(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】開閉部材のロック機構、媒体搬送装置、原稿読取装置、及び記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/13 20060101AFI20240220BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20240220BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B41J29/13
B65H5/06 F
H04N1/00 519
(21)【出願番号】P 2019195976
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】森 和紀
(72)【発明者】
【氏名】右田 孝司
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-040127(JP,A)
【文献】特開2006-030219(JP,A)
【文献】特開2000-240616(JP,A)
【文献】特開平11-352859(JP,A)
【文献】特開2011-248462(JP,A)
【文献】特開2006-076287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/13
B65H 5/06
H04N 1/00
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に設けられた被係合部と、
前記装置本体に回動可能に設けられ、前記装置本体を開閉する開閉部材と、
前記開閉部材に回動可能に設けられ、前記被係合部と係合する係合部を備え、前記係合部と前記被係合部とを係合させる
操作者の操作によって前記開閉部材を閉状態とする操作部材と、
前記係合部に形成され、前記係合部が前記被係合部に向かう回動方向において、下流側の部位の第1回動半径が上流側の部位の第2回動半径よりも大径とされ、前記被係合部と接触する接触面と、
を有し、
前記被係合部と前記接触面とが接触した状態から、前記操作部材が前記回動方向に回動することで、前記被係合部と前記係合部とが係合可能であることを特徴とする開閉部材のロック機構。
【請求項2】
装置本体に設けられた被係合部と、
前記装置本体に回動可能に設けられ、前記装置本体を開閉する開閉部材と、
前記開閉部材に回動可能に設けられ、前記被係合部と係合する係合部を備え、前記係合部と前記被係合部とを係合させる操作によって前記開閉部材を閉状態とする操作部材と、
前記係合部に形成され、前記係合部が前記被係合部に向かう回動方向において前記操作部材に作用する操作力を、前記被係合部との接触によって前記開閉部材が閉じる方向の力に変換する接触面と、
を有し、
前記操作力は、
操作者が前記操作部材を操作する力であり、前記操作部材を前記回動方向に回動させる力であることを特徴とする開閉部材のロック機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の開閉部材のロック機構において、
前記接触面は、傾斜面であり、
前記係合部の前記回動方向における前記接触面よりも上流側に位置する部位には、前記係合部の回動軌跡の接線との成す第1角度が、前記接触面における前記係合部の回動軌跡の接線との成す第2角度よりも小さい係合面が形成されている、
ことを特徴とする開閉部材のロック機構。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の開閉部材のロック機構において、
前記操作部材は、前記開閉部材が閉状態の場合に前記開閉部材の内側に収容され、前記被係合部と前記接触面とが接触した場合に前記開閉部材よりも外側に突出する、
ことを特徴とする開閉部材のロック機構。
【請求項5】
請求項4に記載の開閉部材のロック機構において、
前記開閉部材には、被押圧部が設けられ、
前記装置本体には、前記被押圧部と接触して前記開閉部材を開放側へ押圧することで、前記被係合部と前記接触面とが接触する状態を保持させる押圧部が設けられている、
ことを特徴とする開閉部材のロック機構。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の開閉部材のロック機構において、
前記開閉部材には、被押圧部が設けられ、
前記装置本体には、前記被押圧部と接触して前記開閉部材を開放側へ押圧することで、前記被係合部と前記接触面とが接触する状態を保持させる押圧部が設けられている、
ことを特徴とする開閉部材のロック機構。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の開閉部材のロック機構において、
前記押圧部は、前記開閉部材からの荷重と釣り合う押圧力を、前記開閉部材に作用させることで、前記被係合部と前記接触面とが接触する状態を保持させる、
ことを特徴とする開閉部材のロック機構。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の開閉部材のロック機構において、
前記開閉部材には、前記操作部材に前記回動方向の回動力を付与する付与部材が設けられている、
ことを特徴とする開閉部材のロック機構。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の開閉部材のロック機構において、
前記操作部材には、前記操作部材の操作を促す表示がされた表示部が設けられ
、
前記表示部は、前記操作者から視認可能な位置に設けられている、
ことを特徴とする開閉部材のロック機構。
【請求項10】
請求項9に記載の開閉部材のロック機構において、
前記操作部材は、把持されながら操作される把持部を有し、
前記表示部は、前記把持部の上面に設けられている、
ことを特徴とする開閉部材のロック機構。
【請求項11】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の開閉部材のロック機構において、
前記操作部材は、前記回動方向において前記係合部よりも上流側に配置され且つ把持されながら操作される把持部を有し、
前記操作部材の回動中心から前記接触面までの第1距離よりも、前記回動中心から前記把持部の先端までの第2距離の方が長い、
ことを特徴とする開閉部材のロック機構。
【請求項12】
請求項1
1に記載の開閉部材のロック機構において、
前記被係合部は、前記係合部よりも前記開閉部材の幅方向の外側に位置し、
前記把持部は、前記幅方向の内側へ向けて延びている、
ことを特徴とする開閉部材のロック機構。
【請求項13】
請求項1から請求項1
2のいずれか1項に記載の開閉部材のロック機構と、
前記開閉部材が前記装置本体を閉じることで形成される搬送路に設けられ、媒体を搬送する搬送部材と、
を有することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項14】
請求項1
3に記載の媒体搬送装置と、
前記媒体としての原稿の情報を読み取る読取部と、
を有することを特徴とする原稿読取装置。
【請求項15】
請求項1
3に記載の媒体搬送装置又は請求項1
4に記載の原稿読取装置と、
受け取った情報に基づいて、媒体に情報を記録する記録部と、
を有することを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉部材のロック機構、媒体を搬送する媒体搬送装置、原稿を読み取る原稿読取装置、及び原稿読取装置を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉部材を装置本体にロックするロック機構が従来から知られており、その一例が特許文献1に示されている。
特許文献1記載のシート搬送装置は、カバーに設けられた操作レバーと連動する支軸を有しており、該支軸の一方端に設けられた鉤状部を本体内部に設けられた掛止部に引っ掛けることで、カバーをロックしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の構成では、開閉部材に対して下向きの大きな操作荷重を作用させて、鉤状部を掛止部に対してかなり下側へ移動させないと、鉤状部が掛止部の上側に乗り上げるなどしてしまい、鉤状部を掛止部に引っ掛け難い。つまり、開閉部材を閉じるのに必要な操作荷重が大きくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明に係る開閉部材のロック装置は、装置本体に設けられた被係合部と、前記装置本体に回動可能に設けられ、前記装置本体を開閉する開閉部材と、前記開閉部材に回動可能に設けられ、前記被係合部と係合する係合部を備え、前記係合部と前記被係合部とを係合させる操作によって前記開閉部材を閉状態とする操作部材と、前記係合部に形成され、前記係合部が前記被係合部に向かう回動方向において、下流側の部位の第1回動半径が上流側の部位の第2回動半径よりも大径とされ、前記被係合部と接触する接触面と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態1に係るプリンターを前方から見た斜視図。
【
図2】実施形態1に係るADFユニットの側断面図。
【
図3】実施形態1に係るADFユニットのカバー部を開放した状態を表す斜視図。
【
図4】実施形態1に係るADFユニットのカバー部の開状態における内部構成を表す側断面図。
【
図5】実施形態1に係るADFユニットのカバー部の開状態における内部構成を表す側断面図。
【
図6】実施形態1に係るカバー部及び操作部材の配置状態を表す部分拡大断面図。
【
図7】実施形態1に係るピン部材と操作部材との接触状態を表す概略図。
【
図8】実施形態1に係る操作レバーの表示部を表す斜視図。
【
図9】実施形態1に係るピン部材と操作部材との接触状態において作用する力を示す説明図。
【
図10】実施形態1に係る操作部材とピン部材との係合状態を表す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様に係る開閉部材のロック機構は、装置本体に設けられた被係合部と、前記装置本体に回動可能に設けられ、前記装置本体を開閉する開閉部材と、前記開閉部材に回動可能に設けられ、前記被係合部と係合する係合部を備え、前記係合部と前記被係合部とを係合させる操作によって前記開閉部材を閉状態とする操作部材と、前記係合部に形成され、前記係合部が前記被係合部に向かう回動方向において、下流側の部位の第1回動半径が上流側の部位の第2回動半径よりも大径とされ、前記被係合部と接触する接触面と、を有することを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記操作部材が操作によって回動中心周りに回動された場合に、前記回動方向における前記接触面の前記下流側の部位は、前記上流側の部位に先行して、前記被係合部と接触しようとする。
ここで、前記被係合部と前記接触面とが接触した場合に、先行する前記下流側の部位の前記第1回動半径が、後側となる前記上流側の部位の前記第2回動半径よりも大径となっていることで、前記接触面には、前記被係合部に対する前記回動中心側とは反対側に向かう力が作用する。このため、前記接触面は、前記被係合部の前記回動中心側とは反対側の周囲に対して回り込むように移動する。これにより、前記係合部と前記被係合部とが係合され、前記開閉部材が閉状態となる。
このように、前記係合部が前記被係合部の周囲に回り込むような力を前記操作部材に追加で与えなくても、前記操作部材を回動させることで、前記係合部が前記被係合部の周囲に案内されて回り込みながら係合し、前記開閉部材を閉じるので、前記開閉部材を閉じるのに必要な操作荷重が大きくなるのを抑制することができる。
【0009】
第2の態様に係る開閉部材のロック機構は、装置本体に設けられた被係合部と、前記装置本体に回動可能に設けられ、前記装置本体を開閉する開閉部材と、前記開閉部材に回動可能に設けられ、前記被係合部と係合する係合部を備え、前記係合部と前記被係合部とを係合させる操作によって前記開閉部材を閉状態とする操作部材と、前記係合部に形成され、前記係合部が前記被係合部に向かう回動方向において、前記操作部材に作用する操作力を、前記被係合部との接触によって前記開閉部材が閉じる方向の力に変換する接触面と、を有することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、前記接触面が、前記回動方向において前記操作部材に作用する操作力を、前記被係合部との接触によって、前記開閉部材が閉じる方向の力に変換する。つまり、前記係合部が前記被係合部の周囲に回り込むような力を前記操作部材に追加で与えなくても、前記操作部材を回動させることで、前記係合部が前記被係合部に案内されて回り込みながら被係合部と係合し、前記開閉部材を閉じるので、前記開閉部材を閉じるのに必要な操作荷重が大きくなるのを抑制することができる。
【0011】
第3の態様に係る開閉部材のロック機構は、第1の態様又は第2の態様において、前記接触面は、傾斜面であり、前記係合部の前記回動方向における前記接触面よりも上流側に位置する部位には、前記係合部の回動軌跡の接線との成す第1角度が、前記接触面における前記係合部の回動軌跡の接線との成す第2角度よりも小さい係合面が形成されている、ことを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記係合面が前記接触面よりも前記回動方向の上流側に位置しているので、前記被係合部と前記接触面とが接触した後で、前記被係合部と前記係合面とが接触する。ここで、前記接触面は、前記係合部が前記被係合部に対して回り込むように、前記被係合部に対して距離を変えながら相対移動しようとする。
一方、前記係合面は、前記係合部の回動軌跡の接線との成す第1角度が、該接線と前記接触面との成す第2角度よりも小さい。このため、前記係合面は、前記係合部の回動軌跡に合わせて前記被係合部を保持しようとするので、前記係合部と前記被係合部との係合状態を保持することができる。
【0013】
第4の態様に係る開閉部材のロック機構は、第1の態様から第3の態様のいずれか1つにおいて、前記操作部材は、前記開閉部材が閉状態の場合に前記開閉部材の内側に収容され、前記被係合部と前記接触面とが接触した場合に前記開閉部材よりも外側に突出する、ことを特徴とする。
【0014】
前記被係合部と前記接触面とが接触した状態では、前記開閉部材は開状態となっている。
ここで、本態様によれば、前記操作部材が操作者によって操作され、前記被係合部と前記接触面とが接触した場合に、前記操作部材の一部が前記開閉部材よりも外側に突出するので、前記開閉部材が開状態であることを操作者に認識させることができる。なお、前記操作部材の回動を続けることで、前記係合部と前記被係合部とが係合し、前記開閉部材が閉状態となる。
【0015】
第5の態様に係る開閉部材のロック機構は、第4の態様において、前記開閉部材には、被押圧部が設けられ、前記装置本体には、前記被押圧部と接触して前記開閉部材を開放側へ押圧することで、前記被係合部と前記接触面とが接触する状態を保持させる押圧部が設けられている、ことを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記押圧部が前記被押圧部と接触して、前記開閉部材を開放側へ押圧することで、前記開閉部材からの力と前記押圧部からの力とが釣り合った状態となる。これにより、前記被係合部と前記接触面とが接触する状態が保持される。そして、前記操作部材が回動されることで、前記係合部が前記被係合部と係合され、前記開閉部材が閉状態となる。このように、前記被係合部と前記接触面とが接触する開状態において、一時的に前記操作部材の回動が停止されるので、前記押圧部を有していない構成に比べて、前記開閉部材が自重によって突然、閉状態となるのを抑制することができる。
【0017】
第6の態様に係る開閉部材のロック機構は、第1の態様から第5の態様のいずれか1つにおいて、前記開閉部材又は前記装置本体には、前記操作部材に前記回動方向の回動力を付与する付与部材が設けられている、ことを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、前記操作部材に初めから前記付与部材による前記回動方向の回動力が付与されているので、前記操作部材を前記回動方向へ操作するために必要な操作力を減らすことができる。
【0019】
第7の態様に係る開閉部材のロック機構は、第1の態様から第6の態様のいずれか1つにおいて、前記操作部材には、前記操作部材の操作を促す表示がされた表示部が設けられている、ことを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、操作者が表示部を見ることで、前記操作部材の操作が促される。つまり、前記操作部材が操作すべきで対象であることを操作者に認識させることができる。
【0021】
第8の態様に係る開閉部材のロック機構は、第1の態様から第7の態様のいずれか1つにおいて、前記操作部材は、前記回動方向において前記係合部よりも上流側に配置され且つ把持されながら操作される把持部を有し、前記操作部材の回動中心から前記接触面までの第1距離よりも、前記回動中心から前記把持部の先端までの第2距離の方が長い、ことを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、操作される前記把持部の前記第2距離の方が、係合される前記接触面までの前記第1距離よりも長い。つまり、前記操作部材における支点から力点までの距離が、支点から作用点までの距離よりも長いので、前記第1距離が前記第2距離よりも長い構成に比べて、前記係合部と前記被係合部との係合に必要な操作力を低減することができる。
【0023】
第9の態様に係る開閉部材のロック機構は、第8の態様において、前記被係合部は、前記係合部よりも前記開閉部材の幅方向の外側に位置し、前記把持部は、前記幅方向の内側へ向けて延びている、ことを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、前記把持部が前記幅方向の外側へ向けて延びる構成に比べて、前記幅方向における前記把持部の長さをより長く設定することができる。つまり、前記操作部材を操作するのに必要な操作力を低減することができる。
【0025】
第10の態様に係る媒体搬送装置は、第1の態様から第9の態様のいずれか1つに記載の開閉部材のロック機構と、前記開閉部材が前記装置本体を閉じることで形成される搬送路に設けられ、媒体を搬送する搬送部材と、を有することを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、前記媒体搬送装置において、第1の態様から第9の態様のいずれか1つに記載の開閉部材のロック機構と同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
第11の態様に係る原稿読取装置は、請求項10に記載の媒体搬送装置と、前記媒体としての原稿の情報を読み取る読取部と、を有することを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、前記原稿読取装置において、第10の態様に記載の媒体搬送装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0029】
第12の態様に係る記録装置は、第10の態様に記載の媒体搬送装置又は第11の態様に記載の原稿読取装置と、受け取った情報に基づいて、媒体に情報を記録する記録部と、を有することを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、前記記録装置において、第10の態様に記載の媒体搬送装置又は第11の態様に記載の原稿読取装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0031】
[実施形態1]
以下に、本発明に係る開閉部材のロック機構、媒体搬送装置、原稿読取装置、及び記録装置の一実施形態としての実施形態1について、添付図面を参照して詳細に説明する。各図において表すX-Y-Z座標系では、後述するプリンター10について、X軸方向が装置幅方向であり、Y軸方向が装置奥行き方向であり、Z軸方向が装置高さ方向である。なお、装置幅方向において、正面から見た場合の左側と右側とを区別する場合には、左側を+X側と称し、右側を-X側と称する。装置奥行き方向において、手前側と奥側とを区別する場合には、手前側を+Y側と称し、奥側を-Y側と称する。装置高さ方向において、上側と下側とを区別する場合には、上側を+Z側と称し、下側を-Z側と称する。
【0032】
<<プリンターの概略>>
図1には、記録装置の一例としてのプリンター10が表されている。プリンター10は、媒体の一例としての用紙Pに各種の情報を記録する。用紙Pに記録される各種の情報には、文字情報、画像情報がある。また、プリンター10は、カセット収容部12と、画像記録部14と、操作パネル16と、スキャナー部20とを備えている。
【0033】
カセット収容部12は、用紙Pを収容する複数の収容カセット13を有する。なお、プリンター10の内部には、図示を省略する搬送経路が形成されている。用紙Pは、この搬送経路に沿って搬送される。
画像記録部14は、記録部の一例であり、図示を省略するラインヘッドと、制御部18とを含んで構成されている。ラインヘッドは、液体の一例としてのインクを用紙Pに吐出することで用紙Pに各種の情報を記録する、所謂インクジェット方式の記録ヘッドとして構成されている。また、画像記録部14は、後述するスキャナー部20で読み取られた媒体の一例としての原稿Gの情報に基づいて、用紙Pに情報を記録する。
【0034】
制御部18は、図示を省略するCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージを含んで構成され、プリンター10における用紙Pの搬送や、用紙Pへの各種の情報を記録する動作を制御する。また、制御部18は、操作パネル16から入力された情報に基づいて、プリンター10における各種動作の制御を行うことができる。プリンター10では、後述するスキャナー部20又はADFユニット30と同様の作用効果が得られる。
【0035】
[スキャナー部]
スキャナー部20は、原稿読取装置の一例であり、原稿Gの情報を読み取る。スキャナー部20で読み取られた原稿Gの情報は、制御部18のRAM又はストレージに記憶される。具体的には、スキャナー部20は、スキャナー本体22と、媒体搬送装置の一例としてのADF(Auto Document Feeder)ユニット30とを有する。スキャナー部20では、ADFユニット30と同様の作用効果が得られる。
【0036】
〔スキャナー本体〕
スキャナー本体22は、筐体23と、筐体23の内部に設けられた読取部の一例としてのセンサー24と、センサー24を覆う図示を省略するガラス板とを含んで構成されている。センサー24は、光学式のセンサーであり、X軸方向に移動し又は移動停止状態で、原稿Gの情報を読み取る。センサー24によって読み取られた情報は、制御部18に送られる。
【0037】
〔ADFユニット〕
ADFユニット30は、筐体23の-Y側端部に回動可能に連結され、筐体23に対して+Z側に配置されている。また、ADFユニット30では、後述するロック機構部50(
図5)と同様の作用効果が得られる。
図2に表すように、ADFユニット30は、本体部32と、ロック機構部50と、複数の搬送ローラー46とを有する。
【0038】
<本体部>
本体部32は、装置本体の一例である。また、本体部32は、ベースフレーム33と、2つのサイドフレーム36と、供給トレイ38と、排出トレイ42と、突出部材44と、外装カバー45とを含んで構成されている。ベースフレーム33は、Z軸方向を厚さ方向としてX-Y面に沿って広がっている。なお、本体部32におけるY軸方向の中央に対する+Y側の部分と、-Y側の部分とは、一例として、対称に形成されている。
【0039】
2つのサイドフレーム36は、ベースフレーム33上にY軸方向に間隔をあけて直立している。なお、Y軸方向から見た場合に、サイドフレーム36の中央に対して+X側で且つ+Z側となる部位を第1角部36Aと称する。また、サイドフレーム36の中央に対して-X側で且つ+Z側となる部位を第2角部36Bと称する。
2つの第2角部36Bには、Y軸方向を軸方向とする円柱状の軸部材37が架設されている。
【0040】
供給トレイ38は、読み取り前の原稿Gが載置される載置部として機能する。
排出トレイ42は、ベースフレーム33に対する+Z側で且つ供給トレイ38に対する-Z側に配置されている。
2つのサイドフレーム36の間には、原稿Gが搬送される搬送路Tの-Z側部分を構成する経路下壁41が設けられている。
【0041】
図4に表す突出部材44は、一例として、円柱状の部材で構成されている。また、突出部材44は、サイドフレーム36における第1角部36Aに対する-Z側の部位で且つZ軸方向の中央下部から、本体部32のY軸方向の中央に向けて突出されている。なお、突出部材44は、搬送路Tよりも外側に位置する。
【0042】
図3に表す外装カバー45は、サイドフレーム36の搬送路Tに臨む部位を除いて、サイドフレーム36を覆っている。このため、後述するカバー部54の閉状態では、搬送路Tが外装カバー45及びカバー部54によって覆われるようになっている。
【0043】
<搬送ローラー>
図4に表す複数の搬送ローラー46は、搬送部材の一例である。また、複数の搬送ローラー46は、後述するカバー部54が本体部32を閉じることで形成される搬送路Tに設けられている。また、複数の搬送ローラー46は、一例として、樹脂製であり、本体部32にY軸方向を軸方向として、図示を省略する駆動部によって回転可能に設けられている。また、複数の搬送ローラー46は、後述する補助ローラー66(
図3)と共に原稿Gを挟み、回転に伴って、原稿Gを搬送路Tに沿って搬送するようになっている。
【0044】
搬送路Tは、本体部32内において原稿Gが搬送される経路であり、Y軸方向の+Y側から見た場合に、全体がC字状に形成されている。また、搬送路Tは、供給トレイ38から排出トレイ42まで延びている。複数の搬送ローラー46は、搬送路Tの内側に配置されている。
【0045】
<ロック機構部>
図5に表すロック機構部50は、開閉部材のロック機構の一例である。また、ロック機構部50は、ピン部材52と、カバー部54と、操作部材72と、接触面86とを有する。さらに、ロック機構部50は、被押圧部96と、押圧部102と、引張バネ108とを有する。
【0046】
((ピン部材))
図3に表すピン部材52は、被係合部の一例であり、本体部32に設けられている。具体的には、ピン部材52は、一例として、円柱状の部材で構成されている。また、ピン部材52は、サイドフレーム36における第1角部36Aに対する-X側で且つ-Z側となる部位から、本体部32のY軸方向の中央に向けて突出されている。ピン部材52は、外周面52Aを有する。また、ピン部材52は、搬送路Tよりも外側に位置する。
【0047】
((カバー部))
カバー部54は、開閉部材の一例であり、本体部32に回動可能に設けられ、本体部32の搬送路Tの一部を開閉する。具体的には、カバー部54は、上壁56と、側壁58と、一対の縦壁62と、経路上壁64と、複数の補助ローラー66と、送込ローラー68とを含んで構成されている。なお、各部材の配置については、カバー部54が本体部32を閉じる閉状態にあるものとして説明する。
【0048】
図5に表す上壁56は、カバー部54の閉状態において、X-Y面に沿って広がる板状に形成されている。上壁56の上面の高さは、外装カバー45の上面の高さと同じとなっている。
側壁58は、上壁56の+X側端部から-Z側に延びており、Y-Z面に沿って広がる板状に形成されている。
【0049】
図1に表すように、カバー部54には、上壁56の+X側端部と側壁58の+Z側端部とに跨って、窪み部59が形成されている。窪み部59の形状及び大きさは、後述する把持部92を収容可能な形状及び大きさとされている。また、窪み部59は、操作者が操作を行い易いように、カバー部54におけるY軸方向の中央に対して+Y側となる操作パネル16側に位置している。
【0050】
図5に表す縦壁62は、上壁56の下面から-Z側へ延びており、X-Z面に沿って広がる板状に形成されている。また、一対の縦壁62には、後述するシャフト73が挿通される図示を省略する貫通孔が形成されている。
【0051】
図3に表す経路上壁64は、一対の縦壁62の-Z側部分をY軸方向に繋いでいる。また、経路上壁64は、経路下壁41と間隔をあけて対向している。これにより、カバー部54の閉状態では、カバー部54が経路下壁41を+Z側から覆うと共に、経路下壁41と経路上壁64とで搬送路Tが形成されるようになっている。
【0052】
複数の補助ローラー66は、一例として、外周部にゴム層が形成されたローラーとして構成されている。また、複数の補助ローラー66は、図示を省略するブラケット及びベアリングによって支持されることで、経路上壁64にY軸方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、複数の補助ローラー66は、カバー部54の閉状態で且つ原稿Gが無い状態において、複数の搬送ローラー46と接触してニップ部を形成している。
送込ローラー68は、搬送路Tにおける複数の補助ローラー66よりも上流側において、経路上壁64にY軸方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、送込ローラー68は、複数の原稿Gから1枚の原稿Gを分離して、搬送路Tに送り込む。
【0053】
((操作部材))
図5に表す操作部材72は、一例として、シャフト73と、ロック部材74と、操作レバー77とを有する。ロック部材74は、+Y側と-Y側とにそれぞれ1つずつ設けられているが、+Y側のロック部材74を図示して、-Y側のロック部材74の図示を省略している。なお、以後の説明では、後述する係合部80がピン部材52に向かう回動方向を+R方向と称する。
【0054】
(シャフト)
シャフト73は、一部を除いて円柱状に形成されており、Y軸方向を軸方向として延びている。また、シャフト73は、一対の縦壁62に、図示を省略するベアリングを用いて回動可能に設けられている。シャフト73の軸方向における2つのロック部材74の間に位置する部位には、操作レバー77が取り付けられる被取付部が形成されている。なお、被取付部の図示は省略する。
【0055】
(ロック部材)
図6に表すように、ロック部材74は、一例として、取付部76と、第1アーム部78と、第2アーム部79と、突出部84とが一体化された構成の部材であり、Y軸方向を厚さ方向とする板状に形成されている。
取付部76には、シャフト73が挿入される貫通孔76Aが形成されている。貫通孔76Aにシャフト73が挿入されることで、シャフト73に対する取付部76の相対的な回動が規制されている。なお、シャフト73の回動中心となる位置を点Cで表す。
【0056】
第1アーム部78は、取付部76からシャフト73の径方向に延びている。
第2アーム部79は、第1アーム部78のシャフト73側とは反対側の端部から、第1アーム部78と交差する方向に延びている。第2アーム部79の長さは、第1アーム部78の長さよりも長い。また、第2アーム部79は、+R方向において、第1アーム部78よりも下流側に位置するように延びている。第2アーム部79の中央部には、Y軸方向に貫通する貫通孔82が形成されている。なお、第2アーム部79の+R方向下流側に位置する側面を側面83と称する。
【0057】
突出部84は、第2アーム部79の第1アーム部78側とは反対側の端部から、+R方向に突出された部位である。また、突出部84の外周部には、係合面85と、接触面86と、斜面87とが形成されている。
ここで、側面83と、係合面85と、接触面86とで、係合部80が形成されている。換言すると、操作部材72は、第2アーム部79と突出部84とから成るL字状の係合部80を備えている。係合部80は、カバー部54の閉状態において、ピン部材52と係合する部位である。
【0058】
図7に表す係合面85は、係合部80の+R方向における接触面86よりも上流側に位置する部位に形成されている。また、係合面85は、Y軸方向から見た場合に、側面83の-Z側端から側面83に対してほぼ垂直に、
図7ではピン部材52側へ延びている。係合部80において、側面83と係合面85とが交わる位置を点Dで表す。また、点C(
図6)を中心とする点Dの円弧状の回動軌跡を係合部80の第1回動軌跡K1と称する。また、第1回動軌跡K1の点Dにおける接線を第1接線M1と称する。Y軸方向から見た場合に、第1接線M1と係合面85とが成す角度を第1角度θ1(度)と称する。
【0059】
また、Y軸方向から見た場合に、係合面85と接触面86とが交わる位置を点Eで表す。線分DEに相当する係合面85の長さは、ピン部材52の直径の長さよりも長い。X-Z面におけるピン部材52の中心位置を点Qで表す。また、点Qを通りX軸方向に延びる仮想線を仮想線Hと称する。点Qを通りZ軸方向に延びる仮想線を仮想線Vと称する。また、仮想線Hと仮想線Vとによって区画された領域を第1象限S1、第2象限S2、第3象限S3、第4象限S4と称する。なお、接触面86の詳細については、後述する。
【0060】
斜面87は、接触面86の点E側の端部とは反対側の端部から、第2アーム部79の先端に向けて延びている。また、斜面87の延びる方向は、第2アーム部79の延びる方向と交差している。接触面86と斜面87とが交わる位置を点Fで表す。線分EFの長さは、接触面86の長さに相当する。
【0061】
(操作レバー)
図6に表す操作レバー77は、Y軸方向から見た場合に、一例として、シャフト73から径方向に延びる基部91と、基部91と一体に形成された把持部92とを有する。
【0062】
基部91の一端部は、シャフト73の既述の被取付部にネジ等を用いて取り付けられている。
把持部92は、-Z側に向けて開口する箱状に形成されている。換言すると、把持部92は、操作者によって-Z側から把持されるように形成されている。Z軸方向から見た場合に、把持部92の外形は、一例として、矩形状となっている。把持部92の大きさは、カバー部54の閉状態において、把持部92が窪み部59(
図1)に収容され、カバー部54から外側へ突出されない大きさとされている。
【0063】
具体的には、把持部92は、カバー部54の閉状態において、カバー部54の上面に沿って配置される上壁92Aと、上壁92Aの+X側の端部から-Z側へ延びる縦壁92Bとを含んで構成されている。縦壁92Bは、把持部92の先端に相当する部位である。また、把持部92の中央に対する-Z側且つ-X側の部分は、基部91と一体化されている。
【0064】
また、把持部92は、+R方向において係合部80よりも上流側に配置されている。換言すると、操作部材72は、+R方向において係合部80よりも上流側に配置され且つ把持されながら回動操作される把持部92を有している。
【0065】
Y軸方向から見た場合に、操作レバー77の縦壁92Bの-Z側端となる位置を点Aで表す。そして、点Cから点Aまでの距離を第2距離d2(mm)とする。
【0066】
((接触面))
図6に表す接触面86は、一例として、突出部84の先端部分に形成されている。具体的には、接触面86は、係合部80に形成されており、ピン部材52が係合面85と接触する前に、ピン部材52の外周面52Aと接触する。また、接触面86は、係合部80がピン部材52に向かう+R方向において、下流側の部位(点F)の第1回動半径R1が、上流側の部位(点E)の第2回動半径R2よりも大径となるように形成されている。第1回動半径R1は、線分CFに相当する。第2回動半径R2は、線分CEに相当する。
【0067】
また、接触面86は、+R方向において点Fが点Eよりも下流側に位置するように、Z軸方向に対して傾斜した傾斜面とされている。これにより、接触面86は、+R方向において、操作部材72に作用する操作力を、ピン部材52との接触によってカバー部54が閉じる方向の力に変換する機能を有している。
Y軸方向から見た場合に、点Cから点Fまでの距離を第1距離d1(mm)とする。つまり、d1=R1である。ここで、既述の第2距離d2は、第1距離d1よりも長い。
【0068】
図7に表す接触面86は、一例として、ピン部材52の外周面52Aのうち、第3象限S3内の外周面52Aと接触するようになっている。換言すると、接触面86は、Z軸方向に沿った重力方向において、点Qよりも下側の外周面52Aと接触するように配置されている。
ここで、点C(
図6)を中心とする点Fの円弧状の回動軌跡を係合部80の第2回動軌跡K2と称する。また、第2回動軌跡K2の点Fにおける接線を第2接線M2と称する。Y軸方向から見た場合に、第2接線M2と接触面86とが成す角度を第2角度θ2(度)と称する。既述の第1角度θ1は、第2角度θ2よりも小さい。
【0069】
以上、説明したように、
図6に表す操作部材72は、カバー部54に回動可能に設けられている。また、操作部材72は、把持部92を操作することで、即ち、係合部80とピン部材52とを係合させる操作によって、カバー部54を閉状態とするように構成されている。また、操作部材72は、カバー部54が閉状態の場合にカバー部54の内側に収容され、ピン部材52と接触面86とが接触した場合に、把持部92がカバー部54よりも外側に突出するように構成されている。
【0070】
((被押圧部))
図5に表す被押圧部96は、Y軸方向から見た場合に、筒状部97と、規制部98とが一体に形成された部材として構成されている。また、被押圧部96は、カバー部54に設けられており、後述する押圧部102により押圧される。
【0071】
筒状部97は、円筒状に形成されており、Y軸方向を軸方向として、縦壁62に固定されている。また、筒状部97は、カバー部54の閉状態において、突出部材44に対して+X側且つ-Z側に位置するように、縦壁62において位置決めされている。
規制部98は、筒状部97の外周面の一部から+Z側に向けて延びる部位と、-Z側に向けて湾曲された部位とを含む断面U字状に形成されており、-Z側に向けて開口されている。
カバー部54の閉状態において、規制部98の湾曲された部位の内側には、突出部材44が収容される。換言すると、カバー部54の閉状態において、規制部98は、突出部材44のX軸方向の移動を規制するように構成されている。
【0072】
((押圧部))
押圧部102は、本体部32における、突出部材44に対する-Z側の部位に設けられている。また、押圧部102は、基部103と、軸部104と、可動部105と、コイルバネ106とを有する。
【0073】
基部103は、Z軸方向を軸方向とする有底筒状に形成されており、+Z側に向けて開口している。
軸部104は、基部103の底部の中央からZ軸方向に直立している。
可動部105は、-Z側に向けて開口する有底筒状に形成されており、軸部104によってZ軸方向に案内されるようになっている。
コイルバネ106は、基部103内に収容されており、可動部105を+Z側に向けて押圧している。
【0074】
ここで、押圧部102は、筒状部97と接触してカバー部54を開放側へ押圧することで、カバー部54からの力(荷重)と釣り合う押圧力をカバー部54に作用させる。そして、押圧部102は、カバー部54が閉状態となる前の段階において、ピン部材52と接触面86とが接触する状態を保持させるようになっている。
【0075】
((引張バネ))
引張バネ108は、付与部材の一例である。引張バネ108の一端部は、縦壁62に取り付けられている。引張バネ108の他端部は、第2アーム部79の貫通孔82の周縁部に取り付けられている。つまり、引張バネ108は、一例として、カバー部54に設けられている。また、引張バネ108は、操作部材72に+R方向の回動力を付与している。
【0076】
((指示シール))
図8に表すように、操作部材72には、表示部の一例としての指示シール110が設けられている。具体的には、指示シール110は、把持部92の上壁92Aの上面に貼り付けられている。また、指示シール110には、一例として、人差し指が操作場所を指し示す絵が描かれている。つまり、指示シール110には、操作部材72の回動操作を促す表示がされている。
【0077】
<実施形態1の動作と効果の説明>
図2に表すカバー部54の開放状態において、カバー部54が、閉状態となる位置に向けて回動される。
図5に表すように、被押圧部96と押圧部102とが接触して、カバー部54から作用する力と押圧部102の押圧力とが釣り合うことで、カバー部54が半開放状態で一旦、停止する。この停止状態において、把持部92がカバー部54よりも外側に突出していることで、半開放状態であることを操作者に認識させることができる。また、この停止状態において、ピン部材52と接触面86とが接触している。
【0078】
図6に表すカバー部54において、操作部材72以外の部位を-Z側に押し込むと、ピン部材52と係合部80とを係合させることができる。しかし、この場合では、カバー部54の広い範囲を押さなければならず、必要な操作荷重が大きくなる。
【0079】
一方、カバー部54において、操作部材72を+R方向に回動させた場合について説明する。
図9に表すように、操作部材72の+R方向の回動に伴って、ロック部材74からピン部材52に作用する操作力Fa(N)は、接触面86に沿う方向の分力Fa1(N)と、接触面86の法線方向の分力Fa2(N)とに分解される。そして、分力Fa2は、ピン部材52からの反力Fb(N)と釣り合う。これにより、ロック部材74には、分力Fa1が作用し続けるので、突出部84がピン部材52の-Z側を回り込むように移動して、係合部80とピン部材52とが係合する。
このように、操作部材72の操作のみで係合部80とピン部材52とが係合するので、カバー部54の操作部材72以外の部位を-Z側に押し込む場合に比べて、必要な操作荷重が大きくなるのを抑制することができる。
【0080】
以上の操作により、
図10に表すように、カバー部54が本体部32を閉じる閉状態となる。なお、カバー部54の閉状態では、規制部98の湾曲された部位の内側に突出部材44が収容される。このため、カバー部54のX軸方向の移動が規制され、カバー部54のがたつきを抑えられる。
【0081】
(1)上記説明をまとめると、実施形態1によれば、操作部材72が操作によって回動中心周りに回動された場合に、+R方向における接触面86の下流側の部位は、上流側の部位に先行して、ピン部材52と接触しようとする。
ここで、ピン部材52と接触面86とが接触した場合に、先行する下流側の部位の第1回動半径R1が、後側となる上流側の部位の第2回動半径R2よりも大径となっていることで、接触面86には、ピン部材52に対する回動中心C側とは反対側に向かう分力Fa1が作用する。このため、接触面86は、ピン部材52の中心となる点Q側とは反対側の外周面52Aに対して回り込むように移動する。これにより、係合部80とピン部材52とが係合され、カバー部54が閉状態となる。
このように、係合部80がピン部材52の周囲に回り込むような力を操作部材72に追加で与えなくても、操作部材72を回動させることで、係合部80がピン部材52の周囲に案内されて回り込みながら係合し、カバー部54を閉じるので、カバー部54を閉じるのに必要な操作荷重が大きくなるのを抑制することができる。
【0082】
(2)実施形態1によれば、接触面86が、+R方向において操作部材72に作用する操作力Faを、ピン部材52との接触によって、カバー部54が閉じる方向の分力Fa1に変換する。つまり、係合部80がピン部材52の周囲に回り込むような力を操作部材72に追加で与えなくても、操作部材72を回動させることで、係合部80がピン部材52に案内されて回り込みながらピン部材52と係合し、カバー部54を閉じるので、カバー部54を閉じるのに必要な操作荷重が大きくなるのを抑制することができる。
【0083】
(3)実施形態1によれば、係合面85が接触面86よりも+R方向の上流側に位置しているので、ピン部材52と接触面86とが接触した後で、ピン部材52と係合面85とが接触する。ここで、接触面86は、係合部80がピン部材52に対して回り込むように、ピン部材52に対して距離を変えながら相対移動しようとする。
一方、係合面85は、第1接線M1との成す第1角度θ1が、第2接線M2と接触面86との成す第2角度θ2よりも小さい。このため、係合面85は、係合部80の第1回動軌跡K1に合わせてピン部材52を保持しようとするので、係合部80とピン部材52との係合状態を保持することができる。
【0084】
(4)ピン部材52と接触面86とが接触した状態では、カバー部54は開状態となっている。
ここで、実施形態1によれば、操作部材72が操作者によって操作され、ピン部材52と接触面86とが接触した場合に、操作部材72の一部がカバー部54よりも外側に突出するので、カバー部54が開状態であることを操作者に認識させることができる。なお、操作部材72の回動を続けることで、係合部80とピン部材52とが係合し、カバー部54が閉状態となる。
【0085】
(5)実施形態1によれば、押圧部102が被押圧部96と接触して、カバー部54を開放側へ押圧することで、カバー部54からの力と押圧部102からの力とが釣り合った状態となる。これにより、ピン部材52と接触面86とが接触する状態が保持される。そして、操作部材72が回動されることで、係合部80がピン部材52と係合され、カバー部54が閉状態となる。
このように、ピン部材52と接触面86とが接触する開状態において、一時的に操作部材72の回動が停止されるので、押圧部102を有していない構成に比べて、カバー部54が自重によって突然、閉状態となるのを抑制することができる。
【0086】
(6)実施形態1によれば、操作部材72に初めから引張バネ108による+R方向の回動力が付与されているので、操作部材72を+R方向へ操作するために必要な操作力を減らすことができる。
【0087】
(7)実施形態1によれば、操作者が指示シール110を見ることで、操作部材72の操作が促される。つまり、操作部材72が操作すべき対象であることを操作者に認識させることができる。
【0088】
(8)実施形態1によれば、操作される把持部92の第2距離d2の方が、係合される接触面86までの第1距離d1よりも長い。つまり、操作部材72における支点から力点までの距離が、支点から作用点までの距離よりも長いので、第1距離d1が第2距離d2よりも長い構成に比べて、係合部80とピン部材52との係合に必要な操作力を低減することができる。
【0089】
[実施形態2]
次に、本発明に係る開閉部材のロック機構、媒体搬送装置、原稿読取装置、及び記録装置の実施形態2を、
図11に基づいて説明する。尚、実施形態1と共通する部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。また、実施形態1と同様の作用及び効果についても説明を省略する。
【0090】
図11に表すように、本実施形態2のADFユニット30は、実施形態1のロック機構部50(
図5)において、ピン部材52の位置が変更され、さらに、操作部材72(
図5)に代えて操作部材122が設けられたロック機構部120を有する。また、窪み部59(
図1)は、実施形態1に比べてカバー部54の-X側に形成されている。
【0091】
ピン部材52は、縦壁62において、係合部80よりもカバー部54のX軸方向の外側に位置している。
【0092】
操作部材122は、一例として、シャフト73と、ロック部材74と、操作レバー124とを有する。
シャフト73は、実施形態1の位置に比べて、+X側の位置に設けられている。
ロック部材74は、Z軸を対称軸として、実施形態1の配置とは線対称となるように、シャフト73に取り付けられている。つまり、係合部80は、+X側に向けて配置されている。なお、操作部材122の回動方向は、実施形態1とは逆方向であるため、-R方向と称する。
【0093】
操作レバー124は、Y軸方向から見た場合に、一例として、シャフト73から径方向に延びる基部125と、基部125と一体に形成された把持部126とを有する。基部125の一端部は、既述の被取付部にネジ等を用いて取り付けられている。
【0094】
把持部126は、-Z側に向けて開口する箱状に形成されている。Z軸方向から見た場合に、把持部126の外形は、一例として、矩形状となっている。把持部126の大きさは、窪み部59(
図1)に収容される大きさとされている。また、把持部126は、基部125からX軸方向の内側(-X側)へ向けて延びている。
【0095】
具体的には、把持部126は、カバー部54の閉状態において、カバー部54の上面に沿って配置される上壁126Aと、上壁126Aの-X側の端部から-Z側へ延びる縦壁126Bとを含んで構成されている。縦壁126Bは、把持部126の先端に相当する部位である。また、把持部126の中央に対する-Z側且つ+X側の部分は、基部125と一体化されている。
【0096】
また、把持部126は、-R方向において係合部80よりも上流側に配置されている。つまり、操作部材122は、-R方向において係合部80よりも上流側に配置され且つ把持されながら回動操作される把持部126を有している。
Y軸方向から見た場合に、操作レバー124のシャフト73の回動中心となる位置を点Cで表す。また、縦壁126Bの-Z側端となる位置を点Nで表す。そして、点Cから点Nまでの距離を第2距離d3(mm)とする。第2距離d3は、第1距離d1よりも長い。
【0097】
<実施形態2の動作と効果の説明>
実施形態2によれば、把持部126がX軸方向の外側(+X側)へ向けて延びる構成に比べて、X軸方向における把持部126の長さをより長く設定することができる。つまり、支点から力点までの距離を、実施形態1に比べて長く設定することができるので、操作部材122を操作するのに必要な操作力をさらに低減することができる。
【0098】
〔他の実施形態〕
本発明の実施形態に係るロック機構部50、120、ADFユニット30、スキャナー部20及びプリンター10は、以上のべたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0099】
プリンター10は、インクジェット方式のものに限らず、電子写真方式のものであってもよい。
スキャナー部20は、センサー24によって原稿Gの片面の情報を読み取る構成に限らず、ADFユニット30内に他のセンサーを設けて、原稿Gの両面の情報を読み取る構成にしてもよい。
媒体搬送装置は、ADFユニット30に限らず、例えば、画像記録部14に向けて用紙Pを搬送する装置であってもよい。
【0100】
ロック機構部50、120は、係合面85を有さないものであってもよい。例えば、接触面86の終端部に切欠部を形成して、該切欠部とピン部材52とを係合させてもよい。
また、ロック機構部50、120は、ピン部材52と接触面86とが接触した場合に、操作部材72、122がカバー部54よりも外側に突出しなくてもよい。例えば、把持部92、126がX軸方向に沿った姿勢とならないことで、カバー部54の半開放状態を操作者に認識させてもよい。
【0101】
ロック機構部50、120は、被押圧部96及び押圧部102が設けられていなくてもよい。
また、ロック機構部50、120は、引張バネ108に代えて、コイルバネ等で操作部材72、122に押付力を付与してもよい。また、付与部材は、カバー部54ではなく、本体部32に設けられていてもよい。
【0102】
ロック機構部50、120は、指示シール110に代えて、指示シール111(
図12)を設けてもよい。指示シール111は、一例として、三本線が描かれており、操作者の意識を把持部92に引き付ける。なお、指示シール110、111を設けなくてもよい。
また、ロック機構部50、120は、第1距離d1が第2距離d2よりも長いものであってもよい。
【0103】
また、被押圧部96と押圧部102を有する構成に代えて、被押圧部96と押圧部102が無く、搬送路Tの各ローラーがニップ(当接)する位置で釣り合って一旦停止した段階で、且つカバー部54が閉状態となる前の段階において、ピン部材52と接触面86とが接触する状態を保持させるようになっている構成であっても良い。また、被押圧部96と押圧部102を有する構成で、搬送路Tの各ローラーがニップする位置で釣り合っていても良い。
【符号の説明】
【0104】
10…プリンター、12…カセット収容部、13…収容カセット、14…画像記録部、
16…操作パネル、18…制御部、20…スキャナー部、22…スキャナー本体、
23…筐体、24…センサー、30…ADFユニット、32…本体部、
33…ベースフレーム、36…サイドフレーム、36A…第1角部、36B…第2角部、
37…軸部材、38…供給トレイ、41…経路下壁、42…排出トレイ、44…突出部材、
45…外装カバー、46…搬送ローラー、50…ロック機構部、52…ピン部材、
52A…外周面、54…カバー部、56…上壁、58…側壁、59…窪み部、
62…縦壁、64…経路上壁、66…補助ローラー、68…送込ローラー、
72…操作部材、73…シャフト、74…ロック部材、76…取付部、76A…貫通孔、
77…操作レバー、78…第1アーム部、79…第2アーム部、80…係合部、
82…貫通孔、83…側面、84…突出部、85…係合面、86…接触面、87…斜面、
91…基部、92…把持部、92A…上壁、92B…縦壁、96…被押圧部、
97…筒状部、98…規制部、102…押圧部、103…基部、104…軸部、
105…可動部、106…コイルバネ、108…引張バネ、110…指示シール、
111…指示シール、120…ロック機構部、122…操作部材、124…操作レバー、
125…基部、126…把持部、126A…上壁、126B…縦壁、d1…第1距離、
d2…第2距離、d3…第2距離、Fa…操作力、Fa1…分力、Fa2…分力、
Fb…反力、K1…第1回動軌跡、K2…第2回動軌跡、M1…第1接線、
M2…第2接線、R1…第1回動半径、R2…第2回動半径、S1…第1象限、
S2…第2象限、S3…第3象限、S4…第4象限、θ1…第1角度、θ2…第2角度