(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】放射線不透過性ポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 8/28 20060101AFI20240219BHJP
C08F 8/30 20060101ALI20240219BHJP
C08F 216/06 20060101ALI20240219BHJP
A61L 15/12 20060101ALI20240219BHJP
A61L 17/00 20060101ALI20240219BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20240219BHJP
A61L 29/04 20060101ALI20240219BHJP
A61K 31/765 20060101ALI20240219BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240219BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C08F8/28
C08F8/30
C08F216/06
A61L15/12
A61L17/00 100
A61L27/16
A61L29/04 100
A61K31/765
A61P9/00
A61P35/00
A61P13/08
(21)【出願番号】P 2022502959
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(86)【国際出願番号】 IB2020056803
(87)【国際公開番号】W WO2021009734
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-01-17
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】303039785
【氏名又は名称】バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ブリトン、ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリス、ショーン エル.
(72)【発明者】
【氏名】パリージ、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クーダ、フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】アシュラフィ、クーロシュ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、アンドリュー エル.
(72)【発明者】
【氏名】タン、イーチン
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521087(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0108574(US,A1)
【文献】特表2016-531921(JP,A)
【文献】国際公開第2015/033093(WO,A1)
【文献】特開平9-188716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0020065(US,A1)
【文献】特公昭50-8934(JP,B1)
【文献】米国特許第04406878(US,A)
【文献】中国特許出願公開第105968244(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F、C08G、C08K、C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール(PVA)を含むポリマーにおいて、前記ポリビニルアルコールは、第1のペンダント基及び第2のペンダント基を有し、
第1のペンダント基は、第1のフェニル基の1つ以上の単独の置換基として1~5個のヨウ素を有する第1のフェニル基を含み、
第2のペンダント基は、
(a)W基及び任意選択で1~4個のヨウ素置換基のうちから選択される1~3個の置換基を有する第2のフェニル基であって、1つ以上の前記W基及び前記任意選択のヨウ素は第2のフェニル基の単独の置換基であり、
各Wは、-OH、-COOH、-SO
3H、-OPO
3H
2、-O-(C
1~4アルキル)、-O-(C
1~4アルキレン)OH、-O-(C
1~4アルキレン)R
2、-O-(C
2H
4O)
qR
1、-(C=O)-O-C
1~4アルキル及び-O-(C=O)C
1~4アルキルから独立して選択され、前記式中、R
1はH又はC
1~4アルキルであり、R
2は-COOH、-SO
3H、又は-OPO
3H
2であり、qは1~4の整数であり、前記W基は薬学的に許容される塩の形態にあってもよい、第2のフェニル基と、
(b)任意選択でピリジニウムイオンの形態にあるピリジル基とのうちから選択される基を含む、ポリマー。
【請求項2】
第1のペンダント基が、エーテル基、エステル基、アミド基、又は1,3ジオキサン基を介して前記ポリビニルアルコールに結合されている、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
第2のペンダント基が、エーテル基、エステル基、アミド基、又は1,3ジオキサン基を介して前記ポリビニルアルコールに結合されている、請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項4】
第1のペンダント基は、式1A又は式1Bによる基であり、
【化1】
前記式中、
Xは、独立して、結合であるか、又は連結基であるかのいずれかであり、前記連結基は、フェニル基と結合基との間に直接、C、N、S及びOから選択される1~6原子の鎖を有するが、但し、前記鎖中におけるN、S及びOの合計は0又は1個であり、Cは、C
1~4アルキルから選択される基によって任意選択で置換されており、NはR
3で置換されており、ここでR
3はH及びC
1~4アルキルから選択され、Sは-S(O)-基又は-S(O)
2-基のいずれかであり、
Gは結合基であり、該結合基を介して式1Aの基が前記ポリビニルアルコールに結合されており、前記Gはエーテル、エステル及びアミドから選択され、
nは1~5の整数である、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
第2のペンダント基は、式2A、式2B、式2C又は式2Dのものであり、
【化2】
前記式中、
Xは、独立して、結合であるか、又は連結基であるかのいずれかであり、前記連結基は、フェニル基と結合基との間に直接、C、N、S及びOから選択される1~6原子の鎖を有するが、但し、前記鎖中におけるN、S及びOの合計は0又は1個であり、Cは、C
1~4アルキルから選択される基によって任意選択で置換されており、NはR
3で置換されており、ここでR
3はH及びC
1~4アルキルから選択され、Sは-S(O)-基又は-S(O)
2-基のいずれかであり、
Gは結合基であり、該結合基を介して式2A又は式2Cの基が前記ポリビニルアルコールに結合されており、前記Gはエーテル、エステル及びアミドから選択され、
Wは、-OH、-COOH、-SO
3H、-OPO
3H
2、-O-(C
1~4アルキル)、-O-(C
1~4アルキレン)OH、-O-(C
1~4アルキレン)R
2、-O-(C
2H
4O)
qR
1、-(C=O)-O-C
1~4アルキル及び-O-(C=O)C
1~4アルキルから独立して選択され、ここで、R
1はH又はC
1~4アルキルであり、R
2は-COOH、-SO
3H、又は-OPO
3H
2であり、qは1~4の整数であり、前記W基は薬学的に許容される塩の形態にあってもよく、
PYRはピリジル基であり、
n2は0~4の整数であり、
pは1~3の整数であり、
qは1~4の整数であり、
n2+pは1~5の整数である、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項6】
前記式中、Xは、結合、C
1~6アルキレン基、C
1~5アルコキシレン基、式-(CH
2)
y-O-(CH
2)
z-の基(ここで、y及びzは独立して1、2又は3であり、y+zは2~5の整数である)、及び式-N(R
3)(CH
2)
n3-の基(ここで、R
3はH又はC
1~4アルキルであり、n3は1~4の整数である)からなる群から選択される、請求項4又は5に記載のポリマー。
【請求項7】
前記式中、Xは、結合、メチレン、エチレン、オキシメチレン及びオキシエチレン、-CH
2O-CH
2-、並びに-NH(CH
2)-からなる群から選択される、請求項4又は5に記載のポリマー。
【請求項8】
前記式中、Wは、それぞれの場合において独立して、-OH、-COOH、-SO
3H、-O-(C
1~4アルキル)、-O-(C
1~4アルキレン)OH、-O-(C
1~4アルキレン)R
2、-O-(C
2H
4O)
qR
1、-(C=O)-O-C
1~4アルキル及び-O-(C=O)C
1~4アルキルから選択され、ここで、R
1はH又はC
1~4アルキルであり、R
2は-COOH、又は-SO
3Hであり、qは1~4の整数である、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項9】
前記式中、Wは、それぞれの場合において独立して、-OH、-COOH、-SO
3H、-O-(C
1~4アルキレン)R
2、及び-O-(C
2H
4O)
qR
1から選択され、ここで、R
1はH又はC
1~4アルキルであり、R
2は-COOH又は-SO
3Hであり、qは1~4の整数である、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項10】
前記式中、Wは、それぞれの場合において独立して、-SO
3H及び-O-(C
1~4アルキレン)R
2から選択され、ここで、R
2は-SO
3Hである、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項11】
第1のペンダント基がエーテル結合を介して前記ポリビニルアルコールに結合されており、且つ第2のペンダント基が1,3ジオキサン基を介して前記ポリビニルアルコールに結合されているか、又は第1のペンダント基及び第2のペンダント基の双方が1,3ジオキサン基を介して前記ポリビニルアルコールに結合されているかのいずれかである、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項12】
第1のペンダント基が式4Aのものであり、且つ第2のペンダント基が式4Bのものであり、
【化3】
前記式中、nは1~4の整数であり、n2は1~4の整数であり、Wは-SO
3H、-O-(C
1~4アルキレン)SO
3H及び-COOHから選択され、pは1又は2であり、n2+pは2~
5の整数である、請求項1から11のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項13】
第1のペンダント基が式4Aのものであり、且つ第2のペンダント基が式4Dのものであり、
【化4】
前記式中、nは1~4の整数であり、Wは-SO
3H及び-COOHから選択され、pは1又は2である、請求項1から11のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項14】
第1のペンダント基が式4Aのものであり、且つ第2のペンダント基が式4Eのものであり、
【化5】
前記式中、nは1~4の整数であり、
PYRはピリジル基である、請求項1から11のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項15】
前記式中、nは2又は3である、請求項4から14のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項16】
前記式中、pは1である、請求項5から15のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項17】
第1のペンダント基及び第2のペンダント基のない前記ポリビニルアルコールは、1kDa~250kDaの重量平均分子量を有する、請求項1から16のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項18】
第1のペンダント基及び第2のペンダント基のない前記ポリビニルアルコールは、10kDa~100kDaの重量平均分子量を有する、請求項1から17のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項19】
少なくとも10乾燥重量%のヨウ素含有量を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項20】
少なくとも10mg/mLのヨウ素含有量を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項21】
少なくとも500HUの放射線不透過度を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載のポリマーを含む埋め込み型医療デバイス。
【請求項23】
前記埋め込み型医療デバイスは、活性薬剤を含む、ミクロスフェア、液体塞栓組成物、標準マーカー、組織間隔保持材料、注入可能な充填剤、シーラント、デポー剤から選択され、これらの埋め込み型医療デバイスから前記活性薬剤が、活性成分を送達するための周囲組織中、創傷被覆材中、及び医療デバイスのコーティング中に溶出する、請求項22に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項24】
溶媒に溶解された請求項1から21のいずれか一項に記載のポリマーを含む組成物。
【請求項25】
前記溶媒は水混和性有機溶媒を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記ポリマーは、20℃で500倍過剰のリン酸緩衝食塩水(PBS:NaCl 136.7mM、KCl 2.7mM、Na
2HPO
4 10.1mM、KH
2PO
4 1.7mM; pH7.4)中において沈殿するか、又はゲルを形成する、請求項24又は25に記載の組成物。
【請求項27】
前記有機溶媒はDMSOである、請求項25又は26に記載の組成物。
【請求項28】
前記ポリマーは、少なくとも35乾燥重量%のヨウ素含有量を有する、請求項24から27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記ポリマーは、完全に水和したポリマー1mLあたり、少なくとも100mgのヨウ素含有量を有する、請求項24から27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記ポリマーは、少なくとも4500HUの放射線不透過度を有する、請求項24から29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
24℃で600cP未満の粘度を有する、請求項24から30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
ポリビニルアルコールを含むポリマーを式5aの化合物と、
【化6】
式5b又は式5cの化合物のいずれかと反応させることを含む方法であって、
【化7】
前記式中、それぞれの場合において独立して、Qは、1,3ジオール基と環状アセタールを形成することができる基から選択され、
Xは、独立して、結合であるか、又は連結基であるかのいずれかであり、前記連結基は、フェニル基と結合基との間に直接、C、N、S及びOから選択される1~6原子の鎖を有するが、但し、前記鎖中におけるN、S及びOの合計は0又は1個であり、Cは、C
1~4アルキルから選択される基によって任意選択で置換されており、NはR
3で置換されており、ここでR
3はH及びC
1~4アルキルから選択され、Sは-S(O)-基又は-S(O)
2-基のいずれかであり、
Wは、-OH、-COOH、-SO
3H、-OPO
3H
2、-O-(C
1~4アルキル)、-O-(C
1~4アルキレン)OH、-O-(C
1~4アルキレン)R
2、-O-(C
2H
4O)
qR
1、-(C=O)-O-C
1~4アルキル及び-O-(C=O)C
1~4アルキルから独立して選択され、ここで、R
1はH又はC
1~4アルキルであり、R
2は-COOH、-SO
3H、又は-OPO
3H
2であり、qは1~4の整数であり、前記W基は薬学的に許容される塩の形態にあってもよく、
PYRはピリジル基であり、
n2は0~4の整数であり、
pは1~3の整数であり、
qは1~4の整数であり、
n2+pは1~5の整数であり、
W基は、可能な場合には、薬学的に許容される塩の形態にあってもよい、方法。
【請求項33】
前記式中、Qは、それぞれの場合において独立して、アルデヒド基、アセタール基、及びヘミアセタール基からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記式中、Qは、それぞれの場合において独立して、-CHO、-CHOR
11OR
12、-CHOR
13OHからなる群から選択され、ここで、R
11、R
12及びR
13は、それぞれの場合において独立して、C
1~4アルキルから選択される、請求項32又は33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、放射線不透過性ポリマー、並びにそれらの放射線不透過性ポリマーの使用、特に医療デバイスの製造及び医療処置の方法における使用に関する。本開示は、特に治療的塞栓術の分野に有用な放射線不透過性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
治療的塞栓術は、血流を遅延若しくは停止させるか、又は動脈瘤などの空間を充填するために、血管に材料を導入して閉塞を生じさせる低侵襲性処置である。このアプローチは、消化管出血、動静脈奇形、肝細胞癌などの血管過多腫瘍、子宮筋腫及びさらに最近では良性前立腺肥大症(BPH)などの良性腫瘍のような症状の治療に役立ってきた。
【0003】
生体適合性ミクロスフェアは、標的部位に容易に送達することができ、血管サイズに応じてより予測可能に塞栓を形成するために規定のサイズ範囲で提供することができるため、有用な塞栓剤である。液体塞栓(liquid embolic)もまた、液体として送達されるが、インサイチューでゲル化、固化、又は沈澱する材料を用いて、いくつかの領域で有用性を見い出している。そのような系の一部はインサイチューでの重合又はゲル生成によるものであり、一方、他のものは血液中に迅速に放散して塞栓物質を残す有機溶媒などの担体中における物質の送達によるものである。液体塞栓は、液体塞栓が血管壁に沿い、その沈積特性によって、離散した球体ではなく、典型的には一体になった塞栓を形成するというさらなる利点を有する。典型的には、そのような塞栓物質は、生体適合性、密度、圧縮性、流動性、及びカテーテル送達の容易さなどの所望の特性を与えるように選択される合成又は天然のポリマーである。一部のものは、沈積部位に送達するための薬物を装填するように設計されていることもある。液体塞栓については、血管内及び送達カテーテル内における流動特性、沈積の速度及び予測精度、並びに塞栓の堅牢性などの特性も重要である。
【0004】
ポリマー骨格に共有結合したヨウ素化基を有した放射線不透過性ポリマーが提案されている(例えば、特許文献1)。ポリマー骨格に結合したヨウ素化基を有する放射線不透過性液体塞栓も記載されている(例えば、特許文献2)。これらのポリマー上における十分なヨウ素化基の存在は、X線に基づく技術を用いて、これらの材料を可視化させるだけでなく、未変性の(native)ポリマーと比較して取扱い特性及び他の特性の変化ももたらす。ヨウ素化は、カテーテルを離れるときの予測不能又は急速な沈殿、ポリマーの「ストリング化(stringing)」などの血管内における望ましくない挙動、及び他の好ましくない取扱い特性をもたらすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/033092号パンフレット
【文献】国際公開第2011/110589号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、X線で視認するために十分に放射線不透過性であるが、改善された使い易さを有する改善されたヨウ素化ポリマーを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、本明細書に記載するポリマーによって上記の課題のうちの1つ以上に対処することができることを確認した。従って、第1の態様において、本開示は、ポリビニルアルコール(PVA)を含むポリマーを提供する。PVAは、第1のペンダント基及び第2のペンダント基を有し、第1のペンダント基は、第1のフェニル基の1つ以上の単独の置換基(sole substituent)(即ち第1のフェニル基上における1つ以上の単独の非水素置換基)として1~5個のヨウ素原子を有する第1のフェニル基を含み、第2のペンダント基は、(a)W基及び任意選択で1~4個のヨウ素置換基のうちから選択される1~3個の置換基を有する第2のフェニル基であって、1つ以上のW基及び任意選択のヨウ素は第2のフェニル基の単独の置換基(即ち第2のフェニル基上における1つ以上の単独の非水素置換基)であり、各Wは、-OH、-COOH、-SO3H、-OPO3H2、-O-(C1~4アルキル)、-O-(C1~4アルキル)OH、-O-(C1~4アルキル)R2、-O-(C2H5O)qR1、-(C=O)-O-C1~4アルキル及び-O-(C=O)C1~4アルキルから独立して選択され、式中、R1はH又はC1~4アルキルであり、R2は-COOH、-SO3H又は-OPO3H2であり、qは1~4の整数であり、W基は薬学的に許容される塩の形態にあってもよい、第2のフェニル基と、(b)任意選択でピリジニウムイオンの形態にあるピリジル基とのうちから選択される基を含む。
【0008】
ピリジニウム基は、例えばハロゲン化物(例えば塩化物又はヨウ化物、しかしながら好ましくは塩化物)などの、アニオンを有した薬学的に許容される塩の形態にある。
このように、上記ポリマーにおいて、PVA骨格は2種類のペンダント基を含む。第2のペンダント基上におけるヨウ素の数及びW基の数の合計は5以下であり、いくつかの実施形態では4以下である。各ペンダント基は、典型的には、PVAポリマー骨格の1つ以上のヒドロキシル基を介して結合されている。各ペンダント基は、典型的には、単一の結合基を介してPVAに結合されている。
【0009】
本発明者は、1つ以上のヨウ素が結合したフェニル基を含む第1のペンダント基をポリマーに与えることによって、PVAポリマーを放射線不透過性にすることができることを確認した。フェニル基に結合したヨウ素の数又は骨格に結合したペンダント基の数のいずれかを増大させると、ポリマーの放射線不透過性は増大するが、同時に、とりわけ(i)加えられたヨウ素の量、及び(ii)各ペンダント基の結合による遊離ヒドロキシル基の数の減少により、ポリマーの疎水性も増大する。これにより、ポリマーの特性を調整することが困難となる。
【0010】
そこで本発明者らは、第1のペンダント基がフェニル基に結合したヨウ素のみを有することと、1つ以上の親水性置換基(W)のみを持つ第2のペンダント基を与えることによってポリマーの疎水性を調節することとを組み合わせて提供することにより、疎水性と放射線不透過性とのバランスを効果的にとることができることも見極めた。次に、ポリマーの疎水性と親水性とのバランスは、特性を調節するために、結合する第2のペンダント基の割合を第1のペンダント基に関して増減することによって調整することができる。代わりに、親水性/放射線不透過性は、親水基(W)に加えて1つ以上のヨウ素を持つ第2のペンダント基を提供することによって調整することができる。
【0011】
従って、一実施形態において、第2のペンダント基は、1つのみの、2つ又は3つの、典型的には1つ又は2つの、より典型的には1つのW基をフェニル基の単独の置換基として含む。さらなる実施形態において、第2のペンダント基は、1つの、2つ又は3つの、典型的に1つ又は2つの、より典型的には1つのW基を持ち、加えて、1つ以上のヨウ素、好ましくは1つ、2つ又は3つのヨウ素をフェニル基の1つ以上の単独の置換基として持つ。
【0012】
第2のペンダント基については、以下の組み合わせ、即ち、1つ又は2つのW基でヨウ素なし、1つのW基及び1つのヨウ素、1つのW基及び2つのヨウ素、1つのW基及び3つのヨウ素が有益である。
【0013】
有益なW基は、-OH、-COOH、-SO3H、-O-(C1~4アルキル)、-O-(C1~4アルキル)OH、-O-(C1~4アルキル)R2、-O-(C2H5O)qR1、-(C=O)-O-C1~4アルキル、及び-O-(C=O)C1~4アルキルであり、前記式中、
R1はH又はC1~4アルキルであり、典型的にはH又はメチルであり、特にメチルであり、
R2は-COOH、又は-SO3Hであり、典型的には-SO3Hであり、qは1~4の整数である。
【0014】
より典型的なW基は、-OH、-COOH、-SO3H、-O-(C1~4アルキル)R2、及び-O-(C2H5O)qR1であり、特に-SO3H及び-O-(C1~4アルキル)R2であり、式中、R1はH又はC1~4アルキルであり、典型的にはH又はメチルであり、特にメチルであり、R2は-COOH、又は-SO3Hであり、典型的には-SO3Hであり、qは1~4の整数である。
【0015】
本明細書におけるポリマーのいずれかにおいて、Wは-O-(C1~4アルキル)R2であり、Wは-O-(C2~4アルキル)R2であってもよく、より典型的には-O-(C3アルキル)R2又は-O-(C4アルキル)R2であってもよい。
【0016】
第1のペンダント基は、当該技術分野において利用可能な任意の手法でPVA骨格に結合され得るが、典型的にはPVA骨格のアルコール性ヒドロキシル基を介して結合されている。これらの基を介した結合により、エーテル、エステル、アミド又は1,3ジオキサンなどの結合基を提供するために、いくつかの結合化学作用が利用可能となる。1,3ジオキサンとは、ペンダント基がPVA骨格の2つの隣り合ったヒドロキシル基を介して結合されて、ジオキサンリングを形成する、下記のような結合基を意味する。これはまた、環状アセタール結合、例えば、
【0017】
【化1】
として別途記載されている(例えば国際公開第2015/033092号)。
【0018】
第2のペンダント基もまた、当該技術分野において利用可能な任意の手法でPVA骨格に結合され得るが、これも典型的にはPVA骨格のアルコール性ヒドロキシル基を介して、特にエーテル、エステル、アミド及び1,3ジオキサンなどの結合を介して結合されている。
【0019】
それぞれの場合において、独立して、上記結合は、有益にはエーテル、アミド又は1,3ジオキサンであってもよく、より典型的には独立してエーテル又は1,3ジオキサン基であってもよく、特にそれぞれの場合において1,3ジオキサンによるものであってもよい。エステルは、そのような結合が体内でゆっくりと加水分解してペンダント基を放出するため、あまり好ましくない。有益には、第1のペンダント基がエーテル結合を介してPVAに結合されており、且つ第2のペンダント基が1,3ジオキサン基を介してPVAに結合されているか、又は第1のペンダント基及び第2のペンダント基の双方が1,3ジオキサン基を介してPVAに結合されているかのいずれかである。特定の実施形態では、双方が1,3ジオキサン基を介して結合されている。
【0020】
第1のペンダント基は、有益には式1A又は式1Bによる基であり、
【0021】
【化2】
前記式中、
Xは独立して、結合である(従ってフェニルが結合基に直接結合される)か、又は連結基であるかのいずれかである。典型的には、連結基は、フェニル基と結合基との間に直接、C、N、S及びOから選択される1~6原子の鎖を有するが、但し、上記鎖はN、S及びOから選択される1つ以下の原子を含み、Cは、C
1~4アルキルから選択される基によって任意選択で置換されており、NはR
3で置換されており、ここでR
3はH及びC
1~4アルキルから選択され、Sは-S(O)-基又は-S(O)
2-基のいずれかである。
【0022】
「間に直接」とは、フェニルと結合基との間に、これらの原子のみを含む直接的な連結を見つけることができることを意味する。これらのリンカーXの中で、鎖がSを含むものはそれほど有益ではない。Cのアルキル置換基は-CH3基又は-(CH3)2基であってもよく、R3は典型的にはH又はメチルである。
【0023】
適当なリンカーとして、可能な場合には、C1~6アルキレン基、特にメチレン又はエチレン、C1~5アルコキシレン基、式-(CH2)y-O-(CH2)z-の基(式中、y及びzは独立して1、2又は3であり、y+zは2~5の整数である)、及び式-N(R3)(CH2)n3-の基(式中、R3はH又はC1~4アルキルであり、特にH又はメチルであり、n3は1~4の整数である)が挙げられる。好ましいリンカーは、結合、メチレン及びエチレン、オキシメチレン及びオキシエチレン(ここで酸素はフェニルに結合される)、-CH2O-CH2-、並びに-NH(CH2)-から選択され、Xは特に結合である。
【0024】
Gは結合基であり、該結合基を介して式1Aの基がPVAに結合されており、Gはエーテル、エステル及びアミド、典型的にはエーテル又はアミド、より典型的にはエーテルから選択され、nは、1~5、典型的には1~4の整数であり、より典型的には2又は3である。
【0025】
特に有益な第1のペンダント基は下記式のものであり、
【0026】
【化3】
式中、nは、1~5、典型的には1~4の整数であり、より典型的には2又は3である。
【0027】
有益には、第2のペンダント基は式2A、式2B、式2C又は式2Dのものであり、
【0028】
【化4】
式中、PYRはピリジル基、例えば4-ピリジル基であり、該ピリジル基はピリジニウムイオンの形態にあってもよく、
式中、
W、X及びGは本明細書で定義した通りであり、
n2は、それぞれの場合において独立して、0~4であり、
pは、それぞれの場合において独立して、1~3の整数であり、典型的には1又は2であり、より典型的には1であり、
n2+pは、それぞれの場合において独立して、1~5の整数である。
【0029】
式2A又は式2Bのフェニル基の有益な置換パターンは下記の通りである。
【0030】
【0031】
【化6】
ここで、本明細書の他の箇所におけるように、酸性基はまた、特にナトリウム又はカリウムなどの第1族金属イオンを有した、任意の薬学的に許容される塩の形態にあってもよい。
【0032】
特に有益な組み合わせは、
(a)第1のペンダント基が式4Aのものであり、且つ第2のペンダント基が式4Bのものである組み合わせであって、
【0033】
【化7】
式中、nは0、1、2、3、又は4であり、n2は0、1、2、3、又は4であり、Wは上述した通りであり、特に-SO
3H、-O-(C
1~4アルキル)SO
3H、及び-COOH、より詳しくは-O-(C
1~4アルキル)SO
3Hから選択され、pは1又は2であり、特に1である、組み合わせ、
(b)第1のペンダント基が式4Aのものであり、且つ第2のペンダント基が式4Cのものである組み合わせであって、
【0034】
【化8】
式中、nは1、2、又は3であり、Wは上述した通りであり、特に-SO
3H及び-COOH、より詳しくは-SO
3Hから選択され、pは1又は2であり、特に1である、組み合わせ、及び
(c)第1のペンダント基が式4Aのものであり、且つ第2のペンダント基が式4Dのものである組み合わせである。
【0035】
【化9】
さらに特に有益な組み合わせとしては、本明細書に記載するような表1のもの及びそれらの塩が挙げられる。
【0036】
表1
【0037】
【表1】
第1のペンダント基は、典型的には、未変性のPVA(即ち第1のペンダント基及び第2のペンダント基のないPVA)ポリマー骨格の1,3ジオール基に基づいて、0.3~0.7当量で存在し、典型的には0.4~0.6当量で存在する。第2のペンダント基は、典型的には、より低レベルで存在する。典型的には、第2のペンダント基は、未変性のPVAポリマー骨格の1,3ジオール基に基づいて、0.01~0.2当量、より典型的には0.01~0.1当量で存在する。
【0038】
ポリマーの放射線不透過性(又は放射線不透過度(radiodensity))は、ポリマー中のヨウ素の量を調整することによって変更され得る。これは、いずれかの環上のヨウ素の数の変更によって、又はポリマー中のヨウ素を有したペンダント基の割合の変更によって行われ得る。
【0039】
本開示のポリマーは、有益には、乾燥重量で、少なくとも10重量%(%wt/wt)、典型的には少なくとも20重量%、より典型的には少なくとも30重量%、最も典型的には少なくとも40重量%のヨウ素を含む。乾燥重量で少なくとも50重量%のヨウ素を有するポリマーが、いくつかの実施形態で特に有用である可能性がある。
【0040】
ポリマーが、例えば、液体塞栓を提供するために使用される場合、ポリマーの乾燥重量で、少なくとも35重量%、典型的には少なくとも50重量%、更により典型的には少なくとも55重量%のヨウ素を有するポリマーを使用することが好都合である可能性がある。
【0041】
ヨウ素含有量はまた体積基準で言及されてもよい。ヨウ素含有量は、典型的には1cm3あたり少なくとも10mgのヨウ素、典型的には25mg/cm3のヨウ素、更により典型的には少なくとも50mg/cm3のヨウ素、特に少なくとも100mg/cm3のヨウ素である。少なくとも150又は200mg/cm3を有するポリマーが、いくつかの実施形態では特に有用である場合がある。
【0042】
ポリマーが、例えば、液体塞栓を提供するために使用される場合、少なくとも100mg/mL、典型的には少なくとも150mg/mL、更により典型的には少なくとも200mg/mLのヨウ素を有するポリマーを使用することが好都合である可能性がある。
【0043】
水膨潤性であるが水溶性ではないポリマーに対する体積測定に関連するヨウ素の数値は、例えばリン酸緩衝食塩水中におけるポリマーの沈殿後に、完全に水和されたポリマーの体積に対して決定されるべきである。
【0044】
典型的には、ポリマーは、特に実施例18に従って測定されるように、マイクロCTによって65kVで測定された場合に、少なくとも500HU(ハウンズフィールド単位(Hounsfield unit))、より典型的には少なくとも1000HU又は1500HU、さらにより典型的には少なくとも2500HU、特に少なくとも4000HUの放射線不透過度(沈殿/ゲル化したポリマーに基づき、空隙を除いて計算したもの)を有する。少なくとも4500HUの放射線不透過度を有するポリマーが、いくつかの実施形態で特に有用である場合がある。
【0045】
ポリマーが、例えば、液体塞栓を提供するために使用される場合、少なくとも4500HU、典型的には少なくとも5000HU、より典型的には少なくとも6000HUの放射線不透過度を有するポリマーを使用することが好都合である可能性がある。
【0046】
液体塞栓組成物は、ポリマーが液体として体内の望ましい部位に送達されるが、インビボで血管内に塞栓を形成する組成物であり、特にポリマーがインサイチューでゲル化、固化、又は沈殿して塞栓を形成する組成物である。典型的には、上記ポリマーは、溶媒中のポリマー溶液の形態にある。一実施形態において、ポリマーはヒドロゲルを形成してもよい。本開示のさらなる態様は、本明細書に記載するPVAポリマーを含む液体組成物を提供する。これらの組成物は液体塞栓組成物として適当である。従って、ポリマーは、血液中で放散することによってポリマーを塞栓として血管内に沈積させる溶媒を含む液体塞栓組成物の形態にあり得る。
【0047】
従って、第2の態様は、溶媒中に溶解した本開示の第1の態様によるポリマーを含む組成物を提供する。これらの組成物は、基準マーカー、薬物デポー剤、組織間隔保持組成物(tissue spacing composition)、及び液体塞栓の提供を含むが、これらに限定されない医学的処置に対する多くのアプローチにおいて使用され得る。
【0048】
溶媒は典型的には有機溶媒を含む。有益には、組成物は、溶媒中に溶解して溶媒中のポリマー溶液を形成するPVAポリマーを含む。
一実施形態において、ポリマーは、体内の標的部位において、組成物から沈殿するか、又はゲル若しくはゲル状の塞栓を形成する。20℃のリン酸緩衝食塩水(PBS: NaCl 136.7mM、KCl 2.7mM、Na2HPO4 10.1mM、KH2PO4 1.7mM、 pH7.4)における組成物からの上記ポリマーの沈殿又はゲル化が、この特性のガイドとして用いられてもよく、従って、これらの条件下(500倍体積過剰のPBS中など)でポリマーが沈殿又はゲル化する液体(溶液)組成物が本開示のさらなる実施形態を提供する。これらの沈澱物/ゲルの放射線不透過度及びヨウ素含有量は、本開示の他の実施形態について記載した範囲内であるが、典型的には液体塞栓について上述した通りである。しかしながら、形成された塞栓は空隙を含む可能性があることに注意すべきである。放射線不透過度について提供した数値は、ポリマーに対するものであり、塞栓全体の平均に対するものではない。
【0049】
典型的には、使用される溶媒は水混和性有機溶媒である。水混和性とは、0.5mLの溶媒が20℃で1リットルのPBS中に完全に可溶であることを意味する。
典型的には、これらの有機溶媒は生体適合性である。より典型的には、溶媒は、DMSO、DMF、DMPU(N,N’-ジメチルプロピレン尿素)、DMI(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、グリセリン、乳酸エチル、NMP、及びグリコフロール(2-(オキソラン-2-イルメトキシ)エタノール)などの生体適合性極性非プロトン性溶媒である。溶媒は、更により典型的には、DMSO及びNMP、特にDMSOから選択される。一実施形態において、溶媒は、最高25%w/v、有益には最高10%w/vの水を含むことがある。しかしながら、別の実施形態では、溶媒は水を含有しない。
【0050】
有益には、これらの組成物は、注入可能な液体組成物として提供される。そのような組成物は、典型的には、特に手動圧力で、送達カテーテルを下って通過するのに流動学的に適しているが、カテーテル内径は処置に応じて変化するため、許容される最大粘度レベルは、カテーテル、処置、及び送達方法に依存するでろう。粘度は、24℃で典型的には600cP未満であり、特に400cP未満である。そのような組成物は、良好な送達特性を与える。
【0051】
典型的には、液体組成物は、溶媒中に溶解した、3~70重量%、より典型的には5~40重量%、最も典型的には15~30重量%のポリマーを含む。
液体塞栓に使用されるポリマーは、典型的にはポリビニルアルコールホモポリマー又はポリビニルアルコールコポリマーである。液体塞栓として使用されるPVAポリマーは、典型的には共有結合的に架橋されていない。従って、PVAポリマーは、典型的にはPVAホモポリマー又はPVAコポリマーであり、より典型的には共有結合的に架橋されていないPVAホモポリマーである。
【0052】
本開示で使用するのに適した未変性のPVAは、任意の適当な分子量のものとすることができる。しかしながら、有益には、それらの未変性のPVAは、1kDa~250kDaに及ぶ重量平均分子量を有し得る。液体塞栓のためには、PVAは、少なくとも3kDa、典型的には少なくとも5kDa、より典型的には少なくとも10kDaの重量平均分子量を有する。典型的には、重量平均MWは、150kDa以下、より典型的には100kDa以下、更により典型的には75kDa以下である。典型的な範囲としては、10~75kDa、10~50kDa、5~50kDa、及び25~75kDaの重量平均分子量が挙げられる。大部分が13~23kDA及び31~50kDaである分子量の混合物を有する未変性のPVAの調製物が成功裡に用いられた。
【0053】
本明細書に記載する放射線不透過性ポリマーは、一般に埋め込み型医療デバイスの調製に有用であり、本明細書に記載するポリマーを含むそのようなデバイスは本開示のさらなる態様を提供する。デバイスとしては、限定されるものではないが、ミクロスフェア、液体塞栓、基準マーカー、組織間隔保持材料、注入可能な充填剤(bulking agent)、シーラント、デポー剤が挙げられ、これらにおいてポリマーは活性薬剤を付加的に含んでおり、これらから活性薬剤が周囲組織中、創傷被覆材中、及び医療デバイスのコーティング中に溶出して、例えば、そのような周囲組織、創傷被覆材、及びコーティングをX線下で可視化する。
【0054】
本明細書に記載するポリマーは様々な医薬活性物質(pharmaceutical actives)の送達に用いられてもよい。本明細書に記載するようなポリマー及び医薬活性物質を含む組成物は、従って本開示のさらなる態様である。
【0055】
そのような医薬活性物質は局所送達用であるため、それらの医薬活性物質は典型的にはポリマーから水溶液中に自由に溶出することができる。医薬活性物質は、ポリマーの荷電成分との結合により、静電相互作用によってポリマーに結合され得る。そのような医薬活性物質の限定されない例としては、カンプトテシン類(イリノテカン及びトポテカンなど)及びアントラサイクリン類(ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン及びエピルビシンなど)、抗血管新生剤(血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤など、例えば、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、カネルチニブ、ドビチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、マスチニブ(masutinib)、ムビチニブ(mubitinib)、パゾパニブ、パゾパニブセマキサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、タンデュチニブ、バンデタニブ、バタラニブ及びビスモデギブなど)、微小管集合阻害剤(microtubule assembly inhibitor)(ビンブラスチン、ビノレルビン及びビンクリスチンなど)、アロマターゼ阻害剤(アナストロゾール(anastrazole)など)、プラチナ薬剤(シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン及びミリプラチンなど)及びヌクレオシド類似体(5-FU、シタラビン、フルダラビン及びゲムシタビンなど)が挙げられる。その他の有益な薬剤としては、パクリタキセル、ドセタキセル、マイトマイシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ピンヤンマイシン、アビラテロン、アミホスチン、ブセレリン、デガレリクス、ホリン酸、ゴセレリン、ランレオチド、レナリドマイド、レトロゾール、リュープロレリン、オクトレオチド、タモキシフェン、トリプトレリン、ベンダムスチン、クロラムブシル、ダカルバジン、メルファラン、プロカルバジン、テモゾロミド、ラパマイシン(及びゾタロリムス、エベロリムス、ウミロリムス及びシロリムスなどの類似体)、メトトレキサート、ペメトレキセド及びラルチトレキセドが挙げられる。
【0056】
本開示のさらなる態様は、本明細書に記載するようなポリマーを、そのようなポリマーを必要とする対象の血管に送達して、例えば塞栓を形成することを含む医学的処置の方法を提供する。ポリマーは、例えばミクロスフェア又は他の微粒子の形態であってもよいし、又は本明細書に記載されるようなポリマーを含む液体塞栓であってもよい。ミクロスフェアを製造する方法は、例えば、国際公開第2004/071495号及び国際公開第2015/033092号に提供されている。
【0057】
ポリマーが液体塞栓の形態にある場合、ポリマーは、血流中に放散して塞栓を提供する溶媒、典型的には上述したような有機溶媒を含む組成物の形態で送達され得る。
さらなる実施形態において、本開示はまた、医学的処置の方法で使用するための、本明細書に記載するような医薬活性成分を提供し、そのような処置は本明細書に記載するような医薬活性物質を含む塞栓組成物の形態で医薬活性物質を患者に送達することを含み、塞栓組成物から処置中に医薬活性物質が溶出される。組成物は、例えば、医薬活性物質を含むミクロスフェア、又は場合によっては医薬活性物質を含む液体塞栓を含み得る。
【0058】
本明細書に記載されるミクロスフェア及び液体塞栓は、動静脈奇形、消化管出血、動脈瘤の充填、固形腫瘍、特に、肝臓、前立腺、腎臓、脳、大腸、骨、及び肺の腫瘍などの血管過多腫瘍の治療を含む様々な症状を治療するために使用され得る。前立腺肥大又は子宮筋腫などの良性過形成の症状にも同様である。該アプローチはまた、肥満及び関節痛の治療にも用いることができる。
【0059】
一般的な合成アプローチを以下に記載する。
ペンダント基がエステル結合を介して結合される放射線不透過性ポリマーは、PVAポリマーを式5a、式5b、及び式5cの化合物と反応させることによって調製することができ、
【0060】
【化10】
式中、Qは、カルボン酸、酸ハロゲン化物(-COCl又は-COBrなど)、又は活性カルボン酸である。
【0061】
Qがカルボン酸である場合、反応は、典型的には、適切な極性溶媒(例えばDMSO、DMF、NMP、等)中で酸性条件(例えば、硫酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタン硫酸、酢酸中の臭化水素酸、酢酸及びメタンスルホン酸、等)下で行われる。
【0062】
Qが酸ハロゲン化物である場合、反応は、典型的には、適切な極性溶媒(例えばDMSO、DMF、NMP、等)中で穏やかな塩基条件下、例えば穏やかな塩基(例えばピリジン、トリメチルアミン、ルチジン、コリジン、イミダゾール、等)の存在下で行われる。
【0063】
Qが活性カルボン酸である場合、カルボジイミド及びカルボジイダゾール(carbodiidazoles)などの活性化剤、例えばDCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)、EDCI(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド)及びHOBt(ヒドロキシベンゾトラゾール(hydroxybenzotrazole))が、とりわけ、DMSO、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、及びアセトニトリルなどの極性非プロトン性溶媒中で使用され得る。反応は、典型的には、触媒量の塩基の存在下及び無水条件下で行われて、活性化を達成する。塩基は典型的には中強度(例えば共役酸のpKaが約10~13)であり、適当な塩基としては、様々なピリジン類、アミン、窒素複素環、トリエチルアミン類、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、DMAPなどが挙げられる。
【0064】
エステル結合を介したヨウ素化フェニル基のポリヒドロキシル化ポリマーへの結合は、例えば、国際公開第2011/110589号、国際公開第2014/152488号、及びMawadら(2009年)Biomaterials、第30巻、第5667~5674頁において検討され、例示されている。
【0065】
エーテル結合を形成するために、PVAポリマーを例えば式VIの化合物と反応させることができ、式中、Qは、フッ化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物などのハロゲン化物、メチルスルホナート、メチルトルエンスルホナート、及びトリフルオロメタンスルホナートから選択される基である。Qは例えば臭素であってもよい。
【0066】
エーテル結合を介したヨウ素化フェニル基のポリヒドロキシル化ポリマーへの結合は、国際公開第2011/110589号で検討されている。
1,3ジオキサンを介したペンダント基の結合は、ポリヒドロキシル化ポリマーを式VIの化合物と反応させることによって調製することができ、式中、Qは、有益には酸性条件下で、1,3-ジオール基と環状アセタールを形成することができる基から選択される基である。この場合、Qは、有益にはアルデヒド、アセタール及びヘミアセタールからなる群から選択される。このようにヨウ素化基をPVAに結合することは、国際公開第2015/033092号に記載されている。
【0067】
式5aの基及び式5b又は式5cの第2の基を結合するために任意の結合アプローチの組み合わせが用いられてもよい、つまり、Q基はそれぞれの場合において独立して選択され得るが、特に有益な実施形態では、反応は、各ペンダント基が同一の結合基によってPVA骨格に結合されるように、式5a、及び式5b又は式5cの化合物に対して行われる。式5の各化合物は、同一又は異なるQ基を有し得るが、Q基は反応を最適化するために変更されてもよい。式5の各化合物は、同一のQ基を有してもよい。式5aの化合物及び式5b又は式5cの化合物は、方法を単純化するために、同時に結合されることが好都合である。
【0068】
特に有益な実施形態では、ポリマーは、PVAを含むポリマーを、式5aの化合物と、
【0069】
【化11】
式5b又は式5cの化合物と反応させることにより合成され、
【0070】
【化12】
式中、それぞれの場合において独立して、Qは、1,3ジオール基との反応により1,3ジオキサン基を形成することができる基から選択され、
PYRはピリジル基であり、
Xは本明細書の他の箇所に記載した通りである。
【0071】
この場合、Qは、アルデヒド基、アセタール基、及びヘミアセタール基からなる群から有益に選択され、特に-CHO、CHOR11OR12-CHOR13OHから選択される基から有益に選択され、式中、R11、R12及びR13は、それぞれの場合において独立して、C1~4アルキルから選択され、有益にはメチル又はエチルから選択される。
【0072】
反応は、有益には、式5aの化合物を、化合物5b又は5cのいずれかと同時に、ポリマーと反応させるように行なわれる。反応は、酸性条件下で有益に行なわれる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1A】形成直後のPBS中における液体塞栓組成物のサンプルを示す図。
【
図1B】形成直後の第2のサンプル(PVA
(146~186kDa)-TIBA
(0.4当量)-D-FSAS
(0.2当量))を示す図。
【
図1C】DMSOの放散後の液体塞栓物質の成熟した栓子を示す図。
【
図2】(A)以下の組成:20% PVA(13kDa)-TIBA(0.4当量)-FSAS(0.01当量)を有する液体塞栓組成物のサンプルのX線陰影図。(B)以下の組成:20% PVA(13kDa)-TIBA(0.4当量)-FSAS(0.01当量)を有する液体塞栓組成物のサンプルの再構成及びセグメント化された2D断面図。
【発明を実施するための形態】
【0074】
次に本開示について、図を参照して以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。これらは例示のみを目的として提供され、これらに照らして特許請求の範囲内にある他の実施例が当業者には思い浮かぶであろう。更に、本明細書に引用される参考文献はすべて、参照によって余すところなく援用される。それらの参考文献と本出願との間の任意の対立は、本出願によって支配されるものとする。
【実施例】
【0075】
実施例1: 2,3,5-トリヨードベンジルアルコールからの2,3,5-トリヨードベンズアルデヒドの調製
【0076】
【化13】
2,3,5-トリヨードベンズアルデヒドは、国際公開第2015/033092号の実施例1に従って調製され得る。
【0077】
実施例2: 2-(2,3,5-トリヨードフェノキシ)アセトアルデヒドの調製
【0078】
【化14】
(a)2,4,6-トリヨードフェノールからの2-(2,4,6-トリヨードフェノキシ)エタノールの合成
この化合物は、国際公開第2015/033092号の実施例2(a)に従って調製され得る。
【0079】
(b)2-(2,4,6-トリヨードフェノキシ)エタノールの2-(2,3,5-トリヨードフェノキシ)アセトアルデヒドへの酸化
この化合物は、国際公開第2015/033092号の実施例2(b)に従って調製され得る。
【0080】
実施例3: 2,3,5-トリヨードベンジルアルコール及び2-ブロモ-1,1-ジメトキシ-エタンからの1-(2,2-ジメトキシエトキシメチル)-2,3,5-トリヨード-ベンゼンの調製(放射線不透過性アセタール/保護されたアルデヒドの実施例)
【0081】
【化15】
この化合物は、国際公開第2015/033092の実施例3に従って調製され得る。
【0082】
実施例4: 3,5-ジヨード-2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)ベンズアルデヒドの合成
【0083】
【化16】
還流冷却器及び懸架式マグネチックスターラーを取り付けたHEL PolyBlock8並列合成125mL反応器に、3,5-ジヨードサリチルアルデヒド(13.9011g、37.72mmol、1.0当量)及びTBAI(2.7481mg、0.802mmol、0.2当量)を加えた。これに水を添加し、1MのNaOHでpHを9.5に調整した(合計水溶液体積 97mL)。反応器を500rpmに設定して完全に溶解するまで攪拌し、明るい黄色の溶液を得て、1-ブロモ-2-(2-メトキシエトキシ)エタン(5.00mL、37.17mmol、1.0当量)を加えた。反応器ゾーンを120℃に加熱するように設定した。
【0084】
反応を薄層クロマトグラフィー(TLC)(i-hex中30%EA)によって監視し、2時間後、追加の臭化物を加えた(2.50mL、18.59mmol、0.5当量)。さらに0.5時間後、臭化物の消費のため、pHを9.5に再調整した。さらに2時間後、追加の臭化物(1.25mL、9.29mmol、0.25当量)を加え、反応器温度を50℃に低下させて、一晩攪拌したままにした。
【0085】
19時間後、得られた懸濁液を再加熱して1時間還流し、室温に冷却し、酢酸エチル(400mL)中で分液漏斗に移した。有機物を飽和重炭酸ナトリウムで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、トルエンから熱ろ過し、トルエン/イソヘキサンから再結晶して、ろ過及び高真空乾燥後に、所望の生成物を黄色粉末として得た:
(15.2909g、収率86.4%);δH(CDCl3、500.1MHz)/ppm;10.31(1H、s)、8.31(1H、d、2.2Hz)、8.09(1H、d、2.2Hz)、4.26(2H、app.t、4.5Hz)、3.89(2H、app. t、4.5Hz)、3.67(2H、app. t、4.6Hz)、3.55(2H、app.t、4.6Hz)、3.38(3H、s);δC NMR(CDCl3、125.8MHz)/ppm;188.71(CH)、161.55(q)、152.43(CH)、137.57(CH)、131.75(q)、94.07(q)、89.19(q)、75、56(CH2)、71.90(CH2)、70.79(CH2)、70.06(CH2)、59.13(CH3)。
【0086】
実施例5: 3-ヒドロキシ-2,4,6-トリヨードベンズアルデヒドの合成
【0087】
【化17】
大きな楕円形のスターラーバーを有した2Lの三つ口丸底フラスコに、3-ヒドロキシベンズアルデヒド(10.007g、81.89mmol)、ヨウ化ナトリウム(0.614g、4.09mmol、0.05当量)、及び炭酸ナトリウム(93.028g、877.44mmol、10.7当量)を加えて、合計750mLの脱イオン水で濯いだ。ベンズアルデヒドが溶解して明るい黄色の攪拌溶液を得たら、ヨウ素ボール(70.008g、275.80mmol、3.37当量)を30分かけて2回に分けて加え、毎回225mLの水で濯いだ。反応はTLC(i-hex中60%DCM)で追跡され、3時間かけてヨウ素はほとんど完全に溶解して、暗い黄色/オレンジ色の沈澱物を生じる。固体をブフナーろ過によって単離し、i-ヘキサンで洗浄して任意の残留ヨウ素を除去した。単離した固体を温水(2L、45℃)に再溶解して透明な茶色の溶液を得て、この溶液に100mLの飽和チオ硫酸ナトリウム溶液を加えて任意の残存するヨウ素を低減した。溶液のpHを、1MのHClを使用して(CO
2が発生するため注意して)、10.2から3.26に慎重に低下させた。固体をろ過によって単離し、水で洗浄し(500mL×2回)、30℃の高真空オーブン内で乾燥させて、所望の化合物を黄色固体として得た:(37.002g、収率90.3%、HPLC純度97.2%);δ
H(CDCl
3、500.1MHz)/ppm;9.65(1H、s)、8.35(1H、s)、6.42(1H、s);δ
C NMR(CDCl
3、125.8MHz)/ppm;194.90(CH)、155.12(q)、149.77(CH)、135.69(q)、88.78(q)、87.66(q)、85.70(q)。
【0088】
実施例6: 2,4,6-トリヨード-3-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)ベンズアルデヒドの合成
【0089】
【化18】
撹拌棒を含み、還流冷却器を取り付けた、窒素雰囲気下にある火炎乾燥した250mL三つ口丸底フラスコに、3-ヒドロキシ-2,4,6-トリヨードベンズアルデヒド(15.627g、31.3mmol、1.0当量)、ヨウ化ナトリウム(469mg、3.13mmol、0.1当量)、無水炭酸ナトリウム(3.981g、37.6mmol、1.2当量)、及び無水ジメチルホルムアミド(DMF)(160mL)を加えた。
【0090】
アルデヒドが完全に溶解するまで懸濁液を攪拌し、次に1-ブロモ-2-(2-メトキシエトキシ)エタン(6.87g、37.5mmol、1.2当量)をシリンジによって加え、反応物を加熱還流した。2時間後、TLC分析(i-hex中10%EA)は出発物質が消費されたことを示し、反応物を室温に冷却し、250mLの丸底フラスコに移して、高真空下で蒸発乾固させた。得られた懸濁液を500mLの酢酸エチルで希釈し、1MのNaOHで100mL×3回、飽和塩水で100mL×2回洗浄し、活性炭で脱色し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた溶液を濃縮乾固して、シリカカラムクロマトグラフィー(i-ヘキサン中2~20%酢酸エチル)によって精製し、高真空下で乾燥させて、所望の化合物を黄色粉末として得た:
(7.556g、40.1%);δH(CDCl3、500.1MHz)/ppm;9.65(1H、s)、8.44(1H、s)、4.20(2H、t、6.4Hz)、4.01(2H、t、6.4Hz)、3.79(2H、app.t、5.8Hz)、3.60(2H、app.t、5.8H)、3.41(3H、s);δC NMR(CDCl3、125.8MHz)/ppm;194.97(CH)、159.10(q)、150.83(CH)、138.27(q)、97.06(q)、95.70(q)、90.40(q)、72.47(CH2)、72.04(CH2)、70.89(CH2)、68.89(CH2)、59.19(CH3)。
【0091】
実施例7: 2,4,6-トリヨード-3-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)ベンズアルデヒドの合成。
【0092】
【化19】
窒素ブランケット下でスターラーを含む火炎乾燥した100mL三つ口丸底フラスコに、トリフェニルホスフィン(1.7216g、6.502mmol、1.3当量)及び無水テトラヒドロフラン(THF)(35mL)を加えた。撹拌を開始し、トリフェニルホスフィン(PPh3)が完全に溶解した後、反応器を氷浴中で約0℃に冷却した。無色の溶液にアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)(1.28mL、6.502mmol、1.3当量)をシリンジで滴加し、持続的な黄色の溶液を生じた。5分間撹拌した後、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(1.04mL、6.502mmol、1.3当量)をシリンジで滴加した。さらに5分間撹拌した後、3-ヒドロキシ-2,4,6-トリヨードベンズアルデヒド(2.5077g、5.002mmol、1.0当量)を1回で加えると、直ちに変色を生じた。反応をTLC(トルエン中5%Et
2O)によって監視し、一晩攪拌したままにした。溶液をエーテルで希釈して、トリフェニルホスフィンオキシドを沈殿させ、次いで濃縮乾固させた。得られた濃厚な油をカラムクロマトグラフィー(トルエン中2~10%Et
2O)によって精製し、濃縮及び高真空乾燥後、所望の生成物を黄色粉末として得た:(3.2077g、収率99%、HPLC純度94.4%);δ
H(DMSO-D
6、500.1MHz)/ppm;9.58(1H、s)、8.47(1H、s)、4.08(2H、t、4.9Hz)、3.57~3.53(4H、m)、3.44(2H、app.t、4.8Hz)、3.24(3H、s)。
【0093】
実施例8: 3,4,5-トリヨードサリチルアルデヒドの合成
【0094】
【化20】
大きな楕円形のスターラーを含む2Lの三つ口丸底フラスコに、4-ヨード-サリチルアルデヒド(salicilaldehyde)(25.01g、100.86mmol、1.0当量)及び酢酸(300mL)を加えた。5分間撹拌して固体を溶解させた後、予熱した液体一塩化ヨウ素(39.11g、2.4当量)をAcOH(100mL)で希釈し、丸底フラスコ上の滴下漏斗に移した。この溶液を10分間かけて加えた。
【0095】
次に、1Lの滴下漏斗、温度計、及び冷却器を取り付けた大きなシリコーンオイルバッチに反応器を配置し、80℃に加熱するように設定した。加熱中、溶液に水(700mL)をゆっくり加えると、黄色/オレンジ色の沈殿を生じた。80℃で20分後、加熱をオフにした。さらに30分後、加熱浴を除去し、黒色溶液/黄色懸濁液を室温に冷却して、65時間撹拌した。反応物をTLC(iHex中20%EA)によって分析した。固体をブフナーろ過によって単離し、水(500mL×2回)で洗浄した。残留ヨウ素結晶を除去するために、i-ヘキサン上澄み液がもはや紫色でなくなるまで、固体をi-ヘキサン(200mL)で繰り返し再スラリー化した。単離した固体を高真空オーブン内で一晩乾燥させて、所望の生成物を黄色の結晶性固体として得た(40.84g、収率81%、HPLC分析による純度93.2%)。
【0096】
生成物は、さらにアセトン:水(9:1)からさらに高純度に再結晶させることができた:δH(CDCl3、500.1MHz)/ppm;12.15(1H、s)、9.67(1H、s)、8.09(1H、s);δC NMR(CDCl3、125.8MHz)/ppm;194.53(CH)、159.58(C)、142.24(CH)、133.39(C)、120.87(C)、101.68(C)、94.02(C)。
【0097】
実施例9: 3,4,5-トリヨード-2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)ベンズアルデヒドの合成
【0098】
【化21】
(5gスケール):窒素陽圧下で小さな八角形のスターラーバーを含む火炎乾燥した250mL三つ口丸底フラスコに、トリフェニルホスフィン(2.76g、10.5mmol、1.05当量)及び乾燥THF(70mL)をシリンジで加えた。丸底フラスコを、低温温度計を取り付けたデュワーバスに入れて、エタノール/液体窒素浴で-68℃に冷却した。アゾジカルボン酸ジエチル(1.65mL、10.5mmol、1.05当量)をシリンジで1分かけて滴加し、5分間撹拌して、黄色の懸濁液を得た。次に、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(1.77mL、15mmol、1.5当量)を滴加し、5分間撹拌した。これに、固体3,4,5-トリヨードサリチルアルデヒド(5.00g、10.0mmol、1.0当量)を1回で加えた。最初の暗いオレンジ色/赤色の懸濁液が明るくなって淡黄色の溶液が得られ、これを2時間撹拌し、TLC分析(トルエン中20%エーテル)によって監視し、室温まで一晩加温した。TLCは、明瞭な反応プロフィールでアルデヒド出発物質の完全な消費を示した。得られた溶液を500mLの丸底フラスコに移して、エーテル(200mL)で希釈し、冷凍庫で冷却した。得られた懸濁液を短いシリカプラグによってろ過してトリフェニルホスフィンオキシドを除去し、さらにエーテル(200mL)でフラッシュした。得られた溶液を濃縮乾固し、トルエン中エーテル(2~20%)で溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製し、生成物画分を濃縮乾固し、高真空下で乾燥させて、所望の生成物を黄色のアモルファス固体として得た(4.91g、収率82%、HPLC純度96%);δ
H(CDCl
3、500.1MHz)/ppm;10.26(1H、s)、8.34(1H、s)、4.22(2H、t、4.5Hz)、3.90(2H、t、4.5Hz)、3.90(2H、t、4.6Hz)、3.55(2H、t、4.6Hz)、3.38(3H、s);δ
C NMR(CDCl
3、125.8MHz)/ppm。
【0099】
実施例10: 5-((2,2-ジメトキシエチル)アミノ)-2,4,6-トリヨードイソフタル酸の合成。
【0100】
【化22】
窒素下にある火炎乾燥した500mLの丸底フラスコに、固体5-アミノ-2,4,6-トリヨードイソフタル酸(46.95g、84.03mmol、1.0当量)と、重炭酸ナトリウム(28.21g、335.8mmol、4.0当量)と、カニューレを介してDMF(約400mL)とを加えた。得られた茶色の溶液に、2-ブロモ-1,1-ジメトキシエタン(13mL、110.0mmol、1.3当量)を滴加し、得られた溶液を18時間加熱還流した。室温に冷却した後、大部分のDMFを真空(9ミリバール、55℃)下で回転蒸発によって除去し、得られたオレンジ色の固体を酢酸エチル(1L)で抽出した。
【0101】
この懸濁液を飽和塩化リチウム溶液(400mL×7回)で洗浄して残留したDMF及び塩を除去し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過して、蒸発乾固させた。得られた固体を酢酸エチルから再結晶し、i-ヘキサンで洗浄し、ろ過した。このプロセスを合計3回繰り返し、得られたオレンジ色の固体を高真空下で乾燥させて、表題化合物を得た(33.04g、61%、HPLC純度91.7%)。
【0102】
この生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM中MeOH、0~15%)によってさらに精製することができた(4.91g、収率82%、HPLC純度96%);δH(CDCl3、500.1MHz)/ppm;8.01(1H、s)、4.86(2H、br s)、4.76(1H、t、5.5Hz)、4.37(2H、d、5.5Hz)、3.44(6H、s);δC NMR(CDCl3、125.8MHz)/ppm。
【0103】
実施例11: カリウム=3-(3-ホルミル-2,4,6-トリヨードフェノキシ)プロパン-1-スルホナート及び3-(1-ホルミル-3,4,5-トリヨードフェノキシ)プロパン-1-スルホナート、ナトリウム塩の合成
【0104】
【化23】
150mLの三つ口丸底部フラスコ中で3-ヒドロキシ-2,4,6-トリヨードベンズアルデヒド(10g、20mmоl、1.0当量)をマグネチックスターラーによって無水THF(50mL)に溶解した。カリウムt-ブトキシド(2.47g、22mmоl、1.1当量)を20mLのTHFと混合し、懸濁液を室温、窒素雰囲気下で上記フラスコへゆっくり加え、続いて温度を40℃に上昇させ、生成物を完全に溶解させた。次にスルトン(15g、120mmоl、6.0当量)を15mLのTHFに溶解し、その混合物を反応フラスコにゆっくり加えた。ほぼ即座に沈殿が現れた。40℃で3時間反応させた後、反応混合物を500mLの酢酸エチル中に注いで、固体の未精製生成物を得た。ろ過した固体を100mLの酢酸エチルで洗浄し、エタノールから再結晶させた。24時間にわたる真空乾燥後、所望の生成物を単離した(10.7g、収率80%);δ
H(D
2O、500.1MHz)/ppm;2.24~2.34(m、2H)、3.12~3.25(t、2H)、3.88~4.02(t、2H)、8.18~8.25(s、1H)、9.42~9.50(s、1H)δ
C NMR(CDCl
3、125.8 MHz)/ppm;元素分析結果:C18.56、H 2.22、S 5.66、I 52.31、K 6.27。計算値:C 18.20、H 1.22、S 4.85、I 57.68、K 5.92。
【0105】
3-(1-ホルミル-3,4,5-トリヨードフェノキシ)プロパン-1-スルホナート、ナトリウム塩は、3,4,5-トリヨードサリチルアルデヒド(実施例8参照)から類似して合成した。
【0106】
実施例12: 一般的な結合条件。
窒素ブランケット下にある予め乾燥させた反応器にPVA(典型的には5~10g)及び無水溶媒(典型的にはDMSO又はNMP、PVA質量に対して(w.r.t.)40容量(vol))、並びに触媒(典型的にはPVA質量に対して2.2容量)を加えた。撹拌した懸濁液を高温(約90℃)に加熱してPVAを溶解する。均一溶液が得られたら、混合物を望ましい反応温度(典型的には50~80℃)に冷却し、第1及び第2のペンダント基に望ましいアルデヒド基質(典型的にはPVAジオール官能基に対して0.01~0.6当量)を加える。PVAの1,3-ジオール基に対する第1及び第2のペンダント基アルデヒド基質の実際の比率、及び第2のペンダント基に対する第1のペンダント基の比率は、必要とされるポリマーの疎水性に対する親水性の調整に依存するが、典型的には第1のペンダント基は第2のペンダント基より高い比率になる。
【0107】
次に反応物をN2ブランケット下で撹拌し、反応変換を基質の消費についてHPLCによって監視する。所定の時間(典型的には基質の消費が終了したとき)に、逆溶媒(典型的にはアセトン、DCM、MeCN、又はTBME、約40容量)を滴下漏斗から滴加する。
【0108】
フィルター膜を通した吸引によって上澄み液を除去し、さらなる反応溶媒(典型的には40容量)を充填して、固体が完全に溶解するまで撹拌する。この溶媒洗浄段階を最高3回まで繰り返す。次に、固体を反応溶媒に再溶解し、水(典型的には最高100容量)をゆっくり加えることによって沈殿させる。
【0109】
得られた凝集した固体を上澄みから取り出し、ブレンダー内で水中に均質化する。懸濁液をろ過して、水(典型的には100容量)に再懸濁し、最高30分間スラリー化し、ろ過する。水によるスラリー化を中性のpHが得られるまで繰り返し、次に湿った固体をアセトン中でスラリー化し(100容量、30分間撹拌、2回反復)、ろ過して、30℃の高真空オーブン内で最高24時間乾燥させる。
【0110】
実施例13: 同一のPVA骨格上に第1のヨウ素化ペンダント基及び第2の非ヨウ素化ペンダント基を有するPVAポリマーの調製。
以下のポリマーを調製した:
第1のペンダント基:
【0111】
【0112】
【表2】
乾燥した600mLのHEL社(HEL Ltd) PolyBLOCK(登録商標)容器(WD6 1GW、ボアハムウッド、英国)を窒素でパージして、窒素ブランケットを与えた。乾燥DMSO(120mL、40.2容量)を500rpmで攪拌しながら加え、続いてPVA(146~189kDa、99%加水分解、5.0g)を加えた。固体がすべて完全に溶解するまで、懸濁液を50℃(内部プローブ)で加熱した。次に1,3,5-トリヨードベンズアルデヒド(TIBA)(10.4g、PVA-1,3-ジオール単位に対して0.4当量)を加え、続いて下記のいずれかを0.05当量加えた:
(a)2-スルホベンズアルデヒドナトリウム塩(シグマ アルドリッチ UK(Sigma Aldrich UK))(FSAS)、
(b)4-ホルミルベンゼン1,3ジスルホン酸二ナトリウム塩)(シグマ アルドリッチ UK)(D-FSAS)、
(c)4-ホルミル安息香酸(シグマ アルドリッチ UK)(FBAS)、又は
(d)4-ピリジンカルボキシアルデヒド(シグマ アルドリッチ UK)(Pyr)。
【0113】
完全に溶解させた後、メタンスルホン酸(11mL、3.37容量)を約20mLの冷DMSOで希釈して加え、50℃で一晩撹拌し続けた。淡黄色の溶液を室温に冷却し、大きなスターラーバーを入れた1Lのガラスブレーカーに移した。次にアセトニトリル(250mL)を滴下漏斗から加えて、生成物を沈殿させた。
【0114】
黄色の上澄みを減圧によって除去し、得られた白色のポリマーを最低量のDMSO(約100mL)に50℃でゆっくり再溶解し、アセトニトリルで再沈殿させた。過剰な溶媒は減圧によって除去した。白色のポリマーをNaOHの0.1N溶液(100mL)に20分間懸濁し、次いで優しく混ぜて均質な懸濁液を得た。この懸濁液を、過剰な溶媒を除去した後、脱イオン水(100mL×3)でpH=7まで注意深く中和した。減圧によって過剰な水を除去した後、得られた白色のポリマーをアセトン(100mL×3)中に懸濁させ、ブフナー漏斗を用いてろ過することによって固体を単離した。次に、この固体を28~32℃の真空オーブン内で一晩乾燥させて、所望の生成物を得た(白色固体 11~13.0g、収率 約75~80%w/w)。表2は、これらのポリマーの選択物の元素分析を示す。
【0115】
各ポリマーのDMSO中20%(w/w)溶液を調製した。それらの溶液をPBS中に注入したところ、DMSOが水中に放散されるにつれて、急速にゲル化し、固化した。一例を
図1A~
図1Cに示す。
【0116】
表2
【0117】
【表3】
実施例14: 同一のPVA骨格上に第1のヨウ素化ペンダント基及び第2のヨウ素化ペンダント基を有するPVAポリマーの調製。
【0118】
以下のポリマーを調製した:
第1のペンダント基:
【0119】
【0120】
【表4】
脱気し、窒素でパージして窒素ブランケットを与えた、乾燥した50mLのHEL社 PolyBLOCK(登録商標)容器に、乾燥DMSO(20mL)を加え、500rpmで攪拌した。次に、PVA(13~23kDa、99%加水分解、1.0g)を加えて、65℃(内部プローブ)に加熱し、すべての固体が完全に溶解するまで500rpmで攪拌した。この後、TIBA(2.2g、PVA-1,3-ジオール単位に対して0.4当量)、続いて、
a.3-(3-ホルミル-2,4,6-トリヨードフェノキシ)プロパン-1-スルホナート、ナトリウム塩;又は
b.3-(1-ホルミル-3,4,5-トリヨードフェノキシ)プロパン-1-スルホナート、ナトリウム塩
のいずれかを(PVA-1,3-ジオール単位に対して0.1当量)で加えた。完全に溶解させた後、メタンスルホン酸(2.2mL)を滴加し、反応物を65℃で一晩撹拌した。オレンジ色の溶液を室温に冷却し、アセトン200mLを入れた500mLのガラスブレーカーに滴下して注いだ。白色の固体を回収し、DMSO50mLに再溶解し、アセトン500mL中で再び沈殿させた。固体をブフナー漏斗上で集めて、過剰な酸を0.1NのNaOH溶液(約100mL)で中和し、中性のpHが得られるまで脱イオン水で洗浄した。次に、この固体を28~32℃の高真空オーブン内で一晩乾燥させて、所望の生成物をオフホワイトの固体として得た(3.0g、収率 約70%w/w)。各ポリマーのDMSO中20%(w/w)溶液を調製した。
【0121】
実施例15: 液体塞栓プロトタイプの一般的な調製
サンプルプロトタイプは、以下の方法で調製する:上記の実施例に従って調製したヨウ素化PVAを10mLバイアルに量り取り、総量が10mL未満で、全体濃度が4~20重量%となるように、望ましい溶媒(典型的にはDMSO又はNMP)をバイアルに加える。次に、濃厚な懸濁液の入ったバイアルを密封し、超音波処理装置に入れて、完全に溶解するまで(典型的には約4時間)超音波処理する。
【0122】
実施例16: 流動条件下における液体塞栓の沈殿
透明で取り外し可能なチューブを流動系に取り付け、この流動系を通ってPBS(バイオサイエンシス(Biosciences)、英国)が蠕動ポンプを用いて送られ、血流状態を模倣した。2.4Frカテーテルを用いて、液体塞栓調製物を取り外し可能なチューブ内に送達した。液体塞栓は、カテーテルを出てPBSと接触すると、取り外し可能なチューブの内部で沈殿又はゲル化する。次に沈殿又はゲル化したポリマーの長さ、及び他の特性についての観測を記録した。流量及び速度低下についても記録する。「前進の最長の長さ」を記録する。塞栓の逆流が起こった場合には、その長さも「逆流の最長の長さ」(cm)として記録する。
【0123】
表3
【0124】
【表5】
*溶岩様の流れでは、塞栓組成物は、最初に表面上に僅かな外皮を形成し、これがストリング化を抑制する。外皮は塞栓物質が前進すると壊れて、前進している部分などに再形成する。
【0125】
実施例17: 沈殿した液体塞栓サンプルのX線分析。
材料の放射線不透過性測定値を得るために、沈殿した配合物の1cm切片を切り取って、ポリプロピレンキャップ付きチューブ(Nunc cryotube バイアル、シグマ-アルドリッチ製品コードV7634、48mm×12.5mm)に入れた温かい(55℃)1%アガロース中に埋め込み、以下の試験計画書に従ってマイクロ-CTを使用してスキャンした。
【0126】
サンプルは、英国バークシャーのレディング所在のRSSLラボラトリーズ(RSSL Laboratories)でタングステンアノードを装備したBruker Skyscan 1172 マイクロCTスキャナーを使用し、マイクロコンピュータ断層撮影法(マイクロ-CT)を用いて、放射線不透過性について試験した。各サンプルは、64kVの電圧及び155μAの電流で動作するタングステンアノードを有した同一の機器構成を用いて分析した。アルミニウムフィルター(500μm)を使用した。2つの部分からなる分析法を用いる。最初に、栓子及び任意の空隙を含むようにチューブ内径をカバーする(coving)補間された関心領域が生成され、次に画像はセグメント化されて、空隙構造からポリマーを分離し、ポリマー放射線不透過度のみを報告する。次に、同日に取得した水の基準を用いてHUでの放射線不透過度を計算した。表4は取得パラメータを示す。
【0127】
表4
【0128】
【表6】
少量の精製MilliQ(登録商標)水を各サンプルチューブへ注意深く静かに注いだ。次に、単回スキャンを用いたX線マイクロコンピュータ断層撮影法によって、水対照及びサンプルを含むように、各サンプルを分析した(1つのそのようなスキャンを
図2Aに示す)。次に、NReconを使用してサンプルを再構成し、精製水対照の関心体積(VOI)に対してキャリブレーションを行った(
図2B参照)。キャリブレーション後に空気及び水の関心領域(ROI)を分析して、ハウンズフィールドキャリブレーションを検証した。
【0129】
放射線不透過度はハウンズフィールド単位で報告された。NReconにおいてすべてのサンプルのダイナミックレンジに使用される値(閾値化):-0.005、0.13(最小及び最大減衰係数)。
【0130】
以下の組成を有するポリマー:PVA(13kDa)-TIBA(0.4当量)-FSAS(0.01当量)をDMSO(20%w/w)中に溶解し、マイクロCTによる試験のために0.58mmポリエチレンチューブの内部に密封した(チューブはアガロースゲル中に埋め込んだ)。測定された放射線不透過度は6752HUであった。算出した溶液のヨウ素含有量は約140mg I/mLである。液体塞栓組成物のサンプルの放射線不透過度の数値を表5に示す。
【0131】
実施例18: 粘度測定
上記の実施例に従って調製した液体塞栓組成物の粘度は、60mmコーン形状を有したアントンパール(Anton-Paar) MCR 302レオメーターを使用して測定した。温度掃引は20~40℃の範囲であり、5.0s-1の一定せん断速度を適用した。24℃でのサンプルの結果を下記の表5に示す。
【0132】
実施例19: 水分量
ポリマーの水分量は、ポリマーのDMSO溶液1mLをPBS中に滴下して、直径約3~5mmの大きさの粗い球体を形成することによって測定した。500mLの新鮮なPBS中で24時間平衡化した後、表面の水を除去するために球体をティッシュで拭いて乾かし、重量を測定した。次に球体を50℃の真空オーブン内で一晩乾燥させた。水分量は、水の重量百分率として表される。表5を参照されたい。
【0133】
表5
【0134】