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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】自己カール性遮蔽チューブ
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240219BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
H05K9/00 L
H02G3/04 062
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022526308
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 KR2019015898
(87)【国際公開番号】W WO2021090996
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0141348
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513096691
【氏名又は名称】エルエス ケーブル アンド システム リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】キム、チャンソク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ヨンフン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ウンキョ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、チャンウン
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05827997(US,A)
【文献】特表2016-516907(JP,A)
【文献】特開2011-089194(JP,A)
【文献】特開2007-277745(JP,A)
【文献】特開2017-186686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属メッキされた炭素繊維糸が合糸されて構成される複数の炭素繊維糸バンドル、及び炭素繊維糸バンドルに垂直な方向に配置され、それぞれ複数の熱収縮性ポリオレフィン系樹脂材のワイヤ状の収縮部材から構成される複数の収縮部を編造して形成された編造部材から構成され、
前記編造部材を構成する前記炭素繊維糸バンドルが長手方向に並んで配置され、前記収縮部が炭素繊維糸バンドルに垂直な方向に配置され、前記編造部材を熱収縮して円筒状に形成され、円周方向に重なった重畳部を含み、
前記収縮部を構成する収縮部材の直径は0.25ミリメートル(mm)~0.5ミリメートル(mm)であり、前記収縮部材1個ないし5個が単層に配置されて単一の収縮部を構成し、複数の前記収縮部は前記炭素繊維糸バンドルの長手方向に互いに離隔して配置され、
前記炭素繊維糸バンドルを構成する金属メッキされた炭素繊維糸の合糸及び編造の後のメッキ厚さは0.2μm~0.4μmである、自己カール性遮蔽チューブ。
【請求項2】
前記炭素繊維糸バンドルは、3k本、6k本または12k本の炭素繊維糸から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の自己カール性遮蔽チューブ。
【請求項3】
前記炭素繊維糸バンドルを構成する炭素繊維糸は、伸び率が1%以上のPAN系炭素繊維糸であることを特徴とする、請求項2に記載の自己カール性遮蔽チューブ。
【請求項4】
前記炭素繊維糸の金属メッキ材は、銅、金、銀、アルミニウムまたはニッケルまたはその合金材であることを特徴とする、請求項1に記載の自己カール性遮蔽チューブ。
【請求項5】
前記自己カール性遮蔽チューブの内部にケーブルが挿入されていない状態で前記重畳部の円周方向への重畳範囲は20度~50度であることを特徴とする、請求項1に記載の自己カール性遮蔽チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自己カール性遮蔽チューブに関する。より詳しくは、本発明はケーブル接続またはケーブル遮蔽作業の作業性を向上させ、良好な電磁波遮蔽性能を確保しながらも重さ及び費用を最小化することができる自己カール性遮蔽チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ケーブルは、遮蔽のために、ケーブルの製造過程で遮蔽層が付け加えられることができるが、遮蔽層を備えていないケーブルまたはケーブルの接続部位には事後に遮蔽層を付け加える必要がある。
【0003】
通信用ケーブルの接続部などに電磁波遮蔽を付け加える方法として、金属材の遮蔽部材で通信ケーブルの接続部などを取り囲み、遮蔽部材を通信ケーブルの遮蔽層に溶接して連結する方法、または熱収縮チューブ状の遮蔽チューブを通信ケーブルに適用して熱収縮させる方法が適用されることができる。
【0004】
前者の場合、金属材の編造遮蔽部材で両通信ケーブルの接続部などを取り囲んだ後、金属材の編造遮蔽部材と両通信ケーブルの遮蔽層をそれぞれ溶接する方法で両通信ケーブルの遮蔽層を電気的に連結することで、両通信ケーブルの接続部などを通しての電磁波漏洩を最小化することができるが、金属材の編造遮蔽部材と両通信ケーブルの遮蔽層をそれぞれ溶接する方法は現場作業性が良くなく、ケーブル軽量化に障害になることがある。
【0005】
後者の場合、一般的な樹脂材の熱収縮チューブは十分な剛性を確保しにくく、破れやすい問題があり、一般熱収縮チューブは樹脂材のみで構成されるので、電磁波遮蔽性能が落ち、前者の方法と同様に、ケーブル接続現場で熱を加えてチューブを収縮させなければならないので、現場作業性が落ち、このような熱収縮チューブに炭素繊維糸などを適用して遮蔽性能を補強するための試みがあったが、金属遮蔽層に比べて依然として遮蔽性能が足りない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はケーブル接続またはケーブル遮蔽作業の作業性を向上させ、良好な電磁波遮蔽性能を確保しながらも重さ及び費用を最小化することができる自己カール性遮蔽チューブに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、金属メッキされた炭素繊維糸が合糸されて構成される複数の炭素繊維糸バンドル、及び炭素繊維糸バンドルに垂直な方向に配置され、熱収縮性繊維材の複数の収縮部材から構成される複数の収縮部を編造して形成された編造部材から構成され、前記編造部材を構成する前記炭素繊維糸バンドルが長手方向に並んで配置され、前記収縮部が円周方向に配置され、前記編造部材を熱収縮して円筒状に形成され、前記円周方向に重なった重畳部を含む自己カール性遮蔽チューブを提供することができる。
【0008】
また、前記炭素繊維糸バンドルは、3k本、6k本または12k本の炭素繊維糸から構成されることができる。
【0009】
そして、前記炭素繊維糸バンドルを構成する炭素繊維糸は、伸び率が1%以上のPAN系炭素繊維糸であることができる。
【0010】
ここで、前記炭素繊維糸の金属メッキ材は、銅、金、銀、アルミニウムまたはニッケルまたはその合金材であることができる。
【0011】
また、前記金属メッキのメッキ密度は2.7g/cm以下であることができる。
【0012】
この場合、前記炭素繊維糸バンドルを構成する金属メッキされた炭素繊維糸の合糸前のメッキ厚さは0.2μm~0.5μmであることができる。
【0013】
そして、前記炭素繊維糸バンドルを構成する金属メッキされた炭素繊維糸の合糸及び編造後のメッキ厚さは0.2μm~0.4μmであることができる。
【0014】
また、前記収縮部を構成する収縮部材は、ポリオレフィン系樹脂材ワイヤから構成されることができる。
【0015】
ここで、前記収縮部を構成する複数の収縮部材は単層に配置されることができる。
【0016】
また、前記収縮部材はポリオレフィン系樹脂材のワイヤであり、直径が0.25ミリメートル(mm)~0.5ミリメートル(mm)であり、1個~5個が一つの収縮部を構成することができる。
【0017】
そして、前記自己カール性遮蔽チューブの内部にケーブルが挿入されていない状態で前記重畳部の円周方向への重畳範囲は20度~50度であることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明による自己カール性遮蔽チューブによれば、熱収縮が完了した自己カール形状を維持した状態で提供されるので、ケーブル作業現場で火器などを使う溶接または熱収縮作業が必要ではなく、良好な遮蔽性能を提供することができる軽量化した自己カール性遮蔽チューブを提供することができる。
【0019】
また、本発明による自己カール性遮蔽チューブによれば、ケーブル接続部の接続の後、ヒートガン(Heat gun)などの火器などを使わずに装着することができるので、電磁波遮蔽のための作業性を向上させることができる。
【0020】
また、本発明による自己カール性遮蔽チューブによれば、金属メッキされた炭素繊維糸バンドルを長手方向に適用して、樹脂材または炭素繊維糸材の熱収縮チューブ状の遮蔽材より遮蔽性能が向上することができる。
【0021】
また、本発明による自己カール性遮蔽チューブによれば、金属メッキされた炭素繊維糸バンドルを長手方向に適用して良好な遮蔽性能を確保するとともに金属編造部材から構成された遮蔽層に比べて重さ及び費用を大幅減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による自己カール性遮蔽チューブを構成するための編造部材の一実施例を示す図である。
【0023】
図2図1に示した編造部材をチューブ状に熱収縮させた自己カール性遮蔽チューブの一実施例の斜視図である。
【0024】
図3】2種の炭素繊維糸の電磁波遮蔽性能試験の結果を示す図である。
図4】2種の炭素繊維糸の電磁波遮蔽性能試験の結果を示す図である。
【0025】
図5】本発明の6K金属メッキ炭素繊維糸のメッキ厚さと6K金属メッキ炭素繊維糸を合糸及び編造して構成した編造部材または自己カール性遮蔽チューブ状態で金属メッキ炭素繊維糸のメッキ厚さの変化を示す図である。
【0026】
図6図5に係る編造部材またはこれを用いた自己カール性遮蔽チューブの電磁波遮蔽性能の試験結果を示す図である。
【0027】
図7】本発明の3K金属メッキ炭素繊維糸のメッキ厚さと3K金属メッキ炭素繊維糸を合糸及び編造して構成した編造部材または自己カール性遮蔽チューブ状態で金属メッキ炭素繊維糸のメッキ厚さの変化を示す図である。
【0028】
図8図7に係る編造部材またはこれを用いた自己カール性遮蔽チューブの電磁波遮蔽性能の試験結果を示す図である。
【0029】
図9】本発明の他の実施例による編造部材をチューブ状に熱収縮させた自己カール性遮蔽チューブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面に基づいて本発明の好適な実施例を詳細に説明する。しかし、本発明はここで説明する実施例に限定されず、他の形態に具体化されることもできる。むしろ、ここで紹介する実施例は開示の内容が徹底的で完全になるように、そして当業者に本発明の思想を充分に伝達するために提供するものである。明細書全般にわたって同じ参照符号は同じ構成要素を示す。
【0031】
図1は本発明による自己カール性遮蔽チューブ100を構成するための編造部材100’の一実施例を示し、図2図1に示した編造部材100’をチューブ状に熱収縮させた自己カール性遮蔽チューブ100の一実施例の斜視図を示す。
【0032】
本発明による自己カール性遮蔽チューブ100は、金属メッキされた炭素繊維糸11が合糸されて構成される複数の炭素繊維糸バンドル10、及び炭素繊維糸バンドル10に垂直な方向に配置され、熱収縮性繊維材の複数の収縮部材21から構成される収縮部20を編造して形成された編造部材100’から構成され、前記編造部材100’を構成する前記炭素繊維糸バンドルが長手方向(第1方向)に並んで配置され、前記収縮部20が円周方向(第2方向)に配置され、円周方向に重なった重畳部Oが形成されるように円筒状に巻き、前記収縮部20を熱収縮させることで構成されることができる。
【0033】
自己カール性チューブとは、外力がない場合にも自ら円周方向に巻かれる自己カール特性を保有して、円周方向の両端部が一定角度だけ互いに重畳(overlap)する重畳部が存在するチューブを意味する。よって、前記重畳部を作業者が手やその他の器具で分離して開けた空間を通してケーブルなどを挿入すれば設置が完了し、別途の火器の使用または締結部材などが不要であるので、ケーブル現場作業の作業性が大きく向上することができる。
【0034】
図1に示した編造部材100’から製造された図2に示した自己カール性遮蔽チューブ100の内径が9ミリメートル(mm)であり、その内部に収容されるケーブルの直径は10ミリメートル(mm)である場合、自己カール性遮蔽チューブ100の重畳部Oを開けてケーブルを挿入装着した場合、別途の追加的な固定作業がなくても自己カール状態への復元弾性によって安定的にケーブルを取り囲む状態を維持することができる。
【0035】
そして、‘バンドル’とは多数の微小繊維糸から構成される繊維束を意味するものであり、炭素繊維糸の場合、数千本の微小炭素繊維糸が一バンドルを構成することになる。
【0036】
炭素繊維(糸)は、鉄に比べて質量は1/4に過ぎないが、強度及び弾性がそれぞれ10倍及び7倍に至る特性によって多様な分野で活用が試みられている。本発明による自己カール性遮蔽チューブ100は、遮蔽効果を提供する遮蔽材として炭素繊維糸を適用し、電磁波遮蔽効果を一層向上させるために金属メッキされた炭素繊維糸を適用する。
【0037】
そして、本発明の炭素繊維糸は、伸び率が1%以上のPAN系炭素繊維糸であることが好ましい。PAN系炭素繊維糸は直径が5~8μmである。
【0038】
一般に、炭素繊維糸バンドル10は、炭素繊維糸11の3k(3,000)本、6k(6,000)本または12k(12,000)本など、1k(1,000)本以上から構成されたバンドルであることができる。本発明では、主に3k本、6k本から構成された炭素繊維糸バンドルが適用された編造部材または自己カール性遮蔽チューブ100について説明する。
【0039】
参考までに、本発明の試験に使用された3K炭素繊維糸バンドルの大雑把な直径または幅は0.40ミリメートル(mm)~0.50ミリメートル(mm)程度、6K炭素繊維糸バンドルの大雑把な直径または幅は0.60ミリメートル(mm)~0.70ミリメートル(mm)程度と測定された。そして、それぞれの炭素繊維糸は、製造過程でポリアミド(Polyamide)コーティングが遂行されることにより、炭素繊維糸の間の凝集またはもつれなどを防止する効果がある。ポリアミドコーティング層は炭素繊維糸の表面に接着性が良く屈曲性に優れた被膜を形成する。
【0040】
本発明による編造部材100’及び自己カール性遮蔽チューブ100は編造構造を有し、金属メッキ炭素繊維糸を基本構成とする。
【0041】
炭素繊維糸自体は重さが軽く剛性及び弾性を有する素材であり、電磁波遮蔽性能を向上させるために、炭素繊維糸上に1種以上の金属がメッキされた炭素繊維糸を使う。
【0042】
前記炭素繊維糸の金属メッキ材は、銅、金、銀、アルミニウムまたはニッケルまたはその合金材であることが好ましく、前記金属メッキのメッキ密度は2.7g/cm以下であることが好ましい。
【0043】
本発明の好適な実施例による炭素繊維に適用された金属メッキは、炭素繊維上に銅(Cu)メッキを遂行した後、ニッケル(Ni)メッキを遂行した二重メッキである。
【0044】
そして、前記炭素繊維糸バンドルを構成する金属メッキ炭素繊維糸は、合糸前のメッキ厚さが0.2μm~0.5μm程度であることが好ましい。炭素繊維糸の金属メッキ厚さについての詳細な説明は後述する。
【0045】
本発明による編造部材100’及び自己カール性遮蔽チューブ100は、長手方向には金属メッキされた炭素繊維糸11から構成される炭素繊維糸バンドル10と、円周方向には自己カール性、すなわち熱が加われば熱収縮する収縮性を有する複数の樹脂材の収縮部材21から構成される収縮部20とを編造することで、炭素繊維糸の利点である軽量及び遮蔽性能を極大化しながらも仕上材としての便利性を付与することができる。
【0046】
図1に示した本発明による炭素繊維糸編造部材100’は、一方向(第1方向)への炭素繊維糸バンドル10と、その垂直方向(第2方向)への収縮部20とを編造方式で織造して編造部材100’を製造することができる。
【0047】
図1及び図2には一つの収縮部20が2個の収縮部材21から構成される例を示したが、1個~5個の収縮部材が一つの収縮部を構成することもできる。
【0048】
前記収縮部材21の例として、ポリオレフィン(Polyolefine)系樹脂材のワイヤを使うことができる。
【0049】
ポリオレフィンは合成樹脂の1種であり、エチレンとプロピレンのようなオレフィン(1個の分子当たり1個の二重結合を含んでいる炭化水素)を付加重合反応させて作る有機物質を意味する。
【0050】
ポリオレフィン材としては、ポリエチレン(HDPE(High Density Polyethylene)、LDPE(Low Density Polyethylene)、LLDPE(Linear Low Density Polyethylene))、EVA(ethylene-vinylacetate copolymer)、UHMWPE(ultra-high molecular weight PE)などを適用することができ、その他にも各種のポリプロピレン(PP、polypropylene)、ラバー/エラストマ(ethylene-propylene rubber)、EPDM(ethylene-propylene-diene monomer)、POE(polyolefin elastomer、ethylene/octene-1))などを適用することができる。
【0051】
ポリオレフィンワイヤは、一般的に弾性を有し、大部分が有機溶媒に溶けなく、酸と塩基に耐性があり、電気絶縁性があるので、一般的な熱収縮チューブの素材に活用される。
【0052】
このようなポリオレフィン材から構成されたポリオレフィンワイヤ形態の収縮部材21で収縮部20を構成し、第1方向に垂直な第2方向に配置されるように織造する。前記収縮部20は複数の収縮部材21を第1方向に並んで隣接するようにして第2方向に配置することができる。
【0053】
また、軽量化または費用節減のために、前記収縮部材21は単層に配置することが好ましく、直径が0.25ミリメートル(mm)~0.5ミリメートル(mm)であることが好ましい。
【0054】
長手方向の炭素繊維糸バンドル10を配置するためには、バンドルを平行に広げてから一つに集める合糸または編造作業工程を経ることによってバンドルを配置することができる。
【0055】
このような金属メッキされた炭素繊維糸はバンドルに合糸され、編造部材に織造される過程でコーティング層のコーティング厚さが変化することができる。すなわち、金属メッキされた炭素繊維糸はバンドルに合糸され、編造部材に織造される過程で隣接した炭素繊維糸との摩擦などによって炭素繊維自体が壊れて毛羽などが発生するか、炭素繊維のメッキ層が損傷されるかメッキ層の厚さが減少しやすい特性が確認された。
【0056】
したがって、電磁波遮蔽性能向上のために炭素繊維糸のメッキ厚さを無条件に厚くすることは好ましくない。以下、電磁波遮蔽効果とメッキ厚さとの関係を検討して最適のメッキ厚さを設定する方法を説明する。
【0057】
図3及び図4は2種の炭素繊維糸の電磁波遮蔽性能試験の結果を示す。
【0058】
図3及び図4はそれぞれ6K炭素繊維糸と3K炭素繊維糸の金属メッキ厚さによる電磁波遮蔽効果を示す。
【0059】
図3及び図4は金属メッキ厚さが0.10マイクロメートル(μm)から0.70マイクロメートル(μm)までの6K炭素繊維糸と3K炭素繊維糸で遮蔽試験物を取り囲んだ後、電磁波遮蔽効果を測定して試験した。
【0060】
具体的には、図3及び図4の試験結果は、6K金属メッキ炭素繊維糸と3K金属メッキ炭素繊維糸のメッキ厚さを0.05マイクロメートル(μm)単位でメッキし、合糸または編造しなかった状態の多数の炭素繊維糸で遮蔽対象ケーブルを螺旋形に横巻きして取り囲み、ケーブルを測定設備と接続した後、ケーブルを通して電流を流して100MHz周波数での遮蔽率を測定する方法で試験した。
【0061】
そして、図3及び図4の試験で、金属メッキ炭素繊維糸のメッキ厚さはSEM装備を用いて測定した。具体的には、それぞれの金属メッキされた炭素繊維糸の任意の3ヶ所の厚さを測定し、その平均値を測定試料のメッキ厚さとして記録した。メッキ厚さは0.05マイクロメートル(μm)単位で増加させ、最小メッキ厚さは0.10マイクロメートル(μm)にした。
【0062】
図3及び図4の6K炭素繊維糸と3K炭素繊維糸の両者で、金属メッキ厚さが0.10マイクロメートル(μm)から増加するほど遮蔽効果が次第に増加し、メッキ厚さが0.20マイクロメートル(μm)以上になれば、一般的に良好な遮蔽性能の基準になる40dB以上の値を確保することを確認することができる。そして、メッキ厚さが約0.50マイクロメートル(μm)までは電磁波遮蔽率が40dB以上に安定的に維持されるが、メッキ厚さがもっと増加しても遮蔽率がむしろ減少して電磁波遮蔽率が40dB以下になることを確認することができる。
【0063】
このような試験結果から、金属メッキ厚さが0.10マイクロメートル(μm)以下の場合、金属メッキ層の電気伝導度が低くて遮蔽効果が大きくなく、電磁波遮蔽のための金属メッキ炭素繊維糸において電磁波遮蔽性能とメッキ厚さの比例範囲は一定の限界があることを確認することができる。そして、金属メッキ層の厚さが0.5マイクロメートル(μm)より大きい場合、前記自己カール性遮蔽チューブ100の重さが増加してメッキ厚さが不必要に厚いことを確認した。
【0064】
図5は本発明の6K金属メッキ炭素繊維糸のメッキ厚さと6K金属メッキ炭素繊維糸を合糸及び編造して構成した編造部材または自己カール性遮蔽チューブ100の状態で金属メッキ炭素繊維糸のメッキ厚さの変化を示す。
【0065】
図5に示したように、図3の6K炭素繊維糸を合糸して図1に示したような編造部材を織造した後、炭素繊維糸のメッキ厚さを測定した結果、炭素繊維糸のメッキ厚さが0.50マイクロメートル(μm)までは合糸及び編造された編造部材における炭素繊維糸の金属メッキ厚さが比例して増加するが、合糸または編造前の元の炭素繊維糸のメッキ厚さよりは小さいメッキ厚さを有する結果から合糸または編造過程である程度のメッキ層損傷が発生することを確認することができた。
【0066】
そして、炭素繊維糸のメッキ厚さが0.50マイクロメートル(μm)より大きい場合には、むしろ合糸及び編造された編造部材における炭素繊維糸の金属メッキ厚さが50%以下、具体的に0.20マイクロメートル(μm)以下に減少することを確認することができた。
【0067】
このような結果は、炭素繊維糸のメッキ厚さが増加するほど、合糸または編造作業の際に摩擦または圧力によって毛羽(炭素繊維糸が壊れて生じた切れ)が増加し、メッキ層が離脱してメッキ厚さが合糸または編造作業前より薄くなる現象が発生することと推測される。
【0068】
図6図5に係る編造部材またはこれを用いた自己カール性遮蔽チューブ100の電磁波遮蔽性能試験の結果を示す。
【0069】
図5のメッキ厚さ測定結果で示すように、図6に示した合糸及び編造された金属メッキ炭素繊維糸から織造された編造部材を電磁波遮蔽性能試験した結果、金属メッキ厚さが0.10マイクロメートル(μm)から増加するほど遮蔽効果が次第に増加し、合糸及び編造された炭素繊維糸の金属メッキ厚さが減少する時点である0.40マイクロメートル(μm)を超えれば電磁波遮蔽効果が減少し始め、良好な遮蔽性能の基準である40dB以上を満たすことができないことを確認することができる。
【0070】
結局、図3の6K炭素繊維糸を合糸して図1に示したような編造部材を織造した後、炭素繊維糸のメッキ厚さの変化とそれによる電磁波遮蔽効果の変化から、合糸及び編造前の炭素繊維糸のメッキ厚さ0.50マイクロメートル(μm)は合糸及び編造後の炭素繊維糸のメッキ厚さ0.40マイクロメートル(μm)とそれによる電磁波遮蔽効果の境界になることを確認することができる。
【0071】
すなわち、電磁波遮蔽のための自己カール性遮蔽チューブ100を構成するにあたり、電磁波遮蔽性能向上のために合糸及び編造前の6K炭素繊維糸の金属メッキ層コーティング厚さを0.50マイクロメートル(μm)以上になるようにしても、むしろ合糸及び編造後の編造部材またはこれを用いた自己カール性遮蔽チューブ100の炭素繊維糸のメッキ厚さは急激に減少し、それによって電磁波遮蔽性能も40dB以下になって好ましくないことを確認することができる。
【0072】
下記の表1は図5及び図6に示した本発明の6K金属メッキ炭素繊維糸を合糸及び編造して編造部材を構成した状態での金属メッキ炭素繊維糸のメッキ厚さの変化とそれによる電磁波遮蔽性能試験の結果をまとめた表を示す。
【0073】
すなわち、下記の表1からも、炭素繊維糸の合糸及び編造前のメッキ厚さは、0.1マイクロメートル(μm)から0.5マイクロメートル(μm)まではある程度比例して合糸及び編造過程で金属メッキ層の厚さ損失が大きくないことを確認することができる。
【0074】
しかし、炭素繊維糸の合糸及び編造前のメッキ厚さが0.5マイクロメートル(μm)以上になる瞬間、摩擦などによって炭素繊維糸の合糸及び編造後のメッキ厚さがむしろ減少することを確認することができるので、炭素繊維糸の合糸及び編造前のメッキ厚さは0.5マイクロメートル(μm)以下にならなければならないことを確認することができる。
【0075】
また、炭素繊維糸の合糸及び編造前のメッキ厚さが0.2マイクロメートル(μm)より小さい場合には、合糸及び編造過程でメッキ層の厚さ損失が発生しないが、合糸及び編造された編造部材または自己カール性遮蔽チューブ100の遮蔽効果が40dB以下になることからメッキ層の厚さが足りない。
【0076】
したがって、6K炭素繊維糸の合糸及び編造前のメッキ厚さは合糸及び編造過程でのメッキ層損失を防止し、良好な電磁波遮蔽効果の確保のために、0.2マイクロメートル(μm)~0.5マイクロメートル(μm)が好ましく、合糸及び編造後のメッキ厚さは0.2マイクロメートル(μm)~0.4マイクロメートル(μm)が好ましいという結論を導出することができる。
【0077】
【表1】
【0078】
図7は本発明の3K金属メッキ炭素繊維糸のメッキ厚さと3K金属メッキ炭素繊維糸を合糸及び編造して構成した編造部材または自己カール性遮蔽チューブ100の状態で金属メッキ炭素繊維糸のメッキ厚さの変化を示し、図8図7に係る編造部材またはこれを用いた自己カール性遮蔽チューブ100の電磁波遮蔽性能試験の結果を示す。また、下記の表2も本発明の3K金属メッキ炭素繊維糸を合糸及び編造して編造部材を構成した状態での金属メッキ炭素繊維糸のメッキ厚さの変化とそれによる電磁波遮蔽性能試験の結果をまとめた表を示す。図7図8及び表2の実験結果から、6K炭素繊維糸と同様に、3K炭素繊維糸を適用した場合にも合糸及び編造過程でのメッキ層損失を防止し、良好な電磁波遮蔽効果を確保するために、合糸及び編造前のメッキ厚さは0.2マイクロメートル(μm)~0.5マイクロメートル(μm)が好ましく、合糸及び編造後のメッキ厚さは0.2マイクロメートル(μm)~0.4マイクロメートル(μm)が好ましいことを確認することができる。
【0079】
【表2】
【0080】
図9は本発明の他の実施例による編造部材をチューブ状に熱収縮させた自己カール性遮蔽チューブ100”の斜視図を示す。図9に示した実施例は炭素繊維糸バンドルを金属ワイヤバンドル10’に代替した実施例である。この場合、金属ワイヤバンドル10’は前述した実施例よりずっと少ない個数、例えば数十本以内の金属ワイヤ11’からバンドルを構成することができる。
【0081】
前記金属ワイヤ11’としては、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケルまたはその合金またはCCAのようなメッキ導体を適用することができる。図9に示したように、ワイヤバンドル10’を構成する場合、従来に金属編造部材を巻いて溶接などで固定する方法を適用しなくても、ケーブル接続作業が簡素化し、円周方向に収縮性樹脂材から構成される収縮部によって重さ減少効果を得ることができることは前述した実施例と同様である。
【0082】
本明細書は本発明の好適な実施例を参照して説明したが、当該技術分野の当業者は以下で敍述する特許請求範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更して実施することが可能であろう。したがって、変形実施が基本的に本発明の特許請求範囲の構成要素を含むものであればいずれも本発明の技術的範疇に含まれるものと見なさなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9