(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】複合材接合装置及び複合材接合方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/02 20060101AFI20240219BHJP
B29C 70/02 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
B29C65/02
B29C70/02
(21)【出願番号】P 2022572855
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2020049237
(87)【国際公開番号】W WO2022145012
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】守屋 誠
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠
(72)【発明者】
【氏名】乙部 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】寺坂 昭宏
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205960(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106785232(CN,A)
【文献】特開2007-245458(JP,A)
【文献】特開2012-232564(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02578381(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/102292(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状のシートヒータと、
第1複合材部材の第1接合面と、該第1接合面に対向する第2複合材部材の第2接合面との間の介挿位置で、該第1接合面及び該第2接合面に対して平行に前記シートヒータを位置させるとともに、前記介挿位置から退避した退避位置に前記シートヒータを退避させるシートヒータ移動装置と、
前記シートヒータ移動装置を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記介挿位置で前記シートヒータによって前記第1接合面及び前記第2接合面を加熱した後に、前記シートヒータ移動装置によって前記退避位置まで前記シートヒータを移動
し、
前記シートヒータは、グラファイトとされた発熱部と、該発熱部を挟んで固定する絶縁層とを備え、
前記第1複合材部材及び前記第2複合材部材は樹脂及び繊維を含み、
前記第1複合材部材及び前記第2複合材部材は航空機、船舶、又は車両の構造部材として用いられる複合材接合装置。
【請求項2】
前記第1接合面と前記第2接合面とが接近する方向に前記第1複合材部材及び/又は前記第2複合材部材を加圧する加圧手段を備え、
前記制御部は、前記シートヒータが前記介挿位置から前記退避位置へ退避した後に、前記加圧手段によって前記第1接合面と前記第2接合面との加圧を行う請求項1に記載の複合材接合装置。
【請求項3】
前記第1接合面と前記第2接合面とを接近させかつ
前記第1接合面と前記第2接合面とから前記加圧手段を離間させる接近離間装置を備え、
前記制御部は、前記加圧手段によって前記第1接合面と前記第2接合面との加圧を行った後に、前記接近離間装置によって前記第1接合面と前記第2接合面と
から前記加圧手段を離間させる請求項2に記載の複合材接合装置。
【請求項4】
前記第1複合材部材及び前記第2複合材部材に対する前記シートヒータの相対位置を移動させる移送装置を備え、
前記制御部は、前記接近離間装置によって前記第1接合面と前記第2接合面と
から前記加圧手段を離間させた後に、前記移送装置によって前記シートヒータと前記第1複合材部材及び前記第2複合材部材との相対位置を移動させ、前記移送装置によって加圧を行った前記第1接合面及び前記第2接合面とは異なる位置の前記第1接合面及び前記第2接合面の前記介挿位置に前記シートヒータを移動させる請求項3に記載の複合材接合装置。
【請求項5】
前記加圧手段は、前記第1接合面の背面側となる前記第1複合材部材の第1背面及び/又は前記第2接合面の背面側となる前記第2複合材部材の第2背面に対して接するように設けられた加圧プレートを備えている請求項2から4のいずれかに記載の複合材接合装置。
【請求項6】
前記加圧プレートは、加熱及び/又は冷却する温度調整部を備えている請求項5に記載の複合材接合装置。
【請求項7】
前記シートヒータは、前記第1接合面と前記第2接合面の所定の一方向にわたって設けられている請求項1から6のいずれかに記載の複合材接合装置。
【請求項8】
第1複合材部材の第1接合面と、該第1接合面に対向する第2複合材部材の第2接合面との間の介挿位置で、該第1接合面及び該第2接合面に対して平行に面状のシートヒータを位置させて、前記シートヒータで前記第1接合面及び前記第2接合面を加熱する加熱工程と、
前記介挿位置から退避した退避位置に前記シートヒータを退避させる退避工程と、
前記第1接合面と前記第2接合面とを接近させて接合する接合工程と、
を有
し、
前記シートヒータは、グラファイトとされた発熱部と、該発熱部を挟んで固定する絶縁層とを備え、
前記第1複合材部材及び前記第2複合材部材は樹脂及び繊維を含み、
前記第1複合材部材及び前記第2複合材部材を航空機、船舶、又は車両の構造部材として用いる複合材接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、繊維と樹脂とを含む複合材部材同士を接合する複合材接合装置及び複合材接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機等の構造部材として、繊維と熱可塑性樹脂とを含む複合材部材が用いられる。複数の複合材部材同士を接合する場合には、接合面を加熱して溶融させた後に複合材部材を重ね合わせて接合する接合方法が知られている(特許文献1)。特許文献1には、複合材部材の接合面を加熱炉に設けた赤外線ヒータによって溶融させ、加圧接合成形装置へ移動させた後に接合面同士を重ね合わせて接合することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示された接合方法は、溶融後に加圧接合成形装置へ搬送する工程が必要となるため、サイクルタイムが長くなるという問題がある。
また、赤外線ヒータを用いて接合面を加熱するので、昇温速度に限界があり、さらなるサイクルタイムの短縮化が難しい。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複合材部材同士を接合する際のサイクルタイムを短くすることができる複合材接合装置及び複合材接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る複合材接合装置(1)は、面状のシートヒータ(3)と、第1複合材部材(W1)の第1接合面(W1c)と、該第1接合面に対向する第2複合材部材(W2)の第2接合面(W2c)との間の介挿位置で、該第1接合面及び該第2接合面に対して平行に前記シートヒータを位置させるとともに、前記介挿位置から退避した退避位置に前記シートヒータを退避させるシートヒータ移動装置と、前記シートヒータ移動装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記介挿位置で前記シートヒータによって前記第1接合面及び前記第2接合面を加熱した後に、前記シートヒータ移動装置によって前記退避位置まで前記シートヒータを移動し、前記シートヒータは、グラファイトとされた発熱部と、該発熱部を挟んで固定する絶縁層とを備え、前記第1複合材部材及び前記第2複合材部材は樹脂及び繊維を含み、前記第1複合材部材及び前記第2複合材部材は航空機、船舶、又は車両の構造部材として用いられる。
【0007】
本開示の一態様に係る複合材接合方法は、第1複合材部材の第1接合面と、該第1接合面に対向する第2複合材部材の第2接合面との間の介挿位置で、該第1接合面及び該第2接合面に対して平行に面状のシートヒータを位置させて、前記シートヒータで前記第1接合面及び前記第2接合面を加熱する加熱工程と、前記介挿位置から退避した退避位置に前記シートヒータを退避させる退避工程と、前記第1接合面と前記第2接合面とを接近させて接合する接合工程と、を有し、前記シートヒータは、グラファイトとされた発熱部と、該発熱部を挟んで固定する絶縁層とを備え、前記第1複合材部材及び前記第2複合材部材は樹脂及び繊維を含み、前記第1複合材部材及び前記第2複合材部材を航空機、船舶、又は車両の構造部材として用いる。
【発明の効果】
【0008】
複合材部材同士を接合する際のサイクルタイムを短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一態様に係る複合材接合装置を示した横断面図である。
【
図2】グラファイトヒータの層構成を示した縦断面図である。
【
図3】グラファイトヒータを模式的に示した平面図である。
【
図4】グラファイトヒータを退避位置に位置させた状態を示した複合材接合装置の横断面図である。
【
図5】グラファイトヒータによる加熱工程を示した複合材接合装置の横断面図である。
【
図6】グラファイトヒータを介挿位置から退避位置に退避させた状態を示した複合材接合装置の横断面図である。
【
図7】加圧プレートによって加圧を行っている状態を示した複合材接合装置の横断面図である。
【
図8】接合後に加圧プレートを第1複合材部材から離間した状態を示した複合材接合装置の横断面図である。
【
図9】変形例に係る複合材接合装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本実施形態に係る複合材接合装置1の概略構成が示されている。複合材接合装置1を用いて第1複合材部材W1と第2複合材部材W2とを接合する。
【0011】
複合材部材W1,W2は、樹脂と炭素繊維等の繊維とを含む複合材料から構成されている。複合材部材W1,W2は、例えば航空機や、船舶、車両等の構造部材として用いることができる。複合材部材W1,W2は、既に賦形され、固化されている。
【0012】
複合材部材W1,W2は、熱可塑性樹脂が好適に用いられる。複合材部材W1,W2に用いられる複合材料としては、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastic)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP:Aramid Fiber Reinforced Plastic)等が挙げられる。
【0013】
第1複合材部材W1は、底部W1aと底部W1aの一側から立設された側部W1bとを有し、横断面がL字形状とされている。第1複合材部材W1は、
図1において紙面垂直方向に延在する長尺部材とされている。第1複合材部材W1の底部W1aの下面となる第1接合面W1cが第2複合材部材W2の上面となる第2接合面W2cに対して接合される。
【0014】
第2複合材部材W2は、
図1において紙面垂直方向に延在する長尺状の平板とされている。第2複合材部材W2の下面となる第2背面W2dは、図示しないテーブル上に設置される。
【0015】
複合材接合装置1は、グラファイトヒータ(シートヒータ)3と、加圧プレート(加圧手段)5と、加圧アクチュエータ(加圧手段)7と、部品保持ステー(接近離間装置)9とを備えている。
【0016】
グラファイトヒータ3は、
図2に示されているように、グラファイトとされた発熱部3aの表面及び裏面を、絶縁層3bで挟んで一体とした構造とされている。グラファイトヒータ3は、グラファイトヒータ3の主要部の厚さが例えば0.2mm以上0.5mm以下とされる。ただし、図示していないが、グラファイトヒータ3の平板形状を維持するために、枠体や剛性層などが適宜設けられている。
【0017】
グラファイトヒータ3は、
図1に示すように、第1接合面W1cの幅(同図における水平方向の寸法)とほぼ同等またはそれ以上とされている。グラファイトヒータ3の接合面W1c,W2cに対向する面の面積は、各接合面W1c,W2cの面積と同等またはそれ以上とされている。これにより、両接合面W1c,W2cの全体を均一かつ短時間で加熱できるようになっている。
【0018】
グラファイトヒータ3は、図示しないグラファイトヒータ移動装置(シートヒータ移動装置)に接続されている。グラファイトヒータ移動装置は、
図1に示したように、第1複合材部材W1の第1接合面W1cと第2複合材部材W2の第2接合面W2cとの間の介挿位置と、この介挿位置から側方に退避した退避位置との間でグラファイトヒータ3を移動させる。
【0019】
図2に示したように、グラファイトヒータ3の発熱部3aは、グラファイトとされている。グラファイトは、例えばポリイミドフィルムを焼成することによって得ることができる。発熱部3aにグラファイトを用いることによって、短い加熱時間と高い到達温度を実現することが できる。例えば、約0.2秒の加熱時間で1300℃まで到達させることができる。
【0020】
絶縁層3bは、電気的な絶縁性を有する材料とされており、例えば耐熱性を有する樹脂、好適にはポリイミドフィルムが用いられる。また、1000℃前後の耐熱性を有する耐熱性ガラスを用いることとしても良い。
【0021】
図3には、面状とされたグラファイトヒータ3が模式的に示されている。絶縁層3bは矩形状とされている。発熱部3aは、矩形状とされた絶縁層3bの面全体にわたって設けられるように、1本の線状部が蛇行しかつ折り返すように配置されている。発熱部3aの両端部は電流及び/又は電圧が可変とされた直流電源11に接続されている。直流電源は、図示しない制御部によって制御される。
【0022】
制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0023】
加圧プレート5は、例えば金属製とされた直方体とされており、その下面が第1複合材部材W1の上面となる第1背面W1dに接するように配置される。加圧プレート5の上部には、加圧アクチュエータ7が固定されている。加圧プレート5は、加圧アクチュエータ7による加圧力が均一に第1複合材部材W1に伝達されるように所定の剛性を有している。
【0024】
加圧アクチュエータ7は、制御部の指令によって、加圧プレート5を介して第1複合材部材W1に対して所定の加圧力を加える。加圧アクチュエータ7の駆動力としては、電動モータ、空気圧、油圧などが用いられる。
【0025】
部品保持ステー9は、第1複合材部材W1を保持するとともに、第1複合材部材W1を第2複合材部材W2に対して接近させかつ離間させる。部品保持ステー9は、例えば真空吸着によって第1複合材部材W1の側部W1bを保持することができる。部品保持ステー9の動作に伴い、加圧プレート5及び加圧アクチュエータ7も上下動するようになっている。
【0026】
次に、上述した複合材接合装置1の動作について説明する。
先ず、
図4に示すように、第1複合材部材W1を部品保持ステー9で吸着して保持し、第1複合材部材W1の第1接合面W1cと第2複合材部材W2の第2接合面W2cとを対向させた上で、これらの間に所定の間隔を空けておく。加圧プレート5は、第1複合材部材W1の底部W1aの上面に接した状態で配置されている。このとき、グラファイトヒータ3は、第1接合面W1cと第2接合面W2cとの間の介挿位置から側方(同図において左方)に退避した退避位置に位置している。
【0027】
そして、図示しないグラファイトヒータ移動装置によって、グラファイトヒータ3を矢印A1で示すように横方向に移動させる。これにより、グラファイトヒータ3は、2点鎖線で示すように、第1接合面W1cと第2接合面W2cとの間の介挿位置に位置される。このとき、グラファイトヒータ3の上面及び下面は、対向する第1接合面W1c及び第2接合面W2cに平行でかつこれらの全体を覆うような位置に配置される。
【0028】
グラファイトヒータ3が介挿位置に位置した状態で、制御部の指令によってグラファイトヒータ3を発熱させる。グラファイトヒータ3から発生した熱は、グラファイトヒータ3の上下の両面から発生し、
図5の矢印で示すように対向する第1接合面W1c及び第2接合面W2cを加熱する(加熱工程)。これにより、第1接合面W1c及び第2接合面W2cに位置する樹脂が溶融する。なお、グラファイトヒータ3と第1接合面W1c及び第2接合面W2cとは、
図5に示したように間隔を空けた状態で輻射熱によって加熱しても良いし、グラファイトヒータ3と第1接合面W1c及び第2接合面W2cとを接触させた状態で熱伝導によって加熱しても良い。
【0029】
グラファイトヒータ3による加熱時間および出力(電流及び/又は電圧)は、加熱対象となる第1複合材部材W1及び第2複合材部材W2に応じて予め決定され、例えば制御部の記憶部に格納されている。
【0030】
グラファイトヒータ3による加熱が終了すると、
図6の矢印A2で示すように、グラファイトヒータ移動装置によってグラファイトヒータ3を介挿位置から退避位置へと移動する(退避工程)。
【0031】
次に、
図7に示すように、第1接合面W1c及び第2接合面W2cが溶融している間に(すなわち固化する前に)、部品保持ステー9によって第1複合材部材W1を下降させて第1接合面W1cと第2接合面W2cとを接触させる。そして、制御部の指令によって加圧アクチュエータ7を動作させて、加圧プレート5を下方へ向けて押圧して第1複合材部材W1の底部W1aを第2複合材部材W2に対して加圧しながら一定時間保持する(接合工程)。これにより、第1複合材部材W1と第2複合材部材W2とが接合面W1c,W2cにおいて接合される。接合工程時の接合面W1c,W2cにおける温度は、加圧プレート5の熱容量による放熱によって調整することができる。
【0032】
その後、
図8に示すように、加圧アクチュエータ7による加圧を解除した後に、部品保持ステー9による第1複合材部材W1の吸着を解除した上で、部品保持ステー9を上昇させる。これにより、加圧プレート5を第1複合材部材W1の第1背面W1dから分離させる。
【0033】
以上により、所定の第1接合面W1c及び第2接合面W2cを接合する工程が終了する。第1複合材部材W1及び第2複合材部材W2の長手方向における他の第1接合面W1c及び第2接合面W2cを次に接合する場合には、第1複合材部材W1及び第2複合材部材W2に対するグラファイトヒータ3の相対位置を移動させる移送装置によって異なる第1接合面W1c及び第2接合面W2cに対応する位置にグラファイトヒータ3を位置させる。この場合、グラファイトヒータ3を移送しても良いし、第1複合材部材W1及び第2複合材部材W2を移送しても良い。
【0034】
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
グラファイトヒータ3を介挿位置に位置させて第1接合面W1c及び第2接合面W2cに対して平行に配置することで、第1接合面W1cと第2接合面W2cを同時に短時間で均一に加熱することができる。そして、グラファイトヒータ3を退避位置に退避させることで、第1接合面W1cと第2接合面W2cとを接触させて接合することができる。このように、グラファイトヒータ3を介挿位置と退避位置との間で移動させることによって、対向する第1接合面W1cと第2接合面W2cとを加熱し、加熱後にグラファイトヒータ3を退避させることで即座に第1接合面W1cと第2接合面W2cとを接合することができるので、サイクルタイムを短くすることができる。
【0035】
グラファイトヒータ3が介挿位置から退避位置へ退避した後に第1接合面W1cと第2接合面W2cとの加圧を行うこととしたので、グラファイトヒータ3の退避後に即座に加圧接着を行うことができ、サイクルタイムを短くすることができる。
【0036】
第1背面W1d及び/又は第2背面W2dに対して接するように加圧プレート5を設けることとしたので、第1接合面W1c及び第2接合面W2cを均一に加圧することができる。
【0037】
第1接合面W1cと第2接合面W2cの一方向(
図1において左右の幅方向)にわたってグラファイトヒータ3を設けることとした。これにより、第1接合面W1cと第2接合面W2cの幅方向の範囲において一度に加熱を行うことができる。
【0038】
グラファイトヒータ3を用いて加熱することとした。すなわち、グラファイトヒータ3を、グラファイトとされた発熱部3aと、発熱部3aを挟んで固定する絶縁層3bとを備えた構造とした。発熱部3aをグラファイトとすることによって、短い加熱時間と高い到達温度を実現することができる。
【0039】
以上説明した本実施形態は、以下のように変形することができる。
上記実施形態では、接合工程時における接合面W1c,
W2cの温度は加圧プレート5の熱容量を用いた放熱によって調整することとしたが、
図9に示すように、加圧プレートに加熱及び/又は冷却する温度調整部15を設けても良い。温度調整部15の温度は制御部によって制御される。温度調整部15としては、加熱用としては電気ヒータや加熱媒体が流通する熱媒流路などを用いることができる。また冷却用としては、ペルチェ素子等の冷却素子や冷却媒体が流通する熱媒流路などを用いることができる。
【0040】
温度調整部15を加圧プレート5に設けることによって、加圧プレート5で接合面W1c,W2cを加熱及び/又は冷却することができる。これにより、接合工程時に接合面W1c,W2cを接合に適した所定温度に保つことができ、適正な接着を実現することができる。
【0041】
また、本実施形態では、横断面がL字形状とされた第1複合材部材W1と平板形状とされた第2複合材部材W2との接合について説明したが、本開示は複合材部材の形状に限定されるものではなく、複合材部材同士を接続する際に広く用いることができる。
【0042】
また、本実施形態ではグラファイトヒータ3を用いることとしたが、グラファイトヒータ3に代えて、ステンレスシートヒータ等の面状の電気ヒータを用いても良い。
【0043】
また、本実施形態では、第1複合材部材W1を移動させて固定された第2複合材部材W2に対して接近離間させる構成としたが、本開示はこれに限定されるものではなく、第1複合材部材W1を固定して第2複合材部材W2を移動させても良く、あるいは、第1複合材部材W1及び第2複合材部材W2の両方を移動させても良い。
【0044】
以上説明した各実施形態に記載の複合材接合装置及び複合材接合方法は、例えば以下のように把握される。
【0045】
本開示の一態様に係る複合材接合装置(1)は、面状のシートヒータ(3)と、第1複合材部材(W1)の第1接合面(W1c)と、該第1接合面に対向する第2複合材部材(W2)の第2接合面(W2c)との間の介挿位置で、該第1接合面及び該第2接合面に対して平行に前記シートヒータを位置させるとともに、前記介挿位置から退避した退避位置に前記シートヒータを退避させるシートヒータ移動装置と、前記シートヒータ移動装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記介挿位置で前記シートヒータによって前記第1接合面及び前記第2接合面を加熱した後に、前記シートヒータ移動装置によって前記退避位置まで前記シートヒータを移動する。
【0046】
シートヒータを介挿位置に位置させて第1接合面及び第2接合面に対して平行に配置することで、第1接合面と第2接合面を同時に短時間で均一に加熱することができる。そして、シートヒータを退避位置に退避させることで、第1接合面と第2接合面とを接触させて接合することができる。このように、シートヒータを介挿位置と退避位置との間で移動させることによって、対向する第1接合面と第2接合面とを加熱し、加熱後にシートヒータを退避させることで即座に第1接合面と第2接合面とを接合することができるので、サイクルタイムを短くすることができる。
介挿位置では、シートヒータと第1接合面及び/又は第2接合面とは接触していても良いし、離間していても良い。
【0047】
さらに、本開示の一態様に係る複合材接合装置では、前記第1接合面と前記第2接合面とが接近する方向に前記第1複合材部材及び/又は前記第2複合材部材を加圧する加圧手段(5,7)を備え、前記制御部は、前記シートヒータが前記介挿位置から前記退避位置へ退避した後に、前記加圧手段によって前記第1接合面と前記第2接合面との加圧を行う。
【0048】
シートヒータが介挿位置から退避位置へ退避した後に第1接合面と第2接合面との加圧を行うこととしたので、シートヒータの退避後に即座に加圧接着を行うことができ、サイクルタイムを短くすることができる。
【0049】
さらに、本開示の一態様に係る複合材接合装置では、前記第1接合面と前記第2接合面とを接近させかつ離間させる接近離間装置(9)を備え、前記制御部は、前記加圧手段によって前記第1接合面と前記第2接合面との加圧を行った後に、前記接近離間装置によって前記第1接合面と前記第2接合面とを離間させる。
【0050】
加圧後に第1接合面と第2接合面とを離間させることとしたので、次の工程に速やかに進めることができる。
【0051】
さらに、本開示の一態様に係る複合材接合装置では、前記第1複合材部材及び前記第2複合材部材に対する前記シートヒータの相対位置を移動させる移送装置を備え、前記制御部は、前記接近離間装置によって前記第1接合面と前記第2接合面とを離間させた後に、前記移送装置によって前記シートヒータと前記第1複合材部材及び前記第2複合材部材との相対位置を移動させ、前記移送装置によって加圧を行った前記第1接合面及び前記第2接合面とは異なる位置の前記第1接合面及び前記第2接合面の前記介挿位置に前記シートヒータを移動させる。
【0052】
移送装置によってシートヒータと第1複合材部材及び第2複合材部材との相対位置を移動させて、加圧を行った第1接合面及び第2接合面とは異なる位置の第1接合面及び第2接合面の介挿位置にシートヒータを移動させることとした。これにより、異なる位置の接合面にて順次接合を行うことができる。
【0053】
さらに、本開示の一態様に係る複合材接合装置では、前記加圧手段は、前記第1接合面の背面側となる前記第1複合材部材の第1背面及び/又は前記第2接合面の背面側となる前記第2複合材部材の第2背面に対して接するように設けられた加圧プレート(5)を備えている。
【0054】
第1背面及び/又は第2背面に対して接するように加圧プレートを設けることとしたので、第1接合面及び第2接合面を均一に加圧することができる。
【0055】
さらに、本開示の一態様に係る複合材接合装置では、前記加圧プレートは、加熱及び/又は冷却する温度調整部(15)を備えている。
【0056】
温度調整部を加圧プレートに設けることによって、加圧プレートで接合面を加熱及び/又は冷却することとした。これにより、加圧時に所定温度に保つことができ、適正な接着を実現することができる。
【0057】
さらに、本開示の一態様に係る複合材接合装置では、前記シートヒータは、前記第1接合面と前記第2接合面の所定の一方向にわたって設けられている。
【0058】
第1接合面と第2接合面の一方向にわたってシートヒータを設けることとした。これにより、第1接合面と第2接合面の一方向の範囲において均一に加熱を行うことができる。例えば、第1複合材部材及び/又は第2複合材部材が長尺とされている場合には、幅方向(一方向)を一度に加熱することができる。
【0059】
前記シートヒータは、グラファイトとされた発熱部(3a)と、該発熱部を挟んで固定する絶縁層(3b)とを備えている。
【0060】
シートヒータをグラファイトヒータとした。すなわち、シートヒータを、グラファイトとされた発熱部と、発熱部を挟んで固定する絶縁層とを備えた構造とした。発熱部をグラファイトとすることによって、短い加熱時間と高い到達温度を実現することができる。例えば、グラファイトとされた発熱部は、約0.2秒の加熱時間で1300℃まで到達させることができる。
【0061】
本開示の一態様に係る複合材接合方法は、第1複合材部材の第1接合面と、該第1接合面に対向する第2複合材部材の第2接合面との間の介挿位置で、該第1接合面及び該第2接合面に対して平行に面状のシートヒータを位置させて、前記シートヒータで前記第1接合面及び前記第2接合面を加熱する加熱工程と、前記介挿位置から退避した退避位置に前記シートヒータを退避させる退避工程と、前記第1接合面と前記第2接合面とを接近させて接合する接合工程と、を有する。
【符号の説明】
【0062】
1 複合材接合装置
3 グラファイトヒータ(シートヒータ)
3a 発熱部
3b 絶縁層
5 加圧プレート(加圧手段)
7 加圧アクチュエータ(加圧手段)
9 部品保持ステー(接近離間装置)
11 直流電源
15 温度調整部
W1 第1複合材部材
W1a 底部
W1b 側部
W1c 第1接合面
W1d 第1背面
W2 第2複合材部材
W2c 第2接合面
W2d 第2背面