確実に所定の位置で密封部材12を口部110に密着させることができる。これにより、キャップ1は、缶容器100の口部110との密封性を向上させることができるとともに、キャップ本体11の角部23の絞り成形性、タンパーエビデンス性、耐落下性及び巻締め性を向上できる。即ち、キャップ1を缶容器100に巻締めしたときに、キャップ本体11に非接着の密封部材12を用いたとしても、高い密封性を確保することができる。また、キャップ1は、缶容器100を再封するときにおいても、密封部材12が凹部32によってセンタリングされることから、高い密封性を確保できる。
【0046】
また、密封部材12の径方向の位置決めを行う規制部である凹部32が、密封部材12の軸線方向で天板部21から離間する方向の移動を規制する係止部であるナール部31よりも、少なくとも密封部材12と当接する部位が天板部21側に配置される。この構成により、キャップ1を天板部21が上方に位置する姿勢としたときに、密封部材12を確実に凹部32に当接させた後に、ナール部31の端部で密封部材12が支持されることから、密封部材12の径方向の位置決めを確実に行うことができる。
【0047】
また、凹部32の傾斜面32aは、天板部21と対向するように、天板部21から離間する方向に向かうにつれて、キャップ本体11の内方に向かって傾斜する構成である。このため、キャップ1を天板部21が上方に位置する姿勢としたときに、密封部材12が複数の傾斜面32aに当接しつつ、ナール部31に向かって移動することから、密封部材12を確実に位置決めすることができる。また、複数のナール部31のベントスリット31a側の端部の径方向最内端を連続する接円の直径は、複数の傾斜面32aの軸線方向での最下端を連続する接円の直径よりも小さく設定されている。このため、係止部となるナール部31のベントスリット31a側の端部により、密封部材12の天板部21から離れる方向への移動を確実に規制できる。
【0048】
また、密封部材12は、外周縁が他よりも薄肉に形成され、外周縁が他よりも変形しやすい構成とすることで、密封部材12が凹部32の傾斜面32aに当接したときに、当接した縁が変形し、凹部32において密封部材12が支持されることを極力防止できる。これにより、キャップ1は、密封部材12を係止部であるナール部31の天板部21側の端部で支持することが可能となる。
【0049】
また、密封部材12のキャップ本体11に対する位置決めを行うための凹部32は、従来複数のナール部31を設けていた一部のナール部31を変える構成であることから、キャップ1の製造装置はナール部31を成形する型の一部で凹部32を成形可能とすればよい。このため、凹部32含むキャップ1の製造装置は、型を変えるだけでよく、従来の設備から大幅に設備を変える必要がなく、設備コストが増大することを防止できる。
【0050】
上述したように、本発明の一実施形態に係るキャップ1によれば、缶容器100の口部110に被冠されたときにキャップ本体11に非接着の密封部材12の密封性を確保できる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述した例では、ナール部31をスカート部22の13箇所に設け、凹部32をスカート部22の4箇所に設ける構成を説明したがこれに限定されない。即ち、ナール部31は、ベントスリット31aによって、缶容器100の開封時に、缶容器100内のガス等を排出可能な機能を得られ、そして密封部材12を確実に係止できる数や形状であれば適宜設定可能である。また、凹部32は、密封部材12の径方向の移動を規制し、密封部材12の中心がキャップ本体11の中心と同心上に配置されるようにセンタリングできる構成であれば、数や形状は適宜設定可能である。但し、凹部32は、少なくとも周方向で所定の距離だけ離間して3箇所以上に配置され、そして、天板部21と対向する傾斜面32aを有する構成が好ましい。また、天板部21からナール部31及び凹部32までの軸線方向の距離は適宜設定可能だが、移動する密封部材12が倒れて、複数のナール部31及び複数の凹部32から抜け落ちない距離であることが好ましい。
【0052】
さらに、上述した例では、密封部材12を支持し、密封部材12がキャップ本体11から脱落することを防止する係止部を、ベントスリット31aを天板部21側に設け、ナール部31の天板部21側の端部とする構成を説明したがこれに限定されない。例えば、係止部は、ナール部31及び凹部32以外の突起をスカート部22に設ける構成としてもよい。また、例えば、ベントスリット31aを天板部21側とは軸線方向で反対側に設け、ナール部31のスカート部22の内周面から突出する面によって係止部を構成してもよい。
【0053】
但し、係止部をナール部31のベントスリット31aが設けられた天板部21側の端部とすることで、凹部32を設ける構成としても、成形装置は型をナール部31及び凹部32を成形するかで済むことから、製造コストを安価とすることができるとともに、製造が容易となるため好ましい。また、キャップ1を製造する際に、あるキャップ本体11で密封部材12を成形した後に、成形した密封部材12を他のキャップ本体11に供給する場合等においては、キャップ本体11に密封部材12を挿入する方向で、ナール部31の内面がスカート部22の内面と連続することから、ベントスリット31aをナール部31の天板部21側に設ける構成とすることで、密封部材12を挿入しやすいという効果も奏する。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1] 円板状の天板部及び前記天板部の周縁部に設けられた筒状のスカート部を有するキャップ本体と、
前記キャップ本体と別体に、前記天板部と対向して前記キャップ本体内に設けられ、外径が前記スカート部の内径よりも小径に形成された密封部材と、
前記スカート部の周方向に複数設けられ、前記天板部から離れる方向の前記密封部材の移動を規制し、支持する複数の係止部と、
前記スカート部の周方向に複数設けられ、前記スカート部の内周面よりも径方向で内方に突出する、前記密封部材の径方向の移動を規制する規制部と、
を備えるキャップ。
[2] 前記規制部は、前記係止部の前記密封部材と当接する部位よりも前記天板部側に位置する、[1]に記載のキャップ。
[3] 前記規制部は、前記スカート部の内方の面が、前記天板部から軸線方向に離間する方向で、且つ、前記径方向内方に向かって傾斜する傾斜面を有する、[2]に記載のキャップ。
[4] 複数の前記係止部の径方向最内端を連続する接円の直径は、複数の前記傾斜面の軸線方向での最下端を連続する接円の直径よりも小さく設定される、[3]に記載のキャップ。
[5] 前記密封部材は、外周縁が容器の口部と当接する密封部分よりも薄肉に形成される、[1]乃至[4]のいずれか一項に記載のキャップ。
【符号の説明】
【0055】
1…キャップ、11…キャップ本体、12…密封部材、12a…平板部、12b…曲面部、21…天板部、22…スカート部、23…角部、31…ナール部、31a…ベントスリット、32…凹部、32a…傾斜面、33…雌螺子部、34…タンパーエビデンスバンド部、34a…破断部、41…摺動層、41a…第1平板部、41b…第1曲面部、41c…突起部、42…密封層、42a…第2平板部、42b…第2曲面部、42c…窪み、100…缶容器、110…口部、111…顎部、112…雄螺子部、113…カール部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6