(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】車両に搭載されているライダーの傾きの検出装置、および車両に搭載されているライダーの傾きの検出方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/28 20060101AFI20240220BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20240220BHJP
G01S 17/93 20200101ALI20240220BHJP
G01S 7/497 20060101ALI20240220BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20240220BHJP
【FI】
G01C21/28
G08G1/0969
G01S17/93
G01S7/497
G06T7/70 B
(21)【出願番号】P 2019178465
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】帆足 善明
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/082700(WO,A1)
【文献】特開2011-27574(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G08G 1/00 - 99/00
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
G09B 23/00 - 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)に搭載されているライダー(43)について
、前記ライダーが前記車両に正しく取り付けられた場合における位置と、前記ライダーが前記車両に現在取り付けられている位置と、がなす角度のうち、前記車両の車両幅方向に平行な方向である前記車両の水平方向に対する角度が表す
前記ライダーの傾きを検出する検出装置(10)であって、
前記ライダーにより検出される検出点群により表される距離画像を取得する距離画像取得部(22)と、
前記車両の走行経路(Ln)の周辺の周囲情報(SI)を取得する周囲情報取得部(23)と、
前記走行経路の周辺に存在する物体から決定された注目対象物について、取得された前記周囲情報を用いて検出された前記周囲情報におけ
る前記注目対象物の
前記水平方向に対する角度と、
前記注目対象物について、取得された前記距離画像を用いて検出された前記距離画像におけ
る前記注目対象物の
前記水平方向に対する角度と、
過去に検出された、前記周囲情報におけ
る複数の異なる注目対象物の
前記水平方向に対する角度と、
過去に検出された、前記距離画像におけ
る前記複数の異なる注目対象物の
前記水平方向に対する角度と、
を用いて、前記傾きを決定する検出部(21)と、
を備える、
検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検出装置であって、
前記検出部は、
前記周囲情報におけ
る前記注目対象物の
前記水平方向に対する角度と、前記距離画像におけ
る前記注目対象物の
前記水平方向に対する角度との差分を検出し、
検出した前記差分と、前記複数の異なる注目対象物についての前記差分とを用いて、前記傾きを決定する、
検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検出装置であって、
前記注目対象物は、ガードレール(Ob1)と、歩道橋と、道路情報表示板と、交通標識(Ob3、Ob4)とを含む、
検出装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載の検出装置であって、
前記検出部は、決定された前記傾きが予め定められた第1閾値範囲を超える場合、前記車両に搭載された報知装置(50)を用いて前記車両の乗員に報知する、
検出装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の検出装置であって、
前記検出部は、決定された前記傾きが前記第1閾値範囲より大きな第2閾値範囲を超える場合、前記車両に対して前記車両の自動運転を停止させる、
検出装置。
【請求項6】
車両に搭載されているライダーについて
、前記ライダーが前記車両に正しく取り付けられた場合における位置と、前記ライダーが前記車両に現在取り付けられている位置と、がなす角度のうち、前記車両の車両幅方向に平行な方向である前記車両の水平方向に対する角度が表す
前記ライダーの傾きを検出する検出方法であって、
前記ライダーにより検出される検出点群により表される距離画像を取得し、
前記車両の走行経路の周辺の周囲情報を取得し、
前記走行経路の周辺に存在する物体から決定された注目対象物について、取得された前記周囲情報を用いて検出された前記周囲情報におけ
る前記注目対象物の
前記水平方向に対する角度と、
前記注目対象物について、取得された前記距離画像を用いて検出された前記距離画像におけ
る前記注目対象物の
前記水平方向に対する角度と、
過去に検出された、前記周囲情報におけ
る複数の異なる注目対象物の
前記水平方向に対する角度と、
過去に検出された、前記距離画像におけ
る複数の異なる注目対象物の
前記水平方向に対する角度と、
を用いて前記傾きを決定する、
検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されているライダーの傾きを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されているカメラや、レーザーレーダ、ライダー(LiDAR)等の検出結果を利用して、車両を自動走行させる技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ライダーを車両に固定するブラケットの経年劣化や、車両が障害物と衝突した際の衝撃等によって、ライダーが傾いてしまうことがある。この結果、車両の周囲の物標を精度よく認識できないという問題が生じ得る。このため、車両に搭載されているライダーの傾きを検出する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一実施形態によれば、車両(100)に搭載されているライダー(43)について、前記ライダーが前記車両に正しく取り付けられた場合における位置と、前記ライダーが前記車両に現在取り付けられている位置と、がなす角度のうち、前記車両の車両幅方向に平行な方向である前記車両の水平方向に対する角度が表す前記ライダーの傾きを検出する検出装置(10)が提供される。この検出装置は、前記ライダーにより検出される検出点群により表される距離画像を取得する距離画像取得部(22)と、前記車両の走行経路(Ln)の周辺の周囲情報(SI)を取得する周囲情報取得部(23)と、前記走行経路の周辺に存在する物体から決定された注目対象物について、取得された前記周囲情報を用いて検出された前記周囲情報における前記注目対象物の前記水平方向に対する角度と、前記注目対象物について、取得された前記距離画像を用いて検出された前記距離画像における前記注目対象物の前記水平方向に対する角度と、過去に検出された、前記周囲情報における複数の異なる注目対象物の前記水平方向に対する角度と、過去に検出された、前記距離画像における前記複数の異なる注目対象物の前記水平方向に対する角度と、を用いて、前記傾きを決定する検出部(21)と、を備える。
【0007】
この形態の検出装置によれば、ライダーにより検出される検出点群により表される距離画像を取得し、車両の走行経路の周辺の周囲情報を取得し、取得された距離画像と、取得された周囲情報とを用いて、ライダーの傾きを決定するので、ライダーの傾きを容易に検出できる。
【0008】
本開示は、種々の形態で実現することも可能である。例えば、傾き検出装置、傾き検出方法、これらの装置や方法を実現するためのコンピュータプログラム、かかるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態としての傾き検出装置が搭載された車両の一例を示す説明図。
【
図2】車両および傾き検出装置の概略構成を示すブロック図。
【
図5】傾き検出処理の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.実施形態:
A1.装置構成:
図1および
図2に示すように、車両100は、計測装置ユニット40と、傾き検出装置10と、運転支援制御装置80とを備える。車両100は、自動運転と手動運転との切り替えを実行可能な車両である。車両100の運転者は、インストルメントパネル等に用意された所定のスイッチにより自動運転と手動運転とを切り替えることができる。「自動運転」とは、運転者が運転操作を行うことなく、計測装置ユニット40によって取得される車室内および車室外の状況に基づいて、車両100の運転を行うためのアクチュエータ群を含む後述の運転装置60を駆動することによって、エンジン制御とブレーキ制御と操舵制御とのすべてを運転者に代わって自動で実行する運転を意味する。「手動運転」とは、エンジン制御のための操作(アクセルペダルの踏込)と、ブレーキ制御のための操作(ブレーキベダルの踏込)と、操舵制御のための操作(ステアリングホイールの回転)を、運転者が実行する運転を意味する。
【0011】
計測装置ユニット40は、車両100の屋根に搭載され、固定機構92およびフレーム93により車両100に固定されている。なお、
図1では、車両幅方向LH、車両前方方向FD、車両後方方向RDおよび鉛直下方Gを図示している。
図1における各方向を示す符号および矢印は、他の図における各方向を示す符号および矢印に対応する。
【0012】
計測装置ユニット40は、車両100の走行状態に関する情報や、車両100の周囲の対象物に関する情報等を取得する。
図2に示すように、計測装置ユニット40は、少なくとも、撮像装置41、ライダー43、位置センサ45および6軸センサ47を備える。
【0013】
撮像装置41は、車両100の周囲に向けられており、車両100の少なくとも進行方向を撮影する。撮像装置41は、例えば、広角カメラ、望遠カメラ等のCCD等の撮像素子または撮像素子アレイを備える撮像装置であり、可視光を受光することによって対象物の外形情報または形状情報を検出結果である画像データとして出力する。
【0014】
ライダー(LiDAR:Light Detection And Ranging)43は、車両100の進行方向に向けられており、赤外レーザ光を射出し、物標によって反射された反射光を受信することによって、車両100に対する物標の距離および角度を検出して、物標を検出点群として取得する。検出点とは、ライダー43が検出可能な範囲において、反射光によって特定される物標の少なくとも一部が存在し得る位置を示す点を意味する。また、検出点群とは、所定期間における検出点の集合を意味し、検出点の3次元座標により距離画像として表される。なお、検出点とは、光の飛行時間TOF(Time of Flight)により検出される測距点と、ライダー43が備える受光素子に入力される輝度値により表される検出点との両方を含む意味である。本実施形態において、ライダー43の分解能(解像度)は、水平方向、垂直方向のいずれにおいても0.1度から0.2度の範囲の値である。
【0015】
位置センサ45は、車両100の自己位置を検出する。自己位置は、車両100の緯度及び経度で表される。位置センサ45として、例えば、全地球航法衛星システム(GNSS)やジャイロセンサ等が挙げられる。なお、自己位置は、車両100の高度を含んでもよい。
【0016】
6軸センサ47は、車両100の向き(進行方向)、および車両100の姿勢を検出する。6軸センサ47としては、例えば、3軸加速度センサと3軸ジャイロセンサとを備えるモーションセンサ等が挙げられる。
【0017】
図1に示すように、傾き検出装置10および運転支援制御装置80は、車両100の内部に搭載されている。傾き検出装置10および運転支援制御装置80は、配線CVによって計測装置ユニット40と接続されている。
【0018】
傾き検出装置10は、車両100の垂直方向におけるライダー43の傾きを検出する。
図2に示すように、傾き検出装置10は、CPU20と、メモリ30と、入出力インターフェース11とを搭載した1つ又は複数のECU(Electronic Control Unit)として構成されている。CPU20、メモリ30および入出力インターフェース11は、バス15を介して双方向に通信可能に接続されている。CPU20は、メモリ30に記憶されたプログラムを展開して実行することにより、検出部21、距離画像取得部22、周囲情報取得部23および補正部24として機能する。
【0019】
検出部21は、後述の傾き検出処理において、ライダー43により生成される距離画像と、車両100の走行経路の周囲の情報(以下、「周囲情報」と呼ぶ)とを照合することにより、車両100の垂直方向におけるライダー43の傾きを検出する。本実施形態において、「周囲情報」とは、車両100の走行経路の勾配を示す情報や、走行経路の周辺に設けられた道路設備や建物等の地物の位置や形状を示す情報を意味する。周囲情報は、例えば、地図情報や、撮像装置41による撮像画像等の座標情報を含む情報である。また、上述の道路設備は、例えば、ガードレール、交通標識、渋滞情報や案内情報を表示する道路情報表示板、歩道橋が該当する。また、道路設備には、区画線、停止線、横断歩道等の路面標示も含まれる。
【0020】
図3に例示する周囲情報SIは、車両100の走行経路Lnの周辺の地図情報である。周囲情報SIには、車両100の進行方向である車両前方方向FDに存在する、ガードレールOb1、交通標識Ob3およびOb4、道路照明装置Ob5、停止線Ob2、および建物Ob6等の位置(座標)や形状を示す情報が含まれている。
図3において、X軸およびY軸は車両水平方向と平行に、Z軸は鉛直方向と平行に、それぞれ設定されている。X軸は、車両100の進行方向と平行であり、+X方向は車両前方方向FDであり、-X方向は車両後方方向RDである。Y軸は、車両100の幅方向と平行であり、+Y方向は車両幅方向LHである。
【0021】
検出部21は、周囲情報SIおよび距離画像から特定の物体をそれぞれ抽出し、抽出された両物体の水平方向の線分間の角度を求めることによりライダー43の仰俯角を算出して、ライダー43の傾きとして決定する。なお、ライダー43の傾き、およびライダー43の傾きの検出方法についての詳細な説明は、後述する。
【0022】
距離画像取得部22は、ライダー43により生成される距離画像を取得する。
【0023】
周囲情報取得部23は、通信装置65を介して交通管理システム等から、周囲情報SIを取得する。なお、周囲情報取得部23は、交通管理システムに代えて、ナビゲーション装置70から地図データを取得してもよいし、撮像装置41から車両100の進行方向の撮像画像を取得してもよい。
【0024】
補正部24は、検出部21により決定されたライダー43の傾きを用いて、ライダー43の検出結果を補正する。具体的には、補正部24は、メモリ30に格納されているオフセット補正値31を、決定された傾きの値で更新する。これにより、運転支援制御装置80がライダー43により検出される検出点群を用いて車両100の周囲の物標を認識する際に、オフセット補正値31を参照することにより、検出点群の垂直方向の位置が補正される。
【0025】
運転支援制御装置80は、図示しないCPUと、メモリと、インターフェースとを搭載した1つ又は複数のECUとして構成されている。運転支援制御装置80は、車両100に搭載された後述の運転装置60を制御することにより、車両100の制動支援、操舵支援、駆動支援といった運転支援を実行する。
【0026】
車両100には、上述の計測装置ユニット40および運転支援制御装置80に加えて、報知装置50と、運転装置60と、通信装置65と、ナビゲーション装置70とが搭載されている。
【0027】
報知装置50は、視覚情報や聴覚情報によって車両100の乗員に向けて種々の情報を報知する。報知装置50は、車両100の車室内に向けられた表示装置51およびスピーカ53を備える。表示装置51は、文字や画像等を表示する。スピーカ53は、音声や警告音等を出力する。
【0028】
運転装置60は、いずれも図示しない駆動装置と、操舵装置と、ブレーキ装置とを備える。駆動装置は、内燃機関及びモータの少なくともいずれか1つを含み、走行用の駆動力を発生する。操舵装置は、電動ステアリング機構等を含み、車両100の操舵を実現する。ブレーキ装置は、ディスクブレーキ等を含み、車両100の制動を実現する。
【0029】
通信装置65は、車両100と車両100の外部との間で無線通信を行って、例えば、周囲情報SI等のデータのやりとりを行う。車両100の外部としては、交通管理システム、例えば、高度道路交通システム(Intelligent Transport System)や、路側無線機、車両100の周囲を走行する他車両等が該当する。
【0030】
ナビゲーション装置70は、電子地図データを用いて、経路探索や経路誘導を行う。電子地図データは、道路ネットワークデータや道路データ等を含む。
【0031】
A2.傾き検出処理:
傾き検出処理の説明に先立って、
図4を用いてライダー43の傾きについて説明する。実線に示すように、ライダー43は、略直方体形状を有し、固定具432により車両100に締結される。ライダー43の筐体431の内部には、赤外レーザ光の発光部や、物標によって反射された反射光の受光部等が収容されている。ライダー43は、筐体431の底面の下辺T1が車両100の水平方向と平行となるように車両100に取り付けられている。実線に示す搭載状態は、本来の正しい姿勢である。
【0032】
破線に示すライダー43aは、ライダー43が車両100の垂直方向に傾いた状態を示している。具体的には、ライダー43aは、ライダー43が車両100の上方に角度θだけ傾いている。ライダー43aの筐体の底面の下辺T1aは、車両100の水平方向から鉛直上方に角度θだけずれて、水平方向と交差している。したがって、角度θを検出することによって、ライダー43の傾きを決定することができる。本実施形態の傾き検出処理では、周囲情報SIおよび距離画像を用いて、ライダー43の水平方向に対する角度のずれを検出する。すなわち、周囲情報SIおよび距離画像から車両100の走行経路Lnの周辺に存在する物体をそれぞれ抽出し、周囲情報SIから抽出された物体の水平方向の辺を基準としたときの距離画像から抽出された物体の水平方向の辺のずれ角度を検出することにより、ライダー43の傾きを決定する。上述のように、本実施形態のライダー43は、垂直方向の分解能が0.1度から0.2度の範囲の値であるので、物体の水平方向の辺を精度よく検出できる。
【0033】
図5に示す傾き検出処理は、車両100の走行中、所定のインターバルで繰り返し実行される。所定のインターバルは、数秒から十数秒としてもよい。傾き検出処理は、車両100全体を制御する上位のECUからイグニッションスイッチがオフからオンに切り替わったことを示す信号が傾き検出装置10に入力されると、開始される。
【0034】
検出部21は、位置センサ45の検出結果から車両100の現在位置を取得する(ステップS10)。検出部21は、6軸センサ47の検出結果から車両100の進行方向を取得する(ステップS15)。周囲情報取得部23は、周囲情報SIを取得する(ステップS20)。
このとき、周囲情報取得部23は、周囲情報SIの向きを車両100の進行方向と一致させた周囲情報SIを取得する。距離画像取得部22は、ライダー43の検出結果から距離画像を取得する(ステップS25)。
【0035】
検出部21は、注目対象物を決定する(ステップS30)。本実施形態において「注目対象物」とは、車両100の走行経路Lnの周辺に存在する物体のうち、車両100に最も近い位置に存在する物体を意味する。検出部21は、周囲情報SIを参照して、車両100の周囲に存在する物体、例えば、道路設備のうち、車両100に最も近い位置に存在する道路設備を注目対象物として特定する。
図3に例示する周囲情報SIにおいては、ガードレールOb1が注目対象物として特定され得る。なお、検出部21は、特定した注目対象物を距離画像において検出できない場合には、車両100に次に近い位置に存在する道路設備(
図3に示す例では、停止線Ob2や、交通標識Ob3)を注目対象物として特定してもよい。
【0036】
検出部21は、周囲情報SIおよび距離画像における車両100の垂直方向における注目対象物の角度をそれぞれ検出する(ステップS35)。具体的には、検出部21は、周囲情報SIから注目対象物を検出して、注目対象物における車両100の水平方向と平行な辺を特定し、かかる辺と車両100の水平方向とのなす角度を求める。より具体的には、まず、検出部21は、注目対象物を構成する検出点(例えば、代表点)のX座標、Y座標およびZ座標を複数検出し、最小二乗法等を用いて、注目対象物における水平方向と平行な線分、あるいは、近似する線分を求める。次に、検出部21は、車両100の水平方向を基準とし、かかる基準に対する線分の角度を求める。なお、注目対象物における車両100の水平方向と平行な辺は、注目対象物を構成する検出点のうち、端点に該当する検出点同士を結ぶ線分でもよいし、注目対象物を構成する検出点のうち、中間点に該当する検出点と端点に該当する検出点とを結ぶ線分でもよい。また、最小二乗法に代えて、エッジ抽出処理によって求めてもよい。
【0037】
検出部21は、同様の手順により、距離画像における注目対象物の角度を検出する。具体的には、距離画像から注目対象物と想定される物体を検出し、検出された注目対象物における車両100の水平方向と平行な辺を特定し、かかる辺と車両100の水平方向とのなす角度を求める。
【0038】
検出部21は、ライダー43の傾きを決定する(ステップS40)。具体的には、検出部21は、上述のステップS35において検出された、周囲情報SIにおける注目対象物の角度と距離画像における注目対象物の角度との差分を検出し、検出された差分をライダー43の傾きとして決定する。
【0039】
検出部21は、決定された傾きが第1閾値範囲に含まれるか否かを判定する(ステップS45)。本実施形態において、「第1閾値範囲」とは、車両100の水平方向を0度としたとき、車両100の垂直方向における角度が-5度から+5度の範囲を意味する。決定された傾きが第1閾値範囲に含まれると判定された場合(ステップS45:YES)、補正部24は、測距点群の位置を補正する(ステップS50)。具体的には、補正部24は、メモリ30に記憶されているオフセット補正値31を更新する。
【0040】
上述のステップS45において決定された傾きが第1閾値範囲を超えると判定した場合(ステップS45:NO)、検出部21は、報知装置50を用いて、車両100の乗員に報知する(ステップS55)。例えば、「自動車ディーラーにおいてライダー43の点検をしてください。」という報知表示や、音声案内を行わせる。
【0041】
検出部21は、決定された傾きが第2閾値範囲に含まれるか否かを判定する(ステップS60)。本実施形態において、「第2閾値範囲」とは、第1閾値範囲よりも車両100の垂直方向の角度が大きな範囲であり、車両100の垂直方向における角度が-30度から+30度の範囲、好ましくは、-25度から+25度の範囲を意味する。決定された傾きが第2閾値範囲に含まれないと判定した場合(ステップS60:NO)、検出部21は、車両100の自動運転を停止させる(ステップS65)。具体的には、検出部21は、運転支援制御装置80による車両100の自動運転の実行を停止させる。また、検出部21は、報知装置50を用いて、車両100の運転者に手動運転を行うように促す旨の報知や、車両100の点検を促す旨の報知を行わせる。
【0042】
上述のステップS60において決定された傾きが第2閾値範囲に含まれると判定した場合(ステップS60:YES)、または、上述のステップS65の実行後、傾き検出処理は終了する。
【0043】
以上の構成を有する本実施形態の傾き検出装置10によれば、ライダー43により検出される検出点群により表される距離画像を取得し、車両100の走行経路Lnの周辺の周囲情報SIを取得し、取得された距離画像と取得された周囲情報とを用いてライダー43の傾きを決定するので、ライダー43の傾きを容易に検出できる。具体的には、検出部21は、走行経路Lnの周辺に存在する道路設備から注目対象物を決定し、周囲情報SIにおける車両100の垂直方向における注目対象物の角度と、距離画像における車両100の垂直方向における注目対象物の角度との差分を検出することにより、ライダー43の傾きを決定するので、複雑な処理を要することなく、ライダー43の傾きを決定できる。また、注目対象物はガードレールOb1であるので、注目対象物を容易に特定できる。
【0044】
補正部24は、決定された傾きを用いて検出点群の垂直方向の位置を補正するので、ライダー43が車両100への搭載時の姿勢から車両100の垂直方向に傾いてしまった場合であっても、ライダー43により検出される検出点群の位置を本来検出され得るべき位置にすることができる。したがって、車両100の周囲の物標を精度よく認識できないという問題の発生を抑制できる。また、検出部21は、決定された傾きが第1閾値範囲を超える場合、報知装置50を用いて車両100の乗員に報知するので、ライダー43が本来の正しい姿勢から傾いているために車両100の点検が必要であることを、車両100の乗員に知らしめることができる。また、検出部21は、決定された傾きが第2閾値範囲を超える場合、車両100の自動運転を停止させるので、ライダー43の検出結果を車両100の運転支援に用いられないようにすることができる。このため、車両100における運転支援において不具合が生じることを抑制できる。
【0045】
B.他の実施形態:
(1)上記実施形態において、検出部21は、建物の水平方向のエッジを比較することにより、ライダー43の傾きを決定してもよい。具体的には、上述のステップS30において、検出部21は、車両100に最も近い位置に存在する建物Ob6を注目対象物として特定する。次に、上述のステップS35において、検出部21は、周囲情報SIから注目対象物を検出し、例えば、輝度値に基づいて、注目対象物の水平方向のエッジを抽出する。また、距離画像においても同様に、注目対象物の水平方向のエッジを抽出する。その後、検出部21は、周囲情報SIにおいて抽出したエッジと、距離画像において抽出したエッジとを比較して、エッジのずれ角度を検出することにより、ライダー43の傾きを決定してもよい。このような構成によれば、ライダー43の傾きをより精度よく決定できる。
【0046】
(2)上記各実施形態において、注目対象物は、ガードレールや、建物に限られず、走行経路Ln上の区画線、横断歩道、停止線等の路面標示や、交通標識、信号機、歩道橋、道路情報表示板等の道路設備といった車両100の走行経路Lnおよびその周辺に存在する任意の物体であってもよい。
【0047】
(3)上記各実施形態において、検出部21は、距離画像および周囲情報SIにおける注目対象物の角度の過去の検出値を用いて、ライダー43の傾きを決定してもよい。具体的には、検出部21は、上述のステップS35において検出した注目対象物の角度をメモリ30に記憶しておき、例えば、10個の互いに異なる注目対象物で検出された角度の平均値を用いてライダー43の傾きを決定してもよい。このとき、所定の基準値からかけ離れている検出値がある場合には、その検出値を除外してもよい。このようにすることで、例えば、工事等で道路設備が一時的に撤去されるなどして、距離画像と周囲情報SIとで検出され得る物体に相違がある場合であっても、ライダー43の傾きを精度よく決定できる。
【0048】
(4)上記各実施形態において、ライダー43の傾きは、車両100の垂直方向における注目対象物の角度を用いて決定されていたが、車両100の垂直方向に限らず、車両進行方向における注目対象物の角度を用いてもよい。また、傾き検出装置10のCPU20は、補正部24を省略してもよく、この場合、検出点群の位置の補正(上述のステップS50)を省略してもよい。また、決定された傾きが第1閾値範囲を超える場合に車両100の乗員に報知しなくてもよい。また、決定された傾きが第2閾値範囲を超える場合に車両100の自動運転を停止させなくてもよい。
【0049】
本開示に記載の制御部等の各部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部等の各部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組合せにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0050】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
10…検出装置、21…検出部、22…距離画像取得部、23…周囲情報取得部、43…ライダー、100…車両、Ln…走行経路、SI…周囲情報