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特許7439339シリコーン樹脂と有機ポリマーとの相互侵入網目を含む水性エマルジョン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】シリコーン樹脂と有機ポリマーとの相互侵入網目を含む水性エマルジョン
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20240219BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20240219BHJP
   D06M 15/233 20060101ALI20240219BHJP
   C08L 83/02 20060101ALI20240219BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20240219BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20240219BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C08F2/44 C
D06M15/263
D06M15/233
C08L83/02
C08L33/00
D06M15/643
C08L83/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023504830
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 US2021059433
(87)【国際公開番号】W WO2022173478
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】63/149,422
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ストラック、ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】リュー、イーハン
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-351804(JP,A)
【文献】特開昭64-014286(JP,A)
【文献】特開2006-160880(JP,A)
【文献】国際公開第2006/129670(WO,A1)
【文献】特開2002-332354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 2/00-2/60
D06M 13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性エマルジョンであって、水性連続相と、不連続油相であって、
i)ラジカル重合性官能基を実質的に含まない少なくとも10重量%のMQ樹脂、
ii)少なくとも25重量%のポリオルガノシロキサン、及び
iii)0~150℃のガラス転移温度を有する1~50重量%の有機ポリマーを含む相互侵入網目(IPN)を有する粒子を含む、不連続油相と、を含み、
前記MQ樹脂が、8000~50,000の重量平均分子量を有し、
前記ポリオルガノシロキサンが、Qシロキシ単位を実質的に含まず、及び
前記有機ポリマーが、アクリレートを含むエチレン性不飽和有機モノマーの反応生成物である、水性エマルジョン。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和有機モノマーが、アクリレート及びビニル芳香族を含む、請求項に記載のエマルジョン。
【請求項3】
MQ樹脂対ポリオルガノシロキサンの重量比が、1:0.5~1:5である、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項4】
記ポリオルガノシロキサンが、500~100,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項5】
前記MQ樹脂が、0.7:1を超えるMシロキシ単位対Qシロキシ単位の数の比率を有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項6】
環状シロキサンを実質的に含まないことによって更に特徴付けられる、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項7】
水性連続相及び不連続油相を含む水性エマルジョンを作製する方法であって、
(1)i)ラジカル重合性官能基を実質的に含まないMQ樹脂と、ii)ポリオルガノシロキサンと、iii)アクリレートを含む、エチレン性不飽和有機モノマーと、を含む粒子を含む不連続油相を含む水性エマルジョンを得るか又は調製する工程と、
(2)前記エチレン性不飽和有機モノマーを重合して、前記粒子内に相互侵入網目を形成する工程と、を含み、
前記MQ樹脂が、8000~50,000の重量平均分子量を有し、及び
前記ポリオルガノシロキサンが、Qシロキシ単位を実質的に含まない、
方法。
【請求項8】
前記重合工程が、開始剤を前記エマルジョンに添加する工程と、前記エマルジョンを加熱する工程と、を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
請求項に記載の方法に従ってコーティングされたテキスタイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照:本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2021年2月15日出願の米国仮特許出願第63/149422号の利益を主張する。米国仮特許出願第63/149422号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、シリコーン樹脂と有機ポリマーとの相互侵入網目を有する粒子の不連続油相を含む水性エマルジョンを対象とする。これらのエマルジョンは、撥水性を改善するためにテキスタイルを処理する際に特に有用である。
【背景技術】
【0003】
衣類に使用される布地などのテキスタイルは、撥水性を付与するために一般に処理される。フルオロポリマーは歴史的にそのような処理に使用されてきたが、環境及び健康への懸念がそれらの使用を制限してきた。より最近の努力は、シリコーン(ポリオルガノシロキサン)組成物の使用に焦点を当てている。1つの市販例は、Dow Chemical CompanyからのDOWSIL(商標)IE-8749ブランドのエマルジョンである。この生成物をブロックトイソシアネート架橋剤及びグリコール浸透剤と組み合わせて、配合された仕上げ浴を調製することができ、これをテキスタイルに適用し、高温、例えば、160℃で数分間硬化させる。
【0004】
米国特許出願公開第2019/0375897号には、アミノ変性シリコーン、シリコーン樹脂及び多官能性イソシアネート化合物を含む別のシリコーン系撥水剤が記載されている。
【0005】
水性シリコーンエマルジョンと有機結合剤との組み合わせも記載されている。例えば、米国特許出願公開第2019/0382581号には、有機結合剤とともにシロキサン担体を有するシリコーン樹脂の粒子を含む水性エマルションが記載されている。フィルム及びコーティングにおける使用に向けられているが、この参考文献は、皮革及びテキスタイル用途への現在の参考文献を含む。同様に、米国特許出願公開第2020/0332148号には、アミノ変性シリコーン、シリコーン樹脂及びポリオルガノシロキサン(例えば、ポリジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロ-ペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど)を含む、テキスタイルを処理するための水性エマルジョンが記載されている。この参考文献は、ポリ(メタ)アクリル酸エステルの包含を更に記載している。両方の刊行物において、無機ポリマー(シリコーン樹脂及びポリオルガノシロキサン)及び有機ポリマーは、エマルジョン内に別個の粒子として存在する。これらの種類のエマルジョンは、耐久性及び柔軟性の所望の組み合わせを提供することができなかった。業界は、改善された撥水組成物及び関連するテキスタイル処理を求め続けている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の発明者らは、無機ポリマー(シリコーン樹脂及びポリオルガノシロキサン)と有機ポリマーとの相互侵入網目を有する粒子を含む不連続油相を含む水性エマルジョンの使用が、別個の粒子としてこれらの構成成分を含むエマルジョンと比較して、優れた性能を提供することを発見した。
【0007】
一態様では、本発明は、水性連続相と、i)MQ樹脂、ii)ポリオルガノシロキサン、及びiii)有機ポリマーを含む相互侵入網目(IPN)を有する粒子を含む不連続油相と、を含む水性エマルジョンを含む。本発明の別の態様では、主題のエマルションは、フルオロポリマー及び/又は環状シロキサン、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)を実質的に含まない。別の態様では、本発明は、主題のエマルジョンを作製する方法を含む。更に別の態様では、本発明は、テキスタイルを処理する方法を含む。更に別の態様では、本発明は、主題のエマルジョンで処理されたテキスタイルを含む。多くの実施形態が説明されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で使用される場合、「テキスタイル」という用語は、天然又は合成繊維の網目からなる可撓性材料を指す。代表的な繊維としては、綿、亜麻、大麻、絹、羊毛、レーヨン、セルロース、リネン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエーテル-ポリ尿素コポリマー(例えば、「スパンデックス」)及びポリエステルが挙げられる。「テキスタイル」は、具体的には、そのような繊維を織ること、編むこと、広げること、フェルト化すること、縫うこと、かぎ針編みすること、又はボンディングするによって製造される不織布及び織布を含む。本発明の選択された実施形態では、目的の布地は、柔軟性、耐水性、及び繰り返しの洗浄(洗濯、ドライクリーニングなど)後の耐久性が所望である衣類(例えば、衣服)の製造に使用されるものである。
【0009】
依然に紹介したように、主題のエマルジョンは、水を含む連続水相を含む。水は、任意の供給源からのものであってもよく、任意選択で、例えば、濾過、蒸留、逆浸透法などによって精製されてもよい。より詳細に記載されるように、エマルジョンは、界面活性剤を更に含む。界面活性剤は、代替的に乳化剤と称される場合があり、概して、エマルジョンの水相内で不連続(油)相を乳化するよう働く。
【0010】
エマルジョンの不連続油相は、i)MQ樹脂、ii)ポリオルガノシロキサン、及びiii)有機ポリマーを含む。不連続油相のポリマーは、相互侵入ポリマー網目を含む。本明細書で使用される場合、「相互侵入ポリマー網目」(interpenetrating polymer network、IPN)という用語は、分子スケールで少なくとも部分的に織り交ぜられている(例えば、物理的に絡み合っている)が、互いに共有結合していない2つ以上の網目(ポリマー)を含むポリマー材料を指す。共有結合の欠如は、IPNをブロックコポリマー及びグラフトコポリマーと区別する。網目間の物理的絡み合いの存在は、クリープ及び流れを抑制するが、しかしながら、共有結合の欠如は、ある網目の別の網目からのいくらかの移動(すなわち、分離)を可能にする。主題のIPNは、クラスIハイブリッド又はブレンドとも称され得る。より詳細に記載されるように、本発明のIPNは、無機ポリマー相(MQ樹脂及びポリオルガノシロキサン)内に有機モノマーを吸収させ、続いて、有機モノマーをその場で重合して、無機ポリマー内に少なくとも部分的に絡み合った有機ポリマーを形成することによって調製される。より具体的には、不連続油相は、MQ樹脂及びポリオルガノシロキサンを有機モノマーとともに乳化することによって調製される。これらの構成成分は、一般に互いに混和性である(すなわち、肉眼で見たときに光学的に透明な混合物を形成する)が、重合時に、未処理有機ポリマー(「有機相」)は、MQ樹脂及びポリオルガノシロキサン(「シリコーン相」又は「無機相」)と非混和性になる。理論に束縛されることを望むものではないが、テキスタイルを処理するために使用される場合、シリコーン相は撥水性を提供し、一方で、有機相は、得られたテキスタイルコーティングに補強を提供し、洗浄及び乾燥中にテキスタイルから移動するシリコーン相の量を低減すると考えられる。シリコーン相については、MQ樹脂は、良好な撥水性を提供すると考えられる。ポリオルガノシロキサンは、MQ樹脂と特定の比率で使用される場合、柔軟化効果を提供すると考えられる。重要なことに、MQ樹脂は、有機ポリマーと共有結合されない。これは、MQ樹脂が移動し、改善された撥水性を提供することを可能にする。
【0011】
i)MQ樹脂(トリメチルシロキシケイ酸樹脂):
主題の不連続油相粒子は、好ましくは、少なくとも10重量%(例えば、10~50重量%)のMQ樹脂を含む。本発明において有用なMQ樹脂としては、周知のクラスの市販の樹脂が挙げられる。しかしながら、重要なことに、主題のIPNを調製するために、MQ樹脂は、存在する場合、有機ポリマーの調製において使用されるモノマーと共有結合を形成するであろうラジカル重合性官能基(例えば、ビニル、(メタ)アクリル)を実質的に含まない必要がある。この文脈において、「実質的に含まない」という用語は、MQ樹脂の総重量に基づいて、1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、及び更により好ましくは0.0重量%を意味する。それにもかかわらず、MQは、フリーラジカル重合中に使用される条件下で有機モノマーと実質的に共有結合を形成しない限り、官能基を含み得る。許容される官能基の具体例としては、アルコキシ、アミノ、ブロックイソシアネート、カルビノール、エポキシ、ヒドロカルビル及びヒドロキシルが挙げられる。主題のMQ樹脂は、29Si NMRによって決定される場合、好ましくは0.7:1より大きなMシロキシ単位対Qシロキシ単位の数の比率を有する。主題のMQ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは8000~50,000AMU(ダルトン)である。そのような樹脂の代表的な市販例としては、DOWSIL(商標)MQ-1600樹脂、DOWSIL(商標)MQ-1601樹脂、DOWSIL(商標)2-7066樹脂、DOWSIL(商標)MQ-7466樹脂、及びDOWSIL(商標)MQ-7366樹脂が挙げられ、それらの全てが、Dow Chemical Companyから入手可能である。主題のMQ樹脂の組み合わせは、一緒に使用され得る。
【0012】
背景として、シリコーン樹脂は一般に、以下によって表すことができ、
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2
式中、R~Rは独立して、水素、ヒドロキシル、又は任意の有機基、例えば、置換又は非置換ヒドロカルビル基、アルコキシ基、アミノ基、アセトキシ基及びアミノキシ基から選択され、w、x、y及びzは独立して、0以上~1以下であり、但し、y及びzは、同時に0ではなく、w+x+y+z=1であることを条件とする。下付き文字wは、Mシロキシ単位を示し、記名xは、Dシロキシ単位を示し、記名yは、Tシロキシ単位を示し、下付き文字zは、Qシロキシ単位を示す。樹脂中に存在する各シロキシ単位の量は、シリコーン樹脂中に存在する全てのM、D、T、及びQシロキシ単位の合計モル数のモル分率(下付き文字w、x、y及びzによって)として表される。上記の式は、様々なシロキシ単位の構造順序を示すことを意図するものではなく、下付き文字w、x、y及びzを介して上に記載されるモル分率に従って、樹脂中の各種類のシロキシ単位の相対量を説明するための便利な表記法を提供するものである。シリコーン樹脂中の様々なシロキシ単位のモル分率は、29Si NMR技術により容易に判定することができる。M及びQシロキシ単位が優勢である場合、慣例により、得られたオルガノシロキサンは、「MQ樹脂」と称される。
【0013】
ある特定の実施形態では、主題の樹脂は、MQ単位から本質的になる。樹脂中のM及びQ単位に関して「から本質的になる」とは、w+z≧0.7、あるいはw+z≧0.85、あるいはw+z≧0.9、あるいはw+z≧0.95、あるいはw+z≧0.96、あるいはw+z≧0.97、あるいはw+z≧0.98、あるいはw+≧0.99、あるいはw+z=1であることを意味する。w+x+y+z=1であるため、w+z<1の場合、バランスは、少なくともいくらかのモル分率のD及び/又はTシロキシ単位の存在に起因する。したがって、MQ樹脂は、上記の下付き文字及びモル分率に基づいて、少なくともいくらかのD及び/又はTシロキシ単位を含み得る。他の実施形態では、MQ樹脂は、M及びQシロキシ単位からなる。
【0014】
~Rにより表されるヒドロカルビル基は独立して、置換又は非置換であってよく、脂肪族、芳香族、環状、脂環式などであってもよい。更に、R~Rにより表されるヒドロカルビル基は、炭素原子を置き換える1つ以上のヘテロ原子を含んでよく、例えば、N、S、又はOは、R~Rにより表されるヒドロカルビル基においてCを置き換え得る。ヒドロカルビル基に関して使用される「置換された」という用語は別途記載のない限り、ヒドロカルビル基中の1つ以上の水素原子が別の原子又は置換基により置き換えられていることを意味する。非置換脂肪族ヒドロカルビル基は、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、デシル、ドデシル、ウンデシル、及びオクタデシルなどのアルキル基、シクロペンチル及びシクロヘキシルなどのシクロアルキル基、フェニル、トリル、キシリル、及びベンジルなどのアリール基、並びに2-フェニルエチルなどのアラルキル基によって例示されるが、これらに限定されない。好ましい非置換脂肪族ヒドロカルビル基としては、メチル基が挙げられる。
【0015】
適用可能な樹脂は、溶媒中又はその場で、例えば、ある特定のシラン材料の加水分解によって作製され得る。特に好ましい方法論は、溶媒、例えばキシレンの存在下での、四価のシロキシ単位の前駆体(例えば、テトラオルトケイ酸塩、テトラエチルオルトケイ酸塩、ケイ酸ポリエチル、又はケイ酸ナトリウム)、及び一価のトリアルキルシロキシ単位の前駆体(例えば、トリメチルクロロシラン、トリメチルエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、又はヘキサメチルジシラザン)の加水分解及び縮合である。得られたMQ樹脂は、残留Si-OH基を反応させるために更にトリメチルシリル化され得るか、又は塩基の存在下で加熱して、Si-OH基を脱離させることによって樹脂の自己縮合が引き起こされ得る。
【0016】
ii)ポリオルガノシロキサン:
主題の不連続油相粒子は、好ましくは、少なくとも25重量%(例えば、25~80重量%)のポリオルガノシロキサンを含む。本発明において使用されるポリオルガノシロキサンは、特に限定されず、好ましくは500~100,000AMU(ダルトン)、より好ましくは1000~10,000、及び更により好ましくは1000~5000の重量平均分子量(Mw)を有する直鎖及び分岐鎖種の両方を含む。選択された実施形態では、主題のポリオルガノシロキサンは、D4、D5及びD6を含む揮発性環状シロキサンを実質的に含まない。この文脈において、「実質的に含まない」という用語は、ポリオルガノシロキサンの総重量に基づいて、1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、及び更により好ましくは0.0重量%を意味する。更に、他の選択された実施形態では、主題のポリオルガノシロキサンは、Qシロキシ単位を実質的に含まない。この文脈において、「実質的に含まない」という用語は、ポリオルガノシロキサンの総重量に基づいて、1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、及び更により好ましくは0.0重量%を意味する。適用可能なポリオルガノシロキサンの代表的なサブクラスとしては、ポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサンが挙げられる。利用可能な市販例としては、Dow Chemical Companyから多種多様な粘度で入手可能なDOWSIL(商標)200流体(トリメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン)が挙げられる。好ましい粘度範囲は、5~100,000mPa・s(cSt)、より好ましくは10~70,000mPa・sである。別途記載のない限り、「粘度」という用語は、ASTM D2196-05に従って回転粘度計(Brookfield DVII)を使用した25℃での動的粘度を指す。異なるポリオルガノシロキサンの組み合わせを一緒に使用してもよい。
【0017】
i)MQ樹脂対ii)ポリオルガノシロキサンの重量比は、好ましくは1:0.5~1:5である。この範囲は、撥水性及び柔軟性の好ましいバランスを提供する。
【0018】
適用可能なポリオルガノシロキサンは、以下によって表すことができ、
SiO(4-a)/2
式中、各Rは独立して、R~Rに関して上で定義される基から選択され、「a」は、好ましくは1.8~2.5及びより好ましくは1.95~2.05の数である)。上に記載されるMQ樹脂の制限とは異なり、ポリオルガノシロキサンは、有機ポリマーを調製するために使用されるモノマーと共有結合する官能基を含んでもよい。すなわち、Rは更に独立して、ビニル、(メタ)アクリル及びアクリルなどのエチレン性不飽和基を含む官能基から選択され得る。
【0019】
iii)有機ポリマー:
主題の不連続油相粒子は、好ましくは、0~150℃のガラス転移(Tg)温度を有する1~50重量%の有機ポリマーを含む。本明細書で使用される場合、「有機ポリマー」という用語は、ラジカル機構を介して重合されたエチレン性不飽和有機モノマーの反応生成物を指す。エチレン性不飽和有機モノマーは、好ましくは、アクリレート、ビニルエステル、ビニル芳香族、オレフィン、1,3-ジエン及びハロゲン化ビニルのうちの1つ以上から選択され、特に好ましくは、アクリレート及びビニル芳香族のうちの1つ以上である。選択された実施形態では、主題の有機ポリマーは、シロキシ官能基を含まない。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アクリレート」又は「アクリレートモノマー」という用語は、アクリル酸並びにその塩、エステル及びコンジュゲート塩基に基づくモノマーを指す。代表的な「アクリレートモノマー」としては、メタアクリレート、置換アクリレート及び置換メタアクリレートが挙げられる。具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソデシルメタアクリレート、ラウリルメタアクリレート、及びブチルメタクリレートなどのアクリル酸エステル及びメタアクリル酸エステル;ヒドロキシエチルアクリレート、ペルフルオロオクチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、及びヒドロキシエチルメタアクリレートなどの置換アクリレート及びメタアクリレートが挙げられる。代表的な「アクリル酸」としては、アクリル酸、メタアクリル酸、エチルアクリル酸及びそれらの対応する塩が挙げられる。
【0021】
代表的な「ハロゲン化ビニル」としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、及びクロロプレンが挙げられる。適用可能なモノマーの更なる例としては、無水マレイン酸、酢酸ビニル及び酪酸ビニルなどの「ビニルエステル」;ビニルピロリドン;ブタジエン及びイソプレンなどのコンジュゲート化ジエン;スチレン及びジビニルベンゼンなどの「ビニル芳香族」;エチレンなどのビニルモノマー;アクリロニトリル及びメタアクリロニトリル;アクリルアミド、メタアクリルアミド、及びN-メチロールアクリルアミド;並びに最大10個の炭素原子を有するモノカルボン酸のビニルエステルが挙げられる。
【0022】
主題のモノマーは、多エチレン性不飽和基を有する種、すなわち、適切な反応条件下でフリーラジカル重合を受ける少なくとも2つの重合性炭素-炭素二重結合を含む種を含み得る。適用可能な例としては、アリルメタアクリレート、ジアリルフタレート、1,4-ブチレングリコールジメタアクリレート、1,2-エチレングリコールジメタアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、及びジビニルベンゼンが挙げられる。
【0023】
総重量パーセントは、優れたテキスタイル処理を提供するために重要である。例えば、不連続油相の粒子内に50重量%を超える有機ポリマーが含まれると、脆いテキスタイルコーティングがもたらされる。その結果として、油相粒子(MQ樹脂及びポリオルガノシロキサンを含む)中の主題の有機ポリマーの総重量パーセントは、好ましくは1~50重量%、より好ましくは5~45重量%、及び更により好ましくは10~40重量%である。
【0024】
主題の有機ポリマーは、好ましくは0~150℃、より好ましくは1~50℃、及び更により好ましくは10~40℃のガラス転移(Tg)温度を有する。0℃未満のTg値を有するポリマーの使用は、得られたエマルジョンによって提供される撥水性を低減する。主題の有機ポリマーのTgは、Foxの方程式(T.G.Fox,Bull.Am.Physics Soc.,Volume 1,Issue No.3,page 123(1956))を使用して計算された、50,000の重量平均分子量(Mw)を有する理論上のポリマーに基づいて決定され得る。例えば、モノマーM1及びM2のモノマー混合物のコポリマーのTgを計算するために、1/Tg=w(M1)/Tg(M1)+w(M2)/Tg(M2)であり、式中、w(M1)は、コポリマー中のモノマーM1の重量分率であり、w(M2)は、コポリマー中のモノマーM2の重量分率であり、Tg(M1)は、M1の高分子量ホモポリマー(>50k重量平均MW)の公表されているガラス転移温度(「Fox Tg」)であり、Tg(M2)は、M2の高分子量ホモポリマーの公表されているガラス転移温度である。ホモポリマーのTg値は、Polymer Handbook,4th Edition,J.Wiley & Sons,New York(2003)に列挙されている。
【0025】
最初の不連続油相の調製中、有機物のその場での重合中及び/又はその後を含めて、様々な添加剤が主題のエマルジョンに含まれてもよい。このような添加剤の例としては、界面活性剤、開始剤、浸透剤、メラミン、ワックス、ポリウレタン分散液などが挙げられる。そのような任意の添加剤の1つには、ブロックイソシアネートが挙げられる。
【0026】
iv)ブロックイソシアネート:
上述したように、主題のエマルジョンは、1つ以上のブロックイソシアネートを更に含んでもよい。本明細書で使用される場合、「ブロックイソシアネート」という用語は、イソシアネート及びブロッキング剤の反応生成物を指し、ブロッキング剤は、熱条件下でイソシアネートから除去可能であり、すなわち、テキスタイルを処理する間に典型的に使用されるものである。従来のブロッキング剤としては、アリールアルコール、アルカノンオキシム、アリールチオール、有機活性水素化合物、亜硫酸水素ナトリウム及びヒドロキシルアミンが挙げられる。好ましいブロッキング剤としては、典型的なテキスタイル処理プロセス中に使用されるような比較的低温で脱ブロックされ得るアルカノンオキシム(ケトキシム)が挙げられる。本発明の目的のためには、「芳香族」ブロックトポリイソシアネートが好ましい。この文脈において、「芳香族」という用語は、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’ジイソシアネート、ポリメチレン-ポリフェニルイソシアネート、4,4’メチレンビスフェノールイソシアネート、及びそれらの誘導体に基づく材料など、少なくとも1つの芳香族基を有するイソシアネート化合物を意味する。ブロックイソシアネートの調製に好適なイソシアネートA(CNO)は、Aが芳香族化合物であり、zが1、2、3又は4であるものである。これらには、トルエンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、及び4,4’-メチレンビスフェノールイソシアネートなどのイソシアネート又は誘導体が含まれ、この目的のために市販されている芳香族イソシアネートが含まれる。典型的な市販製品としては、トルエンジイソシアネート及びトリメチロールプロパン(1,1,1-トリヒドロキシメチルプロパン)の付加物DESMODUR CB-75;(Covestroから入手可能)、MONDUR MR-100(Covestroから入手可能)などのイソシアン酸のポリメチレンポリフェニレンエステルに基づく芳香族イソシアネート、並びに4,4’メチレンビスフェノールイソシアネートを含むポリメチレンポリフェニルイソシアネートに基づく芳香族イソシアネート(Dow Chemical Co.から入手可能)などの製品が挙げられる。HYDROPHOBOL DL、PHOBOL XAN(Huntsmanから入手可能)、DM-6400、MEIKANATE FM-1、MEIKANATE ST、MEIKANATE PRO、MEIKANATE TP-10、MEIKANATE WEB、MEIKANATE ST(明成化学工業株式会社から入手可能)などの既製のブロック芳香族イソシアネートも市販されている。このようなイソシアネートに関する更なるバックグラウンド情報は、米国特許出願公開第2019/0375897号、米国特許第839255号、及び米国特許第6451717号に提供されている。
【0027】
不連続油相の粒子は、Malvern 3000を使用し、ISO 13320(2009)に従ってレーザー回折を介して測定される場合、好ましくは10~5000nm及びより好ましくは50~3000nmの平均体積粒径「D(v0.5)」を有する。本明細書で使用される場合、「粒子」という用語は、油相液滴を指す。
【0028】
選択された実施形態では、主題のエマルジョンは、フルオロポリマー及び/又は環状シロキサン、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)を実質的に含まない。この文脈において、「実質的に含まない」という用語は、不連続油相の総重量に基づいて、1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、及び更により好ましくは0.0重量%を意味する。
【0029】
主題のエマルジョンの不連続油相は、エマルジョンの総重量に基づいて、好ましくは、5~80重量%及びより好ましくは10~60重量%を含む。
【0030】
化粧品用途を対象としているが、米国特許第98008413号には、本発明と同様の様式で調製されたエマルジョンが記載されている。しかしながら、記載されるような有機ポリマーのTg及び総重量の両方は、テキスタイル処理に適しておらず、例えば、有機ポリマーは、ハイブリッドシリコーン-有機粒子の50重量%超(例えば、>66重量%)の量で存在し、これは、テキスタイルに効果的であるためにはコーティングが脆すぎる結果となる。同様に、米国特許第7767747号には、シリコーン樹脂を使用しないが、ポリシロキサン及び有機ポリマーの両方を含むハイブリッドエマルジョンを調製する方法が記載されている。これらの特許のいずれも主題のエマルジョン又はテキスタイルの処理を記載していないが、記載されているそれらの一般的な方法は有益である。
【0031】
本発明を具体的に言及すると、主題のエマルジョンを調製するための方法は、(1)i)ラジカル重合性官能基を実質的に含まないMQ樹脂、ii)ポリオルガノシロキサン、並びにiii)アクリレート、ビニルエステル、ビニル芳香族、オレフィン、1,3-ジエン、及びハロゲン化ビニルのうちの1つ以上から選択されるエチレン性不飽和有機モノマーを含む粒子を含む不連続油相を含む水性エマルジョンを得るか又は調製する工程と、(2)その場でエチレン性不飽和有機モノマーを重合して、粒子内に相互侵入網目を形成する工程と、を含む。工程(1)に関して、各成分の添加の順序は特に限定されず、界面活性剤の更なる使用及び混合は、粒径の制御とともにエマルジョンの形成を容易にするために使用され得る。工程(2)に関して、開始剤及び高温(例えば、70~95℃)の使用は、有機モノマーのフリーラジカル重合を容易にするために使用され得る。
【0032】
混合は、エマルジョンの分野で既知の任意の技術を用いて実行されてもよい。典型的には、油相及び任意の界面活性剤を含む水相は、単純な撹拌技術を使用して組み合わされて、エマルジョンを形成する。代表的な混合装置としては、ホモジナイザー、ソノレーター、ローター-ステータータービン、コロイドミル、マイクロフルイダイザー、ソニケーター、ブレード、ヘリックス、及びそれらの組み合わせが挙げられる。代表的な方法は、米国特許第6013682号、米国特許第8877293号、及び米国特許出願公開第2015/0010711号に記載されている。
【0033】
適用可能な界面活性剤の例としては、カチオン性、アニオン性、及び/又は非イオン性界面活性剤が挙げられ、カチオン性界面活性剤が好ましい。本明細書で使用される場合、「カチオン性界面活性剤」という用語は、正電荷を有する官能基を有する界面活性剤、例えば、正に荷電した表面活性部分を有する四級アンモニア化合物を意味する。この定義は、正及び負に荷電した基の両方を有する両性界面活性剤を含むが、非イオン性及びアニオン性界面活性剤を除外する。本発明において有用なカチオン性界面活性剤は、水酸化オクチルトリメチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリメチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化オクチルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化デシルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化ジドデシルジメチルアンモニウム、水酸化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、水酸化タロートリメチルアンモニウム及び水酸化ココトリメチルアンモニウムなどの水酸化四級アンモニウム、並びにこれらの物質の対応する塩、脂肪アミン及び脂肪酸アミド並びにそれらの誘導体、塩基性ピリジニウム化合物、ベンズイミダゾリンの四級アンモニウム塩基及びポリプロパノール-ポリエタノールアミンであり得るが、カチオン性界面活性剤のこのリストに限定されない。代替的に、カチオン性界面活性剤は、塩化セチルトリメチルアンモニウムである。これらの界面活性剤は、個別に又は組み合わせて使用してもよい。界面活性剤を水に溶解し、得られた水溶液を水性連続相中の構成成分として使用する。水中油型エマルジョンの形成中のカチオン性界面活性剤の濃度は、好ましくは油相全体の0.5重量%~4.0重量%である。補助界面活性剤、及び特に非イオン性界面活性剤を、水中油型エマルジョンの形成中に添加してもよい。好適な非イオン性界面活性剤は、ポリエチレングリコール長鎖(12~14個の炭素)アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタンエーテル、ポリオキシアルキレンアルコキシレートエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、エチレングリコールプロピレングリコールコポリマー、ポリビニルアルコール及びアルキル多糖類などのポリアルキレンアルキルエーテルである。増粘剤及び防腐剤を含む追加の水溶性成分を水相に添加してもよい。
【0034】
適用可能な水溶性フリーラジカル開始剤の例としては、t-ブチルペルオクトエート及びt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートが挙げられる。熱又はレドックス開始プロセスは、有機ポリマーの調製において使用され得る。使用され得る従来の熱フリーラジカル開始剤としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、アンモニウム及び/又はアルカリ金属過硫酸塩、過ホウ酸ナトリウム、過リン酸、並びにそれらの塩、過マンガン酸カリウム、及びペルオキシ二硫酸のアンモニウム又はアルカリ金属塩が挙げられる。これらの開始剤は、典型的には、有機モノマーの総重量に基づいて0.1~5.0重量%のレベルで使用される。使用され得るレドックス開始剤は、典型的には、酸化剤として上に列挙したものと同じフリーラジカル開始剤を含むフリーラジカルを生成するのに有効な組み合わせの酸化剤+還元剤;並びにナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、ハイドロサルファイト、硫化物、水硫化物又は亜ジチオン酸塩、ホルムアミジンスルフィン酸、ヒドロキシメタンスルホン酸、アセトン亜硫酸水素塩などの硫黄含有酸のアルカリ金属及びアンモニウム塩などの好適な還元剤;エタノールアミン、グリコール酸、グリオキシル酸水和物、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、及び使用され得る前述の酸の塩などのアミンである。開始剤又は開始剤系は、1回以上の添加で、連続的、直線的、若しくはそうではなく、反応期間にわたって、又はそれらの組み合わせとして添加され得る。アゾビス-イソブチロニトリル及びアゾビスプロピオニトリルなど、モノマー膨潤プロセスにおいて使用され得るいくつかのアゾタイプ有機フリーラジカル開始剤。
【0035】
主題のエマルジョンでテキスタイルを処理する適用可能な方法は、特に限定されず、浸漬、パディング(例えば、ロールパダーによる)、カーテンコーティング、ブラシコーティング、ロールコーティング、並びに空気噴霧スプレー、エアアシストスプレー、エアレススプレー、高容量低圧スプレー及びエアアシストエアレススプレーなどの噴霧法によるテキスタイルにエマルジョンを適用することを含む。次いで、得られたコーティングを、80~180℃の高温で乾燥(硬化)させる。乾燥工程の例としては、室温での風乾、熱風乾燥、及び赤外線加熱が挙げられる。典型的なコーティング被覆は、1平方メートル(g/m)当たり0.5~15グラム乾燥重量の範囲である。
【0036】
本発明の多くの実施形態が記載されており、いくつかの事例では、ある特定の実施形態、選択、範囲、構成要素、又は他の特徴が「好ましい」として特徴付けられている。そのような「好ましい」特徴の指定は、決して本発明の本質的又は重要な態様として解釈されるべきではない。表現された範囲は、具体的に指定された終点を含む。本明細書で使用される場合、「分子量」及び「Mw」という用語は、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)によって測定される重量平均分子量を指す。
【実施例
【0037】
特に指示がない限り、全ての調製及び試験を、標準圧力(1気圧又は760mm Hg)において室温(room temperature、RT)で実施した。以下の材料を水性エマルジョンの調製及び試験に使用した。
【0038】
【表1】
【0039】
試料エマルジョンを以下の方法に従って調製した。
エマルジョン1:MQ-1600/PDMS/スチレン-アクリルハイブリッドコロイド
エマルジョンの調製:MQ-1600(13.3g)、50cSt 200流体(26.6g)、ブチルアクリレート(5.00g)、スチレン(11.17g)、AAEM(1.12g)をジャー中で混合した。水(10.64g)、ARQUAD 16-29(1.40)、TERGITOL(商標)15-S-20(80%活性、1.39g)を添加し、再度混合して粗いエマルジョンを形成した。水(140.59g)を添加し、音波プローブ(Fisherbrandモデル705)を75%出力で1.5分間使用して混合物を乳化した。希釈水(148.74g)を添加した。
ラジカル重合手順:撹拌シャフト、窒素流、及び熱電対制御加熱マントルを備えたガラス反応器にエマルジョンを添加した。エマルジョンを70.0℃に加熱した。別個のガラスバイアル中で、LUPEROX 26(0.68g)、TERGITOL(商標)15-S-20(80%活性、0.09g)、及び水(0.7g)を一緒に混合して、開始剤エマルションを調製した。このエマルジョンをすすぎ水(4.7g)とともにガラス反応器に添加した。30分後、温度を85.0℃に上昇させた。60分後、温度を92.0℃に上昇させ、反応器を冷却する前にその温度で60分間保持した。
【0040】
エマルジョン2:MQ-1600/PDMSエマルジョン(有機ポリマーなし)
20cSt 200流体(12.71g)及びMQ-1600(6.34g)の混合物を、高速歯科用ミキサーで、3500rpmで組み合わせた。ARQUAD 16-29(1.88g)を添加し、再び混合した。水を以下の増分で添加し、添加の間に高速混合した:5.25、5.66、2.21、4.04、2.00、及び2.21g。
【0041】
エマルジョン3:スチレン-アクリルエマルジョンポリマー(MQなし、PDMSなし)
エマルジョンの調製:混合ブチルアクリレート(9.99g)、スチレン(22.37g)、AAEM(2.16g)。水(16.92g)、ARQUAD 16-29(1.04)、TERGITOL(商標)15-S-20(80%活性、1.05g)を添加し、混合して粗いエマルジョンを形成した。水(100.00g)を添加し、音波プローブを50%出力で1.5分間使用して混合した。希釈水(140.21g)を添加した。ラジカル重合手順は、エマルジョン1と同じであった。
【0042】
エマルジョン4:MQ-1600/PDMS/ビニル-PDMS/スチレン-アクリルハイブリッドコロイド
MQ-1600(11.24g)、20cSt 200流体(11.24g)、SFD-128(MVi766Vi、11.24g)、ブチルアクリレート(4.22g)、スチレン(9.42g)、AAEM(0.91g)を均質になるまで混合した。水(84.71g)、ARQUAD 16-29(1.13)、TERGITOL(商標)15-S-20(80%活性、1.16g)を添加し、混合して粗いエマルジョンを形成した。水(33.15g)を添加し、音波プローブを50%出力で1.5分間及び100%出力で1分間使用して混合した。Microfluidicsホモジナイザーを使用して10,000psiで均質化した。希釈水(100.0g)を添加した。ラジカル重合手順は、エマルジョン1と同じであった。
【0043】
エマルジョン5:4:1のPDMS:MQを有するMQ-1600/PDMS/スチレン-アクリルハイブリッドコロイド
MQ-1600(8.05g)、20cSt 200流体(32.2g)、ブチルアクリレート(5.00g)、スチレン(11.17g)、AAEM(1.12g)を均質になるまで混合した。水(99.11g)、ARQUAD 16-29(1.35)、TERGITOL(商標)15-S-20(80%活性、1.35g)を添加し、音波プローブを75%出力で1.5分間使用して混合した。希釈水(134.42g)を添加した。ラジカル重合手順は、エマルジョン1と同じであった。
【0044】
エマルジョン6:MQ 2-7066シリコーン/PDMS/スチレン-アクリルハイブリッドコロイド
DOWSIL(商標)2-7066シリコーン(キシレン中78重量%樹脂17.2g)を20cSt 200流体(26.8g)と混合し、減圧下(約5torr)で、70℃で2時間溶媒を除去した。ブチルアクリレート(5.00g)、スチレン(11.17g)、AAEM(1.08g)を添加し、均質になるまで混合した。水(150.6g)、ARQUAD 16-29(1.35)、TERGITOL(商標)15-S-20(80%活性、1.35g)を添加し、音波プローブを75%出力で1.5分間使用して混合した。希釈水(82.93g)を添加した。ラジカル重合手順は、エマルジョン1と同じであった。
【0045】
エマルジョン7:1000cSt PDMSを有するMQ-1600/PDMS/スチレン-アクリルハイブリッドコロイド
MQ-1600(13.40g)、1000cSt 200流体(26.83g)、ブチルアクリレート(5.00g)、スチレン(11.17g)、AAEM(1.08g)を均質になるまで混合した。水(101.75g)、ARQUAD 16-29(1.35)、TERGITOL(商標)15-S-20(80%活性、1.35g)を添加し、音波プローブを75%出力で1.5分間使用して混合した。希釈水(131.8g)を添加した。ラジカル重合手順は、エマルジョン1と同じであった。
【0046】
エマルジョン8:MQ-1600/PDMS/アクリルハイブリッドコロイド(スチレンなし)
MQ-1600(13.40g)、20cSt 200流体(26.83g)、ブチルアクリレート(6.69g)、メチルメタアクリレート(9.47g)、及びAAEM(1.08g)を均質になるまで混合した。水(150.6g)、ARQUAD 16-29(1.35)、TERGITOL(商標)15-S-20(80%活性、1.35g)を添加し、音波プローブを75%出力で1.5分間使用して混合した。希釈水(82.94g)を添加した。ラジカル重合手順は、エマルジョン1と同じであった。
【0047】
エマルジョン9:10%スチレン-アクリルを有するMQ-1600/PDMS/スチレン-アクリルハイブリッドコロイド
MQ-1600(17.25g)、20cSt 200流体(34.50g)、ブチルアクリレート(1.67g)、及びスチレン(3.72g)、及びAAEM(0.36g)をガラスジャー中で混合した。水(103.03g)、ARQUAD 16-29(1.35)、TERGITOL(商標)15-S-20(80%活性、1.35g)を添加し、音波プローブを75%出力で2.0分間使用して混合した。希釈水(130.5g)を添加した。ラジカル重合手順は、エマルジョン1と同じであった。
【0048】
エマルジョン10:MQ-1600/PDMS/アクリルハイブリッドコロイド(スチレンなし)
MQ-1600(13.40g)、20cSt 200流体(26.83g)、MDM-ALMA(7.06g)、IBOMA(9.11g)、AAEM(1.08g)を均質になるまで混合した。水(101.08g)、ARQUAD 16-29(1.35)、TERGITOL(商標)15-S-20(80%活性、1.35g)を添加し、音波プローブを75%出力で1.5分間使用して混合した。希釈水(132.45g)を添加した。ラジカル重合手順は、エマルジョン1と同じであった。
【0049】
エマルジョン11:MQ-1600/PDMS/スチレン-アクリルハイブリッドコロイド(AAEMなし)
MQ-1600(13.40g)、20cSt 200流体(26.83g)、ブチルアクリレート(5.66g)、及びスチレン(11.58g)をガラスジャー中で混合した。水(150.6g)、ARQUAD 16-29(1.35)、TERGITOL(商標)15-S-20(80%活性、1.35g)を添加し、音波プローブを100%出力で1.5分間使用して混合した。希釈水(82.94g)を添加した。ラジカル重合手順は、エマルジョン1と同じであった。
【0050】
エマルジョン12:50%スチレン-アクリルを有するMQ-1600/PDMS/スチレン-アクリルハイブリッドコロイド
エマルジョン組成物がMQ-1600(9.58g)、20cSt PDMS(19.16g)、ブチルアクリレート(8.33g)、スチレン(18.61g)、AAEM(1.80g)を含んでいたことを除いて、エマルジョン11と同じエマルジョン及びラジカル重合手順に従った。
【0051】
エマルジョン13:Tg=15℃のMQ-1600/PDMS/スチレン-アクリルハイブリッドコロイド
エマルション組成物がMQ-1600(13.40g)、20cSt 200流体(26.83g)、ブチルアクリレート(6.69g)、スチレン(9.47g)、及びAAEM(1.08g)を含み、音波プローブを75%出力で1.5分間実施したことを除いて、エマルジョン11と同じ乳化及びラジカル重合手順に従った。
【0052】
エマルジョン14:Tg=-15℃のMQ-1600/PDMS/スチレン-アクリルハイブリッドコロイド
エマルジョン組成物がMQ-1600(13.40g)、20cSt 200流体(26.83g)、ブチルアクリレート(10.40g)、スチレン(5.78g)、及びAAEM(1.08g)を含んでいたことを除いて、エマルジョン11と同じ乳化及びラジカル重合手順に従った。
【0053】
エマルジョン15:MQ樹脂2/PDMS/スチレン-アクリルハイブリッドコロイド
MQ樹脂2(キシレン中76.6重量%樹脂17.48g)を20cSt 200流体(26.8g)と混合し、減圧下(約5torr)で、70℃で2時間溶媒を除去した。ブチルアクリレート(5.00g)、スチレン(11.17g)、AAEM(1.08g)を添加し、手で混合した。水(200.66g)、ARQUAD 16-29(1.35)、TERGITOL(商標)15-S-20(80%活性、1.35g)を添加し、音波プローブを75%出力で1.5分間使用して混合した。希釈水(32.93g)を添加した。ラジカル重合手順は、エマルジョン1と同じであった。
【0054】
エマルジョン16:PDMS/スチレン-アクリルハイブリッドコロイド(MQ樹脂なし)
ビニル末端PDMS(SFD-128、40.43g)、ブチルアクリレート(5.00g)、スチレン(11.17g)、及びAAEM(1.08g)を均質になるまで混合した。水(0.41g)、ARQUAD 16-29(1.35g)、TERGITOL(商標)15-S-20(80%活性、1.39g)を添加し、高速歯科用ミキサーで、3500rpmで30秒間混合して、油中水型エマルションを形成した。次いで、水(39.29g)を添加し、続いて、3500rpmで30秒間再度混合した。エマルジョンを水(206g)で希釈した。ラジカル重合手順は、エマルジョン1と同じであった。
【0055】
【表2】
【0056】
コーティングエマルジョン(IE1~IE17、CE1~CE6)を、上に記載されるエマルジョン(エマルジョン1~16)を使用して調製し、様々な布地試料(ナイロン及びPES)をコーティングし、以下に記載される方法に従って試験した。
【0057】
コーティングエマルジョン(IE1~IE17、CE1~CE6)を、60psiに設定されたローラー圧力及び2.0m/分の速度で、Mathis 2ロールパダー(HVF-350)上でのパディングを介して布地試料上にコーティングした。ナイロン及びポリエステル布の含浸量は、それぞれ53%及び79%であった。含浸量は、処理溶液及びパダーを通過した後であるが乾燥前の布地の増加重量%として定義される。例えば、布地が最初に100グラムの重量であり、処理溶液/パダーを通過した後に布の重量が150グラムである場合、含浸量は50%である。パディング直後に、布地をMathis LTEオーブン内で、160℃で3分間硬化させた。次いで、コーティングされた布地試料を室温/湿度で約12時間平衡化させ、その後、コーティングされた布地試料を、TIDE(登録商標)Free洗剤を使用する標準的な家庭用洗濯機及び乾燥機を使用して洗濯した。洗浄サイクルを90℃に設定し、続いて冷水ですすいだ。乾燥サイクルは、自動検知シャットオフで高温に設定した。
【0058】
撥水性は、ISO9865:1991「Textiles-Determination of water repellency of fabrics by the Bundesmann rain-shower test」を使用して測定した。要約すると、布地試料を、Bundesmann装置に入れ、布地表面は10分間模擬雨に打たれ、その後、布地を外観について定性的に評価した(5=最良、1=最悪/水による布地表面の完全な飽和)。
【0059】
軟性は、主観的な1~5の尺度で決定され、1は最も荒い/最も粗い、5は最も柔らかい/最も滑らかである。
【0060】
シームテープ接着は、ASTM方法D413-98でTAF-900シームテープを使用して測定した。245°Fに設定したChemInstruments HL-100 Hot Roll Laminatorを使用して、テープを布地に適用した。各布地試料をシリコーンゴムマット上に置き、幅7/8インチ幅及び長さ10インチのテープ片で覆った。マイラーシートを布地/テープの上に置き、毎分3.8インチの速度及び40psiのローラー圧力でラミネーターに供給した。室温に冷却した後、TMI Lab Master 8091 Release及びAdhesion Testerを使用して接着を測定した。テープは、毎分12インチの速度で180度幾何学を使用して剥離した。テープ接着測定は、特に断りのない限り、3つ組で行った。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
上記の試験結果によって例示されるように、IE1~IE17によって表される主題のエマルジョンは、比較エマルジョンCE1~CE6と比較して改善された撥水性を示した。この優れた性能は、10回の洗浄サイクル後の視覚的撥水性データから特に明らかである。特に、CE1は、有機ポリマーの役割を示す。CE2は、主題のIPN構造対無機又は有機ポリマーのいずれかを有する別個の粒子の役割を示す。CE3は、Tgが低すぎる有機ポリマーを使用することの影響を示す。CE4~5は、Mwが低すぎるMQ樹脂を使用することの影響を示し、最後に、CE6は、MQ樹脂の役割を示す。