(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20240220BHJP
F02M 25/00 20060101ALI20240220BHJP
F02D 19/08 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
F02M37/00 331C
F02M37/00 341H
F02M25/00 H
F02M25/00 K
F02D19/08 Z
(21)【出願番号】P 2019100306
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2022-05-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508055618
【氏名又は名称】株式会社日本エコソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 良
(72)【発明者】
【氏名】島陰 豊成
(72)【発明者】
【氏名】高橋 司
(72)【発明者】
【氏名】坂本 明
(72)【発明者】
【氏名】金子 政司
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-189939(JP,A)
【文献】特開2015-063935(JP,A)
【文献】特開昭54-138923(JP,A)
【文献】実開昭58-113866(JP,U)
【文献】特開2001-050128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00-28/00
F02M 37/00-37/54
F02B 47/00-47/06
F02B 49/00
F02M 25/00-25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散した水滴および植物由来油を含む燃料を用いるディーゼルエンジンにおける燃料供給装置であって、
前記燃料が貯留される燃料タンクから燃料噴射部に前記燃料を供給する配管である供給配管と、
前記供給配管に配置され、前記燃料を加圧して前記燃料噴射部へ送出する燃料噴射ポンプと、
前記燃料噴射部において噴射されずに流出する前記燃料が流れるリターン配管と、
前記供給配管における前記燃料タンクと前記燃料噴射ポンプとの間に配置され、前記リターン配管を流れる前記燃料を、前記燃料タンク
に戻すことなく前記燃料噴射ポンプへ供給する先出し部と、
が設けられていることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記先出し部には、
前記燃料タンクから延びる前記供給配管、および、前記リターン配管から前記燃料が流入可能に接続されるとともに、前記燃料噴射ポンプへ延びる前記供給配管へ前記燃料を供給可能に接続されたリターン容器と、
前記リターン容器に貯留された前記燃料の量を検出するセンサと、
前記燃料タンクから前記リターン容器への前記燃料の流入を制御する制御弁と、
前記センサの検出信号に基づいて、前記リターン容器に貯留された前記燃料の量が所定量以上になると、前記制御弁を制御して前記燃料の流入を制限する制御部と、
が設けられていることを特徴とする請求項1記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記先出し部には、前記燃料噴射ポンプに供給される前記燃料の中に分散していた水滴が前記燃料から分離して発生した水を除去する脱水部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記先出し部には、前記燃料噴射ポンプに供給される前記燃料から気体を除去する脱気部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
前記先出し部には、前記燃料噴射ポンプに供給される前記燃料の温度を調整する温度調整部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料供給装置。
【請求項6】
前記先出し部には、前記燃料噴射ポンプに供給される前記燃料から固形物を除去するフィルタ部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水および植物由来油を含む燃料を用いるディーゼルエンジンに用いて好適な燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンに用いられる燃料として植物由来の油を含む燃料を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。ディーゼルエンジンの燃料としては軽油が良く知られている。このような燃料の他に、軽油と植物由来の油との混合物である燃料や、植物由来の油からなる燃料や、さらに水を混合させた燃料などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ディーゼルエンジンでは、燃料噴射ポンプにより圧力が高められた燃料をインジェクションノズルに供給している。供給された燃料の一部はインジェクションノズルから気筒内に噴射されている。その一方で、インジェクションノズルから噴射されなかった燃料は、燃料タンクに戻されている。燃料タンクに戻る燃料は、大気圧にまで圧力が低下している。つまり、インジェクションノズルから噴射されない燃料に対して、加圧および減圧が繰り返し行われている。
【0005】
しかしながら燃料に対して加圧および減圧が繰り返されると、植物由来の油を含む燃料を用いている場合、植物由来の油から固形物が生成されることがある。固形物は、燃料噴射ポンプやインジェクションノズルなどの、ディーゼルエンジンの燃料が流れる系統を閉塞する問題を発生させる可能性があった。
【0006】
また、水を含む燃料を用いている場合には、水が燃料中に分散している状態であったものが、加圧および減圧が繰り返されることにより水が分離してしまうことがある。分離した水が供給されると、ディーゼルエンジンに不具合が発生する可能性があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、水および植物由来油を含む燃料を用いた際の不具合発生を抑制することができる燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の燃料供給装置は、水および植物由来油を含む燃料を用いるディーゼルエンジンにおける燃料供給装置であって、前記燃料が貯留される燃料タンクから燃料噴射部に前記燃料を供給する配管である供給配管と、前記供給配管に配置され、前記燃料を加圧して前記燃料噴射部へ送出する燃料噴射ポンプと、前記燃料噴射部において噴射されずに流出する前記燃料が流れるリターン配管と、前記供給配管における前記燃料タンクと前記燃料噴射ポンプとの間に配置され、前記リターン配管を流れる前記燃料を、前記燃料タンクから供給される前記燃料よりも優先して前記燃料噴射ポンプへ供給する先出し部と、が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の燃料供給装置によれば、先出し部を設けたことにより、リターン配管を流れる燃料は、タンクから供給される燃料よりも優先して燃料噴射ポンプへ供給される。言い換えると、リターン配管を流れる燃料は、タンクから供給される燃料よりも先に燃料噴射部から噴射されて燃焼されやすくなる。そのため、燃料が燃料噴射ポンプにより加圧され、その後に減圧される回数の増加を抑制しやすくなり、加圧および減圧に起因する燃料の劣化を抑制しやすくなる。
【0010】
上記発明において前記先出し部には、前記燃料タンクから延びる前記供給配管、および、前記リターン配管から前記燃料が流入可能に接続されるとともに、前記燃料噴射ポンプへ延びる前記供給配管へ前記燃料を供給可能に接続されたリターン容器と、前記リターン容器に貯留された前記燃料の量を検出するセンサと、前記燃料タンクから前記リターン容器への前記燃料の流入を制御する制御弁と、前記センサの検出信号に基づいて、前記リターン容器に貯留された前記燃料の量が所定量以上になると、前記制御弁を制御して前記燃料の流入を制限する制御部と、が設けられていることが好ましい。
【0011】
このように先出し部にリターン容器とセンサと制御弁と制御部とを設けることにより、リターン配管を流れる燃料を、タンクから供給される燃料よりも優先して燃料噴射ポンプへ供給することができる。
【0012】
具体的には、リターン容器に貯留された燃料の量が所定量以上になると、燃料タンクからリターン容器への燃料の流入が停止または抑制される。その一方で、リターン容器から燃料噴射ポンプへの燃料の供給、および、リターン配管からリターン容器への燃料の流入は、継続して行われる。燃料噴射部から燃料が噴射されて、リターン容器に貯留された燃料が消費されてその量が所定量未満となると、燃料タンクからリターン容器への燃料の流入が再開される。
【0013】
つまり、リターン容器に貯留された燃料の量が所定量以上の期間では、リターン容器にはリターン配管からのみ燃料が流入することとなり、リターン容器から燃料噴射ポンプへ供給される燃料のうち、リターン配管から流入する燃料の割合が高くなりやすい。言い換えると、燃料タンクから供給される燃料よりも、リターン配管を流れる燃料を優先して燃料噴射ポンプへ供給しやすくなる。
【0014】
上記発明において前記先出し部には、前記燃料噴射ポンプに供給される前記燃料から水を除去する脱水部が設けられていることが好ましい。
このように脱水部を設けることにより、燃料から分離した水が取り除かれる。そのため、分離した水が原因となる燃料噴射ポンプの不具合の発生を抑制しやすくなる。分離した水としては、例えば、リターン配管から先出し部に流入する燃料に含まれるものや、燃料タンクから先出し部に流入する燃料に含まれるものを例示することができる。
【0015】
上記発明において前記先出し部には、前記燃料噴射ポンプに供給される前記燃料から気体を除去する脱気部が設けられていることが好ましい。
このように脱気部を設けることにより、燃料から分離した気体が取り除かれる。そのため、分離した気体が原因となる燃料噴射ポンプの不具合の発生を抑制しやすくなる。分離した気体としては、例えば、リターン配管から先出し部に流入する燃料に含まれるものや、燃料タンクから先出し部に流入する燃料に含まれるものを例示することができる。
【0016】
上記発明において前記先出し部には、前記燃料噴射ポンプに供給される前記燃料の温度を調整する温度調整部が設けられていることが好ましい。
このように温度調整部を設けることにより、燃料噴射ポンプに燃料を供給しやすい状態を維持しやすくなる。例えば、燃料の温度を制御することにより、燃料に含まれる植物由来油の固化を抑制することや、燃料の流れやすさに影響する粘度を所望の範囲とすることができる。
【0017】
上記発明において前記先出し部には、前記燃料噴射ポンプに供給される前記燃料から固形物を除去するフィルタ部が設けられていることが好ましい。
このようにフィルタ部を設けることにより、燃料噴射ポンプに供給される燃料から固形物が取り除かれる。そのため、固形物が原因となる燃料噴射ポンプの不具合の発生を抑制しやすくなる。固形物としては、例えば、リターン配管から先出し部に流入する燃料に含まれる固形物や、燃料に含まれる植物由来油が劣化して生成される重合物などを例示することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の燃料供給装置によれば、先出し部を設けることにより、燃料が加圧され、減圧される回数の増加を抑制しやすくなるため、水および植物由来油を含む燃料を用いた際の不具合発生を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の燃料供給装置の構成を説明する概略図である。
【
図2】
図1の先出し部の構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の一実施形態に係る燃料供給装置1について、
図1および
図2を参照して説明する。本実施形態では、燃料供給装置1が水および植物由来油を含む燃料を用いるディーゼルエンジンに適用される例に適用して説明する。特に発電に用いられる定置型のディーゼルエンジンに適用される例に適用して説明する。
【0021】
燃料供給装置1は、
図1に示すように、燃料タンク5からディーゼルエンジン6のインジェクションノズル(燃料噴射部)7へ燃料を供給するものである。また、インジェクションノズル7からディーゼルエンジン6の気筒内に噴射可能とするために供給する燃料の圧力を高めるものである。燃料供給装置1には、供給配管10と、燃料噴射ポンプ20と、リターン配管30と、先出し部50と、が主に設けられている。
【0022】
なお、
図1には図示されていないが先出し部50と、燃料噴射ポンプ20との間に、燃料に含まれる水分を取り除く水分除去フィルタ、および、燃料に含まれる固形物を取り除く固形物除去フィルタが更に設けられていてもよい。
【0023】
燃料は、軽油と植物由来の油の混合油、または、植物由来の油と、水とのエマルジョン(またはエマルションとも表記する。)である。本実施形態では、燃料に対して20体積パーセントの水が添加されている燃料であって、油の中に水滴が分散しているエマルジョンの例に適用して説明する。
【0024】
植物由来の油としては、パーム油や、大豆油や、菜種油や、ポンガミア(油)などを例示することができる。更には、スギ、ヒノキおよび松等の針葉樹から抽出される油や、コナラおよびクヌギ等の広葉樹から抽出する油なども例示することができる。また、添加される水の量としては20体積パーセントよりも多くてもよいし、少なくてもよい。
【0025】
供給配管10は、燃料が貯留される燃料タンク5からインジェクションノズル7に向かって燃料が流通可能とする配管である。供給配管10には、燃料タンク5と先出し部50との間を燃料が流通可能に接続する第1配管11と、先出し部50と燃料噴射ポンプ20との間を燃料が流通可能に接続する第2配管12と、燃料噴射ポンプ20とインジェクションノズル7との間を燃料が流通可能に接続する第3配管13と、が含まれる。
【0026】
燃料噴射ポンプ20は、供給配管10に配置され、燃料を加圧してインジェクションノズル7へ送出するものである。燃料噴射ポンプ20には、第2配管12および第3配管13が接続されている。本実施形態では、燃料噴射ポンプ20が列型噴射ポンプである例に適用して説明する。なお、燃料噴射ポンプ20の具体的な構成としては、公知の構成を用いることができる。
【0027】
リターン配管30は、インジェクションノズル7において噴射されずにインジェクションノズル7から流出する燃料が流れる配管である。リターン配管30は、一方がそれぞれインジェクションノズル7に接続する複数の端部を有し、他方は先出し部50に接続される1つの端部を有している。
【0028】
先出し部50は、リターン配管30を流れる燃料を、燃料タンク5から供給される燃料よりも優先して燃料噴射ポンプ20へ供給するものである。先出し部50は、供給配管10における燃料タンク5と燃料噴射ポンプ20との間に配置されるものであり、第1配管11、第2配管12、および、リターン配管30と接続されるものである。
【0029】
先出し部50は、燃料タンク5よりもディーゼルエンジン6および燃料噴射ポンプ20の近傍に配置されていることが好ましい。このようにすることで、先出し部50からディーゼルエンジン6および燃料噴射ポンプ20まで燃料を供給する距離を短くすることが容易となり、配管の設置が容易となり、設置コストの低減を図りやすくなる。また、燃料を供給する距離が長い場合と比較して、燃料を送る圧力である送油の補正を行うポンプを設置する必要性が低くなる。さらに、燃料の温度を維持する加温手段を設置する必要性が低くなる。
【0030】
先出し部50には、リターン容器51と、センサ52と、制御弁53と、制御部54と、脱水部55と、脱気部56と、温度調整部57と、フィルタ部58とが設けられている。
【0031】
リターン容器51は、燃料が一時的に貯留される容器である。リターン容器51には、有底筒状に形成された容器本体51Aと、容器本体51Aの開口を閉じる蓋部51Bと、が主に設けられている。
【0032】
容器本体51Aにおける下面には燃料噴射ポンプ20へ延びる第2配管12が接続され、燃料が燃料噴射ポンプ20に向かって流出可能に接続されている。蓋部51Bには、燃料タンク5から延びる第1配管11、および、インジェクションノズル7から延びるリターン配管30が接続され、燃料がリターン容器51内に流入可能に接続されている。
【0033】
センサ52は、リターン容器51に貯留された燃料の量を検出するものである。本実施形態では、リターン容器51の内部に貯留された燃料の液面の位置を検出することにより、貯留された燃料が所定量を下回ったことを検出するセンサである例に適用して説明する。なお、センサ52における検出方式としては、公知の検出方式を用いることができ特に限定するものではない。
【0034】
制御弁53は、燃料タンク5からリターン容器51への燃料の流入を制御するものである。制御弁53は第1配管11に配置され、第1配管11における燃料が流れる流路面積を変更するものである。制御弁53の構成としては、公知の構成を用いることができ特に限定するものではない。
【0035】
制御部54は、センサ52の検出信号に基づいて制御弁53を制御するものである。具体的には、リターン容器51に貯留された燃料の量が所定量以上になると、燃料タンク5からリターン容器51への燃料の流入を制限する制御を行うものである。
【0036】
脱水部55は、先出し部50から燃料噴射ポンプ20やインジェクションノズル7に供給される燃料から水を除去するものである。本実施形態では、容器本体51Aにおける下側であって、容器本体51Aの下面から第2配管12の開口端までの領域が脱水部55として機能する例に適用して説明する。なお、第2配管12が容器本体51Aの下面から上に向かって突出する長さは、任意に定めることができる。
【0037】
脱水部55により除去される水としては、燃料に添加されている水であって、燃料の油の中に分散していた水滴が、加圧および減圧により油から分離して発生するものを例示することができる。また、寒冷期に発生する結露水も例示することができる。
【0038】
脱気部56は、先出し部50から燃料噴射ポンプ20やインジェクションノズル7に供給される燃料から気体、例えば空気を除去するものである。本実施形態では、容器本体51Aに貯留されている燃料の液面から第1配管11の開口端までの領域、および、燃料の液面からリターン配管30の開口端までの領域が脱気部56として機能する例に適用して説明する。
【0039】
なお、第1配管11が蓋部51Bから下に向かって突出する長さ、および、リターン配管30が蓋部51Bから下に向かって突出する長さは、任意に定めることができる。
脱気部56により除去される気体としては、加圧した後に減圧された際に燃料から発生する気体、例えば空気を例示することができる。
【0040】
温度調整部57は、先出し部50から燃料噴射ポンプ20やインジェクションノズル7に供給される燃料の温度を調整するものである。温度調整部57には、発熱部57Aと、電源57Bと、が主に設けられている。
【0041】
発熱部57Aは、電力の供給を受けて熱を発生するものである。本実施形態では、線状に形成された発熱部57Aが、容器本体51Aの外周面にらせん状に巻き付けられている例に適用して説明する。なお、発熱部57Aが巻き付けられる領域は、燃料が貯留される領域に対応していることが好ましい。
【0042】
電源57Bは、発熱部57Aに電力を供給するものである。電源57Bには、発熱部57Aに供給する電力を調整する機能が設けられていることが好ましい。供給する電力を調整する機能としては、電力を供給する期間および停止する期間を調整する機能であってもよいし、供給する電流または電圧を調整する機能であってもよい。また、供給される燃料の温度を測定する温度センサの出力に基づいて供給する電力を調整してもよい。
【0043】
フィルタ部58は、先出し部50から燃料噴射ポンプ20やインジェクションノズル7に供給される燃料から固形物を除去する網目状に形成された部分を有するものである。本実施形態では、容器本体51Aと蓋部51Bとの間にフィルタ部58が配置される例に適用して説明する。
【0044】
フィルタ部58によって除去される固形物としては、燃料に含まれる植物由来の油が、加圧および減圧されることにより変質して形成される固形物などを例示することができる。
【0045】
次に、上記の構成からなる燃料供給装置1における燃料の供給について説明する。まず、燃料タンク5から燃料がインジェクションノズル7に供給され、インジェクションノズル7で噴射されなかった燃料が先出し部50に戻るまでの燃料の流れを説明する。
【0046】
燃料タンク5から燃料がインジェクションノズル7に供給される場合、
図1に示すように、燃料は燃料タンク5から第1配管11を経由して先出し部50に流入する。燃料は、
図2に示すように、先出し部50のリターン容器51の内部に一時的に貯留される。
【0047】
ここで、リターン容器51に設けられたセンサ52により検知された燃料の液面FSの位置が、予め定められた所定位置以上である場合には、制御部54は燃料タンク5から先出し部50への燃料の供給を停止する、または、供給流量を減らす制御を行う。具体的には制御部54は、制御弁53に対して燃料が流れる流路を閉じる、または、流路面積を狭くする制御を行う。
【0048】
また、燃料の液面FSの位置が予め定められた所定位置以上ではない場合には、制御部54は燃料タンク5から先出し部50へ燃料を供給する、または、供給流量を増やす制御を行う。具体的には制御部54は、制御弁53に対して燃料が流れる流路を開く、または、流路面積を広げる制御を行う。
【0049】
リターン容器51の内部に一時的に貯留されている燃料の温度は、温度調整部57により予め定められた所望の温度に制御される。所望の温度の下限は、燃料の粘度に基づいて定めることができる。つまり、燃料を先出し部50からインジェクションノズル7へ供給できる最低限の粘度を確保できる温度を、所望の温度の下限として例示することができる。
【0050】
また、所望の温度の上限は、燃料の変質に基づいて定めることができる。つまり、燃料に含まれる植物由来の油が温度により劣化しない、または、燃料の劣化によりディーゼルエンジンの運転に支障を起こさない温度を、所望の温度の上限として例示することができる。
【0051】
その後、
図1に示すように、燃料はリターン容器51から第2配管12を経由して燃料噴射ポンプ20に吸入される。燃料は、燃料噴射ポンプ20において所定圧力まで圧力が高められて第3配管13を経由してインジェクションノズル7へ供給される。
【0052】
インジェクションノズル7は、供給された燃料の一部を所定のタイミングでディーゼルエンジン6の気筒内に噴射する。噴射されなかった残りの燃料は、インジェクションノズル7からリターン配管30を介して先出し部50のリターン容器51に流出する。
【0053】
次に、燃料がターン配管30から先出し部50に流入し、その後インジェクションノズル7に供給される燃料の流れについて説明する。
上述のようにインジェクションノズル7からリターン配管30に流入した燃料は、
図2に示すように、先出し部50のリターン容器51に流入する。残りの燃料は、インジェクションノズル7からリターン容器51に流入する時点までの間に加圧状態から開放されて、圧力が大気圧まで低下する。
【0054】
リターン配管30からリターン容器51内に流入した燃料は、フィルタ部58を通過する際に燃料内に形成された固形物が取り除かれる。また、燃料がリターン配管30の開口端から流出すると、当該開口端から容器本体51Aに貯留している燃料の液面までの間に、燃料内に気泡などの態様で含まれる気体が燃料から分離される。言い換えると、燃料が脱気部56を落下している間に、気体が燃料から分離される。
【0055】
さらにリターン配管30からリターン容器51内に流入した燃料から分離した水は、容器本体51Aにおいて水と比較して比重が軽い燃料の下側に分かれて貯留する。
図2では、貯留した燃料の液面FSよりも下側に水の水面WSが位置している状態を示している。
【0056】
第2配管12は容器本体51Aの下面から上方と突出し、燃料が流入する開口端は燃料が貯留している領域に位置している。そのため、燃料の下側に貯留している水は、第2配管12の開口端よりも下方に位置し、第2配管12に流入しない。言い換えると、燃料から分離した水は、脱水部55において燃料から分離される。
【0057】
第2配管12には、水よりも上側に貯留している燃料が流入する。第2配管12に流入した燃料は、燃料噴射ポンプ20に吸入されて所定圧力まで圧力が高められた後に、第3配管13を経由してインジェクションノズル7へ供給される。以後の燃料の流れは、燃料タンク5から燃料がインジェクションノズル7に供給される場合と同様である。
【0058】
上記の構成の燃料供給装置1によれば、リターン配管30から戻ってくる燃料を燃料タンク5に戻すことなく優先的にディーゼルエンジン6に送り込むことができ、燃料の劣化を防ぐことができる。そのため、ディーゼルエンジン6を長期間にわたり安定して運転することが容易となる。
【0059】
具体的には、先出し部50を設けたことにより、リターン配管30を流れる燃料は、燃料タンク5から供給される燃料よりも優先して燃料噴射ポンプ20へ供給される。言い換えると、リターン配管30を流れる燃料は、燃料タンク5から供給される燃料よりも先にインジェクションノズル7から噴射されて燃焼されやすくなる。そのため、燃料が燃料噴射ポンプ20により加圧され、その後に減圧される回数の増加を抑制しやすくなり、加圧および減圧に起因する燃料の劣化を抑制しやすくなる。
【0060】
先出し部50にリターン容器51とセンサ52と制御弁53と制御部54とを設けることにより、リターン配管30を流れる燃料を、燃料タンク5から供給される燃料よりも優先して燃料噴射ポンプ20へ供給しやすくなる。
【0061】
具体的には、リターン容器51に貯留された燃料の量が所定量以上になると、燃料タンク5からリターン容器51への燃料の流入が停止または抑制される。その一方で、リターン容器51から燃料噴射ポンプ20への燃料の供給、および、リターン配管30からリターン容器51への燃料の流入は、継続して行われる。
【0062】
インジェクションノズル7から燃料が噴射されて、リターン容器51に貯留された燃料が消費されてその量が所定量未満となると、燃料タンク5からリターン容器51への燃料の流入が再開される。
【0063】
つまり、リターン容器51に貯留された燃料の量が所定量以上の期間では、リターン容器51にはリターン配管30からのみ燃料が流入することとなり、リターン容器51から燃料噴射ポンプ20へ供給される燃料のうち、リターン配管30から流入する燃料の割合が高くなりやすい。言い換えると、燃料タンク5から供給される燃料よりも、リターン配管30を流れる燃料を優先して燃料噴射ポンプ20へ供給しやすくなる。
【0064】
また、リターン配管30から戻ってくる燃料をディーゼルエンジン6のインジェクションノズル7に直接戻す方法と比較して、ディーゼルエンジン6を安定して運転させやすい。直接戻す方法では、リターン配管30から戻ってくる燃料の圧力と、インジェクションノズル7に供給される燃料の圧力とのバランスが崩れやすい。そのため、ディーゼルエンジン6にかかる負荷によっては、ディーゼルエンジン6が安定して運転しない場合がある。
【0065】
脱水部55を設けることにより、燃料から分離した水が取り除かれる。そのため、ディーゼルエンジン6に水が侵入することによる不具合発生を抑制しやすくなる。具体的には、分離した水が原因となる燃料噴射ポンプ20の不具合の発生を抑制しやすくなる。
【0066】
分離した水としては、例えば、リターン配管30から先出し部50に流入する燃料に含まれるものや、燃料タンク5から先出し部50に流入する燃料に含まれるものを例示することができる。
【0067】
脱気部56を設けることにより、燃料に含まれる空気などの気体を抜く作業を自動化することができる。また、従来では空気を抜く際に空気とともに一部の燃料が排出され、当該燃料は廃棄されていた。これに対して本実施形態では、燃料は排出されないため再利用できる。
【0068】
さらに、従来ではプライミングポンプなどを用いて脱気作業を、人手を用いて行われていた。これに対して本実施形態では人手を用いることなく脱気作業を行うことができる。
【0069】
さらに、分離した気体が原因となる燃料噴射ポンプ20の不具合の発生を抑制しやすくなる。分離した気体としては、例えば、リターン配管30から先出し部50に流入する燃料に含まれるものや、燃料タンク5から先出し部50に流入する燃料に含まれるものを例示することができる。
【0070】
温度調整部57を設けることにより、ディーゼルエンジン6の近くに配置した先出し部50において燃料に最適化した加温を施すことが可能となり、燃料の劣化や固化を回避しやすくなる。
【0071】
また、燃料噴射ポンプ20に燃料を供給しやすい状態を維持しやすくなる。例えば、燃料の温度を制御することにより、燃料に含まれる植物由来油の固化を抑制することや、燃料の流れやすさに影響する粘度を所望の範囲とすることができる。
【0072】
また、温度調整部57により燃料の組成や、ディーゼルエンジン6の運転時の気温等の外部環境に最適化された温度管理を行うこともできる。この温度管理を行う場合、水および植物由来油を含む燃料であっても、軽油と同じようにディーゼルエンジン6の燃料として使用することが可能となる。
【0073】
フィルタ部58を設けることにより、燃料噴射ポンプ20に供給される燃料から固形物が取り除かれる。そのため、固形物が原因となる燃料噴射ポンプ20の不具合の発生を抑制しやすくなる。
【0074】
固形物としては、例えば、リターン配管30から先出し部50に流入する燃料に含まれる固形物や、燃料に含まれる植物由来油が劣化して生成される重合物などを例示することができる。
【0075】
また、燃料を供給する配管に固形物を取り除く固形物除去フィルタを配置する場合と比較して、大型のフィルタを配置することが容易となる。そのため、目詰まり等のフィルタ劣化が起きるまでの期間が長くなる。また、フィルタ交換などが行いやすくなりメンテナンスに要する労力を低減しやすい。
【0076】
さらに、燃料を供給する配管に固形物を取り除く固形物除去フィルタが別に配置されている場合には、フィルタ部58により固形物が除去されるため、固形物除去フィルタの劣化を緩和することができる。
【0077】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の実施の形態においては、燃料として軽油と植物由来の油の混合油、または、植物由来の油と、水とのエマルジョンを用いる例に適用して説明したが、植物由来の油の代わりに動物由来の油を用いてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…燃料供給装置、 5…燃料タンク、 6…ディーゼルエンジン、 7…インジェクションノズル(燃料噴射部)、 10…供給配管、 20…燃料噴射ポンプ、 30…リターン配管、 50…先出し部、 51…リターン容器、 52…センサ、 53…制御弁、 54…制御部、 55…脱水部、 56…脱気部、 57…温度調整部、 58…フィルタ部