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特許7439361リチウム塩錯化合物、リチウム二次電池用添加剤、及び、リチウム塩錯化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】リチウム塩錯化合物、リチウム二次電池用添加剤、及び、リチウム塩錯化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/30 20060101AFI20240220BHJP
   C01B 35/12 20060101ALI20240220BHJP
   C07C 305/04 20060101ALI20240220BHJP
   C07C 309/06 20060101ALI20240220BHJP
   C07C 309/29 20060101ALI20240220BHJP
   C07C 311/48 20060101ALI20240220BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20240220BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240220BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20240220BHJP
【FI】
C01B25/30 Z
C01B35/12 A
C07C305/04 CSP
C07C309/06
C07C309/29
C07C311/48
C07F5/02 C
H01M10/052
H01M10/0567
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018032542
(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2018172266
(43)【公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-11-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2017071865
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 謙一
(72)【発明者】
【氏名】三尾 茂
【合議体】
【審判長】井上 猛
【審判官】山口 大志
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-528890(JP,A)
【文献】特開2007-165125(JP,A)
【文献】特表2015-500554(JP,A)
【文献】特開2013-35695(JP,A)
【文献】特開2010-257616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/30,35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなるリチウム塩錯化合物を含む固体であって、
有機溶媒中に前記リチウム塩錯化合物が溶解されている溶液と、ジフルオロリン酸リチウムからなる析出物と、を含む混合物から、前記析出物を除去し、次いで前記有機溶媒を留去して得られる固体。
【請求項2】
請求項1に記載の固体を含むリチウム二次電池用添加剤。
【請求項3】
テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなるリチウム塩錯化合物の製造方法であって、
酸化ホウ素とヘキサフルオロリン酸リチウムとフッ化リチウムとを、有機溶媒中で反応させることにより、前記リチウム塩錯化合物の溶液を得る工程を含むリチウム塩錯化合物の製造方法。
【請求項4】
前記酸化ホウ素と前記ヘキサフルオロリン酸リチウムと前記フッ化リチウムとの反応における反応温度が、20℃以上である請求項3に記載のリチウム塩錯化合物の製造方法。
【請求項5】
前記リチウム塩錯化合物の溶液を得る工程は、
酸化ホウ素とヘキサフルオロリン酸リチウムとフッ化リチウムとを、有機溶媒中で反応させることにより、前記リチウム塩錯化合物の溶液と固体析出物との混合物を得る工程と、
前記混合物から前記固体析出物を除去する工程と、
を含む請求項3又は請求項4に記載のリチウム塩錯化合物の製造方法。
【請求項6】
更に、前記リチウム塩錯化合物の溶液から前記リチウム塩錯化合物を取り出す工程を含む請求項3~請求項5のいずれか1項に記載のリチウム塩錯化合物の製造方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3~請求項6のいずれか1項に記載のリチウム塩錯化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウム塩錯化合物、リチウム二次電池用添加剤、及び、リチウム塩錯化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム塩化合物は従来、反応試剤、合成反応触媒、各種電気化学デバイス用電解質、ドーピング剤、潤滑油の添加剤などの用途で有用に使用されてきていた。このリチウム塩化合物は熱的な安定性や水に対する安定性に乏しいものが多いことから、リチウム塩化合物を錯化可能な化合物と処理することにより安定性を向上させた錯化合物が開発されてきている。
【0003】
リチウム塩錯化合物の具体的な例としてはこれまでに、ヘキサフルオロヒ酸リチウムやヘキサフルオロリン酸リチウムとアセトニトリルとの錯化合物(特許文献1参照)、ハロゲン化リチウムやテトラフルオロホウ酸リチウムやヘキサフルオロリン酸リチウム等のリチウム塩とN,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン等の化合物との錯化合物(特許文献2参照)、ヘキサフルオロリン酸リチウムとクラウンエーテルとの錯化合物(特許文献3参照)、ヘキサフルオロヒ酸リチウムやヘキサフルオロリン酸リチウムと2-メチルテトラヒドロフランとの錯化合物(特許文献4参照)、ヘキサフルオロリン酸リチウムとピリジンとの錯化合物(特許文献5参照)、ヘキサフルオロリン酸リチウムとジエチルカーボネートやエチレンカーボネートとの錯化合物(特許文献6参照)、ヘキサフルオロリン酸リチウムと1,4-ジオキサンとの錯化合物(特許文献7参照)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭48-33733号
【文献】特公昭53-31859号
【文献】特開昭59-151779号
【文献】特公平6-16421号
【文献】特表2002-514153号
【文献】特許3555720号
【文献】特許5862015号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の課題は、新規なリチウム塩錯化合物、及び、このリチウム塩錯化合物を含むリチウム二次電池用添加剤を提供することである。
また、本開示の課題は、テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなるリチウム塩錯化合物を製造できる、リチウム塩錯化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキニル基、ハロゲン原子もしくはアルキル基で置換されていてもよい環状エステル基、オキサラト基、及びアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を置換基Lとした場合に、
リン原子に直接結合する前記置換基Lを有するリン酸リチウム塩A1、ホウ素原子に直接結合する前記置換基Lを有するホウ酸リチウム塩B1、硫黄原子に直接結合する前記置換基Lを有するスルホン酸リチウム塩C1、硫黄原子に直接結合する前記置換基Lを有する硫酸リチウム塩、及び硫黄原子に直接結合する前記置換基Lを有するスルホニルイミド酸リチウム塩からなる群から選択される1種のリチウム塩と、
前記リン酸リチウム塩A1のうち、リン原子に直接結合するフッ素原子を有するリン酸リチウム塩A2、前記ホウ酸リチウム塩B1のうち、ホウ素原子に直接結合するフッ素原子を有するホウ酸リチウム塩B2、及び、前記スルホン酸リチウム塩C1のうち、硫黄原子に直接結合するフッ素原子を有するスルホン酸リチウム塩C2からなる群から選択される1種のリチウム含有化合物と、
からなるリチウム塩錯化合物(ただし、同一の化合物同士の組み合わせを除く)。
【0007】
<2> ジフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、メチル硫酸リチウム、ベンゼンスルホン酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、及びリチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドからなる群から選択される1種のリチウム塩と、
ジフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、及びフルオロスルホン酸リチウムからなる群から選択される1種のリチウム含有化合物と、
からなる<1>に記載のリチウム塩錯化合物。
【0008】
<3> ジフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム、及びメチル硫酸リチウムからなる群から選択される1種のリチウム塩と、
ジフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、及びフルオロスルホン酸リチウムからなる群から選択される1種のリチウム含有化合物と、
からなる<1>又は<2>に記載のリチウム塩錯化合物。
【0009】
<4> ヘキサフルオロリン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物、
テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物、
ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物、
メチル硫酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物、
テトラフルオロホウ酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物、
ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物、
メチル硫酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物、
フルオロ硫酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物、又は、
フルオロ硫酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物である<1>~<3>のいずれか1つに記載のリチウム塩錯化合物。
【0010】
<5> <1>~<4>のいずれか1つに記載のリチウム塩錯化合物を含むリチウム二次電池用添加剤。
【0011】
<6> テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなるリチウム塩錯化合物の製造方法であって、
酸化ホウ素とヘキサフルオロリン酸リチウムとフッ化リチウムとを、有機溶媒中で反応させることにより、前記リチウム塩錯化合物の溶液を得る工程を含むリチウム塩錯化合物の製造方法。
<7> 前記酸化ホウ素と前記ヘキサフルオロリン酸リチウムと前記フッ化リチウムとの反応における反応温度が、20℃以上である<6>に記載のリチウム塩錯化合物の製造方法。
<8> 前記リチウム塩錯化合物の溶液を得る工程は、
酸化ホウ素とヘキサフルオロリン酸リチウムとフッ化リチウムとを、有機溶媒中で反応させることにより、前記リチウム塩錯化合物の溶液と固体析出物との混合物を得る工程と、
前記混合物から前記固体析出物を除去する工程と、
を含む<6>又は<7>に記載のリチウム塩錯化合物の製造方法。
<9> 更に、前記リチウム塩錯化合物の溶液から前記リチウム塩錯化合物を取り出す工程を含む<6>~<8>のいずれか1つに記載のリチウム塩錯化合物の製造方法。
<10> 前記有機溶媒が、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種である<6>~<9>のいずれか1つに記載のリチウム塩錯化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、新規なリチウム塩錯化合物、及び、このリチウム塩錯化合物を含むリチウム二次電池用添加剤が提供される。
また、本開示によれば、テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなるリチウム塩錯化合物を製造できる、リチウム塩錯化合物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0014】
〔リチウム塩錯化合物〕
本開示のリチウム塩錯化合物は、
ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキニル基、ハロゲン原子もしくはアルキル基で置換されていてもよい環状エステル基、オキサラト基、及びアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基を置換基Lとした場合に、
リン原子に直接結合する前記置換基Lを有するリン酸リチウム塩A1、ホウ素原子に直接結合する前記置換基Lを有するホウ酸リチウム塩B1、硫黄原子に直接結合する前記置換基Lを有するスルホン酸リチウム塩C1、硫黄原子に直接結合する前記置換基Lを有する硫酸リチウム塩、及び硫黄原子に直接結合する前記置換基Lを有するスルホニルイミド酸リチウム塩からなる群から選択される1種のリチウム塩(以下、「特定リチウム塩」ともいう)と、
前記リン酸リチウム塩A1のうち、リン原子に直接結合するフッ素原子を有するリン酸リチウム塩A2、前記ホウ酸リチウム塩B1のうち、ホウ素原子に直接結合するフッ素原子を有するホウ酸リチウム塩B2、及び、前記スルホン酸リチウム塩C1のうち、硫黄原子に直接結合するフッ素原子を有するスルホン酸リチウム塩C2からなる群から選択される1種のリチウム含有化合物(以下、「特定化合物」ともいう)と、
からなるリチウム塩錯化合物である。
ただし、同一の化合物同士の組み合わせを除く。
例えば、ジフルオロリン酸リチウム同士の組み合わせ、ヘキサフルオロリン酸リチウム同士の組み合わせ、テトラフルオロホウ酸リチウム同士の組み合わせ、フルオロスルホン酸リチウム同士の組み合わせなどは、本開示のリチウム塩錯化合物には含まれない。
【0015】
本開示のリチウム塩錯化合物は、特定リチウム塩と特定化合物とからなる新規なリチウム塩錯化合物である。
【0016】
本開示のリチウム塩錯化合物は、原料化合物(特定リチウム塩及び特定化合物)には認められない温度で吸熱熱解離挙動が観測される。
即ち、本開示のリチウム塩錯化合物は、熱的安定性に優れた化合物である。
【0017】
次に、本開示のリチウム塩錯化合物を形成する特定リチウム塩、及び特定化合物について順に説明する。
【0018】
<特定リチウム塩>
特定リチウム塩は、リン原子に直接結合する前記置換基Lを有するリン酸リチウム塩A1、ホウ素原子に直接結合する前記置換基Lを有するホウ酸リチウム塩B1、硫黄原子に直接結合する前記置換基Lを有するスルホン酸リチウム塩C1、硫黄原子に直接結合する前記置換基Lを有する硫酸リチウム塩、及び硫黄原子に直接結合する前記置換基Lを有するスルホニルイミド酸リチウム塩からなる群から選択される1種である。
【0019】
置換基Lは、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキニル基、ハロゲン原子もしくはアルキル基で置換されていてもよい環状エステル基、オキサラト基、及びアリール基からなる群から選択される1種の置換基である。
置換基Lは1種であっても2種以上であってもよい。置換基Lが2種以上の場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0020】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0021】
ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基とは、無置換のアルキル基又はハロゲン化アルキル基を意味する。
ハロゲン化アルキル基とは、少なくとも1個のハロゲン原子によって置換されたアルキル基を意味する。
無置換のアルキル基及びハロゲン化アルキル基は、それぞれ直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよい。
無置換のアルキル基としては、例えば無置換の炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などが挙げられる。
無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又はイソプロピル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
ハロゲン化アルキル基としては、例えば炭素数1~6のハロゲン化アルキル基が挙げられ、具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロイソブチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、ブロモプロピル基、ヨウ化メチル基、ヨウ化エチル基、ヨウ化プロピル基などが挙げられる。
ハロゲン化アルキル基としては、炭素数1~6のフルオロアルキル基が好ましく、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、又はパーフルオロヘキシル基がより好ましい。
【0022】
ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基とは、無置換のアルコキシ基又はハロゲン化アルコキシ基を意味する。
ハロゲン化アルコキシ基とは、少なくとも1個のハロゲン原子によって置換されたアルコキシ基を意味する。
無置換のアルコキシ基及びハロゲン化アルコキシ基は、それぞれ直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよい。
無置換のアルコキシ基としては、例えば無置換の炭素数1~6のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、2-メチルブトキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1-エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、3,3-ジメチルブトキシ基などが挙げられる。
無置換のアルコキシ基としては、エトキシ基又はメトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
ハロゲン化アルコキシ基としては、前述の無置換の炭素数1~6のアルコキシ基が少なくとも1個のハロゲン原子によって置換されている構造の基が挙げられる。
【0023】
ハロゲン原子で置換されていてもよいアルケニル基とは、無置換のアルケニル基又はハロゲン化アルケニル基を意味する。
ハロゲン化アルケニル基とは、少なくとも1個のハロゲン原子によって置換されたアルケニル基を意味する。
無置換のアルケニル基及びハロゲン化アルケニル基は、それぞれ直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよい。
無置換のアルケニル基としては、例えば無置換の炭素数2~6のアルケニル基が挙げられ、具体的には、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基(2-プロペニル基)、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。
無置換のアルケニル基としては、ビニル基又はアリル基が好ましく、ビニル基がより好ましい。
ハロゲン化アルケニル基としては、無置換の炭素数2~6のアルケニル基が少なくとも1個のハロゲン原子によって置換されている構造の基が挙げられる。
【0024】
ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキニル基とは、無置換のアルキニル基又はハロゲン化アルキニル基を意味する。
ハロゲン化アルキニル基とは、少なくとも1個のハロゲン原子によって置換されたアルキニル基を意味する。
無置換のアルキニル基及びハロゲン化アルキニル基は、それぞれ直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよい。
無置換のアルキニル基としては、例えば無置換の炭素数2~6のアルキニル基が挙げられ、具体的には、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基と同義)、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、5-ヘキシニル基、1-メチル-2-プロピニル基、2-メチル-3-ブチニル基、2-メチル-3-ペンチニル基、1-メチル-2-ブチニル基、1,1-ジメチル-2-プロピニル、1,1-ジメチル-2-ブチニル基、1-ヘキシニル基などが挙げられる。
ハロゲン化アルキニル基としては、前述の無置換の炭素数2~6のアルキニル基が少なくとも1個のハロゲン原子によって置換されている構造の基が挙げられる。
【0025】
ハロゲン原子もしくはアルキル基で置換されていてもよい環状エステル基としては、環状エステル基が少なくとも1個のハロゲン原子もしくはアルキル基によって置換されている構造の基が挙げられる。
環状エステル基としては、例えばラクトンから水素原子が1つ解離した基が挙げられる。ラクトンとしては、例えば、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトンが挙げられる。
ハロゲン原子は、前述のハロゲン原子と同義である。
アルキル基としては、前述の無置換の炭素数1~6のアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0026】
オキサラト基としては、例えば下記式(a)で表される基が挙げられる。*は結合位置を表す。
【0027】
【化1】
【0028】
本開示における「アリール基」とは、無置換のアリール基と置換されたアリール基とのいずれをも含む。
アリール基としては、例えば、炭素数6~20の無置換のアリール基、炭素数7~20の置換されたアリール基が挙げられ、具体的には、フェニル基;アルキルベンゼンから水素原子が1個外れた基(例えば、ベンジル基、トリル基、キシリル基、メチシル基等);ナフチル基;ナフタレンのアルキル基置換体から水素原子が1個外れた基;等が挙げられる。なお、置換されたアリール基における置換基としては上記に限定されず、例えば、前述のハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、無置換のアルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、無置換のアルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、無置換のアルキニル基、ハロゲン化アルキニル基などが挙げられる。
アリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0029】
リン酸リチウム塩のリン原子に直接結合する置換基Lは、フッ素原子、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、フェノキシ基、又はオキサラト基が好ましく、
ホウ酸リチウム塩のホウ素原子に直接結合する置換基Lは、フッ素原子又はオキサラト基が好ましく、
スルホン酸リチウム塩の硫黄原子に直接結合する置換基Lとしては、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、ビニル基、アリル基、又はフェニル基が好ましく、
硫酸リチウム塩の硫黄原子に直接結合する置換基Lとしては、メチル基又はドデシル基が好ましく、
スルホニルイミド酸リチウム塩の硫黄原子に直接結合する置換基Lとしては、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロエチル基が好ましい。
【0030】
(リン酸リチウム塩)
本開示のリチウム塩錯化合物は、リン原子に直接結合する置換基Lを有するリン酸リチウム塩(以下、単に「リン酸リチウム塩」ともいう)と、特定化合物とで形成され得る。
リン酸リチウム塩としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、リン酸ジメチルリチウム、リン酸ジエチルリチウム、リン酸ジイソプロピルリチウム、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リチウム、リン酸ビス(ペンタフルオロエチル)リチウム、リン酸ジフェニルリチウム、テトラフルオロオキサラトリン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウムなどが挙げられる。
リン酸リチウム塩としては、ジフルオロリン酸リチウム又はヘキサフルオロリン酸リチウムが好ましい。
【0031】
(ホウ酸リチウム塩)
本開示のリチウム塩錯化合物は、ホウ素原子に直接結合する置換基Lを有するホウ酸リチウム塩(以下、単に「ホウ酸リチウム塩」ともいう)と、特定化合物とで形成され得る。
ホウ酸リチウム塩としては、例えば、テトラフルオロホウ酸リチウム、ジフルオロオキサラトホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムなどが挙げられる。
ホウ酸リチウム塩としては、テトラフルオロホウ酸リチウム又はビス(オキサラト)ホウ酸リチウムが好ましく、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムがより好ましい。
【0032】
(スルホン酸リチウム塩)
本開示のリチウム塩錯化合物は、硫黄原子に直接結合する置換基Lを有するスルホン酸リチウム塩(以下、単に「スルホン酸リチウム塩」ともいう)と、特定化合物とで形成され得る。
スルホン酸リチウム塩としては、例えば、フルオロスルホン酸リチウム、メタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビニルスルホン酸リチウム、アリルスルホン酸リチウム、ベンゼンスルホン酸リチウムなどが挙げられる。
スルホン酸リチウム塩としては、フルオロスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、又はベンゼンスルホン酸リチウムが好ましい。
【0033】
(硫酸リチウム塩)
本開示のリチウム塩錯化合物は、硫黄原子に直接結合する置換基Lを有する硫酸リチウム塩(以下、単に「硫酸リチウム塩」ともいう)と、特定化合物とで形成され得る。
硫酸リチウム塩としては、例えば、メチル硫酸リチウム、ドデシル硫酸リチウムなどが挙げられる。
硫酸リチウム塩としては、メチル硫酸リチウムが好ましい。
【0034】
(スルホニルイミド酸リチウム塩)
本開示のリチウム塩錯化合物は、硫黄原子に直接結合する置換基Lを有するスルホニルイミド酸リチウム塩(以下、単に「スルホニルイミド酸リチウム塩」ともいう)と、特定化合物とで形成され得る。
スルホニルイミド酸リチウム塩としては特に制限はないが、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、又はリチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドが好ましい。
【0035】
<特定化合物>
特定化合物は、リン酸リチウム塩A1のうち、リン原子に直接結合するフッ素原子を有するリン酸リチウム塩A2(以下、「フッ素含有リン酸リチウム塩A2」ともいう)、ホウ酸リチウム塩B1のうち、ホウ素原子に直接結合するフッ素原子を有するホウ酸リチウム塩B2(以下、「フッ素含有ホウ酸リチウム塩B2」ともいう)、及びスルホン酸リチウム塩C1のうち、硫黄原子に直接結合するフッ素原子を有するスルホン酸リチウム塩C2(以下、「フッ素含有スルホン酸リチウム塩C2」ともいう)からなる群から選択される1種のリチウム含有化合物である。
【0036】
(フッ素含有リン酸リチウム塩A2)
本開示のリチウム塩錯化合物は、特定リチウム塩と、フッ素含有リン酸リチウム塩A2とで形成され得る。
フッ素含有リン酸リチウム塩A2としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロオキサラトリン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムなどが挙げられる。
フッ素含有リン酸リチウム塩A2としては、ジフルオロリン酸リチウム又はヘキサフルオロリン酸リチウムが好ましい。
【0037】
(フッ素含有ホウ酸リチウム塩B2)
本開示のリチウム塩錯化合物は、特定リチウム塩と、フッ素含有ホウ酸リチウム塩B2とで形成され得る。
フッ素含有ホウ酸リチウム塩B2としては、例えば、テトラフルオロホウ酸リチウム、ジフルオロオキサラトホウ酸リチウムなどが挙げられる。
フッ素含有ホウ酸リチウム塩B2としては、テトラフルオロホウ酸リチウムが好ましい。
【0038】
(フッ素含有スルホン酸リチウム塩C2)
本開示のリチウム塩錯化合物は、特定リチウム塩と、フッ素含有スルホン酸リチウム塩C2とで形成され得る。
フッ素含有スルホン酸リチウム塩C2としては、例えば、フルオロスルホン酸リチウムが挙げられ、これが好ましく用いられる。
【0039】
〔リチウム塩錯化合物の好ましい態様〕
本開示のリチウム塩錯化合物の好ましい態様は、ジフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、メチル硫酸リチウム、ベンゼンスルホン酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、及びリチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドからなる群から選択される1種のリチウム塩(特定リチウム塩)と、
ジフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、及びフルオロスルホン酸リチウムからなる群から選択される1種のリチウム含有化合物(特定化合物)と、
からなる錯化合物である。
【0040】
即ち、本開示のリチウム塩錯化合物の好ましい態様は、以下の錯化合物1~錯化合物27である。
・錯化合物1
ヘキサフルオロリン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物2
テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物3
ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物4
トリフルオロメタンスルホン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物5
メチル硫酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物6
ベンゼンスルホン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物7
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物8
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物9
リチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
【0041】
・錯化合物10
テトラフルオロホウ酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物11
ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物12
トリフルオロメタンスルホン酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物13
メチル硫酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物14
ベンゼンスルホン酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物15
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物16
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物17
リチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
【0042】
・錯化合物18
ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物19
トリフルオロメタンスルホン酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物20
メチル硫酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物21
ベンゼンスルホン酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物22
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物23
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物24
リチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物25
フルオロスルホン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物26
フルオロスルホン酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物27
フルオロスルホン酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物。
【0043】
以下、錯化合物1~27を具体的に示す。なお、以下に示す番号(1)~(27)は、上記錯化合物1~27にそれぞれ対応するものである。
なお、本開示のリチウム塩錯化合物は、以下の錯化合物及びその構造に限定されない。
【0044】
【化2】
【0045】
【化3】
【0046】
本開示のリチウム塩錯化合物のより好ましい態様は、ジフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム、及びメチル硫酸リチウムからなる群から選択される1種のリチウム塩(特定リチウム塩)と、
ジフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、及びフルオロスルホン酸リチウムからなる群から選択される1種のリチウム含有化合物(特定化合物)と、
からなる錯化合物である。
【0047】
即ち、本開示のリチウム塩錯化合物のより好ましい態様は、前述の錯化合物1~27のうち、以下の錯化合物である。
・錯化合物1
ヘキサフルオロリン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物2
テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物3
ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物5
メチル硫酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
【0048】
・錯化合物10
テトラフルオロホウ酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物11
ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物13
メチル硫酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
【0049】
・錯化合物18
ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物20
メチル硫酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物25
フルオロスルホン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物26
フルオロスルホン酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物27
フルオロスルホン酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物。
【0050】
本開示のリチウム塩錯化合物の更に好ましい態様は、前述の錯化合物1~27のうち、以下の錯化合物である。
・錯化合物1
ヘキサフルオロリン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物2
テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物3
ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物5
メチル硫酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物10
テトラフルオロホウ酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物11
ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物13
メチル硫酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物25
フルオロスルホン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
・錯化合物26
フルオロスルホン酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物。
【0051】
〔リチウム塩錯化合物の製造方法〕
本開示のリチウム塩錯化合物の製造方法は、一般的に錯化合物を得るための従来公知の方法を適用することができる。本開示のリチウム塩錯化合物は、通常、特定リチウム塩と特定化合物とを混合させることで得ることができるが、均質な生成物としてリチウム塩錯化合物を得ることが満たされるのであれば、その混合方法、条件は任意に選択することができる。
【0052】
特定リチウム塩と特定化合物とを混合する際の、特定リチウム塩に対する特定化合物の混合モル比(特定化合物/特定リチウム塩)は、リチウム塩錯化合物を安定して形成する観点から、1~6であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。
上記混合モル比が1以上であると、特定リチウム塩が過剰となる状態を回避しやすい。
上記混合モル比が6以下であると、特定化合物が過剰となる状態を回避しやすい。
【0053】
特定リチウム塩と特定化合物との混合方法は特に制限されないが、有機溶媒を用いて両者の混合を行うことがよい。
ただし、均質な生成物(リチウム塩錯化合物)を得るために、原料化合物(特定リチウム塩及び特定化合物)の少なくとも一方を溶解することのできる有機溶媒を使用することが好ましい。
【0054】
有機溶媒としては、目的とするリチウム塩錯化合物の生成を阻害しなければどのような有機溶媒でも用いることができる。
有機溶媒としては、1種の化合物からなる単独溶媒を用いてもよいし、2種以上の化合物からなる混合溶媒を用いてもよい。
有機溶媒としては、例えば、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、メシチレン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、及びシクロノナンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
これらの各化合物において、異性体が存在する場合には、各化合物の概念には、全ての異性体が包含される。
例えば、キシレンの概念には、オルトキシレン、メタキシレン、及びパラキシレンが包含され、プロピルベンゼンの概念には、ノルマルプロピルベンゼン及びイソプロピルベンゼン(別名キュメン)が包含される。
【0055】
特定リチウム塩と特定化合物との混合は、常圧下、減圧下のいずれでも行えるが、リチウム塩錯化合物の生成を阻害する成分(例えば水分)の混入を防ぐために、反応系内を窒素、アルゴン等の不活性雰囲気として行うことが好ましい。
【0056】
特定リチウム塩と特定化合物とを混合する際の温度は、20℃~200℃であることが好ましく、20℃~150℃であることがより好ましく、20℃~100℃であることがさらに好ましい。
温度が20℃以上であると、リチウム塩錯化合物の生成が促進されやすく、温度が200℃以下であると、生成したリチウム塩錯化合物の解離が抑制され、生成率が向上しやすい。
【0057】
特定リチウム塩と特定化合物との混合時間は、反応を効率よく進行させる観点から、30分~12時間であることが好ましく、1時間~8時間であることがより好ましい。
【0058】
特定リチウム塩と特定化合物とを混合した後、本開示のリチウム塩錯化合物を取り出す方法については特に制限はなく、従来公知の方法を任意に選択し実施することができる。例えば、リチウム塩錯化合物がその目的の成分のみの固体として得られた場合には、それを特段の処理なく取り出すこともできるし、溶媒に分散したスラリー状態の固体として得られた場合には、溶媒を分離、乾燥で除去して取り出すこともできる。
また例えば、リチウム塩錯化合物が溶媒に溶解した状態で得られた場合には、該溶液を加熱濃縮して溶媒を留去し取り出す方法や、生成したリチウム塩錯化合物が溶解しない溶媒を該溶液に加えて析出させ、溶媒を分離、乾燥で除去して取り出す方法を行うこともできる。
【0059】
取り出されたリチウム塩錯化合物の乾燥方法としては、従来公知の方法を任意に選択し実施することができる。例えば、棚段式乾燥機での静置乾燥法;コニカル乾燥機での流動乾燥法;ホットプレート、オーブン等の装置を用いて乾燥させる方法;ドライヤーなどの乾燥機で温風又は熱風を供給する方法;等が挙げられる。
【0060】
取り出されたリチウム塩錯化合物を乾燥する際の圧力は、常圧、減圧のいずれの条件でも行えるが、乾燥する際の温度は20℃~200℃であることが好ましく、20℃~150℃であることがより好ましく、20℃~100℃であることがさらに好ましい。温度が20℃以上であると乾燥効率がよく、温度が200℃以下であると生成したリチウム塩錯化合物の解離が抑制され、リチウム塩錯化合物を安定して取り出しやすい。
【0061】
取り出されたリチウム塩錯化合物は、そのまま用いてもよいし、例えば、溶媒中に分散して、又は溶解して用いてもよいし、他の固体物質と混合して用いてもよい。
【0062】
本開示のリチウム塩錯化合物は、リチウム電池用添加剤、反応試剤、合成反応触媒、各種電気化学デバイス用電解質、ドーピング剤、潤滑油の添加剤などの用途で有用に使用できる。
上記リチウム塩錯化合物としては、リチウム電池用添加剤として用いることが好ましく、特にリチウム二次電池用添加剤として用いることがよい。
【0063】
〔リチウム二次電池用添加剤〕
本開示の二次電池用添加剤は、上述したリチウム塩錯化合物を含む。
本開示の二次電池用添加剤は、特にリチウム二次電池の非水電解液用の添加剤として好適である。
【0064】
〔リチウム塩錯化合物の製造方法の別の一態様(製法A)〕
次に、本開示のリチウム塩錯化合物の製造方法の別の一態様(以下、「製法A」ともいう)について説明する。
製法Aは、テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなるリチウム塩錯化合物(即ち、前述した錯化合物2;構造は以下のとおり)の製造方法であって、酸化ホウ素とヘキサフルオロリン酸リチウムとフッ化リチウムとを、有機溶媒中で反応させることにより、上記リチウム塩錯化合物(錯化合物2)の溶液を得る工程(以下、「溶液製造工程」ともいう)を含む。
【0065】
【化4】
【0066】
製法Aは、前述したリチウム塩錯化合物の製造方法とは別の態様の製造方法である。
製法Aは、テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなるリチウム塩錯化合物(錯化合物2)の原料として、この錯化合物2を構成するテトラフルオロホウ酸リチウム自体及びジフルオロリン酸リチウム自体を用いるのではなく、酸化ホウ素とヘキサフルオロリン酸リチウムとフッ化リチウムとを用いる製造方法である。
錯化合物2は、この製法Aによっても製造できるし、前述のとおり、テトラフルオロホウ酸リチウム自体及びジフルオロリン酸リチウム自体を用いる方法によっても製造できる。
【0067】
製法Aにおける溶液製造工程では、酸化ホウ素(B)とヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)とフッ化リチウム(LiF)とを、有機溶媒中で反応させることにより、リチウム塩錯化合物(錯化合物2)の溶液を得る。
溶液製造工程における反応の反応スキームは、以下のとおりと考えられる。
【0068】
【化5】
【0069】
上述のとおり、溶液製造工程における反応により、
テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)及びジフルオロリン酸リチウム(LiPO)の生成、
生成されたテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)及びジフルオロリン酸リチウム(LiPO)による錯化合物2の形成、及び、
形成された錯化合物2の有機溶媒中への溶解が起こる。
溶液製造工程における反応では、このようにして錯化合物2の溶液が生成される。
また、生成されたジフルオロリン酸リチウム(LiPO)の一部は、上記反応後の反応液(即ち、錯化合物2の溶液)中で析出し、反応液から析出除去される。
【0070】
製法Aは、上述したとおり、テトラフルオロホウ酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムのそれぞれの合成を行いながら、テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなるリチウム塩錯化合物(錯化合物2)を製造できるため、錯化合物2の生産性に優れる。
【0071】
上述の反応スキームでは、錯化合物2におけるLiPOに対するLiBFのモル比〔LiBF/LiPO〕の表記を省略している。
錯化合物2におけるモル比〔LiBF/LiPO〕は、有機溶媒中での安定性及び有機溶媒への溶解性の観点から、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3である。
また、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)の一部は、上記反応後の反応液(即ち、錯化合物2の溶液)中で析出し、反応液から析出除去される。
【0072】
溶液製造工程において、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)の使用量は、酸化ホウ素(B)の使用量に対し、好ましくは100モル%~200モル%であり、より好ましくは120モル%~180モル%であり、更に好ましくは140モル%~160モル%であり、理想的には150モル%である。
溶液製造工程において、フッ化リチウム(LiF)の使用量は、酸化ホウ素(B)の使用量に対し、好ましくは150モル%~250モル%であり、より好ましくは170モル%~230モル%であり、更に好ましくは、190モル%~210モル%であり、理想的には200モル%である。
【0073】
溶液製造工程における、酸化ホウ素とヘキサフルオロリン酸リチウムとフッ化リチウムとの反応は、有機溶媒の存在下で行う。
上記反応を有機溶媒の存在下で行う具体的な態様としては特に限定はない。
具体的な態様としては、例えば、
ヘキサフルオロリン酸リチウムを有機溶媒に溶解させた溶液に対し酸化ホウ素及びフッ化リチウムを添加する態様(以下、「態様1」とする);
酸化ホウ素及びフッ化リチウムの粉体を有機溶媒に分散させた分散液(例えばスラリー)に対し、ヘキサフルオロリン酸リチウムを添加する態様(以下、「態様2」とする);
等が挙げられる。
【0074】
製法Aにおける有機溶媒の種類には特に限定はない。
製法Aにおける有機溶媒としては、1種の化合物からなる単独溶媒を用いてもよいし、2種以上の化合物からなる混合溶媒を用いてもよい。
製法Aにおける有機溶媒としては、リチウム塩錯化合物をより安定的に、かつ、より高濃度で溶解させる観点から、
アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0075】
製法Aにおける有機溶媒は、リチウム塩錯化合物をより安定的に、かつ、より高濃度で溶解させる観点から、
酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、
ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが更に好ましい。
【0076】
製法Aにおける有機溶媒が、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む場合、有機溶媒の全量中に占める、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートの合計の比率は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。
【0077】
溶液製造工程における有機溶媒の使用量は、有機溶媒、酸化ホウ素、ヘキサフルオロリン酸リチウム、及びフッ化リチウムの総使用量に対し、好ましくは50質量%~97質量%であり、より好ましくは65質量%~95質量%であり、更に好ましくは75質量%~93質量%である。
有機溶媒の使用量が50質量%以上である場合には、製造される溶液中に錯化合物2を、より安定的に溶解させることができる。
有機溶媒の使用量が97質量%以下である場合には、原料の量がある程度多く確保され、その結果、生成される錯化合物2の量も確保しやすいので、実用性の面で有利である。
【0078】
製造される溶液中における錯化合物2の濃度は、好ましくは3質量%~50質量%であり、より好ましくは5質量%~35質量%であり、更に好ましくは7質量%~25質量%である。
錯化合物2の濃度が3質量%以上であると、各種の用途(用途の具体例は後述する)への実用性に優れる。
錯化合物2の濃度が50質量%以下であると、錯化合物2の溶液の保存安定性に優れる。
【0079】
上記反応は、常圧下又は減圧下で行うことができる。
上記反応は、ジフルオロリン酸リチウムの生成を阻害する成分(例えば水分)の混入を防ぐ観点から、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、等)で行うことが好ましい。
【0080】
上記反応における反応温度は、20℃以上であることが好ましく、20℃~150℃であることが好ましく、20℃~120℃であることがより好ましく、20℃~100℃であることがさらに好ましい。
反応温度が20℃以上であると、錯化合物2の生成が促進されやすい。
反応温度が150℃以下であると、生成した錯化合物2の分解がより抑制され、生成率が向上しやすい。
【0081】
上記反応における反応時間は、上記反応を効率よく進行させる観点から、30分~12時間であることが好ましく、1時間~8時間であることがより好ましい。
【0082】
溶液製造工程における反応は、錯化合物2の溶液のみを得る反応であってもよいし、錯化合物2の溶液と固体析出物との混合物(例えばスラリー)を得る反応であってもよい。
【0083】
溶液製造工程における反応が錯化合物2の溶液のみを得る反応である場合、得られた錯化合物2の溶液は、各種用途(用途の具体例は後述する)にそのまま用いてもよい。
また、溶液製造工程における反応が錯化合物2の溶液のみを得る反応である場合、錯化合物2の溶液から、加熱濃縮等により有機溶媒を除去して錯化合物2を取り出し、取り出した錯化合物2を、各種用途に用いてもよい。
【0084】
溶液製造工程が、錯化合物2の溶液と固体析出物との混合物を得る反応である場合、混合物から、濾過、遠心分離、沈降分離、等により、混合物から固体析出物を除去して得られた錯化合物2の溶液を、各種の用途に用いることができる。
即ち、溶液製造工程は、酸化ホウ素とヘキサフルオロリン酸リチウムとフッ化リチウムとを、有機溶媒中で反応させることにより、錯化合物2の溶液と固体析出物との混合物を得る工程と、混合物から固体析出物を除去する工程と、を含んでもよい。
固体析出物としては、例えば、ジフルオロリン酸リチウムが挙げられる。
【0085】
製法Aは、溶液製造工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。
その他の工程としては、溶液製造工程で得られた錯化合物2の溶液から、錯化合物2を取り出す工程が挙げられる。
【0086】
錯化合物2の溶液から錯化合物2を取り出す方法としては、加熱濃縮が好適である。
加熱濃縮における加熱温度は、40℃~150℃であることが好ましく、40℃~100℃であることがより好ましく、50℃~70℃であることがさらに好ましい。
加熱温度が40℃以上であると錯化合物2の取り出し効率に優れる。
加熱温度が150℃以下であると、錯化合物2を安定して取り出しやすい。
加熱濃縮は、常圧下又は減圧下で行うことができる。
加熱濃縮を減圧下で行う場合の圧力は10kPa以下が好ましい。
【0087】
取り出し工程において取り出された錯化合物2の乾燥方法としては、従来公知の方法を任意に選択し実施することができる。
乾燥方法としては、例えば、棚段式乾燥機での静置乾燥法;コニカル乾燥機での流動乾燥法;ホットプレート、オーブン等の装置を用いて乾燥させる方法;ドライヤーなどの乾燥機で温風又は熱風を供給する方法;等が挙げられる。
【0088】
取り出された錯化合物2の乾燥は、常圧下又は減圧下で行うことができる。
乾燥を減圧下で行う場合の圧力は10kPa以下が好ましい。
取り出された錯化合物2を乾燥する際の乾燥温度は、20℃~150℃であることが好ましく、20℃~100℃であることがより好ましく、40℃~80℃であることが更に好ましく、50℃~70℃であることが更に好ましい。
乾燥温度が20℃以上であると乾燥効率に優れる。
乾燥温度が150℃以下であると、錯化合物2を安定して乾燥させやすい。
【0089】
以上で説明した製法Aにより得られるリチウム塩錯化合物(錯化合物2)又はその溶液は、リチウムイオン電池用添加剤、反応試剤、合成反応触媒、各種電気化学デバイス用電解質、ドーピング剤、潤滑油の添加剤などの用途で有用に使用できる。
製法Aにより得られるリチウム塩錯化合物(錯化合物2)又はその溶液は、特に電池用非水電解液(好ましくはリチウム二次電池用非水電解液)に添加される添加剤として用いた場合に、電池特性の向上に寄与することが期待される。
この場合、錯化合物2の溶液を原料の一部として用いて電池用非水電解液を調製してもよいし、錯化合物2の溶液から取り出した錯化合物2を原料の一部として用いて電池用非水電解液を調製してもよい。
【実施例
【0090】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
なお、以下の実施例では、リチウム塩錯化合物を、単に「錯化合物」ともいう。錯化合物の番号は、既述の錯化合物の番号に対応している。
【0091】
〔実施例1〕ヘキサフルオロリン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物1
撹拌装置、温度計、ガスの導入および排気ラインを備えた50mLのフラスコに、乾燥窒素ガスでパージした後に、ジフルオロリン酸リチウム3.24g(0.03mol)と酢酸エチル20gを入れ、室温で攪拌してジフルオロリン酸リチウムを溶解させた。この溶液中にヘキサフルオロリン酸リチウム4.56g(0.03mol)を加え、1時間撹拌した後に、撹拌したまま10kPa以下に減圧、60℃に加温して酢酸エチルを留去させた。得られた固体を更に、10kPa以下の減圧下、60℃で乾燥処理して生成物となる固体7.80gを得た。
【0092】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:-72ppm(3F)、-74ppm(3F)。-82ppm(1F)、-85ppm(1F)。
ジフルオロリン酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウム単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない132℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
なお、吸熱熱解離挙動の観測は、セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計(DSC220C型)を用いて行った。以下同様である。
【0093】
〔実施例2〕テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物2
実施例1と同様の方法を行う中で、ヘキサフルオロリン酸リチウムをテトラフルオロホウ酸リチウム2.81g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体6.05gを得た。
【0094】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:-82ppm(1F)、-85ppm(1F)、-153ppm(4F)。
ジフルオロリン酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウム単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない140℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0095】
〔実施例3〕ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物3
実施例1と同様の方法を行う中で、ヘキサフルオロリン酸リチウムをビス(オキサラト)ホウ酸リチウム5.81g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体9.05gを得た。
【0096】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
19F-NMR:-82ppm、-85ppm。
また、11B-NMR分析も行い、得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
11B-NMR:6.5ppm。
それぞれ、ジフルオロリン酸リチウムとビス(オキサラト)ホウ酸リチウム単独のスペクトルパターンと同じパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない179℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0097】
〔実施例4〕トリフルオロメタンスルホン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物4
実施例1と同様の方法を行う中で、ヘキサフルオロリン酸リチウムをトリフルオロメタンスルホン酸リチウム4.68g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体7.91gを得た。
【0098】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:-78ppm(3F)、-82ppm(1F)、-85ppm(1F)。
ジフルオロリン酸リチウムとトリフルオロメタンスルホン酸リチウム単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない222℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0099】
〔実施例5〕メチル硫酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物5
実施例1と同様の方法を行う中で、ヘキサフルオロリン酸リチウムをメチル硫酸リチウム3.54g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体6.78gを得た。
【0100】
得られた固体を重水溶媒に溶解しH-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
H-NMR:3.5ppm。
また、19F-NMR分析も行い、得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
19F-NMR:-82ppm、-85ppm。
それぞれ、メチル硫酸リチウムとジフルオロリン酸リチウム単独のスペクトルパターンと同じパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない240℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0101】
〔実施例6〕ベンゼンスルホン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物6
実施例1と同様の方法を行う中で、ヘキサフルオロリン酸リチウムをベンゼンスルホン酸リチウム4.92g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体8.15gを得た。
【0102】
得られた固体を重水溶媒に溶解しH-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
H-NMR:7.5~7.9ppm。
また、19F-NMR分析も行い、得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
19F-NMR:-82ppm、-85ppm。
それぞれ、ベンゼンスルホン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウム単独のスペクトルパターンと同じパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない320℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0103】
〔実施例7〕リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物7
実施例1と同様の方法を行う中で、ヘキサフルオロリン酸リチウムをリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド8.61g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体11.85gを得た。
【0104】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:-79ppm(6F)、-82ppm(1F)、-85ppm(1F)。
ジフルオロリン酸リチウムとリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない244℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0105】
〔実施例8〕リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物8
実施例1と同様の方法を行う中で、ヘキサフルオロリン酸リチウムをリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド5.61g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体8.85gを得た。
【0106】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:55ppm(2F)、-82ppm(1F)、-85ppm(1F)。
ジフルオロリン酸リチウムとリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない200℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0107】
〔実施例9〕リチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物9
実施例1と同様の方法を行う中で、ヘキサフルオロリン酸リチウムをリチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド11.61g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体14.84gを得た。
【0108】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:-80ppm(6F)、-82ppm(1F)、-85ppm(1F)、-119ppm(4F)。
ジフルオロリン酸リチウムとリチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない288℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0109】
〔実施例10〕テトラフルオロホウ酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物10
撹拌装置、温度計、ガスの導入および排気ラインを備えた50mLのフラスコに、乾燥窒素ガスでパージした後に、ヘキサフルオロリン酸リチウム4.56g(0.03mol)と酢酸エチル20gを入れ、室温で攪拌してヘキサフルオロリン酸リチウムを溶解させた。この溶液中にテトラフルオロホウ酸リチウム2.81g(0.03mol)を加え、1時間撹拌した後に、撹拌したまま10kPa以下に減圧、60℃に加温して酢酸エチルを留去させた。得られた固体を更に、10kPa以下の減圧下、60℃で乾燥処理して生成物となる固体7.36gを得た。
【0110】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:-72ppm(3F)、-74ppm(3F)、-153ppm(4F)。
ヘキサフルオロリン酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウムのスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない97℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0111】
〔実施例11〕ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物11
実施例10と同様の方法を行う中で、テトラフルオロホウ酸リチウムをビス(オキサラト)ホウ酸リチウム5.81g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体10.36gを得た。
【0112】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
19F-NMR:-72ppm、-74ppm。
また、11B-NMR分析も行い、得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
11B-NMR:6.5ppm。
それぞれ、ヘキサフルオロリン酸リチウムとビス(オキサラト)ホウ酸リチウム単独のスペクトルパターンと同じパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない140℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0113】
〔実施例12〕トリフルオロメタンスルホン酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物12
実施例10と同様の方法を行う中で、テトラフルオロホウ酸リチウムをトリフルオロメタンスルホン酸リチウム4.68g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体9.24gを得た。
【0114】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:-72ppm(3F)、-74ppm(3F)、-78ppm(3F)。
ヘキサフルオロリン酸リチウムとトリフルオロメタンスルホン酸リチウム単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない165℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0115】
〔実施例13〕メチル硫酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物13
実施例10と同様の方法を行う中で、テトラフルオロホウ酸リチウムをメチル硫酸リチウム3.54g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体8.10gを得た。
【0116】
得られた固体を重水溶媒に溶解しH-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
H-NMR:3.5ppm。
また、19F-NMR分析も行い、得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
19F-NMR:-72ppm、-74ppm。
それぞれ、メチル硫酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウム単独のスペクトルパターンと同じパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない196℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0117】
〔実施例14〕ベンゼンスルホン酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物14
実施例10と同様の方法を行う中で、テトラフルオロホウ酸リチウムをベンゼンスルホン酸リチウム4.92g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体9.48gを得た。
【0118】
得られた固体を重水溶媒に溶解しH-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
H-NMR:7.5~7.9ppm。
また、19F-NMR分析も行い、得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
19F-NMR:-72ppm、-74ppm。
それぞれ、ベンゼンスルホン酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウム単独のスペクトルパターンと同じパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない214℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0119】
〔実施例15〕リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物15
実施例10と同様の方法を行う中で、テトラフルオロホウ酸リチウムをリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド8.61g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体13.17gを得た。
【0120】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:-72ppm(3F)、-74ppm(3F)、-79ppm(6F)。
ヘキサフルオロリン酸リチウムとリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない224℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0121】
〔実施例16〕リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物16
実施例10と同様の方法を行う中で、テトラフルオロホウ酸リチウムをリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド5.61g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体10.16gを得た。
【0122】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:55ppm(2F)、-72ppm(3F)、-74ppm(3F)。
ヘキサフルオロリン酸リチウムとリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない333℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0123】
〔実施例17〕リチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物17
実施例10と同様の方法を行う中で、テトラフルオロホウ酸リチウムをリチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド11.61g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体16.16gを得た。
【0124】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:-72ppm(3F)、-74ppm(3F)、-80ppm(6F)、-119ppm(4F)。
ヘキサフルオロリン酸リチウムとリチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない245℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0125】
〔実施例18〕ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物18
撹拌装置、温度計、ガスの導入および排気ラインを備えた50mLのフラスコに、乾燥窒素ガスでパージした後に、テトラフルオロホウ酸リチウム2.81g(0.03mol)と酢酸エチル20gを入れ、撹拌混和させた。この液中にビス(オキサラト)ホウ酸リチウム5.81g(0.03mol)を加え、1時間撹拌した後に、撹拌したまま10kPa以下に減圧、60℃に加温して酢酸エチルを留去させた。得られた固体を更に、10kPa以下の減圧下、60℃で乾燥処理して生成物となる固体8.62gを得た。
【0126】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
19F-NMR:-153ppm。
また、11B-NMR分析も行い、得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
11B-NMR:6.5ppm、-2.4ppm。
19F-NMRでテトラフルオロホウ酸リチウムのスペクトルパターンが確認され、また、11B-NMRでテトラフルオロホウ酸リチウムとビス(オキサラト)ホウ酸リチウム単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない97℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0127】
〔実施例19〕トリフルオロメタンスルホン酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物19
実施例18と同様の方法を行う中で、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムをトリフルオロメタンスルホン酸リチウム4.68g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体7.49gを得た。
【0128】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:-78ppm(3F)、-153ppm(4F)。
テトラフルオロホウ酸リチウムとトリフルオロメタンスルホン酸リチウム単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない118℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0129】
〔実施例20〕メチル硫酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物20
実施例18と同様の方法を行う中で、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムをメチル硫酸リチウム3.54g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体6.34gを得た。
【0130】
得られた固体を重水溶媒に溶解しH-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
H-NMR:3.5ppm。
また、19F-NMR分析も行い、得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
19F-NMR:-153ppm。
それぞれ、メチル硫酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウム単独のスペクトルパターンと同じパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない140℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0131】
〔実施例21〕ベンゼンスルホン酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物21
実施例18と同様の方法を行う中で、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムをベンゼンスルホン酸リチウム4.92g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体7.72gを得た。
【0132】
得られた固体を重水溶媒に溶解しH-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
H-NMR:7.5~7.9ppm。
また、19F-NMR分析も行い、得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
19F-NMR:-153ppm。
それぞれ、ベンゼンスルホン酸リチウムとテトラフルオロホウ酸リチウム単独のスペクトルパターンと同じパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない105℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0133】
〔実施例22〕リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物22
実施例18と同様の方法を行う中で、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムをリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド8.61g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体11.42gを得た。
【0134】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:-79ppm(6F)、-153ppm(4F)。
テトラフルオロホウ酸リチウムとリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない300℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0135】
〔実施例23〕リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物23
実施例18と同様の方法を行う中で、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムをリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド5.61g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体8.41gを得た。
【0136】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:55ppm(2F)、-153ppm(4F)。
テトラフルオロホウ酸リチウムとリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない120℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0137】
〔実施例24〕リチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドとテトラフルオロホウ酸リチウムとからなる錯化合物24
実施例18と同様の方法を行う中で、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウムをリチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド11.61g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体14.42gを得た。
【0138】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:-80ppm(6F)、-119ppm(4F)、-153ppm(4F)。
テトラフルオロホウ酸リチウムとリチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない180℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0139】
〔実施例25〕フルオロスルホン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物25
実施例1と同様の方法を行う中で、ヘキサフルオロリン酸リチウムをフルオロスルホン酸リチウム3.18g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体6.42gを得た。
【0140】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:40ppm(1F)、-82ppm(1F)、-85ppm(1F)。
フルオロスルホン酸リチウムとジフルオロリン酸リチウム単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない167℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0141】
〔実施例26〕フルオロスルホン酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物26
実施例10と同様の方法を行う中で、テトラフルオロホウ酸リチウムをフルオロスルホン酸リチウム3.18g(0.03mol)に変更して処理を行った。最終的に生成物となる固体7.74gを得た。
【0142】
得られた固体を重水溶媒に溶解し19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕と(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:40ppm(1F)、-72ppm(3F)、-74ppm(3F)。
フルオロスルホン酸リチウムとヘキサフルオロリン酸リチウム単独のスペクトルパターンを併せたパターンが確認され、生成物が両構造単位を有することが示された。
また得られた固体の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。得られた固体には、両方の原料化合物を単独で測定する際には認められない125℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0143】
以上に示すように、各実施例では、新規なリチウム塩錯化合物が得られた。
また、各実施例で得られたリチウム塩錯化合物は、原料化合物(特定リチウム塩及び特定化合物)には認められない温度で吸熱熱解離挙動が観測された。即ち、得られたリチウム塩錯化合物は、熱的安定性に優れることが確認された。
【0144】
次に、前述した製法A(錯化合物2であるリチウム塩錯化合物の製造方法の一態様)の実施例である、実施例101及び102を示す。
【0145】
〔実施例101〕
撹拌装置、温度計、ガス導入ライン、及び排気ラインを備えた100mLのフラスコを乾燥窒素ガスでパージした後、ここに、酸化ホウ素1.66g(0.024mol)とフッ化リチウム1.24g(0.048mol)とジメチルカーボネート23.50gとを入れ、室温(25℃。以下同じ。)で攪拌し、スラリーを得た。ここに、ヘキサフルオロリン酸リチウム5.45g(0.036mol)をジメチルカーボネート16.35gに溶解させた溶液を、1時間かけて滴下して加えることにより、すべての原料を含む混合液を得た。この混合液を、25℃で12時間撹拌することにより反応を行い、反応液を得た。得られた反応液は、固体が析出したスラリーであった。この反応液(スラリー)を濾過することにより、濾液として、溶液A(47.69g)を得た。この溶液Aを、10kPa以下の減圧下、60℃に加温することにより、溶液Aからジメチルカーボネートを留去させ、固体を得た。得られた固体を、更に、10kPa以下の減圧下、60℃で乾燥処理することにより、固体生成物7.85gを得た。
【0146】
得られた固体生成物を重水溶媒に溶解し、19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルの、ケミカルシフト〔ppm〕及び(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:-82.0ppm(1F)、-84.5ppm(1F)、-153.0ppm(6.1F)。
【0147】
また、上記固体生成物の11B-NMR分析も行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
11B-NMR:-2.4ppm。
【0148】
19F-NMRにより、ジフルオロリン酸リチウム単独のスペクトルパターンとテトラフルオロホウ酸リチウム単独のスペクトルパターンとを併せたスペクトルパターンが確認され、また、11B-NMRにより、テトラフルオロホウ酸リチウムのスペクトルパターンが確認された。更に、19F-NMRにおける積分値比から、この固体生成物は、モル比〔テトラフルオロホウ酸リチウム/ジフルオロリン酸リチウム〕が1.5である、テトラフルオロホウ酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムから構成されることが示された。
【0149】
更に、得られた固体生成物の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。その結果、テトラフルオロホウ酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの各々を単独で測定する際には認められない、146℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0150】
以上の結果から、実施例101で得られた固体生成物が、テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物2(モル比〔テトラフルオロホウ酸リチウム/ジフルオロリン酸リチウム〕=1.5)であることが確認された。
【0151】
〔実施例102〕
撹拌装置、温度計、ガス導入ライン、及び排気ラインを備えた100mLのフラスコを乾燥窒素ガスでパージした後、ここに、酸化ホウ素1.66g(0.024mol)とジメチルカーボネート23.50gとを入れ、90℃(88℃還流状態)に加熱しながら攪拌し、スラリーを得た。ここに、ヘキサフルオロリン酸リチウム5.45g(0.036mol)をジメチルカーボネート16.35gに溶解させた溶液を、1時間かけて滴下して加えた。上記溶液が全て滴下された直後のスラリーは、酸化ホウ素が溶解した均一溶液に変化していた。続いてここに、フッ化リチウム1.24g(0.048mol)を速やかに加えることにより、すべての原料を含む混合液を調製した。引き続きこの混合液を、90℃(88℃還流状態)で1時間撹拌することにより反応を行い、反応液を得た。得られた反応液は、固体が析出したスラリーであった。この反応液(スラリー)を室温まで冷却した後、濾過することにより、濾液として、溶液A(47.74g)を得た。この溶液Aを、10kPa以下の減圧下、60℃に加温することにより、溶液Aからジメチルカーボネートを留去させ、固体を得た。得られた固体を、更に、10kPa以下の減圧下、60℃で乾燥処理することにより、固体生成物7.88gを得た。
【0152】
得られた固体生成物を重水溶媒に溶解し、19F-NMR分析を行った。得られたスペクトルの、ケミカルシフト〔ppm〕及び(積分値(比))は以下の通りであった。
19F-NMR:-82.0ppm(1F)、-84.5ppm(1F)、-153.0ppm(6.0F)。
【0153】
また、上記固体生成物の11B-NMR分析も行った。得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
11B-NMR:-2.4ppm。
【0154】
19F-NMRにより、ジフルオロリン酸リチウム単独のスペクトルパターンとテトラフルオロホウ酸リチウム単独のスペクトルパターンとを併せたスペクトルパターンが確認され、また、11B-NMRにより、テトラフルオロホウ酸リチウムのスペクトルパターンが確認された。更に、19F-NMRにおける積分値比から、この固体生成物は、モル比〔テトラフルオロホウ酸リチウム/ジフルオロリン酸リチウム〕が1.5である、テトラフルオロホウ酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムから構成されることが示された。
【0155】
更に、得られた固体生成物の、室温から600℃までの示差走査熱量(DSC)測定を行った。その結果、テトラフルオロホウ酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの各々を単独で測定する際には認められない、146℃ピークの吸熱熱解離挙動が観測された。
【0156】
以上の結果から、実施例102で得られた固体生成物も、テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロリン酸リチウムとからなる錯化合物2(モル比〔テトラフルオロホウ酸リチウム/ジフルオロリン酸リチウム〕=1.5)であることが確認された。
【0157】
また、前述した実施例2で製造した錯化合物2について、11B-NMR分析も行ったところ、得られたスペクトルのケミカルシフト〔ppm〕は以下の通りであった。
11B-NMR:-2.4ppm。
実施例2で製造した錯化合物2は、前述した19F-NMRの積分値比から、モル比〔テトラフルオロホウ酸リチウム/ジフルオロリン酸リチウム〕が1.0である、テトラフルオロホウ酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムから構成されることがわかる。
【0158】
上述した実施例101及び102により、前述した製法Aにより、モル比〔テトラフルオロホウ酸リチウム/ジフルオロリン酸リチウム〕以外は実施例2の錯化合物2(モル比〔テトラフルオロホウ酸リチウム/ジフルオロリン酸リチウム〕=1.0)と同様の構造の、錯化合物2(モル比〔テトラフルオロホウ酸リチウム/ジフルオロリン酸リチウム〕=1.5)が製造されたことが確認された。