(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】警報器及び警報器の制御方法
(51)【国際特許分類】
G08B 23/00 20060101AFI20240219BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20240219BHJP
G08B 21/16 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
G08B23/00 520D
G08B17/00 C
G08B21/16
(21)【出願番号】P 2023187837
(22)【出願日】2023-11-01
【審査請求日】2023-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 智敬
(72)【発明者】
【氏名】末廣 陽
(72)【発明者】
【氏名】能美 耕太郎
【審査官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-29040(JP,A)
【文献】特開2021-128576(JP,A)
【文献】特開2022-105728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 23/00
G08B 17/00
G08B 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも火災若しくはガスのいずれか一方を検知可能である検知手段と、
前記検知手段で取得される検知情報に基づいて発報する報知機能を制御する第1処理装置と、
前記第1処理装置と別個に設けられていて外部機器との通信を制御する第2処理装置と、
前記第1処理装置の制御により前記検知情報に基づく音声を発し、前記第2処理装置の制御により前記通信による受信情報に基づく音声を発する出力装置と、
を備えている、通信機能を有する警報器であって、
前記警報器は、前記検知情報に基づく発報が行われるときに、前記第2処理装置からの信号による前記出力装置からの発声が妨げられる状態である阻害状態となり得るように構成され、
前記検知情報に基づく音声を発しないときに前記第2処理装置から音声の発声通知が前記第1処理装置に送られると、前記阻害状態から、前記第2処理装置の制御による発声が可能な状態に移行する
ように構成されている、警報器。
【請求項2】
前記第1処理装置は、
前記第2処理装置に発声の禁止指示を送出する、及び、
前記第2処理装置から前記出力装置に送られる発声指示の前記出力装置への到達防止措置を講じる、
のうちの少なくとも一つを行って前記阻害状態をもたらすように構成されている、請求項1記載の警報器。
【請求項3】
前記第2処理装置と前記出力装置との間の前記発声指示の伝達経路に、前記第2処理装置と前記出力装置との間の導通状態と非導通状態とを前記第1処理装置からの制御に従って切り替える切り替え手段をさらに備え、
前記第1処理装置は、前記阻害状態をもたらす措置として少なくとも前記到達防止措置を、前記切り替え手段を用いて講じる、請求項2記載の警報器。
【請求項4】
前記検知情報に基づく音声を発するとき又は発しているときに前記発声通知が前記第1処理装置に送られる場合には、前記阻害状態が継続される、請求項1~3のいずれか1項に記載の警報器。
【請求項5】
前記第2処理装置の制御による音声を発しているときに前記検知情報に基づく音声を発するときは、前記阻害状態へと移行するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の警報器。
【請求項6】
少なくとも火災若しくはガスのいずれか一方を検知可能である検知手段と、前記検知手段で取得される検知情報に基づいて発報する報知機能を制御する第1処理装置と、外部機器との通信を制御する第2処理装置と、前記検知情報に基づく音声、及び前記第2処理装置の制御により前記通信による受信情報に基づく音声を発する出力装置と、を備える警報器において音声の発声を制御する、警報器の制御方法であって、
前記警報器を、前記検知情報に基づく発報が行われるときに、前記第2処理装置からの信号による前記出力装置からの発声が妨げられる状態である阻害状態にすることと、
前記第2処理装置から音声の発声通知を前記第1処理装置に送らせることと、
前記検知情報に基づく音声を発しないときに前記発声通知が前記第1処理装置に送られると、前記警報器を前記第2処理装置の制御による発声が可能な状態にすることと、
を含んでいる、警報器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機能を有する警報器、及び、警報器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、周囲環境を温度センサやガスセンサで監視して、異常な状態の検出に応じて警報を発してユーザーに危険を報せる警報器が、一般家庭や、商業施設、及び工場などで用いられている。このような警報器は、ユーザーの安全確保のために重要な役割を果たしている。近年、このような警報器では、単純なビープ音だけでなく、多様な情報を伝えるメッセージを発し得るように、音声信号の処理装置や、スピーカなどの発声手段が備えられている。
【0003】
さらに、得られた情報を警報器の周囲だけでなく遠方の関係者にも伝えられるように、通信機能を有する警報器が普及している。そして、そのような通信機能を有する警報器には、特定の通信先との交信だけではなく、広く情報を発信できるように、また、多くの情報を外部から入手して警報器の周囲のユーザーの便益を高められるように、インターネットのようなネットワーク回線に接続可能なものも存在する。例えば、特許文献1には、警報メッセージを発するスピーカ、及び、インターネットへの接続を可能にするLANポートを備える警報器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の警報器では、前述したスピーカやLANポート、さらに、周囲環境を監視して警報機能を担うCOセンサなどの各種センサが、一つの信号処理回路に接続されている。そして、この一つの信号処理回路によって、警報器の主機能である警報機能に加えて、通信機能も制御されている。しかしこのような構成の場合、一つの信号処理回路で警報機能も通信機能も制御しているが故に、主機能である警報機能に支障を来たすことがある。例えば、新たな制御方式の取り込みやセキュリティレベルの向上のために繰り返される通信プロトコルのバージョンアップによって警報機能が影響を受けることがある。すなわち、このようなバージョンアップに伴って必要となる通信機能に関するソフトウェアのアップデート中に警報機能が機能停止に陥ったり、そのアップデートの不具合によって信号処理回路全体が動作不能に陥ったりすることが考えられる。このような警報機能の不具合は、ユーザーなどの安全確保という役割を担う警報器にとって、至って好ましくない。
【0006】
このようなリスクを軽減する手段として、警報機能を制御する警報用信号処理装置と、通信機能を制御する通信用信号処理装置とを、互いに独立して個別に設けることが考えられる。しかしこのように信号処理装置を機能ごとに単に個別に設けて動作させると、インターネットなどを通じた外部機器との通信が、その内容次第で、主機能たる警報機能に影響を及ぼすことがある。例えば、音声情報が外部機器から送られてその情報が警報機能と共用のスピーカによって発せられる場合には、音声による警報が、通信により得られた情報を発する音声で阻害されることもある。
【0007】
このような警報の阻害が生じないように、警報を発するときに、通信用信号処理装置とスピーカとの間を遮断するような構成にすることが考えられる。しかし、警報の発報時に通信用信号処理装置とスピーカとの間の遮断に遅延が生じてしまうと、そのとき発せられている通信に基づく音声の停止が遅れてしまうことがある。その結果、警報がメッセージを含んでいる場合にその冒頭部分が通信に基づく音声と重なってしまってユーザーなどに伝わり難いことがある。また、既に何らかの音声が発せられている状態で警報音が発せられても、既に発せられている音声の内容次第で、警報の発報がユーザーなどに認知され難いことがある。このような場合、警報がユーザーなどに十分に認知されず、ユーザーなどの安全が脅かされることになり兼ねない。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、迅速且つ適切な警報の発報を阻害することなく、通信により得られる情報に基づく音声を発することができる警報器、及び警報器の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の警報器は、少なくとも火災若しくはガスのいずれか一方を検知可能である検知手段と、前記検知手段で取得される検知情報に基づいて発報する報知機能を制御する第1処理装置と、前記第1処理装置と別個に設けられていて外部機器との通信を制御する第2処理装置と、前記第1処理装置の制御により前記検知情報に基づく音声を発し、前記第2処理装置の制御により前記通信による受信情報に基づく音声を発する出力装置と、を備えている、通信機能を有する警報器であって、前記警報器は、前記検知情報に基づく発報が行われるときに、前記第2処理装置からの信号による前記出力装置からの発声が妨げられる状態である阻害状態となり得るように構成され、前記検知情報に基づく音声を発しないときに前記第2処理装置から音声の発声通知が前記第1処理装置に送られると、前記阻害状態から、前記第2処理装置の制御による発声が可能な状態に移行するように構成されている。
【0010】
前記第1処理装置は、前記第2処理装置に発声の禁止指示を送出する、及び、前記第2処理装置から前記出力装置に送られる発声指示の前記出力装置への到達防止措置を講じる、のうちの少なくとも一つを行って前記阻害状態をもたらすように構成されていてもよい。
【0011】
上記警報器は、前記第2処理装置と前記出力装置との間の前記発声指示の伝達経路に、前記第2処理装置と前記出力装置との間の導通状態と非導通状態とを前記第1処理装置からの制御に従って切り替える切り替え手段をさらに備え、前記第1処理装置は、前記阻害状態をもたらす措置として少なくとも前記到達防止措置を、前記切り替え手段を用いて講じてもよい。
【0012】
前記検知情報に基づく音声を発するとき又は発しているときに前記発声通知が前記第1処理装置に送られる場合には、前記阻害状態が継続されてもよい。
【0013】
上記警報器は、前記第2処理装置の制御による音声を発しているときに前記検知情報に基づく音声を発するときは、前記阻害状態へと移行するように構成されていてもよい。
【0014】
本発明の警報器の制御方法は、少なくとも火災若しくはガスのいずれか一方を検知可能である検知手段と、前記検知手段で取得される検知情報に基づいて発報する報知機能を制御する第1処理装置と、外部機器との通信を制御する第2処理装置と、前記検知情報に基づく音声、及び前記第2処理装置の制御により前記通信による受信情報に基づく音声を発する出力装置と、を備える警報器において音声の発声を制御する、警報器の制御方法であって、前記警報器を、前記検知情報に基づく発報が行われるときに、前記第2処理装置からの信号による前記出力装置からの発声が妨げられる状態である阻害状態にすることと、前記第2処理装置から音声の発声通知を前記第1処理装置に送らせることと、前記検知情報に基づく音声を発しないときに前記発声通知が前記第1処理装置に送られると、前記警報器を前記第2処理装置の制御による発声が可能な状態にすることと、を含んでいる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、火災若しくはガスの少なくとも一方に関する警報を発する警報器において、迅速且つ適切な警報の発報を阻害することなく、通信により得られる情報に基づく音声を発することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の警報器の構成の概略を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態の警報器に用いられ得る、出力装置への発声指示の到達を防ぐ手段の一例を示す回路図である。
【
図3】本発明の一実施形態の警報器における各音声発声の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態の警報器における各音声発声の処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態の警報器の他の例の概略を示すブロック図である。
【
図6】
図5の例の発声検知手段の構成の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る警報器及び警報器の制御方法を説明する。但し、以下に説明される実施形態及び添付の図面は、本発明に係る警報器又は警報器の制御方法の一例を示しているに過ぎない。本発明に係る警報器及び警報器の制御方法の構成及び作用は、以下に説明される実施形態及び添付の図面に例示される構成及び作用に限定されない。
【0018】
<一実施形態の警報器の構成及び作用>
図1には、本発明の一実施形態の警報器100の主要な構成要素がブロック図で示されている。一実施形態の警報器100は、例えば、住居や工場などに設置されたり、ユーザーに携帯されたりして、警報器100の周囲の環境を監視する。そして、警報器100は、周囲の環境が特定の状態にある場合にはそれを検知して、例えば、警報を発したり、信号を送ったりして、周囲環境が特定の状態、例えば人体や物的資産に危害が及び得る異常な状態にあることを周囲の人や所定の機器に報せる。警報器100は、特定の状態として、少なくとも火災の発生及びガス漏れのいずれか一方を検知する。警報器100が他に検知し得る特定の状態としては、一酸化炭素の濃度上昇、煙の充満、及び過剰な温湿度、などが例示されるが、警報器100が検知し得る特定の状態は、これらに限定されない。
【0019】
警報器100は、
図1に示されるように、警報部1及び通信部2を備えている。警報部1は、周囲環境の監視から監視結果に基づく報知までの機能を含む報知機能を担っている。警報器100は通信機能を有しており、通信部2は警報器100の通信機能を担っている。通信部2は、少なくとも警報器100の外部からの信号を受信し、さらに、警報器100の外部へと信号を送信してもよい。
図1の例において警報器100は、外部機器Eとの間で信号を送受する。
【0020】
警報器100は、さらに、出力装置40を備えている。出力装置40は、警報部1から送られる指示に従って音声を発する。出力装置40は、さらに、通信部2から送られる指示に従って音声を発する。本開示において「音声」は、人間が声として発する音や人間の声を模して人工的に生成された音だけでなく、楽曲の音、及び、雨風や波、又は人間以外の生物などによって自然界で生成される特段の意味を有さない音、並びに、それらの録音後の再生音、などのあらゆる音を含んでいる。
【0021】
図1の警報器100は、さらに、通信部2と出力装置40との間に配置されている切り替え手段30を備えている。切り替え手段30は、警報部1からの指示に従って、通信部2から出力装置40への音声の発声指示I2の伝達を妨げる。警報器100は、警報器100の構成部品を収容する筐体60を有しており、警報部1、通信部2、出力装置40、及び切り替え手段30は、筐体60の中に収められている。
【0022】
<警報部>
警報部1は、第1処理装置10及び検知手段50を含んでいる。警報部1は、主に第1処理装置10及び検知手段50で構成され、例えば第1処理装置10及び検知手段50と、それらの周辺部品(図示せず)とで構成される。第1処理装置10は、検知手段50で取得される検知情報に基づいて警報を発報する報知機能を制御する。第1処理装置10は、マイコンやASICなどの半導体装置からなり、内蔵されたプログラム、又は、警報部1が備える、第1処理装置10の外部のROMなどの記憶装置(図示せず)に格納されたプログラムに従って動作する。第1処理装置10は、好ましくは、演算機能、比較機能、記憶機能などを有しており、検知手段50の動作を含む警報部1の動作を全体的に制御すると共に、必要に応じて出力装置40に警報を発報させる。すなわち、第1処理装置10は、検知手段50によって得られる検知情報に基づく音声の発声指示I1を出力装置40に送るように構成されている。このように、第1処理装置10は、周囲環境を監視する警報器100の動作中に、検知手段50による周囲環境の監視から、例えば出力装置40による警報の発報のような異常の報知に至る動作を全体的に制御する。
【0023】
なお、本明細書において、警報器100、又は第1処理装置10(若しくは、後述される第2処理装置20)が特定の動作又は処理を行うように(又は行わないように)「構成されている」は、警報器100又は各処理装置などにその特定の動作又は処理を行わせる(又は行わせない)命令が、各処理装置の動作や処理を記述するプログラムに含まれていることを含んでいる。
【0024】
検知手段50は、警報器100の周囲の監視対象領域の物理現象を監視して監視データを出力する1以上の各種のセンサであり得る。警報器100において検知手段50は、警報部1及び通信部2の構成要素並びに出力装置40と共に、筐体60内に設けられている。そのため、検知手段50は、警報器100の近傍の領域を監視することができる。検知手段50として機能する各種のセンサは、例えば、一酸化炭素ガス(CO)、メタンガス(CH4)又はプロパンガス(C3H8)を検知する各種ガスセンサ、サーミスタなどからなる温度センサ、湿度センサ、煙センサ、臭気センサ、又は、部外者の立ち入りを検知する侵入センサなどであってよい。検知手段50は、これらセンサの1つ又は複数で構成され得る。警報器100において検知手段50は、少なくとも火災若しくはガスのいずれか一方を検知可能である。例えば、各種のガスセンサによって、警報器100の周囲の空間におけるガス漏れが検知される。また、温度センサ及び煙センサなどによって、警報器100の周囲での火災の発生が検知される。
【0025】
警報部1において第1処理装置10は、例えば、検知手段50による周囲環境の監視動作の開始や停止を制御する。また、第1処理装置10は、検知手段50から送られる検知情報が示す、一酸化炭素やガスの濃度、周囲の温度、及び、煙の濃度などが、所定の閾値を超えているか否かを判断する。そして、温度や濃度などが閾値を超えている場合には、例えばその超過の程度に応じて警報の態様(音声の鳴動の仕方や後述の発光ダイオード等の発光部における発光の仕方など)を決定し、決定した方法で、出力装置40に警報を発報させる。
【0026】
<通信部>
通信部2は、第2処理装置20及び通信装置21を含んでいる。通信部2は、主に第2処理装置20及び通信装置21で構成され、例えば第2処理装置20及び通信装置21と、それらの周辺部品(図示せず)とで構成される。第2処理装置20は、警報器100と外部機器Eとの通信を制御する。第2処理装置20は、マイコンやASICなどの半導体装置からなり、内蔵されたプログラム、又は、通信部2が備える、第2処理装置20の外部のROMなどの記憶装置(図示せず)に格納されたプログラムに従って動作する。第2処理装置20は、好ましくは、演算機能や記憶機能、及び比較機能などを有し、警報器100の動作中に通信装置21で行われる、警報器100と外部機器Eとの間での通信に必要な動作を全体的に制御する。
【0027】
さらに、第2処理装置20は、外部機器Eのような外部機器と警報器100との間の通信による受信情報に基づく音声の発声指示I2を出力装置40に送るように構成されている。音声を発しさせるべく第1処理装置10及び第2処理装置20それぞれから出力装置40に送られる発声指示I1、I2は、発せられる音の大きさ、長さ、音調、及び/又は音質などの情報を含む電気信号であり得る(以下では、このような電気信号を「音声信号」とも称する)。第1処理装置10及び第2処理装置20は、発しさせる音声に対応する適切な音声信号を、発声指示I1又は発声指示I2として出力装置40に送信してもよい。或いは、音声信号の送信に先行して、信号レベル、振幅、及び/又は、周波数などについて予め定められた特定の値や変化パターンを有する信号が、発声指示I1又は発声指示I2として出力装置40に送られてもよい。
【0028】
通信装置21は、無線通信又は有線通信によって外部機器Eとの間で信号を送受する。通信装置21は、外部機器Eと警報器100との間で電気信号を送受するように構成された、集積回路装置や個々の部品からなる電気回路などのハードウェアにより構成される。通信装置21は、外部機器Eとの通信に必要となる、信号の変換(アナログ/デジタル変換や信号のレベル変換など)、信号の増幅、信号の合成及び分解、信号の変調及び復調、外部機器Eとの間のリンクの設定、及び/又は誤り制御、などを行うように構成され得る。例えば、通信装置21は、外部機器Eとの通信に必要な信号処理を行うように設計されたASICなどからなる通信制御IC、又はモデムIC、及びその周辺回路で構成されていてもよい。通信装置21は、第2処理装置20と一体の集積回路装置として構成されていてもよい。
【0029】
警報器100において通信部2は、無線回線又は有線回線を介して外部機器Eとの間で直接送受信を行ってもよく、無線回線又は有線回線で接続された、例えばインターネットやローカルエリアネットワーク(LAN)などのネットワークNを介して外部機器Eとの間で信号の送受信を行ってもよい。外部機器Eとしては、警報器100以外の同種、又は検知対象の異なる警報器、並びに、警報器100の動作を監視若しくは制御する、及び/又は、警報器100での検知結果若しくは警報発報経過を収集して統計処理若しくは解析するサーバーのような情報処理装置が例示される。さらに、インターネットなどのネットワークNに繋がり得る警報器100にとって、外部機器Eは、各者各様の情報を提供する任意の個人又は機関がネットワークNに接続可能な態様で設置する、サーバー、データベース、及び/又は情報処理装置などであり得る。
【0030】
<出力装置>
出力装置40は、第1処理装置10の制御により、検知手段50で取得される検知情報に基づく音声を発する。出力装置40は、さらに、第2処理装置20の制御により、通信部2における通信による受信情報に基づく音声を発する。従って出力装置40は、少なくとも、例えば、スピーカ及び/又はブザーなどのような音声の発生装置41を含んでいる。出力装置40は、スピーカなどの音声発生装置41を1以上の任意の数で含み得る。
図1の例の出力装置40は、さらに、出力装置40に第1処理装置10から入力される音声信号及び第2処理装置20から入力される音声信号を増幅する増幅回路42を含んでいる。増幅回路42は、例えば、集積化された演算増幅器や、その周囲に配置される、トランジスタなどの能動素子及び抵抗器やキャパシタのような受動素子によって構成される。
【0031】
出力装置40は、検知手段50で周囲環境の異常が検知されると、第1処理装置10の制御に従って、鳴動、及び/又は音響を発することにより警報を発する。また、出力装置40は、警報を発する以外にも、警報器100の状態や、警報を発するに至らない監視領域の環境に関する情報をユーザーなどに伝えるために動作してもよい。なお、警報器100は、
図1に示される、音声を発する出力装置40以外にも、警報器100のユーザーの視覚を通じて検知情報を伝える、発光ダイオードやディスプレイなどの報知手段(図示せず)を含んでいてもよい。また、
図1に示される出力装置40が、発光ダイオードなどの視覚的に警報を発する報知手段を含んでいてもよい。
【0032】
<第2処理装置による発声の阻害状態>
本実施形態の警報器100では、第2処理装置20は、
図1に示されるように、第1処理装置10と別個に設けられている。そして、第2処理装置20は、通信で得られる情報に基づく音声を独自の制御の下で、出力装置40に発声させることができる。外部機器Eからリアルタイムで得られる時事情報や気象情報などの各種の情報を、第1処理装置10に負荷をかけることなく、適時に且つ速やかに、ユーザーなどに音声によって伝えることができる。
【0033】
その一方で、第2処理装置20がこのように独自に出力装置40に発声させ得るように構成されていると、外部機器Eとの通信に基づいて発せられる音声で、検知手段50による検知情報に基づく出力装置40からの音声による警報が阻害されることがある。
【0034】
そこで、本実施形態の警報器100は、第2処理装置20からの信号による出力装置40からの発声が妨げられる状態(阻害状態)となり得るように構成されている(以下では、第2処理装置20からの信号による出力装置40からの発声が妨げられる阻害状態は、単に「通信側発声阻害状態」とも称される)。本実施形態の警報器100は、特に、検知手段50で取得される検知情報に基づく発報(特には警報の発報)が行われるときに、通信側発声阻害状態となり得るように構成されている。検知情報に基づく発報時に通信側発声阻害状態となり得る実施形態の警報器100では、検知情報に基づく発報に先立って、予め、警報器100を、通信部2側からの信号による音声が出力装置から発せられない状態にすることができる。
【0035】
すなわち、警報のような検知情報に基づく音声発声時には、警報器100を通信側発声阻害状態にすることによって、警報器100において、発声指示I2のような第2処理装置20からの信号による音声が発せられていない状態にすることができる。また、発声指示I2よる発声だけでなく、一例として、第2処理装置20側でのノイズ混入やノイズによる第2処理装置20の誤動作による発声も阻止できることがある状態にすることができる。その状態で、検知情報に基づく警報などの音声を発することができる。そのため、警報の冒頭部分が通信に基づく音声と重なってしまったり、既に発せられている通信に基づく音声のために警報の発報がユーザーなどに認知され難くなってしまったりする、などということを防止することができる。従って、通信に基づく音声に阻害されることなく、警報のような検知情報に基づく音声を、迅速且つ適切にユーザーなどに認知させることができる。
【0036】
さらに、警報器100では、第2処理装置20は、音声を出力装置40に発しさせるとき、例えば、音声で報知すべき情報を受信して発声指示I2を出力装置40に送るときに、第1処理装置10に音声の発声通知N21を送るように構成されている。そして、本実施形態の警報器100は、検知情報に基づく音声を発しないときに第2処理装置20から第1処理装置10に音声の発声通知N21が送られると、通信側発声阻害状態から、第2処理装置20の制御による発声が可能な状態に移行するように構成されている。すなわち、警報器100では、警報などの検知情報に基づく音声が発せられる状況ではないときに発声通知N21が第1処理装置10に送られると、第2処理装置20からの信号による発声が妨げられる阻害状態から、通信による受信情報に基づく音声の発声が可能な状態に移行する。従って、実施形態の警報器では、検知情報に基づく音声に加えて、通信により得られる情報に基づく音声を発することができ、しかも、上述したように迅速且つ適切な警報などの発報を阻害することなく発することができる。
【0037】
警報器100は、上述したように、検知情報に基づく発報が行われるときに通信側発声阻害状態となり得るように構成されている。ここで、警報などの検知情報に基づく発報は、検知手段50が監視する周囲環境に応じて任意の時機に行われる。従って、警報器100は、一例として、警報器100の稼働中、常時(第2処理装置20から発声通知N21が第1処理装置10に送られるときを除く)、通信側発声阻害状態になってもよい。そのように稼働中に常時、警報器100が通信側発声阻害状態になることによって、より確実に、警報などの検知情報に基づく発声を、通信部2側からの発声よりも優先させて、ユーザーなどに認知させることができる。また、通信部2側からのノイズなどによる偶発的な発声を防止できることもある。
【0038】
また、警報器100は、その周囲環境が警報を発するべき状態に至っていないが、警報を発する可能性が高い状態にあるときに、通信側発声阻害状態になってもよい。一例として、警報器100は、検知手段50による監視対象のガスや煙の濃度若しくは温度などが、警報発報のための閾値ほど過大若しくは過小ではないものの、例えば予備警報のための所定の閾値を越えている間、通信側発声阻害状態にされてもよい。
【0039】
また、警報器100は、ガス漏れや火災の発生原因となり得る機器と、通信部2を介して通信可能に接続され、それらの機器の動作に連動して通信側発声阻害状態になってもよい。すなわち、警報器100は、調理機器や暖房機器のようなガス使用機器や燃焼機器の稼働状態を通信により第2処理装置20及び/又は第1処理装置10で把握してもよく、それらの機器の稼働時に通信側発声阻害状態にされてもよい。このように、本実施形態の警報器100は、検知情報に基づく発報が行われる前の任意のタイミングで通信側発声阻害状態にされてよい。そして好ましくは、少なくとも検知情報に基づく発報が終了するまで、通信側発声阻害状態が継続される。
【0040】
<第2処理装置による発声の阻害手段>
実施形態の警報器100は、任意の手段で通信側発声阻害状態にされる。
図1の警報器100は、警報器100を通信側発声阻害状態にするための手段の一例として、前述した切り替え手段30を備えている。切り替え手段30は第2処理装置20と出力装置40との間の発声指示I2の伝達経路CLに配置されている。切り替え手段30は、制御端30cと、いずれも被制御端である一端30a及び他端30bと、を有している。一端30aは第2処理装置20に接続され、他端30bは出力装置40に接続されている。切り替え手段30は、外部からの制御に従って、第2処理装置20側の一端30aと、出力装置40側の他端30bとの間の導通状態と非導通状態(すなわち絶縁状態)とを切り替える。なお「導通状態」は、一例として50Ω未満の電気抵抗を有する状態であり得、「非導通状態」は、1MΩ以上の電気抵抗を有する状態であり得る。切り替え手段30は、一端30aと他端30bとの間を非導通状態にすることによって、出力装置40への発声指示I2の到達を防止して、警報器100を通信側発声阻害状態にすることができる。
【0041】
切り替え手段30は、所望されるときに出力装置40への発声指示I2の到達を防止又は可能にできるものであれば特に限定されず、任意の態様を有し得る。切り替え手段30は、例えば、バイポーラトランジスタ、電界効果型トランジスタ、及びサイリスタなどの、スイッチング機能を有する個別半導体素子、電磁リレー、半導体リレー、並びに、アナログスイッチとして集積された半導体集積回路装置、などのスイッチング素子であり得る。
【0042】
図1の例のように、切り替え手段30がノーマリーオフタイプのスイッチング素子(例えば、メーク接点若しくa接点型のスイッチや、エンハンスメント型の電界効果型トランジスタなど)によって構成される場合、切り替え手段30は、外部からの操作や制御信号を受けることなく、警報器100を通信側発声阻害状態にすることができる。すなわち、警報器100は、例えば第1処理装置10又は第2処理装置20の制御に依存することなく、容易に、通信側発声阻害状態となり得る。
【0043】
一例として、警報器100は、その稼働中に常時(第2処理装置20から第1処理装置10への発声通知N21の送信時を除いて)、通信側発声阻害状態であってよい。すなわち、警報器100は、デフォルト設定により通信側発声阻害状態にされていてもよい。警報器100がデフォルト設定で通信側発声阻害状態にされていると、例えば発声通知N21を第1処理装置10に送らずに発声指示I2を送出するなどのように第2処理装置20が正常に稼働しなくなった際にも、検知情報による発声を優先させることができる。また、例えば切り替え手段30に接続されている配線の断線など、警報器100を通信側発声阻害状態にする手段の制御が不能に陥った場合でも、通信部2側から発せられる音に阻害されることなく、警報などの検知情報に基づく音声をユーザーなどに認知させることができる。
【0044】
<第1処理装置による通信側発声阻害措置>
本実施形態において、警報器100の通信側発声阻害状態は、デフォルト設定に加えて又はデフォルト設定の代わりに、第1処理装置10の作用によりもたらされてもよい。例えば、第1処理装置10が、通信側発声阻害状態をもたらす阻害措置として、第2処理装置20から出力装置40に送られる発声指示I2の出力装置40への到達防止措置を講じてもよい。この点に関し、
図1の警報器100において切り替え手段30の制御端30cは第1処理装置10に接続されている。第1処理装置10からの制御に従って第2処理装置20と出力装置40との間の導通状態と非導通状態とが切り替えられる。第1処理装置10は、制御端30cに所定の制御信号Scを送って一端30aと他端30bとの間を非導通状態へと制御することができる。従って第1処理装置10は、切り替え手段30を用いて、出力装置40への発声指示I2の到達を防止することができ、もって警報器100を通信側発声阻害状態にすることができる。このように第1処理装置10は、通信側発声阻害状態をもたらす阻害措置として、切り替え手段30を用いて出力装置40への発声指示I2の到達防止措置を講じてもよい。
【0045】
また、第1処理装置10は、警報器100を通信側発声阻害状態にするために、発声指示I2を出力装置40に送らないよう第2処理装置20を制御するように構成されていてもよい。すなわち、第2処理装置20は、第1処理装置10から特に指示がないときには、第1処理装置10から独立して自身の制御プログラムに従って独自に動作可能ではあるものの、第1処理装置10から特定の指示がある場合には、その指示に従って動作するように構成されていてもよい。
【0046】
そして、本実施形態の警報器100において第1処理装置10は、警報器100を通信側発声阻害状態にするときに、第2処理装置20による発声指示I2の禁止指示I3を第2処理装置20に送出するように構成されていてもよい。禁止指示I3の態様は、特に限定されないが、一例として、任意の電気信号であり得る。例えば、信号レベル、振幅、及び/又は、周波数などについて予め定められた特定の値や変化パターンを有する信号が、禁止指示I3として、第1処理装置10から第2処理装置20に送られてもよい。禁止指示I3を受けると、第2処理装置20は、発声指示I2の送出を停止するか、発声指示I2の送出を始めない。すなわち、警報器100を通信側発声阻害状態にすることができる。
【0047】
なお、第1処理装置10は、警報器100を通信側発声阻害状態にする間、禁止指示I3の送出を継続してもよい。その場合、第2処理装置20は、禁止指示I3の受領中、発声指示I2を送出しないように構成される。また、第1処理装置10は、警報器100を通信側発声阻害状態にするときに、禁止指示I3を送出し、その後、通信側発声阻害状態を解除するときに、発声を許容することを示す許可通知を第2処理装置20に送出してもよい。その場合、第2処理装置20は、禁止指示I3の受領から許可通知の受領までの間、発声指示I2を送出しないように構成される。
【0048】
このように実施形態の警報器において第1処理装置10は、一例として、警報器100を通信側発声阻害状態にするために、第2処理装置20による発声を禁止する禁止指示I3を第2処理装置20に送出してもよい。例えば、切り替え手段30のような到達防止手段の不具合により到達防止措置が不能な場合でも、警報器100を通信側発声阻害状態にすることができる。また、第1処理装置10は、他の例として、警報器100を通信側発声阻害状態にするために、前述した切り替え手段30のような到達防止手段を用いて、出力装置40への発声指示I2の到達防止措置を講じてもよい。例えば第2処理装置20の不具合により、第1処理装置10による第2処理装置20の制御が不能な状態でも、警報器100を通信側発声阻害状態にすることができる。第1処理装置10は、これら第2処理装置20からの信号による発声の阻害措置のうちの少なくとも一つを行って、通信側発声阻害状態をもたらすように構成されていてもよい。
【0049】
ここで、第1処理装置10が、禁止指示I3の送出と、出力装置40への発声指示I2の到達防止措置との両方を行うと、以下に述べるように、警報器100を、より確実に通信側発声阻害状態にすることができる。例えば、プログラムによってソフト的に第2処理装置20が禁止指示I3に従うように構成されていても、例えばハードウェア上の不具合によって、禁止指示I3が第2処理装置20に認識されないことも考えられる。この場合、禁止指示I3が送られているにも関わらず、発声指示I2が出力装置40に送られてしまうことも起こり得る。しかし、例えば切り替え手段30などで発声指示I2の到達防止措置が講じられていると、出力装置40への発声指示I2の到達が防止される。そのため、万一、第2処理装置20による発声指示I2の送出を禁止指示I3で阻止できなくても、警報器100を通信側発声阻害状態にすることができる。従って、通信に基づく音声に阻害されることなく、警報のような検知情報に基づく音声を、迅速且つ適切にユーザーなどに認知させることができる。
【0050】
<発声指示の到達防止手段の他の例>
出力装置40への発声指示I2の到達は、上述したような、第2処理装置20と出力装置40との間の導通状態(電気抵抗値)を切り替える回路とは異なる構成の回路によって防止されてもよい。例えば、出力装置40への発声指示I2の到達は、出力装置40への信号の入力を不能にする回路によって防止されてもよい。
図2には、出力装置40への信号の入力を不能にする回路の例である、出力装置40の入力の接地回路31が示されている。
【0051】
接地回路31は、トランジスタTと電気抵抗Rとを含んでいる。接地回路31は、
図1の切り替え手段30の代わりに配置され得る。すなわち、接地回路31の端子31aが第2処理装置20に、端子31bが出力装置40に、そして端子31cが第1処理装置10に、それぞれ接続される。そして、第1処理装置10によってトランジスタTのゲート電流が制御される。すなわち、第1処理装置10は、検知手段50で取得される検知情報に基づく発報を行うときには、トランジスタTをオンさせる電流をトランジスタTのゲートに供給する。トランジスタTがオン状態となって、トランジスタTのコレクタ、すなわち端子31bがGNDに電気的に接続されるので、出力装置40への発声指示I2の到達が防止される。
【0052】
出力装置40への発声指示I2の到達は、さらに他の方法によって防止されてもよい。例えば、増幅回路42(
図1参照)が、第1処理装置10及び第2処理装置20それぞれについて別個に設けられ、第2処理装置20用の増幅回路42が出力装置40と別個に設けられてもよい。そして、第1処理装置10が、警報器100を通信側発声阻害状態にするときに、第2処理装置20用の増幅回路42への電源電圧の供給を遮断するように構成されてもよい。
【0053】
<検知情報に基づく発声の優先性>
上記の通り、本実施形態の警報器100は、検知情報に基づく音声を発しないときに第2処理装置20から発声通知N21が第1処理装置10に送られると、第2処理装置20による発声が可能な状態に移行する。しかし警報器100が検知情報に基づく音声を発するとき又は発しているときに発声通知N21が第1処理装置10に送られる場合には、通信側発声阻害状態が継続される。例えば、発声通知N21が第1処理装置10において無視されるか、有効なものとして認識されず、警報器100を通信側発声阻害状態にするための措置が継続される。例えば、第2処理装置20への禁止指示I3の送出や、切り替え手段30や接地回路31を用いた、出力装置40への発声指示I2の到達防止措置が継続される。よって、通信側発声阻害状態が維持される。従って、検知情報に基づく音声が、通信に基づく音声で阻害されることなくユーザーなどに聴取され易い状態で発せられる。
【0054】
また、本実施形態の警報器100は、好ましくは、第2処理装置20の制御による音声を発しているときに検知情報に基づく音声を発するときは、通信側発声阻害状態へと移行するように構成される。すなわち、警報器100は、検知情報に基づく音声を発するときは、第2処理装置20の制御による音声の発声中であっても通信側発声阻害状態に移行してもよい。第2処理装置20の制御により発声中の音声は、通信側発声阻害状態への移行により途絶する。その状態で検知情報に基づく音声が発せられるので、ユーザーなどによる検知情報に基づく音声の聴取を容易にすることができる。
【0055】
<警報器を通信側発声阻害状態にする措置と各音声発声の処理フローの例>
図3には、実施形態の警報器における検知情報に基づく音声及び受信情報に基づく音声それぞれの発声、並びに通信側発声阻害状態への移行に関する処理フローの一例が示されている。
図3を参照して、各音声の発声に関連する各処理装置での処理手順や、それに伴う警報器の状態の推移が、
図1の警報器100を例に用いて説明される。
図3(及び、後に参照される
図4)は、第1処理装置10が、通信側発声阻害状態をもたらす措置を講じる例を示している。なお、
図3及び
図4において、二点鎖線L1から左側には第1処理装置10側の処理が示され、右側には第2処理装置20側の処理や状態が示されている。
【0056】
ステップS11で周囲環境の監視が開始され、一方、ステップS21で外部機器との通信が開始される。第1処理装置10は、周囲環境の開始と共に、又は、検知情報に基づく音声の発声前の任意の時機に、警報器100を通信側発声阻害状態にする措置を講じる(ステップS12)。例えば第1処理装置10は、第2処理装置20に禁止指示I3(
図1参照)を送出する、及び/又は、切り替え手段30などを用いて出力装置40への発声指示I2の到達防止措置を講じる。そのため、警報器100が通信側発声阻害状態となり、第2処理装置20側は発声不能状態となる(状態C21)。警報器100が通信側発声阻害状態にある間にガス漏れなどの音声で報知すべき状況が検知されると(ステップS13)、警報などの検知情報に基づく音声が出力装置40から発せられる(ステップS14)。その後、警報などが発せられるべき状態から周囲環境が復旧したり、ユーザーによる警報の停止操作などが行われたりすると、検知情報に基づく音声の発声が終了する(ステップS15)。警報器100は、通信側発声阻害状態のまま周囲環境の監視を継続する。
【0057】
その後、通信部2(
図1参照)において音声で報知すべき情報が受信されると(ステップS22)、第2処理装置20は、発声通知N21(
図1参照)を第1処理装置10に送って、受信情報に基づく音声を発声することを第1処理装置10に通知する(ステップS23)。発声通知を受信した第1処理装置10は、検知情報に基づく音声の発声中でないため、通信側発声阻害措置を終了する(ステップS16)。例えば第1処理装置10は、第2処理装置20への禁止指示I3の送出を停止する、及び/又は、切り替え手段30などを用いた出力装置40への発声指示I2の到達防止措置を終了する。そのため、警報器100は、第2処理装置20の制御による発声が可能な状態に移行し、発声が可能になった第2処理装置20側では、受信情報に基づく音声が発せられる(ステップS24)。
【0058】
その後、受信情報に基づく一連の音声の発声が終了すると(ステップS25)、
図3の例では、第2処理装置20が、発声終了を知らせる発声終了通知のような適切な信号の送出により第1処理装置10に発声終了を通知する(ステップS26)。受信情報に基づく音声の発声終了を受けた第1処理装置10は、禁止指示I3の送出や発声指示I2の到達防止措置などによる、警報器100を通信側発声阻害状態にする措置を再開する(ステップS18)。
【0059】
図4には、実施形態の警報器における各音声の発声及び通信側発声阻害状態への移行に関する処理フローの他の例が示されている。
図4は、検知情報に基づく音声の発声中に第2処理装置20から発声通知が第1処理装置に送られる場合、及び、受信情報に基づく音声の発声中に、警報などを発すべき状況が検知される場合に、各処理装置が行う処理を例示している。
図4に示される例は、ステップS141、ステップS161、ステップS171~174、ステップS27、並びに状態C11、C22及びC23が示されている点で、
図3に示される例と異なっている。これら以外の
図3に示される処理フローの例の各ステップと同様のステップについては、
図3に付された符号と同様の符号が
図4において付され、それら各ステップについての繰り返しとなる説明は省略される。
【0060】
図4の例では、通信側発声阻害措置(ステップS12)により第2処理装置20側が発声不能な状態(状態C21)にあって検知情報に基づく音声が発せられている(ステップS14)ときに、通信部2において音声で報知すべき情報が受信される(ステップS22)。第2処理装置20は、発声通知の送出により、音声を発することを第1処理装置10に通知する(ステップS23)。しかし、第1処理装置10は、検知情報に基づく音声を発声中なので、通信側発声阻害措置を継続する(状態C11)。第1処理装置10による阻害措置が継続されるので、第2処理装置20側では発声不能状態が継続する(状態C22)。そのため、警報などの検知情報に基づく音声を、受信情報に基づく音声に阻害されずに発し続けることができる。
【0061】
図4の例において第1処理装置10は、通信側発声阻害措置を継続することを第2処理装置20に通知する(ステップS141)。そのため、第2処理装置20は、受信情報に基づく音声が発せられていないことを把握することができる。第2処理装置20は、通信側発声阻害状態解消後の発声に備えて、通信側発声阻害状態中に発せられなかった音声に関する情報を、内部又は外部の記憶装置(図示せず)などに記憶させることができる。
【0062】
その後、検知情報に基づく音声の発声が終了すると(ステップS15)、第1処理装置10は、通信側発声阻害措置を終了し、
図4の例では、通信側発声阻害措置の終了を、第2処理装置20に通知する(ステップS161)。通信側発声阻害措置が終了するので、第2処理装置20の制御による発声が可能になり、受信情報に基づく音声の発声が開始される(ステップS24)。このとき、第2処理装置20は、一例として、通信側発声阻害措置が終了した時点で受信中の情報に基づく音声から出力装置40に音声を発しさせる。他の例として第2処理装置20は、前述したように記憶装置に記憶させた情報を用いて、ステップS22で受信し始めた情報に基づく音声を最初から出力装置40に発しさせてもよい。
【0063】
図4の例では、ステップS24で開始された第2処理装置20の制御による受信情報に基づく音声の発声中に、ガス漏れなどの音声で報知すべき状況が、第1処理装置10側で検知される(ステップS171)。この場合、第1処理装置10は、通信側発声阻害措置を講じる(ステップS172)。そのため、警報器100が通信側発声阻害状態に移行する。第2処理装置20側では発声が不能な状態となり(状態C23)、受信情報に基づく発声が途絶する。その状態で、検知情報に基づく音声が発せられる(ステップS173)。そのため、警報などの検知情報に基づく音声を、受信情報に基づく音声に阻害されずに発することができる。
【0064】
図4の例では、ステップS172において、第1処理装置10は、通信側発声阻害措置の開始を第2処理装置20に通知する。第2処理装置20は、受信情報に基づく音声が発せられていないことを把握することができる。第2処理装置20は、その後の通信側発声阻害状態の解消後の発声に備えて、通信側発声阻害状態中に発せられなかった音声に関する情報を、内部又は外部の記憶装置(図示せず)などに記憶させることができる。
【0065】
その後、検知情報に基づく音声の発声が終了すると(ステップS173)、第1処理装置10は、通信側発声阻害措置を終了し、
図4の例では、通信側発声阻害措置の終了を第2処理装置20に通知する(ステップS174)。第2処理装置20の制御による発声が可能になるので、受信情報に基づく音声の発声が再開され、その発声が終了すると、第2処理装置20から第1処理装置10に音声の発声終了が通知される(ステップS27)。このとき、第2処理装置20は、一例として、ステップS174で通信側発声阻害措置が終了した時点で受信中の情報に基づく音声から出力装置40に音声を発しさせる。他の例として第2処理装置20は、前述したように記憶装置に記憶させた情報を用いて、ステップS172の通信側発声阻害措置により発声が途絶えた音声から出力装置40に音声を発しさせてもよい。
【0066】
なお、
図4の例では、上述したように、第1処理装置10による通信側発声阻害措置の継続(ステップS141)、終了(ステップS161及びS174)、並びに開始(ステップS172)が第2処理装置20に通知されているが、これら通知は省略されてもよい。各通知がされなくても、警報器100が通信側発声阻害状態にあれば、第2処理装置20による発声は阻害されるし、警報器100が通信側発声阻害状態になければ、第2処理装置20により受信情報に基づく音声が必要に応じて発せられる。
【0067】
<一実施形態の警報器の他の例>
図5には、本実施形態の警報器の他の例である警報器101が示されている。警報器101は、発声検知手段70を備えている点で、
図1の例の警報器100と異なっている。
図5の警報器101において
図1の警報器100に含まれる構成要素と同様の構成要素には、
図1に付された符号と同じ符号が
図5において付され、それら同様の構成要素についての重複する説明は省略される。
【0068】
発声検知手段70は、第2処理装置20と出力装置40との接続経路CLと、第1処理装置10との間に設けられている。発声検知手段70は、第2処理装置20からの音声の発声指示I2を検知して、検知結果を第1処理装置10に通知する。発声検知手段70は、一例として、
図6に示される回路で構成され得る。
【0069】
図6の例において、発声検知手段70は、コンパレータ71と、基準電圧源72とによって構成されている。コンパレータ71の非反転入力端子は、発声指示I2として音声信号が伝播する接続経路CLに接続される。発声指示I2として音声信号が送られる時には、コンパレータ71の非反転入力端子にも、発声指示I2の音声信号が入力される。一方、コンパレータ71の反転入力端子には、基準電圧源72で生成される基準電圧V
REFが印加される。コンパレータ71の出力は、発声検知手段70の出力として機能し、第1処理装置10に検知結果を送る。基準電圧源72は、発声指示I2が出力されていないときの接続経路CLの電圧値よりも大きく、且つ、発声指示I2として出力される音声信号の電圧値を確実に下回る大きさの基準電圧V
REFを生成する。従って、発声検知手段70の出力は、発声指示I2が送られていない間はロウレベルを出力し、発声指示I2が送られるとハイレベルを出力する。
【0070】
図5の例の警報器101では、先に参照した
図3のステップS26や
図4のステップS27において、第2処理装置20から第1処理装置10に発声の終了通知が送られなくても、第1処理装置10は、受信情報に基づく音声の発声終了を把握することができる。すなわち、第1処理装置10は、発声検知手段70から送られる信号によって、発声指示I2の送信状態を知ることができるので、受信情報に基づく音声の発声終了を知ることができる。従って、第2処理装置20の処理負荷が軽減されることがある。
【0071】
<実施形態の警報器の制御方法>
本発明の実施形態の警報器の制御方法は、通信機能を有する警報器において音声の発声を制御する方法である。実施形態の制御方法によって発声が制御される警報器は、先に参照した
図1に示される警報器100のように、少なくとも火災若しくはガスのいずれか一方を検知可能である検知手段50と、検知手段50で取得される検知情報に基づいて発報する報知機能を制御する第1処理装置10と、外部機器Eとの通信を制御する第2処理装置20と、検知情報に基づく音声、及び第2処理装置20の制御により通信による受信情報に基づく音声を発する出力装置40と、を少なくとも備えている。
【0072】
実施形態の警報器の制御方法は、
図3又は
図4を参照して説明した各ステップで行われる処理を含んでいてもよく、少なくとも、警報器100のような制御対象の警報器を、第2処理装置20からの信号による出力装置40からの発声が妨げられる阻害状態(通信側発声阻害状態)にすることと、第2処理装置20から音声の発声通知N21を第1処理装置10に送らせることと、制御対象の警報器を第2処理装置20の制御による発声が可能な状態にすることと、を含んでいる。
【0073】
具体的には、実施形態の警報器の制御方法では、少なくとも第1処理装置10の制御により検知情報に基づく発報が行われるときには、警報器100のような制御対象の警報器は、通信側発声阻害状態にされる。また、第2処理装置20が受信情報に基づく音声を出力装置40に発しさせるときには、第2処理装置20に発声通知N21を第1処理装置10へと送らせる。そして、第1処理装置10の制御により検知情報に基づく音声を出力装置40が発しないときに発声通知N21が第1処理装置10に送られると、警報器100のような制御対象の警報器を、例えば通信側発声阻害状態から、第2処理装置20の制御による発声が可能な状態へと移行させる。実施形態の警報器の制御方法によれば、このような処理又はステップを含んでいるので、火災若しくはガスの少なくとも一方に関する警報を発する警報器において、迅速且つ適切に警報を発することができ、その警報の発報を阻害しない時機に、通信により得られる情報に基づく音声も発することができる。
【0074】
なお、実施形態の警報器の制御方法において、
図1に示される警報器100のような制御対象の警報器を通信側発声阻害状態にすることは、第1処理装置10に、発声の禁止指示I3を第2処理装置20に送出させること、及び、第2処理装置20から出力装置40に送られる発声指示I2の出力装置40への到達防止措置を講じさせること、のうちの少なくとも一つを含み得る。例えば、禁止指示I3の送出と、出力装置40への発声指示I2の到達防止措置との両方を行うことによって、より確実に、制御対象の警報器を通信側発声阻害状態にすることができる。
【0075】
また、実施形態の警報器の制御方法では、好ましくは、検知情報に基づく音声を発するとき又は発しているときに発声通知N21が第1処理装置10に送られる場合には、制御対象の警報器に通信側発声阻害状態を継続させる。例えば、第1処理装置10に、第2処理装置20への禁止指示I3の送出、及び/又は、出力装置40への発声指示I2の到達防止措置を継続させる。そうすることで、検知情報に基づく音声を、通信に基づく音声で阻害されることなくユーザーなどに聴取され易い状態で発することができる。
【0076】
また、実施形態の警報器の制御方法では、好ましくは、第2処理装置20の制御による音声が発せられているときに検知情報に基づく音声を発するときは、制御対象の警報器を通信側発声阻害状態へと移行させる。例えば、第1処理装置10に、第2処理装置20への禁止指示I3の送出、及び/又は、出力装置40への発声指示I2の到達防止措置を開始させる。すなわち、実施形態の警報器の制御方法では、検知情報に基づく音声を発するときは、受信情報に基づく音声の発声を停止させる。その状態で、検知情報に基づく音声を出力装置40に発しさせる。そうすることで、ユーザーなどによる検知情報に基づく音声の聴取を容易にすることができる。
【0077】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0078】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、実施形態の警報器の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、警報器の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動及びフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0079】
100、101 警報器
1 警報部
2 通信部
10 第1処理装置
20 第2処理装置
30 切り替え手段
40 出力装置
41 音声発生装置
42 増幅回路
50 検知手段
60 筐体
CL 伝達経路
E 外部機器
I1 検知情報に基づく音声の発声指示
I2 受信情報に基づく音声の発声指示
I3 禁止指示
N21 発声通知
【要約】
【課題】迅速且つ適切な警報の発報を阻害せずに通信に基づく音声を発し得る警報器、及びその制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態の警報器100は、少なくとも火災若しくはガスの一方を検知可能な検知手段50と、検知情報に基づいて発報する報知機能を制御する第1処理装置10と、通信を制御する第2処理装置20と、検知情報に基づく音声及び受信情報に基づく音声を発する出力装置40と、を備えている。警報器100は、検知情報に基づく発報が行われるときに、第2処理装置20からの信号による出力装置40からの発声が妨げられる状態となり得るように構成され、検知情報に基づく音声を発しないときに第2処理装置20から第1処理装置10に発声通知N21が送られると、第2処理装置20からの信号による発声が妨げられる状態から発声が可能な状態に移行するように構成されている。
【選択図】
図1