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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】ロボットの動作制御方法、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023075525
(22)【出願日】2023-05-01
【審査請求日】2023-05-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】依田 伴昭
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-180573(JP,A)
【文献】特開平6-285776(JP,A)
【文献】特許第6884109(JP,B2)
【文献】国際公開第2022/185375(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/230036(WO,A1)
【文献】特開2022-24521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉するハンドをエンドエフェクタとして備え、該ハンドにより被保持物を把持して、該ハンドを三次元空間内で移動させるロボットの動作を、制御装置を用いて制御する方法であって、
前記ハンドを移動させる際に、前記被保持物前記ハンドから抜け出る方向であって、前記ハンドが開閉する方向を含む平面と直交する方向の力が前記被保持物に作用する移動のときには、前記被保持物に前記抜け出る方向の力が作用しない前記ハンドが開閉する方向への移動のときに比べて、その移動速度を低速にするようにしたことを特徴とするロボットの動作制御方法。
【請求項2】
前記ロボットは、前記制御装置によって実行される動作プログラムに従ってその動作が制御され、
前記動作プログラム中に指定される前記ハンドの移動速度は、前記被保持物に前記ハンドから抜け出る方向の力が作用する移動のときの方が、前記被保持物に前記抜け出る方向の力が作用しない移動のときに比べて、低速に設定されていることを特徴とする請求項1記載のロボットの動作制御方法。
【請求項3】
前記ロボットは力覚センサを介在させた状態で前記ハンドを備え、
前記制御装置は、前記ハンドを移動させる際に、前記力覚センサによって検出される負荷であって、前記被保持物が前記ハンドから抜け出る方向の負荷を監視し、該負荷が予め定めた基準負荷を超えたとき、前記被保持物に前記抜け出る方向の力が作用する移動であると判断して、該移動について指定された動作速度を減速することを特徴とする請求項1記載のロボットの動作制御方法。
【請求項4】
前記制御装置は、前記力覚センサによって検出される前記抜け出る方向の負荷に応じた割合で、前記指定された動作速度を減速することを特徴とする請求項3記載のロボットの動作制御方法。
【請求項5】
前記ロボットを空運転状態で動作させて、該空運転中に該ロボットを構成するモータに供給される電力を基準電力として予め取得し、
前記制御装置は、前記ロボットを実動作させる際に、前記モータに供給される電力を実電力として監視し、実電力が前記基準電力に基づいて設定された限界電力を超えると、前記被保持物に前記抜け出る方向の力が作用する移動であると判断して、該移動について指定された動作速度を減速することを特徴とする請求項1記載のロボットの動作制御方法。
【請求項6】
前記制御装置は、前記実電力に応じた割合で、前記指定された動作速度を減速することを特徴とする請求項5記載のロボットの動作制御方法。
【請求項7】
開閉するハンドをエンドエフェクタとして備え、該ハンドにより被保持物を把持して、該ハンドを三次元空間内で移動させるロボットを制御する制御装置であって、
前記制御装置は、前記ハンドを移動させる際に、前記被保持物前記ハンドから抜け出る方向であって、前記ハンドが開閉する方向を含む平面と直交する方向の力が前記被保持物に作用する移動のときの移動速度を、前記被保持物に前記抜け出る方向の力が作用しない前記ハンドが開閉する方向への移動のときの移動速度に比べて、低速にするように構成されていることを特徴とするロボットの制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は動作プログラムに従って前記ロボットの動作を制御するように構成され、
前記動作プログラム中に指定される前記ハンドの移動速度は、前記被保持物に前記ハンドから抜け出る方向の力が作用する移動のときの方が、前記被保持物に前記抜け出る方向の力が作用しない移動のときに比べて、低速に設定されていることを特徴とする請求項7記載のロボットの制御装置。
【請求項9】
前記ロボットは力覚センサを介在させた状態で前記ハンドを備え、
前記制御装置は、前記ハンドを移動させる際に、前記力覚センサによって検出される負荷であって、前記被保持物が前記ハンドから抜け出る方向の負荷を監視し、該負荷が予め定めた基準負荷を超えたとき、前記被保持物に前記抜け出る方向の力が作用する移動であると判断して、該移動について指定された動作速度を減速するように構成されていることを特徴とする請求項7記載のロボットの制御装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記力覚センサによって検出される前記抜け出る方向の負荷に応じた割合で、前記指定された動作速度を減速するように構成されていることを特徴とする請求項9記載のロボットの制御装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記ロボットを実動作させた際に、該ロボットを構成するモータに供給される電力を実電力として監視し、該実電力が、前記ロボットを空運転状態で動作させときに前記モータに供給される電力を基準電力として設定された限界電力を超えたとき、前記抜け出る方向の力が前記被保持物に作用する移動であると判断して、該移動について指定された動作速度を減速するように構成されていることを特徴とする請求項7記載のロボットの制御装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記実電力に応じた割合で、前記指定された動作速度を減速するように構成されていることを特徴とする請求項11記載のロボットの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドエフェクタとしてハンドを備え、このハンドに直接又は間接的に被保持物を保持して、該ハンドを三次元空間内で移動させるロボットの動作速度、言い換えればハンドの移動速度を制御する方法、及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用のロボットは、例えば、エンドエフェクタとしてのハンドを備え、このハンドに直接又は間接的に被保持物を保持して、当該ハンドを三次元空間内で移動させるように構成されている。そして、このようなロボットは、制御プログラムに従って制御する数値制御装置によりその動作が制御され、その動作速度は制御プログラム中に含まれる速度コードによって指令され、一般的に、動作中に他の構造物との干渉の虞がないときに指令される早送り速度と、他の構造物との干渉の恐れがあるときに指令される低速送り速度とが用いられる。
【0003】
ところで、前記ハンドによって被保持物を保持する保持力には一定の限界があり、当該被保持物の重量が重い場合には、安定して当該被保持物を保持することができない可能性があり、前記ハンドの移動中に当該被把持物が離脱することが懸念される。
【0004】
そこで、従来、ロボットではないが、工作機械の自動工具交換装置において、工具の重量を判別する手段を設け、交換工具の重量に応じて交換速度を制御する、即ち、判別された交換工具の重量が所定重量以上であれば、交換速度を低速にするようにした自動工具交換装置が提案されている(下記特開昭64-58444号公報(特許文献1)参照)。
【0005】
斯くして、この特許文献1に開示された発明を上記従来のロボットの動作制御に適用すると、被保持物の重量を判別する手段を設けて、当該被保持物の重量を判別し、判別された被保持物の重量が所定重量以上であれば、ハンドの移動速度を低速にするといった態様を採ることができ、このような態様を採ることで、前記ハンドの移動中に当該被保持物が離脱するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭64-58444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述した従来例のように、被保持物の重量が重い場合に、ハンドの動作全体についてその移動速度を低速にすると、ロボットの全体的な動作速度が遅くなるため、安全性は確保されるものの、効率的な作業を実現することができないという別の問題を生じる。安全性と効率性とは、言わば二律背反的な問題であるが、それ故に、安全性を確保しながらも効率性をある程度維持できるような対策が求められている。
【0008】
また、上述したロボットの動作は一定ではなく、求められる作業に応じて様々な移動経路や姿勢が取られるため、ハンドに保持された被保持物には、ロボットの動作によって、様々な方向及び大きさの力が作用する。そして、被保持物にハンドから抜け出るような力が作用する場合には、被保持物の保持状態が不安定となって、被保持物がハンドから離脱する虞を生じる。
【0009】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、安全性を確保しながらも効率性をある程度維持することができるロボットの動作制御方法、及び制御装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、エンドエフェクタとしてハンドを備え、該ハンドに直接又は間接的に被保持物を保持して、該ハンドを三次元空間内で移動させるロボットの動作を、制御装置を用いて制御する方法であって、
前記ハンドを移動させる際に、前記被保持物に前記ハンドから抜け出る方向の力が作用する移動のときには、前記被保持物に前記抜け出る方向の力が作用しない移動のときに比べて、その移動速度を低速にするようにしたロボットの動作制御方法に係る。
【0011】
また、本発明は、エンドエフェクタとしてハンドを備え、該ハンドに直接又は間接的に被保持物を保持して、該ハンドを三次元空間内で移動させるロボットを制御する制御装置であって、
前記制御装置は、前記ハンドを移動させる際に、前記被保持物に前記ハンドから抜け出る方向の力が作用する移動のときの移動速度を、前記被保持物に前記抜け出る方向の力が作用しない移動のときの移動速度に比べて、低速にするように構成されたロボットの制御装置に係る。
【0012】
本発明に係る動作制御方法及び制御装置によれば、ロボットのハンドを移動させる際に、被保持物にハンドから抜け出る方向の力が作用する移動のときには、被保持物に抜け出る方向の力が作用しない移動のときに比べて、その移動速度が低速に設定される。被保持物にハンドから抜け出るような力が作用する場合には、ハンドによる被保持物の保持状態が不安定となり、ハンドの移動中に被保持物が当該ハンドから離脱する虞があるが、被保持物にハンドから抜け出る方向の力が作用する移動時の移動速度を、そうでない移動のときに比べて低速にすることで、被保持物が当該ハンドから離脱するのを防止することができる。また、被保持物にハンドから抜け出る力が作用する移動のときにのみ、その移動速度を低速にするようにしているので、一律に移動速度を低速にする場合に比べて、ロボットの作業効率を不必要に損なうことなく、ロボットの動作の安全性を確保することができる。
【0013】
尚、上記の動作制御方法及び制御装置において、ハンドの移動速度は制御装置によって実行される動作プログラムで設定することができ、被保持物にハンドから抜け出る方向の力が作用する移動の時には、被保持物に抜け出る方向の力が作用しない移動の時の移動速度に比べて、その移動速度を低速に設定する。
【0014】
或いは、前記ロボットに、力覚センサを介在させた状態で前記ハンドを備えさせ、前記制御装置による制御の下で前記ハンドを移動させる際に、前記力覚センサによって検出される負荷であって、前記被保持物が前記ハンドから抜け出る方向の負荷を監視し、該負荷が予め定めた基準負荷を超えたとき、前記被保持物に前記抜け出る方向の力が作用する移動であると判断して、該移動について指定された動作速度を減速させるようにしても良い。その際、前記制御装置は、前記力覚センサによって検出される前記抜け出る方向の負荷に応じた割合で、指定された動作速度を減速するようにしても良い。このようにすれば、ロボットの作業効率が低下するのを可及的に防止することができ、且つ被保持物がハンドから離脱するのを確実に防止することができる。
【0015】
或いは、前記制御装置による制御の下で、前記ロボットを空運転状態で動作させて、該空運転中に該ロボットを構成するモータに供給される電力を基準電力として予め取得した後、前記制御装置により、前記ロボットを実動作させる際に、前記モータに供給される電力を実電力として監視し、実電力が前記基準電力に基づいて設定された限界電力を超えると、前記被保持物に前記抜け出る方向の力が作用する移動であると判断して、該移動について指定された動作速度を減速させるようにしても良い。その際、前記制御装置は、前記実電力に応じた割合で、前記指定された動作速度を減速するようにしても良い。このようにしても、ロボットの作業効率が低下するのを可及的に防止することができ、且つ被保持物がハンドから離脱するのを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、被保持物にハンドから抜け出る方向の力が作用する移動時の移動速度を、そうでない移動のときに比べて低速にしているので、被保持物が当該ハンドから離脱するのを防止することができる。また、被保持物にハンドから抜け出る力が作用する移動のときにのみ、その移動速度を低速にするようにしているので、一律に移動速度を低速にする場合に比べて、ロボットの作業効率を不必要に損なうことなく、ロボットの動作の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る加工システムの斜視図であって、その工具搬送装置を主要部として示した斜視図である。
図2】本実施形態に係る加工システムの斜視図であって、その工具収容装置を主要部として示した斜視図である。
図3】本実施形態に係る工具着脱ロボットの動作を説明するための説明図である。
図4】本実施形態に係る工具着脱ロボットの動作を説明するための説明図である。
図5】本実施形態に係る工具着脱ロボットの動作を説明するための説明図である。
図6】本実施形態に係る工具体を示した正面図である。
図7】本実施形態に係る工具体を示した図であって、図6における左側面図である。
図8】本実施形態に係る工具体に作用する力を説明するための説明図である。
図9】本実施形態に係る制御装置の概略構成を示したブロック図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る制御装置の概略構成を示したブロック図である。
図11】本実施形態に係る動作プログラムを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、本例の加工システム1は、矢示A-B方向に沿って一列に整列して配設された複数の工作機械M、この工作機械M列と対向するように、前記A-B方向に沿って一列に整列して配設された複数の工具収容ラック6を有する工具収容装置5、並びに工作機械M列と工具収容ラック6列との間に配設され、各工作機械Mと各工具収容ラック6との間で工具体TBを搬送する工具搬送装置10などを備えている。尚、図1に示した加工システム1は、矢示B方向に延設されており、その延長上に、図2に示した工作機械M列及び工具収容ラック6列が配設され、当然のことながら、矢示B方向において、配列の端部が存在する。
【0020】
前記工具体TBは、図6及び図7に示すように、工具Tと、この工具Tを保持する工具ホルダTHとから構成される。工具ホルダTHは、筒状の部材からなり、その一方の端面、即ち、図示右側の端面に開口する収納穴TH、及びこの収納穴TH内に設けられたボールロック機構(図示せず)などを備えており、工具Tは、その被保持軸Tが収納穴THに挿入された状態で、ボーロック機構(図示せず)により挟持されて、当該工具ホルダTHに保持される。この工具ホルダTHへの工具Tの着脱は人力によって行うことができる。
【0021】
また、工具ホルダTHは、その軸線を挟んで形成される二面幅であって、法線が相互に直交する方向に形成された2つの二面幅TH、THを、軸線方向において、前記開口とは反対側の外周に備えるとともに、同じく前記軸線を挟んで形成される二面幅であって、前記二面幅TH、THよりも幅の広い二面幅THを、軸線方向において、前記開口側の外周に備えている。
【0022】
前記二面幅THは、その法線が前記二面幅THの法線と平行になるように形成されており、その各面には、前記軸線方向に沿ったV字溝TH,THがそれぞれ形成されている。また、前記二面幅THの各面には、前記軸線と直交する方向に沿って係合溝TH,THがそれぞれ形成されている。
【0023】
前記工作機械Mは、それぞれ複数の工具体TBを格納する工具マガジンTMを備えており、当該工具マガジンTMに格納された工具体TBを用いて、所定の加工を行うように構成されている。また、各工作機械Mは数値制御装置(図示せず)を備えており、この数値制御装置(図示せず)によって運動機構部が数値制御されるとともに、工具マガジンTMの動作が制御される。尚、工具マガジンTMに設けられる各保持部には、それぞればね体から構成された一対の把持爪が設けられており、前記工具体TBは、前記V字溝TH,THにこの把持爪が嵌り込むことにより、当該把持爪により挟持された状態で各保持部に保持される。
【0024】
前記工具収容ラック6は、前記A-B方向に沿って、所定間隔で立設された複数の保持フレーム8と、この保持フレーム8を支持する枠状の支持フレーム7とから構成される。保持フレーム8は、その両側部にそれぞれ所定ピッチで設けられ、且つ外方に向けて開口するように形成された切り欠き部(保持部)を備えており、前記工具体TBは、前記係合溝TH,THが切り欠き部に係合することによって、各切り欠き部に保持される。
【0025】
前記工具搬送装置10は、前記A-B方向に沿って配設された移動装置11、この移動装置11によって移送される移動台15、この移動台15上に設けられた工具保持装置20、工具着脱ロボット30及びエアブロー装置40、並びに移動装置11、工具着脱ロボット30及びエアブロー装置40の動作を制御する制御装置50などを備えている。
【0026】
前記移動装置11は、前記A-B方向に沿って平行に配設され、前記移動台15の移動を案内する二本一対のガイドレール14と、このガイドレール14を支持する支持基台12と、移動台15を移動させる駆動装置13とから構成される。
【0027】
駆動装置13は、例えば、前記A-B方向に沿って前記支持基台12に配設されたラック(図示せず)と、前記移動台15に設けられたピニオンギア(図示せず)及びこのピニオンギア(図示せず)を駆動するモータ(図示せず)とから構成される。前記ピニオンギア(図示せず)は前記ラック(図示せず)に噛合しており、前記モータ(図示せず)によりピニオンギア(図示せず)を回転させることで、ピニオンギア(図示せず)とラック(図示せず)との噛合関係によって、移動台15が前記ガイドレール14に案内されてA-B方向に沿って移動する。
【0028】
尚、移動台15の前記A-B方向における位置は、例えば、前記A-B方向に沿って前記支持基台12に配設されたスケール(図示せず)、及び移動台15に設けられて前記スケール(図示せず)の位置を読み取る読取器(図示せず)から構成される位置検出装置(図示せず)によって検出することができる。そして、移動台15は、前記制御装置50による制御の下で、この位置検出装置(図示せず)によって検出される位置情報を基に、前記駆動装置13によって駆動され、各工作機械Mに対して設定された作業位置、及び各工具収容ラック6に対して設定された作業位置に移動する。また、本例では、図1に示す位置(矢示A方向端位置)が移動台15のホームポジションであり、矢示A方向端に配設された工作機械Mの工具マガジンTMに対する作業位置でもある。また、この位置の前記支持基台12には、工具マガジンTMに対応する部分にメンテナンス用の踊り場12aが形成されている。この踊り場12aは、必要に応じて各工具マガジンTMに対応する部分に設けることができる。
【0029】
前記工具着脱ロボット30は、6軸の多関節型ロボットであり、前記移動台15上に固設された基台31、この基台31に設けられた第1アーム32、第1アーム32に接続する第2アーム33、第2アーム33に接続する第3アーム34、並びに第3アーム34の先端部に設けられたエンドエフェクタとしてのハンド35を備えている。また、基台31と第1アーム32との接続部(関節部)、第1アーム32と第2アーム33との接続部(関節部)、第2アーム33と第3アーム34との接続部(関節部)、並びに第3アーム34とハンド35との接続部(関節部)にはそれぞれ2つの駆動モータ(図示せず)が設けられており、6軸に対応する各駆動モータ(図示せず)を前記制御装置50によって駆動制御することにより、前記ハンド35を3次元空間内の任意の位置に移動させることができ、また、任意の姿勢をとらせることができるようになっている。
【0030】
また、ハンド35は、所謂グリッパであり、工具体TBを構成する工具ホルダTHの二面幅THを把持することができるようになっている。そして、前記第3アーム34とハンド35との間には力覚センサ37が設けられており、本例では、ハンド35に作用する力、具体的には、前記ハンド35が開閉する第1軸方向(図6における矢示a-b方向)の力、第3アーム34の軸方向であって前記第1軸と直交する第2軸方向(図8における矢示c-d)の力、並びに前記第1軸及び第2軸と直交する第3軸方向(図8における矢示e-f)の力を前記力覚センサ37によって検出することができるようになっている。
【0031】
図3及び図4に示すように、前記工具保持装置20は、前記工具着脱ロボット30の動作領域内に、当該工具着脱ロボット30に対向して設けられるもので、所定の間隔を空けて平行に設けられた長尺のプレート状の工具保持部材21、23、並びに前記移動台15上に設けられて、前記工具保持部材21、23を立てた状態(立設状態)で支持するフレーム25などから構成される。
【0032】
前記工具保持部材21、23は、前記工具着脱ロボット30から見て、その右側部に、それぞれ上下方向に所定ピッチで、且つ相互に重なり合うように配列されるとともに、外方に向けて開口するように形成された複数の切り欠き部22、24を備えており、対応する一組の切り欠き部22、24が、前記工具体TBが装着される保持部を形成する。工具体TBは、その工具ホルダTHの係合溝TH,THに係る部分が切り欠き部22、24に挿入されることで、当該切り欠き部22、24に保持される。
【0033】
前記エアブロー装置40は、図1及び図4に示すように、前記工具着脱ロボット30の動作領域内において、当該工具着脱ロボット30から見て前記工具保持装置20の左隣に設けられるもので、上面に開口42を有する筐体状のエアブローボックス41と、このエアブローボックス41内に設けられて、加圧空気を吐出する複数のノズル(図示せず)と、適宜配管(図示せず)を介して前記ノズル(図示せず)に加圧空気を供給する加圧空気供給源(図示せず)と、配管(図示せず)の途中に設けられた制御弁などを備えている。
【0034】
前記制御装置50は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、上述したように、前記移動装置11、工具着脱ロボット30及びエアブロー装置40などの作動を制御する。具体的には、制御装置50は、所定の動作プログラムに従って工具搬送装置10を動作させて、指令された工具マガジンTMから指令された工具体TBを取出した後、取り出した工具体TBを搬送して、指令された工具収容ラック6に格納する。また、制御装置50は、逆に、指令された工具収容ラック6から指令された工具体TBを取出した後、取り出した工具体TBを搬送して、指令された工具マガジンTMに格納する。
【0035】
以下、特に、制御装置50による制御の下で、前記工具搬送装置10により、指定された工具マガジンTMから指定された工具体TBを取り出した後、指定された工具収容ラック6に格納するその具体的な動作について説明する。尚、対象の工具マガジンTM、工具収容ラック6、及び工具収容ラック6への格納位置について情報、並びに動作指令(取出指令及び格納指令)は、上位の管理装置(図示せず)から制御装置50に送信されるものとする。また、対象の工具マガジンTMを備えた工作機械Mの数値制御装置(図示せず)にも、取り出し対象の工具体TBについての情報、及び取出し指令が、上位の管理装置(図示せず)から送信され、この指令及び情報を受信した数値制御装置(図示せず)は、指令された工具体TBを工具マガジンTMから設定された入出位置TMaに移動させた後、制御装置50に取出準備完了信号を送信するものとする。
【0036】
上記のようにして、対象の工具マガジンTM、工具収容ラック6、及び工具収容ラック6への格納位置についての情報、並びに動作指令(取り出し及び格納指令)を前記管理装置(図示せず)から受信すると、制御装置50は、まず、前記移動装置11の駆動装置13を駆動して、指令された工具マガジンTM、この例では、図1に示した工具マガジンTMの作業位置に移動台15を移動させる(移動動作)。尚、この移動台15の位置はホームポジションに該当する。一方、対象の工具マガジンTMを備えた工作機械Mの数値制御装置(図示せず)は、前記上位の管理装置(図示せず)から取り出し対象の工具体TBについての情報、及び取出し指令を受信した後、工具マガジンTMを駆動して、指令された工具体TBを図1に示した入出位置TMaに移動させた後、制御装置50に取出準備完了信号を送信する。
【0037】
前記移動動作を完了し、且つ対象の数値制御装置(図示せず)から取出準備完了信号を受信すると、次に、前記制御装置50は、前記工具着脱ロボット30を駆動して、工具マガジンTMの入出位置TMaに移動された工具体TBを、その工具ホルダTHの端部であって、二面幅TH,THに係る外面をハンド35により把持して、当該工具マガジンTMから取り出した後(取出動作)、取出完了信号を数値制御装置(図示せず)に送信する。尚、上位の管理装置(図示せず)から指令された取り出すべき工具体TBが複数ある場合には、制御装置50から取出完了信号を受信した後、数値制御装置(図示せず)は次に取り出す工具体TBを入出位置TMaに移動させた後、制御装置50に取出準備完了信号を送信する処理を繰り返して実行する。
【0038】
次に、制御装置50は、工具着脱ロボット30を駆動して、図5に示すように、ハンド35により把持した工具体TBを、エアブローボックス41の上部開口42から当該エアブローボックス41内に搬入するとともに(搬入動作)、前記制御弁(図示せず)を所定時間開いて、ノズル(図示せず)からそれぞれ加圧空気を吐出させる(吐出動作)。これにより、工具体TBの工具Tに付着した切屑及びクーラント液が吐出された空気流により吹き飛ばされて、当該工具Tが清浄にされる。
【0039】
以上のようにして、所定時間だけノズル(図示せず)から加圧空気を吐出させた後、制御装置50は、工具着脱ロボット30を駆動してエアブローボックス41から工具体TBを搬出し(搬出動作)、ついで、図3及び図4に示すように、搬出した工具体TBを工具保持装置20の空の切り欠き部22、24に挿入、即ち、工具ホルダTHの係合溝(被係合面)TH,THに係る部分を切り欠き部22、24に挿入して工具体TBを工具保持装置20に保持させるとともに(仮置動作)、前記制御弁(図示せず)を閉じてノズル(図示せず)からの加圧空気の吐出を停止させる(停止動作)。
【0040】
尚、上位の管理装置(図示せず)から指令された取り出し工具体TBが複数ある場合には、制御装置50は数値制御装置(図示せず)から取出準備完了信号を受信した後、取り出し対象の各工具体TBについて、前記取出動作、搬入動作、吐出動作、搬出動作、仮置動作及び停止動作を繰り返して実行させる。
【0041】
以上のようにして、指令された工具体TBを工具マガジンTMから取り出す処理を完了すると、制御装置50は、次に、前記移動装置11の駆動装置13を駆動して、指令された工具収容ラック6の作業位置に移動台15を移動させた後(搬送動作)、工具着脱ロボット30を駆動して、工具保持装置20に保持された工具体TBを、指令された工具収容ラック6の指令された格納位置に格納する(格納動作)。尚、この格納動作は、格納する工具体TBが複数ある場合には、各工具体TBについて実行される。
【0042】
次に、制御装置50は、指令された工具マガジンTMから指令された工具体TBを取り出した後、指令された工具収容ラック6に格納する。また、制御装置50は、逆の動作により、指令された工具収容ラック6から指令された工具体TBを取り出した後、指令された工具マガジンTMに格納する処理を実行することができる。その際、工具収容ラック6内の工具体TBは清浄に保たれていると想定されるため、当該工具体TBを清浄にするための前記搬入動作、吐出動作、搬出動作、及び停止動作の実行は、これを省略することができる。
【0043】
以上のような制御を行う前記制御装置50は、前記工具着脱ロボット30の動作を制御する制御部として、特に、図9に示すようなロボット制御部55を備えている。具体的には、このロボット制御部55は、同図9に示すように、動作プログラム記憶部56,プログラム解析部57,軸制御部58,軸駆動部59,パラメータ記憶部60及び速度調整部61などから構成される。
【0044】
前記動作プログラム記憶部56は、工具着脱ロボット30の動作を指令したプログラムを記憶する機能部であり、例えば、移動や停止などを定義する動作指令、前記ハンド35の位置及び向き(姿勢)を定義する位置指令、直線移動や円弧移動などの移動経路を定義する経路指令、並びに移動速度を定義する速度指令などから構成され、予め作成された動作プログラムが、ロボット制御部55に接続される入出力装置65を介して入力され、当該動作プログラム記憶部56に格納される。この動作プログラムの一例を図11に示す。この動作プログラムはSLIMと言われる言語で記述されており、「MOVE」は移動を意味する指令、「P004」、「P005」及び「P006」はそれぞれ位置指令、「L」は直線移動を意味する指令、「C」は円弧移動を意味する指令、「SPEED1」及び「SPEED2」はそれぞれ移動速度を意味する指令である。
【0045】
そして、動作プログラム中の各位置指令の具体的な位置及び姿勢は、工具着脱ロボット30をティーチング操作と呼ばれる手動操作により動作させることによって得られるもので、ティーング操作によって工具着脱ロボット30を動作させたときの各関節部に設けられた各駆動モータの回転角度位置がパラメータとして取得され、各位置指令について得られるパラメータが前記入出力装置65を介して前記パラメータ記憶部60に格納される。
【0046】
前記プログラム解析部57は、前記動作プログラム記憶部56に格納された動作プログラムであって、実行する動作プログラムを読みだして、その指令を解析して移動に関する指令、例えば、上述した移動指令「MOVE」、位置指令「P004」,「P005」,「P006」、経路指令「L」,「C」、速度指令「SPEED1」,「SPEED2」などを抽出し、移動に関する指令が抽出された場合には、当該移動に関する指令を軸制御部58に送信する。
【0047】
前記軸制御部58は、前記プログラム解析部57から送信される指令に応じて、前記軸駆動部59を介して工具着脱ロボット30の各駆動モータを駆動する。具体的には、各位置指令、例えば「P004」に応じたパラメータを前記パラメータ記憶部60から読み出し、各駆動モータの回転角度位置が読み出した回転角度位置となり、且つハンド35の移動経路が指令された移動経路(直線移動又は円弧移動)を取り、更に指令された速度で移動するように、各駆動モータに対する回転指令(制御信号)を生成して前記軸駆動部59に送信する。そして、軸駆動部59は、軸制御部58から受信した回転指令に応じた駆動電流を工具着脱ロボット30の前記各駆動モータに供給して、ハンド35を指令された位置に移動させる。尚、軸制御部58は、各駆動モータに設けられたエンコーダから送信されるフィードバック信号に基づいて、各駆動モータをフィードバック制御するように構成されている。
【0048】
前記速度調整部61は、工具着脱ロボット30に設けられた力覚センサ37によって検出される負荷の内、前記工具体TBが前記ハンド35から抜け出る方向の負荷、例えば、前記矢示f方向の負荷を監視し、この矢示f方向の負荷が予め定めた基準負荷を超えたとき、ハンド35の移動速度、言い換えれば、各駆動モータの回転速度を減速させる制御信号を前記軸制御部58に送信する処理を行う。この減速制御信号は、現在の速度指令に対して100%未満の比率(例えば、70%)となるような制御信号であり、一定の比率にすることができる他、基準値を超える負荷の大きさに応じた比率に設定することもでき、例えば、負荷が大きいほど、小さい比率に設定することができる。斯くして、この減速制御信号が前記軸制御部58に入力されることにより、ハンド35の移動速度が指令速度に対して減速される。
【0049】
尚、前記基準負荷は、前記工具体TBが前記ハンド35から抜け出ると想定される負荷であり、理論的に設定することができ、或いは、経験的に設定することができる。また、工具体TBが前記ハンド35から抜け出る方向の力は、矢示f方向の力が最も大きくなると思われるが、監視する方向の力は、このf方向の力に限定されるものではなく、他の方向の力を監視するようにしても良い。
【0050】
以上のように構成された本例の工具搬送装置10によれば、前記制御装置50による制御の下で、前記工具搬送装置10により、指定された工具マガジンTMから指定された工具体TBを取り出した後、指定された工具収容ラック6に格納される。そして、その際、工具着脱ロボット30は、前記ロボット制御部55によってその動作が制御され、その動作中、速度調整部61によって、前記工具体TBが前記ハンド35から抜け出る方向の負荷が監視され、この負荷が予め定めた基準負荷を超えたとき、ハンド35の移動速度が指令速度に対して減速される。
【0051】
斯くして、本例の工具搬送装置10によれば、工具着脱ロボット30の動作中に前記工具体TBが前記ハンド35から抜け出る方向の負荷が監視され、この負荷が予め定めた基準負荷を超えたとき、ハンド35の移動速度が減速されるので、ハンド35の移動中に工具体TBが当該ハンド35から離脱するのを防止することができる。また、工具体TBがハンド35から抜け出る方向の力が基準負荷を超えたときにのみ、その移動速度を減速するようにしているので、一律に移動速度を低速にする場合に比べて、工具着脱ロボット30の作業効率を不必要に損なうことなく、当該工具着脱ロボット30の動作の安全性を確保することができる。
【0052】
また、基準値を超える負荷が大きいほど、ハンド35の移動速度を低速にするようにすれば、工具着脱ロボット30の作業効率が低下するのを可及的に防止することができ、且つ工具体TBがハンド35から離脱するのを確実に防止することができる。
【0053】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明が採り得る態様は、何ら上例のものに限定されるものではない。
【0054】
例えば、前記制御装置50は、前記工具着脱ロボット30の動作を制御する制御部として、図10に示すようなロボット制御部55’を備えた構成であっても良い。このロボット制御部55’は、前記速度調整部61に代えて、これとは機能の異なる速度調整部61’を備えるもので、その他の構成については、上例のものと同じである。したがって、上例のロボット制御部55と同じ構成については同じ符号を付して、その詳しい説明を省略する。尚、この場合、前記力覚センサ37は、備えられていなくても良い。
【0055】
前記速度調整部61’は、予め、ロボット制御部55’による制御の下で、工具着脱ロボット30を空運転、即ち、ハンド35が工具体TBを保持していない状態で動作させ時に、工具着脱ロボット30を構成する各駆動モータに供給される駆動電力をそれぞれ基準電力として、軸駆動部59から取得して記憶する。
【0056】
そして、前記速度調整部61’は、ロボット制御部55’による制御の下で、工具着脱ロボット30が実動作、即ち、ハンド35が工具体TBを保持した状態で動作するときに工具着脱ロボット30の各駆動モータに供給される駆動電力を実電力として前記軸駆動部59から取得して監視し、実電力が予め所得した基準電力に基づいて設定される限界電力を超えると、前記工具体TBがハンド35から抜け出る方向の力が作用する移動であると判断して、ハンド35の移動速度、言い換えれば、各駆動モータの回転速度を減速させる制御信号を前記軸制御部58に送信する処理を行う。
【0057】
上述したように、前記軸制御部58は、各駆動モータに設けられたエンコーダから送信されるフィードバック信号に基づいて、当該各駆動モータをフィードバック制御するように構成されており、各駆動モータに大きな負荷が作用すると、これに応じて各駆動モータにおける回転の追随遅れが生じ、この追随遅れに応じて軸駆動部59から各駆動モータに供給される駆動電流が増大されることになる。そして、各駆動モータに作用する負荷は、工具体TBがハンド35から抜け出る方向の力が作用する移動であるときに最も大きくなると考えられるため、前記実電力が前記限界電力を超えたとき、工具体TBがハンド35から抜け出る可能性が生じると判断することができる。そこで、前記速度調整部61’は、実電力が予め所得した基準電力に基づいて設定される限界電力を超えると、各駆動モータの回転速度を減速させる制御信号(減速制御信号)を前記軸制御部58に送信して、ハンド35の移動速度を減速させる。
【0058】
尚、前記減速制御信号は、上例と同様に、現在の速度指令に対して100%未満の比率(例えば、70%)となるような制御信号とすることができ、一定の比率にすることができる他、限界電力を超えるその大きさに応じた比率に設定することもでき、例えば、限界電力を超える大きさが大きいほど、小さい比率に設定することができる。斯くして、この減速制御信号が前記軸制御部58に入力されることにより、ハンド35の移動速度が指令速度に対して減速される。尚、限界電力は、工具体TBがハンド35から抜け出る可能性が生じると判断されるときの各駆動モータに供給される電力であり、理論的に設定することができ、或いは、経験的に設定することができる。
【0059】
斯くして、このような態様によれば、工具着脱ロボット30の実動作中に各駆動モータに供給される実電力を監視し、実電力が予め設定された限界電力を超えると、ハンド35の移動速度が減速されるので、ハンド35の移動中に工具体TBが当該ハンド35から離脱するのを防止することができる。また、各駆動モータに供給される実電力が限界電力を超えたときにのみ、ハンド35の移動速度を減速するようにしているので、一律に移動速度を低速にする場合に比べて、工具着脱ロボット30の作業効率を不必要に損なうことなく、当該工具着脱ロボット30の動作の安全性を確保することができる。
【0060】
また、前記速度調整部61’が、前記実電力が前記限界電力を超えるその大きさに応じた割合で、ハンド35の移動速度を低速にするように構成されている場合には、工具着脱ロボット30の作業効率が低下するのを可及的に防止することができ、且つ工具体TBがハンド35から離脱するのを確実に防止することができる。
【0061】
また、本発明は、上述した速度調整部61及び61’によって、ハンド35の移動速度を減速する態様に限られるものではなく、工具着脱ロボット30を動作させるための前記動作プログラム(前記動作プログラム記憶部56に格納された動作プログラム)において、前記ハンド35を移動させる移動速度を、前記工具体TBが前記ハンド35から抜け出る方向の力が作用する移動のときの方が、前記工具体TBが前記ハンド35から抜け出る方向の力が作用しない移動のときに比べて、低速に設定された態様を採ることができる。
【0062】
例えば、図8において、ハンド35を矢示f方向に直線移動させる場合に、工具体TBがハンド35から抜け出る方向の最も大きな力が作用し、矢示g-h方向に円弧移動させる場合に次に大きな力が作用し、矢示c-d方向に直線移動させる場合に次に大きな力が作用すると考えられる。一方、ハンド35を矢示e方向に直線移動させる場合に、工具体TBがハンド35から抜け出る方向の力は作用しないものと考えられる。
【0063】
そこで、ハンド35を矢示f方向に直線移動させるときの移動速度を最も低速に設定し、ハンド35を矢示g-h方向に円弧移動させるときの移動速度を次に低速に設定し、ハンド35を矢示c-d方向に直線移動させるときの移動速度を次に低速に設定し、ハンド35を矢示e方向に直線移動させるときの移動速度を最も高速に設定するといった態様を採ることができる。
【0064】
このような態様によっても、工具着脱ロボット30のハンド35を移動させる際に、工具体TBがハンド35から抜け出る方向の力が作用する移動のときには、工具体TBが抜け出る方向の力が作用しない移動のときに比べて、その移動速度が低速に設定されているので、ハンド35の移動速度を一律に低速にする場合に比べて、工具着脱ロボット30の作業効率を不必要に損なうことなく、当該工具着脱ロボット30の動作の安全性を確保することができる。
【0065】
繰返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 加工システム
5 工具収容装置
6 工具収容ラック
7 支持フレーム
8 保持フレーム
10 工具搬送装置
11 移動装置
12 支持基台
13 駆動装置
14 ガイドレール
15 移動台
20 工具保持装置
21,23 工具保持部材
22,24 切り欠き部
フレーム
30 工具着脱ロボット
35 ハンド
37 力覚センサ
40 エアブロー装置
41 エアブローボックス
42 開口
50 制御装置
55 ロボット制御部
56 動作プログラム記憶部
57 プログラム解析部
58 軸制御部
59 軸駆動部
60 パラメータ記憶部
61 速度調整部
65 入出力装置
M 工作機械
TM 工具マガジン
T 工具
TH 工具ホルダ
TB 工具体
【要約】
【課題】安全性を確保しながらも効率性をある程度維持することができるロボットの動作制御方法及び制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置55は、エンドエフェクタとしてのハンドを備え、該ハンドに直接又は間接的に被保持物を保持して、該ハンドを三次元空間内で移動させるロボット30を制御する。制御装置55は、ハンドを移動させる際に、被保持物にハンドから抜け出る方向の力が作用する移動のときの移動速度を、被保持物に抜け出る方向の力が作用しない移動のときの移動速度に比べて、低速にするように構成される。具体的な一態様としての制御装置55は、ハンドを移動させる際に、ロボット30に設けた力覚センサ37によって検出される負荷の内、被保持物がハンドから抜け出る方向の負荷を監視し、この負荷が予め定めた基準負荷を超えたとき、この移動について指定された動作速度を減速する。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11