(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】スライディングゾーン歪み進展に基づく貯水池地域地すべり変形監視および早期警報方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20240220BHJP
G01D 21/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
E02D17/20 106
G01D21/00 D
(21)【出願番号】P 2023203684
(22)【出願日】2023-12-01
【審査請求日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】202310426941.0
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515190906
【氏名又は名称】南京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】朱鴻鵠
(72)【発明者】
【氏名】葉霄
(72)【発明者】
【氏名】王佳
(72)【発明者】
【氏名】謝天▲づぇん▼
(72)【発明者】
【氏名】張巍
(72)【発明者】
【氏名】程剛
(72)【発明者】
【氏名】索文斌
(72)【発明者】
【氏名】施斌
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-215308(JP,A)
【文献】特開2004-060311(JP,A)
【文献】特開2002-054956(JP,A)
【文献】特開2007-155550(JP,A)
【文献】特開平02-052222(JP,A)
【文献】特開2002-090186(JP,A)
【文献】特開2010-281118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0229623(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
G01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステップS1、監視ステーションを設置する:
まず、地すべりサブゾーンに安定岩盤層の下に延びる多数の孔(3)を穿設し、前記孔(
3)内に超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル(4)、超微弱反射型格子
復調器(5)、データ伝送ユニット(6)を取り付け、データ伝送ユニット(6)がユー
ザアクセスユニット(8)に遠隔接続され、
次に、孔(3)内に逆「凸」字形の超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル
(4)を取り付け、超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル(4)に重力ガ
イドハンマー(43)を接続させ、前記重力ガイドハンマー(43)が孔(3)の底部に
配置され、超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル(4)の一端を保護ボッ
クス(7)内に導入して超微弱反射型格子復調器(5)に接続させて収集端とし、超微弱
反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル(4)の他端をバックアップ収集端とし、
その後孔(3)を埋め戻すステップと、
ステップS2、遠隔リアルタイム監視:超微弱反射型格子復調器(5)、データ伝送ユニ
ット(6)およびユーザアクセスユニット(8)をデバッグし、ユーザアクセスユニット
(8)を通じて地下各深度岩石土壌体の時系列歪みデータセットを収集するステップと、
ステップS3、スライディングゾーン識別と時系列歪み集合分析:ステップS2における
ユーザアクセスユニット(8)によって取得された時系列歪みデータセットに基づいて、
歪み分布を取得し、前記歪み分布中の歪み値の最も高い領域が歪みピークゾーンであり、
前記歪みピークゾーンをスライディングゾーンとし、前記スライディングゾーンの毎日各
時系列歪みデータの平均値を歪み日平均値として、前記歪み日平均値を差分処理し、歪み
速度の日平均値データセットを取得し、歪み速度の日平均値データをその変化特徴に基づ
いて近似安定状態、加速変形および安定状態の3つの分類結果に分類するステップと、
ステップS4、予測警報モデルおよび閾値基準の確立:ステップS3で得られた3つの分
類結果を出力変数とし、降雨量R
i、降雨強度I
i、貯水池水位標高L
iおよび水位変動
f
iの日値データセットを入力変数として予測警報モデルを確立し、前記予測
警報モデル
は意思決定ツリーモデルであり、入力変数の値に従って出力変数の値を推論し、貯水池地
域地すべり変形の早期警報のための地すべり地下歪み進展と外部駆動因子の閾値基準を確
立し、前記外部駆動因子は降雨量、降雨強度、貯水池水位標高および貯水池水位変動を含
み、
前記閾値基準は、以下の基準を含み:
基準1:水位降下速度が0.88m/dを超え、貯水池水位標高が146.45m~14
9.505m間にあり、日降雨量が57.9mmを超える場合、加速変形が発生し、すな
わち該貯水池地域地すべりが加速変形セクションであり、
基準2:貯水池水位標高が169.7m以下で降雨強度が24.4mm/hを超える場合
、加速変形が発生し、すなわち該貯水池地域地すべりが加速変形セクションであり、
基準3:貯水池水位標高が169.7m以下で、日降雨量が1.8mmを超え、降雨強度
が24.4mm/hを超える場合、加速変形が発生し、すなわち該貯水池地域地すべりが
加速変形セクションであり、
基準4:貯水池水位標高が169.7m以下で、降雨強度が0.8mm/hを超え、日降
雨量が57.9mmを超える場合、加速変形が発生し、すなわち該貯水池地域地すべりが
加速変形セクションであり、
基準5:水位上昇速度が0.14m/dを超え、貯水池水位標高が150.195m以下
で、日降雨量が57.9mmを超える場合、加速変形が発生し、すなわち該貯水池地域地
すべりが加速変形セクションである、ステップと、
を含む、ことを特徴とするスライディングゾーン歪み進展に基づく貯水池地域地すべり変
形監視および早期警報方法。
【請求項2】
前記孔(3)は下から上へ順次、完全岩盤セクション(31)、破砕岩層セクション(3
2)、砕石土砂セクション(33)に分けられ、前記完全岩盤セクション(31)の高さ
は3~5mであり、
ステップS2において、完全岩盤セクション(31)をセメント急結剤で埋め戻し、破砕
岩層セクション(32)を細砂で埋め戻し、砕石土砂セクション(33)を体積比1:1
の細砂と粉砕粘土で埋め戻す、ことを特徴とする請求項1に記載のスライディングゾーン
歪み進展に基づく貯水池地域地すべり変形監視および早期警報方法。
【請求項3】
前記超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル(4)は、超微弱反射型格子(
41)および光ファイバー伝送セクション(42)から構成される、ことを特徴とする請
求項1に記載のスライディングゾーン歪み進展に基づく貯水池地域地すべり変形監視およ
び早期警報方法。
【請求項4】
前記超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル(4)のサンプリング間隔d≦
1.0mである、ことを特徴とする請求項1に記載のスライディングゾーン歪み進展に基
づく貯水池地域地すべり変形監視および早期警報方法。
【請求項5】
ステップS1において、超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル(4)の収
集端とバックアップ収集端は孔(3)の口に2~5mだけ冗長に配置される、ことを特徴
とする請求項1に記載のスライディングゾーン歪み進展に基づく貯水池地域地すべり変形
監視および早期警報方法。
【請求項6】
超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル(4)を予め引っ張って、収集端と
バックアップ収集端の格子間隔がボーリング孔断面投影において0.5mになる、ことを
特徴とする請求項5に記載のスライディングゾーン歪み進展に基づく貯水池地域地すべり
変形監視および早期警報方法。
【請求項7】
ステップS4において、スライディングゾーン歪み速度の経時変化の特徴に基づいて、ス
ライディングゾーン歪み速度を定性的に分類し、前記スライディングゾーン歪み速度の経
時変化の特徴は、歪み速度わずかな変動、歪み速度急激な変動および歪み速度不変動を含
み、
前記分類標準は以下のとおりであり:
歪み速度がわずかに変動する場合、すなわち歪み速度範囲が50~200με/dにある
場合、地すべり全体の運動状態が近似安定状態であり、
歪み速度が急激に変動する場合、すなわち歪み速度が200με/dを超える場合、地す
べり全体の運動状態が加速変形であり、
歪み速度が変動しない場合、すなわち歪み速度範囲が0~50με/dにある場合、地す
べり全体の運動状態が安定状態である、ことを特徴とする請求項1に記載のスライディン
グゾーン歪み進展に基づく貯水池地域地すべり変形監視および早期警報方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工学地質分野における地すべり監視と早期警報に関し、特にスライディングゾ
ーン歪み進展に基づく貯水池地域地すべり変形監視および早期警報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の地すべり変形モニタリング技術では、非接触スキャニング(例えば、空中InSA
R、地上ベースのInSAR)により、地域スケールまたは丘陵斜面スケールの時系列表
面変形を得ることができるが、変形結果はトレンド分析に使用されるのが一般的であり、
変形を定量化することは困難である。GNSS変位モニタリングステーションは、モニタ
リング地点の高精度表面変形情報を提供するが、モニタリング地点が離散的であるため、
超大規模な貯水池地域の地すべりの大面積展開には課題となっている。したがって、地す
べりの運動進展を理解し、効率的で信頼性の高い早期警報を提供するためには、ボーリン
グ孔・モニタリングに頼る必要がある。
ボーリング孔を利用した変形モニタリング技術のうち、従来のスライド式傾斜計は正確な
深部変形を提供するが、洪水期の過大な変形により3~5年以内に故障することが多い。
固定傾斜計は、耐久性や自動化という点では明らかな利点があるが、技術的・コスト的な
制約から、通常は3つの固定傾斜計センサーを直列に並べたアレイを1つのボーリング孔
に設置するため、この手法では深部の相対変形量を非常に限定的にしか把握できず、のよ
うな重要な地質界面の変形情報を定量的に特徴付けることはできない。分散型ファイバー
オプティクス(DFOS)と準分散型ファイバーブラッググレーティング(FBG)は、
ひずみをモニタリングすることで深部の変形を反映する地質工学ヘルスモニタリングにお
いて大きな可能性を示している。前者は高い空間分解能(サブメートルレベル)を提供す
るが、自動モニタリングや警告のレベルは低く、後者は遠隔リアルタイムモニタリングが
可能だが、正確なひずみ分布を得るには空間分解能が低い(例えば、ボーリング孔内のF
BGセンサーは通常10個以下)ために限界がある。したがって、スライディングゾーン
の厚さが数十cmから数mに及ぶような、多段階のスライディングゾーンの発達と進展を
伴う大規模な地すべりでは、センサーの空間分解能がスライディングゾーンを特定する鍵
となる。
先行技術には、グローバルなの地すべりの真の運動挙動を特徴付けることができる方法が
欠如している一方で、従来の遠隔リアルタイム地すべりモニタリングでは、地すべりの地
下の進化過程を包括的に明らかにすることができないだけでなく、表面変位に基づく早期
警報の予測の適時性や有効性が不十分である。
【発明の概要】
【0003】
発明目的:貯水池地域における地すべりの深部大変形の正確なモニタリングの耐久性が不
十分であること、遠隔リアルタイム自動化のレベルが低いこと、および既存技術における
誤報率が高いことなどの問題を解決するために、本発明は、スライディングゾーン歪み進
展に基づく貯水池地域地すべり変形監視および早期警報方法を提案し、地下全深さ(すな
わち岩盤までの深さ)の時系列歪みによって地すべり全体の実変形を特徴付けることによ
り、潜在的なスライディングゾーンを識別し、さらに、複数の影響因子を考慮し、スライ
ディングゾーン歪み進展に基づいて水文気象学的警報閾値をさらに確立し、貯水池地域の
地すべりの長期間監視と効果的な警報レベルを向上させ、本発明で採用された高空間分解
能歪みセンシングファイバーケーブルは、スライディングゾーン動力学を正確に特定して
捕捉し、スライディングゾーン歪み進展に基づく警報モデルはより信頼性の高い水文気象
学的警報閾値を取得でき、貯水池地域の地すべりのマルチレベルスライディングゾーン識
別が不明であり、深部大変形精准監視の耐久性が不十分であり、地面変形に基づく警報誤
警報率が高いという問題を解決することができる。
技術的解決策:本発明のスライディングゾーン歪み進展に基づく貯水池地域の地すべり変
形監視および早期警報方法は、以下のステップを含み:
S1、監視ステーションを設置する:
まず、地すべりサブゾーン(地すべりサブゾーンとは、山腹スケールでの変形と危険性の
空間分布に基づいて複数のサブゾーンに分割された1つの地すべりである)に安定岩盤層
の下に延びる多数の孔を穿設し、前記孔口の地面に超微弱反射型格子歪みセンシングファ
イバーケーブル、超微弱反射型格子復調器、データ伝送ユニットを取り付け、データ伝送
ユニットはユーザアクセスユニットに遠隔接続され、データ伝送ユニットは先行技術にお
ける無線伝送モジュールであり、超微弱反射型格子復調器とともに地面監視ステーション
保護ボックス内に集積され、ユーザアクセスユニットはコンピュータであり、
次に、孔内で逆「凸」字形の超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブルを取り
付け、超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブルに重力ガイドハンマーを接続
し、前記重力ガイドハンマーを孔の底部に配置し、超微弱反射型格子歪みセンシングファ
イバーケーブルの一端を保護ボックス内に導入して超微弱反射型格子復調器に接続させ、
収集端とし、超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブルの他端をバックアップ
収集端とし、
重力ガイドハンマーが孔底に固定されて光ファイバーを予め引っ張る役割を果たし、孔底
に0.5m冗長に配置され、ファイバーケーブルを常に垂直に予め引っ張った状態とし、
他端を孔口から導出し、孔底を境界とし、超微弱反射型格子復調器に接続された超微弱反
射型格子歪みセンシングファイバーケーブルをセクションAとし、孔底の一定長さで冗長
に孔口から延伸する別のセクションをセクションBとし、
その孔を埋め戻し、超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブルの中部に接続さ
れた重力ガイドハンマーを孔底位置に下げた後、孔口から伸びた超微弱反射型格子歪みセ
ンシングファイバーケーブルの両端を固定して常に引っ張り状態とし、このときボーリン
グ孔によって明らかになった地盤分布特徴に応じて、異なる岩石土壌材料を使用して孔を
埋め戻し、
S2、遠隔リアルタイム監視:超微弱反射型格子復調器、データ伝送ユニットおよびユー
ザアクセスユニットをデバッグし、ユーザアクセスユニットを通じて地下各深さ岩石土壌
体の時系列歪みデータセットを収集し、
デバッグとは各モジュールを接続し、電源投入し、データを収集できるかどうかをデバッ
グすることを指し、
ステップS1において孔口まで埋め戻した後締め固め、孔口から伸びた超微弱反射型格子
歪みセンシングファイバーケーブルのセクションAの端部を孔口付近地面の保護ボックス
内に導入し、光ファイバージャンパーに接続して超微弱反射型格子復調器の収集端口を接
続し、その後超微弱反射型格子復調器とデータ伝送ユニットおよびユーザアクセスユニッ
トをデバッグし、デバッグ後、埋め戻し材料が固化し安定化するのを待つために1ヶ月静
置し、監視初期とし、その後長期間の遠隔リアルタイム監視活動を開始し、地下異なる深
さの岩石土壌体の時系列歪みデータセットを確立し、
S3、スライディングゾーン識別と時系列歪み集合分析:
ステップS2においてユーザアクセスユニットによって取得された時系列歪みデータセッ
トに基づいて、全ボーリング孔歪み断面進展図を描き、歪み分布を得、前記歪み分布中の
歪み値の最も高い領域が歪みピークゾーンであり、前記歪みピークゾーンをスライディン
グゾーンとし、前記スライディングゾーンについて毎日各時系列歪みデータの平均値を歪
み日平均値とし、前記歪み日平均値を差分処理し(前記差分処理とは、翌日の累積歪みか
ら前日の累積歪みを差し引いた差、すなわち歪み速度を得ることを指す)、歪み速度の日
平均値データセットを取得し、スライディングゾーンは斜面加速変形時歪み急激に増加す
る特徴を有し、歪み速度の日平均値データをその変化特徴に基づいて近似安定状態、加速
(歪みが急激に変動)変形および安定状態の3つの分類結果に分類し、
このとき、数値変数はタイプ変数(Cluster j、j=1,2,3)、すなわち警報
モデルの出力変数に変換され、該集合分析で採用された方法は「データバックトラック」
原則に従って歪み速度時系列のノイズ誤差を除去し、すなわち不連続な歪み変化(特異値
)は可能なノイズデータとして指定され、ゼロ領域歪みとは安定状態であり、±300μ
εが近似安定状態と加速変形の臨界値であり、該臨界値を超えると集合が加速変形セクシ
ョンであり、該臨界値未満であると近似安定状態セクションであり、
S4、予測警報モデルと閾値基準の確立:ステップS3で得られた3つの分類結果を出力
変数とし、降雨量R
i、降雨強度I
i、貯水池水位標高L
iおよび水位変動f
iの日値デ
ータセットを入力変数とし予測警報モデルを確立し、前記予測モデルは意思決定ツリーモ
デル(先行技術)であり、入力変数の値に基づいて出力変数の値を推論し、地すべり地下
歪み進展と外部駆動因子の閾値基準を確立し、貯水池地域の地すべり変形を早期警報し、
前記外部駆動因子は降雨量、降雨強度、貯水池水位標高および貯水池水位変動を含み、
前記閾値基準は、
基準1:水位降下速度が0.88m/dを超え、貯水池水位標高が146.45m~14
9.505m間にあり、日降雨量が57.9mmを超える場合、加速変形が発生し、すな
わち該貯水池地域地すべりが加速変形セクションであり、実例によって検証された結果、
精度が90.68%に達し、
基準2:貯水池水位標高が169.7m以下で降雨強度が24.4mm/hを超える場合
、加速変形が発生し、すなわち該貯水池地域地すべりが加速変形セクションであり、実例
によって検証された結果、精度が74.27%に達し、
基準3:貯水池水位標高が169.7m以下で、日降雨量が1.8mmを超え、降雨強度
が24.4mm/hを超える場合、加速変形が発生し、すなわち該貯水池地域地すべりが
加速変形セクションであり、実例によって検証された結果、精度が70.48%に達し、
基準4:貯水池水位標高が169.7m以下で、降雨強度が0.8mm/hを超え、日降
雨量が57.9mmを超える場合、加速変形が発生し、すなわち該貯水池地域地すべりが
加速変形セクションであり、実例によって検証された結果、精度が61.3%に達し、
基準5:水位上昇速度が0.14m/dを超え、貯水池水位標高が150.195m以下
で、日降雨量が57.9mmを超える場合、加速変形が発生し、すなわち該貯水池地域地
すべりが加速変形セクションであり、実例によって検証された結果、精度が80.34%
に達する。
具体的に、サンプルデータ(すなわち前記入力変数と出力変数)を7:3に従って訓練集
合とテスト集合に分け、訓練集合の入力により意思決定ツリーモデルを繰り返して訓練し
、テスト集合により生成された意思決定ツリーモデルの精度が60%~70%に達したと
き新しいデータ対象(テスト集合)を分類予測し、生成された予測警報モデルは入力変数
の値に基づいて、入力変数に対応する出力変数の値Cluster jを予測し、理解と
応用のために、一連の「if-then」文の形で示し、該「if-then」文は予測規
則であり、変形カテゴリ、複数の影響因子および特定水文気象学的閾値を含み、以上のよ
うに、進展するスライディングゾーン歪みと外部駆動因子(例えば降雨量、降雨強度、貯
水池水位標高および貯水池水位変動)の相関関係に基づいて、地すべり加速変形と異なる
水文気象学的条件の閾値基準を設定し、例えば、どのような貯水池水位標高L
i、どのよ
うな降雨強度I
i条件下で、加速変形Cluster j (j=2)が発生するか、とい
う早期警報を実現し、
予測警報モデル中のサンプルデータを訓練集合とテスト集合に分け、反復回数を設定し、
訓練集合の入力により予測警報モデルを繰り返し訓練し、テスト集合により生成された意
思決定ツリーモデルの精度が設定範囲に達したときのテスト集合を分類予測し、生成され
た意思決定ツリーモデルは入力変数の値に基づいて出力変数の値を推論する。
本発明の一側面として、前記孔は下から上へ順次、完全岩盤セクション、破砕岩層セクシ
ョン、砕石土砂セクションに分けられ、前記完全岩盤セクションの高さは3~5mであり
、
ステップS2において、完全岩盤セクションをセメント急結剤で埋め戻し、破砕岩層セク
ションを細砂で埋め戻し、砕石土砂セクションを体積比1:1の細砂と粉砕粘土で埋め戻
す。原則的には、実際の地盤分布に近づけるために、実際の地盤は岩石土壌体種類に応じ
てセクションごとに充填する。
本発明の一側面として、前記超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブルは超微
弱反射型格子と光ファイバー伝送セクションから構成される。
本発明の一側面として、前記超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブルのサン
プリング間隔d≦1.0mである。
ステップS1において、収集端とバックアップ収集端は孔口付近に2~5mだけ冗長に配
置されて地下深さの正確な位置決めを補助し、特に薄い層(厚さ数十cm)スライディン
グゾーンの識別を容易にし、
ステップS1において、超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブルを予め引っ
張り、収集端とバックアップ収集端の格子間隔がボーリング孔断面投影において0.5m
である。
本発明の一側面として、ステップS3において、スライディングゾーン歪み速度の経時変
化の特徴に基づいて、スライディングゾーン歪み速度を定性的に分類し、前記スライディ
ングゾーン歪み速度の経時変化の特徴は、歪み速度わずかな変動、歪み速度急激な変動お
よび歪み速度不変動を含み、
前記分類標準は以下のとおりであり:
歪み速度がわずかに変動する場合、すなわち歪み速度範囲が50~200με/dにある
場合、地すべり全体の運動状態が近似安定状態であり、
歪み速度が急激に変動する場合、すなわち歪み速度が200με/dを超える場合、地す
べり全体の運動状態が加速変形であり、
歪み速度が変動しない場合、すなわち歪み速度範囲が0~50με/dにある場合、地す
べり全体の運動状態が安定状態である。
作業原理:本発明のステップS4で採用された予測警報モデルは改良された意思決定ツリ
ーモデルを使用し、結果が明確な歴史データから学習し、データの特徴を探索し、さらに
単純な意思決定規則を推論し、その後これに基づいて、新しいデータを分類および予測す
る。ルートノードから始まり、リーフノードまで、分類項目の変数の特徴属性を検定し、
その値の特徴に従って選択して対応の枝に出力し、リーフノードに格納されたカテゴリを
意思決定結果とする。意思決定ツリーのルートノードからリーフノードまでの経路ごとに
規則を構築し、経路上の内部ノードの特徴が規則の条件に対応し、すなわち予測規則/警
報条件に対応する。リーフノードのカテゴリラベルは規則の結論、すなわち歪み速度集合
結果Cluster jに対応する。
予測警報モデルは枝成長アルゴリズム、変数値分割アルゴリズムおよび剪定アルゴリズム
を使用する。枝成長アルゴリズムは、現在最適なグループ化変数を決定するために使用さ
れ、最大情報利得率を標準とし:
ここで、GR(S,T)はデータセットS中の特徴属性Tの情報利得率であり、IV(T
)は属性Tのエントロピーであり、IG(S,T)は属性Tの情報利得である。属性Tの
値が大きいほど、IV(T)の純度が低くなり、すなわちIV(T)の値が大きくなり、
GR(S,T)の値が小さくなる。これは、ある属性の値が多く取られた場合懲罰メカニ
ズムを与える。同時に、正しく分類されなかった属性により高い重みを割り当て、後続の
訓練モデルがそれらを優先するようになる。予測警報モデルの成長過程は出力変数に基づ
く入力変数の連続的なグループ化過程である。予測警報モデルの各枝は入力データセット
の連続的なグループ化過程で徐々に成長したものであり、データセットの継続的なグルー
プ化が意味をなさなくなった時点で予測警報モデルの成長過程は終了する。
サンプルサブゾーンを7:3または8:2の比率で訓練集合とテスト集合に分け、反復回
数をNに設定することでサンプルを繰り返して訓練してモデル予測の安定性を高め、最終
的にテストサンプルにより生成された予測警報モデル精度が約60%~70%に達したと
き新しいデータ対象(テストデータセット)の分類予測を達成する。
生成された予測警報モデルは新しいデータ入力変数の値に基づいてその出力変数の値、す
なわち歪み速度集合結果、(例えばCluster 1)を推論する。以上のように、生
成された予測警報モデルに基づいて地すべり地下歪み進展と外部駆動因子(降雨量、貯水
池水位)の閾値基準を確立する。
全体として、本発明のスライディングゾーン歪み進展に基づく貯水池地域の地すべり変形
監視および早期警報方法は、活動的な地すべりサブゾーンに垂直ボーリング孔を通じて高
い空間分解能の超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブルを取り付け、遠隔で
地すべりボーリング孔全体の地中歪みをリアルタイムで取得して地すべり変形を特徴付け
、スライディングゾーン位置を識別してスライディングゾーン歪みを地すべり全体的な変
形を特徴付けるパラメータとして使用し、日降雨量R
i、日降雨強度I
i、貯水池水位標
高L
iおよび日水位変動f
iの4つの影響因子を考慮し、地すべり歪み進展に基づく予測
警報モデルを確立する。前記の4つの影響因子を入力変数とし、スライディングゾーンの
時系列歪みをその進展特徴集合に基づいて近似安定状態、加速変形および安定状態という
3つの特徴変形クラスタCluster jに分解して出力変数とし、目標出力変数が加
速変形である特徴変形クラスタに対応する予測規則を見つけ、すなわち地すべり加速変形
の水文気象学的警報閾値とする。本発明で採用された高空間分解能歪みセンシングファイ
バーケーブルはスライディングゾーンの正確な位置決めおよびスライディングゾーン歪み
変化の捕捉を実現し、スライディングゾーン歪み進展に基づく予測警報モデルはより信頼
性の高い水文気象学的警報閾値を取得し、貯水池地域の地すべり深部大変形精准監視の耐
久性が不十分であり、地面変形に基づく警報誤警報率が高いという問題を解決することが
できる。
先行技術と比較すると、本発明は以下の有益な効果を有する。
(1)サブメートルスケールの高空間分解能歪みセンシングファイバーケーブルは、潜在
的なスライディングゾーンを正確に特定し、スライディングゾーン変形を捕捉することが
でき、スライディングゾーン歪み進展に基づく予測警報モデルはより信頼性の高い水文気
象学的警報閾値を取得でき、貯水池地域の地すべり深部大変形精准監視の耐久性が不十分
であり、地面変形に基づく警報誤警報率が高いという問題を解決することができる。
(2)本発明で採用された超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブルは、遠隔
で地すべり地下全ボーリング孔深さの歪み分布および進展過程をリアルタイムで監視でき
、特に複数の薄い層スライディングゾーンの識別に適し、せん断作用下でのすべり加速度
運動がすべりゾーンでの歪みピーク特性として現れる。
(3)FBGと比較し、本発明は超微弱反射型格子に基づいて取得された歪みデータ精度
が1~2μεに達し、空間分解能が0.5mを超え、FBGよりも高く、長距離、サブメ
ートルスケールの高空間分解能の正確な監視を実現し、DFOSと比較すると、本発明の
自動化程度が高く、システムコストが低く、遠隔でリアルタイムな監視を実現する。
(4)本発明のスライディングゾーン歪みの変形監視は貯水池地域の地すべり変形の長期
間監視に適用でき、地すべりの実の運動状態を反映し、地面変形の警報に比べて、地下変
形(歪み)の進展に基づく早期リスク警報方法は精度が高く、実用性が高く、誤警報率を
大幅に低減し、頻繁な「過剰警報」を回避することができる。
(5)本発明が提供する貯水池地域の地すべり警報方法は複数の影響因子(降雨量、降雨
強度、貯水池水位標高および水位変動)を同時に考慮し、従来の貯水池地域の地すべり早
期リスク警報閾値判定よりも合理的である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】本発明で使用する貯水池地域の地すべり監視システム構造を示す概略図である。
【
図2】本発明のボーリング孔設置型歪み原位置リアルタイム自動監視の局所概略図である。
【
図3】本発明の貯水池地域の地すべり変形監視と警報方法のフローチャートである。
【
図4】本発明の貯水池地域の地すべり変形監視と警報過程中のデータ処理のフローチャートである。
【
図5】本発明の実験例の降雨と貯水池水位の相乗作用下で貯水池地域の地すべり地面変位と地下歪み監視結果を示す図である。(a)は貯水池水位と降雨量記録であり、(b)は地面変位とスライディングゾーン歪み曲線である。
【
図6】本発明の実施例の深層スライディングゾーンSS2の累積歪み集合結果を示す図である。
【
図7】本発明のスライディングゾーン歪み進展に基づく貯水池地域の地すべり変形監視および早期警報方法の2021から2023年までの3水文年度の地すべり変形監視と警報実例であり、上から下へ順次、高分解能光ファイバー歪みセンシング神経によって生成された時空歪み分布、3回の顕著な歪み変化(すなわちI、IIおよびIII)、日降雨量および水位標高、毎日降雨強度峰値および水位変動である。
【0005】
[符号の説明]
1 地すべりサブゾーン
2 河川
3 孔
4 微弱反射格子歪みセンシングファイバーケーブル
5 超微弱反射型格子復調器
6 データ伝送ユニット
7 保護ボックス
8 ユーザアクセスユニット
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1~
図7に示すように、本発明のスライディングゾーン歪み進展に基づく貯水池地域の
地すべり変形監視および早期警報方法は、貯水池地域の地すべり監視システムによって実
現され、該変形監視は垂直ボーリング孔の地下歪み監視に基づくものであり、
全ボーリング孔の歪み分布から潜在的なスライディングゾーンを識別し、すなわち地すべ
りが加速運動すると、スライディングゾーンの歪みが急激に増加する特徴がある。該早期
警報は監視期間で地すべり体の顕著な加速変形に関する水文気象学的警報である。該スラ
イディングゾーン歪み進展に基づく貯水池地域の地すべり変形監視および早期警報方法は
、
図3に示すように、以下のステップを含み:
S1、監視ステーションを設置する:
まず、活動的な地すべりサブゾーン1を選択し、平坦化されたサイトで垂直ボーリング孔
3に監視ステーションを設置し、
図1に示すように、
図1中の2は河川であり、垂直ボー
リング孔の孔径は110mmであり、完全の岩層の下3mまで掘削する。孔3内で超微弱
反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル4、超微弱反射型格子復調器5、データ伝
送ユニット6を取り付け、データ伝送ユニット6は遠隔でユーザアクセスユニット8に接
続され、データ伝送ユニット6は先行技術における無線伝送モジュールであり、地面監視
ステーションの保護ボックス内に集積され、ユーザアクセスユニット8はコンピュータで
あり、
本実施例では、超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル4、超微弱反射型格
子復調器5は中国蘇州南知センシング科学技術有限公司が製造したものであり、両者の技
術パラメータは表1、表2に示され、
表1 超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル4の技術パラメータ
表2 超微弱反射型格子復調器5の技術パラメータ
次に、孔3内で逆「凸」字形の超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル4を
取り付け、
図2に示すように、超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル4に
重力ガイドハンマー43を接続させて前記重力ガイドハンマー43を孔3の底部に配置し
、超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル4の一端を保護ボックス7内に導
入して超微弱反射型格子復調器5に接続させ、収集端とし、超微弱反射型格子歪みセンシ
ングファイバーケーブル4の他端をバックアップ収集端とし、
超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル4は高分解能の1.mサンプリング
間隔の超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブルであり、超微弱反射型格子歪
みセンシングファイバーケーブル4は超微弱反射型格子41および光ファイバー伝送セク
ション42から構成され、
超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル4のサンプリング間隔d≦1.0m
であり、
収集端とバックアップ収集端が孔口付近に2mだけ冗長に配置されて地下深さの正確な位
置決めを補助し、特に薄い層(厚さ数十cm)のスライディングゾーンの識別に適し、
超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル4を予め引っ張り、収集端とバック
アップ収集端の格子間隔がボーリング孔断面投影において0.5mである。
超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル4の構造は裸ファイバ、被覆層、金
属ベースのケーブル状補強材、および外側シースからなる。本実施例中の重力ガイドハン
マー43は直径50~60mm、長さ600~1000mm、重量20~35kgの金属
製である。超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル4において、41は超微
弱反射型格子であり、42は光ファイバー伝送セクションであり、
次に孔3を埋め戻しし、超微弱反射型格子歪みセンシングファイバーケーブル4の中部に
接続された重力ガイドハンマー43を孔底位置に下げた後、孔口から伸びた超微弱反射型
格子歪みセンシングファイバーケーブル4の両端を固定して常に引っ張り状態とし、孔3
を直ちに埋め戻し、孔3は下から上へ順次完全岩盤セクション31、破砕岩層セクション
32、砕石土砂セクション33に分けられ、前記完全岩盤セクション31の高さは3mで
あり、
完全岩盤セクション31をセメント急結剤(先行技術)で埋め戻して硬質地盤とし、破砕
岩層セクション32を細砂で埋め戻し、砕石土砂セクション33を質量比1:1の細砂と
粉砕粘土で埋め戻し、
具体的に、細砂は通常の川砂であり、粉砕粘土はボーリング孔3を掘削した粘土を使用し
、
S2、遠隔リアルタイム監視:超微弱反射型格子復調器5、データ伝送ユニット6および
ユーザアクセスユニット8をデバッグし、ユーザアクセスユニット8によって地下各深さ
岩石土壌体の時系列歪みデータセットを収集し、
デバッグとは各モジュールを接続した後電源を投入し、データを収集できるかどうかをデ
バッグすることを指し、
ステップS2において、孔口まで埋め戻しした後締め固め、孔口から伸びた超微弱反射型
格子歪みセンシングファイバーケーブル4の一端を孔口付近の地面の保護ボックス7内に
導入し、光ファイバージャンパー接続して超微弱反射型格子復調器5の収集端口を接続し
、超微弱反射型格子復調器5と無線伝送モジュール6およびデータユーザアクセスユニッ
ト8をデバッグする。孔3の取付埋め戻しと監視システムのソフトウエアハードウェアデ
バッグ終了あと埋め戻し材料の固化および安定化のために1ヶ月待って、監視初期とする
。その後長期間の遠隔リアルタイム監視活動を開始する。本実施例では、監視データサン
プリング周波数は最大5s/回であり、変形が大きい雨季または洪水期(例えば毎年5~
9月)にサンプリング周波数が5sであり、洪水期以外にサンプリング周波数が60~6
00sであり、
S3、スライディングゾーン識別と時系列歪み集合分析:
ステップS2においてユーザアクセスユニット8によって取得された遠隔でリアルタイム
で記録された地下累積時系列歪みデータセットに基づいて、全ボーリング孔歪み断面進展
図を描いて歪み分布を得、前記歪み分布中の歪み値の最も高い領域が歪みピークゾーンで
あり、前記歪みピークゾーンをスライディングゾーンとし、前記スライディングゾーンに
ついて毎日各時系列歪みデータの平均値を歪み日平均値とし、前記歪み日平均値を差分処
理し(前記差分処理とは、翌日の累積歪みから前日の累積歪みを指し差、すなわち歪み速
度を指す)、歪み速度の日平均値データセットを取得し、スライディングゾーンが斜面で
加速変形すると歪みが急激に増加する特徴があり、歪み速度の日平均値データをその変化
特徴に基づいて近似安定状態、加速(歪み急激な変動)変形および安定状態の3つの分類
結果に分類し、(
図4に示す)
具体的に、スライディングゾーン歪み速度の経時変化の特徴に基づいて、スライディング
ゾーン歪み速度を定性的に分類し、前記スライディングゾーン歪み速度の経時変化の特徴
は、歪み速度わずかな変動、歪み速度急激な変動および歪み速度不変動を含み、分類標準
は以下のとおりであり:
歪み速度がわずかに変動する場合、すなわち歪み速度範囲が50~200με/dにある
場合、地すべり全体の運動状態が近似安定状態であり、
歪み速度が急激に変動する場合、すなわち歪み速度が200με/dを超える場合、地す
べり全体の運動状態が加速変形であり、
歪み速度が変動しない場合、すなわち歪み速度範囲が0~50με/dにある場合、地す
べり全体の運動状態が安定状態であり、
なお、集合過程中、高い歪み速度(>300με/d)または累積歪み増加>200με
である状態が2日以上連続すると加速変形となり、歪み速度が50~200με/dにあ
り、または累積歪みが急激に増加して急激にリバウンド(単一不連続な高歪み速度孤立点
)すると近似安定状態となり、歪み速度が0~50με/dまたは累積歪みがほとんど変
化しないと安定状態となる。累積歪み集合数は手動で指定するか、または一般的な集合ア
ルゴリズムによって自動的に決定され、
この時点で、数値型変数がタイプ変数(Cluster j、j=1,2,3)、すなわち
警報モデルの出力変数に変換され、該集合分析で採用される方法は「データバックトラッ
ク」原則に従って歪み速度時系列のノイズ誤差を除去し、すなわち不連続な歪み変化(特
異値)を可能なノイズデータとして指定され、ゼロ領域歪みを安定状態とし、±300μ
εが近似安定状態と加速変形の臨界値であり、該臨界値を超えると集合が加速変形セクシ
ョンになり、該臨界値未満であると近似安定状態セクションとなり、
S4、予測警報モデルと閾値基準の確立:
ステップS3で得られた3つの分類結果(スライディングゾーン歪み速度の集合結果Cl
uster j)を出力変数とし、降雨量R
i、降雨強度I
i、貯水池水位標高L
iおよ
び水位変動f
iの日値データセットを入力変数として予測警報モデルを確立し、前記予測
モデルは意思決定ツリーモデルであり(先行技術)、入力変数の値に基づいて出力変数の
値を推論し、地すべり地下歪み進展と外部駆動因子の閾値基準を確立し、貯水池地域の地
すべり変形を早期警報し、前記外部駆動因子は降雨量、降雨強度、貯水池水位標高および
貯水池水位変動を含み、
閾値基準は、以下の基準を含み:
基準1:水位降下速度が0.88m/dを超え、貯水池水位標高が146.45m~14
9.505m間にあり、日降雨量が57.9mmを超える場合、加速変形が発生し、すな
わち該貯水池地域の地すべりが加速変形セクションであり、実例によって検証された結果
、精度が90.68%に達し、
基準2:貯水池水位標高が169.7m以下で降雨強度が24.4mm/hを超える場合
、加速変形が発生し、すなわち該貯水池地域の地すべりが加速変形セクションであり、実
例によって検証された結果、精度が74.27%に達し、
基準3:貯水池水位標高が169.7m以下で、日降雨量が1.8mmを超え、降雨強度
が24.4mm/hを超える場合、加速変形が発生し、すなわち該貯水池地域の地すべり
が加速変形セクションであり、実例によって検証された結果、精度が70.48%に達し
、
基準4:貯水池水位標高が169.7m以下で、降雨強度が0.8mm/hを超え、日降
雨量が57.9mmを超える場合、加速変形が発生し、すなわち該貯水池地域の地すべり
が加速変形セクションであり、実例によって検証された結果、精度が61.3%に達し、
基準5:水位上昇速度が0.14m/dを超え、貯水池水位標高が150.195m以下
で、日降雨量が57.9mmを超える場合、加速変形が発生し、すなわち該貯水池地域の
地すべりが加速変形セクションであり、実例によって検証された結果、精度が80.34
%に達し、
具体的に以下の表3に示され:
表3 閾値基準
ここで、f
iは水位変動値であり、L
iは貯水池水位標高であり、R
iは降雨量であり、
I
iは降雨強度であり、DPは変形階段であり、IIは前記3つの集合結果中の加速変形
を示し、
まず、降雨R
i、降雨強度I
i、貯水池水位標高L
iおよび水位変動f
iの日値データセ
ット予測警報モデルの入力変数、歪み速度集合結果Cluster jを出力変数として
設定し、次に、すべてのサンプルを7:3で訓練集合とテスト集合に分け、適応強化反復
回数を10とし、次に、予測警報モデルは計算を開始し、グループ化変数および分割閾値
を決定し、各枝結果が
図7に示される。この意思決定ツリーの深さは8であり、ツリーの
第1層では、最大情報利得率の標準に基づいて、貯水池水位標高L
iが最適なグループ化
変数として選択され、MDLPスプリッターボックスから得られた最小サブリミット値1
69.7mに基づいて、貯水池水位標高を2組に分割し、RWL>169.7mの場合、
剪定アルゴリズムに基づいて、グループ化を継続する意味がなくなったと判定され、した
がって、この枝はもはや成長しない。その後、このように、この標準に従って第k層意思
決定ツリーの成長および剪定を行う。
モデル中の意思決定ツリーの成長過程は出力変数に従って入力変数をグループ化する過程
である。意思決定ツリーの各枝は降雨量R
i、降雨強度I
i貯水池水位標高L
iおよび水
位変動f
iデータセットを連続的にグループ化する過程で徐々に成長したものであり、デ
ータセットの継続的なグループ化の意味がなくなった時点で、意思決定ツリーの成長過程
が終了する。
予測警報モデルは新しいデータ入力変数の値に基づいてその出力変数の値、すなわち歪み
速度集合結果、例えばCluster 2を推論する。以上のように、生成された予測警
報モデルに基づいて地すべり地下歪み進展と外部駆動因子(降雨量、貯水池水位)の閾値
基準を確立し、外部駆動因子に基づく早期リスク警報を実現する。
【0007】
試験例
図3~
図6に示すように、中国の三峡貯水池地域に広く分布する大規模な貯水池地域の地
すべりを研究対象とし、その変形は主に貯水池水位変動(145~175m変動)と季節
降雨(年平均降水量1000mm以上)の年周期に支配されている。原位置モニタリング
では、ボーリング孔近傍に設置したGNSSによって得られた地表変位(D1~D5)と
、本発明の地下ひずみ(ここでは、SS1、SS2はそれぞれ浅部二次すべり帯、深部一
次すべり帯の時間的ひずみ)が、7月6日(日降水量153.3mm)に加速度的な動き
を示すことがわかった。既存の気象警報指標によると、モニタリング期間中に4回の大雨
(日降水量50mm以下)が発生しているが、すべての大雨が地すべり運動を引き起こし
たわけではなく、特に8月26日の97.7mmの大雨がその最たる証拠である(
図5)
。
図6に示すように、最も代表的な深層一次スライディングゾーンSS2の歪み集合分析
を行い、加速段集合がCluster 2である。標準化された降雨日値データセット、
貯水池水位標高データセットを入力変数とし、累積歪み集合結果を出力変数として、予測
警報モデルを確立する。サンプルデータを7:3で訓練サンプルと試験サンプルに分け、
訓練サンプルの全体精度が92.3%に達し、試験サンプルの全体精度が90.6%に達
し、本発明の予測モデルの精度がより高いことが示される。本発明の地下歪み進展に基づ
く早期警報方法により、警報閾値は、貯水池水位RWL標高が146.5~149.5m
にあり、日降雨量>57.9mm、または貯水池水位RWLが169.7m未満で日降雨
強度が24.4mm/hを超えるものとして得られる。
提案した水文気象学的閾値の妥当性を検証するために、2021~2023年の3水文年
の全洪水シーズンにわたって、真実地すべり運動学の地下歪み進展を分析した。
図7に示
すように、この期間、スライディングゾーン歪みが2回顕著に増加したことが観察され、
2021年7月6日(および7月7日)と2022年6月22日にそれぞれ発生し、地す
べり全体が大きく変形した。2回の地すべり加速変形イベントはいずれも、貯水池水位が
低い期間に大量の強降雨(特に1日以下の規模の極端な降雨)があったことを示す水文気
象学的条件であり、具体的に、いずれも実施例で得られた貯水池水位RWL標高が169
.7m(特に146.45~149.505m)の下で、日降雨量>57.9mm、日降
雨強度が24.4mm/hを超える水文気象学的警報閾値条件に完全に合致している。
【要約】 (修正有)
【課題】地すべり監視と早期警報に関し、特にスライディングゾーン歪み進展に基づく貯水池地域地すべり変形監視および早期警報方法を提供する。
【解決手段】スライディングゾーン歪み進展に基づく貯水池地域地すべり変形監視および早期警報方法を開示し、地すべりサブゾーンに垂直ボーリング孔を通じて高空間分解能歪みセンシングファイバーケーブルを取り付け、遠隔から地すべりボーリング孔全体の地中歪み分布をリアルタイムで取得し、スライディングゾーン位置を識別し、スライディングゾーン歪みを地すべり全体的な変形を特徴付けるためのパラメータとするステップと、日降雨量等々の4つの影響因子を考慮し、地すべり歪み進展に基づく予測警報モデルを確立するステップと、を含む。前記4つの影響因子を入力変数とし、目標出力変数が加速変形である特徴変形クラスタに対応する予測規則を求め、地すべり加速変形の水文気象学的警報閾値とする。
【選択図】
図1