(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】画像データ管理方法及び自動車用照明装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20240219BHJP
F21S 41/153 20180101ALI20240219BHJP
F21S 41/663 20180101ALI20240219BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20240219BHJP
H05B 45/10 20200101ALI20240219BHJP
H05B 47/105 20200101ALI20240219BHJP
F21W 102/20 20180101ALN20240219BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240219BHJP
【FI】
B60Q1/04 E
F21S41/153
F21S41/663
B60Q1/14 H
H05B45/10
H05B47/105
F21W102:20
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2022535726
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2020085132
(87)【国際公開番号】W WO2021116125
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-04
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ヤセール、アルメイオ
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンタン、プラット
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015012808(DE,A1)
【文献】米国特許第06061475(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102008062639(DE,A1)
【文献】特表2019-522594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00
F21S 41/00
H05B 45/10
H05B 47/105
F21W 102/20
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用照明装置(10)において画像データを管理するための方法であって、
複数の画素(3)を備えた画像パターン(1)であって、各画素が当該画素(3)の光度に関連する数値によって特徴付けられている前記画像パターン(1)を提供するステップと、
前記画像パターン(1)を複数の画素
(3)からなる複数の行または列へと分割し、複数の行パターン(2)を作成するステップと、
前記行パターン(2)のうちの1つにおける最初の画素を選択し、前記最初の画素の数値と隣接する画素の数値との関係に関連する最初の勾配値を算出するステップと、
各画素について対応する勾配値を計算するステップと、
各画素について、対応する勾配値と最初の勾配値との差が第1または第2の条件の1つを満たすか否かをチェックするステップと、
前記対応する勾配値と最初の勾配値との差が前記第1の条件を満たさない終端画素を見つけるまで前のステップを繰り返すステップと、
前記最初の画素と前記終端画素との間の線形セグメントを定義するステップと、
別の最初の画素を選択し、最初の勾配値を計算するステップ、対応する勾配値を計算するステップ、第1および第2の条件が満たされていることをチェックするステップ、終端画素を見つけるステップ、および線形セグメントを定義するステップを、前記行パターン(2)全体に対しての複数の線形セグメントが定義されるまで繰り返すステップと、
線形セグメントのデータを圧縮するステップと、
圧縮されたデータを光モジュールに送信するステップと、
を備えた方法。
【請求項2】
前記画像パターン(1)の
画素(3)はグレイスケール画素であり、より詳細には、各画素
(3)の光度は0から255までのスケールによる数値によって特徴付けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の条件が、第1の閾値を定義することと、対応する勾配値と前記最初の勾配値との差の絶対値が前記第1の閾値より低いかまたは等しいかどうかをチェックすることとを含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の条件が、第2の閾値を定義することと、対応する勾配値の絶対値が第2の閾値より低いかまたは等しいかどうかをチェックすることとを含む、
請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
圧縮されたデータが、画像パターン(1)の特定の部分のみに関連している、
請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記圧縮されたデータを解凍するステップをさらに含む、
請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
- 複数の光源(5)を含む光モジュール(4)と、
-
請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の方法のステップを実行するための制御ユニット(6)と、
を備えた自動車用照明装置(10)。
【請求項8】
前記光モジュール(4)は、プロセッサユニット(7)をさらに備え、前記プロセッサユニット(7)は、圧縮データを解凍するように構成されている、請求項7に記載の自動車用照明装置(10)。
【請求項9】
前記光源(5)は、LEDなどのソリッドステート光源である、
請求項7または8に記載の自動車用照明装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用照明装置の分野に関し、より詳細には、照明光源の制御に由来する電子データの管理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の照明装置は、光源の数が増えており、それらを制御して照明の機能を適応させる必要がある。
【0003】
このような光源の数は、制御ユニットが管理しなければならない膨大な量のデータを含んでいる。PCMと光モジュール間のデータ転送には、CANプロトコル(CAN-FDは最もよく使われるものの1つ)がよく使用される。しかし、自動車メーカーによっては、CANプロトコルの帯域幅を制限することを決定し、このことは通常5Mbps程度を必要とする管理動作に影響を及ぼしている。PCMは画素コントロールモジュールと呼ばれ、各光モジュールの画素パターンを管理するように構成された制御ユニットである。各ヘッドランプは、少なくとも1つの照明機能を部分的または全体的に管理するために配置された異なる(複数の)光ライトモジュールを含んでいることもあるため、それらがPCMなどの単一の制御ユニットによって制御されることが重要である。
【0004】
現在の圧縮方式はハイビームパターンに対してはあまり効率が良くなく、このことにより自動車メーカーが要求する帯域幅の縮小に対する妥協を余儀なくされている。
【0005】
この問題は、最近の高解像度モジュールではさらに深刻であり、そこでは情報量ははるかに多いのに、帯域の限界は上がらない。
【0006】
この問題の解決策が求められている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、自動車用照明装置において画像データを管理するための方法によってこれらの問題の解決策を提供する。この方法は、
- 複数の画素を備えた画像パターンであって、各画素が当該画素の光度に関連する数値によって特徴付けられている前記画像パターンを提供するステップと、
- 前記画像パターンを複数の画素からなる複数の行または列へと分割し、複数の行パターンを作成するステップと、
- 前記行パターンのうちの1つにおける最初の画素を選択し、前記最初の画素の数値と隣接する画素の数値との関係に関連する最初の勾配値を算出するステップと、
- 各画素について対応する勾配値を計算するステップと、
- 各画素について、対応する勾配値と最初の勾配値との差が第1または第2の条件の1つを満たすか否かをチェックするステップと、
- 前記対応する勾配値と最初の勾配値との差が前記第1の条件を満たさない終端画素を見つけるまで前のステップを繰り返すステップと、
- 前記最初の画素と前記終端画素との間の線形セグメントを定義するステップと、
- 別の最初の画素を選択し、最初の勾配値を計算するステップ、対応する勾配値を計算するステップ、第1および第2の条件が満たされていることをチェックするステップ、終端画素を見つけるステップ、および線形セグメントを定義するステップを、前記行パターン全体に対しての複数の線形セグメントが定義されるまで繰り返すステップと、
- 線形セグメントのデータを圧縮するステップと、
- 圧縮されたデータを光モジュールに送信するステップと、
を含む。
【0008】
本方法は、制御装置と光モジュールとの間でやり取りされる画像データを管理することを目的とする。制御ユニットは、画像パターンおよび圧縮データの計算を担当し、照明装置の内部(物理的に)に限らず、自動車内の任意の位置に配置することができる。光モジュールは、照明または信号のいずれかの光パターンを提供することを目的としており、照明装置の内部に配置されている。
【0009】
この方法の主な利点は、線形セグメントの拡張における最適化により、圧縮率が向上することである。上述の方法は、条件が満たされなくなるまでセグメントを拡張する高速で信頼性の高い方法を提供するため、特に画像パターンがハイビームパターンを参照する場合において、それによって置き換えられた元の画素と比較してより少ないデータ量を提供する。また、行パターンの擬似ガウス形状は圧縮率の向上に寄与する。なぜなら、行パターンのいくつかの部分がデータの大きな損失なしに線形近似で置き換えられるからである。
【0010】
いくつかの特定の実施形態では、画像パターンの光画素はグレイスケール画素であり、より詳細には、各画素の光度は0から255までのスケールに従っている。
【0011】
光モジュールは、通常、光度を0から255のグレイスケールで表現する。これは、光のパターンを数値化して光のデータに変換し、車両の制御装置で伝送および管理できるようにするための方法である。
【0012】
いくつかの特定の実施形態において、第1の条件は、第1の閾値を定義することと、対応する勾配値と最初の勾配との間の差の絶対値が第1の閾値より低いか又は等しいかどうかをチェックすることと、を含む。
【0013】
各画素について、第1の条件がチェックされる。この第1の条件は、各画素について計算された対応する勾配値を、セグメントの最初の画素について計算された最初の(第1の)勾配値と比較する。対応する勾配値が最初の勾配値から第1の閾値以上に逸脱している場合、セグメントはこの終端画素で終了することになる。
【0014】
いくつかの特定の実施形態において、第2の条件は、第2の閾値を定義することと、対応する勾配値の絶対値が第2の閾値より低いか又は等しいかどうかをチェックすることと、を含む。
【0015】
各画素について、第2の条件がチェックされる。この第2の条件は、各画素について算出された対応する勾配値の絶対値が第2の閾値より小さいことを確認するだけのものである。これは、突然の高い勾配を検出するために使用される。いくつかの特定の実施形態において、本方法は、圧縮データを解凍するステップをさらに含む。
【0016】
このステップは、光モジュールで元の画像を投影する場合に便利である。
【0017】
いくつかの特定の実施形態では、圧縮されたデータは、画像パターンの特定の部分のみに関連している。
【0018】
このクロップ(切り出し)は、画像の大部分が真っ暗な場合に有用であり、圧縮ステージは代表的値を含む部分のみにフォーカスして行うことができる。
【0019】
第2の発明の側面では、本発明は、
- 複数の光源を備えた光モジュールと、
- 第1の発明の態様に係る方法のステップを実行するための制御ユニットと、
を備えた照明装置を提供する。
【0020】
この照明装置は、従来のものより低い帯域で動作させることができる。
【0021】
いくつかの特定の実施形態において、光モジュールは、プロセッサユニットをさらに備え、プロセッサユニットは、圧縮されたデータを解凍するように構成される。
【0022】
適切な光モジュールに解凍ステージを設けることで、モジュールそれ自体に至るまで帯域を狭めることができる。
【0023】
いくつかの特定の実施形態では、光源は、LEDなどのソリッドステート光源である。
【0024】
「ソリッドステート」という用語は、半導体を用いて電気を光に変換するソリッドステートエレクトロルミネッセンスによって発せられる光を指す。白熱灯に比べ、ソリッドステート発光は、少ない発熱およびエネルギー散逸で可視光線を発生させることができる。また、ソリッドステート電子照明装置は質量が小さいため、もろいガラス管や電球、細長いフィラメント線に比べ、衝撃や振動に強い。また、フィラメントの蒸発がなく、照明装置の寿命が延びる可能性がある。このような照明には、電気フィラメント、プラズマ、ガスではなく、半導体発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、高分子発光ダイオード(PLED)を光源とするものがある。
【0025】
特に別様に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、当該技術分野における慣用の意味に解釈される。さらに、一般的に使用される用語も、本明細書で明示的に定義されない限り、関連する技術分野において慣用の意味に解釈されるべきであり、理想化されるかあるいは過度に形式的な意味において解釈されるべきではないと理解されるであろう。
【0026】
本文中では、用語「comprise(備える、含む)」およびその派生語(「comprising(備えている、含んでいる)」など)は、排他的な意味に理解されるべきではなく、すなわち、これらの用語は、記載されかつ定義されているものがさらなる要素、ステップなどを含む可能性を排除するものとして解釈されるべきではない。
【0027】
説明を完結させるため、および本発明のより良い理解を提供するために、一組の図面が提供される。前記図面は、本明細書と一体の部分を形成するものであり、本発明の実施形態を示すものであり、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきものではなく、単に本発明がどのように実施し得るかの例として解釈されるべきである。図面は、以下の図を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明による自動車用照明装置によって投射されるハイビームモジュールの測光を示す第1の画像である。
【
図2】
図2は、
図1の測光を表す画素マトリックスの一部を示したものである。
【
図3】
図3は、本発明による方法の行パターンを示すグラフィック表示である。
【
図4】
図4は、本発明による方法のいくつかのステップを表したものである。
【
図5】
図5は、本発明による方法を使用した場合の線形化ステップの結果を示している。
【
図6】
図6は、本発明に係る自動車用照明装置を示す図である。
【0029】
これらの図では、以下の参照番号を使用している。
【符号の説明】
【0030】
1 画像パターン
2 行パターン
3 画像パターンの画素
4 光モジュール
5 LED
6 制御ユニット
7 プロセッサユニット
10 自動車用照明装置
100 自動車両
【0031】
例示的な実施形態は、当業者が本明細書に記載されたシステム及びプロセスを具現化し、実施することを可能にするために十分詳細に記載されている。実施形態は、多くの代替形態で提供することができ、本明細書に記載された例に限定されると解釈されるべきではないことを理解することが重要である。
【0032】
したがって、実施形態は様々な方法で変更され、様々な代替形態をとることができるが、その特定の実施形態は、例として図面に示され、以下に詳細に説明される。開示された特定の形態に限定する意図はない。それどころか、添付の特許請求の範囲の範囲に入るすべての変更、等価物、および代替物が含まれるべきである。
【0033】
図1は、本発明による自動車用照明装置によって投影されることになるハイビームモジュールの測光(光度計測)を示す第1の画像である。
【0034】
この最初の画像は(複数の)画素(ピクセル)に分割され、各画素は、黒に相当する0から白に相当する255までのスケールで、その光度によって特徴付けることができる。
【0035】
図2は、このような画素マトリックスの一部を示すもので、画像パターン1と呼ばれる。この画像パターン1の各画素3は、前述のスケールに従った番号によって特徴付けられる。この画像パターン1を市販のソフトウェア製品によって圧縮すると50%より低い圧縮率が得られるが、これは一部の自動車メーカーにとって受け入れ難いものである。
【0036】
この画像では、画素は(複数の)行パターン2に分割されている。各パターンは、関連する画素の
光度に応じて0から255の数値を持つ一連のデータを備えている。明らかに、これらの画素の数値は、本発明の理解を深めるために単に選ばれた簡略化された例であり、
図1の光パターンの光度には対応していない。
【0037】
図3は、前の図の1行目を表している。18個の数値化された画素があり、それぞれの画素の光度を表す数値が記載されている。
【0038】
本発明の方法の特定の実施形態は、この行パターンの各画素の勾配を計算するステップを含む。
【0039】
図4は、そのような勾配パターンを表したものである。各画素について、前の図に関して、光度の数値は、対応する勾配値に置き換えられている。
【0040】
最初の画素が最初の線形セグメントの始点とされる。そして、各画素について、2つの条件がチェックされる。もし、2つの条件を満たす画素があれば、その画素は同じ線形セグメントに属する。しかし、2つの条件のいずれをも満たさない場合、その画素はセグメントの終端画素として設定され、次の画素から別のセグメントが始まる。
【0041】
図3の例によれば、最初の線形セグメントは、勾配値が3である最初の画素から開始される。第1の閾値である4、および第2の閾値である50が設定されている。
【0042】
したがって、各画素について、対応する勾配と最初の勾配(3であった)の差が5以下であることが第1の条件となる。
【0043】
また、第2の条件は、勾配が50より低いことである。
【0044】
これらの2つの条件が与えられたとすると、4番目の画素の勾配と最初の勾配値の差は5より大きいので、最初のセグメントは4番目の画素で終了することになる。
【0045】
したがって、2番目のセグメントは5番目の画素から始まることになる。そして、それは8番目の画素で終了する。なぜなら、この6番目の画素および7番目の画素は両方の条件を満たし、8番目の画素は第1および第2の条件のいずれも満たさないからである。3番目のセグメントは9番目の画素から始まり、10番目の画素で終わることになる。
【0046】
この方法に従って、行全体が(複数の)線形セグメントに変換される。
【0047】
各線形セグメントは、システムにデータを保存するために、各セグメントの最初の画素の勾配を持つことになる。従って、線形化されたバージョンの光度値は、元の光度値とわずかに異なることになる。
【0048】
図5は、各画素の線形化された値を表しており、そこでは各セグメントが異なる色で表されている。
【0049】
各画素について、元の光度値は"Original(元)"の行で表され、線形化されたセグメントの光度値の結果は"Linearized(線形化)"の行で示される。各セグメントは、各セグメントの最初の画素の勾配により与えられる一定の勾配を有する。
【0050】
もちろん、実際のデータによる行パターンでは、セグメントの数は画素数よりかなり少なくなる。この例は、この方法が直面する可能性のあるすべての状況に対処することを意図しているにすぎない。
【0051】
図6は、本発明による自動車用照明装置を示し、この照明装置は、
- 複数のLED5を備えた光モジュール4と、
- これまでに示した図で説明した圧縮ステップを実行し、圧縮データを生成するための制御ユニット6と、
- プロセッサユニット7であって、当該プロセッサユニット7が圧縮されたデータを解凍(伸長)するように構成されており、当該プロセッサユニットが光モジュール4に配置されている、前記プロセッサユニット7と、
を備えている。
【0052】
この光モジュールにより、伝送帯域幅を改善した良質な投影を実現することができる。