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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】浴室システム
(51)【国際特許分類】
   A47K 4/00 20060101AFI20240220BHJP
   G06F 3/16 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A47K4/00
G06F3/16 630
G06F3/16 670
G06F3/16 650
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019154779
(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2021029725
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福冨 達也
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0216325(US,A1)
【文献】特開2000-136555(JP,A)
【文献】特開2005-156091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02-4/00
G06F 3/16
E03C 1/00-1/10
G10L 15/22、15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワーの吐水装置を含む少なくとも1つの浴室機器を音声にて操作する浴室システムであって、
使用者の音声を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記音声に基づいて前記浴室機器を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記シャワーからの吐水が停止された状態である時に前記取得部によって取得された前記音声に基づいて前記シャワーの吐水を開始させる操作を受け付けたと判定し且つ、現在設定されている吐水温度が、音声操作に応じて前記シャワーからの吐水が開始される場合の吐水温度の上限および下限を規定した音声許容範囲を逸脱すると判定した場合に、前記吐水装置を制御して前記現在設定されている吐水温度を前記音声許容範囲内の吐水温度に変更したうえで前記音声許容範囲内の吐水温度にて前記シャワーからの吐水を開始させる、浴室システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記吐水装置を制御して前記音声許容範囲内の吐水温度にて前記シャワーからの吐水を開始させた後、前記取得部によって取得された前記音声に基づいて前記音声許容範囲を逸脱する吐水温度への変更操作を受け付けたと判定した場合に、前記吐水装置を制御して前記吐水温度を変更する、請求項1に記載の浴室システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記変更操作を受け付けたと判定した場合に、前記吐水装置を制御して前記吐水温度を前記音声許容範囲を逸脱する吐水温度に変更する、請求項2に記載の浴室システム。
【請求項4】
前記使用者に対して情報を提示する提示部
をさらに備え、
前記制御部は、
前記吐水装置を制御して前記吐水温度を前記音声許容範囲を逸脱する吐水温度に変更する前に、前記提示部を制御して、前記使用者に対して吐水温度の変更の可否の確認を行う、請求項3に記載の浴室システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記現在設定されている吐水温度が前記音声許容範囲を超える場合、前記吐水装置を制御して前記音声許容範囲の上限値にて前記シャワーからの吐水を開始させる、請求項1~4のいずれか一つに記載の浴室システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記現在設定されている吐水温度が前記音声許容範囲を下回る場合、前記吐水装置を制御して前記音声許容範囲の下限値にて前記シャワーからの吐水を開始させる、請求項1~5のいずれか一つに記載の浴室システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、浴室システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室機器を音声により操作する技術が知られている。たとえば、特許文献1には、使用者の音声に基づいて浴室空調機を制御する浴室システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-259941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術には、シャワーを音声にて操作する場合に、使用者の意図しない吐水が行われることを抑制する技術については開示されていない。
【0005】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、シャワーを音声にて操作する場合に、使用者の意図しない吐水が行われることを抑制することができる浴室システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る浴室システムは、シャワーの吐水装置を含む少なくとも1つの浴室機器を音声にて操作する浴室システムであって、取得部と、制御部とを備える。取得部は、使用者の音声を取得する。制御部は、取得部によって取得された音声に基づいて浴室機器を制御する。また、制御部は、取得部によって取得された音声に基づいてシャワーの吐水操作を受け付けたと判定した場合であって、且つ、現在設定されている吐水温度が予め設定された音声許容範囲を逸脱する場合に、吐水装置を制御して音声許容範囲内の吐水温度にてシャワーからの吐水を開始させる。
【0007】
音声操作によってシャワーの吐水を開始する場合の吐水温度を音声許容範囲内に限定することで、たとえば、使用者が不快を感じる吐水温度でシャワーの吐水が開始されることを抑制することができる。したがって、実施形態の一態様に係る浴室システムによれば、シャワーを音声にて操作する場合に、使用者の意図しない吐水が行われることを抑制することができる。
【0008】
制御部は、吐水装置を制御して音声許容範囲内の吐水温度にてシャワーからの吐水を開始させた後、取得部によって取得された音声に基づいて音声許容範囲を逸脱する吐水温度への変更操作を受け付けたと判定した場合に、吐水装置を制御して吐水温度を変更してもよい。
【0009】
音声操作によってシャワーの吐水を開始した後、音声操作によるシャワーの吐水温度の変更を可能とすることで、音声操作の利便性の低下を抑制することができる。
【0010】
制御部は、変更操作を受け付けたと判定した場合に、吐水装置を制御して吐水温度を音声許容範囲を逸脱する吐水温度に変更してもよい。これにより、音声操作の利便性の低下を抑制することができる。
【0011】
実施形態の一態様に係る浴室システムは、使用者に対して情報を提示する提示部をさらに備えていてもよい。この場合、制御部は、吐水装置を制御して吐水温度を音声許容範囲を逸脱する吐水温度に変更する前に、提示部を制御して、使用者に対して吐水温度の変更の可否の確認を行ってもよい。シャワーの吐水温度を変更する前に、使用者に対して吐水変更の可否の意思確認を行うことで、使用者の意図しない吐水が行われることを抑制することができる。
【0012】
制御部は、現在設定されている吐水温度が音声許容範囲を超える場合、吐水装置を制御して音声許容範囲の上限値にてシャワーからの吐水を開始させてもよい。これにより、たとえば、現在設定されている吐水温度と変更後の吐水温度との差が大きくなり過ぎることで使用者に違和感等を与えてしまうことを抑制することができる。
【0013】
制御部は、現在設定されている吐水温度が音声許容範囲を下回る場合、吐水装置を制御して音声許容範囲の下限値にてシャワーからの吐水を開始させてもよい。これにより、たとえば、現在設定されている吐水温度と変更後の吐水温度との差が大きくなり過ぎることで使用者に違和感等を与えてしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
実施形態の一態様によれば、シャワーを音声にて操作する場合に、使用者の意図しない吐水が行われることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係る浴室ユニットの一例を示す模式斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る浴室システムの構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、設定可能範囲および音声許容範囲の一例を示す説明図である。
図5図5は、現在の設定温度が音声許容範囲を超えている場合における設定温度変更処理の一例を示す説明図である。
図6図6は、現在の設定温度が音声許容範囲を下回っている場合における設定温度変更処理の一例を示す説明図である。
図7図7は、浴室システムが実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本開示による浴室システムを実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示による浴室システムが限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0017】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0018】
<浴室ユニットの構成例>
まず、実施形態に係る浴室システムが適用される浴室ユニットの構成の一例について図1を参照して説明する。図1は、実施形態に係る浴室ユニットの一例を示す模式斜視図である。
【0019】
図1に示すように、実施形態に係る浴室ユニット100は、浴室101と、浴槽102と、シャワー103とを有する。浴室101は、複数の側壁パネル101a、天井パネル101bおよび床面パネル101cを有し、これらのパネル101a~101cによって六面体形状の浴室空間を形成している。浴槽102およびシャワー103は、かかる浴室空間に配置される。
【0020】
シャワー103は、散水板等を有するシャワーヘッドと、シャワーヘッドに水(湯)を供給するシャワーホースとを備える。シャワーヘッドは、側壁パネル101aに備え付けられたシャワーフックに保持される。
【0021】
<浴室システムの構成例>
次に、上述した浴室ユニット100に適用される浴室システムの構成の一例について図2を参照して説明する。図2は、実施形態に係る浴室システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
図2に示すように、実施形態に係る浴室システム1は、マイク11と、スピーカ12と、リモコン13と、温度センサ14と、制御装置20と、浴室機器30とを備える。
【0023】
マイク11、スピーカ12、リモコン13および温度センサ14は、浴室101の内部すなわち浴室空間に設けられる。たとえば、マイク11およびリモコン13は、浴室101の側壁パネル101aに設けられ、スピーカ12および温度センサ14は、浴室101の天井パネル101bに設けられる。なお、これらの配置は、上記の例に限定されない。たとえば、リモコン13は、持ち運び可能であってもよい。
【0024】
マイク11、スピーカ12、リモコン13および温度センサ14は、有線または無線により制御装置20と電気的に接続される。
【0025】
マイク11は、使用者の音声を取得する取得部の一例である。マイク11によって取得された音声は、制御装置20へ入力される。
【0026】
スピーカ12は、使用者に対して情報を提示する提示部の一例であり、制御装置20による制御に従って音声出力による情報提示を行う。
【0027】
なお、提示部は、スピーカ12に限らず、たとえば、液晶ディスプレイ等の表示部であってもよい。すなわち、提示部は、使用者に対して画像による視覚的な情報提示を行ってもよい。
【0028】
リモコン13は、物理ボタンあるいはタッチパネルに表示されたソフトボタン等のボタンを複数有しており、使用者による接触操作(押下操作、タッチ操作等)を受け付ける。リモコン13によって受け付けられた接触操作の情報は、制御装置20に入力される。
【0029】
温度センサ14は、浴室101内の温度を測定する。温度センサ14によって測定された温度の情報は、制御装置20に入力される。
【0030】
制御装置20は、浴室ユニット100に関連する各種の浴室機器30と有線または無線により電気的に接続される。
【0031】
浴室機器30としては、たとえば、吐水装置31、空調機器32、照明機器33およびAV機器34等が含まれる。吐水装置31は、シャワーの水栓装置および水栓装置に接続される給湯器を含む。給湯器は、たとえば浴室101の外部に設けられ、シャワーの水栓装置に対し、設定された温度の湯を供給する。水栓装置は、たとえば電磁弁等を含んで構成され、上述した給湯器および給水源に接続される。水栓装置は、給水源から供給される水や給湯源から供給される湯の流量、混合比率等を調整することにより、シャワー103の吐止水、吐水温度、吐水流量等を制御する。
【0032】
また、吐水装置31は、レバーやボタン等の操作部を備えている。操作部は、浴室101内に設けられており、使用者は、後述する音声操作以外に、かかる操作部を手動操作することによって、シャワー103の吐止水を切り替えたり、吐水温度や吐水流量を変更したりすることが可能である。
【0033】
空調機器32は、たとえば浴室101の天井パネル101bに設けられる。空調機器32は、たとえば浴室換気暖房乾燥機であり、温風を吹き出して浴室101内を暖める暖房機能、風(例えば温風)を吹き出して浴室101内に吊るされた衣類等を乾燥させる乾燥機能、浴室101内を換気する換気機能等を有する。なお、これに限らず、空調機器32は、たとえば換気機能のみを有する換気扇であってもよい。
【0034】
照明機器33は、たとえば浴室101の側壁パネル101aまたは天井パネル101bに設けられ、浴室101内を照明する。照明機器33は、調光機能を備えていてもよい。
【0035】
AV機器34は、たとえばオーディオコンポであり、音声の再生機能を有する。なお、AV機器34は、映像の再生機能を有していてもよい。
【0036】
浴室機器30としては、上記以外に、たとえば、マッサージ機器や洗浄機器等を含んでいてもよい。マッサージ機器は、たとえば浴槽102に設けられ、浴槽102内に水流や泡を発生させる。洗浄機器は、たとえば、浴室101の床面パネル101cに洗剤や水(湯)、除菌水等を散布する。
【0037】
制御装置20は、マイク11を介して入力された音声情報、または、リモコン13を介して入力された接触操作情報に基づいて、上述した浴室機器30の動作を制御することができる。
【0038】
たとえば、制御装置20は、「シャワーを出して」という使用者の音声に基づき、吐水装置31を制御してシャワー103からの吐水を開始させることができる。このように、実施形態に係る浴室システム1によれば、浴室機器30を音声で操作することができるため、使用者の利便性を向上させることができる。
【0039】
しかしながら、音声による操作は、利便性が高い反面、直接手で触れて操作する場合と比較して使用者が意図しない不適切な動作が行われやすくなるおそれがある。
【0040】
たとえば、使用者は、音声操作によってシャワー吐水を簡単かつ手軽に開始させることができるが、設定温度が高すぎたり低すぎたりした場合に、高すぎる又は低すぎる温度でシャワー吐水が開始されることで、使用者に対して不快感を与えてしまうおそれがある。
【0041】
そこで、実施形態に係る浴室システム1では、使用者が音声操作によってシャワーの103からの吐水を開始させようとした場合に、現在設定されている吐水温度が予め設定された許容範囲から逸脱しているときは、現在設定されている吐水温度が許容範囲内となるように変更したうえで、シャワー103からの吐水を開始させることとした。以下、この点について具体的に説明する。
【0042】
<制御装置の構成例>
まず、実施形態に係る制御装置20の構成例について図3を参照して説明する。図3は、実施形態に係る制御装置20の構成の一例を示すブロック図である。なお、図3では、制御装置20が備える構成のうちシャワー103の吐水制御に関連する構成を記載し、その他の構成については省略している。
【0043】
図3に示すように、実施形態に係る制御装置20は、制御部21と、記憶部22とを備える。制御部21は、認識部21aと、変更部21bと、機器制御部21cと、確認処理部21dとを備える。記憶部22は、設定温度情報22aと、音声許容範囲情報22bとを記憶する。
【0044】
なお、制御装置20は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0045】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶された評価プログラムを読み出して実行することによって、制御部21の認識部21a、変更部21b、機器制御部21cおよび確認処理部21dとして機能する。認識部21a、変更部21b、機器制御部21cおよび確認処理部21dの少なくともいずれか一つまたは全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0046】
また、記憶部22は、たとえば、RAMやHDDに対応する。RAMやHDDは、設定温度情報22aおよび音声許容範囲情報22bを記憶することができる。なお、制御装置20は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得してもよい。記録媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0047】
(設定温度情報および音声許容範囲情報について)
設定温度情報22aは、シャワー103の吐水温度の上限として設定されている温度(以下、「設定温度」と記載する)の値を示す情報である。設定温度は、吐水装置31が備える給湯器に対して設定される。使用者は、たとえば、予め設定された設定可能範囲内において設定温度を変更することができる。
【0048】
音声許容範囲情報22bは、音声許容範囲の上限値および下限値を示す情報である。ここで、音声許容範囲について図4を参照して説明する。図4は、設定可能範囲および音声許容範囲の一例を示す説明図である。
【0049】
音声許容範囲は、音声操作によってシャワー103の吐水が開始される場合の吐水温度の上限および下限を規定する温度範囲である。具体的には、図4に示すように、音声許容範囲は、設定可能範囲よりも狭い温度範囲であり、設定可能範囲内に設定される。
【0050】
たとえば、設定可能範囲の上限が60℃であり、下限が20℃である場合に、音声許容範囲の上限は、60℃よりも低い43℃に、下限は20℃よりも高い38℃に設定され得る。このように、音声許容範囲は、設定可能範囲の上限よりも低い上限と、設定可能範囲の下限よりも高い下限とを有する温度範囲である。
【0051】
使用者は、たとえばリモコン13を操作することにより、20℃以上60℃以下の設定可能範囲内において、シャワー103の吐水温度の上限である設定温度を設定することができる。たとえば、使用者は、シャワー103の設定温度を50℃に設定することができる。この場合、使用者は、たとえば吐水装置31の操作部を操作することで、20℃以上50℃以下の温度範囲内でシャワー103の吐水温度を調整することができる。
【0052】
しかしながら、シャワー103の設定温度が50℃に設定されている場合に、音声操作によってシャワー103の吐水が開始されると、場合によっては50℃の湯が使用者に突然かかる可能性があり、使用者に不快感を与えるおそれがある。実施形態に係る浴室システム1は、音声操作によってシャワー103の吐水を開始する場合の吐水温度を音声許容範囲に限定することで、使用者が不快を感じる吐水温度でシャワー103の吐水が開始されることを抑制している。
【0053】
(認識部について)
認識部21aは、たとえば、記憶部22に記憶されている不図示の音声認識アプリケーションが制御部21によって実行されることにより実現される。認識部21aは、マイク11によって取得された使用者の音声に対して音声認識処理を行うことによって音声の内容を特定する。たとえば、認識部21aは、使用者の音声をテキストデータに変換し、変換したテキストデータに基づき、操作の対象となる浴室機器30や操作の内容を特定する。なお、認識部21aは、使用者の音声の音声データをネットワーク経由で音声認識サーバへ送信し、音声認識サーバによって音声データから変換されたテキストデータを音声認識サーバから受信してもよい。
【0054】
(変更部について)
変更部21bは、シャワー103の吐水を開始する音声操作が行われた場合に、記憶部22に記憶されている設定温度情報22aおよび音声許容範囲情報22bを参照して、現在の設定温度が音声許容範囲内であるか否かを判定する。そして、現在の設定温度が音声許容範囲を逸脱している場合、変更部21bは、現在の設定温度を音声許容範囲内の温度に変更する。
【0055】
ここで、変更部21bによる設定温度変更処理の一例について図5および図6を参照して説明する。図5は、現在の設定温度が音声許容範囲を超えている場合における設定温度変更処理の一例を示す説明図である。図6は、現在の設定温度が音声許容範囲を下回っている場合における設定温度変更処理の一例を示す説明図である。
【0056】
図5に示すように、現在の設定温度が音声許容範囲の上限である43℃を超えている場合、変更部21bは、現在の設定温度を音声許容範囲の上限である43℃に変更する。
【0057】
また、図6に示すように、現在の設定温度が音声許容範囲の下限である38℃を下回っている場合、変更部21bは、現在の設定温度を音声許容範囲の下限である38℃に変更する。
【0058】
なお、ここでは、現在の設定温度が音声許容範囲の上限を超えている場合に、現在の設定温度を音声許容範囲の上限に変更することとしたが、これに限らず、変更部21bは、現在の設定温度を音声許容範囲の上限よりも低い温度に変更してもよい。同様に、変更部21bは、現在の設定温度が音声許容範囲の下限を下回っている場合に、現在の設定温度を音声許容範囲の下限よりも高い温度に変更してもよい。
【0059】
また、ここでは、現在の設定温度が音声許容範囲を超えている場合と下回っている場合とで、変更後の設定温度を異ならせることとした。これに限らず、変更部21bは、いずれの場合であっても同一の設定温度に変更することとしてもよい。すなわち、変更部21bは、現在の設定温度が音声許容範囲を逸脱する場合に、現在の設定温度を音声許容範囲内のある温度(たとえば39℃)に変更してもよい。
【0060】
変更部21bは、設定温度変更処理によって現在の設定温度を変更した場合に、変更後の設定温度にて記憶部22の設定温度情報22aを更新する。なお、変更部21bは、音声操作によって開始されたシャワー吐水を停止させた場合に、設定温度変更処理によって変更した設定温度を変更前の設定温度に戻す処理を行ってもよい。
【0061】
上述した設定温度変更処理の他、変更部21bは、たとえばリモコン13を介して設定温度の変更操作を受け付けた場合、受け付けた変更操作に従って設定温度情報22aを更新する処理を行う。たとえば、設定温度を45℃から50℃に変更する操作が行われた場合、変更部21bは、設定温度情報22aの内容を50℃に変更する。
【0062】
また、変更部21bは、温度センサ14によって測定された浴室101内の温度に応じて音声許容範囲の上限または下限を変更してもよい。たとえば、変更部21bは、浴室101内の温度上昇に応じて音声許容範囲の上限および下限を上昇させ、浴室101内の温度低下に応じて音声許容範囲の上限および下限を低下させてもよい。不快に感じる吐水温度は人によって、あるいは季節によって異なる場合がある。変更部21bは、温度センサ14によって測定された浴室101の温度に応じて音声許容範囲を変更することにより、たとえば季節等に応じて自動的に音声許容範囲を最適化することができる。
【0063】
なお、変更部21bは、リモコン13への入力操作に応じて音声許容範囲の上限または下限を変更することもできる。
【0064】
(機器制御部について)
機器制御部21cは、認識部21aによる音声認識処理の結果に基づいて浴室機器30の動作を制御する。たとえば、機器制御部21cは、「シャワーを出して」という使用者の音声に基づき、吐水装置31を制御してシャワー103からの吐水を開始させる。
【0065】
また、機器制御部21cは、たとえば「シャワーの温度を45℃にして」という使用者の音声に基づき、吐水装置31を制御してシャワー103の温度を45℃に変更する。具体的には、まず、変更部21bが設定温度情報22aを45℃に更新し、これに伴い、機器制御部21cが吐水装置31を制御してシャワー103の温度を45℃に変更する。
【0066】
なお、本実施形態において、上述した音声許容範囲は、音声操作によってシャワー103の吐水を「開始」する場合に適用されるものであり、シャワー吐水が開始された後で吐水温度が変更された場合には適用されない。すなわち、使用者は、音声操作によってシャワー103の吐水を開始させた後、吐水温度を、音声許容範囲を超える温度に変更することも可能である。このようにすることで、音声操作の利便性が低下することを抑制することができる。
【0067】
(確認処理部について)
確認処理部21dは、音声操作によって開始されたシャワー吐水の継続中に、音声操作によってシャワー103の吐水温度を変更する操作が受け付けられた場合に、シャワー103の吐水温度を変更してよいか否かの意思確認を使用者に対して行う。たとえば、確認処理部21dは、「シャワーの温度を45℃に変更してもよろしいですか?」といった音声をスピーカ12から出力させる。
【0068】
なお、使用者に対して情報を提示する提示部として表示部を浴室システム1が備えている場合、確認処理部21dは、「シャワーの温度を45℃に変更してもよろしいですか?」等のメッセージを表示部に対して表示させてもよい。
【0069】
<浴室システムの具体的動作>
次に、上述した浴室システム1の具体的動作について図7を参照して説明する。図7は、浴室システム1が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、図7には、シャワー103の吐水に関する処理手順を示しており、他の浴室機器30の動作制御に関する処理手順は省略している。
【0070】
図7に示すように、制御部21は、まず、待機モードに移行する(ステップS101)。待機モードは、音声操作を受け付けるモードである。
【0071】
つづいて、制御部21は、マイク11によって取得された音声に対して音声認識処理を行うことにより、シャワー103の吐水を開始する音声操作が受け付けられたか否かを判定する(ステップS102)。この処理においてシャワー103の吐水を開始する音声操作が受け付けられていない場合(ステップS102,No)、制御部21は、処理をステップS101の待機モードへ移行する。
【0072】
ステップS102において、シャワー103の吐水を開始する音声操作が受け付けられたと判定した場合(ステップS102,Yes)、制御部21は、現在の設定温度が音声許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS103)。
【0073】
ステップS103において、現在の設定温度が音声許容範囲内であると判定した場合(ステップS103,Yes)、制御部21は、設定温度情報22aとして記憶部22に記憶されている現在の設定温度にてシャワー103の吐水を開始させる(ステップS104)。
【0074】
一方、ステップS103において、現在の設定温度が音声許容範囲内でない場合すなわち音声許容範囲、流量許容範囲を逸脱している場合(ステップS103,No)、制御部21は、現在の設定温度を音声許容範囲内の温度に変更し(ステップS105)、変更後の設定温度にてシャワー103の吐水を開始させる(ステップS104)。
【0075】
つづいて、制御部21は、マイク11によって取得された音声に対して音声認識処理を行うことにより、シャワー103の吐水温度を変更する音声操作が受け付けられたか否かを判定する(ステップS106)。この処理において、シャワー103の吐水温度を変更する音声操作が受け付けられたと判定した場合(ステップS106,Yes)、制御部21は、シャワー103の吐水温度を変更してよいか否かを使用者に確認する確認処理を行う(ステップS107)。
【0076】
たとえば、制御部21は、「シャワーの温度を45℃に変更してもよろしいですか?」等の音声をスピーカ12から出力する。その後、制御部21は、予め設定された時間(たとえば、5~10秒間程度)、使用者の音声(上記確認に対する回答)を受け付け可能な状態へ移行する。
【0077】
つづいて、制御部21は、上記予め設定された時間内にマイク11に入力された音声に対して音声認識処理を行うことにより、シャワー103の吐水温度を変更してよい旨の回答を使用者から受け付けたか否かを判定する(ステップS108)。
【0078】
ステップS108において、シャワー103の吐水温度を変更してよい旨の回答が使用者から受け付けられなかった場合(ステップS108,No)、制御部21は、処理をステップS106へ移行し、設定温度を変更することなくシャワー吐水を継続する。この場合、制御部21は、たとえば「操作をキャンセルしました。」等の音声をスピーカ12から出力させてもよい。
【0079】
一方、ステップS108において、シャワー103の吐水温度を変更してよい旨の回答が使用者から受け付けられた場合(ステップS108,Yes)、制御部21は、音声認識処理の結果に従って設定温度を変更する(ステップS109)。
【0080】
ステップS109の処理を終えた場合、あるいは、シャワー103の吐水温度を変更する音声操作が受け付けられていない場合(ステップS106,No)、制御部21は、シャワー103の吐水を停止させる音声操作が受け付けられたか否かを判定する(ステップS110)。この処理において、シャワー103の吐水を停止させる音声操作が受け付けられていない場合(ステップS110,No)、制御部21は、処理をステップS106へ移行し、シャワー吐水を継続する。
【0081】
一方、ステップS110においてシャワー103の吐水を停止させる音声操作が受け付けられたと判定した場合(ステップS110,Yes)、制御部21は、吐水装置31を制御してシャワー103からの吐水を停止させる(ステップS111)。
【0082】
その後、制御部21は、ステップS105またはステップS109において変更した設定温度を変更前の設定温度に戻したうえで(ステップS112)、ステップS101の待機モードに移行する。
【0083】
<変形例>
制御部21は、必ずしもステップS107の確認処理を行うことを要しない。すなわち、制御部21は、ステップS106においてシャワー103の吐水温度を変更する音声操作が受け付けられたと判定した場合に、使用者に対する意思確認を行うことなく、設定温度を変更してもよい。
【0084】
また、制御部21は、音声許容範囲を逸脱する温度に設定温度を変更する音声操作が受け付けられた場合に限定して、ステップS107の確認処理を行うこととしてもよい。これにより、確認処理が介在することによる利便性の低下を抑制することができる。
【0085】
<効果>
上述してきたように、実施形態に係る浴室システム(一例として、浴室システム1)は、シャワー(一例として、シャワー103)の吐水装置(一例として、吐水装置31)を含む少なくとも1つの浴室機器(一例として、浴室機器30)を音声にて操作する浴室システムであって、取得部(一例として、マイク11)と、制御部(一例として、制御装置20)とを備える。取得部は、使用者の音声を取得する。制御部は、取得部によって取得された音声に基づいて浴室機器を制御する。また、制御部は、取得部によって取得された音声に基づいてシャワーの吐水操作を受け付けたと判定した場合であって、且つ、現在設定されている吐水温度(一例として、現在の設定温度)が予め設定された音声許容範囲を逸脱する場合に、吐水装置を制御して音声許容範囲内の吐水温度にてシャワーからの吐水を開始させる。
【0086】
音声操作によってシャワーの吐水を開始する場合の吐水温度を音声許容範囲内に限定することで、たとえば、使用者が不快を感じる吐水温度でシャワーの吐水が開始されることを抑制することができる。したがって、実施形態の一態様に係る浴室システムによれば、シャワーを音声にて操作する場合に、使用者の意図しない吐水が行われることを抑制することができる。
【0087】
制御部は、吐水装置を制御して音声許容範囲内の吐水温度にてシャワーからの吐水を開始させた後、取得部によって取得された音声に基づいて音声許容範囲を逸脱する吐水温度への変更操作を受け付けたと判定した場合に、吐水装置を制御して吐水温度を変更してもよい。
【0088】
音声操作によってシャワーの吐水を開始した後、音声操作によるシャワーの吐水温度の変更を可能とすることで、音声操作の利便性の低下を抑制することができる。
【0089】
制御部は、変更操作を受け付けたと判定した場合に、吐水装置を制御して吐水温度を音声許容範囲を逸脱する吐水温度に変更してもよい。これにより、音声操作の利便性の低下を抑制することができる。
【0090】
実施形態の一態様に係る浴室システムは、使用者に対して情報を提示する提示部(一例として、スピーカ12)をさらに備えていてもよい。この場合、制御部は、吐水装置を制御して吐水温度を音声許容範囲を逸脱する吐水温度に変更する前に、提示部を制御して、使用者に対して吐水温度の変更の可否の確認を行ってもよい。シャワーの吐水温度を変更する前に、使用者に対して吐水変更の可否の意思確認を行うことで、使用者の意図しない吐水が行われることを抑制することができる。
【0091】
制御部は、現在設定されている吐水温度が音声許容範囲を超える場合、吐水装置を制御して音声許容範囲の上限値にてシャワーからの吐水を開始させてもよい。これにより、たとえば、現在設定されている吐水温度と変更後の吐水温度との差が大きくなり過ぎることで使用者に違和感等を与えてしまうことを抑制することができる。
【0092】
制御部は、現在設定されている吐水温度が音声許容範囲を下回る場合、吐水装置を制御して音声許容範囲の下限値にてシャワーからの吐水を開始させてもよい。これにより、たとえば、現在設定されている吐水温度と変更後の吐水温度との差が大きくなり過ぎることで使用者に違和感等を与えてしまうことを抑制することができる。
【0093】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 浴室システム
11 マイク
12 スピーカ
13 リモコン
14 温度センサ
20 制御装置
21 制御部
22 記憶部
30 浴室機器
31 吐水装置
32 空調機器
33 照明機器
34 AV機器
100 浴室ユニット
101 浴室
101a 側壁パネル
101b 天井パネル
101c 床面パネル
102 浴槽
103 シャワー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7