(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-16
(45)【発行日】2024-02-27
(54)【発明の名称】自動車の冷却ファンアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F01P 11/10 20060101AFI20240219BHJP
F01P 5/02 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
F01P11/10 F
F01P5/02 B
(21)【出願番号】P 2023506204
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2021070889
(87)【国際公開番号】W WO2022023285
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-03-30
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック レイモンド コート
(72)【発明者】
【氏名】マーク ビロドー
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/146154(WO,A2)
【文献】特開2005-147018(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0371979(US,A1)
【文献】特開2018-71948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/10
F01P 5/02
F04D 19/00
F04D 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の冷却ファンアセンブリであって、
モータと、
前記モータによって回転軸線を中心として回転するように駆動されるファンであって、
円筒形のハブであって、第1の端部、第2の端部および湾曲面を有し、前記湾曲面は、前記回転軸線に対して平行であり、前記第1の端部と第2の端部との間に延びている、円筒形のハブと、
前記湾曲面の円周に沿って配置されたブレードであって、前記回転軸線に関して前記ハブから半径方向外方に向かって突出しているブレードと、
を含むファンと、
前記モータを支持するシュラウドであって、
前記ファンを少なくとも部分的に取り囲み、かつ前記回転軸線と同心のバレルと、
前記バレルから延び、前記モータを支持するモータ支持構造体と、
を含む、シュラウドと
を備え、
前記ハブの端部と前記モータ支持構造体との間に運転ギャップが配置されており、該運転ギャップの寸法は、前記ハブの前記端部と前記モータ支持構造体との間の軸方向の距離に一致しており、ここで軸方向という語は、前記回転軸線に対して平行である方向を指しており、
前記モータ支持構造体は、前記運転ギャップ内に軸方向に突出する突出部を含み、
前記運転ギャップは、前記突出部において最小であ
り、
前記突出部と前記ハブとの間に隙間が配置されており、
前記隙間は、前記隙間の外側の箇所における平均的な前記運転ギャップの50パーセント未満である、自動車の冷却ファンアセンブリ。
【請求項2】
前記突出部と前記
ハブとの間に隙間が配置されており
、
前記隙間は、前記隙間の外側の箇所における平均的な前記運転ギャップの40パーセント未満である、請求項1記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記突出部と前記
ハブとの間に隙間が配置されており
、
前記隙間は、前記隙間の外側の箇所における平均的な前記運転ギャップの30パーセント未満である、請求項1記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記突出部と前記
ハブとの間に隙間が配置されており
、
前記隙間は、前記隙間の外側の箇所における平均的な前記運転ギャップの20パーセント未満である、請求項1記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記突出部と前記
ハブとの間に隙間が配置されており
、
前記隙間は、前記隙間の外側の箇所における平均的な前記運転ギャップの10パーセント未満である、請求項1記載のアセンブリ。
【請求項6】
自動車の冷却ファンアセンブリであって、
モータと、
前記モータによって回転軸線を中心として回転するように駆動されるファンであって、
円筒形のハブであって、第1の端部、第2の端部および湾曲面を有し、前記湾曲面は、前記回転軸線に対して平行であり、前記第1の端部と第2の端部との間に延びている、円筒形のハブと、
前記湾曲面の円周に沿って配置されたブレードであって、前記回転軸線に関して前記ハブから半径方向外方に向かって突出しているブレードと、
を含むファンと、
前記モータを支持するシュラウドであって、
前記ファンを少なくとも部分的に取り囲み、かつ前記回転軸線と同心のバレルと、
前記バレルから延び、前記モータを支持するモータ支持構造体と、
を含む、シュラウドと
を備え、
前記ハブの端部と前記モータ支持構造体との間に運転ギャップが配置されており、該運転ギャップの寸法は、前記ハブの前記端部と前記モータ支持構造体との間の軸方向の距離に一致しており、ここで軸方向という語は、前記回転軸線に対して平行である方向を指しており、
前記モータ支持構造体は、前記運転ギャップ内に軸方向に突出する突出部を含み、
前記運転ギャップは、前記突出部において最小であり、
前記モータ支持構造体は、
前記バレルに関して内側に配置され、前記モータを支持するモータキャリヤと、
前記バレルと前記モータキャリヤとの間に延びる支持アームと
を備え、
前記突出部は、前記モータキャリヤ上に配置されている、
自動車の冷却ファンアセンブリ。
【請求項7】
自動車の冷却ファンアセンブリであって、
モータと、
前記モータによって回転軸線を中心として回転するように駆動されるファンであって、
円筒形のハブであって、第1の端部、第2の端部および湾曲面を有し、前記湾曲面は、前記回転軸線に対して平行であり、前記第1の端部と第2の端部との間に延びている、円筒形のハブと、
前記湾曲面の円周に沿って配置されたブレードであって、前記回転軸線に関して前記ハブから半径方向外方に向かって突出しているブレードと、
を含むファンと、
前記モータを支持するシュラウドであって、
前記ファンを少なくとも部分的に取り囲み、かつ前記回転軸線と同心のバレルと、
前記バレルから延び、前記モータを支持するモータ支持構造体と、
を含む、シュラウドと
を備え、
前記ハブの端部と前記モータ支持構造体との間に運転ギャップが配置されており、該運転ギャップの寸法は、前記ハブの前記端部と前記モータ支持構造体との間の軸方向の距離に一致しており、ここで軸方向という語は、前記回転軸線に対して平行である方向を指しており、
前記モータ支持構造体は、前記運転ギャップ内に軸方向に突出する突出部を含み、
前記運転ギャップは、前記突出部において最小であり、
前記モータ支持構造体は、
前記バレルに関して内側に配置され、前記モータを支持するモータキャリヤと、
前記バレルと前記モータキャリヤとの間に延びる支持アームと
を備え、
前記突出部は、1つの支持アーム上に配置されている、
自動車の冷却ファンアセンブリ。
【請求項8】
自動車の冷却ファンアセンブリであって、
モータと、
前記モータによって回転軸線を中心として回転するように駆動されるファンであって、
円筒形のハブであって、第1の端部、第2の端部および湾曲面を有し、前記湾曲面は、前記回転軸線に対して平行であり、前記第1の端部と第2の端部との間に延びている、円筒形のハブと、
前記湾曲面の円周に沿って配置されたブレードであって、前記回転軸線に関して前記ハブから半径方向外方に向かって突出しているブレードと、
を含むファンと、
前記モータを支持するシュラウドであって、
前記ファンを少なくとも部分的に取り囲み、かつ前記回転軸線と同心のバレルと、
前記バレルから延び、前記モータを支持するモータ支持構造体と、
を含む、シュラウドと
を備え、
前記ハブの端部と前記モータ支持構造体との間に運転ギャップが配置されており、該運転ギャップの寸法は、前記ハブの前記端部と前記モータ支持構造体との間の軸方向の距離に一致しており、ここで軸方向という語は、前記回転軸線に対して平行である方向を指しており、
前記モータ支持構造体は、前記運転ギャップ内に軸方向に突出する突出部を含み、
前記運転ギャップは、前記突出部において最小であり、
前記突出部は、前記運転ギャップの所定の領域に配置されており、該所定の領域は、
i)扇形を有しており、該扇形は、第1の扇線分と第2の扇線分と扇円弧とにより画定されており、前記扇形の頂点は、前記第1の扇線分と前記第2の扇線分との交点に一致し、前記頂点は、前記回転軸線に一致しており、かつ
ii)前記運転ギャップ内に配置され、前記回転軸線に交差する鉛直方向の線に重なり、
前記第1の扇線分は、鉛直方向の軸線に対して第1の角度であり、
前記第2の扇線分は、鉛直方向の軸線に対して第2の角度であり、
前記扇円弧は、前記第1の扇線分と前記第2の扇線分との間に延びており、
前記第1の角度は、-90度~0度の範囲にあり、
前記第2の角度は、0度~+90度の範囲にある、
自動車の冷却ファンアセンブリ。
【請求項9】
前記モータ支持構造体は、前記ファンに関して下流側に配置されており、
前記所定の領域は、最も上側の方位角位置に一致する箇所において前記運転ギャップ内に位置決めされている、請求項
8記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記モータ支持構造体は、前記ファンの上流側に配置されており、
前記所定の領域は、最も下側の方位角位置に一致する箇所において前記運転ギャップ内に位置決めされている、請求項
8記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記第1の角度は、-45度~0度の範囲にあり、前記第2の角度は、0度~+45度の範囲にある、請求項
8記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記第1の角度は、-30度~0度の範囲にあり、前記第2の角度は、0度~+30度の範囲にある、請求項
8記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記第1の角度は、-10度~0度の範囲にあり、前記第2の角度は、0度~+10度の範囲にある、請求項
8記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記第1の角度は、-5度~0度の範囲にあり、前記第2の角度は、0度~+5度の範囲にある、請求項
8記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記第1の角度は、-1度~0度の範囲にあり、前記第2の角度は、0度~+1度の範囲にある、請求項
8記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記第1の角度は、-90度~-45度の範囲にあり、前記第2の角度は、-40度~0度の範囲にある、請求項
8記載のアセンブリ。
【請求項17】
前記第1の角度は、0度~40度の範囲にあり、前記第2の角度は、45度~90度の範囲にある、請求項
8記載のアセンブリ。
【請求項18】
前記第1の角度の絶対値は、前記第2の角度の絶対値よりも小さい、請求項
8記載のアセンブリ。
【請求項19】
前記第1の角度の絶対値は、前記第2の角度の絶対値よりも大きい、請求項
8記載のアセンブリ。
【請求項20】
自動車の冷却ファンアセンブリであって、
モータと、
前記モータによって回転軸線を中心として回転するように駆動されるファンであって、
円筒形のハブであって、第1の端部、第2の端部および湾曲面を有し、前記湾曲面は、前記回転軸線に対して平行であり、前記第1の端部と第2の端部との間に延びている、円筒形のハブと、
前記湾曲面の円周に沿って配置されたブレードであって、前記回転軸線に関して前記ハブから半径方向外方に向かって突出しているブレードと、
を含むファンと、
前記モータを支持するシュラウドであって、
前記ファンを少なくとも部分的に取り囲み、かつ前記回転軸線と同心のバレルと、
前記バレルから延び、前記モータを支持するモータ支持構造体と、
を含む、シュラウドと
を備え、
前記ハブの端部と前記モータ支持構造体との間に運転ギャップが配置されており、該運転ギャップの寸法は、前記ハブの前記端部と前記モータ支持構造体との間の軸方向の距離に一致しており、ここで軸方向という語は、前記回転軸線に対して平行である方向を指しており、
前記モータ支持構造体は、前記運転ギャップ内に軸方向に突出する突出部を含み、
前記運転ギャップは、前記突出部において最小であり、
前記モータ支持構造体は、
前記バレルに関して内側に配置され、前記モータを支持するモータキャリヤと、
前記バレルと前記モータキャリヤとの間に延びる支持アームと、
を備え、
前記突出部は、前記モータキャリヤの、ファンに面する面から突出する、
自動車の冷却ファンアセンブリ。
【請求項21】
前記突出部は、湾曲した軌道に沿って細長く延びている、請求項
20記載のアセンブリ。
【請求項22】
前記突出部の少なくとも一部は、前記モータキャリヤの周縁部に一致する、請求項
20記載のアセンブリ。
【請求項23】
前記突出部の中心は、前記モータキャリヤの最も上側の方位角位置および前記モータキャリヤの最も下側の方位角位置のうちの一方に軸方向で整列している、請求項
20記載のアセンブリ。
【請求項24】
前記突出部は、前記モータキャリヤの最も上側の方位角位置および前記モータキャリヤの最も下側の方位角位置のうちの一方に少なくとも部分的に重なっており、前記突出部の中心は、前記モータキャリヤの最も上側の方位角位置および前記モータキャリヤの最も下側の方位角位置の一方に対して相対的にずらされている、請求項
20記載のアセンブリ。
【請求項25】
前記突出部は、前記モータキャリヤの、前記ファンに面した面に沿って断続的である、請求項
20記載のアセンブリ。
【請求項26】
前記突出部は、軸方向に延びる柱である、請求項
20記載のアセンブリ。
【請求項27】
前記柱がシリンダ形である、請求項
26記載のアセンブリ。
【請求項28】
自動車の冷却ファンアセンブリであって、
モータと、
前記モータによって回転軸線を中心として回転するように駆動されるファンであって、
円筒形のハブであって、第1の端部、第2の端部および湾曲面を有し、前記湾曲面は、前記回転軸線に対して平行であり、前記第1の端部と第2の端部との間に延びている、円筒形のハブと、
前記湾曲面の円周に沿って配置されたブレードであって、前記回転軸線に関して前記ハブから半径方向外方に向かって突出しているブレードと、
を含むファンと、
前記モータを支持するシュラウドであって、
前記ファンを少なくとも部分的に取り囲み、かつ前記回転軸線と同心のバレルと、
前記バレルから延び、前記モータを支持するモータ支持構造体と、
を含む、シュラウドと
を備え、
前記ハブの端部と前記モータ支持構造体との間に運転ギャップが配置されており、該運転ギャップの寸法は、前記ハブの前記端部と前記モータ支持構造体との間の軸方向の距離に一致しており、ここで軸方向という語は、前記回転軸線に対して平行である方向を指しており、
前記モータ支持構造体は、前記運転ギャップ内に軸方向に突出する突出部を含み、
前記運転ギャップは、前記突出部において最小であり、
前記突出部は、前記ハブに面した接触面を含み、該接触面は、該接触面から水をはじくことを促進するように構成されている表面特徴を含んでいる、
自動車の冷却ファンアセンブリ。
【請求項29】
前記表面特徴は、溝を含んでいる、請求項
28記載のアセンブリ。
【請求項30】
前記表面特徴は、少なくとも1つのローレット加工部、点描および窪みを含んでいる、請求項28記載のアセンブリ。
【請求項31】
自動車の冷却ファンアセンブリであって、
モータと、
前記モータによって回転軸線を中心として回転するように駆動されるファンであって、
円筒形のハブであって、第1の端部、第2の端部および湾曲面を有し、前記湾曲面は、前記回転軸線に対して平行であり、前記第1の端部と第2の端部との間に延びている、円筒形のハブと、
前記湾曲面の円周に沿って配置されたブレードであって、前記回転軸線に関して前記ハブから半径方向外方に向かって突出しているブレードと、
を含むファンと、
前記モータを支持するシュラウドであって、
前記ファンを少なくとも部分的に取り囲み、かつ前記回転軸線と同心のバレルと、
前記バレルから延び、前記モータを支持するモータ支持構造体と、
を含む、シュラウドと
を備え、
前記ハブの端部と前記モータ支持構造体との間に運転ギャップが配置されており、該運転ギャップの寸法は、前記ハブの前記端部と前記モータ支持構造体との間の軸方向の距離に一致しており、ここで軸方向という語は、前記回転軸線に対して平行である方向を指しており、
前記モータ支持構造体は、前記運転ギャップ内に軸方向に突出する突出部を含み、
前記運転ギャップは、前記突出部において最小であり、
前記突出部は、前記ハブに面した接触面を含み、該接触面は、前記モータ支持構造体の表面粗さよりも大きな表面粗さを有している、
自動車の冷却ファンアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
自動車の冷却ファンアセンブリは、熱交換器を通して冷却空気の流れを運動させるように設計されている。自動車は、あらゆる天候、道路条件および地形において運転され得るので、車両が「ウォータハザード(water hazard)」に遭遇する状況が発生することがある。
【0002】
車両がウォータハザードに遭遇した場合、遭遇する水の深さは、車両がウォータハザードを通り抜けるか、または「渡る(ford)」ときに、ファンブレードの全てまたは一部を浸すために十分であり得る。
【0003】
ファンが「渡り」中に運転している場合、回転しているブレードは、水に入るときに(船舶プロペラに類似して)流体力学的な揚力を形成する。水は空気よりも約800倍大きな密度であるため、沈水させられたファンブレードによって形成された揚力は、「通常の」空気中での運転時よりも約800倍大きくなる。この極めて大きな推力により、ファンを取り囲む構造体に対して相対的なファンの、対応して大きな軸方向の変位が生じる。特に、ファンブレードが、熱交換器に接触するように十分に上流側に変位するおそれがある。ファンが熱交換器に接触した場合、穿孔のリスクがあり、この穿孔は、車両が運転不能になることにつながり得る。
【0004】
渡河中に運転しているファンが熱交換器に接触する可能性を高める要因は、大きな水深、高いファン回転速度、急激な浸水、軸方向に適合するファンブレード、大きなファン直径およびファンと熱交換器との間の制限された軸方向の距離を含む。
【0005】
ファンの変位を引き起こす渡河を制限するために採用され得る対抗手段には、(i)水に遭遇することに関連する高い負荷の検出時にモータがスイッチオフされるモータ過負荷検出、(ii)変位したブレードが熱交換器に接触することを防ぐ、ファンと熱交換器との間への固定的な障害物の組込み、および(iii)軸方向で剛性のファンブレードの組込みが含まれる。
【0006】
モータ過負荷検出を使用することの欠点は、ファン浸水があまりにも急速である場合、ファンの慣性は、モータに電力が供給されることなくある程度の時間、ファンの回転を維持するために十分なことである。ファンが回転している限り、熱交換器との接触は起こり得る。
【0007】
上流側の障害物を組み込むことの欠点は、通常の運転中に望ましくない騒音を発生させる障害物の可能性、もし、ファンブレードが障害物と接触した場合の、ファンブレードの破損の可能性および一般的には射出成形されたシュラウドツールに障害物を組み込む付加的な複雑さである。
【0008】
軸方向で剛性のファンブレードを組み込むことの欠点は、付加的な重量および材料コストおよび増厚されたブレードに伴う空力効率の可能な損失である。
【0009】
渡河事象中の過度なファンの変位による熱交換器の損傷を防止し、上述した欠点を回避する自動車の冷却ファンアセンブリを提供することが望まれている。
【0010】
概要
ファンアセンブリが渡河事象中に水に遭遇した場合、通常は空気中で運転されるファンブレードは、水中で運転する。少なくとも最初は、「典型的な」渡り事象は、ファン中心線の上に到達しない水深を伴い、流体力学的な力は、ファンディスクの下側の2つの四分円に制限される。水中での運転は、空気の密度に対する水の密度の比によって、いかなる沈水させられたブレードまたは部分的に沈水させられたブレードをも含むファンの沈水させられた部分において軸方向に向けられた推力(例えば、ファンの回転軸線に対して平行な方向に向けられた推力)を大幅に増大させる。結果として、沈水させられたブレードへの推力は、沈水させられていないブレードへの推力よりも約800倍大きい。この力の不均衡は、ファンブレードの変位、モータキャリヤおよび/またはモータシャフトの変位、ファンハブの変形および/またはファンの回転軸線に対して垂直な水平方向の旋回軸線を中心とするハブの変位を引き起こしてしまう。例えばハブは、回転しているファンの沈水させられた部分が上流に向かう方向に(例えば熱交換器に向かって)変位すると、ピボット軸線を中心として変位してしまう(
図15を参照)。
【0011】
幾つかの実施形態では、ファンの変位は、旋回軸線の下側の箇所における、ファンハブと隣接するモータ支持構造体との間の軸方向の運転ギャップを増大させ、旋回軸線の上側の箇所における、ファンハブと隣接するモータ支持構造体との間の運転ギャップを減少させるように作用する。旋回モーメントが十分に大きくなった場合、旋回軸線の上側に配置されたファンハブの部分が隣接するモータ支持構造体に接触し得る。
【0012】
ハブ22とモータ支持構造体との間で接触が生じると、固定的なシュラウド構造体がファンに機械的な支持を与えるので、ファンの沈水させられた部分のさらなる上流側の軸方向の変位は制限される。付加的に、回転しているファンと、固定的なシュラウドモータ支持構造体との間の接触によって引き起こされる摩擦は、ファンの回転速度を減速させ得る制動作用を提供する。軸方向の力は、ファン速度の2乗に比例するので、この制動作用は、ファンの沈水させられた部分の上流側の軸方向の変位をさらに制限するように作用する。
【0013】
本明細書に開示されたファンアセンブリは、旋回モーメントを、車両の渡河中のファンの変位を制限するための渡河挙動に活用する。シュラウドモータ支持構造体は、シュラウド特徴が、旋回軸線の上側の箇所において鉛直方向の軸線の近傍で、意図的な制限をもたらす軸方向の隙間を形成するように設計されており、これにより、ファンが車両の熱交換器に接触し、この熱交換器を損傷するリスクが減じられている。
【0014】
幾つかの実施形態では、モータ支持構造体に突出部が設けられており、この突出部は、制限をもたらす軸方向の隙間をもたらし、この隙間は、渡り中に、かつファンブレードが熱交換器に接触するように十分に遠くまで上流側へ変位してしまう前に、ハブとモータ支持構造体との間の接触をもたらし、突出部の周方向の範囲を制限することによって、過度に小さな軸方向の隙間に関連する(不十分なエンジン冷却または通常運転中の摩擦の可能性の増加のような)有害な効果を最小限にすることができる。
【0015】
渡河事象中の熱交換器の損傷を防止することに加えて、本明細書に開示されたファンアセンブリは、以下の利点を有することができる:(i)軸方向の変位を減じるために、モータ過負荷検出は必要とされない;(ii)上流の障害物が必要とされない、および(iii)空力学的な効率と構造的な頑丈性との間のファン設計の二律背反が排除され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】ファンを省略して示した、
図1に示したファンアセンブリを示す斜視図である。
【
図4】
図1に示したファンアセンブリの一部を示す斜視詳細図である。
【
図5】
図1に示したファンアセンブリを示す概略的な横断面図である。
【
図6】予め規定された領域と局所的な鉛直方向の軸線および水平方向の軸線とを示す、
図1に示したファンアセンブリを示す端面図である。
【
図7】ファンを省略して示した、代替的な実施形態の突出部を含むファンアセンブリを示す斜視図である。
【
図8】ファンを省略して示した、別の代替的な実施形態の突出部を含むファンアセンブリを示す分解斜視図である。
【
図9】さらに別の代替的な実施形態の突出部を含むファンアセンブリを示す分解斜視図である。
【
図10】
図9に示したファンアセンブリの一部を示す拡大図である。
【
図11】代替的な実施形態のファンアセンブリを示す斜視図である。
【
図13】別の代替的な実施形態のファンアセンブリを示す斜視図である。
【
図14】
図13に示したファンアセンブリの一部を示す拡大図である。
【
図15】通常のファン運転中の熱交換器に対して相対的なファンの相対的な位置および配向(実線)を示す、車両冷却システムの一部を示す図であり、渡河事象中に変位した場合の、熱交換器に対して相対的なファンの相対的な位置および配向(破線)を示している。
【
図16】突出部の接触面上に配置された溝を示す、
図1に示したファンアセンブリの一部を示す拡大図である。
【
図17】突出部の接触面上に配置されたローレット加工部を示す、
図1のファンアセンブリの一部を示す拡大図である。
【
図18】突出部の接触面上に配置された研磨粒子を示す、
図1のファンアセンブリの一部を示す拡大図である。
【0017】
詳細な説明
図1~
図5を参照すると、車両の熱交換器の冷却するために使用されるタイプのファンアセンブリ1は、ファン20と、回転軸線12を中心としてファン20を回転させるように駆動するモータ30と、熱交換器14(
図15に示されている)に関してファン20およびモータ30を支持するシュラウド40とを含んでいる。シュラウド40は、「引込み」構成で熱交換器14に結合されるように構成されており、これによりファン20は、熱交換器14を通じて空気流を吸い込む。図面では、ファンアセンブリ1を通る空気流の方向は、参照符号10を有する矢印によって表されている。代替的に、ファンアセンブリ1は、「押込み」構成で熱交換器14に結合されてもよく(図示せず)、これによりファン20が熱交換器を通じて空気流を排出する。
【0018】
本明細書で使用される「上流」および「下流」という語は、ファンアセンブリ1を通る空気流10の方向に関する方向を指示するために使用される。
【0019】
説明の目的で、ファンの回転軸線12は水平方向の平面に延びており、「鉛直方向」および「水平方向」という語は、本明細書では、回転軸線12に対して、かつ互いに対して垂直であり、かつ回転軸線12に対してそれぞれ鉛直方向および水平方向に延びる局所的な軸線を指すものと想定されたい。ファンアセンブリ1が、水平方向の面に置かれた車両に配置されている場合、ファンアセンブリ1は、ファンの回転軸線12が「真の」水平方向の軸線に対して傾斜させられているように、空間において配向されていてもよいということを理解されたい。例えば、幾つかの車両では、ファンアセンブリ1は、ファンの回転軸線12が「真の」水平方向に対して10度の角度を成すように空間において配向されており、車両が凹凸のある地形上で使用される間に、ファンの回転軸線12は、「真の」水平方向からさらにより大きなずれを有していてもよい。ファンアセンブリ1のこのような「実際の使用」における配向については、局所的な鉛直方向および局所的な水平方向は、真の鉛直方向および真の水平方向からの対応するずれを有している。
【0020】
ファン20は、中央のハブ22と、ハブ22から半径方向外方に向かって延びるブレード24とを含む軸流ファンである。幾つかの実施形態では、ハブ22およびブレード24は、例えば射出成形プロセスにおいて、単一の部材として形成されている。ハブ22は、シリンダ形であり、回転軸線12に対して平行である湾曲面23を有している。ハブ22は、熱交換器14に面した上流側の端部25と、これとは反対側の下流側の端部29とを有している。各ブレード24は、ハブの湾曲面23に結合されたルート26と、ルート26から離間した先端部28とを含んでいる。各ブレード24の表面は、特定の用途の要求により決定される複雑な三次元の曲率を有している。ファン20は、各ブレードの先端部28が周囲の帯材(図示せず)に結合されている「帯材付きファン」であってもよく、または代替的には、帯材を省略してもよく、これによってブレード先端部28は、図示された実施形態において示されているように、「自由である」と称される。
【0021】
ハブ22は、ファン20がモータ30によりファンの回転軸線12を中心とした回転のために駆動されかつモータ30によりシュラウド403に対して支持されているように、モータ30に機械的に結合されている。
【0022】
図示の実施形態では、モータ30は、例えば、電子整流式(EC)ブラシレスDCモータであってもよい。別の実施形態では、モータ30は、ブラシを介して機械的に整流されてもよい。ECモータの場合、渡り中に、モータ30は、「過負荷」状態を検出し、停止する機能を含んでいてもよい。ブラシ付きモータの場合、負荷が設計状態よりも大きい場合、ヒューズが「溶断」し、モータ回路が遮断される。
【0023】
図示の実施形態では、シュラウド40は、熱交換器14とファン20との間の空気流通路を提供する成形されたワンピースの構造体であり、ファン20およびモータ30を所望の位置において支持している。シュラウド40は、プレナム32と、このプレナム32の下流側の端部に接続されているバレル42と、バレル42の内面43に支持され、プレナム32に関してモータ30およびファン20を支持するために構成されているモータ支持構造体41とを含んでいる。
【0024】
プレナム32は、第1の端部33と、この第1の端部33の下流側にある第2の端部34とを有している。プレナムの第1の端部33は、概して矩形であり、公知の接続技術を介して、かつ/または公知のコネクタを使用して、熱交換器14または別の車両構造体に固定されるように構成されている。プレナムの第2の端部34は、概して円錐形であり、第1の端部33から離れた箇所において最小の横断面寸法を有しており、これによりプレナム32により画定された空気流通路は、空気流の方向10に沿って内向きに先細りしている。
【0025】
バレル42は、プレナム32の第2の端部34から下流方向に延びていて、ファン20を少なくとも部分的に取り囲んでいる。バレル42は、円形の横断面形状を有する環状の帯材である。バレル42は、回転軸線12と同心的である。
【0026】
モータ支持構造体41は、バレル42に関して内側に配置されている、モータ30を支持するモータキャリヤ44と、バレル42とモータキャリヤ44との間で概して半径方向に延びる支持アーム38とを備える。
【0027】
モータキャリヤ44は、モータ30を取り囲む概して環状の構造体である。図面では、モータキャリヤ44は、回転軸線に対して垂直な断面で見た場合に、概して円形の横断面形状を有しているものとして図示されているが、モータキャリヤ44の横断面形状は、モータキャリヤ44が支持するモータ30の形状に適応することができるので、この構成に限定されない。モータキャリヤ44は、上流側に面した、例えばファン20に向かう第1の端部45と、この第1の端部45とは反対側の、下流側に面した、例えばファン20から離れる第2の端部46とを有している。モータキャリヤ44は、バレルの内面43に面した外面47と、回転軸線12に面した、モータ30を収容するために成形および寸法設計された内面48とを有している。図示の実施形態では、モータキャリヤ44はバレル42によって取り囲まれているが、この構成に限定されない。例えば、幾つかの実施形態では、モータキャリヤ44は、ファンアセンブリ1を通る空気流の方向10に関してバレル42のわずかに上流側または下流側に配置されていてもよい。モータ30は、ファン20が、ファンアセンブリ1を通る空気流の方向10に関してモータキャリヤ44の上流側に配置されているように、モータキャリヤ44によって支持されている。
【0028】
支持アーム38は、モータ30がバレル42の中心領域に配置されているように、バレル42に対して相対的にモータキャリヤ44を支持する。このために、支持アーム38は、モータキャリヤの外面47とバレル42の内面43との間に延びている。支持アーム38は、モータキャリヤ44の周囲に沿って離間している。幾つかの実施形態では、各支持アーム38は薄いビームである。
【0029】
シュラウドに対して相対的なファン20の自由な回転を可能にするために、回転するファン20と、回転しないシュラウド40との間に運転ギャップ52が存在している。運転ギャップ52は、ファン20とシュラウド40のいかなる部分との間でも摩擦が生じることなしに、ファン20が自由に回転することを可能にする。運転ギャップ52は、ハブ22と隣接するモータ支持構造体41との間の軸方向のギャップである。本明細書で使用される「軸方向」という語は、回転軸線12に対して平行な方向を指示している。より具体的には、運転ギャップ52は、ハブ22の最も下流側の部分(例えばハブ下流側の端部29)とモータ支持構造体41との間に配置されており、運転ギャップ52は、ハブの下流側の端部29とモータ支持構造体41との間の距離に一致する。
【0030】
運転ギャップ52の寸法は、モータ冷却性能、製造公差および利用可能な軸方向の装入深さ間の妥協点である。効率的なモータ冷却は、モータ冷却空気流がギャップを通って自由に流れることができるように運転ギャップ52が十分に大きいことを必要とする。製造公差は、ファンアセンブリ1の通常運転中に反った、または歪んだ構成要素間の意図しない接触の可能性を最小限にするための「大きな」運転ギャップ52を与える。他方では、ファンアセンブリ1の軸方向の装入深さは、典型的には制限されており、したがって、運転ギャップ52を任意に大きく形成することはできない。
【0031】
突出部80が、モータキャリヤ44の第1の端部45に設けられている。突出部80は、第1の端部81と、第1の端部81とは反対側の第2の端部82とを有する。突出部80は、第1の端部81と第2の端部82との中ほどに中心83を有している。突出部80は、軸方向に、例えば、回転軸線12に対して平行な軸線に沿ってファン20に向かって突出しており、これにより、運転ギャップ52内へと延びている。少なくとも運転ギャップ52に突出部80が存在することによって、運転ギャップ52は、ハブ22の下流側の端部29の円周に関して不均一な寸法を有している。さらに、突出部は、運転ギャップ52の寸法が突出部80において最小であるように寸法設定されている。
【0032】
突出部80は、モータキャリヤ44とファンハブ22との間に隙間50を画定するために働き、この隙間50は、渡河事象中のファン20の変位の範囲を制限する。なぜならば、突出部80は、渡り中かつファンブレードが熱交換器と接触するように十分に上流側へ変位してしまう前に、ハブ22とモータキャリヤ44との間で接触点を提供するように構成されているからである。突出部80の上流側の端部または接触面84と、ハブの下流側の端部29との間のこの直接的な接触を介して、モータ支持構造体41を含むシュラウド40は、ファン20に機械的な支持を付与する。
【0033】
より具体的には、隙間50は、突出部80とハブ22との間に配置されており、この隙間50の寸法は、突出部の接触面84とハブの下流側の端部29との間の軸方向の距離に一致する。幾つかの実施形態では、隙間50は、隙間50の外側の箇所において、平均的な運転ギャップ52の50%未満である。別の実施形態では、隙間50は、隙間50の外側の箇所において、平均的な運転ギャップ52の40%未満である。さらに別の実施形態では、隙間50は、隙間50の外側の箇所において、平均的な運転ギャップ52の30%未満である。さらに別の実施形態では、隙間50は、隙間50の外側の箇所において、平均的な運転ギャップ52の20%未満である。さらに別の実施形態では、隙間50は、隙間50の外側の箇所において、平均的な運転ギャップ52の10%未満である。
【0034】
図示された実施形態では、突出部80は延長されていて、この場合、この突出部80は、突出部80の半径方向の寸法92または軸方向の寸法94より大幅に大きな長さ寸法90(例えば、突出部の第1の端部81と第2の端部82との間の距離)を有するようになっている。例えば、図示された実施形態では、長さ寸法90は、軸方向の寸法92および半径方向の寸法94の10倍以上であってもよい。回転の方向に延びる突出部80が設けられることにより、接触面84の摩擦を誘発する表面積は延長されておりこれにより、突出部80は、ファンの回転速度を減速し得る有効な制動作用を提供することができる。
【0035】
突出部80は、湾曲した軌道に沿って連続的に延びている。図示された実施形態では、湾曲した軌道が、モータキャリヤ44の周縁部49に一致しているのに対して、別の実施形態では、突出部80は、モータキャリヤ44の第1の端部45において、モータキャリヤの周縁部49から離間させられた箇所に配置されている。
【0036】
突出部80は、渡河事象中にファン20の変位の程度を最小にする箇所に配置されている。図示されたファンアセンブリ1では、ファン20の下部が沈水させられる渡河事象中に、ハブ22の変位が生じることがあり、この変位中に、ハブ22は、回転軸線12に対して概して垂直であり、かつ回転軸線12と交差するかまたはほぼ交差する水平方向の旋回軸線18(
図15に点として示されている)を中心として旋回する。ハブ22の旋回変位は、旋回軸線18の下側の箇所においてハブ22とモータキャリヤ44との間の軸方向の運転ギャップ52を増大させ、かつ旋回軸線18より上側の箇所においてハブ22とモータキャリヤ44との間の運転ギャップを減少させるように作用する。このために、突出部80は、運転ギャップ52の予め規定された領域60に配置されている。
【0037】
図6を参照すると、予め規定された領域60は、扇形を有している。この扇形は、第1の扇線分61と、第2の扇線分62と、第1の扇線分61と第2の扇線分62との間に延びる扇円弧65とにより画定されている。扇形の頂点66は、第1の扇線分61および第2の扇線分62の交点に一致している。頂点66は回転軸線12に一致している。予め規定された領域60は、運転ギャップ52に配置されかつ回転軸線12と交差する鉛直方向の軸線63と重なる。第1の扇線分61は、鉛直方向の軸線63に対して第1の角度θ1であり、第2の扇線分62は、鉛直方向の軸線63に対して第2の角度θ2である。
【0038】
幾つかの実施形態では、第1の扇線分61は、突出部の第1の端部81を通過し、第2の扇線分62は、突出部の第2の端部82を通過するのに対して、別の実施形態では、突出部の第1の端部81および第2の端部82は、第1の扇線分61および第2の扇線分62から離間されている。
【0039】
突出部80は、最も上側の方位角位置54を横切って延びるように予め規定された領域60に配置されている。幾つかの実施形態では、突出部80の中心83は、最も上側の方位角位置54に重なる(例えば、軸方向に整列している)。換言すると、突出部80は、モータキャリヤの第1の端部45の上部の中心位置または最も上側の方位角位置54に対応する箇所に配置されている。最も上側の方位角位置54は、キャリヤの第1の端部45が鉛直方向の軸線63に面している(例えば、軸方向に整列している)箇所に対応する。付加的には、突出部は、モータキャリヤの第1の端部45の、回転軸線12(旋回軸線18)から最も遠い範囲に配置されている。
【0040】
図6に示した予め規定された領域60の概略図において、予め規定された領域60は、回転軸線12および鉛直方向の軸線63と交差する水平方向の軸線64の上側にある。付加的には、鉛直方向の軸線63から測定して、第1の角度θ1は-45度であり、第2の角度θ2は+45度である。第1の角度θ1および第2の角度θ2は、特定の用途の要求によって決定される。幾つかの実施形態において、第1の角度θ1は、-90度~0度の範囲にあり、第2の角度θ2は、0度~+90度の範囲にある。別の実施形態では、第1の角度θ1は、-45度~0度の範囲にあり、第2の角度θ2は、0度~+45度の範囲にある。さらに別の実施形態では、第1の角度θ1は、-30度~0度の範囲にあり、第2の角度θ2は、0度~+30度の範囲にある。さらに別の実施形態では、第1の角度θ1は、-10度~0度の範囲にあり、第2の角度θ2は、0度~+10度の範囲にある。さらに別の実施形態では、第1の角度θ1は、-5度~0度の範囲にあり、第2の角度θ2は、0度~+5度の範囲にある。さらに別の実施形態では、第1の角度θ1は、-1度~0度の範囲にあり、第2の角度θ2は、0度~+1度の範囲にある。さらに別の実施形態では、第1の角度θ1は、-90度~-45度の範囲にあり、第2の角度θ2は、-40度~0度の範囲にある。さらに別の実施形態では、第1の角度θ1は、0度~40度の範囲にあり、第2の角度θ2は、45度~90度の範囲にある。幾つかの実施形態において、第1の角度θ1の絶対値は、第2の角度θ2の絶対値よりも大きい。別の実施形態では、第1の角度θ1の絶対値は、第2の角度θ2の絶対値よりも小さい。
【0041】
幾つかの実施形態では、突出部80の中心83は、最も上側の方位角位置54からずらされている。例えば、ファン20が時計回り方向に回転する実施形態では、突出部の中心83は、
図1~
図4に示したように、最も上側の方位角位置54から時計回り方向でずらされていてもよい。同様に、ファン20が反時計回り方向に回転する実施形態では、突出部の中心83は、最も上側の方位角位置54から反時計回り方向にずらされていてもよい。
【0042】
図7を参照すると、突出部80は、最も上側の方位角位置54を横切って延びるように図示されているが、突出部80は、この構成に限定されない。例えば、幾つかの実施形態において、代替的な実施形態の突出部180は、最も上側の方位角位置54に対してずらされていてもよい。
【0043】
突出部80は、細長く、円弧状の軌道に沿って延びているように図示されているが、突出部80は、この構成に限定されない。例えば、幾つかの実施形態において、突出部80は、線形の軌道に沿って延びていてもよい。別の実施形態では、突出部80は、細長くなくてもよく、その代わりにシリンダ形を有してもよい。例えば、別の代替的な突出部280は、軸方向に突出した柱の外観を有していてもよい(
図8)。
【0044】
図9および
図10を参照すると、突出部80は、単独の連続した構造体に限定されない。例えば、幾つかの実施形態において、突出部80は、例えば、ファスナ開口(図示せず)のような、モータキャリヤ44の補助的な構造を収容するために、その長さに沿って不連続であってもよい。この実施形態では、突出部80が、第1の部分80(1)と、第1の部分80(1)から湾曲した軌道に沿って離間させられた第2の部分(2)とを含んでいる。
【0045】
ファン20がモータ支持構造体41に対して上流側に配置されている上述の実施形態では、突出部80が、最も上側の方位角位置54に配置されているように図示されている。しかし、幾つかの代替的なファンアセンブリ100において、モータ支持構造体41が、ファン20の上流側に配置されていてもよい。
【0046】
図11および
図12を参照すると、モータ支持構造体41がファン20の上流側に配置されているファンアセンブリ100が示されている。ファン20の下側部分が沈水させられる渡河事象中、ハブ22の旋回変位は、旋回軸線より下側の箇所においてハブ22とモータキャリヤ44との間の軸方向の運転ギャップ52を減少させ、旋回軸線18より上側の箇所においてハブ22とモータキャリヤ44との間の運転ギャップを増大させるように作用する。このために、突出部80は、モータキャリヤの第1の端部45の最も低い範囲に配置されている。換言すると、突出部80は、モータキャリヤの第1の端部45の最も下側の方位角位置56に対応する箇所に配置されている。最も下側の方位角位置56は、キャリヤの第1の端部45が、回転軸線12を通る鉛直方向の線63に面している(例えば、軸方向で整列している)箇所に対応する。
【0047】
上述の実施形態では、ハブ22の直径は、概して、モータキャリヤ44の直径以下である。このような実施形態において、突出部はモータキャリヤ44上に設けられており、隙間距離は、ハブ22の下流側の端部29と、突出部80の上流側の端部との間で測定される。別の実施形態では、ハブ22の直径が、モータキャリヤ44の直径よりも大きくてもよい。例えば、
図13および
図14を参照すると、代替的な実施形態のファンアセンブリ200は、上述のファンアセンブリ1と類似しており、共通の部材を示すために、共通の符号が使用されている。ファンアセンブリ200は、ファンハブ222の直径がモータキャリヤ44の直径よりも大きいという点で、ファンアセンブリ1と異なる。ファンアセンブリ200において、突出部80は、ハブ222の下流側の端部229に面し、軸方向で整列させられているように、モータキャリヤ44ではなく、支持アーム38のファンに面した端部39上に設けられている。図示された実施形態では、突出部80は、2つの隣接する支持アーム38a,38bにわたって延びるために十分な長さ90を有している。この実施形態では、隙間距離は、ハブ22の下流側の端部29と、突出部80の上流側の端部84との間で測定される。
【0048】
ファンアセンブリ1が渡河事象中に水に遭遇すると、ファン20の沈水させられた部分の上流側の軸方向の変位は、突出部がハブ22に接触するので制限されており、これによって固定的なシュラウド構造体がファン20に機械的支持を与える。さらに、回転しているファン20と、シュラウドモータ支持構造体44に設けられた突出部80との接触によって引き起こされる摩擦は、ファンの回転速度を減速させ得る制動作用を提供する。軸方向の力はファン速度の2乗に比例するので、この接触は、ファン20の沈水させられた部分の上流側の軸方向の変位をさらに制限するように作用する。突出部80は、対応するモータ支持構造体の最も上側の方位角位置の近傍で、意図的な制限をもたらす軸方向の隙間50を形成し、これによりファン20が車両熱交換器14に接触し、この熱交換器を損傷するリスクが減じられている。
【0049】
ハブ22とモータ支持構造体41の突出部80との間の接触が渡り中に、かつファンのブレード24が熱交換器14に接触するように十分に遠くまで上流側に変位してしまう前に生じるように軸方向の隙間50を制限するように突出部80を設計し、かつ突出部80の周方向の範囲を制限することによって、過度に小さな軸方向の隙間に関連する(不十分なエンジン冷却または通常運転中の摩擦の可能性の増加のような)有害な効果を最小限にすることができる。
【0050】
図16~
図18を参照すると、幾つかの実施形態において、突出部80の接触面84は、表面特徴を含んでいてもよい。幾つかの実施形態において、表面特徴は、接触面から水をはじくことを促進するように構成されている。このような実施形態において、表面特徴は、接触面84から離れるように水を方向付ける1つ以上の溝85を含んでいてもよい(
図16)。図示された実施形態では、表面特徴は、接触面84の長さに沿って延びる単独の溝85であるが、溝85は、この構成に限定されない。例えば、複数の溝85が存在していてもよく、これらの溝が、山形の形状または別の流れ促進構成を有していてもよい。別の実施形態では、表面特徴は、突出部80によって提供される制動効果を促進するように構成されている。このためには、表面特徴は、接触面の増大された粗さを提供するように構成されていてもよい。幾つかの実施形態において、接触面は、モータ支持構造体44の表面粗さより大きな表面粗さを有している。幾つかの実施形態においては、この表面特徴は、ローレット加工部185(
図17)、点描、窪みまたは別の適切な構造のうちの1つ以上から成る表面特徴を提供することによって達成することができる。別の実施形態では、この表面特徴は、接触面84上に研磨性粒子285(
図18)を含む研磨性コーティングを設けることによって達成することができる。
【0051】
ファンアセンブリの選択的に図示された実施形態を、幾らか詳細に上述した。明細書においてファンアセンブリを明確にするために必要であると考えられる構造のみを説明したことを理解されたい。別の従来の構造およびファンアセンブリの付属的および補助的な構成要素の構造は、当業者には公知であり、理解されている。さらに、ファンアセンブリの実施例を上述したが、ファンアセンブリは、上述した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されたファンアセンブリから逸脱することなしに、種々の設計変更を実施することができる。