IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

特許7439355オープンラック式の気化装置用のトラフ及びオープンラック式の気化装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】オープンラック式の気化装置用のトラフ及びオープンラック式の気化装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 3/02 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
F28D3/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020042854
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021143788
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】河田 一也
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2011-0014385(KR,A)
【文献】特開2017-150784(JP,A)
【文献】特開平11-325756(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2007-0089416(KR,A)
【文献】実開昭54-055657(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D1/00-13/00
F17C9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設した姿勢で整列された複数の伝熱管内を流れる液化ガスを気化するように構成されたオープンラック式の気化装置用のトラフであって、
前記複数の伝熱管の整列方向に長く、前記トラフの幅方向に間隔を空けて配置された一対の立板と、
前記一対の立板の間において前記トラフの内部空間を上下に仕切るように水平な姿勢で前記整列方向に並べられて、前記トラフ内における液面の波打ち又は隆起を抑制する複数の多孔板部材と、
加熱用液体による前記複数の多孔板部材の浮上を抑制しつつ前記複数の多孔板部材を所定の高さ位置で支持するように前記一対の立板に設けられた一対の支持部と、を備え、
前記一対の支持部は、前記トラフの前記内部空間を開放するように前記複数の多孔板部材が個別に動かされることを許容した状態で前記複数の多孔板部材を支持するように構成されている、トラフ。
【請求項2】
立設した姿勢で整列された複数の伝熱管内を流れる液化ガスを気化するように構成されたオープンラック式の気化装置用のトラフであって、
前記複数の伝熱管の整列方向に長く、前記トラフの幅方向に間隔を空けて配置された一対の立板と、
前記一対の立板の間において前記整列方向に並べられているとともに前記トラフの内部空間の幅よりも狭い幅の複数の多孔板部材と、
加熱用液体による前記複数の多孔板部材の浮上を抑制しつつ前記複数の多孔板部材を支持するように前記一対の立板に設けられた一対の支持部と、を備え、
前記一対の支持部は、前記複数の多孔板部材それぞれの前記幅方向における両端部を上下に挟む保持位置から移動対象の多孔板部材が個別に前記幅方向に移動した移動位置へ移動することを許容するように構成され、
前記移動位置に向かう前記移動対象の多孔板部材の移動方向とは反対側の支持部は、前記移動対象の多孔板部材が前記移動位置に移動したときに前記移動対象の多孔板部材が抜け出ることを許容するように構成され、
前記移動方向側の支持部は、前記移動位置にある多孔板部材を上下に回動することを許容するように構成されるとともに、前記回動した後の多孔板部材を前記整列方向に移動させることなく取り外すことを許容するように構成されている、トラフ。
【請求項3】
前記複数の多孔板部材それぞれが前記反対側の支持部から前記複数の多孔板部材が抜け出る前に前記複数の多孔板部材それぞれの前記移動方向の移動を阻止するストッパを更に備え、
前記ストッパは、前記移動方向側の前記支持部に対して着脱可能である、請求項2に記載のトラフ。
【請求項4】
前記移動方向側の前記支持部は、前記移動方向側の立板から前記幅方向に突出した上部と、前記上部とともに前記移動方向側における前記複数の多孔板部材の端部を挟むように前記移動方向側の前記立板から前記幅方向に突出した下部と、を含み、
前記下部の突出量は、前記上部の突出量とは相違している、請求項2又は3に記載のトラフ。
【請求項5】
前記複数の多孔板部材の前記端部は、上方又は下方に膨出した膨出部を有し、
前記移動方向側の前記支持部は、前記複数の多孔板部材が前記移動方向とは反対方向に移動したときに前記膨出部に係合するように構成されている、請求項4に記載のトラフ。
【請求項6】
前記複数の多孔板部材それぞれは、前記移動方向側の端部に隣接する開口部を有し、
前記移動方向側の前記支持部は、前記複数の多孔板部材それぞれの位置に対応して配置された複数の支持片を含み、
前記複数の支持片それぞれは、対応する多孔板部材の上側の位置する上部とこの多孔板部材の下側に位置する下部と、前記上部及び前記下部を連結するように前記開口部に挿通される連結部と、を有し、
前記複数の支持片それぞれは、前記対応する多孔板部材の前記移動方向側の前記端部が、前記上部、前記下部及び前記連結部の間の空間内で前記移動方向に移動することを許容するとともに、前記対応する多孔板部材が前記移動方向側の前記端部回りに回動することを許容している、請求項2又は3に記載のトラフ。
【請求項7】
前記開口部は、閉空間として形成され、
前記上部及び前記下部のうち一方は、対応する多孔板部材の前記移動方向側の前記端部が前記空間から抜き出されることを許容するように構成されている、請求項6に記載のトラフ。
【請求項8】
前記一対の支持部は、前記移動対象の多孔板部材が下方に回動されたときに前記トラフの底板に接触しない高さ位置に配置されている
請求項6又は7に記載のトラフ。
【請求項9】
前記複数の多孔板部材それぞれは、前記幅方向に並べられた一対の多孔板と、前記複数の多孔板部材それぞれの屈曲を許容する前記一対の多孔板を連結している蝶番とを含んでいる、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のトラフ。
【請求項10】
前記複数の多孔板部材それぞれに着脱可能な屈曲防止部を更に備え、
前記屈曲防止部は、対応する多孔板部材に取り付けられると、前記屈曲を防止するように構成されている、請求項9に記載のトラフ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のトラフと、
前記液化ガスが内部を流れるとともに前記トラフから溢れ出した前記加熱用液体が外面を流れるように構成された前記複数の伝熱管を有している伝熱パネルと、を備えている、オープンラック式の気化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンラック式の気化装置用のトラフ及びトラフを備えている気化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上向きに開口した箱構造を有しているトラフから溢れ出した加熱用液体を用いて液化ガスを気化させるオープンラック式の気化装置は既知である(特許文献1を参照)。特許文献1のトラフは、加熱用液体が流入する流入口が形成された底板と、底板から立設された周壁とを有している。周壁は、液化ガスが流れている伝熱パネルに対向するように互いに離間した位置で配置された一対の堰板と、互いに離間した位置で一対の堰板同士を接続する一対の側板とを有している。
【0003】
流入口を通じてトラフに供給された加熱用液体の供給量がトラフの容積を超えると、トラフから溢れ出し、伝熱パネルの外面を流下する。この間、加熱用液体は、液化ガスに熱を与え、液化ガスが気化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-150784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のトラフに関して、トラフの液面は、可能な限り平坦にされることが望ましい。液面の平滑化のために、流入口よりも高い位置でトラフの内部空間を上下に仕切るように多孔板を配置することが考えられる。多孔板に目詰まりが生じた場合、多孔板をトラフから取り外して目詰まりを解消する必要がある。
【0006】
本発明は、複数の多孔板を個別に動かすことを可能にするトラフ及びトラフを備える気化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係るオープンラック式の気化装置用のトラフは、立設した姿勢で整列された複数の伝熱管内を流れる液化ガスを気化するように構成されている。トラフは、前記複数の伝熱管の整列方向に長く、前記トラフの幅方向に間隔を空けて配置された一対の立板と、前記一対の立板の間において前記トラフの内部空間を上下に仕切るように水平な姿勢で前記整列方向に並べられて、前記トラフ内における液面の波打ちや隆起を抑制する複数の多孔板部材と、加熱用液体による前記複数の多孔板部材の浮上を抑制しつつ前記複数の多孔板部材を所定の高さ位置で支持するように前記一対の立板に設けられた一対の支持部とを備えている。前記一対の支持部は、前記トラフの前記内部空間を開放するように前記複数の多孔板部材が個別に動かされることを許容した状態で前記複数の多孔板部材を支持するように構成されている。
【0008】
上記の構成によれば、一対の支持部は、複数の多孔板部材の浮上を抑制するので、これらの多孔板部材は、所定の高さ位置から浮き上がることなく液面の波打ちや隆起を抑制することができる。また、複数の多孔板部材それぞれを個別に動かすことができる。多孔板部材を動かすと、トラフ内を開放することができる。
【0009】
本発明の他の局面に係るオープンラック式の気化装置用のトラフは、立設した姿勢で整列された複数の伝熱管内を流れる液化ガスを気化するように構成されている。トラフは、前記複数の伝熱管の整列方向に長く、前記トラフの幅方向に間隔を空けて配置された一対の立板と、前記一対の立板の間において前記整列方向に並べられているとともに前記トラフの内部空間の幅よりも狭い幅の複数の多孔板部材と、加熱用液体による前記複数の多孔板部材の浮上を抑制しつつ前記複数の多孔板部材を支持するように前記一対の立板に設けられた一対の支持部とを備えている。前記一対の支持部は、前記複数の多孔板部材それぞれの前記幅方向における両端部を上下に挟む保持位置から移動対象の多孔板部材が個別に前記幅方向に移動した移動位置へ移動することを許容するように構成されている。前記移動位置に向かう前記移動対象の多孔板部材の移動方向とは反対側の支持部は、前記移動対象の多孔板部材が前記移動位置に移動したときに前記移動対象の多孔板部材が抜け出ることを許容するように構成されている。前記移動方向側の支持部は、前記移動位置にある多孔板部材を上下に回動することを許容するように構成されるとともに、前記回動した後の多孔板部材を前記整列方向に移動させることなく取り外すことを許容するように構成されている。
【0010】
上記の構成によれば、移動対象の多孔板部材が幅方向に移動されると、移動対象の多孔板部材は、移動位置に向かう移動方向とは反対側の支持部から取り外される。すなわち、移動方向とは反対側の多孔板部材の端部に対する保持が解除される。このとき、移動方向側の支持部は、移動位置にある多孔板部材の上下方向の回動又は移動位置にある多孔板部材を整列方向に移動させることなく取り外すことを許容する。多孔板部材が回動される場合であっても、抜き取られる場合であっても、多孔板部材は、複数の多孔板部材の整列方向には移動しない。したがって、隣り合う多孔板部材とは無関係に、移動対象の多孔板部材を移動することができ、この移動によってトラフ内を開放することができる。
【0011】
上記の構成に関して、トラフは、前記複数の多孔板部材それぞれが前記反対側の支持部から前記複数の多孔板部材が抜け出る前に前記複数の多孔板部材それぞれの前記移動方向の移動を阻止するストッパを更に備えてもよい。前記ストッパは、前記移動方向側の前記支持部に対して着脱可能である。
【0012】
上記の構成によれば、ストッパにより、複数の多孔板部材が反対側の支持部から抜け出ることを防止することができる。
【0013】
上記の構成に関して、前記移動方向側の前記支持部は、前記移動方向側の立板から前記幅方向に突出した上部と、前記上部とともに前記移動方向側における前記複数の多孔板部材の端部を挟むように前記移動方向側の前記立板から前記幅方向に突出した下部とを含んでいてもよい。前記下部の突出量は、前記上部の突出量とは相違していてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、上部の突出量が下部の突出量よりも小さければ、移動方向側の支持部には、上部及び下部の先端間において斜め上方に向いた開口部分が形成される。この場合、端部を軸にして移動対象の多孔板部材を上方に回動させることができる。逆に、上部の突出量が下部の突出量よりも大きければ、上部及び下部の先端間において斜め下方に向いた開口部分が形成される。この場合、端部を軸にして移動対象の多孔板部材を上方に回動させることができる。
【0015】
上記の構成に関して、前記複数の多孔板部材の前記端部は、上方又は下方に膨出した膨出部を有していてもよい。前記移動方向側の前記支持部は、前記複数の多孔板部材が前記移動方向とは反対方向に移動したときに前記膨出部に係合するように構成されていてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、多孔板部材が移動方向とは反対向きに移動しようとすると、移動方向側の支持部は、膨出部に係合するので、多孔板部材の反対向きの移動が抑制される。
【0017】
上記の構成に関して、前記複数の多孔板部材それぞれは、前記移動方向側の端部に隣接する開口部を有していてもよい。前記移動方向側の前記支持部は、前記複数の多孔板部材それぞれの位置に対応して配置された複数の支持片を含んでいてもよい。前記複数の支持片それぞれは、対応する多孔板部材の上側の位置する上部とこの多孔板部材の下側に位置する下部と、前記上部及び前記下部を連結するように前記開口部に挿通される連結部とを有していてもよい。前記複数の支持片それぞれは、前記対応する多孔板部材の前記移動方向側の前記端部が、前記上部、前記下部及び前記連結部の間の空間内で前記移動方向に移動することを許容するとともに、前記対応する多孔板部材が前記移動方向側の前記端部回りに回動することを許容してもよい。
【0018】
上記の構成によれば、多孔板部は、移動方向に移動された後、上部、下部及び連結部の間の空間内の端部回りに上方又は下方に回動される。多孔板部は、回動された姿勢で、下部によって支持され得る。
【0019】
上記の構成に関して、前記開口部は、閉空間として形成されていてもよい。前記上部及び前記下部のうち一方は、対応する多孔板部材の前記移動方向側の前記端部が前記空間から抜き出されることを許容するように構成されていてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、開口部は、閉空間であるので、多孔板部材が意図せず抜け出ることが抑制される。
【0021】
上記の構成に関して、前記一対の支持部は、前記移動対象の多孔板部材が下方に回動されたときに前記トラフの底板に接触しない高さ位置に配置されていてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、移動対象の多孔板部材が支持片から垂れさがるように移動対象の多孔板部材を支持片に支持させることができる。
【0023】
上記の構成に関して、前記複数の多孔板部材それぞれは、前記幅方向に並べられた一対の多孔板と、前記複数の多孔板部材それぞれの屈曲を許容する前記一対の多孔板を連結している蝶番とを含んでいてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、多孔板部材を屈曲させながら上向きに回動させれば、多孔板部材の回動領域は、屈曲しない構造の多孔板部材を上向きに回動するときに必要とされる回動領域よりも狭くなる。したがって、多孔板部材の上方に気化装置用の他の設備が存在していても、多孔板部材を他の設備と接触させることなく上向きに回動させることができる。
【0025】
上記の構成に関して、トラフは、前記複数の多孔板部材それぞれに着脱可能な屈曲防止部を更に備えていてもよい。前記屈曲防止部は、対応する多孔板部材に取り付けられると、前記屈曲を防止するように構成されていてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、屈曲防止部が多孔板部材に取り付けられているとき、多孔板部材が屈曲することが防止される。屈曲防止部が多孔板部材から取り外されると、多孔板部材を折り曲げながら回動させることが可能になる。
【0027】
本発明の他の局面に係るオープンラック式の気化装置は、上述のトラフと、前記液化ガスが内部を流れるとともに前記トラフから溢れ出した前記加熱用液体が外面を流れるように構成された前記複数の伝熱管を有している伝熱パネルとを備えている。
【発明の効果】
【0028】
上述の技術は、複数の多孔板を個別に動かすことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態のオープンラック式の気化装置の概略的な斜視図である。
図2】気化装置の概略的な縦断面図である。
図3】気化装置の箱体の概略的な平面図である。
図4】箱体の概略的な縦断面図である。
図5】箱体の内部空間を上下に仕切る多孔板部材の概略的な平面図である。
図6】多孔板部材の概略的な縦断面図である。
図7】箱体の立板に取り付けられた支持部の概略的な縦断面図である。
図8】箱体の立板に取り付けられた支持部の概略的な縦断面図である。
図9】箱体の概略的な縦断面図である。
図10】箱体の概略的な縦断面図である。
図11】箱体の概略的な平面図である。
図12】箱体の概略的な縦断面図である。
図13】箱体の概略的な縦断面図である。
図14】第2実施形態のオープンラック式の気化装置の箱体の概略的な平面図である。
図15】箱体の概略的な縦断面図である。
図16】箱体の概略的な縦断面図である。
図17】箱体の概略的な縦断面図である。
図18】第3実施形態のオープンラック式の気化装置の箱体の概略的な平面図である。
図19】箱体の概略的な縦断面図である。
図20】箱体の概略的な縦断面図である。
図21】箱体の概略的な縦断面図である。
図22】箱体の概略的な縦断面図である。
図23】多孔板部材の概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1実施形態>
図1は、オープンラック式の気化装置(ORV)100の概略的な斜視図である。図2は、気化装置100の概略的な縦断面図である。気化装置100が図1及び図2を参照して説明される。
【0031】
気化装置100は、液化天然ガス(以下、「液化ガス」と称される)を液化ガスよりも高温の加熱用液体と熱交換させ、液化ガスを気化させるように構成されている。熱交換の結果得られた気相の天然ガスは、以下の説明において「気化ガス」と称される。本実施形態において、加熱用液体として海水が用いられている。代替的に、気化ガスよりも高い温度を有する液体が加熱用液体として利用されてもよい。
【0032】
気化装置100は、上述の熱交換が行われる複数の伝熱パネル113と、これらの伝熱パネル113の外面に加熱用液体を供給するように構成された複数のトラフ130とを備えている。気化装置100は、これらの伝熱パネル113に液化ガスを分配するように構成された下マニホールド111と、これらの伝熱パネル113内で生じた気化ガスが流入する上マニホールド112とを更に備えている。気化装置100は、上述のトラフ130への加熱用液体の供給に用いられるポンプ121、マニホールド122及び複数の供給管123を更に有している。
【0033】
複数の伝熱パネル113は、立設した姿勢で配置され、間隔を空けて整列されている。これらの伝熱パネル113それぞれは、下ヘッダ管114、上ヘッダ管115及び複数の伝熱管116を有している。下ヘッダ管114及び上ヘッダ管115は、伝熱パネル113の整列方向に対して略直角の方向に延設されている。上ヘッダ管115は、下ヘッダ管114から上方に離間した位置に配置され、伝熱パネル113の上端を形成している。一方、下ヘッダ管114は、伝熱パネル113の下縁を形成している。複数の伝熱管116は、立設した姿勢で配置され、下ヘッダ管114及び上ヘッダ管115の延設方向に整列されている。これらの伝熱管116は、下ヘッダ管114から上方に延設され上ヘッダ管115に接続されている。
【0034】
下マニホールド111は、伝熱パネル113の整列方向に延設されている。下マニホールド111の周面に形成された複数の流出口(図示せず)には、下ヘッダ管114の一端部が接続されている。下マニホールド111は、液化ガスを供給するポンプ(図示せず)にも接続されている。
【0035】
上マニホールド112は、下マニホールド111から上方に離間した位置で、伝熱パネル113の整列方向に延設されている。上マニホールド112の周面に形成された複数の流入口(図示せず)には、上ヘッダ管115の一端部が接続されている。上マニホールド112は、気化ガスを利用する所定の需要先又は気化ガスを貯留するタンクにも接続されている(図示せず)。
【0036】
ポンプ121は、加熱用液体を供給するように構成されている。ポンプ121は、管路(図示せず)を介してマニホールド122の流入口に接続されている。
【0037】
マニホールド122は、伝熱パネル113の整列方向に延設されている。マニホールド122の周面には複数の流出口125が形成されている。これらの流出口125は、マニホールド122の延設方向において間隔を空けて形成されている。これらの流出口125には、複数の供給管123の基端が接続されている。これらの供給管123は、流出口125からトラフ130に向けて延設され、これらの供給管123の先端は、複数のトラフ130に接続されている。
【0038】
これらのトラフ130のうち1つの概略的な平面図が図3に示されている。トラフ130の概略的な縦断面図が図4に示されている。図1乃至図4を参照してトラフ130が説明される。
【0039】
複数のトラフ130は、伝熱パネル113の整列方向において間隔を空けて配置され、伝熱パネル113と交互に並んでいる。複数のトラフ130それぞれは、上向きに開口した箱体131と、箱体131から溢れ出した加熱用液体を伝熱パネル113へ案内するために設けられた案内部139とを備えている。加えて、トラフ130は、箱体131内に配置された複数の多孔板部材160と、多孔板部材160を支持する一対の支持部171,172とを含んでいる(図3及び図4を参照)。
【0040】
箱体131は、伝熱管116の整列方向に長い箱構造を有している。詳細には、箱体131は、伝熱管116の整列方向に長い略矩形状の底板132と、底板132の周縁から立設された周壁133とを含んでいる。底板132は、略水平な姿勢である一方で、周壁133は略垂直な姿勢である。箱体131の長さ(すなわち、伝熱管116の整列方向における箱体131の大きさ)は、伝熱パネル113の両端の伝熱管116間の距離より大きい。
【0041】
周壁133は、マニホールド122側で立設された側板136と、側板136から伝熱管116の整列方向において離間した位置で立設された他の側板137とを含んでいる。側板136には、供給管123の先端が接続された流入口138が形成されている。流入口138の中心は、側板136の下部(すなわち、高さ方向における側板136の中間位置よりも下側)に位置している。
【0042】
周壁133は、立設した姿勢で側板136から伝熱管116の整列方向に延設された一対の堰板134,135(立板)を更に含んでいる。伝熱管116の整列方向における堰板134,135の両端縁(すなわち、高さ方向に延びる縁)は、側板136,137に接続されている。すなわち、堰板134,135は、伝熱管116の整列方向に対して直角の方向において互いに対向している。以下の説明において、伝熱管116の整列方向に対して直角の方向は、「幅方向」と称される。
【0043】
隣り合う伝熱パネル113の間に配置されたトラフ130の堰板134,135の高さは、側板136,137の高さよりも低い若しくは略等しい。
【0044】
案内部139は、堰板134,135の上縁から斜め下方に傾斜した板状部分である。隣り合う伝熱パネル113の間に配置されたトラフ130は、2つの案内部139を有している。伝熱パネル113の列の外側に配置されたトラフ130は、1つの案内部139を有している。この案内部139は、伝熱パネル113に対向している立板の上縁から斜め下方に傾斜するように設けられている。
【0045】
複数の多孔板部材160は、平面視において略矩形状である。これらの多孔板部材160は、略水平な姿勢で箱体131内に配置されている。これらの多孔板部材160は、流入口138よりも上側且つ堰板134,135の上縁の下側に配置されているとともに、伝熱管116の整列方向に並べられて、箱体131の内部空間の略全体を上下に仕切っている。これらの多孔板部材160のうち1つの概略的な平面図が図5に示されている。多孔板部材160の概略的な断面図(幅方向における断面)が図6に示されている。図3乃至図6を参照して、多孔板部材160が説明される。
【0046】
多孔板部材160は、箱体131の内部空間の幅よりも狭い幅の板状の部材である。詳細には、多孔板部材160は、多数の貫通孔が形成された平板状の板部161と、板部161の幅方向の一端において伝熱管116の整列方向に延びる丸棒状の端部163とを含んでいる。板部161における幅方向の他端には、略矩形状の切欠164が設けられている。端部166は、切欠164において伝熱管116の整列方向に延設された切欠縁165と、切欠縁165よりも堰板134の近くで伝熱管116の整列方向に延設された近接縁199とを含んでいる。
【0047】
端部163は、多孔板部材160の取り外し作業において多孔板部材160が回動されるときにこの回動の軸となる軸部として機能するように構成されている。端部163は、板部161の下面から下方に膨出した膨出部167と、板部161の上面から上方に膨出した膨出部168とを含んでいる。これらの膨出部167,168は、略半円形の断面を有している。すなわち、端部163は、板部161より厚く、略円形の断面を有している。
【0048】
支持部171,172は、トラフ130の幅方向における多孔板部材160の両端部をそれぞれ上下に挟むように構成されている。支持部171の概略的な断面図が図7に示されている。支持部172の概略的な断面図が図8に示されている。図3乃至5、図7及び図8を参照して、支持部171,172が説明される。
【0049】
支持部171は、堰板135に設けられ、多孔板部材160の端部163を上下に挟持するように構成されている。支持部172は、堰板134に設けられ、端部163とは反対側の端部(すなわち、切欠縁165の周囲部分)を上下に挟持するように構成されている。
【0050】
支持部171は、側板136,137の間において伝熱管116の整列方向に延設されたレール部材である。支持部171の高さ位置は、多孔板部材160の上述の高さ位置(すなわち、流入口138よりも上且つ堰板134,135の上縁よりも下)が得られるように設定されている。支持部171には、複数の多孔板部材160が幅方向に挿入される。
【0051】
支持部171は、伝熱管116の整列方向に延設された固定部173、上部174及び下部175を有している。上部174及び下部175は、互いに上下に離間して配置された板状の部分である。固定部173は、上部174及び下部175の間において堰板135の内面に接するように配置され、堰板135に固定されている。固定部173は、堰板135の内面に溶接されていてもよいし、堰板135にネジ止めされていてもよい。
【0052】
上部174は、略水平な姿勢で固定部173の上端から堰板134に向けて突出した板状部分である。下部175は、上部174から下方に離間した位置で略水平な姿勢で固定部173の下端から堰板134に向けて突出した水平板部176と、水平板部176から上方に湾曲した先端部177と、を含んでいる。堰板135の内面から先端部177までの距離(すなわち、堰板135からの下部175の突出量)は、堰板135の内面から上部174の先端までの距離(すなわち、堰板135からの上部174の突出量)よりも長い。詳細には、水平板部176は、上部174の突出量より大きな突出量で堰板135の内面から突出し、先端部177は、上部174の先端よりも堰板134に近い位置で水平板部176の先端から上方に湾曲している。上部174の突出量は、下部175の突出量より小さいので、上部174の先端と下部175の先端部177との間には、斜め上方に開口した開口部169が形成されている。開口部169は、多孔板部材160を支持部171から抜き取るために利用される。したがって、開口部169の大きさ(すなわち、上部174の先端と下部175の先端部177との間の距離)は、端部163の直径よりも大きい。開口部169は、斜め上方に開口しているので、多孔板部材160が支持部172から取り外された状態で、多孔板部材160の上方への回動を許容する。したがって、開口部169の大きさは、端部163の直径だけでなく、多孔板部材160の抜き取りに必要とされる上方への回動を許容する大きさに設定されている。
【0053】
上部174及び下部175の間の空間に、端部163及び板部161の一部が収容される。すなわち、多孔板部材160は、支持部171に幅方向に挿入されている。下部175の水平板部176の上面は、端部163の下側の膨出部167の周面に接触している。
【0054】
支持部171は、支持部171に挿入された多孔板部材160の端部163に対して堰板135側に空間179が形成されるように構成されている。トラフ130の幅方向における上部174及び下部175の間の空間の幅(すなわち、固定部173の内面から下部175の先端部177までの距離)は、支持部171に対する多孔板部材160の挿入量よりも大きい。上部174及び下部175の間の空間の幅は、図7において、記号「W1」で示されている。支持部171に対する多孔板部材160の挿入量は、図7において、記号「I1」で示されている。上述の空間179の幅は、上部174及び下部175の間の空間の幅と支持部171に対する多孔板部材160の挿入量との間の差分値(すなわち、W1-I1)で表される。空間179の幅の分だけ、堰板135側への多孔板部材160の変位が許容される。
【0055】
上述の空間179に臨むように、上部174及び下部175に挿通孔178が形成されている。挿通孔178には、多孔板部材160の両端部163,166が支持部171,172に保持される保持位置から多孔板部材160が幅方向に移動することを阻止するストッパ180が挿通される。すなわち、ストッパ180は、上部174及び下部175の間の空間内で多孔板部材160が保持位置に留まるように配置されている。ストッパ180は、支持部171に対して着脱自在に構成されている。ストッパ180が支持部171に取り付けられているとき、堰板135側への多孔板部材160の移動が阻止される。一方、ストッパ180が支持部171から取り外されると、保持位置から堰板135側への多孔板部材160の移動が許容される。ストッパ180として、ボルトやピンが好適に利用可能である。ストッパ180の頭部(上端)は、上部174の上面に露出している。
【0056】
図8に示されるように、支持部172は、多孔板部材160の切欠164の形成位置に合わせて堰板134に固定された複数のレール部材201を有している。これらのレール部材201それぞれは、丸棒状の端部163とは反対側の多孔板部材160の端部166がトラフ130の幅方向に支持部172に挿入されるように構成されている。詳細には、複数のレール部材201は、切欠164の形成位置に合わせて伝熱管116の整列方向において間隔を空けて配置されている。
【0057】
レール部材201及び切欠164は、伝熱管116の整列方向における長さにおいて一致している。堰板134からの支持部172の突出量は、切欠164の深さよりも大きな値に設定されている。
【0058】
レール部材201は、固定部181、上部182及び下部183を有している。固定部181は、堰板134の内面に固定されているとともに多孔板部材160の幅方向の変位を規制するように構成されている。詳細には、固定部181の幅は、固定部181の内面からストッパ180及び端部163の接触位置までの距離が切欠縁165から端部163までの距離に略一致するように設定されている。好ましくは、これらの距離の関係は、多孔板部材160が支持部172に差し込まれると、固定部181の内面は、切欠縁165に当接するように設定されている。この場合、多孔板部材160のがたつきが防止される。
【0059】
下部183は、堰板134から離れる方向において固定部181の下端から突出し、多孔板部材160が略水平な姿勢となるように多孔板部材160を支持するように構成されている。詳細には、下部183の上面の高さ位置は、支持部171の下部175の先端部177及び多孔板部材160の接触部分の高さ位置に略一致している。
【0060】
上部182は、下部183から上方に離間した位置で、堰板134から離れる方向において固定部181の上端から突出している。下部183の上面と上部182の下面との間の距離は、板部161の厚さに略一致している。
【0061】
固定部181の内面からの上部182及び下部183の突出長さに相当する長さだけ、支持部172に対して多孔板部材160を差し込むことが許容される。支持部172に対する多孔板部材160の突出長は、図8において記号「I2」で表されている。突出長I2は、多孔板部材160の端部163に対して堰板135側に形成された空間179の幅(すなわち、W1-I1)よりも小さくなっている。トラフ130の幅方向における多孔板部材160の幅は、支持部171,172の先端間の間隔よりも大きい。
【0062】
支持部172及び支持部171から多孔板部材160を取り外す除去作業を容易にするために、トラフ130は、取手184を有している(図3を参照)。取手184は、多孔板部材160の板部161に取り付けられている。
【0063】
気化装置100の動作が以下に説明される。
【0064】
液化ガスは、ポンプ(図示せず)によって下マニホールド111を経由して複数の伝熱パネル113それぞれの下ヘッダ管114に流入する。下ヘッダ管114に流入した液化ガスは、複数の伝熱管116に沿って上方に流れる。この間、液化ガスは、加熱用液体と熱交換し気化ガスになる。気化ガスは、上方に流れ上ヘッダ管115に流入する。その後、気化ガスは、上ヘッダ管115を流れ上マニホールド112内に集約される。
【0065】
加熱用液体は、ポンプ121によって、マニホールド122を通じて複数の供給管123に分配される。供給管123を流れた加熱用液体は、複数のトラフ130に流入する。トラフ130内に流入した加熱用液体は、箱体131の内部空間内で液層を形成する。箱体131内への加熱用液体の流入量が箱体131の容積を超えると、加熱用液体は、堰板134,135の上縁を越えて溢れ出す。加熱用液体は、その後、案内部139の傾斜面に沿って流下する。この結果、加熱用液体は、箱体131の隣に位置している複数の伝熱管116の上部の外面に散水される。
【0066】
箱体131に流入した加熱用液体の圧力が局所的に高くなることがある。たとえば、流入口138の近くで加熱用液体の圧力が高くなったときには、側板136の近くで上向きの強い流れが生ずることがある。あるいは、加熱用液体が流入口138とは反対側の側板137に衝突する結果、上向きの強い流れが生ずることもある。これらの上向きの流れを弱めるために、多孔板部材160が流入口138よりも高い位置に配置されている。詳細には、上向きの流れが多孔板部材160に衝突することにより、上向きの流れが弱められる。この結果、トラフ130内での液面の隆起及び波打ちが抑制される。
【0067】
加熱用液体の上向きの流れが多孔板部材160に衝突すると、多孔板部材160は上向きの力を受ける。このとき、支持部171,172の上部174,182は、多孔板部材160の上面に接触しているので、多孔板部材160の浮き上がりが規制される。
【0068】
多孔板部材160に多数の貫通孔が形成されていることにより、加熱用液体は、多孔板部材160を通過し、堰板135及び/又は堰板134の上縁を越えて溢れ出すことができる。一方、一部の貫通孔が目詰まりしたときには、目詰まりしていない貫通孔を通過する加熱用液体の流量が増え、液面の隆起や液面の波打ちが大きくなる。この場合、多孔板部材160を取り除き、目詰まりを解消する必要がある。
【0069】
一部の多孔板部材160が目詰まりしているときには、目詰まりした多孔板部材160を取り外して清掃する必要がある。多孔板部材160及び支持部171,172は、取り外しの対象の多孔板部材160のみを除去することを可能にするように構成されている。多孔板部材160の取り外し作業が、図7乃至図10を参照して説明される。図9及び図10は、幅方向における多孔板部材160の概略的な断面図である。
【0070】
箱体131が上方に開口しており、且つ、ストッパ180の頭部が支持部171の上部174上に露出しているので、作業者は、ストッパ180を上向きに移動させて取り外すことができる。その後、作業者は、取手184を持って、移動対象(すなわち、除去対象)の多孔板部材160を堰板135側へ移動することができる(図9を参照)。多孔板部材160の端部163が固定部173に当たるまで、多孔板部材160を移動することができる。多孔板部材160が支持部172から抜け出た位置が「移動位置」であり、多孔板部材160がこの移動位置に向かう方向が「移動方向」である。支持部172は、移動方向とは反対側にあり、支持部171は、移動方向側にある。端部163は、移動方向側の端部である。端部166は、移動方向とは反対側の端部である。
【0071】
上述の如く、空間179の幅(すなわち、W1-I1)は、支持部172に対する多孔板部材160の突出長I2よりも大きい。したがって、多孔板部材160が固定部173に当たるとき、切欠縁165は支持部172の外にあるので、多孔板部材160は、堰板135側の支持部171によってのみ保持されることになる。この状態で、作業者は、端部163を堰板134側へ移動させながら、支持部171の斜め上の開口部169を利用して、端部163を軸部として多孔板部材160を上方に回動させることができる(図10を参照)。このとき、多孔板部材160を堰板134側に移動しながら、多孔板部材160を回動することにより、支持部171の開口部169を通じて端部163を支持部171から抜き出すことができる。
【0072】
多孔板部材160がトラフ130から取り外されると、多孔板部材160が取り付けられていた領域は開放された状態になる。作業者は、この開口領域を通じて、トラフ130の内部を清掃してもよい。
【0073】
上述の取り外し作業に関して、取り外し対象の多孔板部材160は、幅方向及び上下方向に変位されるけれども、伝熱管116の整列方向には変位されない。したがって、作業者は、伝熱管116の整列方向において隣接する多孔板部材160を動かすことなく、取り外し対象の多孔板部材160を取り除くことができる。
【0074】
上述の実施形態に関して、支持部171,172は、堰板135,134に取り付けられている。代替的に、トラフ130内において幅方向に間隔を空けて配置された一対の整流板が立設されている場合には、支持部171,172は、これらの整流板に取り付けられていてもよい。すなわち、支持部171,172が取り付けられる立板は、堰板134,135に限らず、トラフ130内で立設された板状の部材であってもよい。
【0075】
上述の実施形態に関して、多孔板部材160の切欠縁165は、多孔板部材160が支持部171,172によって保持されているとき支持部172の固定部181の内面に当接している。しかしながら、多孔板部材160の切欠164が設計値よりも深く形成された場合には、堰板134側への多孔板部材160の変位が許容される。このような場合において、支持部171の先端部177は、端部163の下側の膨出部167よりも堰板134の近くで上方に湾曲しているので、膨出部167は、先端部177に引っ掛かり、堰板134側への多孔板部材160の変位が抑制される。
【0076】
上述の実施形態に関して、多孔板部材160は、液面の隆起及び波打ちを抑制するために配置されている。追加的に、多孔板部材160は、作業者がトラフ130の上側の部分(たとえば、上ヘッダ管115)にアクセスするために利用されてもよい。この場合、多孔板部材160及び支持部171,172は、作業者の体重を支えるのに十分な強度が得られるように設計される。
【0077】
上述の実施形態に関して、支持部171は、斜め上方に開口するように堰板135に取り付けられている。代替的に、支持部171は、斜め下方に開口するように堰板135に取り付けられてもよい。この場合、支持部171は、図7に示される支持部171とは上下逆向きの姿勢で堰板135に取り付けられる。
【0078】
上述の実施形態に関して、複数の多孔板部材160が、トラフ130の内部空間を全体的に上下に仕切っている。代替的に、複数の多孔板部材160は、トラフ130の内部空間の一部を仕切るように配置されていてもよい。たとえば、流入口138の近くでのみ液面の隆起が生ずることが既知であれば、図11に示されるように、側板136側に複数の多孔板部材160が配置され、反対側の側板136の近くにおいて開口領域が形成されていてもよい。この場合、支持部171は、トラフ130の全長に亘って延設される必要はなく、多孔板部材160の配置領域の長さ(伝熱管116の整列方向における長さ)に亘って延設されればよい。
【0079】
上述の実施形態に関して、トラフ130は、伝熱管116の整列方向において整列された複数の多孔板部材160からなる1重の仕切構造を有している。代替的に、トラフ130は、液面の隆起や波打ちの抑制効果を高めるために、2重或いはそれ以上の仕切構造を有していてもよい。2重の仕切構造を有するトラフ130の概略的な断面図が図12に示されている。図12を参照して、2重の仕切構造を有するトラフ130が説明される。
【0080】
図12には、2つの支持部171及び2つの支持部172が示されている。これらの支持部171は、上下方向において互いに離間した位置で堰板135に固定されている。2つの支持部172は、上下方向において互いに離間した位置で堰板134に固定されている。
【0081】
図12には、2つの多孔板部材160が示されている。これらの多孔板部材160のうち一方は、下側の支持部171及び下側の支持部172によって略水平な姿勢で保持されている。他方の多孔板部材160は、上側の支持部171及び上側の支持部172によって略水平な姿勢で保持されている。
【0082】
ストッパ180は、上下の支持部171に共用されている。これに限らず、図13に示されるように、ストッパ180は、上下の支持部171それぞれに設けられてもよい。この場合、上下の支持部171,172が互いに反対側に配置されていてもよい。
【0083】
下側の支持部171の挿通孔178に関して、伝熱管116の整列方向における挿通孔178の形成位置は、上側の支持部172に重ならないように設定されている。したがって、作業者は、支持部172に妨げられることなく、下側の支持部171に取り付けられたストッパ180にアクセスすることができる。
【0084】
上述の実施形態に関して、流入口138は、周壁133に設けられている。代替的に、流入口138は、底板132に設けられていてもよい。
【0085】
<第2実施形態>
上述の実施形態に関して、多孔板部材160は、端部163を軸として上方に回動する。端部163を中心とした略扇形状の領域に、気化装置100用の部品が配置されると、多孔板部材160の回動が、気化装置100用の部品によって妨げられる。したがって、気化装置100用の部品は、トラフ130から上方に大きく離れた位置に配置されることが好ましい。この場合、気化装置100の高さが大きくなる。この課題を解決する構造を有するトラフ130が図14及び図15に示されている。図14及び図15を参照して、第2実施形態のトラフ130が説明される。
【0086】
第2実施形態のトラフ130は、多孔板部材160が折畳可能に構成されている点においてのみ第1実施形態のトラフ130とは相違している。多孔板部材160は、幅方向に並ぶ多孔板191,192を有している。多孔板191は、堰板135側に配置されている。多孔板192は、堰板134側に配置されている。堰板135側の多孔板191は、板部161と端部163とを有している一方で、堰板134側の多孔板192は、板部161のみから構成されている。
【0087】
多孔板191,192は、多孔板191,192の下面に取り付けられた蝶番193によって連結されている。蝶番193は、多孔板部材160が上方に折り曲げられることを許容する一方で下向きに屈曲することを許容しない。
【0088】
多孔板部材160が加熱用液体から受ける圧力で折れ曲がることを防止するために、屈曲防止部194が多孔板部材160の上面に取り付けられている。詳細には、屈曲防止部194は、多孔板191,192の境界を跨いでこれらの多孔板191,192の上面に取り付けられた板部材である。屈曲防止部194は、多孔板191,192の孔部を利用して多孔板191,192にネジ止めされている。したがって、屈曲防止部194を多孔板部材160の除去作業時に取り外すことができる。
【0089】
取手184は、多孔板191,192の境界を跨がないように多孔板部材160に取り付けられている。詳細には、取手184は、多孔板192の上面に取り付けられている。
【0090】
多孔板部材160が取り外されるとき、ストッパ180が取り外されるのに加えて、屈曲防止部194が多孔板191,192の境界から取り外される。このとき、蝶番193は、多孔板部材160が下向きに屈曲することを許容しないので、作業者は、屈曲防止部194の取り外しの際に、多孔板部材160上に乗ってもよい。屈曲防止部194が取り外された後、多孔板部材160は、堰板135側に変位される(図16を参照)。
【0091】
その後、作業者は、取手184を把持して多孔板部材160を上方に回動させながら、端部163を堰板134側に変位させる。このとき、多孔板192は、蝶番193周りに下向きに回動され、多孔板191の先端から下方に傾斜した姿勢にされる。多孔板192は、下方に傾斜されるので、多孔板部材160の取り外しのために、トラフ130の上側に広い領域が形成されなくてもよい(図17を参照)。
【0092】
本実施形態に関して、複数の多孔板部材160が箱体131の内部空間を全体的に上下に仕切っている。代替的に、液面の隆起が大きくなる部位が既知であれば、多孔板部材160は、液面の隆起が大きくなる部位にのみ配置されていてもよい(図11を参照)。
【0093】
本実施形態に関して、トラフ130は、一重の仕切り構造を有している。代替的に、複数の多孔板部材160の上側又は下側に追加的に多孔板部材160が設けられていてもよい(図12及び図13を参照)。
【0094】
<第3実施形態>
多孔板部材160の目詰まりを解消するときには、トラフ130からの多孔板部材160の分離が必要とされるが、作業者がトラフ130の中に入って作業を行うときには、多孔板部材160が配置されていた領域においてトラフ130の内部が開放されればよい。この場合には、トラフ130からの多孔板部材160の分離は必要とされない。トラフ130からの多孔板部材160の分離を要することなく、多孔板部材160が配置されていた領域においてトラフ130の内部を開放することを可能にする構造が図18及び図19を参照して説明される。図18は、トラフ130の概略的な平面図である。図19は、トラフ130の概略的な縦断面図である。
【0095】
第3実施形態のトラフ130の支持部171は、トラフ130の全長に亘って複数の多孔板部材160を支持するのではなく、伝熱管116の整列方向において間隔を空けて多孔板部材160を支持するようにそれぞれ構成された複数の支持片190を含んでいる。2つの支持片190が1つの多孔板部材160に対応して配置されている。支持片190は、レール部材ではなくフック状の部材を用いて構成されている。
【0096】
支持片190は、堰板135の内面に固定された固定部173と、固定部173と一体的に形成された略J状の延設部分とを含んでいる。J字状の延設部分は、上部174、連結部212及び下部175を含んでいる。連結部212は、堰板134側に凸となるように略U字状に湾曲しながら上下方向に延設された部分である。上部174は、連結部212の上端から堰板135に向けて略水平に延設された部分である。上部174には、ストッパ180が挿通される挿通孔178が形成されている。下部175は、連結部212の下端から堰板135に向けて略水平に延設された部分である。下部175は、固定部173から堰板134側に離間した位置で終端し、開口部169が形成されている。下部175と固定部173との間の開口部169は、支持部171に多孔板部材160の端部163をはめ込んだり、抜き出したりするために利用される。したがって、開口部169の幅は、端部163の直径よりも大きな値に設定されている。
【0097】
支持部171の配置高さは、支持部171に端部163がはめ込まれた状態で、多孔板部材160が端部163周りに略90°下方に回動したときに、多孔板部材160の端部166が箱体131の底板132の上面に接触しないように設定されている。すなわち、支持部171からの箱体131の深さ(すなわち、支持部171から底板132までの距離)は、多孔板部材160の幅よりも大きくなっている。
【0098】
多孔板部材160には、トラフ130の長手方向において互いに離間した位置において2つの開口部214が形成されている。トラフ130の長手方向においてこれらの開口部214に対応する位置に上述の支持片190がそれぞれ配置されている。
【0099】
開口部214は、端部163に隣接し、端部163によって閉空間に形成されている。多孔板部材160の端部163は、支持部171の下部175と固定部173との間の空間を通じて支持部171内にはめ込まれている。このとき、端部163が上部174と下部175とによって挟まれているとともに、支持部171の連結部212が開口部214に挿通されている。
【0100】
開口部214は、多孔板部材160が支持部172に差し込まれた状態で支持部171の連結部212に対して堰板134側に空間ができるように形成されている。開口部214の堰板134側の端部と連結部212との間の距離は、支持部172に対する多孔板部材160の突出長I2よりも大きな値に設定されている。
【0101】
多孔板部材160の幅は、堰板134,135の内面間の距離よりも小さいので、多孔板部材160の端部163と堰板135の内面との間に隙間が形成される。この隙間の幅も、支持部172に対する多孔板部材160の突出長I2よりも大きな値に設定されている。
【0102】
多孔板部材160の端部163と堰板135の内面との間の隙間は、多孔板部材160の下側の位置に配置された複数の閉塞部材215によって塞がれている。これらの閉塞部材215は、トラフ130の長手方向において間隔を空けて配置され、支持部171の隣で伝熱管116の整列方向に延設されている。隣り合う閉塞部材215の間で支持部171が堰板135の内面に固定されている。
【0103】
閉塞部材215は、L字状の断面を有する棒状部材を用いて構成可能である。閉塞部材215は、堰板135の内面に当接された当接板216と、当接板216から略直角に屈曲して略水平な姿勢で伝熱管116の整列方向に延設された水平板217とを含んでいる。当接板216は、例えば、堰板135にネジ止めされている。
【0104】
多孔板部材160が配置されていた領域においてトラフ130の内部を開放する作業が以下に説明される。まず、ストッパ180が取り外され、その後、多孔板部材160が保持位置から堰板135に向けて変位される(図20を参照)。連結部212に対する堰板134側の隙間、及び多孔板部材160の端部163と堰板135の内面との間の隙間の幅は、いずれも突出長I2よりも大きいので、作業者は、突出長I2より大きな変位量で多孔板部材160を変位させることができる。したがって、作業者は、多孔板部材160を堰板135に向けて変位させ、多孔板部材160を支持部172から取り外すことができる。このとき、端部163は、支持片190の開口部169上にある(移動位置)。
【0105】
その後、作業者は、多孔板部材160を端部163周りに下方に回動させるとともに端部163を堰板134側に変位させる(図21を参照)。この結果、端部163は、上部174と下部175との間の空間に入る。このとき、多孔板部材160の端部166は、底板132から離間しており、多孔板部材160は、略鉛直な姿勢で、支持部171から垂れさがっている。この結果、多孔板部材160によって塞がれていた領域においてトラフ130の内部が開放される。作業者は、この開放部分を通じて、所定の作業(たとえば、清掃)を行うことができる。すなわち、作業者は、多孔板部材160をトラフ130に取り付けたまま、トラフ130内で所望の作業を行うことができる。
【0106】
多孔板部材160の取り外しが必要である場合には、作業者は、閉塞部材215を取り外す。その後、作業者は、端部163を堰板135側へ変位させ、下部175と固定部173との間の開口部169を通じて端部163を支持部171から抜き取ることができる。
【0107】
上述の実施形態に関して、支持部171は、下向きに開口している。代替的に、支持部171は、上向きに開口していてもよい(図22を参照)。図22に示されている支持部171は、下部175が堰板135の内面から堰板134側に延設されるように構成されている。下部175にはストッパ180として用いられるボルトの胴部が挿通されるネジ穴(図示せず)が形成されている。連結部212は、下部175の先端から上向きに湾曲し、上部174は、連結部212の上端から所定の距離だけ堰板135に向けて延設されている。上部174は、固定部173から堰板134側に離間した位置で終端している。したがって、上部174に対して堰板135側に端部163を抜き取るための開口部169が形成されている。
【0108】
ストッパ180として用いられるボルトは、下部175に形成されたネジ穴に螺合される。このとき、ボルトの頭部によって、多孔板部材160は幅方向に位置決めされる。
【0109】
多孔板部材160が配置されていた領域を開放するとき、作業者は、ストッパ180を取り外し、多孔板部材160を堰板135側に変位させる。その後、多孔板部材160が端部163を軸に上方に回動させる。多孔板部材160は、支持部171より上側の堰板135の部分に寄り掛かる姿勢になるまで回動される。この結果、作業者自身が多孔板部材160を保持しなくとも、多孔板部材160が配置されていた領域の開放状態が維持される。
【0110】
多孔板部材160の取り外しが必要な場合には、作業者は、多孔板部材160を略垂直な姿勢にした後に端部163を上部174と固定部173との間の空間を通じて引き抜けばよい。このとき、作業者は、閉塞部材215を取り外す必要はない。
【0111】
本実施形態に関して、支持片190の上部174及び下部175のうち一方は、固定部173から離間し、多孔板部材160の抜き取りを許容している。代替的に、支持片190は、上部174及び下部175がともに固定部173に接続された構造(すなわち、連結部212、上部174、下部175及び固定部173が閉空間を形成する構造)を有していてもよい。この場合、支持片190からの多孔板部材160の抜き取りは許容されないけれども、多孔板部材160の上下の回動は許容される。多孔板部材160を上方又は下方に回動させることにより、多孔板部材160の配置領域においてトラフ130の内部を開放することができる。
【0112】
本実施形態に関して、開口部214は、閉空間である。代替的に、図23に示されるように、開口部214は、端部163側に開口した切欠として形成されてもよい。
【0113】
本実施形態に関して、複数の多孔板部材160が箱体131の内部空間を全体的に上下に仕切っている。代替的に、液面の隆起が大きくなる部位が既知であれば、多孔板部材160は、液面の隆起が大きくなる部位にのみ配置されていてもよい(図11を参照)。
【0114】
本実施形態に関して、トラフ130は、一重の仕切り構造を有している。代替的に、複数の多孔板部材160の上側又は下側に追加的に多孔板部材160が設けられていてもよい(図12及び図13を参照)。
【0115】
本実施形態に関して、多孔板部材160は、折畳構造を有していない。代替的に、多孔板部材160は、折畳構造(第2実施形態を参照)を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
上述の実施形態に関連して説明された技術は、液化ガスから気化ガスへの相変化が必要とされる様々な技術分野に好適に利用される。
【符号の説明】
【0117】
100・・・・・・・・・・・・・・・気化装置
116・・・・・・・・・・・・・・・伝熱管
130・・・・・・・・・・・・・・・トラフ
132・・・・・・・・・・・・・・・底板
134,135・・・・・・・・・・・堰板(立板)
160・・・・・・・・・・・・・・・多孔板部材
163・・・・・・・・・・・・・・・端部
167・・・・・・・・・・・・・・・膨出部
171,172・・・・・・・・・・・支持部
174・・・・・・・・・・・・・・・上部
175・・・・・・・・・・・・・・・下部
180・・・・・・・・・・・・・・・ストッパ
190・・・・・・・・・・・・・・・支持片
191,192・・・・・・・・・・・多孔板
193・・・・・・・・・・・・・・・蝶番
194・・・・・・・・・・・・・・・屈曲防止部
212・・・・・・・・・・・・・・・連結部
214・・・・・・・・・・・・・・・開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23