(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミンの液状薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/40 20060101AFI20240219BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240219BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240219BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240219BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240219BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240219BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240219BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A61K31/40
A61K47/40
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/02
A61P1/04
A61P31/04
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2022524049
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 KR2020018648
(87)【国際公開番号】W WO2021125874
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0169734
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508131716
【氏名又は名称】デウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEWOONG PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】35-14,Jeyakgongdan 4-gil,Hyangnam-eup,Hwaseong-si,Gyeonggi-do Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヨンジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョンウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム,グァンヨン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヘジョン
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-509320(JP,A)
【文献】特表2019-509308(JP,A)
【文献】特表2017-538716(JP,A)
【文献】Journal of Pharmaceutical Sciences,1996年,Vol.85, No.10,pp.1017-1025
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00
A61P 31/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩;およびシクロデキストリンを含む、液状薬学的組成物において、
前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、前記液状薬学的組成物内に1~20mg/mL含まれ
、
前記液状薬学的組成物のpHは、3.0~7.0である、
液状薬学的組成物。
【化1】
【請求項2】
前記シクロデキストリンは、ベータ-シクロデキストリン、またはガンマ-シクロデキストリンである、
請求項1に記載の液状薬学的組成物。
【請求項3】
前記ベータ-シクロデキストリンは、(2-ヒドロキシプロピル)-ベータ-シクロデキストリン、またはスルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリンである、
請求項2に記載の液状薬学的組成物。
【請求項4】
前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩1重量部対比、前記シクロデキストリンを3.0~25.0重量部含む、
請求項1に記載の液状薬学的組成物。
【請求項5】
前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩1重量部対比、前記シクロデキストリンを4.5~15.0重量部含む、
請求項1に記載の液状薬学的組成物。
【請求項6】
前記液状薬学的組成物は、凍結乾燥補助剤を追加的に含む、
請求項1に記載の液状薬学的組成物。
【請求項7】
前記凍結乾燥補助剤は、D-マンニトール、スクロース、ソルビトール、またはトレハロースである、
請求項6に記載の液状薬学的組成物。
【請求項8】
前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩1重量部対比、前記凍結乾燥補助剤を3.0~25.0重量部含む、
請求項6に記載の液状薬学的組成物。
【請求項9】
前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩1重量部対比、前記凍結乾燥補助剤を4.5~13.0重量部含む、
請求項6に記載の液状薬学的組成物。
【請求項10】
前記凍結乾燥補助剤を、前記シクロデキストリン1重量部対比、0.5~5.0重量部含む、
請求項6に記載の液状薬学的組成物。
【請求項11】
前記凍結乾燥補助剤は、前記シクロデキストリン1重量部対比、0.8~2.3重量部含む、
請求項6に記載の液状薬学的組成物。
【請求項12】
前記液状薬学的組成物は、注射用薬学的組成物である、
請求項1に記載の液状薬学的組成物。
【請求項13】
前記液状薬学的組成物の溶媒は、蒸留水、注射用水、アセテートバッファー、または生理食塩水である、
請求項1に記載の液状薬学的組成物。
【請求項14】
前記液状薬学的組成物のpHは、4.0~6.0である、
請求項1に記載の液状薬学的組成物。
【請求項15】
前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、前記液状薬学的組成物内に5~20mg/mL含まれる、
請求項1に記載の液状薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミン、またはその薬学的に許容可能な塩の液状薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミンに適した液状薬学的組成物に関する。前記物質は、韓国特許登録番号第10-1613245号に記載された物質であって、優れた抗-潰瘍活性(つまり、プロトンポンプ抑制活性など)およびヘリコバクターピロリ(H.pylori)除菌活性およびGPCR抑制作用を有することによって、胃腸管潰瘍、胃炎、逆流性食道炎、またはヘリコバクターピロリによる胃腸管損傷の予防および治療に有用な物質である。
【0003】
前記物質は、非常に低い水溶解度を示す物質で、これを液状薬学的組成物、例えば、注射用薬学的組成物に製造するためには、過剰の可溶化剤および有機溶剤を必要とする。しかし、可溶化剤および有機溶剤を多く含有している薬学的組成物は、活性成分の高容量投与時に過敏症が発生しうる問題点がある。つまり、一般に低い水溶解度を有する薬物において優れた溶解度と安定性を同時に有する液状製剤の開発のためには、薬物のほかに多様な成分の組み合わせが研究されなければならない。
【0004】
一般に、液状薬学的組成物に使用される可溶化剤には、エタノール、ポリソルベートなどがあるが、このような物質は人体に有害な影響を及ぼすことがあり、このため、このような可溶化剤を用いることなく優れた溶解度と安定性を同時に有する液状薬学的組成物の開発が必要である。
【0005】
そこで、本発明者らは、1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミンの液状薬学的組成物であって、従来の難溶性薬物を可溶化させるために過剰に用いられる可溶化剤および有機溶剤による問題点を克服し、液状薬学的組成物の安定性を向上させるために鋭意研究した結果、後述のように、特定の安定化剤と凍結乾燥補助剤を用いて上記を解決できることを確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミン、またはその薬学的に許容可能な塩の液状薬学的組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、下記の化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩;およびシクロデキストリンを含む、液状薬学的組成物を提供する。
【化1】
【0008】
前記化学式1で表される化合物の化学名は、1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミンであって、韓国特許登録番号第10-1613245号に記載された物質である。
【0009】
前記化合物は、本発明による液状薬学的組成物の薬理効果を示す活性成分であって、優れた抗-潰瘍活性(つまり、プロトンポンプ抑制活性など)およびヘリコバクターピロリ(H.pylori)除菌活性およびGPCR抑制作用を有することによって、胃腸管潰瘍、胃炎、逆流性食道炎、またはヘリコバクターピロリによる胃腸管損傷の予防および治療に有用な物質である。また、前記化合物はもちろん、前記化合物の薬学的に許容可能な塩も本発明で使用可能である。
【0010】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物のほかにも、その薬学的に許容可能な塩を使用することができる。塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩のように、当業界にて通常用いられる塩を制限なく使用可能である。本発明の用語「薬学的に許容可能な塩」とは、患者に比較的非毒性で無害な有効作用を有する濃度であって、この塩に起因した副作用が化学式1で表される化合物の有利な効能を低下させない、前記化合物の任意のすべての有機または無機付加塩を意味する。
【0011】
無機酸または有機酸を用いて通常の方法で薬学的に許容可能な塩を得ることができる。例えば、前記化学式1で表される化合物を水混和性有機溶媒、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、またはアセトニトリルに溶解させ、有機酸または無機酸を加えて沈殿した結晶をろ過して製造、乾燥させて薬学的に許容可能な塩を得ることができる。あるいは、酸が付加された反応混合物で溶媒や過剰の酸を減圧して、残渣を乾燥させて製造するか、または他の有機溶媒を加えて析出した塩をろ過して製造することができる。この時、好ましい塩として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはトルエンスルホン酸などから誘導された塩が挙げられる。
【0012】
前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、水溶解度が低くて、液状薬学的組成物、例えば、注射用薬学的組成物に製造するためには、過剰の可溶化剤および有機溶剤を必要とする。しかし、過剰の可溶化剤などは患者への投与時に過敏症を誘発する恐れがある。そこで、本発明では、一般に液状薬学的組成物に使用される可溶化剤を用いない代わりに上述した成分を用いることによって、前記化学式1で表される化合物の優れた溶解度と安定性を同時に有する液状薬学的組成物が可能である。
【0013】
本発明による液状薬学的組成物に使用される成分であるシクロデキストリンは、6~12個のブドウ糖分子がアルファ-1,4-グリコシド結合をした環状のオリゴ糖であって、本発明において安定化剤として使用される。好ましくは、前記シクロデキストリンは、ベータ-シクロデキストリン、またはガンマ-シクロデキストリンであり、より好ましくは、ベータ-シクロデキストリンである。より好ましくは、前記ベータ-シクロデキストリンは、(2-ヒドロキシプロピル)-ベータ-シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリンであり、英語略字としてはそれぞれ「HP-β-CD」および「SBE-β-CD」である。
【0014】
一般に液状薬学的組成物に使用される安定化剤の中で、前記シクロデキストリンが前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の安定化のために適する。後述する実施例のように、前記以外の他の安定化剤は、前記化学式1で表される化合物の安定化に十分でない。
【0015】
好ましくは、前記シクロデキストリンは、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩1重量部対比、3.0~25.0重量部使用する。前記含有量が3.0重量部未満の場合には、前記化学式1で表される化合物の安定化に十分でなくて、液状薬学的組成物の再水和が難しかったり、長期保管時に総柔軟物質が増加する問題がある。また、前記含有量が25.0重量部超過の場合には、安定化剤の使用量が過度に多くて、液状薬学的組成物の粘度が高くなったり、または患者への投与時に過敏症を誘発する恐れがある。
【0016】
より好ましくは、前記シクロデキストリンは、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩1重量部対比、3.5重量部以上、4.0重量部以上、または4.5重量部以上であり;20.0重量部以下、19.0重量部以下、18.0重量部以下、17.0重量部以下、16.0重量部以下、15.0重量部以下、14.0重量部以下、13.0重量部以下、12.0重量部以下、11.0重量部以下、または10.0重量部以下である。
【0017】
好ましくは、本発明による液状薬学的組成物は、凍結乾燥補助剤を追加的に含む。一般に、液状薬学的組成物は、大量生産した後、これを凍結し減圧下に保管および流通するが、これは、活性成分の安定性の増進および長期保管安定性を改善させることができる。したがって、凍結乾燥過程で活性物質の安定性が維持されなければならず、このため、本発明では、凍結乾燥補助剤を追加的に含むことができる。好ましくは、前記凍結乾燥補助剤は、D-マンニトール、スクロース、ソルビトール、またはトレハロースであり、より好ましくは、D-マンニトールである。
【0018】
好ましくは、前記凍結乾燥補助剤は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩1重量部対比、3.0~25.0重量部使用する。前記含有量が3.0重量部未満の場合には、前記化学式1で表される化合物の安定化に十分でなくて、液状薬学的組成物の再水和が難しかったり、長期保管時に柔軟物質が増加する問題がある。また、前記含有量が25.0重量部超過の場合には、凍結乾燥補助剤の使用量が過度に多くて、液状薬学的組成物の粘度が高くなったり、または患者への投与時に過敏症を誘発する恐れがある。
【0019】
より好ましくは、前記凍結乾燥補助剤は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩1重量部対比、3.5重量部以上、4.0重量部以上、または4.5重量部以上であり;20.0重量部以下、15.0重量部以下、13.0重量部以下、10.0重量部以下、9.0重量部以下、8.0重量部以下、7.0重量部以下、または6.0重量部以下である。
【0020】
好ましくは、前記凍結乾燥補助剤は、前記シクロデキストリン1重量部対比、0.5~5.0重量部使用する。より好ましくは、前記凍結乾燥補助剤は、前記シクロデキストリン1重量部対比、0.6重量部以上、0.7重量部以上、または0.8以上であり;4.5重量部以下、4.0重量部以下、3.5重量部以下、3.0重量部以下、2.5重量部以下、2.3重量部以下、2.0重量部以下、1.9重量部以下、1.8重量部以下、1.7重量部以下、1.6重量部以下、1.5重量部以下、1.4重量部以下、1.3重量部以下、または1.2重量部以下である。
【0021】
好ましくは、本発明による液状薬学的組成物は、注射用薬学的組成物である。一方、液状形態の薬学的組成物を製造するために、本発明の属する技術分野における通常の溶媒を使用することができる。一例として、前記液状薬学的組成物の溶媒は、蒸留水、注射用水、アセテートバッファー、または生理食塩水である。
【0022】
好ましくは、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、前記液状薬学的組成物内に1~30mg/mL含む。つまり、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の含有量は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の含有量(mg)を前記液状薬学的組成物の総体積(mL)で割る値と定義できる。
【0023】
より好ましくは、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、前記液状薬学的組成物内に2mg/mL以上、3mg/mL以上、4mg/mL以上、または5mg/mL以上であり;29mg/mL以下、28mg/mL以下、27mg/mL以下、26mg/mL以下、25mg/mL以下、24mg/mL以下、23mg/mL以下、22mg/mL以下、21mg/mL以下、20mg/mL以下、19mg/mL以下、18mg/mL以下、17mg/mL以下、16mg/mL以下、または15mg/mL以下で含む。
【0024】
好ましくは、本発明による液状薬学的組成物のpHは、3.0~7.0であり、より好ましくは、3.5~6.5であり、さらに好ましくは、4.0~6.0である。前記pHは、pH調整剤として調整可能であり、前記pH調整剤として、本発明の属する技術分野における通常の酸またはアルカリを使用することができる。前記pH調整剤の例としては、塩酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエタノールアミンのうちのいずれか1つ以上を使用することができ、これに限定されるものではない。
【0025】
また、必要に応じて、本発明による液状薬学的組成物は、保存剤、抗酸化剤などを追加的に含むことができ、前記保存剤および抗酸化剤としては、本発明の属する技術分野にて一般に用いられるものであれば特に制限されない。
【0026】
さらに、本発明による液状薬学的組成物は、溶媒を除いた上述した成分を溶媒に混合して製造することができ、この過程で、必要に応じて、各成分の溶媒に添加順序を調整することができ、またはすべての成分を溶媒に添加する前に混合して溶媒に添加することができる。
【0027】
前記製造された液状薬学的組成物は、必要に応じて、滅菌および/またはろ過段階を適用することができ、保管および流通のために凍結乾燥することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミンまたはその薬学的に許容可能な塩の液状薬学的組成物として有用に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるのではない。
【0030】
実施例1
下記表1のように、上述した化学式1で表される化合物の塩酸塩(以下、「API」という)20mgに、pH4.0に調整した各調製液を少しずつ加えて溶解の有無を肉眼で確認した。続いて、溶解しない実験群に調製液を追加的に加えて溶解の有無を評価し、その結果を下記表2に示した。下記表2中、「O」はすべて溶解した場合を、「X」はすべて溶解せずAPIの一部が肉眼で観察される場合を意味する。
【表1】
【表2】
【0031】
前記表2に示されているように、#1-1~#1-3のように、注射用水、Phosphate buffer、Acetate bufferで溶解度に優れていることを確認した。
【0032】
実施例2
実施例1で溶解度に優れていた注射用水、Phosphate buffer、およびAcetate buffer中に注射用水を用いて以下の実験を行った。
【0033】
下記表3のように、API10mg、および安定化剤としてアルファ-シクロデキストリン(α-CD)、ガンマ-シクロデキストリン(γ-CD)、(2-ヒドロキシプロピル)-ベータ-シクロデキストリン(HP-β-CD)、スルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリン(SBE-β-CD)、Trehalose、PVP K-12、およびPoloxamer188をそれぞれ50mgを注射用水(1mL)に溶解させ、0.1N HClを加えてpHを4.0に調整した。
【表3】
【0034】
各製造された溶液を10mLサンプルバイアル中に入れて凍結乾燥法で乾燥させた。前記凍結乾燥は、下記表4のような温度、時間および圧力を順次に適用した。
【表4】
【0035】
凍結乾燥が完了した後に凍結乾燥したサンプルは、苛酷条件(60℃、80%RH)のチャンバで4週間保管した。各サンプルは、保管時点から初期(Initial)、および4週後にそれぞれ再水和、および安定性を下記のように評価した。
【0036】
(1)再水和
凍結乾燥物に再水和溶液(注射用水、0.9%生理食塩水、5%ブドウ糖溶液、各4mL)を投与した後、肉眼で観察して、異物なしに完全に溶解する場合に「O」、そうでない場合に「X」、完全に溶解するもののその後析出する場合に「△」と評価した。
【0037】
(2)安定性
凍結乾燥物の柔軟物質の含有量をHPLCで分析して、検出された総柔軟物質の総量を測定した。
【0038】
【0039】
前記表5に示されているように、#2-2および#2-4の組成物は、苛酷条件で4週間保管しても再水和が可能であり、総柔軟物質の生成もほとんどない優れた安定性を示すことを確認した。
【0040】
実施例3
実施例2で安定化剤として効果に優れたHP-β-CDを選定して、以下の実験を行った。
【0041】
下記表6のように、APIおよび(2-ヒドロキシプロピル)-ベータ-シクロデキストリン(HP-β-CD)を注射用水(1mL)に溶解させ、0.1N HClを加えてpHを4.0に調整した。
【表6】
【0042】
各製造された溶液を、前記実施例2と同様の方法により、凍結乾燥法で乾燥させた後、再水和、および安定性を評価し、その結果を下記表7に示した。
【表7】
【0043】
前記表7に示されているように、#2-3および#3-2~#3-4の組成物は、苛酷条件で4週間保管しても再水和が可能であり、#2-3および#3-3~#3-4の組成物は、総柔軟物質の生成もほとんどない優れた安定性を示すことを確認した。
【0044】
実施例4
実施例2で安定化剤として効果に優れたHP-β-CDを選定して、以下の実験を行った。
【0045】
実施例1で導出された注射用水、Acetate buffer、およびPhosphate bufferの3種で実験を行い、このために、実施例2の#2-3の組成物のほかに、下記表8のように組成物を追加的に製造し、各Buffer(1mL)に溶解させ、それぞれAcetic acid、Phosphoric acidを加えてpHを4.0に調整した。
【表8】
【0046】
各製造された溶液を、前記実施例2と同様の方法により、凍結乾燥法で乾燥させた後、再水和、および安定性を評価し、その結果を下記表9に示した。
【表9】
【0047】
前記表9に示されているように、#4-2は、苛酷条件で4週間保管時に再水和に問題があった。これに対し、#2-3および#4-1は、苛酷条件で4週間保管時、再水和に異常なく、総柔軟物質の生成もほとんどない優れた安定性を示すことを確認した。
【0048】
実施例5
凍結乾燥剤形の性状は、再水和、総柔軟物質など今後の品質に影響を及ぼしうる重要な要素の一つである。実施例1~4から導出された安定化剤のHP-β-CDと注射用水で溶液を製造した後、下記表10のように凍結乾燥補助剤を追加し、0.1N HClを加えてpHを4.0に調整して組成物を製造した。
【表10】
【0049】
各製造された溶液を、前記実施例2と同様の方法により、凍結乾燥法で乾燥させた後、性状および再水和を評価し、その結果を下記表11に示した。
【表11】
【0050】
前記表11に示されているように、#5-1~#5-4は、ケーキの性状と再水和時に溶解性を維持した剤形であることを確認できた。ただし、製造工程の面から、凍結乾燥補助剤の種類によって最適な乾燥温度および時間が異なり、これは、生産効率性に直結する要素であることを考慮した時、D-マンニトールが最も好ましい。
【0051】
実施例6
実施例5で導出された凍結乾燥補助剤D-マンニトールの含有量による注射用組成物の性状、再水和、安定性を確認するために、下記表12のような含有量に0.1N HClを加えてpHを4.0に調整して組成物を製造した。
【表12】
【0052】
各製造された溶液を、前記実施例2と同様の方法により、凍結乾燥法で乾燥させた後、性状、再水和、および安定性を評価し、その結果を下記表13に示した。
【表13】
【0053】
前記表13に示されているように、#6-4~#6-6は、ケーキの性状がクラック(crack)なく優れており、苛酷条件で4週間保管時に再水和時の溶解性を維持した剤形であることを確認することができた。また、総柔軟物質の生成もほとんどない優れた安定性を示すことを確認した。
【0054】
実施例7
実施例1~6で最終的に導出された注射用組成物でpHを異ならせた組成物を下記表14のように製造した。
【表14】
【0055】
各製造された溶液を、前記実施例2と同様の方法により、凍結乾燥法で乾燥させた後、性状、再水和、および安定性を評価し、その結果を下記表15に示した。
【表15】
【0056】
前記表15に示されているように、#7-5および#7-6は、製造時にAPIが析出して評価が難しく、#6-4および#7-1~#7-4は、ケーキの性状がクラックなく優れており、苛酷条件で4週間保管した後にも再水和時の溶解性を維持した剤形であることを確認できた。また、総柔軟物質の生成もほとんどない優れた安定性を示すことを確認した。
【0057】
実施例8
実施例7で濃度を異ならせた組成物を下記表16のように製造した。
【表16】
【0058】
各製造された溶液を、前記実施例2と同様の方法により、凍結乾燥法で乾燥させた後、性状、再水和、および安定性を評価し、その結果を下記表17に示した。
【表17】
【0059】
前記表17に示されているように、#8-6および#8-7は、製造時にAPIが析出して評価が難しく、#8-1~#8-5は、ケーキの性状がクラックなく優れており、苛酷条件で4週間保管した後にも再水和時の溶解性を維持した剤形であることを確認できた。また、総柔軟物質の生成もほとんどない優れた安定性を示すことを確認した。