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特許7439310仮想現実空間提供システムおよび仮想現実空間の提供方法
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  • 特許-仮想現実空間提供システムおよび仮想現実空間の提供方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】仮想現実空間提供システムおよび仮想現実空間の提供方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20240219BHJP
   E04H 1/02 20060101ALI20240219BHJP
   E04H 1/06 20060101ALI20240219BHJP
   E04H 3/02 20060101ALI20240219BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
G06T19/00 300B
E04H1/02
E04H1/06
E04H3/02 C
G06F3/01 510
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023006087
(22)【出願日】2023-01-18
(62)【分割の表示】P 2021105984の分割
【原出願日】2021-06-25
(65)【公開番号】P2023055756
(43)【公開日】2023-04-18
【審査請求日】2023-01-19
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521281139
【氏名又は名称】堀田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】堀田 尚
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-127897(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0016105(KR,A)
【文献】特開2007-265274(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0072525(KR,A)
【文献】特開2005-137895(JP,A)
【文献】中国実用新案第204516106(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
E04H 1/02
E04H 1/06
E04H 3/02
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の住宅および/または店舗が有する外部と空間を仕切る部材により形成される閉じられた空間の内側全面にわたって、前記部材に重ねて隙間なく設けられる複数の画像表示パネルと、
前記画像表示パネルに画像を表示させる画像生成装置と、を含み、
前記画像生成装置は、前記複数の画像表示パネルにそれぞれ関連性および動きのある二次元の画像を表示させ、前記複数の画像表示パネルにそれぞれ表示された当該画像が隙間なく組み合わさることで一つの仮想現実空間が表示されるように、前記複数の画像表示パネルに画像を表示させる仮想現実空間提供システム。
【請求項2】
前記部材は、床、天井、壁を構築する部材であり、
前記画像表示パネルの表面には、画像表示パネルを保護するための保護材が設けられた請求項1に記載の仮想現実空間提供システム。
【請求項3】
前記空間内にいる利用者に関する情報を取得するセンサを含み、
前記画像生成装置は、前記センサにより取得された情報に基づいて利用者がストレスを感じたと判断した場合、前記画像表示パネルに利用者のストレスを緩和させ得る画像を表示させる請求項1または2に記載の仮想現実空間提供システム。
【請求項4】
前記空間内に設けられる、音を出力する音響装置および液体を送出する流体装置を含み、
前記画像生成装置は、前記センサにより取得された情報に基づいて利用者がストレスを感じたと判断した場合、前記音響装置および前記流体装置により前記画像表示パネルに表示された画像に合った音の出力および液体の送出を一緒に行い利用者のストレスを緩和させる請求項3に記載の仮想現実空間提供システム。
【請求項5】
既設の住宅および/または店舗が有する外部と空間を仕切る部材により形成される閉じられた空間内の内側全面にわたって、前記部材に重ねて隙間なく複数の画像表示パネルを設けること、
画像生成装置により、前記複数の画像表示パネルにそれぞれ関連性および動きのある二次元の画像を表示させ、前記複数の画像表示パネルにそれぞれ表示された当該画像が隙間なく組み合わさることで一つの仮想現実空間が表示されるように、前記画像表示パネルに画像を表示させること、
を含む仮想現実空間の提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部と空間を仕切る部材、例えば住宅や店舗の一室の内部(室内の床、天井、壁)により形成された空間の内側全面にわたって設けられる画像表示パネルと、当該画像表示パネルに画像を表示させる画像生成装置を含む仮想現実空間提供システムや、仮想現実空間の提供方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルやデパートなどの屋外や、駅やバス停などの交通機関などあらゆる場所で、ディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を発信するいわゆるデジタルサイネージが用いられている。そして、このような静止画や動画などの画像を表示させる表示機器は、あらゆる場所に設置されるようになってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、任意の場所に設置しつつ所定の動画または静止画をその片面または両面に表示することができ、任意の場所に設置可能な宣伝用のパネル板として使用することができる画像表示パネルが記載されている。また、特許文献1には、この画像表示パネルは支持プレートの両面や片面に所定の画像を表示することで、任意の場所に設置可能なヴァンティアンパネルやポスターパネル、展示パネル、展示用・間仕切りパネル等の宣伝用のパネル板として使用することができ、商品やサービスの各種情報を伝える伝達媒体として利用することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-151519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている技術は、あくまで商品やサービスの各種情報を伝える伝達媒体として利用されるものであり、それ以外の、より多種多様な使い方が求められている。例えば、近年において、仮想現実(Virtual Reality)技術は、あらゆる場面で用いることが増えてきている。
【0006】
この仮想現実技術は、主に専用のゴーグルを使用して、人間の視界を覆うように360°の映像を映すものである。しかし、このような専用のゴーグルは全ての人に行き渡るものではなく、また、視界が塞がれるため、周囲の人や物とぶつかって怪我や事故が発生する恐れもある。
【0007】
そこで、本発明は、専用のゴーグルを必要とせず、空間内に入るだけで仮想現実空間を体験することができたり、より利用者にとって利便性の高い仮想現実空間提供システムおよび仮想現実空間の提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の仮想現実空間提供システムは、外部と空間を仕切る部材により形成された空間の内側全面にわたって、部材に重ねて設けられる画像表示パネルと、画像表示パネルに画像を表示させる画像生成装置と、を含む。
【0009】
また、部材は、床、天井、壁を構築する部材であり、画像表示パネルの表面には、画像表示パネルを保護するための保護材が設けられることが好ましい。
【0010】
また、仮想現実空間提供システムは、空間内にいる利用者に関する情報を取得するセンサを含み、画像生成装置は、センサにより取得された情報に基づいて利用者がストレスを感じたと判断した場合、画像表示パネルに利用者のストレスを緩和させ得る画像を表示させることが好ましい。
【0011】
また、仮想現実空間提供システムは、空間内に設けられる、音を出力する音響装置および流体を送出する流体装置を含み、画像生成装置は、センサにより取得された情報に基づいて利用者がストレスを感じたと判断した場合、音響装置および/または流体装置により音の出力および/または流体の送出を行い利用者のストレスを緩和させることが好ましい。
【0012】
また、画像表示パネルは、既設の建築物が有する閉じられた空間に対して設けられることが好ましい。
【0013】
本発明の仮想現実空間の提供方法は、外部と空間を仕切る部材により形成された空間の内側全面にわたって、部材に重ねて画像表示パネルを設けること、画像生成装置により、画像表示パネルに画像を表示させること、を含む。
【発明の効果】
【0014】
(1)本発明の仮想現実空間提供システムは、外部と空間を仕切る部材により形成された空間の内側全面にわたって、部材に重ねて設けられる画像表示パネルと、画像表示パネルに画像を表示させる画像生成装置と、を含む構成により、画像表示パネルから全方向にわたって多種多様の画像が提供されるため、利用者は空間内に入るだけで仮想現実空間を体験することができる。さらに、画像表示パネルは部材に重ねて設けられるため、床や壁などに埋め込む場合よりも、部材(空間内)の強度を確保することができる。
【0015】
(2)また、部材は、床、天井、壁を構築する部材であり、画像表示パネルの表面には、画像表示パネルを保護するための保護材が設けられる構成により、保護材で衝撃を吸収したり、傷を防ぐことができる。
【0016】
(3)また、仮想現実空間提供システムは、空間内にいる利用者に関する情報を取得するセンサを含み、画像生成装置は、センサにより取得された情報に基づいて利用者がストレスを感じたと判断した場合、画像表示パネルに利用者のストレスを緩和させ得る画像を表示させる構成により、利用者が意図しなくても自動で、画像表示パネルに表示される画像がストレスを緩和させ得るものに変わるため、利用者にとって利便性が高い。
【0017】
(4)また、仮想現実空間提供システムは、空間内に設けられる、音を出力する音響装置および流体を送出する流体装置を含み、画像生成装置は、センサにより取得された情報に基づいて利用者がストレスを感じたと判断した場合、音響装置および/または流体装置により音の出力および/または流体の送出を行い利用者のストレスを緩和させる構成により、利用者が意図しなくても自動で、リラックスできる音楽や暖かい/涼しい風などが利用者に提供されるため、利用者にとってより利便性が高い。
【0018】
なお、本発明の仮想現実空間の提供方法によれば、本発明の仮想現実空間提供システムと同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係る仮想現実空間提供システムの概略斜視図である。
図2図1の画像表示パネルの一部拡大図である。
図3】画像表示パネルが設けられる、外部と空間を仕切る部材により形成された空間を説明するための図である。
図4】仮想現実空間提供システムが提供する仮想現実空間のイメージ図である。
図5】本発明の他の実施の形態に係る仮想現実空間提供システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。
【0021】
[仮想現実空間提供システム]
図1は、本発明の実施の形態に係る仮想現実空間提供システムの概略斜視図である。図1に示すように、仮想現実空間提供システム1は、画像表示パネルPと、画像表示パネルPに画像を表示させる画像生成装置10とを含む。また、空間内(仮想現実空間提供システム1内または内部空間S内)にいる利用者に関する情報を取得するセンサ(図示せず)と、音を出力する音響装置30および流体を送出する流体装置31を含む。
【0022】
画像表示パネルPは、動画や静止画などを表示させるパネルであり、LEDパネルやLEDライトパネルを用いることができる。画像表示パネルPは、奥行のある三次元(3D)の映像を映すこともできる。
【0023】
また、画像表示パネルPは、外部と空間を仕切る部材により形成された空間、つまり閉じられた内部空間Sを形成する部材Mの内側全面にわたって設けられる。部材Mとは、例えば、住宅の一室(室内)B1の床M1、天井(図示せず)、および四方を囲む四面の壁M21,M22(残り二面は図示せず)である。
【0024】
つまり、画像表示パネルPは、図1に示す画像表示パネルP1のように床M1の全面にわたって隙間なく設けられ、壁M21,M22に対しても、同様に全面にわたって隙間なく設けられる(画像表示パネルP21,P22)。さらに、他の壁や天井に対しても、同様に全面にわたって隙間なく設けられる(図示せず)。
要するに、画像表示パネルPは、閉じられた空間を形成する部材Mの内側全面にわたって隙間なく設けられる。
【0025】
また、画像表示パネルPは、例えば壁の全面にわたって1枚の大型のパネルで構成されてもよく、壁に設けられた窓、出窓または扉などに合せて複数の小型のパネルを組み合わせて構成されてもよい。
【0026】
一方、画像生成装置10は、利用者の操作により、動画や静止画などの画像を生成する装置である。画像生成装置10により生成された画像は、利用者の操作だったり、または自動で画像表示パネルPに送信される。そして、画像表示パネルPは当該画像を受信し、表示させる。
【0027】
このような画像の送信および受信は、図1に示すように画像生成装置10を外部に設けて、有線または無線により画像表示パネルPと通信することで実現することができる。また、画像生成装置10を画像表示パネルPに組み込んだり、画像生成装置10と画像表示パネルP一体化させてもよい。
【0028】
画像生成装置10は、床、壁、天井など各部材Mに設けられた各画像表示パネルP1,P21,P22などに対して、それぞれ異なる画像を表示させるようにしてもよい。もちろん、各画像表示パネルP1,P21,P22などが組み合わさって、一つの大きな画像を表示させるようにしてもよい。
【0029】
図2は、図1の画像表示パネルの一部拡大図である。具体的には、壁M22に設けられた画像表示パネルP22の一部拡大図である。図2に示すように、画像表示パネルP22の表面には、画像表示パネルP22を保護するための保護材20が設けられている。なお、画像表示パネルP22以外の画像表示パネルの表面にも、同様に保護材20が設けられている。
また、保護材20は透過性を有しており、画像表示パネルPに表示される画像を透過させる。
【0030】
保護材20は、衝撃を吸収したり、傷を防ぐためのシートである。また、耐火性を有するものである。保護材20は、設ける場所や目的に応じて適切なものを選択することができる。例えば、子ども部屋に仮想現実空間提供システム1を設ける場合、子どもが叩いたり物を投げたりして床や壁に傷が付きやすいため、傷を防ぐための保護材を選択することができる。また、床は利用者の体重や、利用者が運動することにより他の場所よりも荷重がかかるため、衝撃を吸収するための保護材を選択することができる。
【0031】
空間内にいる利用者に関する情報を取得するセンサは、利用者の脈拍や心拍数、発汗状態や心電図などの情報(データ)を取得し得るセンサである。センサは、利用者の手首や足首に装着されるものでもよく、非接触により情報を取得できるものであってもよい。
【0032】
音響装置30は、画像表示パネルPに連動した音(例えば、画像表示パネルPに映画が流れていれば、その映画のセリフやBGMなど)や、歌、楽器によるメロディ、または小鳥のさえずりや雨、風、雷などの自然音であってもよい。音響装置30が設けられる位置や数に、特に制限はない。例えば、図1に例示されるように壁M22の上部に2つ設けられる以外にも、床や天井などに設けられたりしてもよい。
【0033】
流体装置31は、気体や液体などの流体を送出する。送出される気体は、例えば、暖かい風、涼しい風または霧(ミスト)などである。送出される液体は、例えば、小雨を模した水滴やシャワーなどである。
【0034】
[仮想現実空間の提供方法]
次に、本発明の仮想現実空間の提供方法を、本発明の仮想現実空間提供システムに基づいて説明する。図3は、画像表示パネルが設けられる、閉じられた空間を形成する部材の内部を説明するための図である。具体的には、図3は、住宅の一室(室内)B1である。
【0035】
本発明の仮想現実空間の提供方法は、このような住宅の一室(室内)B1に対して提供される。まず、住宅の一室(室内)B1の床M1、天井(図示せず)、および四方を囲む四面の壁M21,M22(残り二面は図示せず)に、それぞれ対応する画像表示パネルP(図1参照)を製造する。ここで、対応するとは、各建築部材Mの全面にわたって隙間なく設けられるようにサイズを調整したり、上述したように場所や目的に応じた保護材20(図2参照)を選択することである。
【0036】
その後、製造された画像表示パネルPを、各建築部材Mの全面にわたって隙間なく設ける。そして、画像生成装置10(図1参照)により、画像を生成し、画像表示パネルPに生成した画像を表示させる。
【0037】
ここで、壁のいずれか一面はタッチパネルとなっており、当該タッチパネルにより、画像生成装置を操作することができる。この操作により、利用者は任意のタイミングで画像の生成や画像の表示を行うことができる。つまり、利用者は好みの仮想現実空間を生成することができ、かつ好きなタイミングでそれを表示させることができる。
もちろん、タッチパネルを設ける位置や数は問わず、床に設けたり、複数設けたりしてもよい。
【0038】
なお、このような操作は、タッチパネルだけでなく、画像生成装置や画像表示パネルに音声認識機能を設けることで音声による操作を行うこともできる。これにより、例えば、利用者が室内に入ってきた際に声で画像表示パネルに映像を流し始めたり、逆に流している映像を止めたりすることができる。
【0039】
ここで、画像表示パネルPは、部材Mの内側全面にわたって重ねて(積層して)設けられる。このようにすることで、画像表示パネルPを部材(例えば、壁)に埋め込む場合よりも、強度を確保することができる。
【0040】
以上のように説明した本発明の仮想現実空間の提供方法はあくまで一例であり、住宅の一室以外、例えば店舗の一室やオフィスの一室、アミューズメント施設の一室などに対して提供されてもよい。また、新設の建築物(例えば、店舗)に対して提供することもでき、既設の建築物に対して提供することもできる。
【0041】
新設の建築物に対して提供する場合、床、天井、壁などの建築部材は、それぞれ画像表示パネルと一体化されたものが建築基準法や消防法などの基準を満たすものとして、予め設計してから製造することができる。
【0042】
[仮想現実空間のイメージ]
図4は、仮想現実空間提供システムが提供する仮想現実空間のイメージ図である。本イメージは、一例として、子ども部屋にサバンナの風景を映している様子を示している。図4に示すように、画像表示パネルPには、全面にわたってサバンナの風景やゾウ・シマウマ・キリンなどの動物が表示されている。壁の画像表示パネルP21,P22に映された動物たちは動き、また、天井の画像表示パネル(図示せず)に映された雲や床の画像表示パネルP1に映された草も、ゆっくりと動いたり、風でそよいだりする。
【0043】
このように、仮想現実空間提供システム1が設けられた子ども部屋は、室内の床、天井、壁など全面にわたって設けられた画像表示パネルPにサバンナの風景や動物が映されるため、利用者(例えば、子ども)はまるでサバンナにいるような体験をすることができる。つまり、仮想現実空間提供システム1により、利用者に対してサバンナという仮想現実空間が提供される。
【0044】
もちろん画像表示パネルには、サバンナの風景以外にもジャングルや浜辺、または夜景など、多種多様の風景を映し出すことができる。その他、テレビやコマーシャル(広告)など、利用者にとって仮想現実的な空間を提供し得るものであれば、その内容は問わない。また、画像表示パネルに表示される画像は、上述したように動画や静止画、または三次元映像など、様々な形態のものを選択することができる。
【0045】
[連動]
また、画像表示パネルPと、他の装置は連動させることができる。例えば、センサにより空間内にいる利用者に関する情報が取得されると、当該情報が画像生成装置10へ有線通信または無線通信により送信される。そして、画像生成装置10は、受信した情報に基づいて、利用者のストレス指標を判定する。
【0046】
例えば、センサにより取得された情報が心電図データである場合、この情報から心拍間隔(RRI:R―R Interval)を算出し、ストレス指標を求めることができる。さらに、画像生成装置10にAI(Artifical Intelligence)の機能を持たせて、当該求められたストレス指標が一定値を超えた場合(つまり、利用者がストレスを感じていると判断された場合)、画像表示パネルPに利用者のストレスを緩和させ得る画像を表示させる。その他、利用者のストレスを緩和させるために、画像表示パネルPの明るさ(照度や光度など)を落としたりしてもよい。
【0047】
同時に、画像生成装置10は、求められたストレス指標が一定値を超えた場合、音響装置30や流体装置31により音の出力、流体の送出などを行うこともできる。つまり、自動でリラックスできる音楽や暖かい風、または涼しい風がストレスを感じている利用者に対して提供されるため、利用者は自分で何らかの操作や動作を行わなくても、ストレスの低減を図ることができる。
【0048】
このように、ストレス緩和のため画像表示パネルPに表示される画像や明るさは、利用者の好みによって、画像生成装置10に対して予め設定することができる。また、音響装置30や流体装置31により出力・送出される音や流体も、どのタイミングで(ストレス指標がどの値を超えた場合に)どのようなものを出力・送出させるかも、利用者の好みによって設定することができる。なお、このような表示される画像、出力される音、送出される流体の組み合わせも、適宜自由に設計可能である。
【0049】
上述したセンサや装置の連動の例はあくまで一例であり、他にも、センサにより外(室外)の天気(雨や雷)の情報を取得し、それに応じて表示される画像などを変化させることができる。例えば、外で雷が鳴ったら、画像表示パネルPを光らせ、音響装置30によりゴロゴロといった音を出力することができる。また、雨が降り続いている間は画像表示パネルPに雨の画像を流し続け、雨が止んだら晴れの画像に変えることができる。
【0050】
このような外の情報を取得するセンサとして、ドローンや固定カメラ(定点カメラ)などを用いることができる。例えば、ドローンで空撮された360℃の風景映像が画像生成装置10に送信され、画像生成装置10は、当該風景画像を画像表示パネルPに表示させることができる。具体的には、ドローンの前後左右および上下にそれぞれ設けられたカメラにより撮影された映像を、四方の壁および天井、床に設けられた画像表示パネルPに表示させることで、ドローンの操縦士が自分のいる位置(ドローンが飛んでいる位置)を直観的に把握することができる。その結果、操縦士は、ドローンの安全な操縦を行うことができる。
【0051】
その他、画像生成装置10が気象情報や定点カメラで撮られた映像などをインターネット経由で受信して、当該気象情報に基づいた映像(例えば、ニューヨークの天気が雨である場合、雨の映像)や、定点カメラで撮られた映像(例えば、山頂の様子)などを画像表示パネルPに表示させてもよい。
【0052】
特に仮想現実技術は、例えば専用のゴーグルを装着して仮想現実空間へ没入した際などに、不快感や頭痛、吐き気などいわゆるVR酔いを引き起こす場合がある。そのため、本発明においても、利用者がストレス以外にも上記のような不調を感じた場合は、センサやAIによりその不調を検出し、緩和するべく適切なアクションを行うことができる。
【0053】
[本発明の他の実施の形態]
図5は、本発明の他の実施の形態に係る仮想現実空間提供システムを説明するための図である。図5に示すように、仮想現実空間提供システム1は、室内B1だけでなく、コンテナB2といった閉じられた空間を形成するものに対しても、仮想現実空間を提供することができる。
【0054】
この場合、コンテナB2の部材Mである床(図示せず)、天井M3、および四方を囲む四面の壁M23,M24(残り二面は図示せず)の内側全面にわたって、画像表示パネルが設けられる。
【0055】
当然、以上のように説明した室内B1やコンテナB2のような床、天井、および四方の壁で構成される六面体の形状だけでなく、天井が三角屋根である場合や、壁が湾曲している場合であっても、当該天井や壁に設けられる画像表示パネルのサイズを調整したり、可撓性を有する画像表示パネルを用いることで、隙間なく画像表示パネルを設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明の仮想現実空間提供システムおよび仮想現実空間の提供方法は、外部と空間を仕切る部材、例えば住宅や店舗の一室の内部(室内の床、天井、壁)により形成された空間の内側全面にわたって設けられるものであり、住宅や店舗の一室、またはコンテナなど様々なものに対して設けることができ、かつ様々な仮想現実空間を提供することができるものであるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 仮想現実空間提供システム
P,P1,P21,P22 画像表示パネル
10 画像生成装置
20 保護材
30 音響装置
31 流体装置
M 部材
M1 部材(床)
M21,M22,M23,M24 部材(壁)
M3 部材(天井)
S 内部空間
B1 室内
B2 コンテナ
図1
図2
図3
図4
図5