IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7439461コミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法
<>
  • 特許-コミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法 図1
  • 特許-コミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法 図2
  • 特許-コミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法 図3
  • 特許-コミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法 図4
  • 特許-コミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法 図5
  • 特許-コミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法 図6
  • 特許-コミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法 図7
  • 特許-コミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法 図8
  • 特許-コミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法 図9
  • 特許-コミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法 図10
  • 特許-コミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】コミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/90 20190101AFI20240220BHJP
   H04N 7/15 20060101ALI20240220BHJP
   H04N 21/439 20110101ALI20240220BHJP
【FI】
G06F16/90 100
H04N7/15
H04N21/439
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2019202131
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021077002
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】冨田 公一
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-196928(JP,A)
【文献】特開平06-266779(JP,A)
【文献】特開2004-070710(JP,A)
【文献】特開2015-035769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
H04N 7/15
H04N 21/439
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対話者間のコミュニケーションを支援する装置で動作するコミュニケーション支援プログラムであって、
前記装置の制御部に、
前記コミュニケーションを行っている前記対話者を特定する対話者特定処理、
前記コミュニケーションにおけるキーワードを取得する第1の取得処理、
各々の前記対話者の前記キーワードに関する知識として、前記キーワードに対する単語同士の繋がりを表す知識ネットワークを前記対話者ごとに取得する第2の取得処理、
各々の前記対話者の前記知識ネットワークを比較して、前記キーワードに関する知識の差異を抽出する知識差異抽出処理、
抽出された前記対話者の前記知識ネットワーク同士の差異を示すための情報を出力する出力処理、を実行させる、
ことを特徴とするコミュニケーション支援プログラム。
【請求項2】
前記第1の取得処理では、前記コミュニケーションの内容から、前記コミュニケーションのキーワードを推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のコミュニケーション支援プログラム。
【請求項3】
前記第1の取得処理では、予め定めた量の音声情報及び/又はテキスト情報を取得、又は、予め定めた時間が経過したら、前記キーワードを推定し直す、
ことを特徴とする請求項2に記載のコミュニケーション支援プログラム。
【請求項4】
前記装置の制御部に、更に
記キーワードに関する知識の差異に応じて、報知の必要性を判定する報知判定処理を実行させ、
前記出力処理では、報知の必要性があると判定された場合に、前記キーワードに関する知識に差異がある旨を報知する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載のコミュニケーション支援プログラム。
【請求項5】
前記装置の制御部に、更に、
前記コミュニケーションが音声の場合、音声情報をテキスト情報に変換する音声認識処理を実行させる、
ことを特徴とする請求項4に記載のコミュニケーション支援プログラム。
【請求項6】
前記知識差異抽出処理では、前記知識ネットワークにおける前記キーワードに関連するノードの一致率に基づいて、前記キーワードに関する知識の差異を抽出する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のコミュニケーション支援プログラム。
【請求項7】
前記知識差異抽出処理では、前記知識ネットワークにおける前記キーワードに関連するノード間の距離に基づいて、前記キーワードに関する知識の差異を抽出する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のコミュニケーション支援プログラム。
【請求項8】
前記知識差異抽出処理では、前記知識ネットワークにおける前記キーワードに関連するノードの繋がり方に基づいて、前記キーワードに関する知識の差異を抽出する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のコミュニケーション支援プログラム。
【請求項9】
前記知識差異抽出処理では、前記キーワードに対して所定以上の関連の強さを有するノードを対象にして、前記キーワードに関する知識の差異を抽出する、
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一に記載のコミュニケーション支援プログラム。
【請求項10】
前記知識差異抽出処理では、抽出した前記キーワードに関する知識の差異を、前記知識ネットワークの差異として可視化する、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一に記載のコミュニケーション支援プログラム。
【請求項11】
前記装置は、前記知識ネットワークを参照可能であり、かつ、情報端末からコミュニケーションの音声情報及び/又はテキスト情報を取得可能な装置であり、
前記装置の制御部に、更に、
前記情報端末から、個人が閲覧したテキスト情報及び/又は個人が発音した音声情報を取得し、前記テキスト情報及び/又は前記音声情報から前記個人の知識情報を抽出し、抽出した前記知識情報と前記個人の識別情報とを対応付けて前記知識ネットワークに登録する知識情報抽出処理を実行させる、
ことを特徴とする請求項乃至10のいずれか一に記載のコミュニケーション支援プログラム。
【請求項12】
前記知識ネットワークは、個人の知識を個人毎に蓄積した個人知識DBである、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一に記載のコミュニケーション支援プログラム。
【請求項13】
前記キーワードは、前記コミュニケーションの話題である、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一に記載のコミュニケーション支援プログラム。
【請求項14】
各個人がコミュニケーションを行う複数の情報端末と、請求項1乃至13のいずれか一に記載のコミュニケーション支援プログラムがインストールされた前記装置と、が通信ネットワークで接続されている、
ことを特徴とするコミュニケーション支援システム。
【請求項15】
各個人がコミュニケーションを行う複数の情報端末が通信ネットワークで接続され、各々の前記情報端末に、請求項1乃至13のいずれか一に記載のコミュニケーション支援プログラムがインストールされている、
ことを特徴とするコミュニケーション支援システム。
【請求項16】
対話者間のコミュニケーションを支援する装置におけるコミュニケーション支援方法であって、
前記コミュニケーションを行っている前記対話者を特定する対話者特定処理と、
前記コミュニケーションにおけるキーワードを取得する第1の取得処理と、
各々の前記対話者の前記キーワードに関する知識として、前記キーワードに対する単語同士の繋がりを表す知識ネットワークを前記対話者ごとに取得する第2の取得処理と、
各々の前記対話者の前記知識ネットワークを比較して、前記キーワードに関する知識の差異を抽出する知識差異抽出処理と、
抽出された前記対話者の前記知識ネットワーク同士の差異を示すための情報を出力する出力処理と、を実行する、
ことを特徴とするコミュニケーション支援方法。
【請求項17】
前記第1の取得処理では、前記コミュニケーションの内容から、前記コミュニケーションのキーワードを推定する、
ことを特徴とする請求項16に記載のコミュニケーション支援方法。
【請求項18】
前記第1の取得処理では、予め定めた量の音声情報及び/又はテキスト情報を取得、又は、予め定めた時間が経過したら、前記キーワードを推定し直す、
ことを特徴とする請求項17に記載のコミュニケーション支援方法。
【請求項19】
記キーワードに関する知識の差異に応じて、報知の必要性を判定する報知判定処理を更に実行し、
前記出力処理では、報知の必要性があると判定された場合に、前記キーワードに関する知識に差異がある旨を報知する、
ことを特徴とする請求項16乃至18のいずれか一に記載のコミュニケーション支援方法。
【請求項20】
前記コミュニケーションが音声情報の場合、前記音声情報をテキスト情報に変換する音声認識処理を更に実行する、
ことを特徴とする請求項19に記載のコミュニケーション支援方法。
【請求項21】
前記知識差異抽出処理では、前記知識ネットワークにおける前記キーワードに関連するノードの一致率に基づいて、前記キーワードに関する知識の差異を抽出する、
ことを特徴とする請求項16乃至20のいずれか一に記載のコミュニケーション支援方法。
【請求項22】
前記知識差異抽出処理では、前記知識ネットワークにおける前記キーワードに関連するノード間の距離に基づいて、前記キーワードに関する知識の差異を抽出する、
ことを特徴とする請求項16乃至20のいずれか一に記載のコミュニケーション支援方法。
【請求項23】
前記知識差異抽出処理では、前記知識ネットワークにおける前記キーワードに関連するノードの繋がり方に基づいて、前記キーワードに関する知識の差異を抽出する、
ことを特徴とする請求項16乃至20のいずれか一に記載のコミュニケーション支援方法。
【請求項24】
前記知識差異抽出処理では、前記キーワードに対して所定以上の関連の強さを有するノードを対象にして、前記キーワードに関する知識の差異を抽出する、
ことを特徴とする請求項21乃至23のいずれか一に記載のコミュニケーション支援方法。
【請求項25】
前記知識差異抽出処理では、抽出した前記キーワードに関する知識の差異を、前記知識ネットワークの差異として可視化する、
ことを特徴とする請求項16乃至24のいずれか一に記載のコミュニケーション支援方法。
【請求項26】
前記装置は、前記知識ネットワークを参照可能であり、かつ、情報端末からコミュニケーションの音声情報及び/又はテキスト情報を取得可能な装置であり、
前記情報端末から、個人が閲覧したテキスト情報及び/又は個人が発音した音声情報を取得し、前記テキスト情報及び/又は前記音声情報から前記個人の知識情報を抽出し、抽出した前記知識情報と前記個人の識別情報とを対応付けて前記知識ネットワークに登録する知識情報抽出処理を更に実行する、
ことを特徴とする請求項16乃至25のいずれか一に記載のコミュニケーション支援方法。
【請求項27】
前記知識ネットワークは、個人の知識を個人毎に蓄積した個人知識DBである、
ことを特徴とする請求項16乃至26のいずれか一に記載のコミュニケーション支援方法。
【請求項28】
前記キーワードは、前記コミュニケーションの話題である、
ことを特徴とする請求項16乃至27のいずれか一に記載のコミュニケーション支援方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法に関し、特に、情報端末を用いたコミュニケーションを支援するコミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、働き方改革などにより、情報端末を用い、通信ネットワークを介して音声や映像を送受信するリモートでのコミュニケーションが増えている。直接、顔を突き合わせたフェース・トゥー・フェイス(F2F)でのコミュニケーションであっても誤解や認識齟齬などの問題は生じるが、リモートでのコミュニケーションでは誤解や認識齟齬などの問題が生じやすくなる。
【0003】
このようなコミュニケーションにおける問題に関して、例えば、下記特許文献1には、話し手と聞き手間のコミュニケーションを仲介する対話支援装置において、前記話し手の音声を認識する音声認識部と、前記話し手と前記聞き手との間に誤解や意識のずれを発生させるような曖昧表現単語のリストを格納した曖昧表現単語リスト記憶部と、前記曖昧表現単語リストと前記音声認識結果とを比較して、前記音声認識結果から曖昧表現単語を含む曖昧表現句を検出する曖昧表現検出部と、前記曖昧表現句によって前記聞き手の解釈が曖昧となる曖昧表現対象を前記音声認識結果から検出する曖昧表現対象検出部と、前記話し手の人物情報と前記聞き手の人物情報を特定する話者特定部と、前記曖昧表現句と前記曖昧表現対象の組合せに対して、前記人物情報毎に前記曖昧な表現の認知範囲を格納する認知範囲記憶部と、前記認知範囲記憶部に格納した前記話し手の人物情報に関する前記曖昧表現句と前記曖昧表現対象に対する前記話し手の認知範囲を求め、また、前記認知範囲記憶部に格納した前記聞き手の人物情報に関する前記曖昧表現句と前記曖昧表現対象に対する前記聞き手の認知範囲を求める認知範囲推定部と、前記話し手の認知範囲と前記聞き手の認知範囲とを比較して、前記話し手と前記聞き手の認知範囲の差異を求める認知範囲相違検出部と、を具備した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-83753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1において対話者間で比較しているのは、同文献の図3にも示されるように、各対象(スケジュール、納期、範囲、等)における各対話者の曖昧表現(少し、もう少し、あまり変え、等)の認識範囲(認識レベル:時間的長さや割合など)であり、各対話者の知識の範囲、内容など(知識レベル:知識の広がりや深さ、密度等々)ではない。そのため、上記特許文献1の技術を利用しても、コミュニケーションの話題に対する各個人の知識レベルの差異により発生する誤解や認識齟齬などの問題を解決することはできない。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、情報端末を用いたコミュニケーションにおける誤解や認識齟齬を回避することができるコミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、対話者間のコミュニケーションを支援する装置で動作するコミュニケーション支援プログラムであって、前記装置の制御部に、前記コミュニケーションにおけるキーワードを取得する第1の取得処理、各々の前記対話者の前記キーワードに関する知識として、前記キーワードに対する単語同士の繋がりを表す知識ネットワークを前記対話者ごとに取得する第2の取得処理、各々の前記対話者の前記知識ネットワーク同士の差異を示すための情報を出力する出力処理、を実行させることを特徴とする。
【0008】
本発明の一側面は、コミュニケーション支援システムであって、各個人がコミュニケーションを行う複数の情報端末と、前記コミュニケーション支援プログラムがインストールされた前記装置と、が通信ネットワークで接続されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の一側面は、コミュニケーション支援システムであって、各個人がコミュニケーションを行う複数の情報端末が通信ネットワークで接続され、各々の前記情報端末に、前記コミュニケーション支援プログラムがインストールされていることを特徴とする。
【0010】
本発明の一側面は、対話者間のコミュニケーションを支援する装置におけるコミュニケーション支援方法であって、前記コミュニケーションにおけるキーワードを取得する第1の取得処理と、各々の前記対話者の前記キーワードに関する知識として、前記キーワードに対する単語同士の繋がりを表す知識ネットワークを前記対話者ごとに取得する第2の取得処理と、各々の前記対話者の前記知識ネットワーク同士の差異を示すための情報を出力する出力処理と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコミュニケーション支援プログラム、リモートでのコミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法によれば、情報端末を用いたコミュニケーションにおける誤解や認識齟齬を回避することができる。
【0012】
その理由は、対話者間のコミュニケーションを支援する装置で、コミュニケーションにおけるキーワードを取得する第1の取得処理と、各々の対話者のキーワードに関する知識として、キーワードに対する単語同士の繋がりを表す知識ネットワークを対話者ごとに取得する第2の取得処理と、各々の対話者の知識ネットワーク同士の差異を示すための情報を出力する出力処理と、を実行するからである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例に係るコミュニケーション支援システムの構成の一例を示す模式図である。
図2】本発明の一実施例に係るコミュニケーション支援システムの構成の他の例を示す模式図である。
図3】本発明の一実施例に係る情報端末の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施例に係るコミュニケーション支援装置の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施例に係るコミュニケーション支援方法の概略動作を示す模式図である。
図6】本発明の一実施例に係るID管理テーブルの一例である。
図7】キーワードに関する知識を示すイメージ図である。
図8】キーワードに関する知識の差異を示すイメージ図である。
図9】本発明の一実施例に係るキーワード取得方法を説明する図である。
図10】本発明の一実施例に係るコミュニケーション支援装置の動作を示すフローチャート図である。
図11】本発明の一実施例に係るコミュニケーション支援装置の動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
背景技術で示したように、情報端末を用い、通信ネットワークを介して音声や映像を送受信するリモートでのコミュニケーションでは、誤解や認識齟齬などの問題が生じやすくなる。このようなコミュニケーションの問題に対して、特許文献1では、曖昧な表現とその対象を検知し、それらにおける話し手/聞き手の認知範囲を認知範囲記憶部から特定し、差が一定以上あれば報知するようにしている。しかしながら、この技術は曖昧表現における誤解に特化しており、コミュニケーションの話題に対する各個人の知識レベルの差異までは考慮していない。そのため、各個人の知識レベルの差異により発生する誤解や認識齟齬などの問題を回避することはできない。
【0015】
そこで、本発明の一実施の形態では、コミュニケーションのキーワード(話題や議題、専門用語、話題に関する用語など)に対する各個人の知識レベルを推定し、知識レベルの差異に基づいて、コミュニケーションにおける誤解や認識齟齬が発生する可能性を判定して報知するようにする。
【0016】
具体的には、対話者間のコミュニケーションを支援する装置で、コミュニケーションにおけるキーワードを取得する第1の取得処理と、各々の対話者のキーワードに関する知識として、キーワードに対する単語同士の繋がりを表す知識ネットワークを対話者ごとに取得する第2の取得処理と、各々の対話者の知識ネットワーク同士の差異を示すための情報を出力する出力処理と、を実行する。更に、コミュニケーションを行っている対話者を特定する対話者特定処理と、各々の対話者の知識ネットワークを比較して、キーワードに関する知識の差異を抽出する知識差異抽出処理と、キーワードに関する知識の差異に応じて、報知の必要性を判定する報知判定処理と、を実行し、出力処理では、報知の必要性があると判定された場合に、キーワードに関する知識に差異がある旨を報知する。
【0017】
このように、コミュニケーションのキーワードに対して一定以上の知識差異がある場合は、コミュニケーションの対話者にその旨を報知することにより、互いに知識差異があることを認識した上でコミュニケーションを行うことができ、思わぬ誤解や認識齟齬によって話が噛み合わないという状況の発生を未然に防止することができる。
【実施例
【0018】
上記した本発明の一実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の一実施例に係るコミュニケーション支援プログラム、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法について、図1乃至図11を参照して説明する。図1及び図2は、本実施例のコミュニケーション支援システムの構成を示す模式図であり、図3は、情報端末の構成を示すブロック図、図4は、コミュニケーション支援装置の構成を示すブロック図である。また、図5は、本実施例のコミュニケーション支援方法の概略を示す模式図であり、図6は、本実施例のID管理テーブルの一例である。また、図7は、キーワードに関する知識を示すイメージ図であり、図8は、キーワードに関する知識の差異を示すイメージ図である。また、図9は、本実施例のキーワード推定方法を説明する図であり、図10及び図11は、本実施例のコミュニケーション支援装置の動作を示すフローチャート図である。
【0019】
図1に示すように、本実施例のコミュニケーション支援システム10は、コミュニケーションを行う個人が使用する複数台の情報端末20とコミュニケーション支援装置30とを含み、これらはイーサネット(登録商標)、トークンリング、FDDI(Fiber-Distributed Data Interface)等の規格により定められるLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の通信ネットワーク40を介して接続されている。
【0020】
なお、図1では、情報端末20とコミュニケーション支援装置30とを別々の装置としたが、図2に示すように、コミュニケーション支援装置30が各情報端末20に内蔵される構成としてもよい。以下、図1のシステム構成を前提にして各装置について詳細に説明する。
【0021】
[情報端末]
情報端末20は、音声や映像によってコミュニケーションを行うパーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどである。この情報端末20は、図3(a)に示すように、制御部21と記憶部22とネットワークI/F部23と映像入力部24と音声入出力部25と表示部26と操作部27などで構成される。
【0022】
制御部21は、マイクロプロセッサ等により構成されるCPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリとで構成され、CPUは、ROMや記憶部22に記憶した制御プログラムをRAMに展開して実行することにより、情報端末20全体の動作を制御する。
【0023】
また、図3(b)に示すように、制御部21により、対話アプリケーション21a、情報収集アプリケーション21bが実行される。
【0024】
対話アプリケーション21aは、P2P(peer-to-peer)技術を利用して双方向通信を実現するIP(Internet Protocol)電話やスカイプ(登録商標)、サーバを介してクライアント間の双方向通信を実現する電子会議システムなどのアプリケーションである。
【0025】
情報収集アプリケーション21bは、情報端末20を利用する個人の知識に関する情報を取得する。例えば、各情報端末20に情報収集アプリケーション21bをインストールする際に個人IDを入力させる。そして、この情報収集アプリケーション21bを常駐アプリケーションとして動作させ、表示部26に表示した文書、電子メールやSNS(Social Networking Service)、IP電話などで送受信した情報、Webブラウザを用いて閲覧したWeb情報、電子会議の音声や議事録などの情報を取得する。具体的には、情報収集アプリケーション21bは、画面に表示された情報を取得し、公知のOCR(Optical Character Recognition)を用いてテキスト情報を取得し、取得したテキスト情報と個人IDとを対応付けて記憶部22に記憶したりコミュニケーション支援装置30に通知したりする。また、情報収集アプリケーション21bは、音声情報を取得し、公知の音声認識技術を用いてテキスト情報に変換し、変換したテキスト情報と個人IDとを対応付けて記憶部22に記憶したりコミュニケーション支援装置30に通知したりする。
【0026】
記憶部22は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などで構成され、CPUが各部を制御するためのプログラム(対話アプリケーション21a及び情報収集アプリケーション21bを含む。)、自装置の処理機能に関する情報、情報収集アプリケーション21bが収集した情報などを記憶する。
【0027】
ネットワークI/F部23は、NIC(Network Interface Card)やモデムなどで構成され、情報端末20を通信ネットワーク40に接続し、情報端末20同士での映像及び音声の双方向通信を可能にすると共に、情報収集アプリケーション21bが収集した情報を個人IDに対応付けてコミュニケーション支援装置30に送信したり、情報端末20同士のコミュニケーション情報をコミュニケーション支援装置30に送信したりする。
【0028】
映像入力部24は、CCD(Charge Coupled Devices)カメラなどで構成され、情報端末20を操作している個人の映像を取得する。音声入出力部25は、マイクやスピーカなどで構成され、情報端末20を操作している個人の音声を取得すると共に、他の情報端末20を操作している個人の音声を出力する。
【0029】
表示部26は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(electroluminescence)表示装置などで構成され、対話アプリケーション21aの画面などを表示する。操作部27は、マウスやキーボードなどで構成され、対話アプリケーション21aの画面における各種操作を可能にする。
【0030】
[コミュニケーション支援装置]
コミュニケーション支援装置30は、情報端末20同士のコミュニケーションを支援するコンピュータ装置などである。このコミュニケーション支援装置30は、図4(a)に示すように、制御部31と記憶部32とネットワークI/F部33と報知部34などで構成される。
【0031】
制御部31は、マイクロプロセッサ等により構成されるCPUとROMやRAMなどのメモリとで構成され、CPUは、ROMや記憶部32に記憶した制御プログラム(本実施例のコミュニケーション支援プログラムを含む。)をRAMに展開して実行することにより、コミュニケーション支援装置30全体の動作を制御する。
【0032】
また、上記制御部31は、図4(b)に示すように、知識情報抽出部31a、対話者特定部31b、音声認識部31c、キーワード取得部31d、キーワード知識抽出部31e、知識差異抽出部31f、報知判定部31gなどとしても機能する。
【0033】
知識情報抽出部31aは、情報端末20から、個人IDに対応付けられた情報を取得し、取得した情報に含まれる文章やフレーズを、意味を持つ最小限の単位である単語に分解する形態素解析を行い、分解した単語の共起度解析を行って、単語同士の繋がりを表すネットワークモデル(例えば、共起ネットワーク)を生成する。そして、生成した共起ネットワークを個人IDに対応付けて知識ネットワーク(本実施例では、個人知識DBと呼ぶ。)に登録する。また、知識情報抽出部31aは、新たな情報を取得したら、個人IDに基づいて対象の個人知識DBを特定し、情報のマージを行う。なお、本実施例では、個人知識DBにネットワークの情報を登録するものとする。
【0034】
対話者特定部31bは、情報端末20からコミュニケーション情報を受信したら、記憶部32に記憶されたID管理テーブルの個人特定情報を参照して、コミュニケーションを行っている対話者を特定して、その対話者の個人IDを取得する。例えば、情報端末20から音声情報を受信した場合は、ID管理テーブルの声紋情報と比較して対話者を特定して、その対話者の個人IDを取得する。
【0035】
音声認識部31cは、必要に応じて設けられ、コミュニケーション情報が音声情報の場合に、公知の音声認識技術を利用して、音声情報をテキスト情報に変換する。
【0036】
キーワード取得部31dは、コミュニケーションにおけるキーワード(コミュニケーションの内容となる事柄であり、話題や議題、専門用語、話題に関する用語を含む。)を取得する(この処理を第1の取得処理とする。)。例えば、コミュニケーションの内容から、コミュニケーションのキーワードを推定する。具体的には、コミュニケーション情報(テキスト情報)に対して形態素解析を行い、ネットワークモデル(例えば、共起ネットワーク)を生成し、近接中心性などを用いて、共起ネットワークの中心ノードを特定し、中心として抽出されたノードを「キーワード」として推定する。なお、ここでは、ネットワークモデルとして共起ネットワークを利用し、近接中心性を用いてキーワードを推定したが、キーワードの推定方法は上記方法に限定されるものではない。また、本実施例では、共起ネットワークを生成してキーワードを推定する場合について記載するが、コミュニケーションに際してキーワードが提示された場合は、そのキーワードを取得すればよい。
【0037】
キーワード知識抽出部31eは、各々の対話者のキーワードに関する知識として、キーワードに対する単語同士の繋がりを表す知識ネットワークを対話者ごとに取得する(この処理を第2の取得処理とする。)。例えば、対話者特定部31bが特定した個人IDと、キーワード取得部31dが取得(推定)したキーワードと、を用い、記憶部32に記憶された個人知識DBを参照して、各対話者のキーワードに関する知識(キーワード知識と呼ぶ。)を、単語同士の繋がりを表すネットワークとして抽出する。このキーワード知識の抽出方法については後述する。
【0038】
知識差異抽出部31fは、キーワード知識抽出部31eが抽出した各対話者のネットワークを比較して、各対話者のキーワード知識の差異を抽出する。例えば、各対話者のキーワード知識に存在するノードをそれぞれ比較し、その差異率(知識差異)を抽出する。
【0039】
報知判定部31gは、知識差異抽出部31fが抽出した各対話者のキーワード知識の差異に応じて、報知の必要性の有無を判定する。例えば、知識差異抽出部31fが抽出した差異率が予め定めた閾値を超える場合、コミュニケーション上の誤解や認識齟齬が生じやすいため、報知の必要性があると判定して、キーワードに関する知識に差異がある旨を報知部34に報知させる。
【0040】
上記知識情報抽出部31a、対話者特定部31b、音声認識部31c、キーワード取得部31d、キーワード知識抽出部31e、知識差異抽出部31f、報知判定部31gはハードウェアとして構成してもよいし、制御部31を、知識情報抽出部31a、対話者特定部31b、音声認識部31c、キーワード取得部31d、キーワード知識抽出部31e、知識差異抽出部31f、報知判定部31g(特に、対話者特定部31b、キーワード取得部31d、キーワード知識抽出部31e、知識差異抽出部31f、報知判定部31g)として機能させるソフトウェア(コミュニケーション支援プログラム)として構成し、CPUに当該コミュニケーション支援プログラムを実行させるようにしてもよい。
【0041】
記憶部32は、HDDやSSDなどで構成され、CPUが各部を制御するためのプログラム、自装置の処理機能に関する情報、個人知識DB、図6に示すID管理テーブルなどを記憶する。
【0042】
ネットワークI/F部33は、NICやモデムなどで構成され、コミュニケーション支援装置30を通信ネットワーク40に接続し、情報端末20から情報収集アプリケーション21bが収集した情報やコミュニケーション情報を取得したり、必要に応じて、各情報端末20に報知情報を通知したりする。
【0043】
報知部34は、表示部や出力部などであり、各々の対話者の知識ネットワーク同士の差異を示すための情報を出力する(この処理を出力処理とする。)。例えば、報知部34は、報知判定部31gの判定結果に従って、キーワードに関する知識に差異がある旨を報知する。また、報知部34は、キーワード知識抽出部31eや知識差異抽出部31fの指示に従って、図7及び図8に示す共起ネットワークのイメージ図を表示したり、知識の差異率を表示したりする。
【0044】
なお、図1乃至図5は、本実施例のコミュニケーション支援システム10の一例であり、各装置の構成や制御は適宜変更可能である。
【0045】
例えば、本実施例では、コミュニケーション支援装置30の記憶部32に個人知識DBを保存したが、通信ネットワーク40を介して接続されるサーバなどに個人知識DBを保存し、キーワード知識抽出部31eは、上記サーバなどにアクセスして個人知識DBを参照するようにしてもよい。
【0046】
また、図4では、コミュニケーション支援装置30に報知部34を設けて、キーワードに関する知識に差異がある旨を報知したが、報知判定部31gの判定結果に従って情報端末20に報知情報を通知し、情報端末20の音声入出力部25や表示部26から、キーワードに関する知識に差異がある旨を報知するようにしてもよい。その際、全ての対話者に、キーワードに関する知識に差異がある旨を報知してもよいし、一部の対話者(例えば、キーワードに関する知識が豊富な対話者)に、キーワードに関する知識に差異がある旨を報知してもよい。
【0047】
また、図4では、コミュニケーション支援装置30を情報端末20とは別の装置として説明したが、図2に示すように、コミュニケーション支援装置30は情報端末20に含まれる構成としてもよく、その場合は、図3の情報端末20の制御部21を、知識情報抽出部31a、対話者特定部31b、音声認識部31c、キーワード取得部31d、キーワード知識抽出部31e、知識差異抽出部31f、報知判定部31gとして機能させることができる。
【0048】
以下、コミュニケーション支援システム10にコミュニケーション情報が入力された場合の処理について、図5乃至図8を参照して説明する。ここでは、音声でのコミュニケーションを例にして説明する。なお、個人知識DB及びID管理テーブルは予め作成されて記憶部32などに記憶されているものとする。
【0049】
(1)対話者の特定
対話者特定部31bは、コミュニケーション情報として音声情報を取得する。そして、図6に示すID管理テーブルの個人特定情報(声紋情報)と比較することにより、取得した音声情報に対応する個人を特定して個人ID(ここではu0001、u0003とする。)を取得し、特定した個人IDをキーワード知識抽出部31eに通知する。
【0050】
(2)キーワードの推定
音声認識部31cは、発話内容(音声情報)をテキスト情報に変換し、キーワード取得部31dは、文字化された発話内容の共起ネットワークを生成する。そして、近接中心性を用いて共起ネットワークの中心ノードを抽出し、抽出されたノードをキーワードとして推定し、推定したキーワードをキーワード知識抽出部31eに通知する。ここでは、「高血圧」がキーワードとして推定されたとして説明する。
【0051】
(3)キーワード知識の抽出
個人IDとキーワードが通知されたキーワード知識抽出部31eは、個人知識DBを参照して、個人ID(ここではu0001,u0003)に対するキーワード知識を抽出する。各対話者のキーワード知識も単語同士の繋がりを表すネットワークの情報である。そして、キーワードである「高血圧」をルート(中心)として、それに繋がる情報(キーワード群)を抽出する。その際、キーワード知識を直感的に理解できるように可視化することが好ましく、例えば、図7に示すようなネットワークを表すイメージ図を表示することができる。
【0052】
(4)知識差異の抽出(ノードの一致率)
上記(3)の処理で抽出した各対話者のキーワード知識に存在するノードを比較する。例えば、u0001のノードが120個、u0003のノードが90個であるとし、双方で一致しているノードが60個であるとする。この時の差異率は、1-共通部分/和集合で表すことができ、
差異率=1-60/(120+90-60)=0.6
となる。その際、キーワード知識の差異を直感的に理解できるようにネットワークの差異として可視化することが好ましく、例えば、図8(a)に示すように各対話者のキーワード知識のイメージ図を対比可能に表示すると共に差異率を表示したり、図8(b)に示すように各対話者のキーワード知識のイメージをマージし、その差異をハイライト表示(図のドットのハッチング領域参照)したりすることができる。なお、その他の知識差異の抽出方法については後述する。
【0053】
(5)報知の判定、報知
報知判定部31gは、知識差異抽出部31fによって抽出された差異率が予め定めた閾値を超える場合、コミュニケーション上の誤解や認識齟齬が生じやすいため、報知が必要と判定する。例えば、差異率の閾値として「0.5」が設定されている場合、上記の例では閾値を超えているため、報知が必要と判定する。報知が必要と判定された場合は、報知部34から音声情報や視覚的情報で、キーワード知識に差異がある旨の報知を行う。若しくは、情報端末20に報知情報を送信して、情報端末20の音声入出力部25や表示部26から音声情報若しくは視覚的情報で、キーワード知識に差異がある旨の報知を行う。
【0054】
なお、上記(4)では、ノードの一致率を用いて知識差異を抽出したが、ノード間の距離を用いて知識差異を抽出することもできる。具体的には、(3)の処理で抽出した各対話者のキーワード知識に存在するノードをそれぞれベクトル値に変換する。ベクトル値への変換方法は、例えばWord2Vecなどの手法を用いることができる。次に、各ノードのベクトル値の平均値を算出し、その平均値を各対話者の知識ベクトルとする。
u0001:(V1+V2・・・+V120)/120=u01V
u0003:(V1+V2・・・+V90)/90=u03V
そして、それぞれのベクトル値を、コサイン類似度(距離)を用いて類似度を求める。
cos(u01V,u03V)=0.73とすると、0.73は類似度であるため、差異率は1-0.73=0.27となり、この差異率に基づいて知識差異を抽出することができる。
【0055】
また、ノードの繋がり方を用いて知識差異を抽出することもできる。具体的には、対話者それぞれについて、ルートからのすべてのノードへの経路数を算出する。ここでは、u0001:100個、u0003:120個とし、その内の対話者間で一致する経路数を算出する。この時の差異率は、1-共通部分/和集合で表すことができ、例えば、30個の経路が一致していたとすると、
差異率=1-30/(100+120-30)=0.84となり、この差異率に基づいて知識差異を抽出することができる。
【0056】
また、所定以上の関連の強さを有するノードを対象にして知識差異を抽出することもできる。具体的には、(3)の処理で抽出した各対話者のキーワード知識は、キーワードである「高血圧」をルートとしたネットワークである。キーワードから遠い知識は重要でないと判断し、例えば、ルートから5階層目までの情報(ノード)を用い、それ以降の階層は無視する。そして、5階層目までのノードに対して、ノードの一致率やノード間の距離、ノードの繋がり方に基づいて知識差異(差異率)を抽出することができる。
【0057】
また、(1)~(5)の処理は、コミュニケーションの内容の変化に合わせて動的に変化させることもできる。対話は時々刻々と進められており、新たなコミュニケーション情報が随時入力される。そこで、キーワード取得部31dは、ある一定量のコミュニケーション情報を取得する度に推定を行う。例えば、図9に示すように、キーワード取得部31dは、コミュニケーション情報を定期的に監視し、新規に300文字以上のコミュニケーション情報が入力されたら再度、推定を行ったり、予め定めた所定時間が経過したら再度、推定を行ったりする。また、キーワード推定に利用する情報は、最新の情報から一定量を用いることができる。例えば、1000文字を上限とした場合、遡って1000文字までのコミュニケーション情報を使用してキーワード推定を行う。そして、キーワードが変化した場合は、再度推定したキーワードに対して、(3)のキーワード知識の抽出、(4)の知識差異の抽出、(5)の報知の判定、報知を改めて行う。
【0058】
以下、コミュニケーション支援装置30の具体的な処理について説明する。CPUは、ROM又は記憶部32に記憶したコミュニケーション支援プログラムをRAMに展開して実行することにより、図10及び図11のフローチャート図に示す各ステップの処理を実行する。
【0059】
まず、制御部31(対話者特定部31b)は、コミュニケーション情報から対話者を特定して個人IDを取得する(S101)。対話者が特定できなかった場合は(S102のNo)、個人知識DBのある個人でないことを通知して(S103)、一連の処理を終了する。
【0060】
一方、対話者が特定できた場合は(S102のYes)、必要に応じて、制御部31(音声認識部31c)は、音声情報をテキスト情報に変換し、制御部31(キーワード取得部31d)は、対話内容からキーワードを推定する(S104)。次に、制御部31(キーワード知識抽出部31e)は、取得した個人IDを用いて各対話者の個人知識DBにアクセスし(S105)、推定したキーワードを用いて、各対話者の個人知識DBの中からキーワード知識を抽出する(S106)。その際、抽出した各対話者のキーワード知識を図7に示すようなイメージ図で可視化することできる。
【0061】
そして、対話者分、S106の処理を実行したら、制御部31(知識差異抽出部31f)は、対話者分のキーワード知識の差分情報(差異率)を抽出する(S107)。その際、抽出したキーワード知識の差分情報(差異率)を図8に示すようなイメージ図で可視化することができる。
【0062】
その後、制御部31(報知判定部31g)は、抽出したキーワード知識の差分情報(差異率)から、報知の必要性を判定する(S108)。報知が不要と判断した場合は、S101に戻ってコミュニケーション情報を監視し、報知が必要と判断した場合は、報知部34は、対話者間でキーワード知識に差異がある旨の報知を行って(S109)、一連の処理を終了する。
【0063】
図10は、あるキーワードに関してコミュニケーションを行っている場合の処理であるが、コミュニケーションは時々刻々変化しており、それに伴ってキーワードも変化する。その場合は、図11に示すように、制御部31(キーワード取得部31d)は、定期的に(例えば、一定量の文字数や一定時間毎に)キーワードを推定する(S201)。次に、制御部31(キーワード取得部31d)は、キーワードに変化があるかを判断し(S202)、変化がない場合は(S202のNo)、S201に戻ってキーワードを推定し、キーワードに変化がある場合は(S202のYes)、新たなキーワードに対して、図10に示した処理を行う(S203)。
【0064】
このように、キーワードに対して一定以上の知識差異がある場合は、コミュニケーションの対話者にその旨を報知することにより、互いに知識差異があることを認識した上でコミュニケーションを行うことができ、思わぬ誤解や認識齟齬によって話が噛み合わないという状況の発生を未然に防止することができる。
【0065】
なお、本発明は上記実施例の記載に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、その構成や制御は適宜変更可能である。
【0066】
例えば、上記実施例では、コミュニケーション支援装置30の記憶部32に個人知識DBを保存する場合について記載したが、ネットワーク上のサーバなどに個人知識DBが保存され、コミュニケーション支援装置30がサーバの個人知識DBにアクセスして、各対話者のキーワード知識を取得する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、情報端末を用いたコミュニケーションを支援するコミュニケーション支援プログラム、当該コミュニケーション支援プログラムを記録した記録媒体、コミュニケーション支援システム及びコミュニケーション支援方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 コミュニケーション支援システム
20 情報端末
21 制御部
21a 対話アプリケーション
21b 情報収集アプリケーション
22 記憶部
23 ネットワークI/F部
24 映像入力部
25 音声入出力部
26 表示部
27 操作部
30 コミュニケーション支援装置
31 制御部
31a 知識情報抽出部
31b 対話者特定部
31c 音声認識部
31d キーワード取得部
31e キーワード知識抽出部
31f 知識差異抽出部
31g 報知判定部
32 記憶部
33 ネットワークI/F部
34 報知部
40 通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11