(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】金属材料中のエッジにおけるクラック検出のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/90 20210101AFI20240219BHJP
【FI】
G01N27/90
(21)【出願番号】P 2022576145
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2021065988
(87)【国際公開番号】W WO2021254969
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-01-06
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】リンデル、ステン
(72)【発明者】
【氏名】リフベンボリ、ウルフ
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-076700(JP,A)
【文献】米国特許第06377040(US,B1)
【文献】特開平03-267754(JP,A)
【文献】特開平11-326284(JP,A)
【文献】特開2017-096876(JP,A)
【文献】特開2001-099816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72 - G01N 27/9093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料(M)のエッジ(E)におけるクラック(C)を決定する方法であって、前記エッジ(E)は、半径(R)を備えた曲率を有し、前記方法は、
- 前記金属材料(M)中に磁場を発生させるために送信コイル(3)へ第1の大きさ(I1)を有する電流を送るステップと(S10)と、
- 前記磁場が、前記金属材料(M)中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深く侵入したことが推定されるときに、前記電流が第2の大きさ(I2)を得るように前記電流を制御するステップ(S20)と、
- 受信コイル(5)によって前記磁場を検出するステップ(S30)と、ここで、検出された磁場が、前記受信コイル(5)中に信号(S(t))を発生させ、
- 前記第2の大きさを得るための前記電流の制御によるいずれの乱れも止まったことが推定された第1の時点(t1)で前記信号の第1の信号値(St1)を決定するステップ(S40)と、
- 前記第1の時点(t1)の後の第2の時点(t2)で前記信号の第2の信号値(St2)を決定するステップ(S50)と、
- 前記第2の時点(t2)の後の第3の時点(t3)で前記信号の第3の信号値(St3)を決定するステップ(S60)と、
- 信号値の以下の組合せ、すなわち、前記第1の信号値(St1)と前記第2の信号値(St2)、前記第2の信号値(St2)と前記第3の信号値(St3)、及び前記第1の信号値(St1)と前記第3の信号値(St3)のうちの少なくとも2つの間の特性関係を決定することによって前記第1、第2、及び第3の信号値(St1、St2、St3)に基づいてクラックの存在の可能性及びそのクラック深さを決定するステップ(S70)と、を備え、
前記金属材料(M)の前記エッジ(E)の外側に前記送信コイル(3)の少なくとも一部を設けるステップ(S5)をさらに備える、方法。
【請求項2】
前記第3の時点(t3)は、前記エッジの前記曲率の半径変化のいずれの影響も止まったことが推定された時点である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クラックの存在の可能性及びそのクラック深さを決定する前記ステップ(S70)は、前記特性関係を対応する基準信号と比較することを備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
- 基準位置に対しての前記エッジの位置に基づいてエッジ位置パラメータを確立するステップ(S62)と、
- 前記エッジの前記曲率の前記半径に基づいて半径パラメータを確立するステップ(S63)と、
をさらに備え、
前記特性関係は、前記エッジ位置パラメータ及び前記半径パラメータから独立している、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
- クラックを有し、前記半径パラメータの第1の半径基準値及び前記エッジ位置パラメータの第1のエッジ基準値を有する金属材料のための第1の基準信号(Sa(t))を確立するステップと、
- クラックを有さず、前記半径パラメータの前記第1の半径基準値及び前記エッジ位置パラメータの前記第1のエッジ基準値を有する金属材料のための第2の基準信号(Sb(t))を確立するステップ(S64)と、
- クラックを有さず、前記第1の半径基準値を有し、前記第1のエッジ基準値に対しての前記エッジ位置パラメータの所定の変化を伴う金属材料のための第3の基準信号(Sc(t))を確立するステップ(S65)と、
- クラックを有さず、前記第1のエッジ基準値を有し、前記第1の半径基準値に対しての前記半径パラメータの所定の変化を伴う金属材料のための第4の基準信号(Sd(t))を確立するステップ(S66)と、
をさらに備える、請求項3に従属する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
クラックの可能性のある存在及びそのクラック深さを決定する前記ステップ(S70)は、前記第1、第2、第3、及び/又は第4の基準信号(Sa(t)、Sb(t)、Sc(t)、Sd(t))の対応する信号値に関する前記特性関係を使用することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記エッジ位置パラメータは、基準位置に対しての前記エッジの位置を表し、又は基準位置に対しての前記エッジの位置に対応し、前記半径パラメータは、前記エッジの曲率の半径を表し、又は前記エッジの曲率の半径に対応する、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1、第2、及び第3の時点は、別々の時点である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記受信コイル(5)は、第1の受信コイル(5)であり、
- 第2の受信コイル(6)によって前記磁場を検出するステップ(S35)と、ここで、検出された磁場が、前記第2の受信コイル(6)中に信号(Sr(t))を発生させ、
- 前記第1及び第2の受信コイル(5、6)に対する前記金属材料(M)の前記エッジ(E)の位置及び表面(19)からの距離をそれぞれ決定するステップ(S37)と、をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
金属材料(M)のエッジ(E)におけるクラック(C)を決定するための装置(1、1’)であって、前記エッジは、半径(R)を備えた曲率を有し、
- 前記金属材料中に磁場を発生させるように配置された送信コイル(3)と、
- 前記磁場を検出するように配置された受信コイル(5)と、
- 前記金属材料中に前記磁場を発生させるため
に前記送信コイルへ第1の大きさ(I1)を有する電流を送るように
構成された信号発生器(7)と、
- 前記磁場が前記金属材料中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深く侵入したことが推定されるときに前記電流が第2の大きさ(I2)を得るように前記信号発生器を制御するように構成された制御ユニット(9)と、
- 前記受信コイル(5)によって検出される磁場によって生成される信号(S(t))を受信し、前記第2の大きさを得るための前記電流の制御によるいずれの乱れも止まったことが推定された第1の時点(t1)で前記第1の時点(t1)における前記信号の第1の信号値(St1)を決定するように構成されたコンピューティング装置(12)と、を備え、
前記コンピューティング装置は、前記第1の時点の後の第2の時点(t2)で前記信号の第2の信号値(St2)を決定し、前記第2の時点の後の第3の時点(t3)で前記信号の第3の信号値(St3)を決定するようにさらに構成され、
ここにおいて、前記コンピューティング装置は、信号値の以下の組合せ、すなわち、前記第1の信号値(St1)と前記第2の信号値(St2)、前記第2の信号値(St2)と前記第3の信号値(St3)、及び前記第1の信号値(St1)と前記第3の信号値(St3)のうちの少なくとも2つの間の特性関係を決定することによって、前記第1、第2、及び第3の信号値(St1、St2、St3)に基づいて、クラック(C)の存在の可能性及びそのクラック深さ(CD)を決定するようにさらに構成されており、前記送信コイルが、動作時に、少なくともその一部が前記金属材料の前記エッジの外側に配置されるように構成されている、装置(1、1’)。
【請求項11】
前記送信コイルは、動作時に、少なくともその一部が前記金属材料の前記エッジの内側に配置されるように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記コンピューティング装置は、前記エッジの曲率の半径変化のいずれの影響も止まったことが推定された時点である前記第3の時点(t3)で前記第3の信号値(St3)を決定するように構成されている、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記コンピューティング装置は、前記第1の時点(t1)、前記第2の時点(t2)、及び前記第3の時点(t3)において、それぞれ、前記第1の信号値(St1)、前記第2の信号値(St2)、及び前記第3の信号値(St3)を決定するように構成されており、ここにおいて、前記第1、第2、及び第3の時点(t1、t2、t3)は、別々の時点である、請求項10から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記受信コイル(5)は第1の受信コイル(5)であり、前記装置は第2の受信コイル(6)をさらに備え、ここにおいて、前記コンピューティング装置は、前記第2の受信コイル(6)によって検出された磁場によって生成された信号(Sr(t))を受信するようにさらに構成され、前記第1又は第2の受信コイル(5、6)に対する前記金属材料の前記エッジの位置及び表面(19)からの距離を決定するように構成されている、請求項10から13のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、金属材料の品質検査に関し、より詳細には、電磁誘導を利用した金属材料のエッジにおけるクラック検出に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料の非接触クラック測定の知られている方法は、光学的手段を利用するものである。金属材料に、光が照射されてもよく、クラックは、カメラなどの光学センサによって検出することができる。光学的方法の欠点は、金属材料の表面上で見えないクラックを検出することができず、金属材料中の色の変化が、光学センサによってクラックとして読み取られ得るということである。光学的方法は、完全に清浄で滑らかな金属表面の検査以外の他の用途で使用するのが難しいことが分かっている。
【0003】
例えば鉄鋼生産における金属材料の検査は、誘導技法を利用して行われている。誘導技法を使用するとき、同様に時間変動する電流が送られる送信コイルが発生させる時間変動する磁場によって、金属材料中、例えば、スラブまたは金属シート中に電流が誘導される。誘導電流が金属材料中のクラックに遭遇するときに、クラックは、誘導電流に対する障害を構成する。結果として、クラックは、クラックのない金属材料と比較してクラックにおける誘導電流を変化させる。変化させられた電流は、電流の周りの磁場に変化を与える。磁場の変化は、受信コイルによって測定され、それによって、クラックが金属材料の検査された表面部分に存在することが決定され得る。金属材料のそのような検査は、例えば、EP2574911に開示されている。
【0004】
金属材料中のクラック検出に今日使用される誘導技法に関しては、いくつかの欠点がある。例えば、測定される金属材料のエッジまたは角の近くで、エッジの曲率、またはコイルに対してのエッジの突然の位置変化は、クラックと間違えられ得る。そのような影響パラメータを一定に維持することが難しいことにより、鋳造された金属表面などの不規則な表面のクラック検査のために誘導技法を使用することは難しかった。
【0005】
したがって、金属材料中のエッジにおけるクラック検出のための改善された方法および装置を提供することが当業界において必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、上記の問題の少なくとも一部を克服し、金属材料のエッジにおけるクラックの検出のための解決策を提供することであり、これは、先行技術の解決策に比べて少なくともある程度まで改善される。この目的、および他の目的は、以下において明らかになり、金属材料のエッジにおけるクラックを決定する方法、および金属材料のエッジにおけるクラックを決定するための装置によって達成される。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、ある半径を備えた曲率を有する金属材料のエッジにおけるクラックを決定する方法が提供される。この方法は、
-S10:金属材料中に磁場を発生させるために送信コイルへ第1の大きさを有する電流を送るステップと、
-S20:磁場が、金属材料中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深く侵入したことが推定されるときに、電流が第2の大きさを得るように電流を制御するステップと、
-S30:受信コイルによって磁場を検出するステップと、それによって、検出された磁場が、受信コイル中に信号を発生させる、
-S40:第2の大きさを得るための電流の制御による任意の乱れが終わったことが推定された第1の時点で信号の第1の信号値を決定するステップと、
-S50:第1の時点の後の第2の時点で信号の第2の信号値を決定するステップと、
-S60:第2の時点の後の第3の時点で信号の第3の信号値を決定するステップと、
-S70:信号値の以下の組合せ、すなわち、第1の信号値と第2の信号値、第2の信号値と第3の信号値、および第1の信号値と第3の信号値のうちの少なくとも2つの間の特性関係を決定することによって第1、第2、および第3の信号値に基づいてクラックの可能性のある存在およびそのクラック深さを決定するステップと、ここにおいて、信号値の少なくとも2つの組合せ間の特性関係は、エッジの位置およびエッジの曲率の半径から独立している、を備える。
【0008】
上記特定された時間に従って信号値の少なくとも2つの組合せ間の特性関係を決定することによって、クラック深さは、決定されたクラック深さ値に影響を与える他のプロセス・パラメータを有することなく、エッジの位置およびエッジの曲率の半径から独立して決定され得る。したがって、信号値の少なくとも2つの組合せの間の特性関係は、エッジの位置およびエッジの曲率の半径から独立していることを理解されたい。したがって、信頼できるクラック深さ測定が、金属材料のエッジにおいて提供され得る。
【0009】
例えば、エッジの半径の変化から区別するのが特に難しい少なくとも小さいクラック(典型的には、<3mmのクラック深さ)は、上で特定された方法を適用することによって検出可能および測定可能である。
【0010】
本方法は、繰り返し、第1の時点間隔中に送信コイルへ第1の大きさを有する第1の電流を送ることと、第2の時点間隔中に電流が第2の大きさを得るように電流を制御することによって実施することができると理解されたい。第1、第2、および第3の信号値は、第2の時点間隔中に全て測定され、電流は、第2の大きさを得るように制御される。
【0011】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、受信コイルによって磁場を検出することは、磁場変化(すなわち、誘導電圧またはdB/dt)を検出することによって具体化される。さらに、「第2の大きさを得るための電流の制御による任意の乱れが終わったことが推定された第1の時点で」は、金属材料の中に侵入しない磁場の一部によって引き起こされる電圧ピーク(dB/dt)に少なくとも一部関連していることに留意されたい。言い換えれば、この電圧ピーク(dB/dt)は、第1の時点で終わっているべきである。
【0012】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、第2の大きさを得るための電流の制御による金属材料中に誘導された電流が金属材料の表面の凹凸および測定されることが望まれないクラック深さに対応する深さよりも深く金属材料中に侵入した第1の時点が、さらに決定される。
【0013】
したがって、本方法は、表面の凹凸から独立している。
【0014】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、方法は、金属材料のエッジの外側に送信コイルの少なくとも一部を設けるステップをさらに備える。
【0015】
これによって、誘導電流は、金属材料のエッジへ集められ、このエリアにおけるクラック決定を可能にすることができる。受信コイルは、少なくとも1つの例示実施形態によれば、受信コイルの磁気中心が金属材料のエッジの内側に配置されるように配置され得る。
【0016】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、ステップは、金属材料のエッジの内側に送信コイルの少なくとも一部を設けることを備える。
【0017】
したがって、送信コイルは、金属材料のエッジに重なり合うように配置され、クラック検出を容易にすることができる。少なくとも1つの例示実施形態によれば、エッジの外側に配置された送信コイルの一部とエッジの内側に配置された送信コイルの一部との比が、0.1~0.4の間である。エッジの任意の重なり合いは、金属材料の表面に平行な平面内の重なり合いと呼ばれると理解されたい。
【0018】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、第3の時点は、エッジの曲率の半径変化のいずれの影響も止まったことが推定された時間である。
【0019】
これによって、2つの信号値の特性関係(ここにおいて、少なくとも1つは、第3の時点に基づく)は、エッジの曲率の半径から独立している、
少なくとも1つの例示実施形態によれば、方法は、
- 基準位置に対してのエッジの位置に基づいてエッジ位置パラメータを確立するステップと、
- エッジの曲率の半径に基づいて半径パラメータを確立するステップと、をさらに備え、
特性関係は、エッジ位置パラメータおよび半径パラメータから独立している。
【0020】
そのようなパラメータを特定することによって、エッジ位置およびエッジの曲率の半径のようなエッジ特性の独立性は、簡略化され、クラックの存在およびそのクラック深さを決定するために使用されるアルゴリズムに容易に組み込まれる。基準位置は、例えば、受信コイルの磁気軸であり得る。エッジ位置は、基準位置に対してのエッジへの水平距離と垂直距離の両方を含むことができ、代替として、水平距離だけを含んでもよい。したがって、少なくとも1つの例示実施形態によれば、エッジ位置パラメータは、基準位置に対してのエッジの位置を表し、または基準位置に対してのエッジの位置に対応し、半径パラメータは、エッジの曲率の半径を表し、エッジの曲率の半径に対応する。
【0021】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、クラックの可能性のある存在およびそのクラック深さを決定するステップは、特性関係を対応する基準信号と比較することを備える。
【0022】
これによって、知られている特性(エッジ位置、エッジの曲率の半径、およびクラックの不存在)を有する金属材料との比較が行われる。より詳細には、エッジ位置およびエッジの曲率の半径から独立している形成された特性関係は、クラックを有さない金属材料についての対応する特性関係と比較される。
【0023】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、本方法は、
- クラックを有し、半径パラメータの第1の半径基準値およびエッジ位置パラメータの第1のエッジ基準値を有する金属材料のための第1の基準信号を確立するステップと、
- クラックを有さず、半径パラメータの第1の半径基準値およびエッジ位置パラメータの第1のエッジ基準値を有する金属材料のための第2の基準信号を確立するステップと、
- クラックを有さず、第1の半径基準値を有し、第1のエッジ基準値に対してのエッジ位置パラメータの所定の変化を伴う金属材料のための第3の基準信号を確立するステップと、
- クラックを有さず、第1のエッジ基準値を有し、第1の半径基準値に対しての半径パラメータの所定の変化を伴う金属材料のための第4の基準信号を確立するステップと、をさらに備える。
【0024】
これによって、エッジの変化特性、少なくともエッジ位置およびエッジの曲率の半径が決定され得、少なくとも第1、第2、および/または第3の時点が、決定された変化特性に基づいて選ばれ得る。例えば、第3の時点は、エッジの曲率の半径変化の影響が終わった時間として決定され得る。
【0025】
また、少なくともステップS10、S20、S30、S40、S50、およびS60に基づく、またはステップS70において決定する測定された1つの信号、または測定された複数の信号は、エッジにおけるクラックを有さない金属材料に対応する基準信号と比較され得る。
【0026】
したがって、少なくとも1つの例示実施形態によれば、クラックの可能性のある存在およびそのクラック深さを決定するステップは、第1、第2、第3、および/または第4の基準信号の対応する信号値に関する特性関係を使用することを備える。
【0027】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、第1、第2、および第3の時点は、別々の時点である。
【0028】
別々の時点は、電流が第2の大きさを得るように電流を制御する初期化からの経過時間に基づく。代替として、第1、第2、および第3の時点は、それぞれの時点の-30%から+30%までのスパンのそれぞれの短い時間範囲である。例えば、第1、第2、および第3の時点または時間範囲は、重なり合わず、および/または共通の開始時間もしくは終了時間を共有しない。
【0029】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、送るステップにおいて、電流は、本質的に一定である。
【0030】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、磁場が金属材料中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深くに侵入したことの推定は、送信コイルへ電流を送ることが始まるとき、測定されることが望まれる最も深いクラック深さ、ならびに金属材料の比透磁率、および電気抵抗率に基づく。
【0031】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、第1の時点は、その第2の大きさを得るために電流の制御が始まる時間に基づいて、ならびに金属材料の比透磁率と電気抵抗率との間の関係に基づいて、ならびに/または電流がその第2の大きさを得る時間、測定されることが望まれる最も深いクラック深さ、および金属材料の比透磁率および電気抵抗率に基づいて推定される。第1の時点は、例えば、100μsであってもよく、または100μsと700μsとの間、例えば、100μsと500μsとの間などであってもよい。
【0032】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、第1、第2、および/または第3の信号値は、それぞれの単一の信号値、平均信号値、またはそれぞれ、第1、第2、および第3の時点にわたる短い時間範囲中の信号の積分である。
【0033】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、受信コイルは、第1の受信コイルであり、方法は、
- 第2の受信コイルによって磁場を検出するステップと、それによって、この検出された磁場が、第2の受信コイル中に信号に発生させる、
- 第1および第2の受信コイルに対してのエッジの位置と金属材料の表面からの距離とをそれぞれ決定するステップと、をさらに備える。
【0034】
これによって、コイル装置(すなわち、送信コイル、ならびに第1および第2の受信コイル)および金属材料のエッジおよび表面に対してのその距離が、決定され得る。そのような位置決め情報は、例えば、コイル装置とエッジとの間、およびコイル装置と金属材料の表面との間で、それぞれ一定の距離を維持するために、例えば、コイル装置を水平および垂直に再配置するように構成された位置決め装置と組み合わせて使用され得る。
【0035】
本発明の第2の態様によれば、金属材料のエッジでクラックを決定するための装置であって、エッジは、ある半径を備えた曲率を有する、装置が提供される。装置は、
- 金属材料中に磁場を発生させるように配置された送信コイルと、
- 磁場を検出するように配置された受信コイルと、
- 金属材料中に磁場を発生させるための送信コイルへ第1の大きさを有する電流を送るように配置された信号発生器と、
- 磁場が金属材料中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深く侵入したことが推定されるときに電流が第2の大きさを得るように信号発生器を制御するように配置された制御ユニットと、
- 受信コイルによって検出される磁場によって生成される信号を受信し、第2の大きさを得るための電流の制御による任意の乱れが終わったことが推定された第1の時点で信号の第1の信号値を決定するように配置されたコンピューティング装置と、を備え、
コンピューティング装置は、第1の時点の後の第2の時点で信号の第2の信号値を決定し、第2の時点の後の第3の時点で信号の第3の信号値を決定するようにさらに配置され、
ここにおいて、コンピューティング装置は、信号値の以下の組合せ、すなわち、第1の信号値と第2の信号値、第2の信号値と第3の信号値、および第1の信号値と第3の信号値のうちの少なくとも2つの間の特性関係を決定することによって第1、第2、および第3の信号値に基づいてクラックの可能性のある存在およびそのクラック深さを決定するようにさらに配置される。
【0036】
本発明の第2の態様の効果および特徴は、本発明の第1の態様に関連して上述されたものに概ね類似する。本発明の第1の態様に関して述べられる実施形態は、本発明の第2の態様と概ね互換性があり、そのいくつかが以下に説明される。
【0037】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、送信コイルは、動作時に、少なくともその一部が金属材料のエッジの外側に配置されるように構成される。
【0038】
これによって、誘導電流は、金属材料のエッジに集められ、このエリアにおけるクラック決定を可能にすることができる。受信コイルは、少なくとも1つの例示実施形態によれば、動作時に、受信コイルの磁気中心が金属材料のエッジの内側に配置されるように構成され得る。
【0039】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、送信コイルは、動作時に、少なくともその一部が金属材料のエッジの内側に配置されるように構成される。
【0040】
したがって、送信コイルは、動作時に、金属材料のエッジに重なり合い、クラック決定を容易にするように配置されるように構成され得る。少なくとも1つの例示実施形態によれば、エッジの外側に配置されるように構成された送信コイルの一部とエッジの内側に配置されるように構成された送信コイルの一部との比が、0.1~0.4の間である。
【0041】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、コンピューティング装置は、エッジの曲率の半径変化のいずれの影響も止まったことが推定された時間である第3の時点で第3の信号値を決定するように配置される。
【0042】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、コンピュータ装置は、第2の大きさを得るための電流の制御による金属材料中に誘導される電流が金属材料の表面の凹凸および測定されることが望まれないクラック深さに対応する深さよりも深く金属材料の中に侵入した第1の時点(上述した基準への追加性)を決定するように配置される。
【0043】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、コンピューティング装置は、第1の時点、第2の時点、および第3の時点において、それぞれ、第1の信号値、第2の信号値、および第3の信号値を決定するように構成され、ここにおいて、第1、第2、および第3の時点は、別々の時点である。
【0044】
本発明の第1の態様に関連して述べたように、別々の時点は、電流が第2の大きさを得るように信号発生器を制御する制御ユニットの初期化からの経過時間に基づく。代替として、第1、第2、および第3の時点は、それぞれの時点の-30%から+30%までのスパンのそれぞれの短い時間範囲である。例えば、第1、第2、および第3の時点または時間範囲は、重なり合わず、および/または共通の開始時間もしくは終了時間を共有しない。
【0045】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、受信コイルは、第1の受信コイルであり、装置は、磁場を検出するように配置された第2の受信コイルをさらに備え、ここにおいて、コンピューティング装置は、第2の受信コイルによって検出される磁場によって生成される信号を受信するようにさらに構成され、第1および第2の受信コイルに対してのエッジの位置と金属材料の表面からの距離とをそれぞれ決定するように構成される。
【0046】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、装置は、送信コイル、第1の受信コイル、および/または第2の受信コイルの位置を調整するように構成された位置決め装置を備える。第1および第2の受信コイルに対してそれぞれ決定されたエッジの位置および金属材料の表面からの距離は、位置決め装置への入力として使用され得る。位置決め装置は、例えば、そのような位置および距離を一定に維持するように構成され得る。
【0047】
本発明の第1の態様と第2の態様との両方について、エッジから第1の受信用コイルまでの距離(またはコイル装置またはクラック検出装置内の任意の基準位置)は、典型的には、水平距離、すなわち、水平面、例えば、金属材料の表面に平行な距離であることを理解されたい。同様に、第2の受信コイルに対しての金属材料の表面からの距離は、水平距離に直交する垂直距離である。
【0048】
一般に、特許請求の範囲で使用される全ての用語は、本明細書中に別段明示的に定められない限り、当技術分野におけるその通常の意味に従って解釈されるべきである。「1つの(a/an)/(the)要素、装置、構成要素、手段、ステップなど」の全ての参照は、別段明示的に述べられない限り、要素、装置、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つの例を参照するときにオープンで解釈されるべきである。本明細書中に開示された任意の方法のステップは、明示的に述べられない限り、開示された正確な程度で実行される必要はない。
【0049】
次に、本発明概念のこれらのおよび他の態様が、本発明概念の例示実施形態を示す添付図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】金属材料中のクラック検出のための装置の一例の概略図。
【
図2a】金属材料中のクラック検出のための装置の一例の概略図。
【
図2b】金属材料中のクラック検出のための装置の一例の概略図。
【
図3a-3b】例えば、
図1または
図2aおよび
図2b中の装置によって検出された信号の特性関係を決定するための第1、第2、および第3の時点の図。
【
図4】金属材料のエッジにおけるクラック深さを決定する方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下の説明では、説明のためであって限定のためではなく、本発明の徹底的な理解を与えるために、特定の構成要素、インターフェース、技法等などの特定の詳細が説明される。しかしながら、本発明が、これらの特定の詳細から外れる他の実施形態で実施されてもよいことは当業者に明らかであろう。他の例では、よく知られているデバイス、回路、および方法の詳細な説明は、不要な詳細で本発明の説明を曖昧にしないように省略される。
【0052】
本明細書中に示された装置は、クラックのクラック深さを決定することによって金属材料中のエッジにおけるクラックを検出するように適合される。有利には、装置は、例えば、鋳造プロセスまたは圧延プロセスなどの金属製造プロセスに極端な条件下で使用され得る。装置は、詳細には、粗い金属表面上のクラックの正確なクラック深さの測定のために使用され得る。
【0053】
電流が金属材料中に誘導されることを可能にするのに十分高い電導性を有する任意の金属材料、例えば、鋼鉄が、本明細書中に示された方法および装置によって検査され得る。
【0054】
図1は、金属材料MのエッジEにおける表面19中のクラックを検出するための装置1の一例の概略図を示す。
図2aに見られ得るように、エッジEは、縦方向または金属材料Mの移動の方向に金属材料Mに沿って延びる。エッジEは、
図1におけるように湾曲し得る半径Rを備えた曲率、またはエッジが鋭い曲率を有する。装置1は、可能性のあるクラック深さCDを決定することによってクラックCがエッジEにおける金属材料M中に存在するか決定するために、出力信号を発生させるように配置された信号発生器7と、信号発生器7の出力信号を制御するように配置された制御ユニット9と、信号発生器7から出力信号を受信するように配置され、それによってクラックについて検査されることになる金属材料M中に磁場を発生させる送信コイル3と、第1の抵抗器R1と、磁場を検出し、検出された磁場に基づいて信号を生成するように配置された受信コイル5と、第2の抵抗器R2と、受信コイル5からの信号を増幅するように構成された増幅器11と、増幅器11からの信号を処理するように配置されたコンピューティング装置12とを備える、コンピューティング装置12は、第1のユニット13、第2のユニット15、および第3のユニット16などの様々なサブ・ユニットを備えることができる。
【0055】
一般に、本開示は、エッジEにおける金属材料M中の磁場の発生、磁場の検出、およびある所定の時間における検出された磁場に関する信号の特性関係の決定を伴い、それによって、以下で詳述されるように、クラック深さを決定することができる。
【0056】
図2aおよび
図2bは、金属材料MのエッジEにおける表面19中のクラックを検出するための装置1’の別の例の概略図を示す。
図2aは平面図であり、
図2bは、側面図である。
図2aおよび
図2bの装置1’は、
図1の装置1と同じ原理であり、以下に、装置間の差異の主な要点が、説明される。例えば、
図1の信号発生器7、制御ユニット9、増幅器11、およびコンピューティング装置12が、
図2aおよび
図2b中の構成要素17中に一般に組み込まれているとみなされたい。装置1’は、
図1を参照して説明されるものと同じ機能を有する送信コイル3および第1の受信コイル5を備える。また、装置1’は、第1の受信コイル5の遠くに配置された第2の受信コイル6を備える。送信コイル3、第1および第2の受信コイル5、6は、ここで、コイル装置18と一般に呼ばれる。いっそうさらに、装置1’は、コイル装置18が接続され、それと移動可能であるプラットフォーム20を備える。
図2bに示されるように、プラットフォーム20は、垂直Vと水平Hの両方にコイル装置18の位置を調整するように構成された位置決め装置21と結合される。プラットフォーム20は、コイル装置18を再配置できるのに必要とされず、送信コイル3、第1の受信コイル5、および第2の受信コイル6の各々は、位置決め装置21に直接結合され得ることを留意されたい。
図1に示された第1および第2の抵抗器R1、R2は、分かりやすさを増すために、
図2aおよび
図2b中で省略されるが、それぞれ送信コイル3および第1の受信コイル5に、またはプラットフォーム20に組み込まれると考えることができることに留意されたい。同様に、第2の受信コイル6は、第1の受信コイル5が第2の抵抗器R2に接続されるのと同じように、第3の抵抗器R3に並列に接続されることが想定され得、そのような第3の抵抗器は、第2の受信コイル6またはプラットフォーム20に組み込まれ得る。
【0057】
次に、装置1’の動作の例が、
図2~
図4を参照して詳細に説明される。クラックCについて検査される金属材料M、例えば、スラブまたは金属シートは、送信コイル3および第1および第2の受信コイル5、6の近くに配置される。より具体的には、装置1’は、送信コイル3が、距離DOによって示されるようにエッジEの少なくとも一部外側に配置されるように、および距離DIによって示されるようにエッジEの少なくとも一部内側に配置されるようになされる。DO/DIの比は、0.1と0.4との間であることが好ましい。
図2aおよび
図2bにおいて、第1の受信コイル5は、その磁気中心MCがエッジEの内側に配置されるようにエッジEに一部重なり合うように配置される。
図2aおよび
図2bにおいて、第2の受信コイル6は、エッジEの内側におよび金属材料Mを覆って十分に配置される。典型的には、送信コイル3および第1および第2の受信コイル5、6のそれぞれの磁気軸は、金属材料Mの表面19に直交する。好ましくは、送信コイル3ならびに第1および第2の受信コイル5、6のそれぞれ1つずつは、フラット・コイルであり、マイナ・プロパゲーション(minor propagation)は、その磁気軸に直交するのと比べて、その磁気軸に沿っている。
【0058】
金属材料Mは、典型的には、クラック検査中にコイル装置18に対して移動し、それによって、特に金属材料MのエッジEで、金属材料Mの表面19に沿った検査を可能にする。上述したように、送信コイル3は、少なくともその一部がエッジEの外側に配置され得る。したがって、以下に存在する第1のステップS10に先立つステップS5において、送信コイル3は、少なくともその一部が金属材料MのエッジEの外側に設けられる。さらに、このステップS5において、送信コイル3は、少なくともその一部が金属材料MのエッジEの内側に設けられ得る。
【0059】
(
図2aおよび
図2bの構成要素17に組み込まれた、
図1にだけ示された)制御ユニット9は、(
図2aおよび
図2bの構成要素17に組み込まれた、
図1にだけ示された)信号発生器7へ制御信号を供給するように配置され、それによって、出力信号、例えば、送信コイル3へ供給される信号発生器7の電流を制御する。信号発生器7は、例えば、開状態にあり、それによって送信コイル3へ電流を供給するように、またはそれが送信コイル3へ電流を供給しない閉状態にあるように制御ユニット9によって制御され得るトランジスタを備えることができる。
【0060】
一実施形態では、制御ユニット9は、信号発生器が、
図3aに示されるように、第1の時間スパンt00~t0において第1の大きさI1を有する本質的に一定である電流を発生させるように、信号発生器7を制御するように配置される。
【0061】
第1のステップS10では、第1の大きさI1を有する電流は、送信コイル3へ送られる。それによって、磁場が、エッジEにおいて金属材料M中に生成される。クラック検査中、金属材料Mの表面19は、送信コイル3の周りの磁場が金属材料Mに侵入し、したがって金属材料M中に磁場を引き起こすことができるように、送信コイル3に十分近くに配置される。距離は、例えば、10~25mm、例えば、10~15mmまたは15~25mmであり得る。
【0062】
磁場が金属材料M中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深く金属材料Mの中に侵入したことが推定される時間t0の点で、信号発生器7によって送られる電流は、第2のステップS20において、本質的に一定の電流が第2の大きさI2を得るように制御ユニット9によって制御される。第2の大きさI2は、例えば、本質的にゼロ、またはゼロであり得る。したがって、第2のステップS20は、トランジスタをその閉状態に設定することを含み得る。第1の振幅I1から第2の振幅I2への電流供給量の変化により、誘導電流が金属材料M中に発生する。
【0063】
好ましくは、信号発生器7によって送られる電流は、
図3a中の一番上の図に示されるように、パルス列22aの形態にある。典型的には、磁場の測定は、以下により詳細に詳述されるように続くパルス間で得られる。
【0064】
金属材料M中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深く金属材料Mの中に磁場が侵入したときの推定は、理論的推定に基づくことができ、推定された時間は、制御ユニット9がそれに応じて信号発生器7によって出力される電流を制御することができるように制御ユニット9中のソフトウェアにプログラムされる。
【0065】
推定は、送信コイル3への電流の送りが始まるとき、測定されることが望まれる最も深いクラック深さ、金属材料Mの比透磁率μおよび電気抵抗率ρに基づくことができる。そのような推定は、例えば、以下の関係によって与えられ得る。
【0066】
【0067】
ただし、t0は、
図3aおよび
図3bに示されるように、電流がその第2の大きさI2を得るときのミリ秒の単位の時間であり、t00は、電流がその第1の大きさI1を得るときの時間であり、CDmaxは、ミリメートル単位で測定されることが望まれる最大クラック深さであり、μは、金属材料Mの比透磁率であり、ρは、ナノ・オーム・メートル(nΩm)の単位の金属材料Mの電気抵抗率である。
【0068】
第2のステップS20の後に、送信コイル3のエネルギーは、(例えば、
図2aおよび
図2bのプラットフォーム20に組み込まれた、
図1にだけ示された)第1の抵抗器R1によって迅速に放出され得る。したがって、第1の抵抗器R1は、電流がその第2の大きさI2に達したときに、送信コイル3からのエネルギーを放出するように配置される。一実施形態では、第1の抵抗器R1は、送信コイル3と並列接続で配置され得る。
【0069】
第3のステップS30では、電流がその第2の大きさI2に達したとき、誘導電流によって生成される磁場は、少なくとも第1の受信コイル5によって検出される。第1の受信コイル5によって検出された磁場は、(
図2aおよび
図2bの構成要素17に組み込まれた、
図1にだけ明示的に示された)増幅器11によって増幅され得る第1の受信コイル5中に信号S(t)、例えば、電圧を誘導する。
図2aおよび
図2bの例示実施形態によれば、誘導電流によって生成される磁場も、任意選択のステップS35において第2の受信コイル6によって検出される。第2の受信コイル6によって検出された磁場も、第2の受信コイル6に信号Sr(t)、例えば、電圧を誘導し、これは、増幅器によって増幅され得る。
【0070】
増幅器11は、少なくとも第1の受信コイル5から(
図2aおよび
図2bの構成要素17に組み込まれた、
図1にだけ明示的に示された)コンピューティング装置12へ増幅された信号を供給する。コンピューティング装置12は、一実施形態では、第4のステップS40、第5のステップS50、および第6のステップS60において、それぞれ、信号の第1の信号値St1、第2の信号値St2、および第3の信号値St3を決定するように配置される。一実施形態では、制御ユニット9は、
図3aおよび
図3bに示されるように、第1のユニット13が第1の時点t1における第1の信号値St1、第2の時点t2における第2の信号値St2、および第3の時点t3における第3の信号値St3を第1のユニット13が決定できるように、制御信号を供給するように配置される。
【0071】
第3のステップS30における第1の受信コイル5による磁場の検出、および任意で、第2の受信コイル6による磁場の検出の前にまたはそれと同時に、磁場によって第1の受信コイル5に生成されるエネルギーは、第2の抵抗器R2によって放出され、磁場によって第2の受信コイル6に生成されるエネルギーは、第3の抵抗器R3によって放出される。したがって、第2および第3の抵抗器R2、R3は、電流がその第2の大きさI2に達したときに、それぞれ、第1および第2の受信コイル5、6からエネルギーを放出するように配置される。一実施形態では、第2の抵抗器R2は、第1の受信コイル5と並列接続で配置され、および/または第3の抵抗器R3は、第2の受信コイル6と並列接続で配置される。
【0072】
第1の抵抗器R1、第2の抵抗器R2、および第3の抵抗器R3の抵抗の適切な選択、ならびに第1の大きさI1と第2の大きさI2との間の電流の高速スイッチングによって、送信コイル3ならびに第1および第2の受信コイル5、6のエネルギーの高速放出が、実現され得、したがって、第1および第2の受信コイル5、6による磁場測定の開始前の短い時間スパンt1-t0を可能にする。
【0073】
第1の時点t1は、一実施形態では、第2の大きさI2を得るための電流の制御による任意の乱れが終わったこと、および任意で、第2の大きさI2を得るための電流の制御による金属材料M中の誘導電流が金属材料Mの表面の凹凸に対応する深さおよび測定されることが望まれない浅いクラック深さよりも深く金属材料Mの中に侵入したことが推定された(t0からの)時間である。電流が金属材料Mの表面の凹凸よりも深い深さおよび測定されることが望まれない浅いクラック深さへ侵入した時間の推定は、1mm以下の深さを有するクラック深さおよび表面の凹凸が測定されることが望まれない場合、以下の関係によって与えられ得る。
【0074】
【0075】
ただし、t1は、マイクロ秒の単位の時間であり、μは、金属材料Mの比透磁率であり、ρは、nΩmの単位の電気抵抗率である。同様の式が、測定されることが望まれる最小クラック深さに応じて得られてもよい。例えば、熱間鋼(例えば、1000℃の鋼鉄)などの高い電気抵抗率の材料を測定するとき、減衰時間は、約1マイクロ秒未満であるべきであり、したがって、時間t1は、1マイクロ秒、または(t0の後の)0.5~1マイクロ秒の間であるように選択される。低い抵抗率の材料については、第1の時点t1のかなりより長い設定が、例えば、以下の簡略化された式に従って使用され得る。
【0076】
【0077】
ただし、ρは、ナノ・オーム・メートル(nΩm)の単位の金属材料Mの電気抵抗率であり。t1は、マイクロ秒の単位である。
【0078】
第3の時点t3は、一実施形態では、エッジEの曲率の半径Rの変化のいずれの影響も止まったことが推定された(t0の後の)時間である。例えば、第3の時点t3は、熱間鋼(例えば、1000℃の鋼鉄)などの高い電気抵抗率の材料を測定するために、(例えば、2mmのエッジEの半径Rで)約12マイクロ秒であり得る。別の材料については、第3の時点t3は、次のように設定され得る。
【0079】
【0080】
ただし、ρは、ナノ・オーム・メートル(nΩm)の単位の金属材料Mの電気抵抗率であり、t3は、マイクロ秒の単位である。
【0081】
第2の時点t2は、第1の時点t1と第3の時点t3との間のある時間に選ばれる。例えば、第2の時点t2は、(t0の後の)時間
【0082】
【0083】
で選ばれ得る。
【0084】
本明細書中に説明された第1、第2、および第3の時点の各々は、典型的には、第1の信号値St1、第2の信号値St2、および第3の信号値St3を決定するためにコンピューティング装置12、例えば、第1のユニット13へ制御信号を供給することができる制御ユニット9のソフトウェアにプログラムされる。
【0085】
第1の時点t1について、第1の信号値St1は、コンピューティング装置12によって、例えば、第1のユニット13によって決定される。第1の信号値St1は、典型的には、第1の時点t1でとられる信号の単一の信号値であるが、t1の-30%からt1の+30%まで広がる第1の時間範囲内の信号の平均値、または第1の時間範囲内の信号の積分とすることもできる。同様に、第2の時点t2について、第2の信号値St2は、コンピューティング装置12によって、例えば、第1のユニット13によって決定される。第2の信号値St2は、典型的には、第2の時点t2でとられる信号の単一の信号値であるが、t2の-30%からt2の+30%まで広がる第2の時間範囲内の信号の平均値、または第2の時間範囲内の信号の積分とすることもできる。最後に、第3の時点t3について、第3の信号値St3は、コンピューティング装置12によって、例えば、第1のユニット13によって決定される。第3の信号値St3は、典型的には、第3の時点t3でとられた信号の単一の信号値であるが、t3の-30%からt3の+30%まで広がる第3の時間範囲内の信号の平均値、または第3の時間範囲内の信号の積分とすることもできる。
【0086】
第1、第2、および第3の信号値St1、St2、St3は、(
図2aおよび
図2bの構成要素17に組み込まれた、
図1にだけ示される)第2のユニット15へ与えられる。第1、第2、および第3の信号値St1、St2、St3は、第2のユニット15に配置されたサンプル・アンド・ホールド回路による電圧としてアナログ信号の形態で、または代替として、第2のユニット15に配置されたA/D変換器によるデジタル信号として与えられ得る。
【0087】
第1、第2、および第3の信号値St1、St2、St3は、第3の時点t3の後であるが、測定が繰り返され、新しい電流パルスが信号発生器7によって発生させられる時間t20の前である第4の時点t4で第3のユニット16へ第2のユニット15によって与えられることができ、ここにおいて、第1のユニット13は、続く測定、すなわち、続く電流パルスの信号値の決定のために第4の時点t4の後の第5の時点t5でリセットされ得る。これは、
図3bの一番下の図に示される。したがって、電流パルスは、時間t20で送信コイル3へ信号発生器7によって送ることができ、ここにおいて、上記のステップS10~S60は、繰り返される。
【0088】
ステップS70では、第1、第2、および第3の信号値St1、St2、St3に基づいてクラック深さを決定することによってクラックが存在するか決定される。クラック深さの決定は、信号値の以下の組合せ、すなわち、第1の信号値St1と第2の信号値St2、第2の信号値St2と第3の信号値St3、および第1の信号値St1と第3の信号値St3のうちの少なくとも2つの間の特性関係を決定することによって第3のユニット16において実行され得る。本発明者は、特性関係の組合せ、例えば、St1/St2とSt1/St3、またはSt2/St3とSt1/St3またはSt1/St2は、以下にさらに説明されるエッジの位置およびエッジの曲率の半径から独立していることを特定した。留意事項として、材料の抵抗率は、クラックの検出中に実質的に一定であり、金属材料の表面の凹凸は、第1の時点t1の特性に関する測定に影響を与えない。
【0089】
図3bを見ると、クラックおよびそのクラック深さCDの決定が、特性関係を基準信号の対応する特性関係と比較することによって行われる。
図3bにおいて、第1の基準信号Sa(t)は、(ステップS10~S70を参照して上述したように理論的にまたは測定によって、しかし、連続曲線を実現するためにt1、t2、およびt3よりも多くの時間について)確立されており、クラックCは、金属材料MのエッジEに存在する。基準位置に対してのエッジEの位置、そこで第1の受信コイル5の磁気中心MC、およびエッジEの曲率の半径Rは、それに応じて、それぞれ、エッジ位置パラメータおよび半径パラメータによって決定され得る。エッジ位置パラメータおよび半径パラメータは、通常の条件を表す第1の基準信号Sa(t)について、エッジ位置パラメータの第1のエッジ基準値、および半径パラメータの第1の基準値に対応している。また、以下の基準信号が、確立され、
図3bに示される。第2の基準信号Sb(t)は、ステップS64において、クラックを有さず、同じ半径パラメータおよびエッジ位置パラメータ(すなわち、それぞれ、第1の半径基準値および第1のエッジ基準値)を有する同じ金属材料について、(ステップS10~S60を参照して上述したように理論的にまたは測定によって、しかし、連続曲線を実現するためにt1、t2、およびt3よりも多くの時間について)確立され、第3の基準信号Sc(t)は、ステップS65において、クラックを有さず、同じ半径パラメータ(すなわち、第1の半径基準値)を有するが、第1のエッジ基準値に対してのエッジ位置パラメータの所定の変化を伴う同じ金属材料について、(ステップS10~S60を参照して上述したように理論的にまたは測定によって、しかし、連続曲線を実現するためにt1、t2、およびt3よりも多くの時間について)確立され、第4の基準信号Sd(t)は、ステップS66において、クラックを有さず、エッジ位置パラメータとしての第1のエッジ基準値を有し、第1の半径基準値に対しての半径パラメータの所定の変化を伴う同じ金属材料のために(ステップS10~S60を参照して上述したように理論的にまたは測定によって、連続曲線を実現するためにt1、t2、およびt3よりも多くの時間について)確立される。したがって、基準信号の全部は、上に示されるように、しかし、連続曲線を実現するためにt1、t2、およびt3よりも多くの時点について、少なくともステップS10、S20、S30、S40、S50、およびS60に基づき得る。
【0090】
したがって、エッジの位置の独立性は、第1、第2、および第3の信号値St1、St2、St3の以下の特性関係によって、例えば、以下の措置および計算を実行することによって、ステップ70において、および好ましくは第3のユニット16において、行うことができる。
【0091】
まず、第1、第2、および第3の時点t1~t3について、第2および第3の基準信号Sb(t)、Sc(t)の以下の特性関係が、
【0092】
【0093】
のように設定され、
【0094】
【0095】
となる。
【0096】
上記の特性関係に基づいて、したがって、エッジの位置は、測定を乱さない。
【0097】
Sb(t1)/Sb(t2)およびSc(t1)/Sc(t2)は、金属材料中にクラックが存在せず、半径パラメータについて第1の半径基準値を有するときに、1に等しいそのような積をつくるために、続いて、定数係数N12が乗じられてもよい。同様に、Sb(t2)/Sb(t3)およびSc(t2)/Sc(t3)は、金属材料中にクラックが存在せず、半径パラメータについて第1の半径基準値を有するときに、1に等しいそのような積をつくるために、定数係数N23が乗じられてもよい。したがって、以下の関係が設定され得る。
【0098】
【0099】
したがって、測定S(t)中、上述したように、以下の式が設定される。
【0100】
【0101】
したがって、R12およびR23のゼロ(0)からの偏差は、エッジの位置から独立して、エッジの曲率の半径の変化、ならびに/またはクラックの存在および深さを示す。
【0102】
N12およびN23は、金属材料が測定を受けるときに同じまたは類似する電気特性および磁気特性を有する基準金属材料に対する測定によって決定することができる。
【0103】
図3bからさらに明らかになるように、第2の時点t2と第3の時点t3との間の同じ基準信号Sa(t)、Sd(t)間の違いに比べて、少なくとも、第1の時点t1と第2の時点t2との間で第1の基準信号Sa(t)および第4の基準信号Sd(t)にかなりの違いがある。したがって、R12は、結果として、Sd(t)についてのR23対してのR12と比べて、Sa(t)についてのR23に対して比較的大きい違いになる。このことに基づいて、エッジ位置およびエッジの曲率の半径から独立している特性数CRが、以下のように決定され得る。
【0104】
【0105】
Const1は、例えば、第1の半径基準値に対しての半径パラメータの所定の変化を含み、そのような半径変化についてCR=0である上述したような基準材料に関する測定値に基づいて決定することができ、またはConst1は、クラック測定を受ける金属材料に対して、しかしクラックが存在しない部分に対して決定することができ、Const1の値は、測定中の最小測定変動を与える。すなわち、Const1の値は、エッジの半径Rが変化しているときに、CRの最小変動を与えるように選択される。例えば、第2の時点t2が上記の式t2=(((t1)1/2+(t3)1/2)/2)2によって決定される場合、Const1は、1に等しいまたは1にほぼ等しい。
【0106】
例えば、上述したような方法、ステップS10~S60を実行し、Sd(t)についてのCR=0(すなわち、Const1=R12/R23)、Const1=0.91、およびSb(t1)=1を知らせることによって、
図3bに基づく以下の結果として得られる表は、以下のように設定され得る。
【0107】
【0108】
したがって、ゼロ(0)からのCRの偏差は、クラックの存在を示す(値-0.0001は約ゼロであることを確認されたい)。
【0109】
続いて、クラック深さCDは、以下の関係によって決定され得る。
【0110】
【0111】
ただし、Const2およびConst3は、例えば、異なるクラック深さを有するクラックを含む上述したような基準材料に対する測定によって決定することができ、または理論的に決定することができる。例えば、熱間鋼(1000℃の鋼鉄)および時間t1-t3については、上述したように、Const2は約100であり、Const3は約1mmである。
【0112】
測定を金属材料Mの表面19からの送信コイル3および受信コイル5の距離、金属材料Mの抵抗率ρ、および金属材料Mの表面19上の可能性ある凹凸、ならびにクラック長さを決定するための第3の特性値CV3から独立させるために第1および第2の特性値CV1、CV2およびその関係を利用する特許出願第EP2574911(A1)号の詳細な説明に記載された方法が、エッジから遠く離れたクラックの存在およびそのクラック深さを決定するために、ここでは基準と呼ばれ、本明細書に示された本開示と並列で利用され得ることに留意されたい。
【0113】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、第1および第2の受信コイル5、6は、ステップS37において以下に説明されるように、装置1’に対して水平に(すなわち、金属材料の表面19に沿ってまたは平行に)エッジEの位置を決定するとともに、金属材料Mの表面19と装置1’との間の垂直距離を決定するために使用される。すなわち、第1の受信コイル5がS(t)である場合、および第2の受信コイル6がSr(t)である場合、上述されたような2つの(増幅された)時間依存信号S(t)、Sr(t)は、例えば、コンピューティング装置12などの構成要素17へ送られる。ここで、信号S(t)とSr(t)との両方は、時間t0から時間t1まで別々に積分され、前述したように、両時間は、制御ユニット9によって制御される。S(t1-t0)およびSr(t1-t0)の2つの積分された値(すなわち、
【0114】
【0115】
および
【0116】
【0117】
)、およびその関係は、装置1’に対してのエッジEの水平位置と、金属材料Mの表面19と装置1’との間の垂直距離とを決定するために使用され、より詳細には、第1の受信コイル5がエッジEの比較的近くに配置されるとき、S(t1-t0)の積分された値は、第1の受信コイル5と金属材料の表面19との間の垂直距離、ならびに第1の受信コイル5(例えば、磁気中心MC)とエッジEとの間の水平距離の両方に依存し、一方、Sr(t1-t0)の積分された値は、(第2の受信コイル6が、エッジEから離れて配置されるとき)第2の受信コイル6と金属材料の表面19との間の垂直距離だけに依存する。したがって、装置1’またはコイル装置18に関して、エッジEの位置または水平距離PHor、および金属材料Mの表面19までの垂直距離PVerは、比Sr(t1-t0)/S(t1-t0)によって、例えばコンピューティング装置12において決定することができる。例えば、PHorおよびPVerが変動される(例えば、複数のステップにわたって、1mm)ときに基準材料について測定することによって、比
【0118】
【0119】
を決定することができ、PHorとPVerの関係は、例えば、送信コイルの磁気中心に基づいて、決定することができる。
【0120】
上述した測定について、第1の受信コイル5は、例えば、金属材料の表面19と第1の受信コイル5との間の垂直距離の約半分であるエッジEから磁気中心MCまでの水平距離Drで配置される。第2の受信コイル6は、例えば、金属材料の表面19と第2の受信コイル6との間の垂直距離よりも大きい第2の受信コイル6のエッジEから磁気中心までの水平距離Dsで配置される。
【0121】
したがって、位置決め装置21は、PHorおよびPVerの測定に応じてプラットフォーム20を移動させ、測定中、PHorおよびPVerを一定に維持するように構成され得る。PHorおよびPVerの大きい変動(例えば、±3~5mm)については、エッジの位置およびエッジの曲率の半径の測定独立性は、満たされ得ない。したがって、少なくとも1つの例示実施形態によれば、エッジの位置およびエッジの曲率の半径の測定独立性は、PHorおよびPVer<±3mmの変動について有効である。
【0122】
第1の受信コイル5だけを有する実施形態については、ステップS62において、基準位置に対してのエッジの位置、すなわち、エッジE、および例えば第1の受信コイル5の磁気中心MCからの水平距離に基づいてエッジ位置パラメータを確立するとともに、ステップS63において、エッジEの曲率の半径Rに基づいて半径パラメータを確立することがさらに可能であることを理解されたい。先に説明された特性関係は、エッジ位置パラメータおよび半径パラメータが独立であるように適合される。しかしながら、PHorおよびPVerの絶対値については、第1の受信コイル5と第2の受信コイル6の両方が必要とされる。
【0123】
金属材料中のエッジにおけるクラックは、エッジのすぐ近くに存在するクラック、例えば、エッジから始まり金属材料の中に入る45°の幾何学的対角軸と交わるクラック、または金属材料の水平面から金属材料の側面垂直面へ延びるクラックとして解釈されるべきである。クラック深さCDは、一例示実施形態によれば、金属材料の表面からクラックが45°の幾何学的対角軸と交わる点までの距離であり得る。ここでは、エッジEにおけるクラックの測定は、金属材料MのエッジEの外側に送信コイル3の少なくとも一部を設ける、好ましくは、DO/DIが0.1~0.4の間であるように重ね合わせることによって具体化される。また、エッジの湾曲は、丸い必要はなく、エッジが鋭くてもよいことに留意されたい。そのような場合、水力半径または等価半径が、本明細書中に示された半径の代わりに用いられてもよい。
【0124】
本発明概念は、主に、いくつかの実施形態を参照して説明されてきた。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上で開示されたもの以外の他の実施形態が、特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲内で等しく可能である。したがって、本発明は、最も実際的で好ましい実施形態であると現在考えられるものに関連して説明されたが、本発明は、開示された実施形態に限定されず、反対に、様々な修正および均等な装置を包含すること意図されることを理解されたい。本開示に記載された方法ステップの順序は、
図4に記載された順序に制約されない。ステップの1つまたはいくつかは、本発明の範囲から逸脱することなく、場所を変化させることができ、または異なる順序で行われてもよい。しかしながら、少なくとも1つの例示実施形態によれば、方法ステップは、
図4に説明された連続した順序で実行される。
【0125】
さらに、開示された実施形態の変形は、図面、本開示、および特許請求の範囲の検討から権利主張される発明概念を実施する際に当業者によって理解および実行することができる。特許請求の範囲では、「備える」という語は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。ある手段が相互に異なる独立請求項に引用されるという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを示さない。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 金属材料(M)のエッジ(E)におけるクラック(C)を決定する方法であって、前記エッジ(E)は、半径(R)を備えた曲率を有し、前記方法は、
- 前記金属材料(M)中に磁場を発生させるために送信コイル(3)へ第1の大きさ(I1)を有する電流を送るステップと(S10)と、
- 前記磁場が、前記金属材料(M)中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深く侵入したことが推定されるときに、前記電流が第2の大きさ(I2)を得るように前記電流を制御するステップ(S20)と、
- 受信コイル(5)によって前記磁場を検出するステップ(S30)と、ここで、検出された磁場が、前記受信コイル(5)中に信号(S(t))を発生させ、
- 前記第2の大きさを得るための前記電流の制御によるいずれの乱れも止まったことが推定された第1の時点(t1)で前記信号の第1の信号値(St1)を決定するステップ(S40)と、
- 前記第1の時点(t1)の後の第2の時点(t2)で前記信号の第2の信号値(St2)を決定するステップ(S50)と、
- 前記第2の時点(t2)の後の第3の時点(t3)で前記信号の第3の信号値(St3)を決定するステップ(S60)と、
- 信号値の以下の組合せ、すなわち、前記第1の信号値(St1)と前記第2の信号値(St2)、前記第2の信号値(St2)と前記第3の信号値(St3)、及び前記第1の信号値(St1)と前記第3の信号値(St3)のうちの少なくとも2つの間の特性関係を決定することによって前記第1、第2、及び第3の信号値(St1、St2、St3)に基づいてクラックの存在の可能性及びそのクラック深さを決定するステップ(S70)と、を備える方法。
[2] 前記金属材料(M)の前記エッジ(E)の外側に前記送信コイル(3)の少なくとも一部を設けるステップ(S5)をさらに備える、[1]に記載の方法。
[3] 前記第3の時点(t3)は、前記エッジの前記曲率の半径変化のいずれの影響も止まったことが推定された時点である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] クラックの存在の可能性及びそのクラック深さを決定する前記ステップ(S70)は、前記特性関係を対応する基準信号と比較することを備える、[1]から[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]- 基準位置に対しての前記エッジの位置に基づいてエッジ位置パラメータを確立するステップ(S62)と、
- 前記エッジの前記曲率の前記半径に基づいて半径パラメータを確立するステップ(S63)と、
をさらに備え、
前記特性関係は、前記エッジ位置パラメータ及び前記半径パラメータから独立している、[1]から[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]- クラックを有し、前記半径パラメータの第1の半径基準値及び前記エッジ位置パラメータの第1のエッジ基準値を有する金属材料のための第1の基準信号(Sa(t))を確立するステップと、
- クラックを有さず、前記半径パラメータの前記第1の半径基準値及び前記エッジ位置パラメータの前記第1のエッジ基準値を有する金属材料のための第2の基準信号(Sb(t))を確立するステップ(S64)と、
- クラックを有さず、前記第1の半径基準値を有し、前記第1のエッジ基準値に対しての前記エッジ位置パラメータの所定の変化を伴う金属材料のための第3の基準信号(Sc(t))を確立するステップ(S65)と、
- クラックを有さず、前記第1のエッジ基準値を有し、前記第1の半径基準値に対しての前記半径パラメータの所定の変化を伴う金属材料のための第4の基準信号(Sd(t))を確立するステップ(S66)と、
をさらに備える、[4]に従属する[5]に記載の方法。
[7] クラックの可能性のある存在及びそのクラック深さを決定する前記ステップ(S70)は、前記第1、第2、第3、及び/又は第4の基準信号(Sa(t)、Sb(t)、Sc(t)、Sd(t))の対応する信号値に関する前記特性関係を使用することを含む、[6]に記載の方法。
[8] 前記エッジ位置パラメータは、基準位置に対しての前記エッジの位置を表し、又は基準位置に対しての前記エッジの位置に対応し、前記半径パラメータは、前記エッジの曲率の半径を表し、又は前記エッジの曲率の半径に対応する、[6]又は[7]に記載の方法。
[9] 前記第1、第2、及び第3の時点は、別々の時点である、[1]から[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10] 前記受信コイル(5)は、第1の受信コイル(5)であり、
- 第2の受信コイル(6)によって前記磁場を検出するステップ(S35)と、ここで、検出された磁場が、前記第2の受信コイル(6)中に信号(Sr(t))を発生させ、
- 前記第1及び第2の受信コイル(5、6)に対する前記金属材料(M)の前記エッジ(E)の位置及び表面(19)からの距離をそれぞれ決定するステップ(S37)と、をさらに備える、[1]から[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11] 金属材料(M)のエッジ(E)におけるクラック(C)を決定するための装置(1、1’)であって、前記エッジは、半径(R)を備えた曲率を有し、
- 前記金属材料中に磁場を発生させるように配置された送信コイル(3)と、
- 前記磁場を検出するように配置された受信コイル(5)と、
- 前記金属材料中に前記磁場を発生させるための、前記送信コイルへ第1の大きさ(I1)を有する電流を送るように配置された信号発生器(7)と、
- 前記磁場が前記金属材料中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深く侵入したことが推定されるときに前記電流が第2の大きさ(I2)を得るように前記信号発生器を制御するように構成された制御ユニット(9)と、
- 前記受信コイル(5)によって検出される磁場によって生成される信号(S(t))を受信し、前記第2の大きさを得るための前記電流の制御によるいずれの乱れも止まったことが推定された第1の時点(t1)で前記第1の時点(t1)における前記信号の第1の信号値(St1)を決定するように構成されたコンピューティング装置(12)と、を備え、
前記コンピューティング装置は、前記第1の時点の後の第2の時点(t2)で前記信号の第2の信号値(St2)を決定し、前記第2の時点の後の第3の時点(t3)で前記信号の第3の信号値(St3)を決定するようにさらに構成され、
ここにおいて、前記コンピューティング装置は、信号値の以下の組合せ、すなわち、前記第1の信号値(St1)と前記第2の信号値(St2)、前記第2の信号値(St2)と前記第3の信号値(St3)、及び前記第1の信号値(St1)と前記第3の信号値(St3)のうちの少なくとも2つの間の特性関係を決定することによって、前記第1、第2、及び第3の信号値(St1、St2、St3)に基づいて、クラック(C)の存在の可能性及びそのクラック深さ(CD)を決定するようにさらに構成されている、装置(1、1’)。
[12] 送信コイルが、動作時に、少なくともその一部が前記金属材料の前記エッジの外側に配置されるように構成されている、[11]に記載の装置。
[13] 前記送信コイルは、動作時に、少なくともその一部が前記金属材料の前記エッジの内側に配置されるように構成されている、[12]に記載の装置。
[14] 前記コンピューティング装置は、前記エッジの曲率の半径変化のいずれの影響も止まったことが推定された時点である前記第3の時点(t3)で前記第3の信号値(St3)を決定するように構成されている、[11]から[13]のいずれか一項に記載の装置。
[15] 前記コンピューティング装置は、前記第1の時点(t1)、前記第2の時点(t2)、及び前記第3の時点(t3)において、それぞれ、前記第1の信号値(St1)、前記第2の信号値(St2)、及び前記第3の信号値(St3)を決定するように構成されており、ここにおいて、前記第1、第2、及び第3の時点(t1、t2、t3)は、別々の時点である、[11]から[14]のいずれか一項に記載の装置。
[16] 前記受信コイル(5)は第1の受信コイル(5)であり、前記装置は第2の受信コイル(6)をさらに備え、ここにおいて、前記コンピューティング装置は、前記第2の受信コイル(6)によって検出された磁場によって生成された信号(Sr(t))を受信するようにさらに構成され、前記第1又は第2の受信コイル(5、6)に対する前記金属材料の前記エッジの位置及び表面(19)からの距離を決定するように構成されている、[11]から[15]のいずれか一項に記載の装置。