(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/22 20180101AFI20240220BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20240220BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240220BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C09J7/22
C09J7/29
C09J7/38
C09J133/00
(21)【出願番号】P 2019195480
(22)【出願日】2019-10-28
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】由良 武志
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/198827(WO,A1)
【文献】特開昭53-022541(JP,A)
【文献】特開昭50-098939(JP,A)
【文献】実開平07-019347(JP,U)
【文献】特開平09-118861(JP,A)
【文献】特開2006-028416(JP,A)
【文献】特表2002-544364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム層と、
前記フィルム層の一方の面側に形成された粘着剤層とを備え、
前記フィルム層を構成する樹脂は、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂又はポリカーボネート樹脂であり、
前記フィルム層は、第一基材層と、前記第一基材層の前記粘着剤層側の面側に配置された第二基材層と、前記第一基材層と前記第二基材層との間に配置された絵柄層とを備え、
前記第一基材層の厚さは、50μm以上150μm以下であり、
前記第二基材層の厚さは、50μm以上100μm以下であり、
前記フィルム層のシャルピー衝撃値が、-10℃~40℃の温度範囲で20kJ/m
2以上であることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層の前記フィルム層と反対の面側に形成された複数の溝部を備えることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層の最大高低差は、前記粘着剤層の最厚部の厚さの3%以上50%以下であることを特徴とする請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層は、アクリル系感圧接着剤を含み、最厚部の厚さが50μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム層の一方の面側に粘着剤層が形成された粘着シートが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の粘着シートでは、粘着剤層に剥離シートを貼り付けておき、粘着シートを被着体に貼り付ける際に、粘着剤層から剥離シートを剥離させることで、フィルム層に粘着剤を塗布する手間を省くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような粘着シートを壁紙等に用いる場合、一般的な施工環境や使用環境で有り得る高温環境及び低温環境で十分な弾性と衝撃強度とを有することが望まれる。
本発明は、上記のような点に着目したもので、一般的な施工環境や使用環境で有り得る高温環境及び低温環境で十分な弾性と衝撃強度とを有する粘着シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、(a)フィルム層と、(b)フィルム層の一方の面側に形成された粘着剤層とを備え、(c)フィルム層を構成する樹脂は、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂又はポリカーボネート樹脂であり、(d)フィルム層は、シャルピー衝撃値が-10℃~40℃の温度範囲で20kJ/m2以上である粘着シートであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、フィルム層を構成する樹脂が、耐熱性と機械的性質に優れた樹脂であり、また、フィルム層のシャルピー衝撃値が-10℃~40℃の温度範囲で20kJ/m2以上であるため、一般的な施工環境や使用環境で有り得る高温環境及び低温環境で十分な弾性と衝撃強度とを有する粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る粘着シートを表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(構成)
本実施形態に係る粘着シート1は、
図1に示すように、フィルム層2と、フィルム層2の一方の面(以下、「裏面2b」と呼ぶ)側に形成された粘着剤層3とを備えている。また、粘着剤層3のフィルム層2と反対の面(以下「裏面3b」と呼ぶ)側には、剥離性シート4が貼り付けられている。粘着シート1は、例えば、壁紙に好適なものである。
【0010】
<フィルム層>
フィルム層2は、第一基材層5と、第一基材層5の粘着剤層3側の面側に配置された第二基材層6と、第一基材層5と第二基材層6との間に配置された絵柄層7とを備えるようにした。フィルム層2は、-10℃~40℃の環境下で、フィルム層2の試験片にJIS K7111(プラスチック1-シャルピー衝撃特性の求め方―)で定められた試験法を実施した場合に、試験片のシャルピー衝撃値が20kJ/m2以上となるように形成する。なお、フィルム層2の第二基材層6側の表面5aには、表面保護層8を配置してもよい。
【0011】
<第一基材層>
第一基材層5は、第二基材層6とともに粘着シート1のベースとなるシート状の部材である。第一基材層5を構成する樹脂としては、ポリプロピレン樹脂を用いる。また、第一基材層5は、絵柄層7を視認可能な透明性を有する。
また、第一基材層5の厚さは、目標とする十分な弾性と耐衝撃性を付与しつつ、防火性能等の他の諸物性を満たすために、50μm以上150μm以下とすることが好ましい。50μmより小さい場合には、十分な弾性と耐衝撃性を付与できない。また、150μmより大きい場合には、防火性能等の他の諸物性が満たされない。
【0012】
<第二基材層>
第二基材層6は、第一基材層5とともに粘着シート1のベースとなるシート状の部材である。第二基材層6を構成する樹脂としては、第二基材層6のフィルムと同様に、耐熱性、耐寒性、及び機械的強度の点から、ポリプロピレン樹脂を用いる。また、第二基材層6の厚さは、目標とする十分な弾性と耐衝撃性とを付与しつつ、防火性能等の他の諸物性を満たすために、50μm以上100μm以下とすることが好ましい。50μmより小さい場合には、十分な弾性と耐衝撃性を付与できない。また、100μmより大きい場合には、防火性能等の他の諸物性が満たされない。
【0013】
<絵柄層>
絵柄層7は、絵柄模様により粘着シート1の表層側を加飾するための層である。絵柄層7としては、第二基材層6の表面5aに絵柄模様を印刷することで形成される、印刷インキの塗膜を用いる。印刷インキは、壁紙に一般的に求められるような耐光性、発色性及び使用成分の安全性の要件を満たしていれば、特に限定されるものではない。安全性の要件としては、例えば、顔料や添加剤として重金属や硫黄化合物を含まない等が挙げられる。
【0014】
<表面保護層>
表面保護層8は、第一基材層5及び絵柄層7を保護するための層である。表面保護層8は、絵柄層7を視認可能な透明性を有するとともに、保護に必要な十分な強度、耐汚染性、耐候性等の物性を有する。表面保護層8としては、例えば、第一基材層5の絵柄層7と反対側の面(以下「表面7a」と呼ぶ)に、メチルエチルケトン等の溶媒とポリウレタン系樹脂とイソシアネート系の硬化剤とを含むコート剤を塗布・乾燥させた後に紫外線照射により硬化させることで形成される塗膜を用いる。また、表面保護層8を構成する樹脂としては、他にも、アクリル樹脂系コート剤等を用いてもよい。表面保護層8の坪量は、表面強度の高さの点から、2.0g/m2以上7.0g/m2以下とすることが好ましい。
【0015】
<粘着剤層>
粘着剤層3は、フィルム層2に粘着性をもたせるための層である。粘着剤層3の裏面3bには、複数の溝部9が形成されている。各溝部9は、粘着剤層3の外周部分で終端するか、或いは粘着剤層3の外周部分で終端する他の溝部9と連通している。これにより、粘着シート1を被着体に貼り付けるときに、粘着剤層3と被着体との間に閉じこめられた空気を周囲へ流出可能となっている。そして、空気が周囲に流出した後、溝部9の底部を被着体の表面と密着させ、溝部9させ消失可能となっている。 また、溝部9の底部を被着体の表面と密着させることで、耐衝撃性及び耐寒性を向上可能となっている。
【0016】
溝部9の断面形状としては、例えば、V字型、U字型、長方形型、台形型を採用できる。溝部9が占める体積は、例えば、粘着剤層3の直径500μmの円の面積当たり1×103μm3以上とする。溝部9の形成方法としては、例えば、フィルム層2の第二基材層6の裏面2bに粘着剤を均一に塗布した後に溝部9の形成用の凹凸を有する型を用いて型押することで、溝部9を形成する方法を採用できる。また、例えば、溝部9の形成用の凹凸を有する剥離性シート4を貼り付けることで、溝部9を形成する方法も採用できる。
【0017】
粘着剤層3を構成する粘着剤組成物としては、アクリル酸又はアクリル酸エステルを出発原料とするアクリル系感圧接着剤を用いる。アクリル系感圧接着剤としては、例えば、米国特許第3239478号明細書、同第3935338号明細書、同第5169727号明細書、再発行特許第24906号明細書、米国特許第4952650号明細書及び同第4181752号明細書に開示されている接着剤を採用できる。また、粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコーティング、ナイフコーティングを採用できる。
【0018】
また、粘着剤層3の最厚部の厚さ、つまり、溝部9が存在しない部分の厚さは、耐衝撃性の低下及び耐寒性の低下の抑制のために、粘着剤組成物の塗布後に乾燥を経た段階において、50μm以上100μm未満であることが好ましい。50μm未満である場合には、耐衝撃性の低下及び耐寒性の低下を生じる。また、100μmより大きい場合には、ISO5660(発熱性試験法)による総発熱量が大きくなり、防火性能の低下を生じる。
また、粘着剤層3の最大高低差は、耐衝撃性及びエア抜き性能の点から、粘着剤層3の最厚部の厚さの3%以上50%以下であることが好ましい。3%未満である場合には、粘着剤層3と被着体との間に閉じこめられた空気を流出させることができず、エア抜き性能が低下する。一方、50%より大きい場合には、粘着シート1の耐衝撃性が低下する。
【0019】
<剥離性シート>
剥離性シート4は、粘着剤層3に貼り付けられるシート状の部材である。剥離性シート4としては、例えば、プラスチックフィルムや紙等の適宜な基材の表面にシリコーン樹脂等を主体とする剥離性層を積層した積層体、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィン樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを採用できる。剥離性シート4の粘着剤層3側の面4aに、溝部9にはまり合う凹凸を形成する方法としては、例えば、ローラ状の金型を用いて凹凸を型押しする方法、ローラ状の金型と流動性の樹脂組成物とを用いて、プラスチックフィルム等の表面に樹脂製の凹凸を形成する方法を採用できる。
【0020】
以上説明したように、本実施形態に係る粘着シート1は、フィルム層2と、フィルム層2の一方の面2b側に形成された粘着剤層3とを備えるようにした。また、フィルム層2を構成する樹脂を、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂又はポリカーボネート樹脂とした。すなわち、耐熱性と機械的性質に優れた樹脂とした。また、フィルム層2を、シャルピー衝撃値が-10℃~40℃の温度範囲で20kJ/m2以上となるようにした。それゆえ、一般的な施工環境や使用環境で有り得る高温環境及び低温環境で十分な弾性と衝撃強度とを有する粘着シート1を提供できる。
すなわち、本実施形態に係る粘着シート1では、施工時や日常生活時にコンセントや照明等の電気系統の高熱に耐えることができ、施工した粘着シート1の変形や劣化を抑制できる。また、高緯度地帯や冬場の低温環境でも、十分な弾性と耐衝撃性を発揮できる。
【0021】
また、本実施形態に係る粘着シート1では、粘着剤層3のフィルム層2と反対の面3b側に複数の溝部9を備えるようにしたため、耐衝撃性及びエア抜き性能を向上できる。
また、本実施形態に係る粘着シート1では、粘着剤層3の最大高低差を粘着剤層3の最厚部の厚さの3%以上50%以下としたため、耐衝撃性及びエア抜き性能を向上できる。
また、本実施形態に係る粘着シート1では、粘着剤層3が、アクリル系感圧接着剤を含み、最厚部の厚さを50μm以上100μm以下としたため、低温環境での耐衝撃性を向上するとともに、防火性能を向上することができる。
【0022】
また、本実施形態に係る粘着シート1では、フィルム層2を、第一基材層5と、第一基材層5の粘着剤層3側の面側に形成された第二基材層6と、第一基材層5と第二基材層7との間に配置された絵柄層7とを備え、第一基材層5の厚さを50μm以上150μm以下とし、第二基材層6の厚さを50μm以上100μm以下とした。それゆえ、十分な弾性及び耐衝撃性を付与しつつ、防火性能等の他の諸物性を向上することができる。
ここで、ポリプロピレン樹脂は、連続耐熱温度が100℃以上であるが、脆化温度が0℃前後と比較的高く、低温域では容易に破損する欠点を有する。そのため、第一基材層5及び第二基材層6としてポリプロピレンフィルムを採用した場合、耐熱性が向上するが、耐寒性が低下する。そこで、本発明の発明者らは、耐熱性に加え耐寒性にも優れた粘着シート1を開発するために鋭意研究を行った結果、第一基材層5及び第二基材層6の樹脂をポリプロピレン樹脂等とし、粘着剤層3に溝部9を形成し、粘着剤層3にアクリル系感圧接着剤を含ませ、粘着剤層3の最厚部の厚さを50μm以上とする粘着シート1を想到した。
【実施例1】
【0023】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
<実施例1>
まず、第二基材層6として、厚さ70μmの着色ポリプロピレンフィルム(リケンテクノス製、OW)を用意した。続いて、第二基材層6の表面5aに、グラビア印刷により、布目模様を印刷して絵柄層7を形成した。印刷インキとしては、アクリル樹脂系油性インキ(東洋インキ製造(株)製、商品名:V351UR-Tシリーズ)を用いた。続いて、第二基材層6の表面5aに、第一基材層5として、厚さ80μmのポリプロピレンフィルム((株)プライムポリマー製、CPS-DB)をラミネートした。続いて、第一基材層5の表面7aに、グラビア印刷により、アクリル樹脂系コート剤(大日精化工業(株)製、W-480E)を塗布して表面保護層8を形成した。ポリウレタン樹脂系コート剤の塗布量は、乾燥重量で6.0g/m2とした。これにより、フィルム層2を作製した。
【0025】
続いて、フィルム層2の裏面2bに、コーティング機により、アクリル系感圧接着剤(東洋インキ製造(株)、BPS6113)の塗布・乾燥を行って、粘着剤層3を形成した。粘着剤層3の乾燥後の最厚部の厚さは、80μmとした。続いて、剥離性シート4として、厚さ120μmのサンエー化研(株)製のSHA80を用意した。SHA80は、ポリプロピレンフィルム層の上層にシリコーン樹脂等を主体とする剥離性層を積層し、ポリプロピレンフィルム層の下層に紙層をラミネートしたシートである。続いて、剥離性シート4にエンボス加工を行って、剥離性シート4に溝部9の形成用の凹凸を形成した。凹凸の最大高低差は、30μmとした。続いて、粘着剤層3に剥離性シート4を加圧接着した。これにより、粘着剤層3の裏面3bに複数の溝部9を形成して、実施例1の粘着シート1を作製した。溝部9の最大高低差(溝部9の最深部の深さ)は、30μmとした。すなわち、粘着剤層3の最大高低差を、粘着剤層3の最厚部の厚さの37.5%とした。
【0026】
<実施例2>
実施例2では、第一基材層5の厚さ、及び第二基材層6の厚さのそれぞれを50μmとした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例2の粘着シート1を作製した。
<実施例3>
実施例3では、粘着剤層3の最厚部の厚さを50μmとした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例3の粘着シート1を作製した。
<実施例4>
実施例4では、第一基材層5の厚及び第二基材層6の厚さのそれぞれを50μmとし、粘着剤層3の最厚部の厚さを50μmとした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例4の粘着シート1を作製した。
【0027】
<実施例5>
実施例5では、第一基材層5の厚さを150μmとし、第二基材層6の厚さを100μmとした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例5の粘着シート1を作製した。
<実施例6>
実施例6では、溝部9の最大高低差(溝部9の最深部の深さ)を2.4μmとした。すなわち、粘着剤層3の最大高低差を粘着剤層3の最厚部の厚さの3%とした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例6の粘着シート1を作製した。
<実施例7>
実施例7では、溝部9の最大高低差(溝部9の最深部の深さ)を40μmとした。すなわち、粘着剤層3の最大高低差を粘着剤層3の最厚部の厚さの50%とした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例7の粘着シート1を作製した。
【0028】
<実施例8>
実施例8では、第一基材層5の厚さを45μmとした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例8の粘着シート1を作製した。
<実施例9>
実施例9では、第二基材層6の厚さを45μmとした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例9の粘着シート1を作製した。
<実施例10>
実施例10では、第一基材層5の厚さを155μmとした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例10の粘着シート1を作製した。
【0029】
<実施例11>
実施例11では、第二基材層6の厚さを105μmとした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例11の粘着シート1を作製した。
<実施例12>
実施例10では、溝部9の最大高低差(溝部9の最深部の深さ)を0.8μmとした。すなわち、粘着剤層3の最大高低差を粘着剤層3の最厚部の厚さの1%とした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例12の粘着シート1を作製した。
<実施例13>
実施例11では、溝部9の最大高低差(溝部9の最深部の深さ)を44μmとした。すなわち、粘着剤層3の最大高低差を粘着剤層3の最厚部の厚さの55%とした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例13の粘着シート1を作製した。
【0030】
<実施例16>
実施例16では、フィルム層2を構成する樹脂をアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂とした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例16の粘着シート1を作製した。
<実施例17>
実施例17では、フィルム層2を構成する樹脂をポリカーボネート樹脂とした。それ以外は実施例1と同様にして、実施例17の粘着シート1を作製した。
【0031】
<比較例1>
比較例1では、第一基材層5として、厚さ80μmのポリ塩化ビニルフィルム(リケンテクノス製、NUSEN)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、比較例1の粘着シート1を作製した。
<比較例2>
比較例2では、第二基材層6として、厚さ80μmのポリ塩化ビニルフィルム(リケンテクノス製、F92071SE)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、比較例2の粘着シート1を作製した。
<比較例3>
比較例3では、第一基材層5として、厚さ80μmのポリ塩化ビニルフィルム(リケンテクノス製、NUSEN)を用い、第二基材層6として、厚さ80μmのポリ塩化ビニルフィルム(リケンテクノス製、F92071SE)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、比較例3の粘着シート1を作製した。
【0033】
<評価>
実施例1~13、16、17、比較例1~3の粘着シート1に対して、以下の性能評価を行った。
[耐衝撃性]
耐衝撃性の評価では、-10℃、40℃の環境下で、フィルム層2の試験片にJIS K7111(プラスチック1-シャルピー衝撃特性の求め方-)で定められた試験法を実施し、試験片のシャルピー衝撃値を計測した。そして、シャルピー衝撃値が25kJ/m2以上である場合を合格「○」とし、シャルピー衝撃値が20~25kJ/m2である場合を合格「△」としシャルピー衝撃値が20kJ/m2未満である場合を不合格「×」とした。
【0034】
[耐熱性]
耐熱性の評価では、試験片を9.5mmの石膏ボードに施工し、100℃の熱風オーブン内に1か月静置し、試験片の変色及び変形の有無を目視で判定した。そして、変色及び変形がない場合を合格「○」とし、変色又は変形がある場合を不合格「×」とした。
[耐寒性]
耐寒性の評価では、試験片を-10℃で5分間冷却した後、試験片に重さ2.5kgの落下体を落下させ、試験片の折り曲げ部のひび割れの有無を目視で判定した。そして、ひび割れがない場合を合格「○」とし、ひび割れがある場合を不合格「×」とした。
【0035】
[防火性能]
防火性能では、試験片にISO5660(発熱性試験法)で定められた試験法を実施し、試験片の総発熱量を計測した。そして、総発熱量が6.0MJ/m2以下である場合を合格「○」とし、総発熱量が6.0~7.2MJ/m2の範囲内である場合を合格「△」とし、総発熱量が7.2MJ/m2より大きい場合を不合格「×」とした。
[エア抜き性能]
エア抜き性能では、試験片を石膏ボードに施工し、試験片と石膏ボードとの間の空気の有無を目視で判定した。そして、空気がない場合を合格「○」とし、空気があるが僅かである場合を合格「△」とし、多量の空気がある場合を不合格「×」とした。
【0036】
<評価結果>
評価結果を表1に示す。表1では、「耐衝撃性」「耐熱性」「耐寒性」「防火性能」「エア抜き性能」の評価結果に加え、これらの評価結果を基にした「総合評価」の結果も示した。「総合評価」では、「○」「△」を合格とし、「×」を不合格とする。
【0037】
【0038】
上記表1に示すように、実施例1~13、16、17の粘着シート1では、「耐衝撃性」「耐熱性」「耐寒性」「防火性能」「エア抜き性能」の評価結果は合格「○」「△」となり、総合評価は合格「○」「△」となった。具体的には、実施例1~7、16、17では、総合評価が「○」の合格となった。また、実施例8では、第一基材層5の厚さが45μmである(薄い)ため、「耐衝撃性」「耐寒性」の評価結果が「△」の合格となり、総合評価が「△」の合格となった。また同様に、実施例9では、第二基材層6の厚さが45μm(薄い)であるため、「耐衝撃性」「耐寒性」の評価結果が「△」の合格となり、総合評価が「△」の合格となった。
【0039】
また、実施例10では、第一基材層5の厚さが155μmである(厚い)ため、「防火性能」の評価結果が「△」の合格となり、総合評価が「△」の合格となった。また同様に、実施例11では、第二基材層6の厚さが100μmである(厚い)ため、「防火性能」の評価結果が「△」の合格となり、総合評価が「△」の合格となった。
また、実施例12では、粘着剤層3の最大高低差が粘着剤層3の最厚部の厚さの1%である(粘着剤層3に対する溝部9の深さが浅い)ため、「エア抜き性能」の評価結果が「△」の合格となり、総合評価が「△」の合格となった。また同様に、実施例13では、粘着剤層3の最大高低差が粘着剤層3の最厚部の厚さの55%である(溝部9の深さが深い)ため、「耐衝撃性」が「△」の合格となり、総合評価が「△」の合格となった。
【0040】
一方、比較例1、2、3の粘着シート1では、「耐衝撃性」「耐熱性」「耐寒性」「防火性能」「エア抜き性能」の何れかが不合格「×」となり、総合評価は不合格「×」となった。具体的には、比較例1~3では、第一基材層5及び第二基材層6の何れかがポリ塩化ビニルフィルムであるため、「耐熱性」の評価結果が不合格「×」となり、総合評価が不合格「×」となった。
【0041】
したがって、実施例1~13、16、17の粘着シート1は、比較例1~3の粘着シート1と異なり、「耐衝撃性」「耐熱性」「耐寒性」が高いことが確認できた。すなわち、一般的な施工環境や使用環境で有り得る高温環境及び低温環境で十分な弾性と衝撃強度を有することが確認された。また、実施例1~7、16、17の粘着シート1では、実施例8~11の粘着シート1と異なり、「耐衝撃性」「耐寒性」「防火性能」が高いことが確認できた。また、実施例12、13の粘着シート1と異なり、「耐衝撃性」「エア抜き性能」が高いことが確認できた。
【符号の説明】
【0042】
1…粘着シート、2…フィルム層、3…粘着剤層、4…剥離性シート、5…第二基材層、6…絵柄層、7…第一基材層、8…表面保護層、9…溝部