(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
H02M3/28 H
(21)【出願番号】P 2019146001
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐希
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009940(JP,A)
【文献】特開2009-060776(JP,A)
【文献】特開2012-222925(JP,A)
【文献】特開2018-148767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00~ 3/44
H02M 7/42~ 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電力を変換して出力する電力変換部(3)と、
上記入力電力の電圧を平滑化するコンデンサ(2)と、
上記電力変換部の出力(P)の供給先である負荷(6)と、
上記電力変換部の出力を制御する出力制御部(4)とを備えた電力変換装置(1)であって、
上記電力変換装置の稼働中において、
上記出力制御部は、上記コンデンサの温度(Tc)に関連する温度関連情報に基づいて、上記電力変換部の出力を所定の出力上限値(Pb)以下に制限するよう構成されており、
上記出力上限値は上記温度関連情報に基づいて設定され、
上記コンデンサの温度を測定又は推定する温度取得部(5)を有し、
上記出力上限値は、上記温度取得部にて取得した上記コンデンサの温度に基づいて算出するよう構成されており、
上記電力変換部が所定の出力を行うよう、上記出力制御部に指令信号を送る上位制御部(41)を有し、
上記出力制御部は、上記コンデンサの温度が所定の温度(T1)未満の場合において、上記上位制御部からの上位指令値(Pa)が上記出力上限値よりも大きいとき、上記上位指令値によらず、上記出力上限値以下に上記電力変換部の出力を制限すると共に、上記コンデンサの温度が上記所定の温度未満の場合において、上記上位指令値が上記出力上限値以下のとき、上記電力変換部の出力を上記上位指令値とするよう制御し、
上記出力制御部は、上記コンデンサの温度が上記所定の温度以上であるとき、上記電力変換部の出力を上記出力上限値以下に制限することなく、上記電力変換部の出力を上記上位指令値とするよう制御し、
上記コンデンサの温度が上記所定の温度未満の場合において、上記上位指令値が上記出力上限値よりも大きいときに、上記出力制御部が上記電力変換部の出力を上記出力上限値以下に制限した後、
又は、上記コンデンサの温度が上記所定の温度未満の場合において、上記上位指令値が上記出力上限値以下のとき、若しくは、上記コンデンサの温度が上記所定の温度以上であるときに
、上記出力制御部が上記電力変換部の出力を上記上位指令値とした後、再び上記コンデンサの温度を取得し、
上記出力制御部は、該出力制御部が
、上記電力変換部の出力を上記出力上限値以下に制限した後、又は上記電力変換部の出力を上記上位指令値とした後に
、再び取得した上記コンデンサの温度
と、上記出力上限値と、上記上位指令値と、に基づいて、上記電力変換部の出力を
、上記出力上限値以下に制限する
か、又は上記上位指令値とするよう構成されている、電力変換装置。
【請求項2】
上記電力変換装置は、充電装置として用いられ、上記負荷は、二次電池である、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電力変換を行う電力変換装置として、コンデンサを含む電子部品を備えたものがある。コンデンサには、低温になるに従って大きな値となる等価直列抵抗(以下、「ESR」という。)と呼ばれる抵抗成分が存在する。そして、コンデンサが低温である場合において、電力変換装置を稼働する際、コンデンサに電流が出入りすることによってESRに起因したサージ電圧が発生することがある。サージ電圧の発生により、電力変換装置を構成する電子部品が損傷するおそれがある。
【0003】
特許文献1に開示された電力変換装置を備えた電動機は、電力変換装置が低温である場合において、電動機を駆動させることなく、まずはコンデンサを昇温させるために少量の電流を流す。そして、コンデンサの温度が上がり、ESRが小さくなってから電動機の駆動に充分な電流を流す。これにより、サージ電圧による電子部品の損傷を防ぎつつ、電動機を駆動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電動機を駆動させない間に流す電流は、装置の稼働に寄与するものではない。つまり、特許文献1における電動機は、電動機が稼働しない状態でコンデンサの昇温のためだけに電流を流している。すなわち、コンデンサの昇温のためだけに電力消費することとなり、エネルギ効率の観点から改善の余地がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、低温環境下のエネルギ効率を向上させることができる電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、入力電力を変換して出力する電力変換部(3)と、
上記入力電力の電圧を平滑化するコンデンサ(2)と、
上記電力変換部の出力(P)の供給先である負荷(6)と、
上記電力変換部の出力を制御する出力制御部(4)とを備えた電力変換装置(1)であって、
上記電力変換装置の稼働中において、
上記出力制御部は、上記コンデンサの温度(Tc)に関連する温度関連情報に基づいて、上記電力変換部の出力を所定の出力上限値(Pb)以下に制限するよう構成されており、
上記出力上限値は上記温度関連情報に基づいて設定され、
上記コンデンサの温度を測定又は推定する温度取得部(5)を有し、
上記出力上限値は、上記温度取得部にて取得した上記コンデンサの温度に基づいて算出するよう構成されており、
上記電力変換部が所定の出力を行うよう、上記出力制御部に指令信号を送る上位制御部(41)を有し、
上記出力制御部は、上記コンデンサの温度が所定の温度(T1)未満の場合において、上記上位制御部からの上位指令値(Pa)が上記出力上限値よりも大きいとき、上記上位指令値によらず、上記出力上限値以下に上記電力変換部の出力を制限すると共に、上記コンデンサの温度が上記所定の温度未満の場合において、上記上位指令値が上記出力上限値以下のとき、上記電力変換部の出力を上記上位指令値とするよう制御し、
上記出力制御部は、上記コンデンサの温度が上記所定の温度以上であるとき、上記電力変換部の出力を上記出力上限値以下に制限することなく、上記電力変換部の出力を上記上位指令値とするよう制御し、
上記コンデンサの温度が上記所定の温度未満の場合において、上記上位指令値が上記出力上限値よりも大きいときに、上記出力制御部が上記電力変換部の出力を上記出力上限値以下に制限した後、
又は、上記コンデンサの温度が上記所定の温度未満の場合において、上記上位指令値が上記出力上限値以下のとき、若しくは、上記コンデンサの温度が上記所定の温度以上であるときに、上記出力制御部が上記電力変換部の出力を上記上位指令値とした後、再び上記コンデンサの温度を取得し、
上記出力制御部は、該出力制御部が、上記電力変換部の出力を上記出力上限値以下に制限した後、又は上記電力変換部の出力を上記上位指令値とした後に、再び取得した上記コンデンサの温度と、上記出力上限値と、上記上位指令値と、に基づいて、上記電力変換部の出力を、上記出力上限値以下に制限するか、又は上記上位指令値とするよう構成されている、電力変換装置にある。
【発明の効果】
【0008】
上記電力変換装置において、出力制御部は、電力変換装置の稼働中に、コンデンサの温度に関連する温度関連情報に基づいて、電力変換部の出力を所定の出力上限値以下に制限する。それゆえ、電力変換装置を稼働させながらコンデンサの昇温を行うことができる。これにより、低温環境下においても、電力変換装置を稼働させつつコンデンサのESRを低下させることができる。
【0009】
換言すると、電力変換装置の稼働のための通電に伴う発熱をコンデンサの昇温に利用することで、低温環境下におけるエネルギ効率を向上させている。その一方で、コンデンサが充分に昇温するまでの間、出力を制限することで、サージ電圧の発生を抑制しながら電力変換装置を稼働させることができる。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、低温環境下のエネルギ効率を向上させることができる電力変換装置を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
参考形態1における、電力変換装置の回路図。
【
図2】
参考形態1における、コンデンサ温度と、上位指令値と、出力上限値との関係を示す図。
【
図3】
参考形態1における、出力制御の手順を示すフローチャート。
【
図4】
参考形態2における、コンデンサ温度と、上位指令値と、出力上限値との関係を示す図。
【
図5】
実施形態1における、コンデンサ温度と、上位指令値と、出力上限値との関係を示す図。
【
図6】
実施形態1における、出力制御の手順を示すフローチャート。
【
図7】
参考形態3における、コンデンサ温度と、上位指令値と、出力上限値との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(
参考形態1)
電力変換装置に係る
参考形態について、
図1~
図3を参照して説明する。
本形態における電力変換装置1は、
図1に示すごとく、電力変換部3と、コンデンサ2と、負荷6と、出力制御部4とを備える。電力変換部3は、入力電力を変換して出力する。コンデンサ2は、入力電力の電圧を平滑化する。負荷6は、電力変換部3の出力Pの供給先である。出力制御部4は、電力変換部3の出力Pを制御する。電力変換装置1の稼働中において、出力制御部4は、コンデンサ2の温度Tcに関連する温度関連情報に基づいて、電力変換部3の出力Pを所定の出力上限値Pb以下に制限するよう構成されている。
【0013】
本形態における電力変換装置1は、充電装置として用いられる。また、負荷6は、二次電池である。本形態における電力変換装置1は、例えば、車両に搭載される二次電池の充電装置である。
【0014】
電力変換装置1は、
図1に示すごとく、AC-DCコンバータ16を備えている。AC-DCコンバータ16は、ダイオードブリッジ回路14と、昇圧チョッパ回路15とを備えている。
【0015】
なお、本形態の電力変換装置1において、AC-DCコンバータ16を構成する配線及びAC-DCコンバータ16と電力変換部3とを繋ぐ配線のうち、高電位側の配線を高電位側配線7という。また、AC-DCコンバータ16を構成する配線及びAC-DCコンバータ16と電力変換部3とを繋ぐ配線のうち、低電位側の配線を低電位側配線71という。
【0016】
ダイオードブリッジ回路14は、4個のダイオードD1、D2、D3、D4で構成されている。ダイオードD2のカソードが、ダイオードD1のアノードに接続されている。また、ダイオードD4のカソードが、ダイオードD3のアノードに接続されている。ダイオードD1、D3のカソードは、高電位側配線7に接続されている。また、ダイオードD2、D4のアノードは、低電位側配線71に接続されている。ダイオードブリッジ回路14は、交流電源12から送られる交流電力を、全波整流する。
【0017】
また、昇圧チョッパ回路15は、
図1に示すごとく、リアクトル13と、半導体スイッチ11と、ダイオードD5とを備える。昇圧チョッパ回路15は、ダイオードブリッジ回路14と、コンデンサ2との間に配置される。
【0018】
リアクトル13は、高電位側配線7において、一端がダイオードブリッジ回路14に接続されている。また、リアクトル13の他端は、ダイオードD5のアノードに接続されている。ダイオードD5のカソードは、高電位側配線7において、コンデンサ2に接続されている。リアクトル13には、ダイオードブリッジ回路14にて全波整流された入力電力が供給される。
【0019】
半導体スイッチ11は、リアクトル13とダイオードD5とを繋ぐ高電位側配線7と、ダイオードブリッジ回路14とコンデンサ2とを繋ぐ低電位側配線71との間を接続している。半導体スイッチ11としては、例えば、MOSFET(MOS型電界効果トランジスタの略)、又はIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタの略)を用いることができる。
【0020】
リアクトル13は、半導体スイッチ11がオン操作されることで、磁気エネルギを蓄える。具体的には、半導体スイッチ11がオン操作されると、ダイオードブリッジ回路14と、リアクトル13と、半導体スイッチ11とを含む閉回路が形成される。リアクトル13は、当該閉回路に入力電力が供給されることで、磁気エネルギを蓄える。
【0021】
また、入力電力は、半導体スイッチ11がオフ操作されることで、リアクトル13から、ダイオードD5を介してコンデンサ2へと供給される。当該入力電力は、リアクトル13に蓄えられた磁気エネルギが加算されているため、リアクトル13に入力される前の入力電力よりも電圧が高くなっている。
【0022】
また、昇圧チョッパ回路15は、半導体スイッチ11の制御により、入力電力を昇圧させる。昇圧チョッパ回路15にて昇圧された入力電力は、コンデンサ2を介して電力変換部3へ入力される。
【0023】
半導体スイッチ11は、制御部(図示略)によってオン/オフ制御される。本形態において、制御部は、CPU及びメモリを備えたマイクロコンピュータである。
【0024】
コンデンサ2は、
図1に示すごとく、AC-DCコンバータ16と、電力変換部3との間に配置される。コンデンサ2は、AC-DCコンバータ16と電力変換部3とを繋ぐ高電位側配線7と、AC-DCコンバータ16と電力変換部3とを繋ぐ低電位側配線71との間を接続している。コンデンサ2は、リアクトル13から供給された入力電力を平滑化する。コンデンサ2によって平滑化された入力電力は、電力変換部3へ供給される。本形態において、コンデンサ2は、電解コンデンサである。
【0025】
電力変換部3は、コンデンサ2と、負荷6との間に配置される。本形態の電力変換装置1において、電力変換部3は、DC-DCコンバータである。電力変換部3は、コンデンサ2によって平滑化された入力電力の電圧を変換して、出力電力を負荷6に供給する。
【0026】
電力変換部3は、開示を省略するが、複数の半導体スイッチと、トランスとを有する。
【0027】
出力制御部4は、電力変換部3の複数の半導体スイッチを制御することで、電力変換部3の出力Pを制御する。つまり、出力制御部4は、電力変換部3の半導体スイッチのオンとオフの時間の割合を変えることで、電力変換部3の出力Pを制御する。本形態において、電力変換部3の半導体スイッチは、例えば、MOSFET、又はIGBTである。また、本形態において、出力制御部4は、CPU及びメモリを備えたマイクロコンピュータである。
【0028】
また、出力制御部4は、電力変換部3の出力Pを所定の出力上限値Pb以下に制限する。出力上限値Pbは温度関連情報に基づいて設定される。
【0029】
また、電力変換装置1は、
図1に示すごとく、コンデンサ2の温度Tcを測定又は推定する温度取得部5を有する。出力上限値Pbは、温度取得部5にて取得したコンデンサ2の温度Tcに基づいて算出するよう構成されている。
【0030】
温度取得部5は、
図1に示すごとく、出力制御部4に接続されている。本形態において、温度取得部5は、温度センサである。温度取得部5としての温度センサは、例えばコンデンサ2の表面に取り付けられ、コンデンサ2の表面の温度を直接測定する。本形態において、温度関連情報は、コンデンサ2の表面温度Tcである。
【0031】
出力制御部4は、温度関連情報であるコンデンサ2の温度Tcに基づいて、電力変換部3の出力Pを出力上限値Pb以下に制御する。
【0032】
また、上位制御部41は、
図1に示すごとく、出力制御部4を介して、電力変換部3が所定の出力を行うよう指令信号を送る。上位制御部41は、例えば、CPU及びメモリを備えたマイクロコンピュータである。
【0033】
出力制御部4は、
図2に示すごとく、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1(本形態においては0℃。)未満のとき、上位制御部41からの上位指令値Paによらず、電力変換部3の出力Pを所定の出力上限値Pb以下に制限する。つまり、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1未満のとき、出力制御部4は、電力変換部3の出力Pを、出力上限値Pb以下とする(
図2の出力Pのグラフの実線参照)。
【0034】
また、本形態において、出力上限値Pbは、一定値Pb0としている。この出力上限値Pb0は、想定されるESRに起因するサージ電圧によって、電力変換装置1の構成部品が損傷を受けないよう抑制された一定の値である。また、本形態においては、上位指令値Paも一定値Pa0として説明している。なお、本形態において、上位指令値Pa0は、出力上限値Pb0よりも大きい値である。
【0035】
また、出力制御部4は、
図2に示すごとく、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1以上であるとき、上位制御部41の上位指令値Paに従って電力変換部3の出力Pを制御する。つまり、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1以上であるとき、出力制御部4は、電力変換部3の出力Pを出力上限値Pb(=Pb0)に制限することはなく、出力Pを上位指令値Pa(=Pa0)とする(
図2の出力Pのグラフの実線参照)。
【0036】
次に、出力制御部4の出力制御について、
図3のフローチャートに従って説明する。まず、ステップS1において、温度取得部5によって、コンデンサ2の温度Tcを取得する。次に、ステップS2に進み、出力制御部4は、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1以上か否かを判断する。コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1未満の場合、ステップS3にて、出力制御部4は、電力変換部3の出力Pが所定の出力上限値Pb以下となるよう電力変換部3を制御する。
【0037】
その後、出力制御部4は、再びステップS1へと戻る。そして、出力制御部4は、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1以上となるまで、ステップS1~ステップS3を繰り返す。
【0038】
また、出力制御部4は、ステップS2において、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1以上と判断したとき、ステップS4にて上位指令値Paに従って電力変換部3の出力Pを制御する。すなわち、電力変換部3の出力PをPaとする。
【0039】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
本形態の電力変換装置1において、出力制御部4は、電力変換装置1の稼働中に、コンデンサ2の温度Tcに関連する温度関連情報に基づいて、電力変換部3の出力Pを所定の出力上限値Pb以下に制限する。それゆえ、電力変換装置1を稼働させながらコンデンサ2の昇温を行うことができる。これにより、低温環境下においても、電力変換装置1を稼働させつつコンデンサ2のESRを低下させることができる。すなわち、二次電池への充電を行いながら、ESRを低下させることができる。
【0040】
換言すると、電力変換装置1の稼働のための通電に伴う発熱をコンデンサ2の昇温に利用することで、低温環境下におけるエネルギ効率を向上させている。すなわち、充電中に生じる発熱を、コンデンサ2の昇温に利用している。その一方で、コンデンサ2が充分に昇温するまでの間、出力を制限することで、サージ電圧の発生を抑制しながら電力変換装置1を稼働させることができる。つまり、コンデンサ2が充分に昇温するまでの間、充電速度を制限することで、サージ電圧の発生を抑制しつつ、充電を行うことができる。
【0041】
また、低温環境下において、コンデンサ2を昇温させることで、コンデンサ2の静電容量を大きくすることができる。それゆえ、大容量のコンデンサ2を用いることなく、低温環境下において、所定の静電容量を得ることができる。それゆえ、コンデンサ2を小型化しやすい。その結果、電力変換装置1を小型化しやすい。つまり、充電装置を小型化することができる。
【0042】
以上のごとく、本形態によれば、低温環境下のエネルギ効率を向上させることができる電力変換装置1を提供することができる。
【0043】
(
参考形態2)
本形態の電力変換装置1は、
図4に示すごとく、出力上限値Pbを、コンデンサ2の温度Tcに応じて変化させるようにした形態である。
【0044】
本形態においては、例えば、コンデンサ2の温度Tcと出力上限値Pbとの関係を定めたマップを用いて、出力上限値Pbを求める。また、当該マップは、予め実験等を行うことによって作成される。
図4に示すごとく、出力上限値Pbは、コンデンサ2の温度Tcが高くなるほど、高くなるように算出される。つまり、出力制御部4は、コンデンサ2の温度Tcから予想されるESRに応じて、構成部品の損傷を充分に防ぐことができる出力上限値Pbを算出する。
【0045】
ただし、出力制御部4は、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1未満の場合に出力Pを出力上限値Pbに制御し、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1以上の場合には、出力Pを上位指令値Pa(=Pa0)に制御する(
図4の出力Pのグラフの実線参照)。
その他は、
参考形態1と同様である。
なお、
参考形態2以降において用いた符号のうち、既出の
参考形態又は実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の
参考形態又は実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0046】
本形態において、出力制御部4は、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1未満のとき、コンデンサ2の温度Tcに応じて出力上限値Pbを変化させるように算出する。それゆえ、電力変換装置1は、低温環境下において、サージ電圧の発生を抑えつつ、効率的に負荷6に入力電力を供給することができる。つまり、サージ電圧の発生を抑えながら、二次電池の充電速度を速めることができる。その結果、低温環境下のエネルギ効率を一層向上させることができる。
【0047】
また、本形態の電力変換装置1は、低温環境下において、コンデンサ2の温度Tcの上昇に伴って、コンデンサ2に供給される入力電力を大きくすることができる。それゆえ、コンデンサ2の温度Tcを効率的に上昇させることができる。その結果、コンデンサ2のESRを効率的に低下させることができる。
その他、参考形態1と同様の作用効果を有する。
【0048】
(
実施形態1)
本形態の電力変換装置1は、
図5、
図6に示すごとく、上位指令値Paと、出力上限値Pbとの比較も行いながら電力変換部3の出力Pを制御する形態である。
【0049】
出力制御部4は、
図5に示すごとく、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1未満の場合においても、上位指令値Paが出力上限値Pb以下であれば、上位指令値Paに出力Pを制御する(
図5の出力Pのグラフの実線参照)。
【0050】
また、出力制御部4は、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1未満の場合において、上位指令値Paが出力上限値Pbよりも大きいとき、上位指令値Paによらず、出力上限値Pbに出力を制御する(
図5の出力Pのグラフの実線参照)。
【0051】
次に、出力制御部4の出力制御について、
図6のフローチャートに従って説明する。まず、ステップS11において、温度取得部5によって、コンデンサ2の温度Tcを取得する。次に、ステップS12に進み、出力制御部4は、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1以上か否かを判断する。コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1未満の場合、ステップS13に進み、出力制御部4は、上位指令値Paが出力上限値Pbよりも大きいか否かを判断する。上位指令値Paが出力上限値Pbよりも大きい場合、ステップS14にて、出力制御部4は、電力変換部3の出力Pが所定の出力上限値Pbとなるよう電力変換部3を制御する。その後、出力制御部4は、再びステップS11へと戻る。
【0052】
また、出力制御部4は、ステップS12において、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1以上と判断したとき、ステップS15にて上位指令値Paに従って電力変換部3の出力Pを制御する。すなわち、電力変換部3の出力Pを上位指令値Paとする。その後、出力制御部4は、再びステップS11へと戻る。
【0053】
また、出力制御部4は、ステップS13において、上位指令値Paが出力上限値Pb以下と判断したときも、ステップS15にて、電力変換部3の出力Pを上位指令値Paとする。その後、出力制御部4は、再びステップS11へと戻る。
その他は、参考形態2と同様である。
【0054】
本形態において、出力制御部4は、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1未満であって、上位指令値Paが出力上限値Pb以下の場合、電力変換部3の出力Pを上位指令値Paとする。それゆえ、本形態の電力変換装置1は、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1未満の状態において、上位指令値Paが出力上限値Pb以下となる可能性が充分に想定される場合に、特に有効である。
【0055】
また、出力制御部4は、電力変換部3の出力Pを上位指令値Paとした後、再びコンデンサ2の温度Tcを取得して制御を行う。それゆえ、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1以上となった後、所定の温度T1未満となる可能性が充分に想定される場合に、特に有効である。
その他、参考形態2と同様の作用効果を有する。
【0056】
(
参考形態3)
本形態は、
図7に示すごとく、電力変換部3への入力電力の入力開始時点から、所定の時間t0が経過するまで、出力を制限するよう構成した形態である。
【0057】
本形態の電力変換装置1において、温度関連情報は、電力変換部3への入力電力の入力開始時点からの経過時間tである。そして、経過時間tが所定の時間t0未満の間は、電力変換部3の出力Pが出力上限値Pb以下に制限されるよう構成されている。なお、所定の時間t0は、電力変換部3の出力Pが出力上限値Pbとなるよう出力することによって、コンデンサ2の温度Tcが所定の温度T1以上となるのに充分な時間である。
【0058】
すなわち、本形態の制御の仕方は、入力開始直後においては、入力開始時点からの経過時間tが長い程、コンデンサ2の温度Tcが高いと推定される(
図7のコンデンサ2の温度Tcのグラフ参照)ことに基づく。かかる観点から、経過時間tは、温度関連情報である。そして、t≧t0であれば、コンデンサ2のESRが充分に低くなっていると推定して、上記の制御を行う。
【0059】
なお、
図7には参考のためにコンデンサ2の温度Tcのグラフを載せているが、本形態では、特にコンデンサ2の温度Tcを検出する必要はない。
図7のコンデンサ2の温度Tcのグラフは、概略の推定温度を表すものと考えることができる。
【0060】
また、出力制御部4は、
図7に示すごとく、コンデンサ2のインピーダンスや、出力上限値Pb等から予め算出した所定の時間t0が経過するまでは、上位指令値Paによらず、出力Pが出力上限値Pbとなるように電力変換部3を制御する。つまり、所定の時間t0が経過するまでは、出力Pは、出力上限値Pb(=Pb0)である(
図7の出力Pのグラフの実線参照)。本形態において、出力上限値Pbは、低温環境下において想定されるESRに起因するサージ電圧によって、電力変換装置1の構成部品が損傷を受けないよう抑制された一定の値Pb0である。
その他は、
参考形態1と同様である。
【0061】
本形態において、出力制御部4は、コンデンサ2の温度Tcによらず電力変換部3を制御する。それゆえ、コンデンサ2の温度Tcを測定又は推定する温度取得部5は特に不要である。また、出力制御部4は、コンデンサ2の温度Tcと出力上限値Pbとの関係を示すマップ等も特に不要である。その結果、電力変換装置1を簡素化しやすいと共に、電力変換装置1の組み付けを容易にすることができる。
その他、参考形態1と同様の作用効果を有する。
【0062】
上記実施形態1及び上記参考形態1、2の電力変換装置1は、温度取得部5がコンデンサ2の温度Tcを直接測定することで、コンデンサ2の温度Tcを取得している。ただし、出力制御部4は、温度取得部5が測定した電力変換装置1内の雰囲気温度から、コンデンサ2の温度Tcの推定値を算出するよう構成することもできる。また、出力制御部4は、温度取得部5が測定した外気温度から、コンデンサ2の温度Tcの推定値を算出するようにすることもできる。また、例えば、電力変換装置1が車両に搭載される充電装置である場合、出力制御部4は、車両に設置された各種センサの情報や、運転時間等の車両運転情報をもとに、コンデンサ2の温度Tcの推定値を算出するようにすることもできる。また、出力制御部4は、コンデンサ2以外の温度と、車両運転情報を組み合わせることで、コンデンサ2の温度Tcの推定値を算出するようにすることもできる。
【0063】
上記実施形態1及び上記参考形態2において、出力制御部4は、コンデンサ2の温度Tcと出力上限値Pbとの関係を示すマップに基づいて、電力変換部3の出力Pを制御している。ただし、出力制御部4は、マップによらず、コンデンサ2の温度Tcに基づいて演算することによって、出力上限値Pbを求めることができる。
【0064】
上記実施形態1及び上記参考形態1~3において、上位指令値Paが一定の場合を例にとって説明したが、本発明の電力変換装置1は、上位指令値Paが時間変動する場合においても適用することが可能である。
【0065】
また、電力変換装置1が複数のコンデンサを備える場合、出力制御部4は、複数のコンデンサの温度の測定結果について、その平均値や、最低温度等を基準として、電力変換部3を制御することができる。
【0066】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 電力変換装置
2 コンデンサ
3 電力変換部
4 出力制御部
6 負荷
Tc コンデンサの温度
P 電力変換部の出力
Pb 出力上限値