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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K1/02 E
H05K1/02 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018560354
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2017045861
(87)【国際公開番号】W WO2018128082
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-09-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2017000602
(32)【優先日】2017-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】上田 宏
(72)【発明者】
【氏名】三浦 宏介
(72)【発明者】
【氏名】野口 航
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】山内 裕史
【審判官】富澤 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-339126(JP,A)
【文献】特開2002-158409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有するベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層されている配線を含む導電パターンで構成された回路とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記回路における配線が、平面視で角度が60°以上の分岐部への応力集中を緩和する緩和構造を備え、
上記緩和構造が、上記分岐部からの距離が上記配線の最小幅の5倍以下の範囲内の配線を幅広配線とした構造であり、
上記幅広配線の配線幅が上記配線の最小幅の2倍以上であるフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
絶縁性を有するベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層されている配線を含む導電パターンで構成された回路とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記回路における配線が、平面視で角度が60°以上の分岐部への応力集中を緩和する緩和構造を備え、
上記緩和構造が、上記分岐部からの距離が上記配線の最小幅の5倍以下の範囲内の配線を密集配線とした構造であり、
上記密集配線の配線幅の配線間隔に対する比が1.5以上であり、かつ上記密集配線の合計幅が上記配線の最小幅の2倍以上であるフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
絶縁性を有するベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層されている配線を含む導電パターンで構成された回路とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記ベースフィルムの主成分がポリイミドであり、
上記回路における配線が、平面視で角度が60°以上の屈曲部への応力集中を緩和する緩和構造を備え、
上記緩和構造が、上記屈曲部からの距離が上記配線の最小幅の5倍以下の範囲内の配線を密集配線とした構造であり、
上記密集配線の配線幅の配線間隔に対する比が2.0以上10以下であり、かつ上記密集配線の合計幅が上記配線の最小幅の2倍以上であり、
上記屈曲部が、上記配線の中心線の曲率半径が配線全体における最小幅の5倍以下の部分であるフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
絶縁性を有するベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層されている配線を含む導電パターンで構成された回路とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記ベースフィルムの主成分がポリイミドであり、
上記回路における配線が、平面視で角度が60°以上の屈曲部への応力集中を緩和する緩和構造を備え、
上記緩和構造が、上記屈曲部からの距離が上記配線の最小幅の5倍以下の範囲内の配線を幅広配線とした構造であり、
上記幅広配線の配線幅が上記配線の最小幅の2.5倍以上であり、
上記屈曲部が、上記配線の中心線の曲率半径が配線全体における最小幅の5倍以下の部分であり、
上記幅広配線の端部の上記屈曲部からの距離が、上記配線の最小幅の50倍以下であり、
上記導電パターンを形成する材料が銅であり、この導電パターンが表面にめっきを有するフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
上記幅広配線の上記配線幅が50μm以上である請求項1又は請求項4に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
上記密集配線の上記配線間隔が20μm以下である請求項又は請求項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板に関する。
本出願は、2017年1月5日出願の日本出願第2017-000602号に基づく優先権を主張し、上記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層され、平面視で屈曲部又は分岐部を有する配線を含む導電パターンとを備えるフレキシブルプリント配線板が広く利用されている。
【0003】
フレキシブルプリント配線板は、面に角度をつけるよう折り曲げて使用されることがあり、さらに使用中に曲げの状態が繰り返し変化して疲労を受ける場合がある。このため、フレキシブルプリント配線板は、使用条件によっては、導電パターンの屈曲部や分岐部に応力が集中して断線するおそれがある。
【0004】
例えば特開平11-340591号公報には、導電パターンにおける配線の交差部の内角にフィレットを設けることによって、交差部への応力集中を防止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-340591号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層され、平面視で角度が60°以上の屈曲部又は角度が60°以上の分岐部を有する配線を含む導電パターンとを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記配線が上記屈曲部又は分岐部への応力集中を緩和する緩和構造を備え、上記緩和構造が、上記屈曲部又は分岐部からの距離が上記配線の最小幅の5倍以下の範囲内の配線を幅広配線又は密集配線とした構造であり、上記幅広配線の配線幅が上記配線の最小幅の2倍以上であり、上記密集配線の配線幅の配線間隔に対する比が1.5以上であり、かつ上記密集配線の合計幅が上記配線の最小幅の2倍以上である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一実施形態のフレキシブルプリント配線板を示す模式的平面図である。
図2図2は、本発明の図1とは異なる実施形態のフレキシブルプリント配線板を示す模式的平面図である。
図3図3は、本発明の図1及び図2とは異なる実施形態のフレキシブルプリント配線板を示す模式的平面図である。
図4図4は、本発明の図1図2及び図3とは異なる実施形態のフレキシブルプリント配線板を示す模式的平面図である。
図5図5は、本発明の図1乃至図4とは異なる実施形態のフレキシブルプリント配線板を示す模式的平面図である。
図6図6は、本発明の図1乃至図5とは異なる実施形態のフレキシブルプリント配線板を示す模式的平面図である。
図7図7は、本発明の図1乃至図6とは異なる実施形態のフレキシブルプリント配線板を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
上記公報が提案する従来の導電パターンのデザインは、可撓性を有しないリジッド配線板における断線を防止するものであり、比較的大きな曲げを受けるフレキシブルプリント配線板に適用しても、十分に導電パターンの破断を防止することは難しい。
【0009】
特に、近年電子機器の小型化が進み、これに伴ってフレキシブルプリント配線板の導電パターンが細線化し、フレキシブルプリント配線板の曲げ半径も小さくなってきている。このため、フレキシブルプリント配線板の導電パターンの破断がより大きな問題となってきている。
【0010】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、導電パターンの屈曲部や分岐部の応力集中による破断を防止できるフレキシブルプリント配線板を提供することを課題とする。
【0011】
[本開示の効果]
本発明の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、導電パターンの屈曲部や分岐部の応力集中による破断を防止できる。
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層され、平面視で角度が60°以上の屈曲部又は角度が60°以上の分岐部を有する配線を含む導電パターンとを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記配線が上記屈曲部又は分岐部への応力集中を緩和する緩和構造を備え、上記緩和構造が、上記屈曲部又は分岐部からの距離が上記配線の最小幅の5倍以下の範囲内の配線を幅広配線又は密集配線とした構造であり、上記幅広配線の配線幅が上記配線の最小幅の2倍以上であり、上記密集配線の配線幅の配線間隔に対する比が1.5以上であり、かつ上記密集配線の合計幅が上記配線の最小幅の2倍以上である。
【0013】
当該フレキシブルプリント配線板は、導電パターンの屈曲部又は分岐部の近傍領域の配線を上記条件を満たす幅広配線又は密集配線とした緩和構造を備えることによって、この緩和構造の配線が他の部分に比べて変形し難く、応力を分散することができるので、導電パターンの配線の屈曲部や分岐部の応力集中による破断を防止できる。
【0014】
上記幅広配線の上記配線幅としては、50μm以上が好ましい。このように、上記幅広配線の最小幅を上記下限以上とすることによって、より確実に応力を分散して、導電パターンの配線の屈曲部や分岐部の破断をより確実に防止できる。
【0015】
上記密集配線が回路に接続されないダミー配線を含むとよい。このように、上記密集配線が回路に接続されないダミー配線を含むことによって、導電パターンの回路を構成する部分の形状を従来と同様とすることができるので、設計が比較的容易となる。
【0016】
上記密集配線の上記配線間隔としては、20μm以下が好ましい。このように、上記密集配線の配線間隔を上記上限以下とすることによって、密集配線内の一部の配線に応力が集中することをより確実に防止できる。
【0017】
ここで、「屈曲部」とは、配線の中心線の曲率半径が配線全体における最小幅の5倍以下である部分を意味し、屈曲部の「角度」とは、配線の中心線の曲率半径が配線全体の最小幅の5倍となる点の中心線間の角度を意味する。また、「分岐部」とは、配線の中心線が枝分かれする部分を意味し、分岐部の「角度」とは、枝分かれした中心線のうちの任意の2本の曲率半径が配線全体の最小幅の5倍以上となる点の中心線間の相対角度のうちの小さい方を意味する。また、「屈曲部又は分岐部からの距離」とは、配線の屈曲部又は分岐部の中心線からの距離を意味する。なお、「幅広配線」とは、緩和構造以外の配線の配線幅(最小幅)より大きい配線幅を有する配線であり、「密集配線」とは複数の配線からなり、緩和構造以外の配線に比べて配線幅の配線間隔に対する比が大きく、かつ緩和構造以外の配線の配線幅(最小幅)より大きい合計幅を有する配線を言う。ここで、「合計幅」とは、密集配線を構成する各配線の配線幅を合計した幅である。
【0018】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係るフレキシブルプリント配線板の各実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
【0019】
[第一実施形態]
図1に示す本発明の第一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルム1と、このベースフィルム1の少なくとも一方の面側に積層される導電パターン2とを備えるフレキシブルプリント配線板である。
【0020】
<ベースフィルム>
ベースフィルム1は、導電パターン2を支持する部材であって、当該フレキシブルプリント配線板の強度を担保する構造材である。
【0021】
このベースフィルム1の主成分としては、例えばポリイミド、液晶ポリエステルに代表される液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンエーテル、フッ素樹脂等の軟質材、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、ガラス基材等の硬質材、軟質材と硬質材とを複合したリジッドフレキシブル材などを用いることができる。これらの中でも耐熱性に優れるポリイミドが好ましい。なお、ベースフィルム1は、多孔化されたものでもよく、また、充填材、添加剤等を含んでもよい。
【0022】
上記ベースフィルム1の厚さは、特に限定されないが、例えばベースフィルム1の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、12μmがより好ましい。また、ベースフィルム1の平均厚さの上限としては、2mmが好ましく、1.6mmがより好ましい。ベースフィルム1の平均厚さが上記下限に満たない場合、ベースフィルム1の強度が不十分となるおそれがある。一方、ベースフィルム1の平均厚さが上記上限を超える場合、当該フレキシブルプリント配線板の可撓性が不十分となるおそれがある。
【0023】
<導電パターン>
導電パターン2は、層状の導体を少なくとも部分的に回路を構成するようパターニングして形成される。この導電パターン2は、少なくとも1本の配線3を含む。また、導電パターン2は、図示しないが、例えば電子部品の実装のためのランド、配線接続のための端子部等を有してもよい。
【0024】
導電パターン2を形成する材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば銅、アルミニウム、ニッケル等の金属が挙げられ、一般的には比較的安価で導電率が大きい銅が用いられる。また、導電パターン2は、表面にめっき処理が施されてもよい。
【0025】
導電パターン2の配線3は、その最小幅wの5倍以下の曲率半径で角度が60°以上である屈曲部4を有する。より詳しくは、屈曲部4は、配線3の中心線(図中の一点鎖線)の曲率半径が、連続して配線3の最小幅wの5倍以下である領域のうち、この領域の両端における中心線の向きが60°以上異なる部分である。なお、最小幅wは、配線3のうちの電路となる実効部分の最小幅を意味する。
【0026】
図1のフレキシブルプリント配線板について具体的に説明すると、配線3の屈曲部4は、その中心線の曲率半径が配線3の最小幅wの2倍であり、その角度が略90°となっている点A-A間である。
【0027】
この配線3全体の最小幅wの下限としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましい。一方、配線3の最小幅wの上限としては、200μmが好ましく、100μmがより好ましい。配線3の最小幅wが上記下限に満たない場合、配線3の導通性が不十分となるおそれがある。逆に、配線3の最小幅wが上記上限を超える場合、本発明を適用しなくても配線3が比較的大きな強度を有するため、本発明の適用によりフレキシブルプリント配線板の面積が不必要に増大するおそれがある。
【0028】
配線3は、屈曲部4への応力集中を緩和する緩和構造を備える。本実施形態における緩和構造は、屈曲部4の近傍領域R(二点鎖線で図示する領域)における配線3を、その配線幅が配線3の最小幅(他の部分の配線幅)wの2倍以上である幅広配線5とした構造である。つまり、配線3は、近傍領域Rの外側で配線幅が変化しており、近傍領域R内における配線3の配線幅は、配線全体における最小幅wの2倍以上である。
【0029】
この配線3の中心線を基準として、幅広配線5の端部(配線幅が配線3全体における最小幅wの2倍になる点B)の屈曲部4(点A-A間の中心線)からの距離の下限としては、配線3の最小幅wの5倍であり、8倍が好ましく、10倍がより好ましい。一方、上記幅広配線5の端部(点B)の屈曲部4からの距離の上限としては、配線3の最小幅wの50倍が好ましく、30倍がより好ましい。上記幅広配線5の端部の屈曲部4からの距離が上記下限に満たない場合、屈曲部4における応力集中による配線3の断裂を防止できないおそれがある。逆に、上記幅広配線5の端部の屈曲部4からの距離が上記上限を超える場合、当該フレキシブルプリント配線板の面積が不必要に増大するおそれがある。
【0030】
幅広配線5の具体的な配線幅の下限としては、50μmが好ましく、60μmがより好ましい。一方、幅広配線5の配線幅の上限としては、500μmが好ましく、200μmがより好ましい。幅広配線5の配線幅が上記下限に満たない場合、屈曲部4における配線3の断裂を十分に防止できないおそれがある。逆に、幅広配線5の配線幅が上記上限を超える場合当該フレキシブルプリント配線板の面積が不必要に増大するおそれがある。
【0031】
屈曲部4における配線3の配線幅(幅広配線5の点A-A間における配線幅)の下限としては、配線3の最小幅wの2.5倍が好ましく、3倍がより好ましい。一方、屈曲部4における配線3の配線幅の上限としては、配線3の最小幅wの10倍が好ましく、7倍がより好ましい。屈曲部4における配線3の配線幅が上記下限に満たない場合、屈曲部4における応力集中を十分に抑制できないおそれがある。逆に、屈曲部4における配線3の配線幅が上記上限を超える場合、当該フレキシブルプリント配線板の面積が不必要に増大するおそれがある。
【0032】
導電パターン2の平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、導電パターン2の平均厚さの上限としては、500μmが好ましく、100μmがより好ましい。導電パターン2の平均厚さが上記下限に満たない場合、導電性が不十分となるおそれがある。一方、導電パターン2の平均厚さが上記上限を超える場合、当該フレキシブルプリント配線板の可撓性が不足するおそれがある。
【0033】
<利点>
以上のように、配線3は、屈曲部4からの距離が配線3の最小幅wの少なくとも5倍以下の近傍領域R内が幅広配線5とされる。これにより、当該フレキシブルプリント配線板に曲げ応力が作用したときに、配線3の屈曲部4における応力集中が緩和され、屈曲部4及びその近傍における配線3の断裂を防止することができる。
【0034】
[第二実施形態]
図2に示す本発明の第二実施形態に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルム1と、このベースフィルム1の少なくとも一方の面側に積層される導電パターン2aとを備えるフレキシブルプリント配線板である。
【0035】
図2のフレキシブルプリント配線板におけるベースフィルム1の構成は、図1のフレキシブルプリント配線板におけるベースフィルム1の構成と同様とすることができる。また、図2のフレキシブルプリント配線板における導電パターン2aの構成は、以下に説明する平面形状の特徴を除いて、図1のフレキシブルプリント配線板における導電パターン2の構成と同様である(特に言及しない平面形状も同様である)。このため、図2のフレキシブルプリント配線板について図1のフレキシブルプリント配線板と重複する説明は省略する。なお、図中の一点鎖線は配線の中心線を示す。
【0036】
<導電パターン>
導電パターン2aは、層状の導体を少なくとも部分的に回路を構成するようパターニングして形成される。この導電パターン2aは、少なくとも1本の配線3aを含む。この導電パターン2aの配線3aは、角度が60°以上(配線の中心線の交差角度が90°±30°)である分岐部6を有する。
【0037】
本実施形態において、配線3aは、分岐部への応力集中を緩和する緩和構造として、分岐部6の近傍領域Ra(二点鎖線で図示する領域)における配線3aが、その配線幅が配線3aの最小幅wの2倍以上である幅広配線5aとされている。つまり、近傍領域Ra内における配線3aの最小幅は、配線全体における最小幅wの2倍以上である。
【0038】
図2のフレキシブルプリント配線板では、配線3aの中心線の曲率半径が配線3a全体における最小幅wの5倍以下となる部分が点Cの1点だけであるので、近傍領域Raは、この点Cを中心とする円の内側と解される。
【0039】
<利点>
以上のように、配線3aは、分岐部6からの距離が配線3aの最小幅wの少なくとも5倍以下の近傍領域Raが幅広配線5aとされる。これにより、当該フレキシブルプリント配線板に曲げ応力が作用したときに、配線3aの分岐部6における応力集中が緩和され、分岐部6及びその近傍における配線3aの断裂を防止することができる。
【0040】
[第三実施形態]
図3に示す本発明の第三実施形態に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルム1と、このベースフィルム1の少なくとも一方の面側に積層される導電パターン2bとを備えるフレキシブルプリント配線板である。
【0041】
図3のフレキシブルプリント配線板におけるベースフィルム1の構成は、図1のフレキシブルプリント配線板におけるベースフィルム1の構成と同様とすることができる。また、図3のフレキシブルプリント配線板における導電パターン2bの構成は、以下に説明する平面形状の特徴を除いて、図1のフレキシブルプリント配線板における導電パターン2の構成と同様である(特に言及しない平面形状も同様である)。このため、図3のフレキシブルプリント配線板について図1のフレキシブルプリント配線板と重複する説明は省略する。なお、図中の一点鎖線は配線の中心線を示す。
【0042】
<導電パターン>
導電パターン2bは、層状の導体を少なくとも部分的に回路を構成するようパターニングして形成される。この導電パターン2bは、複数の配線3bを含む。この複数の配線3bは、複数の配線3b全体の最小幅wの5倍以下の曲率半径で角度が60°以上である屈曲部4bをそれぞれ有する。
【0043】
本実施形態において、配線3bは、屈曲部4bへの応力集中を緩和する緩和構造として、各屈曲部4bの近傍領域Rb(二点鎖線で図示する領域)における配線3bが、配線幅の配線間隔に対する比が比較的大きく、かつ合計幅が比較的大きい密集配線7とされている。具体的には、配線3bは、近傍領域の外側では従来のプリント配線板と同様の配線間隔をし、近傍領域Rbの内部での間隔が他の部分における間隔よりも小さくなっている。
【0044】
密集配線7における配線幅の配線間隔に対する比の下限としては、1.5であり、2.0が好ましく、2.5がより好ましい。一方、密集配線7における配線幅の配線間隔に対する比の上限としては、10が好ましく、5がより好ましい。密集配線7における配線幅の配線間隔に対する比が上記下限に満たない場合、密集配線7内の各配線3bの一体性が不十分となり、屈曲部4bでの応力集中を十分に緩和できないおそれがある。逆に、密集配線7における配線幅の配線間隔に対する比が上記上限を超える場合、配線幅が過度に大きくなることで当該フレキシブルプリント配線板の面積が不必要に増大するおそれや、配線間隔が過度に小さくなることで配線3b間が短絡するおそれがある。
【0045】
また、密集配線7の合計幅の下限としては、配線3bの最小幅wの2.0倍であり、2.5倍が好ましく、3.0倍がより好ましい。一方、密集配線7の合計幅の上限としては、配線3bの最小幅wの20倍が好ましく、10倍がより好ましい。密集配線7の合計幅が上記下限に満たない場合、密集配線7の剛性が不十分となることで屈曲部4bにおける配線3bの破断を防止できないおそれがある。逆に、密集配線7の合計幅が上記上限を超える場合、当該フレキシブルプリント配線板の面積が不必要に大きくなるおそれがある。
【0046】
また、密集配線7の配線間隔(配線3b間の隙間)の下限としては、3μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、密集配線7の配線間隔の上限としては、20μmが好ましく、15μmがより好ましい。密集配線7の配線間隔が上記下限に満たない場合、配線3b間が短絡するおそれがある。逆に、密集配線7の配線間隔が上記上限を超える場合、配線幅を大きくする必要があることから当該フレキシブルプリント配線板の面積が不必要に増大するおそれがある。
【0047】
また、密集配線7に含まれる配線3bの数としては、上記合計幅が得られる数であればよく、2本以上の任意の数とすることができる。
【0048】
<利点>
以上のように、配線3bは、屈曲部4bからの距離が配線3bの最小幅wの少なくとも5倍以下の近傍領域Rb内が密集配線7とされる。これにより、当該フレキシブルプリント配線板に曲げ応力が作用したときに、配線3bの屈曲部4bにおける応力集中が緩和され、屈曲部4b及びその近傍における配線3bの断裂を防止することができる。
【0049】
[第四実施形態]
図4に示す本発明の第四実施形態に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルム1と、このベースフィルム1の少なくとも一方の面側に積層される導電パターン2cとを備えるフレキシブルプリント配線板である。
【0050】
図4のフレキシブルプリント配線板におけるベースフィルム1の構成は、図1のフレキシブルプリント配線板におけるベースフィルム1の構成と同様とすることができる。また、図4のフレキシブルプリント配線板における導電パターン2cの構成は、以下に説明する平面形状の特徴を除いて、図1のフレキシブルプリント配線板における導電パターン2の構成と同様である(特に言及しない平面形状も同様である)。このため、図4のフレキシブルプリント配線板について図1のフレキシブルプリント配線板と重複する説明は省略する。なお、図中の一点鎖線は配線の中心線を示す。
【0051】
<導電パターン>
導電パターン2cは、層状の導体を少なくとも部分的に回路を構成するようパターニングして形成される。この導電パターン2cは、複数の配線3cを含む。導電パターン2cの配線3cは、角度が60°以上(配線の相対角度が60°以上)である分岐部6cを有する。
【0052】
本実施形態において、配線3cは、分岐部6cへの応力集中を緩和する緩和構造として、各分岐部6cの近傍領域Rc(二点鎖線で図示する領域)における配線3cが、配線幅の配線間隔に対する比が比較的大きく、かつ合計幅が比較的大きい密集配線7cとされている。この密集配線7cは、回路に接続されないダミー配線8を含む。
【0053】
このダミー配線8は屈曲部を有するため、配線3cは、このダミー配線8の屈曲部からの距離が配線3cの最小幅wの少なくとも5倍以下の範囲を含む領域で密集配線7cとされている。
【0054】
図4のフレキシブルプリント配線板の密集配線7cにおける配線幅の配線間隔に対する比、合計幅及び配線3cの数は、図3のフレキシブルプリント配線板の密集配線7における配線幅の配線間隔に対する比、合計幅及び配線3bの数と同様とすることができる。
【0055】
<利点>
以上のように、配線3cは、分岐部6cからの距離が配線3cの最小幅wの少なくとも5倍以下の近傍領域Rc内が密集配線7cとされる。これにより、当該フレキシブルプリント配線板に曲げ応力が作用したときに、配線3cの分岐部6cにおける応力集中が緩和され、分岐部6c及びその近傍における配線3cの断裂を防止することができる。
【0056】
また、当該フレキシブルプリント配線板の緩和構造は、従来と同様の分岐した配線パターンに隣接してダミー配線8を設けたものであるため、導電パターン2の設計が比較的容易である。
【0057】
[第五実施形態]
図5に示す本発明の第五実施形態に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルム1と、このベースフィルム1の少なくとも一方の面側に積層される導電パターン2dとを備えるフレキシブルプリント配線板である。
【0058】
図5のフレキシブルプリント配線板におけるベースフィルム1の構成は、図1のフレキシブルプリント配線板におけるベースフィルム1の構成と同様とすることができる。また、図5のフレキシブルプリント配線板における導電パターン2dの構成は、以下に説明する平面形状の特徴を除いて、図1のフレキシブルプリント配線板における導電パターン2の構成と同様である(特に言及しない平面形状も同様である)。このため、図5のフレキシブルプリント配線板について図1のフレキシブルプリント配線板と重複する説明は省略する。なお、図中の一点鎖線は配線の中心線を示す。
【0059】
<導電パターン>
導電パターン2dは、層状の導体を少なくとも部分的に回路を構成するようパターニングして形成される。この導電パターン2dは、複数の配線3dを含む。この複数の配線3dは、複数の配線3d全体での最小幅wの5倍以下の曲率半径で角度が60°以上である屈曲部4dをそれぞれ有する。
【0060】
本実施形態において、配線3dは、屈曲部4dへの応力集中を緩和する緩和構造として、各屈曲部4dの近傍領域Rd(二点鎖線で図示する領域)における配線3dが、幅広配線5d又は密集配線7dとされている。また、密集配線7dは、部分的に幅広配線5dを含む。
【0061】
図5のフレキシブルプリント配線板における幅広配線5dの配線幅等は、図1のフレキシブルプリント配線板における幅広配線5の配線幅等と同様とすることができる。また、図5のフレキシブルプリント配線板における密集配線7dの合計幅等は、図3のフレキシブルプリント配線板における密集配線7の合計幅等と同様とすることができる。
【0062】
<利点>
以上のように、配線3dは、屈曲部4dからの距離が配線3dの最小幅wの少なくとも5倍以下の近傍領域Rd内が幅広配線5d又は密集配線7dとされる。これにより、当該フレキシブルプリント配線板に曲げ応力が作用したときに、配線3dの屈曲部4dにおける応力集中が緩和され、屈曲部4d及びその近傍における配線3dの断裂を防止することができる。
【0063】
[第六実施形態]
図6に示す本発明の第六実施形態に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルム1と、このベースフィルム1の少なくとも一方の面側に積層される導電パターン2eとを備えるフレキシブルプリント配線板である。
【0064】
図6のフレキシブルプリント配線板におけるベースフィルム1の構成は、図1のフレキシブルプリント配線板におけるベースフィルム1の構成と同様とすることができる。また、図6のフレキシブルプリント配線板における導電パターン2eの構成は、以下に説明する平面形状の特徴を除いて、図1のフレキシブルプリント配線板における導電パターン2の構成と同様である(特に言及しない平面形状も同様である)。このため、図6のフレキシブルプリント配線板について図1のフレキシブルプリント配線板と重複する説明は省略する。なお、図中の一点鎖線は配線の中心線を示す。
【0065】
<導電パターン>
導電パターン2eは、層状の導体を少なくとも部分的に回路を構成するようパターニングして形成される。この導電パターン2eは、配線3eを含む。この配線3eは、分岐部6eを有する。
【0066】
本実施形態において、配線3eは、分岐部6eへの応力集中を緩和する緩和構造として、配線3eの分岐部6eの近傍領域Re(二点鎖線で図示する領域)に存在する部分が、幅広配線5e又は密集配線7eとされている。具体的には、近傍領域Re内の配線3eは、略「T」字状に形成され、Tの横棒部分が密集配線7eとされ、縦棒部分が幅広配線5eとされている。
【0067】
図6のフレキシブルプリント配線板における幅広配線5eの配線幅等は、図1のフレキシブルプリント配線板における幅広配線5の配線幅等と同様とすることができる。また、図6のフレキシブルプリント配線板における密集配線7eの合計幅等は、図3のフレキシブルプリント配線板における密集配線7の合計幅等と同様とすることができる。
【0068】
<利点>
以上のように、配線3eは、分岐部6eからの距離が配線3eの最小幅wの少なくとも5倍以下の近傍領域Re内の部分が幅広配線5e又は密集配線7eとされる。これにより、当該フレキシブルプリント配線板に曲げ応力が作用したときに、配線3eの分岐部6eにおける応力集中が緩和され、分岐部6e及びその近傍における配線3eの断裂を防止することができる。
【0069】
[第七実施形態]
図7に示す本発明の第七実施形態に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルム1と、このベースフィルム1の少なくとも一方の面側に積層される導電パターン2fとを備えるフレキシブルプリント配線板である。
【0070】
図7のフレキシブルプリント配線板におけるベースフィルム1の構成は、図1のフレキシブルプリント配線板におけるベースフィルム1の構成と同様とすることができる。また、図7のフレキシブルプリント配線板における導電パターン2fの構成は、以下に説明する平面形状の特徴を除いて、図1のフレキシブルプリント配線板における導電パターン2の構成と同様である(特に言及しない平面形状も同様である)。このため、図7のフレキシブルプリント配線板について図1のフレキシブルプリント配線板と重複する説明は省略する。なお、図中の一点鎖線は配線の中心線を示す。
【0071】
<導電パターン>
導電パターン2fは、層状の導体を少なくとも部分的に回路を構成するようパターニングして形成される。この導電パターン2fは、配線3fを含む。この配線3fは、配線3fの最小幅wの5倍以下の曲率半径で屈曲しつつ分岐している。従って、この配線3fは、屈曲部4fを有する。また、配線3fの最小幅wの5倍以下の曲率半径の部分の両端の中心線の相対角度が60°以上であることから、この部分は角度が60度以上の分岐部6fであるとも解釈できる。
【0072】
本実施形態において、配線3fは、屈曲部4f(分岐部6f)への応力集中を緩和する緩和構造として、各屈曲部4fの近傍領域Rf(二点鎖線で図示する領域)における配線3fが、配線幅の配線間隔に対する比が比較的大きく、かつ合計幅が比較的大きい密集配線7fとされている。この密集配線7fは、回路に接続されないダミー配線8fを含む。
【0073】
図7のフレキシブルプリント配線板における密集配線7fの合計幅等は、図3のフレキシブルプリント配線板における密集配線7の合計幅等と同様とすることができる。
【0074】
<利点>
以上のように、配線3fは、屈曲部4f及び分岐部6fからの距離が配線3fの最小幅wの少なくとも5倍以下の近傍領域Rf内が密集配線7fとされる。これにより、当該フレキシブルプリント配線板に曲げ応力が作用したときに、配線3fの屈曲部4f及び分岐部6fにおける応力集中が緩和され、屈曲部4f、分岐部6f及びそれらの近傍における配線3fの断裂を防止することができる。
【0075】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0076】
例えば、当該フレキシブルプリント配線板における配線は、屈曲部又は分岐部からの距離が配線の最小幅の5倍以下の範囲内の配線を幅広配線又は密集配線としたものであればよく、その平面形状は上記実施形態の形状に限定されない。また、屈曲部又は分岐部の近傍領域内の配線の平面形状は、幅広配線と密集配線とがどのように組み合わされたものであってもよい。例えば、1本の配線の屈曲部に隣接してダミー配線を配置することにより、屈曲部の近傍領域内を密集配線としてもよい。
【0077】
また、当該フレキシブルプリント配線板において、全ての屈曲部及び分岐部の近傍領域内の配線が幅広配線又は密集配線とされることが好ましいが、少なくとも1つの屈曲部又は分岐部の近傍領域内の配線が幅広配線又は密集配線とされていればよい。
【0078】
当該フレキシブルプリント配線板は、例えばカバーレイ、実装部品等の他の構成要素を備えてもよい。
【0079】
当該フレキシブルプリント配線板において、屈曲部又は分岐部の幅広配線に接続される配線の一部が幅広配線であってもよい。つまり、配線が屈曲又は分岐しつつ線幅が変化する部分に本発明を適用してもよい。
【0080】
当該フレキシブルプリント配線板において、屈曲部の近傍領域内の配線がダミー配線を含む密集配線であってもよく、密集配線を構成するダミー配線は、回路を構成する配線のどちら側に配置してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 ベースフィルム
2,2a,2b,2c,2d,2e,2f 導電パターン
3,3a,3b,3c,3d,3e,3f 配線
4,4b,4d,4f 屈曲部
5,5a,5d,5e 幅広配線
6,6c,6e,6f 分岐部
7,7c,7d,7e,7f 密集配線
8,8f ダミー配線
w 最小幅
R,Ra,Rb,Rc,Rd,Re,Rf 近傍領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7