(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240220BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20240220BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240220BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/01 114
G03G21/00 314
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2019204130
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮介
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-292416(JP,A)
【文献】特開2012-198303(JP,A)
【文献】特開2011-027849(JP,A)
【文献】特開2017-044877(JP,A)
【文献】特開2008-185914(JP,A)
【文献】特開平11-052803(JP,A)
【文献】特開2012-181325(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0094737(US,A1)
【文献】特開2014-115339(JP,A)
【文献】特開2019-032426(JP,A)
【文献】特開2000-075674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/01
G03G 21/00
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる色の画像を形成する複数の画像形成部と、
前記画像形成部に沿って移動する無端状の中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを挟んで前記各画像形成部に配置された像担持体に対向配置され、前記像担持体上に形成され
たトナー像を前記中間転写ベルト上に一次転写する複数の一次転写部材と、
前記中間転写ベルトに対向する位置に配置されるクリーニング部材を有し、前記中間転写ベルトの表面に残留したトナーを除去するクリーニング装置と、
前記中間転写ベルト上に一次転写された
前記トナー像を記録媒体上に二次転写する二次転写部材と、
前記二次転写部材に前記トナーと逆極性の転写電圧または前記トナーと同極性の転写逆電圧を印加する電圧印加装置と、
前記中間転写ベルト上に一次転写された前記トナー像の濃度および位置情報を検知する画像濃度センサーと、
前記画像形成部および前記電圧印加装置を制御する制御部と、
を備え、前記中間転写ベルト上に形成されるパッチ画像の濃度および位置情報を前記画像濃度センサーにより検知し、検知結果に基づいて画像形成条件を調整することにより前記トナー像の濃度および色ずれを補正するキャリブレーションを実行する画像形成装置において、
前記制御部は、前記キャリブレーションの実行時に前記二次転写部材に前記転写電圧を印加することにより前記中間転写ベルト上に形成される前記パッチ画像の一部を前記二次転写部材に転写するクリーニングアシストモードを実行可能であり、
前記中間転写ベルトの1周後に前記中間転写ベルト上に前記トナー像を形成する場合は前記クリーニングアシストモードを実行し、前記中間転写ベルトの1周後に前記中間転写ベルト上に前記トナー像を形成しない場合は前記二次転写部材に前記転写逆電圧を継続して印加
し、
前記制御部は、前記二次転写部材に前記転写電圧と前記転写逆電圧を交互に繰り返し印加して前記クリーニングアシストモードを実行し、
前記制御部は、前記中間転写ベルトの1周後に前記中間転写ベルト上に形成される前記パッチ画像の形成位置が前記二次転写部材を通過するタイミングでは前記二次転写部材に前記転写電圧を印加し、それ以外のタイミングでは前記二次転写部材に前記転写逆電圧を印加して前記クリーニングアシストモードを実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記中間転写ベルトの1周後に前記中間転写ベルト上に形成される前記パッチ画像が濃度補正用パッチ画像であるとき、前記クリーニングアシストモードを実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
異なる色の画像を形成する複数の画像形成部と、
前記画像形成部に沿って移動する無端状の中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを挟んで前記各画像形成部に配置された像担持体に対向配置され、前記像担持体上に形成されたトナー像を前記中間転写ベルト上に一次転写する複数の一次転写部材と、
前記中間転写ベルトに対向する位置に配置されるクリーニング部材を有し、前記中間転写ベルトの表面に残留したトナーを除去するクリーニング装置と、
前記中間転写ベルト上に一次転写された前記トナー像を記録媒体上に二次転写する二次転写部材と、
前記二次転写部材に前記トナーと逆極性の転写電圧または前記トナーと同極性の転写逆電圧を印加する電圧印加装置と、
前記中間転写ベルト上に一次転写された前記トナー像の濃度および位置情報を検知する画像濃度センサーと、
前記画像形成部および前記電圧印加装置を制御する制御部と、
を備え、前記中間転写ベルト上に形成されるパッチ画像の濃度および位置情報を前記画像濃度センサーにより検知し、検知結果に基づいて画像形成条件を調整することにより前記トナー像の濃度および色ずれを補正するキャリブレーションを実行する画像形成装置において、
前記制御部は、前記キャリブレーションの実行時に前記二次転写部材に前記転写電圧を印加することにより前記中間転写ベルト上に形成される前記パッチ画像の一部を前記二次転写部材に転写するクリーニングアシストモードを実行可能であり、
前記中間転写ベルトの1周後に前記中間転写ベルト上に前記トナー像を形成する場合は前記クリーニングアシストモードを実行し、前記中間転写ベルトの1周後に前記中間転写ベルト上に前記トナー像を形成しない場合は前記二次転写部材に前記転写逆電圧を継続して印加し、
前記制御部は、前記中間転写ベルトの1周後に前記中間転写ベルト上に形成される前記トナー像が前記記録媒体上に転写される印字画像であるときは、前記二次転写部材に前記転写逆電圧を印加することにより前記クリーニングアシストモードにおいて前記二次転写部材に転写された前記パッチ画像を前記中間転写ベルト上に戻す二次転写クリーニングを実行することを特徴とす
る画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記中間転写ベルト
上の前記トナー像を前記記録媒体上に二次転写する際に印加される基準転写電圧に比べて低い前記転写電圧を前記二次転写部材に印加して前記クリーニングアシストモードを実行することを特徴とする
請求項1乃至請求項3
のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記クリーニング部材は、ファーブラシであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写ベルトを備えた中間転写式の画像形成装置に関し、特に、キャリブレーションの実行時に中間転写ベルトの表面に形成されたトナー像を効率よく除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所定方向に回動される無端状の中間転写ベルトと、この中間転写ベルトに沿って設けられた複数の画像形成部とを備え、各画像形成部により中間転写ベルト上に各色のトナー像を順次重ね合わせて一次転写した後、記録媒体上に二次転写する中間転写方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
このような中間転写方式の画像形成装置においては、二次転写後に中間転写ベルト上に残存するトナーを除去するベルトクリーニング装置が設けられている。中間転写ベルトが弾性層を有する場合は、中間転写ベルトの表面に残存するトナーを機械的、電気的に回収するクリーニングブラシと、クリーニングブラシからトナーを回収する回収ローラーと、回収ローラーの表面からトナーを掻き落とすブレードと、回収ローラーの表面から掻き落とされたトナーを廃トナー回収容器へ搬送する搬送スパイラルと、をハウジング内に備えたクリーニング装置が用いられる。
【0004】
ところで、画像形成装置においては、発色性や色の再現性を向上させるために、所定のタイミングで画像濃度や色ずれを補正する必要がある。また、画像濃度や色ずれを補正する際に形成されるパッチ画像は、いわゆるベタ画像であることが多い。そのため、クリーニング装置によってパッチ画像を除去する場合、中間転写ベルト上に転写されたトナーの一部が、クリーニングブラシによる一度の清掃で除去しきれない場合が生じる。
【0005】
従来は、キャリブレーションの実行時に、パッチ画像の印字後におけるベルトの周回数(周回時間)を増やすことにより、中間転写ベルトのクリーニング時間を確保していた。しかし、この方法ではキャリブレーションの実行時間が延長されるため、印字待ち時間が長くなるという問題点があった。
【0006】
そこで、特許文献1、2には、中間転写ベルト上に転写されたパッチ画像の濃度を検知した後、パッチ画像の一部を一旦二次転写ローラー側に転写させた後、二次転写ローラー側に転写させたパッチ画像を再び中間転写ベルト側に戻すように制御する画像形成装置が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、二次転写ローラー上にパッチ画像同士が重ならない間隔となるように、パッチ画像形成部により形成される複数のパッチ画像の位置を調整することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-27849号公報
【文献】特開2017-44877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1、2の方法では、中間転写ベルト上に転写されたパッチ画像を二次転写ローラー側に転写させることで中間転写ベルトのクリーニング性は確保することはできる。しかしながら、二次転写ローラー側へ転写されるトナー量が多量になると、二次転写ローラー上にトナーが残留してしまい、直後の印字動作において用紙の裏面が汚染されるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、キャリブレーションの実行時間を極力短縮しつつ、二次転写部材へのトナーの残留による記録媒体の裏汚れも抑制可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、複数の画像形成部と、中間転写ベルトと、複数の一次転写部材と、クリーニング装置と、二次転写部材と、電圧印加装置と、画像濃度センサーと、制御部と、を備え、中間転写ベルト上に形成されるパッチ画像の濃度および位置情報を画像濃度センサーにより検知し、検知結果に基づいて画像形成条件を調整することによりトナー像の濃度および色ずれを補正するキャリブレーションを実行する画像形成装置である。複数の画像形成部は、異なる色の画像を形成する。中間転写ベルトは、無端状であって画像形成部に沿って移動する。複数の一次転写部材は、中間転写ベルトを挟んで各画像形成部に配置された像担持体に対向配置され、像担持体上に形成されたトナー像を中間転写ベルト上に一次転写する。クリーニング装置は、中間転写ベルトに対向する位置に配置されるクリーニング部材を有し、中間転写ベルトの表面に残留したトナーを除去する。二次転写部材は、中間転写ベルト上に一次転写されたトナー像を記録媒体上に二次転写する。電圧印加装置は、二次転写部材にトナーと逆極性の転写電圧またはトナーと同極性の転写逆電圧を印加する。画像濃度センサーは、中間転写ベルト上に一次転写されたトナー像の濃度および位置情報を検知する。制御部は、画像形成部および電圧印加装置を制御する。制御部は、キャリブレーションの実行時に中間転写ベルト上に形成されるパッチ画像の一部を二次転写部材に転写するクリーニングアシストモードを実行可能である。制御部は、中間転写ベルトの1周後に中間転写ベルト上にトナー像を形成する場合はクリーニングアシストモードを実行し、中間転写ベルトの1周後に中間転写ベルト上にトナー像を形成しない場合は二次転写部材に転写逆電圧を継続して印加する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の構成によれば、中間転写ベルトの1周後に中間転写ベルト上にトナー像が形成される場合は、二次転写部材にパッチ画像の一部を転写するクリーニングアシストモードを実行することで中間転写ベルト上のトナー量が削減される。その結果、中間転写ベルト上のトナーをクリーニング装置によって一度にクリーニングすることができ、クリーニングの待ち時間が短縮される。一方、中間転写ベルトの1周後に中間転写ベルト上にトナー像が形成されない場合は二次転写部材へのトナーの転写が規制される。従って、キャリブレーションの実行時間および印字待ち時間を極力短縮しつつ、二次転写部材に付着したトナーによる記録媒体の裏汚れも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の内部構成を示す概略図
【
図3】キャリブレーションに用いる色ずれ補正用の基準画像の一例を示す図
【
図4】キャリブレーションに用いる濃度補正用の基準画像の一例を示す図
【
図5】画像形成装置100に搭載される中間転写ユニット30の側面断面図
【
図6】
図5に示したベルトクリーニングユニット19の外観斜視図
【
図7】ベルトクリーニングユニット19の内部構成を示す側面断面図
【
図8】画像形成装置100の制御経路の一例を示すブロック図
【
図9】画像形成装置100において実行されるキャリブレーション中のベルトクリーニング制御例を示すフローチャート
【
図10】クリーニングアシストモードにおける二次転写ローラー9への転写電圧および転写逆電圧の印加手順を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の構成を示す概略図であり、
図2は、
図1における画像形成部Pa付近の拡大図である。
【0015】
図1に示す画像形成装置100は、いわゆるタンデム方式のカラープリンターであり、以下のような構成になっている。画像形成装置100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、PcおよびPdが、搬送方向上流側(
図1では左側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa~Pdは、異なる4色(マゼンタ、シアン、イエローおよびブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像および転写の各工程によりマゼンタ、シアン、イエローおよびブラックの画像を順次形成する。
【0016】
これらの画像形成部Pa~Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1cおよび1dが配設されている。さらに
図1において反時計回り方向に回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa~Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a~1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a~1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次転写された後、二次転写ローラー9において記録媒体の一例としての用紙S上に一度に転写される。さらに、定着部13において用紙S上に定着された後、画像形成装置100本体より排出される。感光体ドラム1a~1dを
図1において時計回り方向に回転させながら、各感光体ドラム1a~1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0017】
トナー像が転写される用紙Sは、画像形成装置100の本体下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラー12aおよびレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9へと搬送される。中間転写ベルト8には継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。
【0018】
次に、画像形成部Pa~Pdについて説明する。以下、画像形成部Paについて詳細に説明するが、画像形成部Pb~Pdについても基本的に同様の構成であるため説明を省略する。
図2に示すように、感光体ドラム1aの周囲には、ドラム回転方向(
図2の時計回り方向)に沿って帯電装置2a、現像装置3a、クリーニング装置7aが配設され、中間転写ベルト8を挟んで一次転写ローラー6aが配置されている。また、感光体ドラム1aに対し中間転写ベルト8の回転方向上流側には中間転写ベルト8を挟んでテンションローラー11に対向するベルトクリーニングユニット19が配置されている。
【0019】
次に、画像形成装置100における画像形成手順について説明する。ユーザーにより画像形成開始が入力されると、先ず、メインモーター61(
図8参照)により感光体ドラム1a~1dの回転が開始され、帯電装置2a~2dの帯電ローラー20によって感光体ドラム1a~1dの表面を一様に帯電させる。次いで露光装置5から出射されたビーム光(レーザー光)によって感光体ドラム1a~1dの表面を光照射し、各感光体ドラム1a~1d上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。
【0020】
現像装置3a~3dには、それぞれマゼンタ、シアン、イエローおよびブラックの各色のトナーが所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a~3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ4a~4dから各現像装置3a~3dにトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a~3dの現像ローラー21により感光体ドラム1a~1d上に供給され、静電的に付着する。これにより、露光装置5からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0021】
そして、一次転写ローラー6a~6dにより一次転写ローラー6a~6dと感光体ドラム1a~1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a~1d上のマゼンタ、シアン、イエローおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a~1dの表面に残留したトナーがクリーニング装置7a~7dのクリーニングブレード22および摺擦ローラー23により除去される。
【0022】
ベルト駆動モーター63(
図8参照)による駆動ローラー10の回転に伴い中間転写ベルト8が反時計回り方向に回転を開始すると、用紙Sがレジストローラー対12bから所定のタイミングで中間転写ベルト8に隣接して設けられた二次転写ローラー9へ搬送され、フルカラー画像が転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部13へと搬送される。中間転写ベルト8の表面に残存したトナーはベルトクリーニングユニット19によって除去される。
【0023】
定着部13に搬送された用紙Sは、定着ローラー対13aにより加熱および加圧されてトナー像が用紙Sの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された用紙Sは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられ、そのまま(或いは、両面搬送路18に送られて両面印字された後に)、排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0024】
中間転写ベルト8を挟んで駆動ローラー10と対向する位置には画像濃度センサー25が配置されている。画像濃度センサー25としては、一般にLED等から成る発光素子と、フォトダイオード等から成る受光素子を備えた光学センサーが用いられる。中間転写ベルト8上のトナー付着量を測定する際、発光素子から中間転写ベルト8上に形成された各パッチ画像(基準画像)に対し測定光を照射すると、測定光はトナーによって反射される光、およびベルト表面によって反射される光として受光素子に入射する。
【0025】
トナーおよびベルト表面からの反射光には正反射光と乱反射光とが含まれる。この正反射光および乱反射光は、偏光分離プリズムで分離された後、それぞれ別個の受光素子に入射する。各受光素子は、受光した正反射光と乱反射光を光電変換して制御部90(
図8参照)に出力信号を出力する。
【0026】
そして、正反射光と乱反射光の出力信号の特性変化からパッチ画像の画像濃度(トナー量)、画像位置を検知し、予め定められた基準濃度、基準位置と比較して現像電圧の特性値、露光装置5の露光開始位置およびタイミング等を調整することにより、各色について濃度補正および色ずれ補正(キャリブレーション)が行われる。
【0027】
図3は、キャリブレーションに用いる色ずれ補正用のパッチ画像(基準画像)の一例を示す図である。中間転写ベルト8の幅方向の両端部には、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの各色の斜線と横線M、C、Y、Kからなる基準画像が形成されている。なお、矢印X1はベルト進行方向を示している。
図3に示す基準画像M~Kのパターンは一般的なものであり、各色の斜線と横線を用いて主走査方向(ベルト幅方向)の色ずれを検出し、各色の横線間の間隔から副走査方向(ベルト周方向)の色ずれを検出する。
【0028】
また、基準画像M~Kは主走査方向(ベルト幅方向)の両端部に同一パターンで形成されることにより、主走査等倍度や走査傾きを検出可能となっている。さらに、ベルト周方向の色ずれの検知むらを低減するため、基準画像M~Kは副走査方向に繰り返し形成されており、同一パターンを複数回測定してずれ量の平均値を取るようになっている。これら各色の斜線および直線の位置関係を画像濃度センサー25で検知して予め決められた基準位置と比較し、主走査方向の色ずれを補正する場合は露光装置5の露光開始位置を調整し、副走査方向の色ずれを補正する場合は露光装置5の露光開始タイミングを調整することにより、各色について色ずれ補正が行われる。
【0029】
図4は、キャリブレーションに用いる濃度補正用のパッチ画像(基準画像)の一例を示す図である。中間転写ベルト8の幅方向の一端部には、最も淡色の画像m1から最も濃色の画像m10まで10段階の濃度のパッチ画像m1~m10から成る基準画像mが、ベルト進行方向(矢印X1方向)に沿って下流側から順に一列に形成されている。隣接するパッチ画像は、境界において濃度が変化するようにそれぞれ単色で形成されている。なお、ここではマゼンタの基準画像mを例に挙げて説明したが、シアン、イエロー、ブラックの基準画像c、y、kについても全く同様の構成である。
【0030】
基準画像m~kのトナー付着量(トナー濃度)を画像濃度センサー25により検知して予め決められた標準濃度と比較し、各トナー濃度と標準濃度との濃度差の平均値が算出される。得られた濃度差の平均値に応じて濃度補正に用いるパラメーター値が濃度補正テーブルから読み出され、各色について濃度補正が実行される。
【0031】
図5は、画像形成装置100に搭載される中間転写ユニット30の側面断面図である。
図5に示すように、中間転写ユニット30は、下流側の駆動ローラー10と上流側のテンションローラー11とに掛け渡された中間転写ベルト8と、中間転写ベルト8を介して感光体ドラム1a~1dに接触する一次転写ローラー6a~6dと、押圧切換ローラー34と、を有する。また、テンションローラー11に対向する位置には、中間転写ベルト8の表面に残存するトナーを除去するためのベルトクリーニングユニット19が配置されている。ベルトクリーニングユニット19の詳細な構成については後述する。
【0032】
中間転写ユニット30は、一次転写ローラー6a~6dおよび押圧切換ローラー34の回転軸の両端部を回転可能、且つ中間転写ベルト8の進行方向に対し垂直(
図5の上下方向)に移動可能に支持する一対の支持部材(図示せず)と、一次転写ローラー6a~6dおよび押圧切換ローラー34を上下方向に往復移動させる駆動手段(図示せず)と、を有するローラー接離機構35を備えている。ローラー接離機構35は、4本の一次転写ローラー6a~6dを、それぞれ中間転写ベルト8を介して感光体ドラム1a~1d(
図1参照)に圧接するカラーモードと、一次転写ローラー6dのみを中間転写ベルト8を介して感光体ドラム1dに圧接するモノクロモードと、4本の一次転写ローラー6a~6dの全てを感光体ドラム1a~1dから離間させる退避モードとに切り替え可能である。
【0033】
具体的には、ローラー接離機構35は押圧切換ローラー34を上方に移動させることで中間転写ベルト8と共に一次転写ローラー6a~6dも上方に移動し、一次転写ローラー6a~6dが感光体ドラム1a~1dから離間する。ここで、押圧切換ローラー34は一次転写ローラー6aよりもテンションローラー11側に配置されているため、中間転写ベルト8の下面(感光体ドラム1a~1dとの接触面)は駆動ローラー10側を支点として上下に揺動する。そのため、中間転写ベルト8と感光体ドラム1a~1dとの距離は感光体ドラム1a側で最大となり、感光体ドラム1d側で最小となる。即ち、押圧切換ローラー34の移動量を調整することで、カラーモード、モノクロモード、退避モードの切り替えが可能となる。
【0034】
図6は、
図5に示した中間転写ユニット30におけるベルトクリーニングユニット19の外観斜視図である。
図7は、ベルトクリーニングユニット19の内部構成を示す側面断面図である。ベルトクリーニングユニット19は、ハウジング40内に、ファーブラシ41、回収ローラー43、ブレード45、搬送スパイラル47を備えている。ハウジング40の一端にはファーブラシ41、回収ローラー43、および搬送スパイラル47にクリーニング駆動モーター(図示せず)からの駆動力を入力する駆動入力ギア列48が配置されている。
【0035】
ファーブラシ41は、ハウジング40の開口部40a側において、中間転写ベルト8を介してテンションローラー11と対向配置されている。ファーブラシ41は、中間転写ベルト8の移動方向に対しカウンター方向(
図7の反時計回り方向)に回転することにより、中間転写ベルト8上に残存するトナーや紙粉等の異物(以下、トナー等という)を掻き取る。回収ローラー43に接触するファーブラシ41のブラシ部分は抵抗値1~900MΩ程度の導電性の繊維で形成されている。
【0036】
回収ローラー43は、ファーブラシ41の表面に接触しながらファーブラシ41と逆方向(
図7の時計回り方向)に回転することにより、ファーブラシ41に付着したトナー等を回収する。回収ローラー43にはベルトクリーニング電圧電源75(
図8参照)が接続されており、中間転写ベルト8のクリーニング時にトナーと逆極性(ここでは負極性)のクリーニング電圧が印加される。また、テンションローラー11はグランドに接地(アース)されている。その結果、中間転写ベルト8上に残存するトナー等はファーブラシ41のブラシ部分に電気的および機械的に回収され、さらに回収ローラー43に電気的に移動する。
【0037】
ファーブラシ41、回収ローラー43の各回転軸41a、43aは、ハウジング40に回転可能に支持されている。また、ファーブラシ41の回転軸41aは圧縮バネ49によって
図7の右上方向(テンションローラー11方向)に付勢されている。
【0038】
ブレード45は、回収ローラー43の回転方向に対し下流側(回収ローラー43の表面の移動方向に対しカウンター方向)から回収ローラー43に接触して回収ローラー43によって回収されたトナー等を掻き落とし、回収ローラー43を清掃する。搬送スパイラル47は、ハウジング40のトナー収容部40b内に配置されており、ブレード45によって回収ローラー43から掻き落とされたトナー等をハウジング40の外部の廃トナー回収容器(図示せず)へ搬送する。
【0039】
ハウジング40内には回収ローラー43の長手方向(
図7の紙面と垂直な方向)の全域に亘ってシート部材50が対向配置されている。シート部材50は、例えばポリウレタン等で形成されたシート状の部材であり、所定の接触圧で回収ローラー43に接触している。シート部材50の接触圧は、回収ローラー43に付着しているトナーは掻き落とさずに、ブレード45で掻き落としたトナー等が再び回収ローラー43側に向かわないように設定される。
【0040】
回収ローラー43の両端部とハウジング40との間にはウレタンフォームやウレタンスポンジ等の弾性材料から成るシール部材51が配置されている。
図7に示すように、シール部材51は回収ローラー43の回転方向(
図7の時計回り方向)に対しブレード45の上流側、且つシール部材50の下流側の範囲において回収ローラー43の外周面に接触するように側面視円弧状に延在し、さらにシート部材50に沿って下方に延在するように配置される。シール部材51が回収ローラー43とハウジング40とに挟まれて圧縮されることにより、回収ローラー43とハウジング40との隙間へのトナーの進入を防止し、ハウジング40の外部へのトナーの漏出を防止している。
【0041】
図8は、画像形成装置100に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、画像形成装置100を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、画像形成装置100全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
【0042】
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き可能な記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、カウンター95、画像形成装置100内の各装置に制御信号を送信したり操作部80からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96を少なくとも備えている。また、制御部90は、画像形成装置100の本体内部の任意の場所に配置可能である。
【0043】
ROM92には、画像形成装置100の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、画像形成装置100の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、画像形成装置100の制御途中で発生した必要なデータや、画像形成装置100の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。また、RAM93(またはROM92)には、キャリブレーションに用いる濃度補正テーブルや、後述するベルトクリーニング制御における二次転写電圧の印加パターン等も記憶される。カウンター95は、印字枚数を積算してカウントする。
【0044】
また、制御部90は、画像形成装置100における各部分、装置に対し、CPU91からI/F96を通じて制御信号を送信する。また、各部分、装置からその状態を示す信号や入力信号がI/F96を通じてCPU91に送信される。制御部90が制御する各部分、装置としては、例えば、画像形成部Pa~Pd、露光装置5、一次転写ローラー6a~6d、二次転写ローラー9、ローラー接離機構35、メインモーター61、ベルト駆動モーター63、電圧制御回路71、操作部80等が挙げられる。
【0045】
画像入力部70は、画像形成装置100にパソコン等の上位機器から送信される画像データを受信する受信部である。画像入力部70より入力された画像信号はデジタル信号に変換された後、一時記憶部94に送出される。
【0046】
電圧制御回路71は、帯電電圧電源72、現像電圧電源73、転写電圧電源74、ベルトクリーニング電圧電源75と接続され、制御部90からの出力信号によりこれらの各電源を作動させる。これらの各電源は、電圧制御回路71からの制御信号によって、帯電電圧電源72は帯電装置2a~2d内の帯電ローラー20に、現像電圧電源73は現像装置3a~3d内の現像ローラー21に、転写電圧電源74は一次転写ローラー6a~6dおよび二次転写ローラー9に、ベルトクリーニング電圧電源75はベルトクリーニングユニット19の回収ローラー43に、それぞれ所定の電圧を印加する。
【0047】
操作部80には、液晶表示部81、各種の状態を示すLED82が設けられており、ユーザーは操作部80のストップ/クリアボタンを操作して画像形成を中止し、リセットボタンを操作して画像形成装置100の各種設定をデフォルト状態にする。液晶表示部81は、画像形成装置100の状態を示したり、画像形成状況や印字部数を表示したりするようになっている。画像形成装置100の各種設定はパソコンのプリンタードライバーから行われる。
【0048】
前述したように、クリーニング部材としてファーブラシ41を用いるベルトクリーニングユニット19では、キャリブレーションの実行時に形成されるパッチ画像をクリーニングする際に多量のトナーが供給されると、ファーブラシ41によってトナーを一度に回収することができず、中間転写ベルト8上にトナーが残存することがあった。残存したトナーは中間転写ベルト8の周回数(周回時間)を増加させることで回収可能であるが、キャリブレーションの実行時間が長くなる。
【0049】
一方、キャリブレーションの実行時に二次転写ローラー9にトナーと逆極性の転写電圧を印加して中間転写ベルト8上のパッチ画像を二次転写ローラー9に転写した場合、ベルトクリーニングユニット19に供給されるトナー量が削減され、ファーブラシ41によってトナーを一度に回収可能となる。しかし、キャリブレーションの終了時に二次転写ローラー9にトナーと同極性の転写逆電圧を印加して二次転写ローラー9上のトナーを中間転写ベルト8に戻す際に、二次転写ローラー9上にトナーが残留し、直後の印字動作において用紙Sの裏面が汚染されるおそれがあった。
【0050】
そこで、本実施形態の画像形成装置100では、中間転写ベルト8上のパッチ画像を二次転写ローラー9に転写するクリーニングアシストモードの実行時間を必要最小限に制限することで、ファーブラシ41によって一度に回収しきれなかったトナーの中間転写ベルト8への残留(クリーニング不良)や、キャリブレーション時間の延長等の不具合を解消しつつ、二次転写ローラー9へのトナーの残留を極力抑制することとしている。
【0051】
具体的には、中間転写ベルト8上のパッチ画像を一度でクリーニングする必要があるのは、中間転写ベルト8が1周した後(以下、ベルト1周後という)もキャリブレーションが継続しておりパッチ画像を形成する場合、またはベルト1周後に印字動作を行う場合のいずれかである。これに対し、ベルト1周後にはキャリブレーションが終了しており、印字動作も行わない場合はパッチ画像を一度でクリーニングする必要はない。中間転写ベルト8上に残存したトナーは中間転写ベルト8の周回数(周回時間)を増加させてクリーニングすればよい。
【0052】
即ち、ベルト1周後にトナー像の形成を行う場合はクリーニングアシストモードを実行してベルトクリーニングユニット19に供給されるトナー量を削減し、ファーブラシ41によって一度に回収可能とする。一方、ベルト1周後にトナー像の形成を行わない場合はクリーニングアシストモードを実行せず、二次転写ローラー9へのトナーの転写を禁止する。これにより、二次転写ローラー9上へのトナーの残留を抑制しつつ、不必要な中間転写ベルト8の駆動時間を削減して印字待ち時間(ダウンタイム)を極力短縮することができる。
【0053】
図9は、本発明の画像形成装置100において実行されるキャリブレーション中のベルトクリーニング制御例を示すフローチャートである。必要に応じて
図1~
図8、および後述する
図10を参照しながら、
図9のステップに沿ってベルトクリーニングの実行手順について説明する。
【0054】
先ず、制御部90は、キャリブレーションの実行タイミングであるか否かを判定する(ステップS1)。キャリブレーションの実行タイミングは、例えば画像形成装置100の電源投入時、省電力(スリープ)モードからの復帰時、前回のキャリブレーションからの累積印字枚数が所定枚数に到達したとき等である。ステップS1においてキャリブレーション実行条件を満たさない場合は(ステップS1でNo)キャリブレーションを実行せずに印字命令の待機状態を継続する。
【0055】
キャリブレーションの実行タイミングである場合は(ステップS1でYes)、キャリブレーションを開始する。具体的には、マゼンタ、シアン、イエローおよびブラックの各色について、濃度補正用の複数のパッチ画像m、c、y、kおよび色ずれ補正用の複数のパッチ画像M、C、Y、Kを形成する(ステップS2)。そして、中間転写ベルト8上に転写されたパッチ画像m、c、y、kの濃度およびパッチ画像M、C、Y、Kの位置関係を画像濃度センサー25により検知し(ステップS3)、検知結果を用いてキャリブレーションを実行する。
【0056】
また制御部90は、ベルト1周後にトナー像を形成するか否かを判定する(ステップS4)。ベルト1周後にトナー像を形成するのは、ベルト1周後もキャリブレーションが継続しており、パッチ画像を形成する場合、あるいはキャリブレーションの終了直後に印字動作が予定されている場合のいずれかである。
【0057】
ベルト1周後にトナー像を形成する場合は(ステップS4でYes)、キャリブレーションが継続しておりパッチ画像が継続して形成される場合、キャリブレーションが終了し、直後に印字動作が実行される場合のいずれかである。この場合、ベルトクリーニングユニット19によって中間転写ベルト8上のトナーを一度にクリーニングする必要がある。
【0058】
そこで、制御部90は中間転写ベルト8上のパッチ画像の一部を二次転写ローラー9に転写するクリーニングアシストモードを実行する(ステップS5)。具体的には、制御部90は電圧制御回路71に制御信号を送信し、転写電圧電源74から二次転写ローラー9にトナーと逆極性(負極性)の転写電圧とトナーと同極性(正極性)の転写逆電圧とを交互に印加することにより、二次転写ローラー9にパッチ画像の一部を移動させる。より詳細には、後述する
図10に示すように、中間転写ベルト8上のパッチ画像の形成位置に合わせて転写電圧と転写逆電圧とを切り換える。
【0059】
次に、制御部90はパッチ画像の形成が終了したか否かを判定する(ステップS6)。パッチ画像の形成が継続している場合は(ステップS6でNo)ステップS2に戻り、パッチ画像の形成、画像濃度および画像位置の検知を継続する。パッチ画像の形成が終了した場合は(ステップS6でYes)、直後に印字動作が実行されるため、印字動作に備えて二次転写ローラー9に転写されたトナーを中間転写ベルト8上に戻すために二次転写ローラー9に転写逆電圧を印加するローラークリーニングを実行する(ステップS7)。
【0060】
一方、ステップS4でベルト1周後にトナー像を形成しない場合は(ステップS4でNo)、キャリブレーションが終了しており、且つ、直後に印字動作が行われない場合である。この場合、ベルトクリーニングユニット19によって中間転写ベルト8上のトナーを一度にクリーニングする必要はない。そこで、制御部90は電圧制御回路71に制御信号を送信し、転写電圧電源74から二次転写ローラー9に転写逆電圧を印加する(ステップS8)。これにより、二次転写ローラー9へのパッチ画像の転写が禁止される。
【0061】
図10は、クリーニングアシストモードにおける二次転写ローラー9への転写電圧および転写逆電圧の印加手順を示すタイミングチャートである。
図10において、キャリブレーションの実行時間をT1、パッチ画像の形成時間をT2、二次転写ローラー9のクリーニング時間(ローラークリーニング時間)をT3で示す。また、
図10には、中間転写ベルト8上に形成されるパッチ画像、ベルト1周後のパッチ画像の形成位置、二次転写ローラー9から中間転写ベルト8上へのトナーの転写タイミングも併せて記載している。
【0062】
また、キャリブレーションは中間転写ベルト8を4周させて実行するものとし、ベルト1周目にはパターンP1のパッチ画像が形成される。同様に、ベルト2周目にはパターンP2のパッチ画像が、ベルト3周目にはパターンP3のパッチ画像が形成される。ベルト4周目には再びパターンP2のパッチ画像が形成される。
【0063】
ここで、ベルト1周後のパッチ画像の形成位置に直前のパッチ画像が残存していると、ベルト1周後に形成されたパッチ画像の検知精度が低下する。そこで、本制御例では、ベルト1周後のパッチ画像の形成位置が二次転写ローラー9を通過するタイミングで二次転写ローラー9に転写電圧を印加する。また、それ以外のタイミングでは二次転写ローラー9に転写逆電圧を印加することにより、二次転写ローラー9へのパッチ画像の転写を禁止する。以下、転写電圧および転写逆電圧の具体的な印加手順について説明する。
【0064】
図10に示すように、ベルト1周目においてパターンP1のパッチ画像の形成が開始された時点では二次転写ローラー9に転写逆電圧が印加されている。そのため、パターンP1のパッチ画像の一部(前半部分)は中間転写ベルト8に残存した状態でベルトクリーニングユニット19に到達する。ベルト2周目において中間転写ベルト8の前半部分にはパッチ画像が形成されないため、パターンP1のパッチ画像の前半部分がベルトクリーニングユニット19によって除去しきれず、中間転写ベルト8上に残存したとしてもキャリブレーションに影響はない。
【0065】
ベルト2周目には中間転写ベルト8の後半部分にパターンP2のパッチ画像が形成される。そこで、二次転写ローラー9にベルト1周目の後半部分が到達するタイミングで第1転写電圧V1の印加を開始して、パターンP1のパッチ画像の一部(後半部分)を二次転写ローラー9上に転写する。
【0066】
同様に、ベルト3周目には中間転写ベルト8の前半部分にパターンP3のパッチ画像が形成される。そこで、二次転写ローラー9にベルト2周目の前半部分が到達するタイミングにおいても第1転写電圧V1の印加を継続して、中間転写ベルト8の前半部分に残存するトナーを二次転写ローラー9上に転写する。
【0067】
そして、パターンP3のパッチ画像の形成位置が通過した時点で第1転写電圧V1から転写逆電圧に切り換える。このとき、パターンP2のパッチ画像の一部(後半部分)は中間転写ベルト8に残存した状態でベルトクリーニングユニット19に到達する。また、二次転写ローラー9に転写されたパッチ画像の一部が中間転写ベルト8上に戻される。ベルト3周目において中間転写ベルト8の後半部分にはパッチ画像が形成されないため、パターンP2のパッチ画像の後半部分、或いは二次転写ローラー9から戻されたトナーの一部が中間転写ベルト8上に残存したとしてもキャリブレーションに影響はない。
【0068】
同様に、ベルト4周目には中間転写ベルト8の後半部分にパターンP2のパッチ画像が形成される。そこで、二次転写ローラー9にベルト3周目の後半部分が到達するタイミングで第2転写電圧V2の印加を開始して、パターンP3のパッチ画像の一部(後半部分)を二次転写ローラー9上に転写する。一方、パターンP3のパッチ画像の一部(前半部分)は中間転写ベルト8に残存した状態でベルトクリーニングユニット19に到達する。
【0069】
そして、パターンP2のパッチ画像の形成位置が通過した時点で第2転写電圧V2から転写逆電圧に切り換える。これにより、二次転写ローラー9に転写されたパッチ画像の一部が中間転写ベルト8上に戻される。ベルト4周目において中間転写ベルト8の前半部分にはパッチ画像が形成されないため、パターンP3のパッチ画像の前半部分、或いは二次転写ローラー9から戻されたトナーの一部が中間転写ベルト8上に残存したとしてもキャリブレーションに影響はない。
【0070】
最後に、ベルト4周目に形成されたパターンP2のパッチ画像が到達するタイミングで第3転写電圧V3の印加を開始し、パターンP2のパッチ画像が通過した時点で第3転写電圧V3から転写逆電圧に切り換える。そして、二次転写ローラー9に転写されたパッチ画像がクリーニングされた時点で印字可能状態となる。
【0071】
ベルト1周後のパッチ画像の形成位置が二次転写ローラー9に到達するタイミングは、各画像形成部Pa~Pdにおいて中間転写ベルト8にパッチ画像が一次転写されるタイミング、各画像形成部Pa~Pdから二次転写ローラー9までの距離、および中間転写ベルト8の搬送速度から算出できる。
【0072】
なお、ベルト1周後に形成されるパッチ画像が色ずれ補正用であるか、濃度補正用であるかに応じて転写電圧の印加パターンを切り換えることも可能である。具体的には、濃度補正用のパッチ画像m、c、y、k(
図4参照)は、画像濃度センサー25で濃度検知する際に下地(ベルト表面)の影響を受け易い。そのため、常に中間転写ベルト8上の同一の位置に形成することが好ましい。
【0073】
そこで、ベルト1周後に形成されるパッチ画像が濃度補正用のパッチ画像m、c、y、kである場合は、
図10に示したようにベルト1周後のパッチ画像の形成位置が二次転写ローラー9を通過するタイミングで二次転写ローラー9に転写電圧を印加することにより、パッチ画像を二次転写ローラー9に転写する。これにより、ベルトクリーニングユニット19によってベルト1周後のパッチ画像の形成位置にあるパッチ画像を完全に除去することができ、濃度補正用のパッチ画像の検知精度が向上する。
【0074】
一方、色ずれ補正用のパッチ画像M、C、Y、K(
図3参照)は、位置を検知すれば足りるため、下地(ベルト表面)の影響は考慮しなくてもよい。そのため、中間転写ベルト8上の異なる位置に形成しても構わない。そこで、ベルト1周後に形成されるパッチ画像が色ずれ補正用のパッチ画像M、C、Y、Kである場合は、二次転写ローラー9に転写逆電圧を印加することにより、パッチ画像を二次転写ローラー9に転写しない。そして、ベルト1周後には1周前にパッチ画像の形成されていなかった位置にパッチ画像を形成する。これにより、二次転写ローラー9へ転写されるトナー量が低減されるため、二次転写ローラー9のトナー汚れを必要最小限に収めることができる。
【0075】
なお、キャリブレーションの実行直後に印字動作が予定されている場合は、用紙Sの裏汚れが発生しないように、二次転写ローラー9上に転写されたトナーを完全に中間転写ベルト8上に戻せるだけのローラークリーニング時間T3を確保しておく必要がある。
【0076】
また、キャリブレーションの実行直後に印字動作が予定されていない場合は、
図10に示した第3転写電圧V3の印加は不要となる。そして、キャリブレーションの最後(ベルト4周目)に中間転写ベルト8上に形成されたパターンP2のパッチ画像がベルトクリーニングユニット19によって完全にクリーニングされるまで中間転写ベルト8を周回させた時点で印字可能な状態となる。
【0077】
上記の制御例によれば、ベルト1周後に中間転写ベルト8上にトナー像が形成される場合は、二次転写ローラー9に転写電圧と転写逆電圧を交互に印加するクリーニングアシストモードを実行することで中間転写ベルト8上のトナー量が削減される。その結果、中間転写ベルト8上のトナーをベルトクリーニングユニット19によって一度にクリーニングすることができる。また、転写逆電圧の印加によって二次転写ローラー9に転写されたトナーが中間転写ベルト8上に戻されるため、二次転写ローラー9のクリーニング時間も短縮することができる。
【0078】
また、ベルト1周後におけるパッチ画像の形成位置に合わせて二次転写ローラー9に転写電圧を印加することにより、ベルト1周後のパッチ画像の形成位置への直前のパッチ画像の残存を防止することができる。その結果、ベルト1周後に形成されたパッチ画像の検知精度が向上する。
【0079】
また、ベルト1周後に中間転写ベルト8上にトナー像が形成されない場合は、二次転写ローラー9に転写逆電圧を印加することで二次転写ローラー9へのトナーの転写が禁止される。その結果、二次転写ローラー9に付着するトナー量を低減して用紙Sの裏汚れを効果的に抑制することができる。また、二次転写ローラー9のクリーニング時間も短縮できるため、キャリブレーションの実行時間を極力短縮することができる。
【0080】
なお、上記の制御例では、クリーニングアシストモードにおいて二次転写ローラー9に転写電圧と転写逆電圧を交互に印加することで二次転写ローラー9に転写されるトナー量を削減したが、二次転写ローラー9に印加する転写電圧として、中間転写ベルト8上のトナー像が用紙Sに二次転写される場合に印加される転写電圧(基準転写電圧)に比べて低い転写電圧を用いることで、クリーニングアシストモードにおいて二次転写ローラー9に転写されるトナー量を更に削減してもよい。
【0081】
例えば、クリーニングアシストモードにおいてパッチ画像を形成するトナーの50%が転写されるような転写電圧を二次転写ローラー9に印加し、二次転写ローラー9を通過後に残存する50%のトナーをベルトクリーニングユニット19によって除去する。即ち、二次転写ローラー9を通過後に中間転写ベルト8上に残存するトナー量が、ベルトクリーニングユニット19によって一度に除去可能な最大のトナー量以下となるような転写電圧を印加することで、クリーニング不良を抑制しつつ、二次転写ローラー9に付着するトナー量を最小限に抑えることができる。
【0082】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば上記実施形態では、ファーブラシ41を備えたベルトクリーニングユニット19を例示しているが、ファーブラシ41に代えてクリーニングローラーを用いた構成においても同様に適用できる。
【0083】
また、本発明は
図1に示したようなタンデム型のカラープリンターに限らず、カラー複写機やカラー複合機等、中間転写ベルトとベルトクリーニング装置とを用いる種々の画像形成装置に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、中間転写ベルトを備えた中間転写式の画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、キャリブレーションの実行時に中間転写ベルトの表面に形成されたトナー像を効率よく除去してキャリブレーションの実行時間を極力短縮しつつ、二次転写部材へのトナーの残留による記録媒体の裏汚れも抑制可能な画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0085】
Pa~Pd 画像形成部
1a~1d 感光体ドラム(像担持体)
6a~6d 一次転写ローラー(一次転写部材)
8 中間転写ベルト
9 二次転写ローラー(二次転写部材)
19 ベルトクリーニングユニット(クリーニング装置)
25 画像濃度センサー
30 中間転写ユニット
40 ハウジング
41 ファーブラシ(クリーニング部材)
43 回収ローラー
45 ブレード
90 制御部
100 画像形成装置
S 用紙(記録媒体)