(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】最適化パラメータセットを用いた技術システムの製造または制御
(51)【国際特許分類】
G05B 13/02 20060101AFI20240219BHJP
G06F 8/35 20180101ALI20240219BHJP
G05B 13/04 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
G05B13/02 A
G06F8/35
G05B13/04
(21)【出願番号】P 2022552402
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(86)【国際出願番号】 EP2021055274
(87)【国際公開番号】W WO2021185579
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-08-31
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ヘルト,ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】スミルノフ,デニス
(72)【発明者】
【氏名】シュリーヴァスタヴァ,サンジーヴ
(72)【発明者】
【氏名】シィア,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヂォゥ,イアイン
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138542(JP,A)
【文献】特開2018-109876(JP,A)
【文献】特開2018-180759(JP,A)
【文献】特開2015-62102(JP,A)
【文献】特開2019-159675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0205809(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 13/02
G06F 8/35
G05B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
技術システムの製造または制御のためのコンピュータ実施方法であって
、以下の工程:
(a)前記技術システムの製造または制御に適したパラメータセット
であって、それぞれに実行可能性識別子が割り当てられたパラメータセットのサンプル
を入力すること(S1)、ここで前記実行可能性識別子は、前記技術システムの製造または制御に関して、前記技術システムの所定のシステム基準を満たす場合には、技術的に実行可能であるとして、または前記所定のシステム
基準を満たさない場合には、技術的に実行不可能であるとして、またはコンピュータシミュレーションを用いたパラメータセットの評価の結果、エラーとなった場合には、誤りであるとして、各パラメータセットを記録
している、
(b)
前記サンプルのうち、誤りのものではなく、実行不可能なものではなく、技術的に実行可能であると記録された前記サンプルのそれぞれの前記パラメータセット
を抽出し、抽出された技術的に実行可能であると記録された前記パラメータセットに基づいて、回帰法により前記技術システムのためのコンピュータ化された代理モデルを生成すること(S2)、
(c
)前記代理モデルに基づいて最適化されたパラメータセットを決定すること(S3)、および
(d)前記技術システムの製造または制御のための前記最適化されたパラメータセット(PS_opt)を出力すること(S4)、
を含む、コンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記最適化されたパラメータセット(PS_opt)の実行可能性識別子(FI)を、
前記サンプルをトレーニングデータとし実行可能性識別子を識別するように訓練された機械学習によって決定する
こと(S6)、
をさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記最適化されたパラメータセットが技術的に実行可能であると評価された場合に、当該最適化されたパラメータセットを前記パラメータセットのサンプルに追加する、
請求項2に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記最適化されたパラメータセット(PS_opt)は
、その実行可能性識別子(FI)に応じて決定される、請求項1~
3のいずれか1項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記最適化されたパラメータセット
を、前記パラメータセットのサンプルに追加
すること、
請求項1の方法ステップ(b)~(d)
を繰り返
すこと(REP)、
をさらに含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記入力されたパラメータセットのサンプルは、
回帰法により生成された前記技術システムのためのコンピュータ化された代理モデルであって、前記技術システムの製造または制御に適した少なくとも1つのパラメータセットを決定するように構成された
代理モデルを用いて決定される、
請求項1~
5のいずれか1項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記回帰法は、逐次局所ガウス回帰法である、
請求項1
~6のいずれか1項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
前記技術システムは、出力された前記最適化されたパラメータセットを使用して製造または制御する(S5)、
請求項1~
7のいずれか1項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
技術システムの製造または制御のための装置(100)であって:
(a)技術システムの製造または制御に適したパラメータセット
であって、それぞれに実行可能性識別子が割り当てられたパラメータセットのサンプル
を入力するように構成された入力ユニット(101)、ここで前記実行可能性識別子は、前記技術システムの製造または制御に関して、前記技術システムの所定のシステム基準を満たす場合には、技術的に実行可能であるとして、または技術的に実行不可能であるとして、またはコンピュータシミュレーションを用いたパラメータセットの評価の結果、エラーとなった場合には、誤りであるとして、各パラメータセットを記録
している、
(b)
前記サンプルのうち、誤りのものではなく、実行不可能なものではなく、技術的に実行可能であると記録された前記パラメータセット
を抽出し、抽出された技術的に実行可能であると記録された前記パラメータセットに基づいて、前記技術システムのためのコンピュータ化された代理モデルを生成するように構成された生成部(102)、
(c
)生成された前記代理モデルに基づいて最適化されたパラメータセットを決定するように構成された最適化部(103)
、
(d)技術システムの製造または制御のための最適化されたパラメータセット(PS_opt)を出力するように構成された出力ユニット(104)、
を備える装置。
【請求項10】
(e)前記最適化されたパラメータセット(PS_opt)の実行可能性識別子(FI)を、前記サンプルをトレーニングデータとする機械学習によって決定する評価ユニット(105)、および
(f)前記最適化されたパラメータセットが技術的に実行可能であると評価された場合に、前記最適化されたパラメータセットを、前記パラメータセットのサンプルに追加するように構成された製造ユニット、
をさらに備える、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
出力された前記最適化されたパラメータセットを使用して前記技術システムを製造するように構成された製造ユニットを
さらに含む、
請求項
9または10に記載の装置。
【請求項12】
出力された前記最適化されたパラメータセットを使用して前記技術システムを制御するように構成された制御ユニットを
さらに備える、
請求項
9または10に記載の装置。
【請求項13】
デジタルコンピュータの内部メモリに直接搭載可能なコンピュータプログラム製品であって、
当該コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行される場合に、請求項1~
8のいずれか1つの前記
方法における各工程を実行するためのソフトウェア・コード部分を含む、
コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、技術システムの製造または制御のための最適化パラメータセットを生成するための、コンピュータ実施方法、装置、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
製品または技術システムを製造または制御する前に、製造パラメータ、制御パラメータ、および構築パラメータの少なくとも1つを適切に決定することが必要である。例えば、製品の製造または技術システムの制御のためのパラメータセットを最適化するために、設計段階において、コンピュータ化された最適化の手法(以下、単に、「コンピュータ最適化法」という場合がある。)がしばしば使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような最適化手法は、典型的には反復して実行され、最適化から得られるパラメータの値を評価する必要があるため、時間および/またはリソースを消費する可能性がある。この評価は、通常、製品または技術システムのコンピュータシミュレーション、例えば、有限要素解析(finite element analysis:FEA)または数値流体力学(computational fluid dynamics:CFD)によるシミュレーションを使用して実行される。しかしながら、典型的なオプティマイザ(最適化部)は、通常、このようなコンピュータ化されたモデルについての情報を十分に有しておらず、その結果、オプティマイザは、評価することができないパラメータを生成したり、システムまたは製品の制約を満たさないパラメータを生成したりして、役に立たないパラメータセットとなる可能性がある。
【0005】
特許文献1は、発電所の運転のシミュレーションおよび最適化のための制御装置を開示している。この制御装置では、幾何学データおよび運転データに基づいて発電所の動的モデルが作成され、この動的モデルに基づいて特定の性能測定基準に関する代理モデルが生成される。この代理モデルは、当該特定の性能測定基準に関して発電所の動作を最適化するための、最適化手順に組み込まれるようになっている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、製品または技術システムを製造または制御するための、最適化されたパラメータセットの生成を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、独立請求項の特徴によって達成される。従属請求項は、本発明のさらなる発展形態を含む。
【0008】
本発明は、第1の態様によれば、技術システムの製造または制御のためのコンピュータ実施方法を提供し、この方法は以下のステップ(a)~(d)を含む。
(a)技術システムの製造または制御に適したパラメータセットのサンプルを、そのパラメータセットの各々に割り当てられた実行可能性識別子を付して入力する。ここで、実行可能性識別子は、技術システムの製造または制御に関して、技術システムの所定のシステム基準を満たす場合には技術的に実行可能(feasible)である旨を、または所定のシステム基準を満たさない場合には技術的に実行不可能(non-feasible)である旨を、またはコンピュータシミュレーションを用いたパラメータセットの評価でエラーが生じた場合は誤り(erroneous)である旨を、各パラメータセットに記録する(mark;印を付す)。
(b)誤りではなく、実行不可能でもなく、技術的に実行可能であると記録されているが、と記録されたサンプルのそれぞれのパラメータセットに基づいて、回帰法により、技術システムのためのコンピュータ化された代理モデルを生成する。
(c)コンピュータ最適化法によって、代理モデルに基づいて最適化されたパラメータセットを決定する。
(d)技術システムの製造または制御のための最適化されたパラメータセットを出力する。
【0009】
別段の指示がない場合、用語「計算(calculate)」,「実行」,「コンピュータ実施」,「コンピュータによる計算(compute)」,「決定」,「生成」,「構成」,「再構成」などは、好ましくは、データを変更および/または生成する、行為および/またはプロセスおよび/またはステップ、に関連する。ここで、データは、特に物理的データとして示され得るものであり、コンピュータまたはプロセッサによって実行されるものであり得る。「コンピュータ」という用語は、広義に解釈することができ、パーソナルコンピュータ、サーバ、モバイルコンピューティングデバイス、または中央処理装置(central processing unit:CPU)やマイクロプロセッサ等のプロセッサとすることができる。
【0010】
本発明の重要な利点は、技術システムの少なくとも一部を表すおよび/または近似する代用モデルを使用することである。代理モデルは、好ましくはコンピュータ化されたモデルである。代理モデルは、好ましくは、CFDシミュレーションモデルのような、技術システムの詳細なコンピュータ化シミュレーションモデルよりも複雑ではない。代理モデルは、例えば、データ構造内に格納することができる。代理モデルは、回帰法によって生成され、技術システムの製造または制御のためのパラメータセットの入力サンプルに応じて生成される。代理モデルは、少なくとも1つの技術的に実行可能なパラメータセットと、このパラメータセットの対応する評価結果と、に基づいて生成される。
【0011】
パラメータセットは、少なくとも技術システムの特性または機能を定義する、複数のパラメータ値を含む。パラメータセットは、データセットとして理解することができる。パラメータセットは、例えば、構造パラメータ、製造パラメータ、制御パラメータ、運転パラメータ、および/または設計パラメータを含むことができる。構造パラメータセットは、例えば、少なくとも技術システムの構成要素の、サイズ、重量、材料などを特定することができるパラメータを含む。さらに、構造パラメータセットまたは制御パラメータセットは、製造ユニットまたは製造機械のためのシステム固有または製品固有の設定パラメータを含むことができる。制御パラメータセットは、例えば、技術システムの制御用の技術システムの制御ユニットを設定するための、システム固有制御パラメータを含むことができる。
【0012】
パラメータセットは、例えば、製造ユニットに対する入力として機能することができ、この製造ユニットは、それぞれの構造パラメータセットに応じて技術システムを製造するように構成される。パラメータセットのサンプルは、それゆえ、複数のパラメータセットであり、各パラメータセットは、技術システムを製造するのに適している。各パラメータセットには、より適切なパラメータセットを識別することを可能にする実行可能識別子が付されている。
【0013】
最適化されたパラメータセット(以下、単に「最適化パラメータセット」という場合がある)は、代理モデルに基づいて決定され、最適化プロセスを加速する。代理モデルは、好ましくは実行可能なパラメータセットに基づいて生成されるが、誤ったパラメータセットに基づいて生成されることはなく、好適には実行不可能なパラメータセットに基づいて生成されることもない。最適化は、その後、事前制約付きモデルで実行される。言い換えれば、最適化パラメータセットを決定するための最適化手順は、例えば、技術システムのシステム制約に関する情報を考慮に入れる。これにより、技術システムの製造または制御のための、より適切な最適化パラメータセットを生成することができる。したがって、パラメータの最適化は、標準的な方法と比較して加速される。
【0014】
コンピュータ実施方法の一実施形態によれば、最適化パラメータセットの実行可能性識別子は、コンピュータ化された評価方法(以下、単に「コンピュータ評価方法」という。)によって決定することができる。
【0015】
コンピュータ評価方法は、例えば機械学習方法に基づいて、トレーニングデータセットの実行可能性識別子分布を再現するように訓練(学習)することができ、このトレーニングデータセットは、それぞれの実行可能性識別子でラベル付けされたパラメータセットを含んでいる。コンピュータ評価方法は、例えば、人工ニューラルネットワーク等である。このようなコンピュータ評価方法を使用すると、データに埋め込まれた情報、すなわちパラメータセットに埋め込まれた情報を利用して、パラメータセットが実行可能であるか、実行不可能であるか、あるいは誤りであるか、を識別することができる。
【0016】
例えば、出力された最適化パラメータセットは、そのような訓練されたコンピュータ評価方法によって評価され、技術システムの製造または制御の観点から、技術的に実行可能であるか、技術的に実行不可能であるか、または誤りであるか、を決定することができる。
【0017】
コンピュータ実施方法のさらなる実施形態によれば、最適化パラメータセットは、コンピュータ最適化法によって、また、その実行可能性識別子に応じて、決定することができる。
【0018】
出力された最適化パラメータセットのそれぞれの実行可能性識別子の値、すなわち、技術的に実行可能であるか、技術的に実行不可能であるか、または誤りであるかの値は、追加の最適化制約として、最適化法によってさらに評価され得る。このような追加情報を用いることで、最適化法は、特に誤ったパラメータの組合せおよび/または不必要な計算反復を回避するパラメータセットの生成が可能とされる。
【0019】
コンピュータ実施方法のさらなる実施形態によれば、最適化パラメータセットをパラメータセットのサンプルに追加することができ、請求項1の方法ステップ(b)~(d)が繰り返される。
【0020】
出力された最適化パラメータセットをパラメータセットのサンプルに追加することによって、最適化された代理モデルを生成することができ、最適化パラメータセットの生成をさらに改善することができる。
【0021】
コンピュータ実施方法のさらなる実施形態によれば、入力されたパラメータセットのサンプルは、技術システムの製造または制御に適した少なくとも1つのパラメータセットを決定するように構成された、第2のコンピュータ最適化法によって生成および出力され得る。
【0022】
パラメータセットの入力サンプルは、好ましくは、第2のコンピュータ最適化法によって生成され、各パラメータセットの技術的な実行可能性を決定するために、技術システムのコンピュータシミュレーションモデルを使用して評価される。第2のコンピュータ最適化法は、例えば、前述の最適化法と同じであり得る。
【0023】
コンピュータ実施方法のさらなる実施形態によれば、回帰法は、逐次局所ガウス回帰法とすることができる。
【0024】
代理モデルを生成するために、モデルを訓練するために逐次局所ガウス回帰(incremental local gaussian regression:ILGR)アルゴリズムを採用できる。このアルゴリズムは、局所重み付き回帰(locally weighted regression:LWR)とガウス過程回帰(Gaussian process regression:GPR)の長所を兼ね備えたものである。これは、局所化関数基底および近似推論技法を用いて、ますます局所的な性質を有しLWRと同様の計算複雑性を有するガウス過程回帰アルゴリズムを構築する。これは、例えば、未知のサイズのデータセットをストリーミングすることが可能であり、特に、反復最適化プロセス中に代理モデルを生成するのに適している。モデル生成は、新しいパラメータセットが利用可能である間、逐次的に行うことができる。
【0025】
コンピュータ実施方法のさらなる実施形態によれば、技術システムは、出力された最適化パラメータセットを用いて製造または制御することができる。
【0026】
出力された最適化パラメータセットは、例えば、この構造パラメータセットにしたがって、技術システムを製造するための製造ユニットまたは機械に転送することができる。あるいは、出力された最適化パラメータセットは、技術システムを制御するための制御ユニットに転送することができる。
【0027】
本発明は、第2の態様によれば、技術システムの製造または制御のための装置を提供する。この装置は、以下の(a)~(d)を備える。
(a)技術システムの製造または制御に適したパラメータセットのサンプルを、パラメータセットの各々に割り当てられた実行可能性識別子と共に入力するように構成された入力ユニット。ここで、実行可能性識別子は、技術システムの製造または制御に関して、技術システムの所定のシステム基準を満たす場合には技術的に実行可能として、所定のシステム基準を満たさない場合には技術的に実行不可能として、あるいは、コンピュータシミュレーションを使用してパラメータセットを評価した結果、エラーが発生した場合には、誤りとして、各パラメータセットを記録する。
(b)回帰法によって、誤りのパラメータセットおよび実行不可能なパラメータセットではなく、技術的に実行可能であると記録されたパラメータセットに基づいて、技術システムのためのコンピュータ化された代理モデルを生成するように構成された生成部。
(c)コンピュータ最適化法によって、生成された代理モデルに基づいて最適化パラメータセットを決定するように構成された最適化部。
(d)技術システムの製造または制御のための最適化パラメータセットを出力するように構成された出力ユニット。
【0028】
装置および/またはそのユニットの少なくとも1つは、本発明による方法ステップを実行するための少なくとも1つのプロセッサまたはコンピュータをさらに備えることができる。各ユニットは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで実現することができる。前記ユニットがハードウェアで実施される場合、例えば、コンピュータとして、またはプロセッサとして、あるいはシステムの一部として、デバイスとして実施されてもよい。前記ユニットがソフトウェアで実施される場合、コンピュータプログラム製品として、機能として、ルーチンとして、プログラムコードとして、または実行可能オブジェクトとして実施されてもよい。出力ユニットは、好ましくは、最適化パラメータセットを含むデータ構造を提供する。そのようなデータ構造は、例えば、製造ユニットまたは制御ユニットに転送することができる。
【0029】
装置は、出力された最適化パラメータセットを使用して技術システムを製造するように構成された製造ユニットをさらに備えることができる。あるいは、装置は、例えばネットワークを介して製造ユニットに接続することができる。
【0030】
装置は、出力された最適化パラメータセットを使用して技術システムを制御するように構成された制御ユニットをさらに備えることができる。あるいは、装置は、例えばネットワークを介して、制御ユニットに接続することができる。
【0031】
本発明は、デジタルコンピュータの内部メモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品であって、前記製品がコンピュータ上で実行されるときに前記方法のステップを実行するためのソフトウェア・コード部分を含むコンピュータプログラム製品をさらに含む。
【0032】
コンピュータプログラム手段のようなコンピュータプログラム製品は、メモリ・カード、USBスティック、CD-ROM、DVD、またはネットワーク内のサーバからダウンロード可能なファイルとして具体化することができる。
【0033】
本発明は、添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、技術システムの製造または制御のための方法の一実施形態に関連する方法ステップを含むフローチャートを示す。
【
図2】
図2は、技術システムの製造または制御のための方法の一実施形態の概略図を示す。
【
図3】
図3は、技術システムの製造または制御のための装置の一実施形態の概略図を示す。
【0035】
異なる図面における同等の部分には、同じ参照符号を付している。
【0036】
図1は、本発明による、最適化パラメータセットを使用した、技術システムの製造または制御のためのコンピュータ実施方法の方法ステップを示すフローチャートである。技術システムは、例えば、タービンやモーターのような機械、機械のハードウェア部品、機械部品、製品、または同様のものであり得る。さらに、技術システムは、例えば、水、油、輸送物などの輸送ネットワークなどの、複数の独立した要素を含む複雑なシステムであってもよい。
【0037】
最初のステップS1では、技術システムの製造または制御に適したパラメータセットのサンプルを入力する。パラメータセットは、それぞれの用途に応じて、すなわち、例えば、技術システムの製造あるいは制御のいずれかに応じて、構造または生産パラメータあるいは制御パラメータを含む。
【0038】
各パラメータセットには、技術システムの製造または制御に関して、技術的に実行可能であるか、技術的に実行不可能であるか、または誤りがある、のいずれかを示す実行可能性識別子がラベル付けされている。それぞれの実行可能性識別子は、例えば、分類方法または評価方法によって、および/または、例えば、技術システムのコンピュータシミュレーションを用いて各パラメータセットを評価する分析方法によって、決定することができる。
【0039】
パラメータセットは、例えば、技術システムの所与のシステム基準を満たす場合に、技術的に実行可能であるとラベル付けされる。パラメータセットは、例えば、所与のシステム基準を満たさない場合に、技術的に実行不可能であるとラベル付けされる。例えば、コンピュータシミュレーションを用いてパラメータセットを評価した結果、エラーとなった場合、パラメータセットは、例えば、エラー(誤り)としてラベル付けされる。したがって、パラメータセットが技術的に実行可能であると考えられるかどうかは、生成された最適化問題によって決定される。パラメータセットが制約のいずれかに違反する場合、そのパラメータセットは実行可能ではない。パラメータセットがすべての制約を満たす場合、実行可能としてマークされる。実行可能または実行不可能の区別は、エラーの状況である。前者は、すでに最適化によって決定されているが、後者は、例えば、評価ソフトウェアツールからのエラーなどの、不良の評価結果である。
【0040】
次のステップS2において、技術システムに関するコンピュータ化された代理モデルを、回帰法によって生成する。好ましくは、逐次局所ガウス回帰法が使用され、これは代理モデルを訓練するために採用される。それぞれのパラメータセットは、好ましくは、技術システムのサイズ、質量、幅、高さなどの機能性または特性を定義する。コンピュータ化された代理モデルは、技術システムを表すように、および/または、近似するように、構成されている。したがって、代理モデルは、技術的に実行可能および/または技術的に実行不可能な入力パラメータセットに基づいて生成することができる。好ましくは、技術的に実行可能なパラメータセットのみが、代理モデル生成に使用される。言い換えれば、代理モデル生成のために、パラメータのサンプルの一部のみ、好ましくは、技術的に実行可能なもののみを使用する。
【0041】
次のステップS3において、コンピュータ化された最適化手法を使用して、生成されたコンピュータ化された代理モデルに基づいて、最適化パラメータセットを決定する。最適化法としては、ブラックボックス最適化の手法を使用することができる。変数値に関する目的および制約の評価、すなわち各パラメータセットについての評価、のみが利用可能であるので、ブラックボックス最適化を使用して、変数値を提案し、これらを評価することができる。
【0042】
最適化パラメータセットは、技術システムの製造または制御のために出力される(ステップS4)。最適化された構造パラメータセットは、例えば、技術システムを製造するための製造機械に対する入力として、または、製品を製造するための製造ユニットに対する入力として機能することができる。
【0043】
あるいは、最適化パラメータセットの実行可能性識別子は、コンピュータ評価方法によって決定される(ステップS6)。コンピュータ評価方法は、入力されたパラメータセットが、技術システムの製造または制御に関して、技術的に実行可能であるか、技術的に実行不可能であるか、または、誤りであるか、を決定するように訓練されている。したがって、コンピュータ評価方法は、好ましくは、パラメータセットの初期入力サンプルの実行可能性識別子分布を表すように、訓練されるかまたは構成される。最適化パラメータセットの実行可能性識別子の値は、ステップS3の最適化において、さらなる最適化制約としてさらに使用することができる。したがって、最適化パラメータセットを決定する場合、それぞれの実行可能性識別子を追加的に評価するために、最適化法を適用することができる。好ましくは、誤りであると評価された最適化パラメータセットが分類される。
【0044】
さらに、出力された最適化パラメータセットは、好ましくは技術的に実行可能であると評価され、パラメータセットの初期入力サンプルに加えることができ、方法ステップS1~S4を繰り返すことができる(矢印REP参照)。このような反復により、改善された最適化パラメータセットが提供される。このパラメータセットは、技術システムの製造または制御のために出力され得る。
【0045】
図2は、本発明の実施形態の概略図を示す。最適化パラメータセットを使用する技術システムの製造または制御のためのコンピュータ実施方法は、2つの方法パート10,20を含むことができる。
【0046】
初期入力データセット、すなわち、パラメータセットPS1のサンプルは、例えば、最適化法OPT2によって提供され得る。このような最適化法OPT2は、例えば、技術システムの製造のためのパラメータセットPS1のサンプルを生成することができる。実行可能性識別子は、パラメータセットPS1の各サンプルに割り当てられ、各パラメータセットは、技術的に実行可能、技術的に実行不可能、または誤りのいずれかとしてマークされる。それぞれの実行可能性識別子は、例えば、シミュレーションに基づく評価を用いて決定することができる。換言すると、パラメータセットPS1は、ラベル付きデータセットとして理解することができる。
【0047】
このパラメータセットPS1のサンプルは、例えば、コンピュータ評価方法NN、例えば、人工ニューラルネットワーク、を訓練するための訓練データセットとして使用することができる。コンピュータ評価方法NNは、訓練データセットの実行可能性識別子分布を再現するように訓練される。図示された方法の方法パート10は、このデータ分類を表している。
【0048】
ラベル付きデータセットは、例えば、トレーニングデータセットと試験データセットとに分割することができ、これにより、コンピュータ評価方法NNをトレーニングデータセットを用いて訓練し、試験データセットを用いて検証することができる。好ましくは、すべてのパラメータセット、すなわち、技術的に実行可能なパラメータセット、技術的に実行不可能なパラメータセット、またはエラーのあるパラメータセット、が使用される。次いで、訓練された評価方法NNを使用して、出力されたパラメータセットの実行可能性識別子FIを決定することができる。
【0049】
さらに、コンピュータ評価方法NNの結果を、最適化法(ステップS3)のための追加の制約として使用することができ、最適化パラメータセットを決定することができる。このような制約は、最適化法にフィードバックを提供することができ、最適化問題を導いて、実行可能性識別子FIに従って最適化されたパラメータセット、すなわち、好ましくはエラーのないパラメータセット、を生成する。
【0050】
方法パート20は、目的および制約に対する代理モデルSM生成と、代理モデルに基づくパラメータ最適化と、を含む。技術的に実行可能であると分類されたパラメータセットのみを含むパラメータセットPS2の初期サンプルの、好ましくは一部のみを使用して、技術システムのための代理モデルSMが、回帰法によって生成される(ステップS2)。
【0051】
代理モデルSMの生成は、好ましくは、以下のステップを含む。第1の主要なステップは、訓練プロセスである。ここでは、局所加重回帰(LWR)とガウス過程回帰(GPR)の利点を組み合わせた代理モデルSMを訓練するために、逐次局所ガウス回帰アルゴリズム(ILGR)を採用した。第2のステップは、生成された代理モデルの交差検証である。生成された代理モデルSMは、検証セット、例えば、パラメータセットPS2の部分サンプルの一部によって検証される。二乗平均平方根誤差(RMSE)およびR二乗値を検証セットを用いて評価し、ILGRのサブモデル(ローカルモデルとも呼ばれる)の数を、第3のステップ:ハイパーパラメータ最適化の入力とする。これらの3つの項は目的関数を形成し、最適化問題は、NLoptライブラリからのBOBYQAなどのブラックボックス最適化アルゴリズムによって解決される。次いで、停止基準が満たされるまで、更新されたハイパーパラメータを使用して代理モデル生成プロセスが再開される。したがって、ILGRのハイパーパラメータは、RMSEおよびサブモデルの数を最小化し、R^2を最大化することによって決定される。
【0052】
パート10とパート20は、最適化を加速するための2つの独立したアプローチとすることができる。これらは、一緒に適用することも、または別々に適用することもできる。
【0053】
ステップS3では、代理モデルSMに基づいて、最適化パラメータセットPS_optを最適化法によって決定することができる。最適化法により、最適を見出すために代理モデルSMのパラメータが修正される。製造の場合、最適化法は、例えば、製品の最適化されたサイズ、重量、または他の物理的特性をもたらす製品の最適化パラメータセットを決定することができる。言い換えれば、最適化手法は、与えられた最適化目標に関して、代理モデルの最適化パラメータを決定することができる。
【0054】
方法パート10が適用される場合、コンピュータ評価方法NNに基づいてパラメータセットを評価することができ、実行可能性識別子FIを得ることができる。パート20のみが適用される場合、ステップS3における最適化法は、代理モデルを評価する。両方のパート10,20が適用される場合、ステップS3における最適化法は、実行可能性識別子FIに依存する追加の制約を含み、生成された代理モデルSMを評価する。この追加の制約を考慮して、最適化パラメータセットPS_optが決定される。
【0055】
図3は、技術システムの製造または制御のための装置の実施形態の概略図を示す。技術システムの製造または制御のための装置100は、入力ユニット101、生成部102、最適化部103、および出力ユニット104を備える。装置および/またはそのユニットの少なくとも1つは、本発明による方法ステップを実行するための少なくとも1つのプロセッサまたはコンピュータをさらに備えることができる。
【0056】
入力ユニット101は、技術システムの製造または制御に適したパラメータセットのサンプルを、各パラメータセットに割り当てられた実行可能性識別子と共に入力するように構成され、実行可能性識別子は、技術システムの製造または制御に関して、技術的に実行可能であるか、技術的に実行不可能であるか、または誤りであるかのいずれかとして、各パラメータセットを記録する。
【0057】
生成部102は、回帰法によって、好ましくは技術的に実行可能であると記録されたパラメータセットに基づいて、技術システムのためのコンピュータ化された代理モデルを生成するように構成される。
【0058】
最適化部103は、コンピュータ化された最適化法によって、生成された代理モデルに基づいて最適化パラメータセットを決定するように構成される。
【0059】
出力ユニット104は、技術システムの製造または制御のための最適化パラメータセットを出力するように構成される。
【0060】
装置は、好ましくは、人工ニューラルネットワークまたはランダムフォレストアルゴリズムなどのコンピュータ化評価方法によって、入力されたパラメータセットの実行可能性識別子を決定するように構成された評価ユニット105を備える。
【0061】
装置は、さらに、製造ユニット(図示せず)を備えるか、または製造ユニットと結合され、製造ユニットは、出力された最適化パラメータセットを使用して技術システムを製造するように構成されることが好ましい。加えて、または代替的に、装置は、制御ユニット(図示せず)を備えることができるか、または制御ユニットと結合され得、制御ユニットは、出力された最適化パラメータセットを使用して技術システムを制御するように構成される。
【0062】
有利な実施形態を参照して本発明を詳細に説明してきたが、本発明は、開示された実施例によって限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって、多数の追加の修正および変更を行うことができることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0063】
10…方法パート、20…方法パート、100…装置、101…入力ユニット、102…生成部、103…最適化部、104…出力ユニット、105…評価ユニット、FI…実行可能性識別子、NN…評価方法、SM…代理モデル、PS1…パラメータセット、PS2…パラメータセット、PS_opt…最適化パラメータセット