(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】コネクタ及びサーボDC給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/02 20060101AFI20240220BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240220BHJP
H02P 5/74 20060101ALI20240220BHJP
H02P 25/16 20060101ALI20240220BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20240220BHJP
H01R 13/66 20060101ALN20240220BHJP
H01R 31/02 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
H02J1/02
H02J1/00 309F
H02P5/74
H02P25/16
H02P27/06
H01R13/66
H01R31/02 D
(21)【出願番号】P 2019187338
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐淵 岳
(72)【発明者】
【氏名】財津 俊行
(72)【発明者】
【氏名】蘆田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌志
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-215882(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166559(WO,A1)
【文献】特開2004-288069(JP,A)
【文献】特開昭56-107776(JP,A)
【文献】特開2018-207564(JP,A)
【文献】特開2006-121845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J1/00-1/16
H02P5/00-5/753
H02P21/00-25/03
H02P25/04
H02P25/10-27/18
H01R13/56-13/72
H01R27/00-31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
複数のモータ制御装置と、
前記直流電源からの電力を前記複数のモータ制御装置に分配供給する電力供給路と、
を備えるサーボDC給電システムであって、
前記電力供給路は、
コネクタと、
前記コネクタにて接続された複数の電力ケーブルと、
を含み、
前記コネクタは、
一対の入力端子と、
前記一対の入力端子とそれぞれ電気的に接続された一対の出力端子と、
前記一対の入力端子と前記一対の出力端子との間に挿入されたフィルタ回路であって、前記一対の入力端子と前記一対の出力端子との間を流れる直流の電圧変動又は電流変動を検知し、検知結果に基づき、前記直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように、自フィルタ回路のインピーダンスを調整するフィルタ回路と、
を備える、
サーボDC給電システム。
【請求項2】
前記フィルタ回路は、
前記一対の入力端子と前記一対の出力端子とを接続するプラス側の配線とマイナス側の配線との間に配置された、コンデンサと可変抵抗の直列接続体と、
前記可変抵抗の抵抗値を、前記プラス側の配線又は前記マイナス側の配線の電圧変動又は電流変動の検知結果に基づき、前記直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように制御する制御部と、
を備える、
請求項1に記載の
サーボDC給電システム。
【請求項3】
前記フィルタ回路は、
前記一対の入力端子と前記一対の出力端子とを接続するプラス側の配線及びマイナス側の配線の一方の配線に挿入された可変抵抗と、
前記可変抵抗の抵抗値を、前記一方の配線の電圧変動又は電流変動の検知結果に基づき、前記電圧変動又は前記電流変動が抑制されるように制御する制御部と、
を備える、
請求項1に記載の
サーボDC給電システム。
【請求項4】
前記可変抵抗が、前記制御部により能動領域で動作するよう制御されるトランジスタである、
請求項2又は3に記載の
サーボDC給電システム。
【請求項5】
前記一対の入力端子は、前記直流電源側の電力ケーブルに接続される、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のサーボDC給電システム。
【請求項6】
前記フィルタ回路は、前記検知結果に基づき、前記電力供給路を含む前記直流電源側のインピーダンスが、前記複数のモータ制御装置側のインピーダンスより低くなるように、自フィルタ回路のインピーダンスを調整する、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のサーボDC給電システム。
【請求項7】
前記フィルタ回路は、前記電力供給路の電圧変動又は電流変動が閾値以上である場合に前記可変抵抗の抵抗値を上昇させることで、前記電力供給路を含む前記直流電源側のインピーダンスを、前記複数のモータ制御装置側のインピーダンスより低くするとともに、前記抵抗値を上昇させた後に前記電力供給路の電圧変動又は電流変動が閾値未満になると前記抵抗値を下降させる、
請求項2に記載のサーボDC給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタとサーボDC給電システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等では、複数の電動機が、離れた場所に配置された複数のサーボドライバにてPWM駆動されるシステム(ロボットとその制御装置とで構成されたシステム等)が使用されている。そのようなシステムには、電動機・サーボドライバ間の長いケーブルからの放射ノイズを低減するために、スイッチングスピードを速くできない、電動機・サーボドライバ間の接続に多数のケーブルが必要とされる、といった問題がある。
【0003】
各電動機の近傍に、サーボドライバからコンバータを除去した装置(以下、モータ制御装置と表記する)を配置し、1つの直流電源からDCバスにて各モータ制御装置に電力を供給する構成を採用しておけば、上記問題が発生しないようにすることが出来る。ただし、この構成を採用したシステムでは、DCバス側のLC回路とモータ制御装置側とが干渉してDCバスの電圧が発振する場合がある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】横尾 真志, 近藤 圭一郎,「直流電気鉄道車両におけるベクトル制御された誘導電動機駆動システムのダンピング制御系設計法」、電気学会論文誌D,Vol.135 No.6 pp.622-631(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、1つ以上のモータ制御装置に電力を供給する電力供給路の電圧の発振を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点に係るコネクタは、一対の入力端子と、前記一対の入力端子とそれぞれ電気的に接続された一対の出力端子と、前記一対の入力端子と前記一対の出力端子との間に挿入されたフィルタ回路であって、前記一対の入力端子と前記一対の出力端子との間を流れる直流の電圧変動又は電流変動を検知し、検知結果に基づき、前記直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように、自フィルタ回路のインピーダンスを調整するフィルタ回路と、を備える。
【0007】
1つ以上のモータ制御装置に電力を供給する電力供給路の電圧の発振は、モータ側(インバータ回路とサーボモータとからなる部分)のインピーダンスが、電源側(電力供給路側)のインピーダンスよりも小さい場合に生じるものである。上記コネクタを用いて電力供給路を構成しておけば、電源側のインピーダンスのピーク値を小さくすることが可能となるため、電力供給路の電圧の発振を抑制することができる。
【0008】
コネクタ内のフィルタ回路の回路構成は、特に限定されない。例えば、フィルタ回路は、前記一対の入力端子と前記一対の出力端子とを接続するプラス側の配線とマイナス側の配線との間に配置された、コンデンサと可変抵抗の直列接続体と、前記可変抵抗の抵抗値を、前記プラス側の配線又は前記マイナス側の配線の電圧変動又は電流変動の検知結果に基づき、前記直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように制御する制御部と、を備えていても良い。また、フィルタ回路は、前記一対の入力端子と前記一対の出力端子とを接
続するプラス側の配線及びマイナス側の配線の一方の配線に挿入された可変抵抗と、前記可変抵抗の抵抗値を、前記一方の配線の電圧変動又は電流変動の検知結果に基づき、前記電圧変動又は前記電流変動が抑制されるように制御する制御部と、を備えても良い。これらの構成を採用する場合、可変抵抗は、前記制御部により能動領域で動作するよう制御されるトランジスタであっても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1つ以上のモータ制御装置へ電力を供給する電力供給路の電圧発振を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るサーボDC給電システムの概略構成の説明図である。
【
図2】
図2は、サーボDC給電システム内のモータ制御装置の概略構成の説明図である。
【
図3】
図3は、サーボDC給電システムの電力給電路に用いられているコネクタの概略構成の説明図である。
【
図4】
図4は、サーボDC給電システムの等価回路の説明図である。
【
図5】
図5は、
図4に示した等価回路が不安定となる領域を説明するための図である。
【
図6】
図6は、フィルタ回路の機能を説明するための図である。
【
図7】
図7は、フィルタ回路の他の構成例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1に、本発明の一実施形態に係るサーボDC給電システムの概略構成を示し、
図2に、サーボDC給電システムに含まれるモータ制御装置10の概略構成を示す。
【0013】
図1に示してあるように、本実施形態に係るサーボDC給電システムは、直流電源30と複数のモータ制御装置10との間を、電力供給路35にて接続したシステムである。
【0014】
直流電源30は、所定の直流電圧を出力する電源である。
図1には、直流電源30として、三相交流電源50からの三相交流を直流電圧に変換する装置を示してあるが、直流電源30は、単相交流を直流電圧に変換する装置であっても良い。また、直流電源30は、ダイオードを組み合わせた整流回路(例えば、全波整流回路)であっても、スイッチング素子が用いられたAC-DCコンバータ(例えば、電源回生コンバータ)であっても良い。さらに、直流電源30は、二次電池であっても良い。
【0015】
モータ制御装置10は、PLC(Programmable Logic Controller)等の上位装置からの指令(位置指令、速度指令等)に従って、サーボモータ40(以下、単に、モータ40とも表記する)を制御する装置である。
【0016】
図2に示してあるように、モータ制御装置10は、インバータ回路11と制御部12とを備える。インバータ回路11は、電力供給路35を介して入力される直流電源30からの直流電圧を三相交流に変換するための回路である。インバータ回路11は、プラス側の電力線とマイナス側の電力線との間に、U相用のレグ、V相用のレグ及びW相用のレグを並列接続した構成を有しており、モータ制御装置10には、インバータ回路11の各レグの出力電流を測定するための電流センサ28が設けられている。
【0017】
制御部12は、上位装置(PLC等)からの指令に従って、インバータ回路11をPWM(Pulse Width Modulation)制御するユニットである。制御部12は、プロセッサ(マイクロコントローラ、CPU等)とその周辺回路とから構成されており、制御部12は、各電流センサ28からの信号、モータ40に取り付けられたエンコーダ41(アブソリュートエンコーダやインクリメンタルエンコーダ)からの信号等が入力されている。
【0018】
電力供給路35(
図1)は、直流電源30からの電力(電流)を、サーボDC給電システム内の各モータ制御装置10に分配供給できるように、複数の電力ケーブルを、コネクタ20、55を介して接続した給電路である。
図1に示してあるように、電力供給路35の各モータ制御装置10との接続部分(各モータ制御装置10の電源端子間)には、通常、平滑コンデンサ18が設けられる。
【0019】
電力供給路35の構成要素として使用されているコネクタ55は、通常の(既存の)コネクタである。
【0020】
コネクタ20は、本サーボDC給電システム用に開発されたコネクタである。このコネクタ20は、
図3に示した構成を有している。
【0021】
すなわち、コネクタ20は、上流側(直流電源30側)の電力ケーブルを接続するための一対の入力端子21p、21mを備える。なお、入力端子21pが、プラス側の入力端子であり、入力端子21mがマイナス側の入力端子である。
【0022】
コネクタ20は、下流側の電力ケーブルを接続するための一対の出力端子22p、22mも備える。図示してあるように、出力端子22p、22mは、それぞれ、配線27p、27mにより、入力端子21p、21mと接続されている。
【0023】
コネクタ20の配線27p、27m間には、コンデンサ23とトランジスタ24の直列接続体が配置されている。また、コネクタ20内には、振動電圧検出回路25と駆動回路26とが設けられている。以下、コネクタ20内の、コンデンサ23、トランジスタ24、振動電圧検出回路25及び駆動回路26からなる回路のことを、フィルタ回路とも表記する。
【0024】
フィルタ回路内の駆動回路26は、振動電圧検出回路25からの制御信号に応じた、トランジスタ24が能動領域(線形領域)で動作することになる電圧をトランジスタ24のゲートに印加する回路である。
【0025】
フィルタ回路内の振動電圧検出回路25は、配線27pの電圧変動(所定時間内の電圧変化量)を検出し、予め定められている閾値以上の電圧変動を検出したときに、トランジスタ24の抵抗が上昇する方向に駆動回路26への制御信号のレベルを変更する回路である。なお、振動電圧検出回路25は、上位装置からの指示に従って、駆動回路26への制御信号のレベルを変更する機能、及び、配線27pの電圧変動が無いとみなせる状態が規定時間継続した場合に、トランジスタ24の抵抗が下降する方向に駆動回路26への制御信号のレベルを変更する機能も有している。
【0026】
本実施形態に係るサーボDC給電システムの電力供給路35には、上記構成を有するコネクタ20が用いられている。従って、サーボDC給電システムでは、電力供給路35の電圧の発振が抑制されることになる。
【0027】
具体的には、コネクタ20が用いられていない電力供給路35を備えたサーボDC給電システム(
図1参照)は、モータ側(複数のモータ制御装置10と複数のモータ40から
なる部分)のインピーダンスをZmと表記すると、
図4に示した等価回路で表すことが出来る。この
図4において、L
1は、電力供給路35(コネクタ20が用いられていないもの)のインダクタンス、r
Lは、L
1の直列抵抗である。また、C
1は、電力供給路35のキャパシタンスと平滑コンデンサ18のキャパシタンスの合成キャパシタンス、r
Cは、C
1の直列抵抗である。
【0028】
この等価回路(
図4)における電源側の出力インピーダンスのピーク値Z
o-peakは、以下の式により表される。
【0029】
【0030】
そして、
図5に模式的に示してあるように、“Z
o-peak>Zm”が成立する場合に、電力供給路35の電圧が不安定となる。従って、Z
o-peak値を減少させれば、電力供給路35の電圧が不安定になること(発振すること)を抑止することができる。
【0031】
コネクタ20(
図3)内に設けられている、コンデンサ23とトランジスタ24の直列接続体は、インピーダンスが可変な回路である。そして、コネクタ20内には、トランジスタ24の抵抗を電力供給路35の電圧が不安定とならない抵抗に制御する回路(振動電圧検出回路25及び駆動回路26)も設けられている。従って、電力供給路35にコネクタ20が用いられている本実施形態に係るサーボDC給電システムでは、
図6に模式的に示してあるように、コネクタ20が用いられていないシステムよりも、Z
o-peak値を低くすることが出来る。そして、その結果として、電力供給路35の電圧が不安定になること(発振すること)が抑止されることになる。
【0032】
《変形形態》
上記したサーボDC給電システム、コネクタ20は、各種の変形が可能なものである。例えば、
図1に示したサーボDC給電システムの電力供給路35は、1つのコネクタ20が使用されたものであるが、電力供給路35に複数のコネクタ20を使用しても良い。また、電力供給路35は、直流電源30からの電力(電流)を、サーボDC給電システム内の全モータ制御装置10に供給できるものであれば、
図1に示したものとは異なる構成(接続形態)のものであっても良い。
【0033】
また、コネクタ20(
図3)内のフィルタ回路として、上記したものとは異なる構成の回路を使用しても良い。例えば、フィルタ回路(コンデンサ23、トランジスタ24、振動電圧検出回路25及び駆動回路26からなる回路)のトランジスタ24の代わりに、複数の抵抗器と、それらの抵抗器の中のいずれかをコンデンサ23の一端とマイナス側の配線27m間に挿入するセレクタとを設けても良い。また、フィルタ回路のコンデンサ23及びトランジスタ24の代わりに、容量を電気的に制御できるバリアブルキャパシタを用いても良い。
【0034】
コネクタ20に、
図7に示した構成のフィルタ回路、すなわち、プラス側の配線27pに挿入されたトランジスタ24と、当該トランジスタ24の抵抗を制御する振動電圧検出回路25及び駆動回路26とで構成されたフィルタ回路を搭載しても良い。
図7に示した構成のフィルタ回路を、マイナス側の配線27mにトランジスタ24が挿入されている回路に変形しても良い。振動電圧検出回路25を、配線27p又は配線27mの電流変動を検出する回路としても良い。
【0035】
また、電力供給路35の電圧変動時には、電力供給路35を流れる電流も変動する。そして、電流変動を抑制すれば、電圧変動が抑制されるのであるから、コネクタ20内のフィルタ回路は、電力供給路35の電流変動を検知して、当該電流変動が抑制されるように、自回路のインピーダンスを調整する回路であっても良い。コネクタ20内のフィルタ回路を、閾値を外部から設定可能な回路とした上で、サーボDC給電システムを、コネクタ20内のフィルタ回路に設定する閾値を調整しながら運用されるシステムに変形しておいても良い。
【0036】
《付記1》
一対の入力端子(21p、21m)と、
前記一対の入力端子(21p、21m)とそれぞれ電気的に接続された一対の出力端子(22p、22m)と、
前記一対の入力端子(21p、21m)と前記一対の出力端子(22p、22m)との間に挿入されたフィルタ回路(22,23,24,25)であって、前記一対の入力端子(21p、21m)と前記一対の出力端子(22p、22m)との間を流れる直流の電圧変動又は電流変動を検知し、検知結果に基づき、前記直流の電圧変動又は電流変動が抑制されるように、自フィルタ回路のインピーダンスを調整するフィルタ回路(22,23,24,25)と、
を備えるコネクタ(20)。
【符号の説明】
【0037】
10 モータ制御装置
11 インバータ回路
12 制御部
18 平滑コンデンサ
20 コネクタ
21 入力端子
22 出力端子
23 コンデンサ
24 トランジスタ
25 振動電圧検出回路
26 駆動回路
28 電流センサ
30 直流電源
35 電力供給路
40 サーボモータ
41 エンコーダ
50 三相交流電源