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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】筒状構造体
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/56 20060101AFI20240219BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20240219BHJP
   F28F 25/12 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
F04D29/56 D
F24F13/20
F28F25/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023042076
(22)【出願日】2023-03-16
【審査請求日】2023-03-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山崎 幸司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】川除 禎平
(72)【発明者】
【氏名】二方 博之
(72)【発明者】
【氏名】小原 将暢
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-049196(JP,A)
【文献】実開昭53-016903(JP,U)
【文献】特開平03-011114(JP,A)
【文献】特表2013-529755(JP,A)
【文献】国際公開第2005/098213(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00
F28F 25/10、25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却塔のファンスタックとして用いられ、
ファンを取り囲む円筒状の本体部を備え、
前記本体部は、周方向に沿って配置された複数の湾曲部材で構成され、隣り合う第1の湾曲部材及び第2の湾曲部材の端部どうしが径方向に重ね合わせられた重複部を有し、
前記重複部は、前記第1の湾曲部材の端部の内面が前記第2の湾曲部材の端部の外面と重なり合うことによって構成され、
前記重複部の周方向での長さを変化させて前記本体部を径方向に拡縮する第1の調節機構を備え、
前記湾曲部材は、前記第1の調節機構によって周方向に力が加えられて弾性変形し、曲率半径が変化するように配されている、筒状構造体。
【請求項2】
前記第1の調節機構は、前記第1の湾曲部材から径方向に延びる第1延出部と、前記第1延出部に周方向において対向するように前記第2の湾曲部材から延びる第2延出部と、前記第1延出部と前記第2延出部とを周方向において接近又は離反させる第1締結部材とで構成されている、請求項1に記載の筒状構造体。
【請求項3】
前記複数の湾曲部材の径方向の位置を変化させる第2の調節機構を備える、請求項1又は2に記載の筒状構造体。
【請求項4】
前記本体部を設置する架台を備え、
前記第2の調節機構は、前記架台に対する前記複数の湾曲部材の径方向での位置を調節可能に構成されている、請求項3に記載の筒状構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンを取り囲む筒状の構造体が知られている。かかる筒状構造体は、ファンが発生させた気流の流路を形成するように機能するものである。この種の筒状構造体を備える設備として、例えば、冷却塔が知られている。冷却塔は、工場やビルなどの空調設備から排出される温水を冷却して循環使用するために使用されている。冷却塔内には、通常、温水を外気と接触させて気化させる充填材が収容されている。また、冷却塔は、充填材における気化を促進するために、塔内に気流を生じさせるファンと、該ファンを取り囲む筒状構造体としてのファンスタックとを備えている。ファンスタックは、気流の排気路を形成して塔内の気流を整えるように機能する。
【0003】
かかる冷却塔の性能は、ファンの回転翼の先端とファンスタックの内面との間隔(クリアランスと呼ばれる)の大きさによって変化することが知られている。よって、クリアランスの大きさを調節可能に構成されたファンスタックが提案されている。例えば、特許文献1に記載のファンスタックは、ファンを取り囲む円筒状の本体部を備え、該本体部が周方向に沿って配置された2つの湾曲部材によって構成されている。また、2つの湾曲部材は周方向に隙間を空けて配置されており、これによって、それぞれの湾曲部材の側端縁部どうしが前記隙間を介して対向するように配置されている。そして、特許文献1のファンスタックは、一方の湾曲部材の側端縁部と他方の湾曲部材の側端縁部とを締結する締結部材を備え、該締結部材がそれぞれの側端縁部を接近または離反させるように構成されている。これによって、本体部が径方向に拡縮するため、クリアランスを調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-049196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のファンスタックは、2つの湾曲部材の間に形成された隙間に起因する問題点を有する。例えば、隙間からの気流の漏れによって冷却塔の性能が低下するおそれがある。また、隙間に起因する振動や騒音が大きくなるという問題点がある。そして、かかる事情は、冷却塔のファンスタックに限らず、これと同様の構成の筒状構造体にも当てはまることである。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、隙間を形成することなくクリアランスを容易に調節することができる筒状構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る筒状構造体は、
ファンを取り囲む円筒状の本体部を備え、
前記本体部は、周方向に沿って配置された複数の湾曲部材で構成され、隣り合う湾曲部材の端部どうしが径方向に重ね合わせられた重複部を有し、
前記重複部の周方向での長さを変化させて前記本体部を径方向に拡縮する第1の調節機構を備える。
【0008】
かかる構成によれば、隣り合う湾曲部材どうしが重なり合って重複部を形成し、第1の調節機構がこの重複部の周方向の長さを変化させて本体部を径方向に拡縮するため、隣り合う湾曲部材の間に隙間を形成することなくファンの先端と本体部との間隔(すなわちクリアランス)を容易に調節することができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る筒状構造体は、
前記複数の湾曲部材は、第1の湾曲部材と、前記第1の湾曲部材に重なり合う第2の湾曲部材とを含み、
前記第1の調節機構は、前記第1の湾曲部材から径方向に延びる第1延出部と、前記第1延出部に周方向において対向するように前記第2の湾曲部材から延びる第2延出部と、前記第1延出部と前記第2延出部とを周方向において接近又は離反させる第1締結部材とで構成されている。
【0010】
かかる構成によれば、第1締結部材によって第1延出部と第2延出部とを接近又は離反させることで重複部の周長を変化させることができるため、クリアランスの微調整が容易になる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る筒状構造体は、
前記複数の湾曲部材の径方向の位置を変化させる第2の調節機構を備える。
【0012】
かかる構成によれば、第2の調節機構によって、クリアランスの微調整がさらに容易になる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る筒状構造体は、
前記本体部を設置する架台を備え、
前記第2の調節機構は、前記架台に対する前記複数の湾曲部材の径方向での位置を調節可能に構成されている。
【0014】
かかる構成によれば、ファンに対する架台の位置調節による湾曲部材の位置調節と、第2の調節機構による湾曲部材の径方向における位置調節との二段階の調節によって、クリアランスの微調整がさらに容易になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり、本発明によれば、隙間を形成することなくクリアランスを容易に調節することができる筒状構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る筒状構造体を備える冷却塔の概略断面図である。
図2図1の筒状構造体を上方から見た図である。
図3図1の筒状構造体の正面図である。
図4図2及び図3の筒状構造体の第1の調節機構を上方から見た拡大図である。
図5図2及び図3の筒状構造体の第2の調節機構を周方向の一方側から見た拡大図である。
図6】第1の調節機構の変形例を上方から見た拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る筒状構造体について、冷却塔のファンスタックに用いられる場合を例示して説明する。
【0018】
本実施形態の筒状構造体は、図1に例示する冷却塔100に設置されている。冷却塔100は、熱交換部1を収容する四角柱状の塔本体100aと、熱交換部1に温水を供給する温水供給部2と、温水供給部2から熱交換部1へ供給される温水を中継する温水槽3と、熱交換部1で冷却された温水を冷水として貯留する冷水槽4と、塔本体100aの内部に気流Wを発生させる送風機5と、塔本体100aの気流Wの排気路を形成する円筒状の筒状構造体としてファンスタック6とを備えている。なお、以下では、図1の冷却塔100において、水平面と平行な第1方向を左右方向(D1)と称し、左右方向D1に直交し且つ水平面と平行な第2方向を前後方向(D2)と称し、左右方向D1及び前後方向D2の両方に直交する第3方向を上下方向(D3)と称することがある。
【0019】
塔本体100aは、その中央部に上下方向D3に延びる四角柱状の空洞Vを有する。また、塔本体100aは、ファンスタック6などを載置するための上面部を有する。該上面部は、空洞Vとファンスタック6の前記排気路とを連通させるように上方に開口している。
【0020】
熱交換部1は、空洞Vの周りに配置されている。熱交換部1は、温水を外気と接触させて冷却する複数の冷却部11を有する。各冷却部11は、上下方向D3に積み上げられたブロック状の充填材を複数有する。各充填材は、複数枚の充填材用シートで構成されている。充填材用シートは、平面視において平行四辺形をなしており、一面側に複数の突起が設けられている。各充填材は、縦置きにされた複数の充填材用シートが前後方向D2に配列されることによってブロック状をなしている。また、各充填材は、一つの充填材用シートが突起の先端部を隣り合う他の充填材用シートに当接させることによって、それぞれの充填材用シートの間に気流Wの通路となり得る隙間を形成している。
【0021】
各冷却部11は、ブロック状の充填材が上下方向D3に複数段積み上げられることによって四角柱状をなしている。本実施形態では、空洞Vを介して左右方向D1の両側に一対の冷却部11が設置されている。各冷却部11は、充填材の前記隙間が空洞Vに連通するように配置されている。そして、送風機5による空洞V内の空気の吸い出しに伴い、充填材の前記隙間に外気が誘引されることとなる。
【0022】
温水供給部2は、温水槽3の上方に設置されている。温水供給部2は、温水槽3に温水を排出する温水排出部21を有する。
【0023】
温水槽3は、熱交換部1の上方に設置されている。より詳しくは、温水槽3は、各冷却部11の上方に1つずつ設置されている。温水槽3は、冷却部11の上面に対向する矩形状の底壁部と、該底壁部の外縁部から立ち上がる側壁部とを有する。前記底壁部には、温水を散水するための円形状の複数の散水孔が形成されている。前記散水孔に到達した温水は、重力の作用によって前記散水孔を介して冷却部11に落下する。これによって、温水槽3は、前記複数の散水孔を介して熱交換部1の複数箇所に温水を散水可能となっている。
【0024】
冷水槽4は、熱交換部1の下方に設置されている。熱交換部1で冷却された温水は、冷水となって冷水槽4に貯留されることとなる。
【0025】
送風機5は、空洞Vの上方に配置されている。送風機5は、駆動時にファンスタック6の前記排気路を上方に向かって移動する気流Wを発生させ得るように構成されている。送風機5は、上下方向D3に延びる回転軸51と、回転軸51から径方向に延びる複数の回転翼52で構成されたファンとを有する。なお、以下では、回転軸51の周りを周回する方向を周方向と称し、回転軸51と直交する方向を径方向と称する。また、ファンスタック6のなす前記排気路において、空洞V側を上流側、外部環境側を下流側と称する。本実施形態の複数の回転翼52のそれぞれは、周方向において略等間隔となるように配され、回転軸51から水平方向に延びるように配されている。すなわち、径方向における前記ファンの最も外側の端縁(すなわち回転翼52の先端)が前記ファンの回転時に描く円形を外縁とした面を前記ファンの回転面とすると、本実施形態でのファンは、前記回転面が水平面に沿うように設置されている。回転軸51には、減速機511及び伝動軸512を介してモータ513が接続されている。
【0026】
本実施形態のファンスタック6は、図2~3に示すように、塔本体100aの上面部に設置された円環状の架台6aと、架台6aに設置された円筒状の本体部6bとを備えている。架台6aは、本体部6bの支持部材である。架台6aは、その中心を通る軸(中心軸)がファンの回転軸51と概ね一直線となるように設置されている。架台6aは、前記ファンの回転面よりも径大な円環状であり、該回転面と略平行となって該回転面よりも下方に設置されている。本体部6bは、その内部に収容したファンの回転軸51の延びる方向に沿って延びており、架台6aから上方に向かって延び、上端縁が前記回転面よりも上方に位置している。
【0027】
送風機5における前記回転面の外縁と本体部6bの内面との間には、クリアランスCが形成されている。クリアランスCは、前記回転面の外縁から本体部6bの内面までの水平方向における間隔である。クリアランスCは、10mm~100mmに設定されていることが好ましい。
【0028】
架台6aは、前記中心軸を通る垂直な平面での断面がC字状で、且つ、外向きに開口するように構成されている。より具体的には、図3に示すように、架台6aは、塔本体100aの上面部に接地された円環状の下板部601と、下板部601の内周縁部から立ち上がる円筒状の側板部602と、下板部601に上下方向D3において対向するように側板部602の先端部から径方向外向きに水平に延びる円環状の上板部603とを有する。上板部603には複数の貫通孔が形成されており、該複数の貫通孔には架台6aに本体部6bを固定するための固定用ボルトが挿通されている。
【0029】
図3に示すように、本実施形態の本体部6bの高さは、架台6aの高さよりも高くなるように形成されている。本実施形態の本体部6bは、前記ファンの上下方向D3における幅に対応する中央領域と、前記中央領域から下方に延びる第1延在領域と、前記中央領域から上方に延びる第2延在領域とを有する。
【0030】
本体部6bは、周方向に沿って並べて配置された複数の湾曲部材61で構成されている。また、本体部6bは、周方向において隣り合う湾曲部材61の端部どうしが径方向に重ね合わせられた複数の重複部62と、湾曲部材61どうしが重ね合わせられていない複数の非重複部63とを有する。本体部6bの周方向において、重複部62と非重複部63とは交互に並んでいる。図3に示すように、一部の湾曲部材61における下部であって前記ファンの回転面よりも下方に位置する下部には、伝動軸512又はモータ513が配される開口Oが形成されている。
【0031】
本実施形態の湾曲部材61は、鋼板によって構成されている。また、湾曲部材61は、後記の押圧力によって弾性変形するように構成されている。すなわち、湾曲部材61は、該押圧力によって湾曲率が変化するように構成されている。なお、かかる湾曲部材としては、樹脂材料で構成されたものであってもよい。
【0032】
図2に示すように、各湾曲部材61は、架台6aの上板部603に上方から当接している帯状の下面部611を有する。下面部611は、帯状に延びる方向が真っすぐではなく上板部603に沿って湾曲している。下面部611には、前記固定用ボルトが挿通される複数の貫通孔611hが形成されている。前記固定用ボルトは、架台6aの上板部603と本体部6bの下面部611とを締結するようにナットと螺合している。各湾曲部材61は、下面部611と、下面部611の内周縁部から立ち上がる平面視(ファンスタック6を上方から見たとき)において円弧状の側面部612とを有する。本実施形態では、側面部612は、前記ファンの回転軸の延びる方向、すなわち、上下方向D3に沿って延在している。
【0033】
図2に示すように、隣り合う湾曲部材61は、架台6aに設置されたときに、それぞれの下面部611が周方向に隣接するように設置されている。側面部612は、周方向における端部を下面部611の端縁を超えて周方向に突出させた突出部を有していてもよく、前記突出部を周方向での両端部に有していてもよく、一方の端部のみに有していてもよい。前記突出部は、上下方向D3での側面部612の全長に亘って設けられてもよい。前記突出部は、側面部612の端部の径方向における位置を、径方向外側又は内側に側面部612の厚さ分だけオフセットする別部材で構成されてもよい。また、側面部612の両端部に前記突出部を設ける場合、オフセットするのは一方のみでもよい。すなわち、前記側面部は、本体用部材と、前記本体用部材の少なくとも一方の端部から周方向に延びるように前記本体用部材に接続された板状の突出用部材とを有し、前記本体用部材の外面又は内面に前記突出用部材が重ね合わせられるようにこれらが接続されていてもよい。
【0034】
図3に示すように、本実施形態の複数の湾曲部材61は、任意に選択した第1の湾曲部材61aを正面から見たときに、第1の湾曲部材61aの左端側(一端側)において径方向内側から側面部612が重なる第2の湾曲部材61bと、第1の湾曲部材61aの右端側(他端側)において径方向内側から側面部612が重なる第3の湾曲部材61cとを含む。これによって、本実施形態の本体部6bは、第1の湾曲部材61a及び第2の湾曲部材61bのそれぞれの側面部612によって形成された左重複部621と、第1の湾曲部材61a及び第3の湾曲部材61cのそれぞれの側面部612によって形成された右重複部622と、第1の湾曲部材61aの側面部612のうちの左重複部621及び右重複部622の間の部分である非重複部63とを有する。
【0035】
図2~5に示すように、本実施形態のファンスタック6は、本体部6bを径方向に拡縮するための調節機構64をさらに備えている。より具体的には、本実施形態のファンスタック6は、重複部62の周方向での長さを変化させて本体部6bを径方向に拡縮する第1の調節機構64aと、湾曲部材61の径方向の位置を変化させる第2の調節機構64bとを備えている。
【0036】
図4に示すように、第1の調節機構64aは、第1の湾曲部材61aと第2の湾曲部材61bとの間に周方向の押圧力F1を作用させて重複部62の周方向での長さを変化させるように構成されている。本実施形態の第1の調節機構64aは、第1の湾曲部材61aの側端縁部から径方向外方に延びる第1延出部641と、第1の湾曲部材61aに隣り合う湾曲部材61(例えば第2の湾曲部材61b)の外面から径方向外方に延び且つ第1延出部641と周方向において対向する第2延出部642と、各延出部を接続し且つこれらを周方向に接近又は離反させる第1締結部材643とを有する。第1締結部材643は、ボルトとこれに螺合するナットとで構成されている。
【0037】
図3に示すように、本実施形態の第1延出部641は、上下方向D3において複数形成されている。複数の第1延出部641は、上下方向D3において所定の間隔を空けて配されている。具体的には、複数の第1延出部641のそれぞれは、送風機5の前記回転面近傍に交差する第1の位置と、前記第1の位置と上流側(下方)で隣り合う第2の位置と、前記第1の位置と下流側(上方)で隣り合う第3の位置とに配されている。前記第1の位置、前記第2の位置、及び前記第3の位置のそれぞれは、例えば、本体部6bにおける前記中央領域、前記第1延在領域、及び前記第2延在領域に設定される。本実施形態のように、第1延出部641は、少なくとも前記第1の位置に配されていることが好ましい。すなわち、本体部6bは、少なくとも前記中央領域において第1の調節機構64aによって径方向に拡縮されることが好ましい。より好ましくは、第1延出部641は、前記第1の位置と該第1の位置の上流側又は下流側で隣り合う位置とに配されている。すなわち、本体部6bは、前記中央領域と、前記第1延在領域又は前記第2延在領域のいずれかの領域とにおいて第1の調節機構64aによって径方向に拡縮されることがより好ましい。なお、本実施形態では、湾曲部材61における開口Oが形成されている箇所には第1延出部641が形成されていない。図4に示すように、各第1延出部641には、第1締結部材643のボルトが挿通された貫通孔たる第1ボルト孔641hが形成されている。
【0038】
一方、図3に示すように、本実施形態の第2延出部642は、全ての第1延出部641に周方向において対向するように上下方向D3に延びる帯状に形成されている。また、図4に示すように、第2延出部642には、第1締結部材643のボルトが挿通された第2ボルト孔642hが形成されている。すなわち、第2延出部642には、第1ボルト孔641hに対向し得る位置に第2ボルト孔642hが形成されている。なお、以下では、第1延出部641及び第2延出部642のそれぞれの一対の面のうち、対向している面を対向面と称し、該対向面の反対側の面を背面と称する。
【0039】
図4に示すように、本実施形態の第1締結部材643は、第1ボルト孔641h及び第2ボルト孔642hに挿通された第1調節ボルト643aとこれに螺合する第1調節ナット643bとで構成されている。具体的には、第1締結部材643は、第1延出部641の背面を押圧する頭部6431及び頭部6431から軸方向に延びるねじ部6432を有する第1調節ボルト643aと、第2延出部642の背面を押圧するようにねじ部6432に螺合する第1調節ナット643bとで構成されている。さらに、本実施形態の第1締結部材643は、第1調節ボルト643aの頭部6431とともに第1延出部641を挟み込む第1内側ナット6433と、第1調節ナット643bとともに第2延出部642を挟み込む第2内側ナット6434とを有する。第1内側ナット6433及び第2内側ナット6434は、第1調節ボルト643aと第1調節ナット643bとの緩みを防止するために設けられている。
【0040】
第1の調節機構64aは、第1締結部材643の締め付けの程度(位置)を変化させることによって第1延出部641と第2延出部642とを周方向に接近又は離反させ得るようになっている。そして、第1延出部641と第2延出部642とが周方向に接近するときには、外側の第1の湾曲部材61aから内側の第2の湾曲部材61bに径方向内方の押圧力が作用するため、左重複部621の周方向での長さが大きくなりつつ左重複部621が径方向内方に位置ずれすることとなる。一方、第1延出部641と第2延出部642とが周方向に離反するときには、内側の第2の湾曲部材61bから外側の第1の湾曲部材61aに径方向外方の押圧力が作用するため、左重複部621の周方向での長さが小さくなりつつ左重複部621が径方向外方に位置ずれすることとなる。これらのことによって、調節された湾曲部材61が全体的に径方向の内方又は外方に位置ずれし、本体部6bが径方向の内方又は外方に位置ずれすることとなる。また、ボルトとナットとで構成される第1締結部材643によって、mm単位での位置ずれ量の調節が可能となる。
【0041】
図5に示すように、第2の調節機構64bは、湾曲部材61に径方向の押圧力F2を作用させて湾曲部材61の径方向の位置を変化させるように構成されている。第2の調節機構64bは、架台6aの側板部602から上方に延び且つ湾曲部材61の内面に対向するように形成された第3延出部644と、湾曲部材61の内面と第3延出部644とを接続し且つこれらを径方向に接近又は離反させる第2締結部材645とを有する。第2締結部材645は、ボルトとこれに螺合するナットとで構成されている。
【0042】
第3延出部644は、架台6aの側板部602に当接する当接部6441と、湾曲部材61から離れる方向に当接部6441から延びる離間部6442と、離間部6442の先端から側板部602に沿って延びる対向部6443とを有する。架台6aの側板部602及び第3延出部644の当接部6441のそれぞれにはボルト孔が形成されており、ボルトとナットとで構成される締結部材によって、側板部602に第3延出部644が固定されている。
【0043】
湾曲部材61には、第2締結部材645のボルトが挿通された第3ボルト孔643hが形成されている。また、第3延出部644の対向部6443には、第2締結部材645のボルトが挿通された第4ボルト孔644hが形成されている。第3ボルト孔643h及び第4ボルト孔644hは、対向するように形成されている。なお、以下では、第3延出部644における対向部6443の一対の面のうち、湾曲部材61の内面に対向している面を対向面と称し、該対向面の反対側の面を背面と称する。
【0044】
本実施形態の第2締結部材645は、第3ボルト孔643h及び第4ボルト孔644hに挿通された第2調節ボルト645aとこれに螺合する第2調節ナット645bとで構成されている。具体的には、第2締結部材645は、第3延出部644における対向部6443の背面を押圧する頭部6451及び頭部6451から軸方向に延びるねじ部6452を有する第2調節ボルト645aと、非重複部63の外面を押圧するようにねじ部6452に螺合する第2調節ナット645bとで構成されている。さらに、本実施形態の第2締結部材645は、第2調節ボルト645aの頭部6451とともに第3延出部644の対向部6443を挟み込む第3内側ナット6453と、第2調節ナット645bとともに湾曲部材61を挟み込む第4内側ナット6454とを有する。第3内側ナット6453及び第4内側ナット6454は、第2調節ボルト645aと第2調節ナット645bとの緩みを防止するために設けられている。
【0045】
第2の調節機構64bは、第2締結部材645の締め付けの程度(位置)を変化させることによって、第3延出部644に対して湾曲部材61を径方向に接近又は離反させ得るようになっている。これによって、湾曲部材61が径方向に位置ずれすることとなる。また、ボルトとナットとで構成される第2締結部材645によって、mm単位での位置ずれ量の調節が可能となる。
【0046】
湾曲部材61の数は、好ましくは4以上(本実施形態では8つ)であり、より好ましくは4以上の偶数である。言い換えれば、本体部6bは、好ましくは4以上の重複部62及び4以上の非重複部63を有し、より好ましくは4以上の偶数の重複部62及び4以上の偶数の非重複部63を有する。また、1つの重複部62に本体部6bの中心を挟んで対向するように他の重複部62が配されていることが好ましい。さらに、1つの非重複部63に本体部6bの中心を挟んで対向するように他の非重複部63が配されていることが好ましい。その上で、第1の調節機構64aは、各重複部62に備えられていることが好ましい。また、第2の調節機構64bは、各重複部62に備えられることが好ましく、各重複部62及び各非重複部63に備えられることがより好ましい。これらの他、第2の調節機構64bは、各非重複部63のみに備えられていてもよい。この場合、第2の調節機構64bは、各非重複部63の周方向における中央部に備えられていることがより好ましい。かかる調節機構64の配置によって、本体部6bの真円度を向上させることができる。
【0047】
さらに、図3及び図4に示すように、本実施形態では、第1の湾曲部材61aの重複部62を形成する部分に、上下方向D3に並ぶ横長の(周方向に延びる)複数の横長貫通孔646hが形成されている。また、第2の湾曲部材61bの重複部62を形成する部分の、横長貫通孔646hと重なり得る位置に複数の円形貫通孔647hが形成されている。横長貫通孔646hは、上下方向D3の長さが円形貫通孔647hと等しく且つ周方向の長さが円形貫通孔647hよりも大きくなるように形成されている。対応する横長貫通孔646hと円形貫通孔647hとには、第1の湾曲部材61aを第2の湾曲部材61bに固定するとともに横長貫通孔646h内を周方向に移動する第3調節ボルト648が挿通されている。第3調節ボルト648は、第1の湾曲部材61a及び第2の湾曲部材61bのそれぞれの側面部612を締結するように第3調節ナット649と螺合している。具体的には、第3調節ボルト648は、第2の湾曲部材61bの内面を押圧する頭部6481及び頭部6481から軸方向に延びるねじ部6482を有する。一方、第3調節ナット649は、第1の湾曲部材61aの外面を押圧するようにねじ部6482に螺合している。そして、各湾曲部材61が上記のように周方向に位置ずれすると、第3調節ナット649と螺合した状態の第3調節ボルト648が円形貫通孔647hの開口縁に押されて横長貫通孔646h内を周方向に移動することとなる。かかる第3調節ボルト648及び第3調節ナット649によって、隣り合う湾曲部材61どうしを仮留めした状態で、各湾曲部材61を周方向に相対移動させることができる。よって、本体部6bの敷設時のクリアランスCの調節が容易になる。
【0048】
なお、本発明に係る冷却塔用ファンスタックは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る冷却塔用ファンスタックは、上記の作用効果によって限定されるものではない。本発明に係る冷却塔用ファンスタックは、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、湾曲部材61の数が3以下(例えば2)であっても上記の作用効果を奏し得る。
【0050】
また、上記実施形態では、本体部6bの高さが架台6aの高さよりも高い態様を示したが、この他、前記本体部における前記調節機構で調節される領域に前記ファンの回転面が配される限り、前記本体部の高さは、前記架台の高さ以下であってもよく、例えば、前記本体部の高さと前記架台の高さとが同じであってもよい。また、ファンの設置位置より上方を本体部とする構成としてもよい。なお、前記ファンスタックは、前記架台を備えていなくてもよく、前記本体部が塔本体100aの上面部(支持部材)に設置されてもよい。
【0051】
前記本体部は、下方から上方に向かって縮径するように構成されてもよい。すなわち、各側面部が、基端部から先端部に向かうにつれて前記ファンの回転軸に近付くように傾斜していてもよい。
【0052】
図6に示すように、本発明にかかる調節機構は、上記実施形態のものよりも直接的に第1の湾曲部材61aと第2の湾曲部材61bとの間に径方向における押圧力を作用させるように構成されてもよい。すなわち、図6の別の実施形態では、第1の湾曲部材61aの重複部62を形成する部分に周方向に延びる横長貫通孔646hが形成されている。また、第2の湾曲部材61bの重複部62を形成する部分の、横長貫通孔646hと重なり得る位置に円形貫通孔647hが形成されている。横長貫通孔646hは、上下方向D3の長さが円形貫通孔647hと等しく且つ周方向の長さが円形貫通孔647hよりも大きく形成されている。そして、図6の実施形態に係る調節機構は、横長貫通孔646h及び円形貫通孔647hに挿通される調節ボルト648と、調節ボルト648に螺合する調節ナット649とを有する。調節ボルト648は、第1の湾曲部材61aの内面を押圧する頭部6481と、頭部6481から軸方向に延びるねじ部6482とを有する。また、調節ナット649は、第2の湾曲部材61bの外面を押圧するように構成されている。かかる構成によれば、調節ボルト648又は調節ナット649に周方向に沿う力を加えることによって、調節ナット649と螺合した状態の調節ボルト648を円形貫通孔647hの開口縁に押圧させつつ、横長貫通孔646h内を重複部62の長さを小さくする方向又は大きくする方向に移動させることができ、所望の調節が可能となる。
【0053】
また、上記実施形態の第1の調節機構64aは、上下方向D3に分離するように形成された第1延出部641を有するが、これに限らず、前記第1延出部は、前記第2延出部と対応する形状を有していてもよく、すなわち、前記第1延出部が上下方向D3に延びる帯状に形成されていてもよく、又は、前記第2延出部が上下方向D3に所定の間隔を空けて複数形成されていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態の第2の調節機構64bは、架台6aから延びる第3延出部644を有するが、これに限らず、例えば、前記第3延出部は、塔本体100aの上面から延び且つ非重複部63の外面に対向するように形成されていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態の第3延出部644は、非重複部63の内面に対向する対向部6443を有するが、これに限らず、前記第3延出部は、前記架台の前記側板部の外面に当接する前記当接部と、前記非重複部の外面に対向する前記対向部とを有していてもよい。
【符号の説明】
【0056】
100:冷却塔、100a:塔本体、V:空洞、1:熱交換部、11:冷却部、2:温水供給部、21:温水排出部、3:温水槽、4:冷水槽、5:ファン、W:気流、51:回転軸、52:回転翼、6:ファンスタック、6a:架台、601:下板部、602:側板部、603:上板部、6b:本体部、61:湾曲部材、611:下面部、611h:貫通孔、612:側面部、61a:第1の湾曲部材、61b:第2の湾曲部材、62:重複部、621:左重複部、622:右重複部、63:非重複部、64:調節機構、64a:第1の調節機構、641:第1延出部、641h:第1ボルト孔、642:第2延出部、642h:第2ボルト孔、643:第1締結部材、643a:第1調節ボルト、6431:頭部、6432:ねじ部、643b:第1調節ナット、6433:第1内側ナット、6434:第2内側ナット、64b:第2の調節機構、643h:第3ボルト孔、644:第3延出部、6441:当接部、6442:離間部、6443:対向部、644h:第4ボルト孔、645:第2締結部材、645a:第2調節ボルト、6451:頭部、6452:ねじ部、6453:第3内側ナット、6454:第4内側ナット、645b:第2調節ナット、646h:横長貫通孔、647h:円形貫通孔、648:第3調節ボルト、6481:頭部、6482:ねじ部、649:第3調節ナット、C:クリアランス、F1、F2:押圧力、D1:左右方向、D2:前後方向、D3:上下方向
【要約】
【課題】本発明は、隙間を形成することなくクリアランスを容易に調節することができる筒状構造体を提供することを課題とする。
【解決手段】ファンを取り囲む円筒状の本体部を備え、前記本体部は、周方向に沿って配置された複数の湾曲部材で構成され、隣り合う湾曲部材の端部どうしが径方向に重ね合わせられた重複部を有し、前記重複部の周方向での長さを変化させて前記本体部を径方向に拡縮する第1の調節機構を備える、筒状構造体。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6