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特許7439338プローブ、プローブカード、およびプローブの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】プローブ、プローブカード、およびプローブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20240219BHJP
   G01R 1/073 20060101ALI20240219BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20240219BHJP
【FI】
G01R1/067 Z
G01R1/073 E
G01R31/26 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023500355
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022016176
【審査請求日】2023-01-05
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232405
【氏名又は名称】日本電子材料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 親臣
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-078371(JP,A)
【文献】特開2010-286252(JP,A)
【文献】特開昭60-080772(JP,A)
【文献】特開平11-337621(JP,A)
【文献】特開2017-122686(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0001613(US,A1)
【文献】特開昭58-162045(JP,A)
【文献】特開2006-210946(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101650375(CN,A)
【文献】米国特許第09121868(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する第1金属からなる第1金属部と、前記第1金属部よりも硬質の導電性を有する第2金属からなり、前記第1金属部に埋め込まれ、前記第1金属部の先端から突出して検査対象に接触するコンタクト部を有する板状の第2金属部とを備え、前記コンタクト部は、前記第2金属部の突出方向に沿った第1の断面の先端部の輪郭が第1の放物線状であり、前記突出方向に沿い、かつ、前記第1の断面に直交する第2の断面の先端部の輪郭が前記第1の放物線状とは異なる第2の放物線状である、扁平かつ先鋭化された舌状であることを特徴とするプローブ。
【請求項2】
前記第1金属部に埋め込まれている第2金属部の端部は、前記突出方向に対して垂直な断面の輪郭が矩形であることを特徴とする請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記矩形の長辺が10μm以下であり、短辺が5μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記コンタクト部の前記第1の放物線状の頂点の第1の曲率半径が、前記第2の放物線状の頂点の第2の曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のプローブ。
【請求項5】
前記第2の曲率半径と前記第1の曲率半径との比率は、1:2から1:4の範囲内であることを特徴とする請求項4に記載のプローブ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプローブを複数備えたことを特徴とするプローブカード。
【請求項7】
前記第1の断面の幅方向は、前記プローブの予め定められた座屈方向であることを特徴とする請求項4に記載のプローブカード。
【請求項8】
導電性を有する第1金属からなる第1金属部の一端側に、前記第1金属部よりも硬質の導電性を有する第2金属からなる第2金属部が板状に埋め込まれたプローブ中間体を形成するプローブ中間体形成工程と、前記プローブ中間体の前記第1金属部の一端側を研磨材に突き刺し、前記第2金属部を前記第1金属部から突出させ、突出した先端を扁平かつ先鋭化された舌状で、前記第2金属部の突出方向に沿った第1の断面の先端部の輪郭が第1の放物線状であり、前記突出方向に沿い、かつ、前記第1の断面に直交する第2の断面の先端部の輪郭が前記第1の放物線状とは異なる第2の放物線状に研磨する研磨工程とを有することを特徴とするプローブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、プローブ、プローブカード、およびプローブの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プローブカードは、半導体デバイスの電気的特性を検査する検査装置の部品である。プローブカードは、半導体デバイスの電極にそれぞれ接触させる多数のプローブを備えている。半導体デバイスの特性検査は、プローブカードに半導体ウエハを近づけてプローブのコンタクト部を半導体デバイス上の電極に接触させ、プローブを介してテスタ装置と半導体デバイスを導通させて行われる。
【0003】
近年、半導体デバイスの微細化に伴って、その電極のサイズも小さくなっている。電極のサイズの微細化に対応して、プローブおよびプローブのコンタクト部をできるだけ微細に製造する必要がある。また、コンタクト部には、耐摩耗性も要求される。
【0004】
そこで、プローブ基板の回路への接続端を有し、靭性を示す第1の金属材料で形成された針本体部と、針先を有する針先部であって、前記針本体部の前記第1の金属材料よりも高い硬度を示す第2の金属材料で構成され、前記針本体部に連続する針先部とを備え、前記針本体部及び前記針先部に、前記針先から前記接続単に至る同一金属材料から成る電流経路を形成する技術が提案されている。この技術では、コンタクト部に硬い金属を用いて先端の耐久性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-246116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたプローブは、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術で製造されている。この場合、製造装置の制約から、金属膜の積層方向に対して垂直方向の幅は、自ずと狭小化に限界があり、10μmよりも小さくすることが困難であった。その結果、さらに微細化されたプローブと、その鋭利なコンタクト部の先端形状を形成することも困難であるという課題があった。
【0007】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、さらなるプローブの微細化と、半導体デバイスの電極との接触を繰り返しても先鋭化した先端形状を維持でき、接触性能が高く、耐久性能に優れたプローブ、プローブカード、およびプローブの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示されるプローブは、導電性を有する第1金属からなる第1金属部と、前記第1金属部よりも硬質の導電性を有する第2金属からなり、前記第1金属部に埋め込まれ、前記第1金属部の先端から突出して検査対象に接触するコンタクト部を有する板状の第2金属部とを備え、前記コンタクト部は、前記第2金属部の突出方向に沿った第1の断面の先端部の輪郭が第1の放物線状であり、前記突出方向に沿い、かつ、前記第1の断面に直交する第2の断面の先端部の輪郭が前記第1の放物線状とは異なる第2の放物線状である、扁平かつ先鋭化された舌状であることを特徴とするものである。
また、本願に開示されるプローブカードは、前記プローブを複数備えるものである。
また、本願に開示されるプローブの製造方法は、導電性を有する第1金属からなる第1金属部の一端側に、前記第1金属部よりも硬質の導電性を有する第2金属からなる第2金属部が板状に埋め込まれたプローブ中間体を形成するプローブ中間体形成工程と、前記プローブ中間体の前記第1金属部の一端側を研磨材に突き刺し、前記第2金属部を前記第1金属部から突出させ、突出した先端を扁平かつ先鋭化された舌状で、前記第2金属部の突出方向に沿った第1の断面の先端部の輪郭が第1の放物線状であり、前記突出方向に沿い、かつ、前記第1の断面に直交する第2の断面の先端部の輪郭が前記第1の放物線状とは異なる第2の放物線状に研磨する研磨工程とを有することを特徴とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示されるプローブ、プローブカード、およびプローブの製造方法によれば、半導体ウエハに形成された半導体デバイスの電極との接触を繰り返しても先鋭化した先端形状を維持でき、電極との接触時の接触性能が高く、耐久性能に優れたプローブ、プローブカード、およびプローブの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るプローブカードによる半導体デバイスの検査状態を概略的に示す図である。
図2】実施の形態1に係るプローブのコンタクト部を含む先端部の斜視図である。
図3図3Aは、図2のA-A断面図である。図3Bは、図2のB-B断面図である。図3Cは、図3Aの要部拡大図である。図3Dは、図3Bの要部拡大図である。
図4図4Aは、プローブとなるプローブ中間体を、硬質部と軟質部からなる部分において長手方向に対して垂直に切断した断面図である。図4Bは、図4AのD-D断面図である。図4Cは、図4AのC-C断面図である。
図5図5Aは、第1レジスト層の構成を示す断面模式図である。図5Bは、第1メッキ層形成工程を示す断面模式図である。図5Cは、第2レジスト層の構成を示す断面模式図である。図5Dは、第2レジスト層の平面模式図である。図5Eは、第2メッキ層形成工程を示す断面模式図である。
図6図6Aは、第1、第2レジスト層を除去した状態を示す断面模式図である。図6Bは、第3レジスト層の構成を示す断面模式図である。図6Cは、第3メッキ層形成工程を示す断面模式図である。図6Dは、第3レジスト層を除去して完成したプローブ中間体の断面模式図である。
図7】実施の形態1に係るプローブ中間体に対する研磨工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、実施の形態1に係るプローブ、プローブカード、およびプローブの製造方法を、図を用いて説明する。なお、本明細書においては、図1の紙面上方を「上」、同紙面下方を「下」として説明する。すなわち、プローブカードから見て、検査対象である半導体デバイス側を「下」とする。
図1は、実施の形態1に係るプローブカード100による半導体デバイスの検査状態を概略的に示す図である。
【0012】
プローブカード100は、半導体ウエハWに形成された半導体デバイスの電気的特性を検査するために用いられる装置である。プローブカード100は、半導体ウエハW上に形成された半導体デバイス上の電極Cにそれぞれ接触させる多数のプローブ20を備えている。半導体デバイスの特性検査は、プローブカード100を半導体ウエハWに近づけて、プローブ20の先端を半導体デバイス上の電極Cに接触させ、プローブ20を介して図示しないテスタ装置とプローブカード100の配線基板14のテスタ接続電極TCを導通させて行われる。
【0013】
プローブカード100は、中空のフレーム10と、フレーム10の上端に取り付けた上部ガイド11と、フレーム10の下端に取り付けた下部ガイド12と、上部ガイド11を固定する固定板13と、配線基板14とを備える。
【0014】
上部ガイド11は、上下方向に貫通する複数のガイド孔11Hを有し、上部ガイド11の下方に設けられた下部ガイド12も、上下方向に貫通する複数のガイド孔12Hを有する。上部ガイド11に設けた複数のガイド孔11H群の上方は、固定板13に設けた開口部13Hとなっている。固定板13の上面には、配線基板14が配置されている。配線基板14は、下面にプローブ20の上端と接触する複数のプローブ接続パッド14Pを備える。
【0015】
そして、複数のプローブ20が、それぞれガイド孔12Hおよびガイド孔11H内を通るように挿入されてガイドされる。プローブ20は、検査対象物(半導体デバイス)に対し垂直に配置される垂直型プローブである。
【0016】
図2は、プローブ20のコンタクト部20cを含む先端部の斜視図である。
プローブ20の長手方向Xに対して垂直に切断した先端部を、断面側から見た斜視図である。
図3Aは、図2のA-A断面図であり、プローブ20の下部を、その中心軸を通る平面で、座屈方向Z(第1方向)に対して垂直な方向Y(第2方向)に切断した断面図である。
図3Bは、図2のB-B断面図であり、プローブ20の下部を、その中心軸を通る平面で、座屈方向Zに切断した断面図である。
図3A図3Bは、プローブ20のコンタクト部20c側の一部を描いている。
図3Cは、図3Aの要部拡大図である。図3Dは、図3Bの要部拡大図である。
図1図3に示すように、プローブ20は、導電性の金属からなり、長手方向X(電極Cへの接触方向でもある)に対して垂直な断面は、下側先端のコンタクト部20c近傍を除いて矩形であり、細長い形状をしている。中央部は、湾曲しており、上部と下部は、直線状に上下方向に延びている。湾曲した中央部が、弾性変形部20mである。プローブ20の下端(一端)に、下方に向かって尖ったコンタクト部20cを備える。そして、上端(他端)に端子部20tが形成されている。
【0017】
コンタクト部20cは、検査対象物に当接させる当接部である。また、端子部20tは、プローブ20の上端部に設けられており、検査時において配線基板14のプローブ接続パッド14Pに圧接される。弾性変形部20mは、いわゆるオーバードライブ時に、その長手方向Xへの圧縮力が加えられることにより、容易に座屈変形する部分である。オーバードライブ時には、検査対象物からの反力に応じて、弾性変形部20mが座屈方向Zに座屈変形し、コンタクト部20cが、端子部20t側に後退する。座屈方向Zは、図1の紙面左右方向とする。
【0018】
プローブ20の下部先端から予め定められた範囲Lでは、プローブ20は、硬度の異なる2種類の導電性を有する金属によって構成されている。図2に示す硬質部K(第2金属)が、硬質の金属膜からなる部分であり、軟質部N(第1金属)が、硬質部Kよりも柔らかい金属からなる部分である。そして、図2に示すように、硬質部Kは、軟質部Nの中にプローブ20の長手方向Xに埋め込まれており、先端のコンタクト部20cを含む硬質部Kが、軟質部Nから下方に突出して露出している。範囲L以外の部分は、全て軟質部Nで構成されている。
【0019】
図3A図3Dに示すように、コンタクト部20cは、先端が各断面において放物線を描いている。そして、コンタクト部20cの頂点の曲率半径は、座屈方向Zに切断した断面における曲率半径R2の方が、座屈方向Zに対して垂直な方向Yに切断した断面における曲率半径R1よりも大きい。R1:R2の比率は、1:2~1:4程度が好ましい。
【0020】
ところで、半導体デバイスの電極Cは、酸化皮膜に覆われている場合がある。半導体デバイスの特性検査において、プローブ20は、オーバードライブ時に座屈方向Zに座屈し、コンタクト部20cは、弾性変形部20mから反力を受けることになる。座屈方向Zとの関係から、プローブ20のコンタクト部20cは、座屈方向Zに長く、座屈方向Zに対して垂直な方向Yには短く、半導体デバイス上の電極Cに接触させる方が、電極Cに形成された酸化皮膜を削って、十分に電気的な接触を確保できる。このような理由から、コンタクト部20cの形状を扁平かつ、先鋭化された舌状に形成し、座屈方向Zに、より長く、鋭く電極Cに接触するように配置する。
【0021】
プローブ20は、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて作製される(プローブ中間体形成工程)。MEMS技術は、フォトリソグラフィ技術及び犠牲層エッチング技術を利用して、微細な立体的構造物を作成する技術である。フォトリソグラフィ技術は、半導体製造工程などで利用されるフォトレジストを用いた微細パターンの加工技術である。また、犠牲層エッチング技術は、犠牲層と呼ばれる下層を形成し、その上に構造物を構成する層を形成した後、犠牲層のみをエッチングによって除去することにより、立体的な構造物を作成する技術である。
【0022】
各層の形成処理には、周知のめっき技術を利用することができる。例えば、陰極としての基板と、陽極としての金属片とを電解液に浸し、両電極間に電圧を印加することにより、電解液中の金属イオンを基板表面に付着させることができる。この様な処理は、電気めっき処理と呼ばれ、基板を電解液に浸すウエットプロセスであることから、めっき処理後には、乾燥処理が行われプローブ中間体を得る。また、この乾燥処理後には、後述する研磨処理によって下部先端となる部分を研磨し(研磨工程)、コンタクト部20cを形成する。
【0023】
図4A図4Cは、それぞれ、研磨処理前のプローブ中間体20Bの断面図である。プローブ中間体20Bは、上述のMEMS技術を利用して製造する。プローブ中間体20Bは、コンタクト部20cの研磨処理前の金属積層体である。
図4Aは、プローブ20となるプローブ中間体20Bを、硬質部Kと軟質部Nからなる部分において長手方向Xに対して垂直に切断した断面図である。
図4Bは、図4AのD-D断面図である。図4Cは、図4AのC-C断面図である。
【0024】
上述のMEMS技術を用いて、プローブ20の一端において、予め定められた長さの硬質部Kが、軟質部Nの中に、長手方向Xに埋め込まれた2種類の導電性金属の積層体としてのプローブ中間体20Bを形成する。このとき、プローブ中間体20Bの外観は、細長い直方体であり、長手方向Xに対して垂直な断面は、どの部分も矩形である。硬質部Kの端面の形状も同様に矩形であり、当該矩形の座屈方向Zの辺の長さが、座屈方向Zに対して垂直な辺の長さよりも長い。長辺と短辺の比率は、2:1程度であり、本実施の形態では、長辺を10μm、短辺を5μmとしている。
【0025】
プローブ中間体20Bのうち、硬質部Kの材料としては、ロジウム(Rh)を用いる。また、軟質部Nの材料としてはニッケル合金等を用いる。
【0026】
図5図6は、プローブ中間体20Bの製造工程を示す断面模式図である。
図5Aは、第1レジスト層RE1の配置を示す図である。
プローブ中間体20Bの製造工程の説明において、レジスト層というときは、現像処理によって硬化させ、余剰部分が除去されたレジスト層をいうものとする。また、プローブ中間体20Bの製造工程においては、上述の座屈方向Zに対して垂直な方向Yが金属メッキの積層方向となる。
【0027】
まず、図5Aに示すように、ステンレス製の平坦な表面を有する基台50の上に、図4Cに示すプローブ中間体20Bの外周と同形状に囲む、第1レジスト層RE1を形成する(第1レジスト層形成工程)。次に、第1レジスト層RE1の開口部に、軟質部Nとなる第1金属によって、第1メッキ層M1を形成する(第1メッキ層形成工程)。
【0028】
図5Cは、第2レジスト層RE2の構成を示す断面模式図である。図5Dは、第2レジスト層RE2の平面模式図である。次に、第1メッキ層M1上に硬質部Kとなる第2メッキ層M2を形成する範囲だけが開口し、その他の第1メッキ層M1部分を覆う、第2レジスト層RE2を形成する(第2レジスト層形成工程)。
【0029】
図5Eは、第2メッキ層M2が形成された状態を示す図である。次に、図5Eに示すように、第2レジスト層RE2の開口部に硬質部Kとなる第2金属によって、第2メッキ層M2を形成する(第2メッキ層形成工程)。第2メッキ層M2の膜厚は5μm程度とし、上述の座屈方向Zの幅は、10μm程度とする。
【0030】
次に、図6Aに示すように、第1レジスト層RE1および第2レジスト層を除去する(第1、第2レジスト層除去工程)。次に、図6Bに示すように、第1メッキ層M1の周囲を取り囲み、プローブ中間体20Bの積層厚と同じ高さの第3レジスト層RE3を形成する(第3レジスト層形成工程)。次に、図6Cに示すように、第3レジスト層RE3の開口部に第1金属によって第3メッキ層M3を形成する(第3メッキ層形成工程)。このとき、第1メッキ層M1と第3メッキ層M3が一体となる。次に、図6Dに示すように、第3レジスト層を除去する。この結果、軟質部Nの一端に、断面が5μm×10μmの矩形である、薄板状の硬質部Kが埋め込まれたプローブ中間体20Bを得る。
【0031】
次に、プローブ20の研磨工程について説明する。
図7は、プローブ中間体20Bに対する研磨工程を示す概念図である。説明の都合上、図7についても、図4Cと同じ断面を示している。
プローブ中間体20Bは、硬質部Kが埋め込まれた端部を、研磨材30を用いて研磨される。
【0032】
研磨材30は、研磨シートベース31と、その上に形成された研磨シート32を備える。研磨シート32は、ダイヤモンドなどの硬質研磨材粒子32Kが、軟質のバインダ32N内に、均一に分散させられたものである。この研磨材30にプローブ中間体20Bの硬質部Kが埋め込まれた端部を繰り返し突き刺すことによって研磨し、コンタクト部20cが、軟質部Nから長手方向Xに、扁平かつ、先鋭化された舌状に突出すように研磨されたプローブ20を得る。なお、コンタクト部20cとは長手方向Xに反対側の硬質部Kの端部の、長手方向Xに対して垂直な断面は、矩形のままである。
【0033】
図7に示すようにプローブ中間体20Bを研磨材30に突き刺すと、そのストロークによって、先端のコンタクト部20cとなる部分に近い軟質部Nの部分が、より長時間、研磨材30によって研磨される。その結果、プローブ中間体20Bの先端の軟質部Nが、研磨によって全て除去され、埋め込まれていた硬質部Kが露出する。そのまま研磨を続けると、軟質部Nと、露出した硬質部Kとが同時に研磨される。その結果、研磨されて残った軟質部Nから扁平かつ、先鋭化された舌状に研磨された硬質部Kが突出する形状となる。
【0034】
図4Aに示すように、研磨前のプローブ中間体20Bの先端部の、長手方向Xに対して垂直な断面は、座屈方向Zの方が、座屈方向Zに対して垂直な方向Yよりも長い矩形であり、硬質部Kについても同様なので、研磨後のプローブ20のコンタクト部20c側の先端形状は、座屈方向Zから見ても、座屈方向Zに対して垂直な方向Yからみても、その輪郭が放物線状となり、上述のように、座屈方向Zに扁平かつ、先鋭化された舌状となる。
【0035】
実施の形態1に係るプローブ20、プローブカード100、およびプローブ20の製造方法によれば、MEMS技術による微細化の限界幅の硬い第2金属からなる断面矩形の薄板(硬質部K,第2金属部)を、MEMS技術を用いて、第2金属よりも柔らかい第1金属からなる第1金属部(軟質部N)に埋め込んでプローブ中間体を製造する。そして、第2金属部が埋め込まれた側を研磨することによって、先鋭化され、MEMS技術による微細化の限界幅10μmよりも更に微細化された第2金属からなるコンタクト部20cを有するプローブ、プローブピン、およびプローブピンの製造方法を提供できる。
【0036】
また、微細な硬質部Kを軟質部Nで取り囲んで研磨できるので、軟質部Nを硬質部Kの支持部材として利用しつつ、双方を同時に研磨し、先鋭化された硬質部Kからなるコンタクト部20cを形成できる。
【0037】
また、コンタクト部20cは、長手方向Xに対して垂直な断面が矩形ではなく、先端が、扁平かつ、先鋭化された舌状(長手方向Xに対して垂直な断面は楕円形)となるので、半導体デバイスの電極Cとの接触を繰り返しても先鋭化した先端形状を維持でき、半導体デバイスの電極Cとの接触時の接触性能が高く、耐久性能に優れたプローブを提供できる。
【0038】
また、座屈方向Zに対して垂直な方向Yよりも、座屈方向Zにより長く、先鋭化されたコンタクト部20cを半導体デバイスの電極Cに接触させることができるので、プローブ20のオーバードライブ時に、コンタクト部20cによって電極Cの酸化皮膜を削り取り、電極Cとの適切な単位面積当たりの接触面圧を確保できる。
【0039】
また、コンタクト部20cが、先鋭化された舌状であるため、先端が摩耗しても、両側の先鋭化された部分に接触範囲が広がるので耐久性が高い。
【0040】
また、先鋭化されたコンタクト部20cの近傍まで軟質部Nによってプローブ20の長手方向Xに対して垂直な断面の断面積を確保して耐電流性能を確保できるので、耐電流性能と、コンタクト部20cの強度とを両立できる。
接触範囲が広がるので耐久性が高い。
【0041】
また、弾性変形部20mは、硬質部Kよりも柔らかい軟質部Nのみで構成されるので、座屈変形に必要な弾性を確保できる。
【0042】
また、実施の形態1に係るプローブ20の製造方法によれば、MEMS技術によって、硬質部の座屈方向Zの幅、座屈方向Zに対して垂直な方向Yの幅を容易に調整できるので、コンタクト部20cの強度と、上記断面積を自由に調整できる。
【0043】
また、研磨時の上下方向のストローク長、ストローク回数を調整することによって、研磨材30の品質に影響されることなく、プローブ中間体20Bから、正確に同一形状のコンタクト部20cの舌状の形状を形成できるので、精度の高いプローブ20を提供できる。
【0044】
なお、本実施の形態で説明したプローブの先端形状、製造方法は、カンチレバー式のプローブ、プローブカードにも適用できる。この場合、これまで説明した長手方向Xは、プローブのコンタクト部の接触方向と読み替えるとよい。
【0045】
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0046】
10 フレーム、100 プローブカード、11 上部ガイド、11H ガイド孔、12 下部ガイド、12H ガイド孔、13 固定板、13H 開口部、14 配線基板、14P プローブ接続パッド、20 プローブ、20B プローブ中間体、20c コンタクト部、20m 弾性変形部、20t 端子部、30 研磨材、31 研磨シートベース、32 研磨シート、32K 硬質研磨材粒子、32N バインダ、50 基台、C 電極、K 硬質部、N 軟質部、L 範囲、TC テスタ接続電極、W 半導体ウエハ、Z 座屈方向、RE1 第1レジスト層、RE2 第2レジスト層、RE3 第3レジスト層、M1 第1メッキ層、M2 第2メッキ層、M3 第3メッキ層。
【要約】
第1金属部(N)と、板状の第2金属部(K)とからなり、第2金属部(K)は、第1金属部(K)の長手方向Xの一端側に、予め定められた範囲において長手方向(X)に埋め込まれると共に、第1金属部(N)から長手方向(X)に突出し、半導体デバイスの電極に接触させるコンタクト部(20c)を有し、コンタクト部(20c)の長手方向(X)に対して垂直な断面は円形であり、コンタクト部(20c)とは、長手方向(X)に反対側の第2金属部(K)の端部の、長手方向(X)に対して垂直な断面は矩形である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7