(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】血中内撮像装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/313 20060101AFI20240219BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240219BHJP
A61B 1/01 20060101ALI20240219BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20240219BHJP
【FI】
A61B1/313 510
A61B1/00 521
A61B1/01 513
A61M25/10 510
(21)【出願番号】P 2022527256
(86)(22)【出願日】2020-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2020020454
(87)【国際公開番号】W WO2021240571
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浪間 聡志
(72)【発明者】
【氏名】中田 昌和
(72)【発明者】
【氏名】吉松 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山中 信圭
【審査官】相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-503203(JP,A)
【文献】特開2016-049267(JP,A)
【文献】特開2009-095447(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0165279(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血中内撮像装置であって、
血管内に挿入される長尺状の外装部と、
前記外装部の先端側に配置され、血管内に向けて光を出射する発光部と、
前記外装部の先端側に配置され、受光した光を電気信号に変換する撮像部と、
前記発光部の出射側に配置され、前記発光部から出射された光を特定方向に偏光する第1の偏光部と、
前記撮像部の受光側に配置され、血管内からの反射光のうち、前記特定方向の偏光成分の光だけを前記撮像部に受光させる第2の偏光部と、
筒状のシャフトと、
先端部が前記シャフトに接合され、前記シャフトの径方向に拡張するバルーンと、
を備え
、
前記外装部は、前記シャフト内において前記シャフトの先端位置と前記先端位置より前記シャフトの後端側の位置との間で変位可能とされている、血中内撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の血中内撮像装置であって、
前記第1の偏光部と前記第2の偏光部とは、前記特定方向の偏光成分の光だけを通過させる一体の偏光板である、
血中内撮像装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の血中内撮像装置であって、
前記発光部の出射側は、前記第1の偏光部に接触している、
血中内撮像装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の血中内撮像装置であって、
前記撮像部の受光側は、前記第2の偏光部に接触している、
血中内撮像装置。
【請求項5】
請求項
1から請求項4までのいずれか一項に記載の血中内撮像装置であって、
前記シャフトは、光を透過可能な光透過部を有し、
前記バルーンは、前記シャフトの前記光透過部を覆うと共に、光透過可能な光透過部を有し、
前記外装部は、前記シャフト内において前記シャフトの先端位置と前記シャフトにおける前記光透過部内の位置との間で変位可能とされている、血中内撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、血中内撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の診断に、血管内に挿入可能な極細の血管内視鏡を使用して血管壁や血管における病変部(狭窄部、閉塞部や異常血管等)を直接観察する方法が用いられる。血管内視鏡は、血管内に挿入される長尺状の外装部と、外装部の先端側に配置され、血管内に向けて光を出射する発光部と、外装部の先端側に配置され、血管内からの反射光を受光して電気信号に変換する撮像部と、を備える。ここで、血管内は赤い血液で満たされているため、そのままの状態では血管壁を光学的に観察することができない。そこで、血管内視鏡の先端から前方へ向かって低分子デキストラン溶液のような透明液体を噴射するフラッシングを行うことによって、血管内視鏡の前方の血液を一時的に透明液体に置換して透明な視界を得る方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の血管内視鏡を使用して血管壁を観察する場合、透明液を噴射するフラッシングを常に行う必要がある。このため、血管壁を連続的に観察することが難しかったり、フラッシングを行っている最中に血管内視鏡の向きを変える操作を行うことができない等の制約が生じたりする問題がある。この問題は、血管壁を観察するための血管内視鏡に限らず、血管内の状態を撮像するために使用される血中内撮像装置に共通する課題ともいえる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。この技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本明細書に開示される血中内撮像装置は、血管内に挿入される長尺状の外装部と、前記外装部の先端側に配置され、血管内に向けて光を出射する発光部と、前記外装部の先端側に配置され、受光した光を電気信号に変換する撮像部と、前記発光部の出射側に配置され、前記発光部から出射された光を特定方向に偏光する第1の偏光部と、前記撮像部の受光側に配置され、血管内からの反射光のうち、前記特定方向の偏光成分の光だけを前記撮像部に受光させる第2の偏光部と、を備える。
【0007】
本発明者は、鋭意検討を重ねることにより、血液に満たされた血管内の状態を撮像できない理由は、血液が赤色という色の問題だけでなく、血液に含まれる粒子(例えば赤血球、白血球やヘモグロビン)による光の散乱が影響することを新たに見出した。血管壁を撮像する場合、発光部から血管内(血液中)に出射された光の一部は、血管壁で反射し、該光の他の一部は、血液に含まれる粒子に当たって散乱する。その結果、血管壁からの反射光だけでなく、粒子からの散乱光も撮像部に受光されるため、血管壁に応じた像が撮像部にて形成されない。これに対して、本血中内撮像装置では、発光部から血管内(血液中)に向けて出射された光は、第1の偏光部によって、一方向の偏光成分の光とされて血管内に出射される。また、第2の偏光部によって、血管内からの反射光のうち、その一方向の偏光成分の光だけが撮像部に受光される。このため、一方向の偏光成分の光を正反射した対象物(例えば血管壁や病変部)を撮像することができる。すなわち、本血中内撮像装置によれば、フラッシングを行うことなく、血液中の粒子による光の散乱に起因する撮像精度の低下を抑制しつつ、血管内の状態を撮像することができる。
【0008】
(2)上記血中内撮像装置において、前記第1の偏光部と前記第2の偏光部とは、前記特定方向の偏光成分の光だけを通過させる一体の偏光板である構成としてもよい。本血中内撮像装置によれば、第1の偏光部と第2の偏光部とが別体である構成に比べて、第1の偏光部と第2の偏光部との位置ズレに起因する撮像精度の低下を抑制することができる。
【0009】
(3)上記血中内撮像装置において、前記発光部の出射側は、前記第1の偏光部に接触している構成としてもよい。本血中内撮像装置によれば、発光部と第1の偏光部とが離間した構成に比べて、例えば発光部から出射され第1の偏光部で反射した光が撮像部に入射することに起因して血管内の状態の撮像精度が低下することを抑制することができる。
【0010】
(4)上記血中内撮像装置において、前記撮像部の受光側は、前記第2の偏光部に接触している構成としてもよい。本血中内撮像装置によれば、撮像部と第2の偏光部とが離間した構成に比べて、発光部から出射され第1の偏光部で反射した光が撮像部に入射しにくいため、第1の偏光部からの反射光に起因する撮像精度の低下を抑制することができる。
【0011】
(5)上記血中内撮像装置において、さらに、筒状のシャフトと、先端部が前記シャフトに接合されたバルーンと、を備え、前記外装部は、前記シャフト内において前記シャフトの先端位置と前記先端位置より前記シャフトの後端側の位置との間で変位可能とされている構成としてもよい。本血中内撮像装置によれば、外装部(発光部と撮像部と第1の偏光部と第2の偏光部)を、シャフトの先端位置に配置することにより、シャフトの前方に位置する血管内の状態を撮像することができる。
【0012】
(6)上記血中内撮像装置において、前記シャフトは、光を透過可能な光透過部を有し、前記バルーンは、前記シャフトの前記光透過部を覆うと共に、光透過可能な光透過部を有し、前記外装部は、前記シャフト内において前記シャフトの先端位置と前記シャフトにおける前記光透過部内の位置との間で変位可能とされている構成としてもよい。本血中内撮像装置によれば、外装部を、シャフトにおける光透過部内に配置することにより、バルーンを介して、シャフトの側方に位置する血管内の状態を撮像することができる。
【0013】
本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、血中内撮像装置、血管内の状態を撮像する血中撮像方法等の形態で実現することができる。血中撮像方法は、例えば、血管内に向けて特定方向の偏光成分の光を出射し、偏光部により、血管内からの反射光のうち、前記特定方向の偏光成分の光だけを撮像部に受光させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態における血中内撮像装置の縦断面図
【
図4】第2実施形態におけるバルーンカテーテルの斜視図
【
図6】
図5のVI-VIの位置におけるバルーンカテーテルの横断面図
【
図7】
図5のVII-VIIの位置におけるバルーンカテーテルの横断面図
【
図8】
図5のVIII-VIIIの位置におけるバルーンカテーテルの横断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.第1実施形態:
A-1.血中内撮像装置1の構成:
まずは、
図1及び2を参照して、第1実施形態における血中内撮像装置の構成を説明する。
図1は、第1実施形態における血中内撮像装置の縦断面を示し、血中内撮像装置1の軸方向(長手方向で
図1のZ軸方向)に平行な断面(
図1のYZ軸平面)を示してある。
図1では、血中内撮像装置1における基端側の構成を省略してあり、先端側の構成のうち、後述の外装部2のみ断面構成が示されている。Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)であり、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)である。
図1では、血中内撮像装置1が全体としてZ軸方向に平行な直線状となった状態を示しているが、血中内撮像装置1は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。
図2は、血中内撮像装置1の先端面構成を示しており、血中内撮像装置1を先端側から見た平面構成が示されている。
【0016】
血中内撮像装置1は、血管内の状態を撮像して観察するために、血管内に挿入される医療用デバイスである。
図1および
図2に示すように、血中内撮像装置1は、筒状の外装部2と、発光部3と、撮像部4と、撮像部4から導出された配線5と、偏光板6と、を備えている。なお、本明細書における「血管内」は、実際の血管の内部に限らず、人工的に製造された模擬血管の内部を含む。
【0017】
外装部2は、長尺状の円筒状であり、例えば樹脂材料により形成されている。発光部3は、例えば、外装部2の先端部分における内周側に配置された光ファイバと、光ファイバの基端面に対向して配置された発光素子(LED等、図示しない)と、を備えており、光ファイバの先端面は、外装部2の先端開口側に向けられている。なお、発光部3から出射される光の波長を、血液に含まれる粒子(赤血球等 以下、「血中粒子」という)の粒子径との大小関係から適宜調整することにより、後述するように、血管内に出射された光の一部は、血管壁にて正反射し、光の別の一部は、血中粒子に当たって散乱するようになる。発光部3から出射される光の波長は、600nm以上であることが好ましい。
【0018】
撮像部4は、外装部2の先端部分における内周側に配置されており、少なくとも、受光した光を電気信号に変換する撮像素子(例えば電荷結合素子、CMOS)を備える。撮像部4の受光面は、外装部2の先端開口側に向けられている。撮像部4の例としては、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサが挙げられる。また、撮像部4は、レンズを備えない構成や、レンズがカメラの前面に配置された構成、レンズの代わりにピンホールがカメラの前面に配置された構成や、レンズがカメラに一体化された構成であってもよい。撮像部4から導出された配線5は、撮像部4から出力される電気信号を受信して撮像画像を生成する装置(図示しない)に電気的に接続されている。
【0019】
本実施形態では、
図1に示すように、撮像部4(撮像素子)が、血中内撮像装置1の偏光板6に近接した先端部分に配置されているので、偏光板6からの光量があまり低下することなく、撮像素子で光を受光できる。また、
図2に示すように、血中内撮像装置1の軸方向(Z軸方向)視で、撮像部4が外装部2の内部空間における略中央に位置し、複数の発光部3(本実施形態では3本の光ファイバ)の先端部が撮像部4の両側にそれぞれ配置されている。このため、発光部3から多量の光が出射される。
【0020】
偏光板6は、特定方向の偏光成分の光(電場および磁場の振動方向が特定の一方向である光成分)だけを通過させる偏光部材である。偏光板6は、血中内撮像装置1の軸方向(Z軸方向)において、発光部3と撮像部4との前側に配置されている。詳細には、撮像部4の先端と偏光板6の先端とは、いずれも、血中内撮像装置1の軸方向視で、偏光板6の外形線内に位置している。また、撮像部4の受光面は、全体的に偏光板6の背面に接触している。さらに、血中内撮像装置1の軸方向視で、撮像部4の受光面の面積は、発光部3の発光面積(光ファイバの端面の総面積)より大きいので、撮像部4は多量の光を受光できる。
【0021】
A-2.本実施形態の効果:
図3は、血中内撮像装置1の作用の説明図である。
図3に示す発光部3と撮像部4と偏光板6との配置関係は、光学的な配置関係であり、実際の物理的な配置関係とは異なる。血管壁(図示しない)を撮像するには、まず、血中内撮像装置1を血管内に挿入し、発光部3から第1の出射光L1を出射させる。第1の出射光L1は、自然光(非偏光)であり、複数の方向の偏光成分を含んでいる。発光部3から偏光板6に照射された第1の出射光L1のうち、上記特定方向の偏光成分の光である第1の偏光L2だけが偏光板6を通過して血管内に出射される一方で、特定方向以外の偏光成分の光は偏光板6に吸収されたり反射したりする。なお、第1の出射光L1の偏光成分は、上記特定方向の直線偏光以外に、円偏光や楕円偏光なども含む。
【0022】
血管内に出射された第1の偏光L2の一部は、血管壁にて正反射し、偏光方向を維持した偏光板6の前面に入射する。第1の偏光L2の別の一部は、血液に含まれる粒子(以下、「血中粒子」という)に当たって散乱し、特定方向とは異なる方向に偏光する散乱光が偏光板6の前面に入射することになる。すなわち、偏光板6には、血管壁からの反射光と、血中粒子からの散乱光とが混在した混合光L3が入射する。偏光板6は、混合光L3のうち、血中粒子からの散乱光を除去して、血管壁からの反射光L4だけを通過させる。これにより、血管壁からの反射光L4だけが撮像部4に入射することになる。これにより、フラッシングを行うことなく、血管壁を撮像することができる。
【0023】
本実施形態のように、本発明は、1つの偏光板が発光側の偏光部と受光側の偏光部とを兼ねる構成(一体の偏光板)であることが好ましい。これにより、発光側の偏光部と受光側の偏光部とが別体である構成よりも、両偏光部間の位置ズレに起因する撮像精度の低下を抑制することができる。また、血中内撮像装置1の部品点数の低減を図ることができる。
【0024】
本発明では、撮像部の受光面は全体的に偏光板の背面に接触していることが好ましい。発光部3からの第1の出射光L1の一部は、偏光板6の背面で反射することがある。このため、本実施形態の血中内撮像装置1では、撮像部4の受光面を全体的に偏光板6の背面に接触させている。これにより、撮像部4と偏光板6とが離間した構成よりも、偏光板6の背面で反射した光が撮像部4の受光面に入射しにくくなるので、偏光板6からの反射光に起因する撮像精度の低下を抑制することができる。
【0025】
B.第2実施形態:
B-1.血中内撮像装置(バルーンカテーテル)の構成
図4から
図8を参照して、第2実施形態における血中内撮像装置の構成を説明する。第2実施形態では、血中内撮像装置がバルーンカテーテルを兼ねる。
図4は、バルーンカテーテルの斜視図であり、
図5は、その縦断面図である。
図4および
図5におけるZ軸負方向側が、医師等の手技者によって操作されるバルーンカテーテル100の基端側(近位側)である。図面では、該基端側の構成を省略してある。Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)である。
図4および
図5では、バルーンカテーテル100が全体としてZ軸方向に平行な直線状となった状態を示しているが、バルーンカテーテル100は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。なお、バルーンカテーテル100の縦断面とは、バルーンカテーテル100の軸方向(長手方向 Z軸方向)に平行な断面(YZ断面)をいい、バルーンカテーテル100の横断面とは、軸方向に垂直な断面(XY断面)をいう。
図4及び5では、後述するバルーン30が拡張した状態を示してある。
【0026】
図6は、
図5のVI-VIの位置におけるバルーンカテーテル100の横断面図であり、
図7は、
図5のVII-VIIの位置におけるバルーンカテーテル100の横断面図であり、
図8は、
図5のVIII-VIIIの位置におけるバルーンカテーテル100の横断面図である。
【0027】
バルーンカテーテル100は、血管における病変部を押し広げて拡張させるために、血管等に挿入される医療用デバイスであり、かつ、血管内視鏡の機能を備える。バルーンカテーテル100は、インナーシャフト10と、アウターシャフト20と、バルーン30と、内視鏡ユニット40と、を備えている。バルーンカテーテル100は、特許請求の範囲における血中内撮像装置の一例である。
【0028】
図4および
図5に示すように、インナーシャフト10は、先端と基端とが開口した筒状(例えば円筒状)の部材である。なお、本明細書において「筒状(円筒状)」とは、完全な筒形状(円筒形状)に限らず、全体として略筒状(略円筒形状、例えば、若干、円錐形状や、一部に凹凸がある形状など)であってもよい。インナーシャフト10の先端には、先端チップ12が設けられている。先端チップ12は、先端と後端とが開口した筒状の部材である。先端チップ12は、その先端側にポート14が形成されると共に、先端に向かって外径が徐々に小さくなるテーパ状の外形を有している。なお、先端チップ12は、例えば樹脂により形成されている。インナーシャフト10は、特許請求の範囲におけるシャフトに相当する。
【0029】
図4および
図5に示すように、インナーシャフト10の内部には、第1のガイドワイヤGW1が挿通される第1のガイドワイヤルーメンWR1と、第2のガイドワイヤGW2が挿通される第2のガイドワイヤルーメンWR2と、内視鏡ユニット40が挿通されるユニットルーメンCRとが形成されている。
【0030】
第1のガイドワイヤルーメンWR1は、インナーシャフト10の軸方向に沿ってインナーシャフト10の全長にわたって延びている。第1のガイドワイヤルーメンWR1に挿通された第1のガイドワイヤGW1は、第1のガイドワイヤルーメンWR1の先端開口部から外部に導出される。第2のガイドワイヤルーメンWR2の先端側は、インナーシャフト10の軸方向に沿って先端側に延びており、第2のガイドワイヤルーメンWR2の基端側は、該軸方向に対して側方に開口している。第2のガイドワイヤルーメンWR2に挿通された第2のガイドワイヤGW2は、第2のガイドワイヤルーメンWR2の先端開口部から外部に導出される。これにより、本実施形態におけるバルーンカテーテル100は、いわゆるラピッドエクスチェンジ型のカテーテルとして利用することができる。
【0031】
ユニットルーメンCRは、バルーンカテーテル100の軸方向に沿ってバルーンカテーテル100の全長にわたって延びている。ユニットルーメンCRに挿通された内視鏡ユニット40は、ユニットルーメンCRに連通する先端チップ12のポート14の先端位置まで移動可能とされている。
【0032】
アウターシャフト20は、先端と基端とが開口した筒状(例えば円筒状)の部材である。アウターシャフト20の内径は、インナーシャフト10の外径より大きい。アウターシャフト20は、インナーシャフト10の一部を収容し、かつ、インナーシャフト10と同軸上に位置するように配置されている。インナーシャフト10の先端部は、アウターシャフト20の先端部より先端側に突出している。インナーシャフト10の外周面とアウターシャフト20の内周面との間には、バルーン30を拡張するための拡張用の流体が流通する拡張ルーメンBR(
図8参照)が形成されている。なお、拡張用の流体は、液体を用い、典型的には、生理食塩水と造影剤との混合液を用いる。
【0033】
インナーシャフト10とアウターシャフト20とは、熱融着可能であり、かつ、ある程度の可撓性を有する材料により形成されている。インナーシャフト10とアウターシャフト20との形成材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリウレタン等が挙げられる。インナーシャフト10のうち、少なくともバルーン30に覆われる部分は、光透過可能な材料により形成されている。光透過可能な材料とは、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等が挙げられる。
【0034】
バルーン30は、拡張用の流体の供給および排出に伴い拡張および収縮可能な拡張部材である。バルーン30は、インナーシャフト10の内、アウターシャフト20の先端から突出した先端部を覆う。また、バルーン30の先端部32は、例えば溶着により、インナーシャフト10の外周面に接合されており、バルーン30の基端部34は、例えば溶着により、アウターシャフト20の外周面に接合されている。なお、バルーン30は、収縮された状態では、インナーシャフト10とアウターシャフト20との外周面に密着するように折り畳まれる。
【0035】
バルーン30は、ある程度の可撓性を有する材料により形成されていることが好ましく、インナーシャフト10やアウターシャフト20より薄くて、可撓性を有する材料により形成されていることがより好ましい。バルーン30の形成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が挙げられる。本実施形態では、バルーン30は、光透過可能な材料により形成されている。光透過可能な材料とは、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等が挙げられる。
【0036】
内視鏡ユニット40は、全体として、長尺状であり、上記実施形態1における血中内撮像装置1と同様の構成である。すなわち、
図8に示すように、内視鏡ユニット40は、長尺状の外装部42内に、複数(本実施形態では撮像部4つ)の発光部43(光ファイバ)と、撮像部44と、偏光板46とが配置されている。内視鏡ユニット40は、ユニットルーメンCR内に挿通され、かつ、ユニットルーメンCR内でバルーンカテーテル100の軸方向に移動可能とされている。このため、バルーンカテーテル100では、内視鏡ユニット40の先端(発光部43の発光面、撮像部44の受光面)が、バルーンカテーテル100(先端チップ12)の先端の位置(バルーン30より先端)と、バルーン30(インナーシャフト10の光透過部)内の位置とに変位可能である。
【0037】
B-2.本実施形態の効果:
本実施形態に係るバルーンカテーテル100によれば、内視鏡ユニット40の先端を、バルーンカテーテル100の先端の位置に配置することにより、シャフトの前方に位置する血管内の状態を撮像する前方観察が可能になる。また、内視鏡ユニット40の先端を、バルーン30内の位置に配置することにより、バルーン30を介して、バルーンカテーテル100の側方に位置する血管内の状態を撮像する側方観察が可能である。本実施形態では、バルーン30とインナーシャフト10とのバルーンカテーテル100の周方向における1/2以上が光透過可能な材料により形成されているため、広角な範囲(
図5の範囲H参照)で血管内の状態を撮像することができる。なお、バルーン30とインナーシャフト10とのバルーンカテーテル100における光透過可能な部分は、周方向における3/4以上であることが好ましく、全周であることがより好ましい。
【0038】
本実施形態によれば、バルーンカテーテル100は、バルーンカテーテルに血管内視鏡の機能を備えた構成であるため、例えば、血管内の状態を撮像しつつ、撮像結果により発見された病変部に対してバルーン30を拡張させて治療を施すことができる。
【0039】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0040】
上記各実施形態における血中内撮像装置1や血中内撮像装置(バルーンカテーテル)100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記各実施形態では、発光部として、発光素子から出射された光を、光ファイバを介して血管内に照射する構成を例示したが、これに限らず、例えば発光素子を外装部の先端側に配置して発光素子からの光を、直接、血管内に出射させる構成であってもよい。上記各実施形態において、撮像部は、外装部の先端部分に撮像素子を備える構成に限らず、例えば、血管内からの反射光を、光ファイバを介して撮像素子に受光させる構成であってもよい。
【0041】
第2実施形態における血中内撮像装置100のうち、バルーン30及びインナーシャフト10のうち、少なくともバルーン30に覆われる部分が、光透過可能な材料により形成されているが、必ずしも、その部分を光透過可能としなくてもよい。内視鏡ユニット40を、血中内撮像装置100の先端近傍に移動させれば、血管壁を撮像することが可能となるからである。
【0042】
第1実施形態では、第1の偏光部および第2の偏光部として、1つの偏光板6を例示したが、例えば、第1の偏光部と第2の偏光部とが別体であってもよい。また、発光部3(光ファイバ)の先端と偏光板6の背面とは離隔していたが(
図1参照)、発光部3の先端と偏光板6の背面とが接触している構成であってもよい。これにより、例えば発光部3から出射され偏光板6で反射した光が撮像部4に入射することに起因して血管内の状態の撮像精度が低下することを抑制することができる。
【0043】
上記各実施形態における血中内撮像装置1,100における各部材の材料は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 : 血中内撮像装置(第1実施形態)
2 : 外装部(第1実施形態)
3 : 発光部(第1実施形態)
4 : 撮像部(第1実施形態)
5 : 配線
6 : 偏光板(第1実施形態)
10 : インナーシャフト
12 : 先端チップ
14 : ポート
20 : アウターシャフト
30 : バルーン
32 : 先端部
34 : 基端部
40 : 内視鏡ユニット
42 : 外装部(第2実施形態)
43 : 発光部(第2実施形態)
44 : 撮像部(第2実施形態)
46 : 偏光板(第2実施形態)
100: 血中内撮像装置(バルーンカテーテル)(第2実施形態)
BR : 拡張ルーメン
CR : ユニットルーメン
GW1: 第1のガイドワイヤ
GW2: 第2のガイドワイヤ
H : 範囲
L1 : 第1の出射光
L2 : 第1の偏光
L3 : 混合光
L4 : 反射光
WR1: 第1のガイドワイヤルーメン
WR2: 第2のガイドワイヤルーメン