(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240220BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240220BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01L29/78 657D
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 655B
H01L29/78 655D
H01L29/78 658A
H01L29/78 655C
H01L29/78 652C
(21)【出願番号】P 2019205018
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩島 やよい
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-103376(JP,A)
【文献】特開2019-161188(JP,A)
【文献】特開2013-008778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/739
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IGBT領域とダイオード領域に区画された半導体基板を備え
、前記IGBT領域と前記ダイオード領域が前記半導体基板の主面に平行な一方向に交互に繰り返し配置されている半導体装置であって、
前記IGBT領域に対応した前記半導体基板の一方の主面に露出する位置に設けられたp型のコレクタ領域と、
前記ダイオード領域に対応した前記半導体基板の前記一方の主面に露出する位置に設けられたn型のカソード領域と、を備えており、
前記カソード領域は、前記半導体基板のうち前記ダイオード領域に対応した全範囲に設けられており、
前記カソード領域は、前記半導体基板の前記一方の主面に設けられた下部電極にオーミック接触しており、
前記コレクタ領域のp型不純物の濃度が、前記半導体基板をその厚み方向に沿って平面視したときに、前記IGBT領域の周辺部及び中央部がそれらの間の部分よりも薄い、及び/又は、前記カソード領域のn型不純物の濃度が、前記半導体基板をその厚み方向に沿って平面視したときに、前記ダイオード領域の周辺部及び中央部がそれらの間の部分よりも薄
く、
前記IGBT領域と前記ダイオード領域が繰り返す方向における前記カソード領域のn型不純物の濃度分布は、極大値となるピークが2つのみである、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置に関する。
【0002】
特許文献1には、IGBT(insulated gate bipolar transistor)領域とダイオード領域に区画された半導体基板を備える半導体装置が開示されている。この半導体装置では、半導体基板の上面に上部電極が設けられており、半導体基板の下面に下部電極が設けられている。IGBT領域内には、上部電極がエミッタ電極となり、下部電極がコレクタ電極となるように、IGBTが設けられている。ダイオード領域内には、上部電極がアノード電極となり、下部電極がカソード電極となるようにダイオードが設けられている。
【0003】
このような半導体装置では、還流電流がダイオード領域を流れるモードにおいて、IGBT領域からダイオード領域にホールが流入することが知られている。このようなIGBT領域からダイオード領域に流入するホールによって、ダイオード領域の逆回復特性が悪化し、スイッチング損失が増加することが問題となっている。
【0004】
特許文献1では、IGBT領域とダイオード領域の境界部分に、IGBT領域のp型コレクタ領域よりもp型不純物の濃度が薄い領域、及び/又は、ダイオード領域のn型カソード領域よりもn型不純物の濃度が薄い領域を設ける技術を開示する。このような高抵抗領域を設けることにより、IGBT領域からダイオード領域に流入するホールの流入量を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の半導体装置では、IGBT領域とダイオード領域の境界部分に、例えば、p型コレクタ領域よりもp型不純物の濃度が薄い領域が設けられている場合、IGBTがオンしたときにIGBT領域を流れる電流は、半導体基板をその厚み方向に沿って平面視したときに、IGBT領域の周辺部で少なく、IGBT領域の中央部で多くなる。即ち、IGBT領域を流れる電流は、IGBT領域の中央部を局所的に流れることとなる。一方、IGBT領域とダイオード領域の境界部分に、例えば、n型カソード領域よりもn型不純物の濃度が薄い領域が設けられている場合、ダイオードがオンしたときにダイオード領域を流れる電流は、半導体基板をその厚み方向に沿って平面視したときに、ダイオード領域の周辺部で少なく、ダイオード領域の中央部で多くなる。即ち、ダイオード領域を流れる電流は、ダイオード領域の中央部を局所的に流れることとなる。このような局所的な電流集中は、熱破壊の原因となることが懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、IGBT領域とダイオード領域に区画された半導体基板を備える半導体装置を開示する。この半導体装置は、前記IGBT領域に対応した前記半導体基板の一方の主面に露出する位置に設けられたp型のコレクタ領域と、前記ダイオード領域に対応した前記半導体基板の前記一方の主面に露出する位置に設けられたn型のカソード領域と、を備えることができる。この半導体装置では、前記コレクタ領域のp型不純物の濃度が、前記半導体基板をその厚み方向に沿って平面視したときに、前記IGBT領域の周辺部及び中央部がそれらの間の部分よりも薄い、及び/又は、前記カソード領域のn型不純物の濃度が、前記半導体基板をその厚み方向に沿って平面視したときに、前記ダイオード領域の周辺部及び中央部がそれらの間の部分よりも薄い。
【0008】
上記半導体装置では、前記コレクタ領域のp型不純物の濃度が、前記IGBT領域の周辺部及び中央部でそれらの間の部分よりも薄く調整されていてもよい。この場合、前記コレクタ領域のp型不純物の濃度が前記IGBT領域の周辺部で薄いので、前記IGBT領域から前記ダイオード領域に流入するホールの流入量を抑制することができる。さらに、前記コレクタ領域のp型不純物の濃度が前記IGBT領域の中央部で薄いので、IGBTがオンしたときに前記IGBT領域を流れる電流が均一化されて局所的な電流集中が緩和される。また、上記半導体装置では、前記カソード領域のn型不純物の濃度が、前記ダイオード領域の周辺部及び中央部でそれらの間の部分よりも薄く調整されていてもよい。この場合、前記カソード領域のn型不純物の濃度が前記ダイオード領域の周辺部で薄いので、前記IGBT領域から前記ダイオード領域に流入するホールの流入量を抑制することができる。さらに、前記カソード領域のn型不純物の濃度が前記ダイオード領域の中央部で薄いので、前記ダイオード領域を流れる電流が均一化されて局所的な電流集中が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の半導体装置の平面図を模式的に示す。
【
図2】
図1のII-II線における断面図を模式的に示す。
【
図3】y方向におけるカソード領域のp型不純物の濃度分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、半導体装置10は、半導体基板12を有している。半導体基板12は、シリコン製の基板である。なお、以下では、半導体基板12の厚み方向をz方向といい、半導体基板12の上面12aに平行な一方向をx方向といい、半導体基板12の上面12aに平行かつx方向に直交する方向をy方向という。
図1に示すように、半導体基板12は、2つの素子領域18と、素子領域18の周囲に配置されている耐圧領域19を有している。各素子領域18は、IGBT領域20とダイオード領域40に区画されている。各素子領域18内において、IGBT領域20とダイオード領域40が、y方向に交互に設けられている。IGBT領域20内にはIGBTを構成するための構造が設けられており、ダイオード領域40内にはダイオードを構成するための構造が設けられている。
【0011】
図2に示すように、半導体装置10は、上部電極14と、下部電極16を有している。上部電極14は、半導体基板12の上面12a(表面)に配置されている。下部電極16は、半導体基板12の下面12b(裏面)に配置されている。このように、半導体装置10は、縦型デバイスとして構成されている。上部電極14は、IGBTのエミッタ電極とダイオードのアノード電極を兼ねている。下部電極16は、IGBTのコレクタ電極とダイオードのカソード電極を兼ねている。
【0012】
半導体基板12内には、コレクタ領域30とカソード領域48が設けられている。半導体基板12の下面12bに露出する位置に、コレクタ領域30とカソード領域48が設けられている。コレクタ領域30は、p型不純物を含むp型領域であり、下部電極16にオーミック接触している。カソード領域48は、n型不純物を含むn型領域であり、下部電極16にオーミック接触している。半導体基板12の下面12bに露出する位置において、IGBT領域20の全体にコレクタ領域30が設けられており、ダイオード領域40の全体にカソード領域48が設けられている。言い換えると、半導体基板12をz方向(半導体基板12の厚み方向)に沿ってみたときに、IGBT領域20に対応する半導体基板12の下面に露出する位置にコレクタ領域30が設けられており、ダイオード領域40に対応する半導体基板12の下面に露出する位置にカソード領域48が設けられている。
【0013】
半導体基板12は、さらに、バッファ領域28、ドリフト領域26、バリア領域25、ボディ領域24、ボディコンタクト領域23、エミッタ領域22、アノード領域42、及び、アノードコンタクト領域41を有している。
【0014】
バッファ領域28は、カソード領域48よりもn型不純物を含むn型領域である。バッファ領域28は、IGBT領域20とダイオード領域40に跨って分布している。バッファ領域28は、IGBT領域20内では、コレクタ領域30の上部に配置されており、コレクタ領域30に接している。バッファ領域28は、ダイオード領域40内では、カソード領域48の上部に配置されており、カソード領域48に接している。
【0015】
ドリフト領域26は、バッファ領域28よりもn型不純物濃度が低いn型領域である。ドリフト領域26は、IGBT領域20とダイオード領域40に跨って分布している。ドリフト領域26は、IGBT領域20及びダイオード領域40内において、バッファ領域28の上部に配置されており、バッファ領域28に接している。
【0016】
ボディ領域24は、p型不純物を含むp型領域である。ボディ領域24は、IGBT領域20内に配置されている。ボディ領域24は、ドリフト領域26の上部に配置されており、ドリフト領域26に接している。
【0017】
ボディコンタクト領域23は、ボディ領域24よりもp型不純物濃度が高いp型領域である。ボディコンタクト領域23は、IGBT領域20内に配置されている。ボディコンタクト領域23は、ボディ領域24の上部に部分的に配置されており、ボディ領域24に接している。ボディコンタクト領域23は、ボディ領域24によってドリフト領域26から分離されている。ボディコンタクト領域23は、半導体基板12の上面12aに露出する位置に配置されており、上部電極14に対してオーミック接触している。
【0018】
エミッタ領域22は、ドリフト領域26よりもn型不純物濃度が高いn型領域である。エミッタ領域22は、IGBT領域20内に配置されている。エミッタ領域22は、ボディ領域24の上部に部分的に配置されており、ボディ領域24に接している。エミッタ領域22は、ボディ領域24によってドリフト領域26から分離されている。エミッタ領域22は、ボディコンタクト領域23が存在しない範囲であって、半導体基板12の上面12aに露出する位置に配置されている。エミッタ領域22は、上部電極14に対してオーミック接触している。
【0019】
アノード領域42は、p型不純物を含むp型領域である。アノード領域42は、ダイオード領域40内に配置されている。アノード領域42は、ドリフト領域26の上部に配置されており、ドリフト領域26に接している。
【0020】
アノードコンタクト領域41は、アノード領域42よりもp型不純物濃度が高いp型領域である。アノードコンタクト領域41は、ダイオード領域40内に配置されている。アノードコンタクト領域41は、アノード領域42の上部に部分的に配置されており、アノード領域42に接している。アノードコンタクト領域41は、アノード領域42によってドリフト領域26から分離されている。アノードコンタクト領域41は、半導体基板12の上面12aを含む範囲に配置されており、上部電極14に対してオーミック接触している。
【0021】
バリア領域25は、n型不純物を含むn型領域である。バリア領域25は、IGBT領域20とダイオード領域40に跨って分布している。バリア領域25は、IGBT領域20内において、ボディ領域24を上下に分離するように、半導体基板12の面内方向(xy平面に平行な面内方向)に沿って延びて設けられている。バリア領域25は、ダイオード領域40内において、アノード領域42を上下に分離するように、半導体基板12の面内方向に沿って延びて設けられている。
【0022】
半導体基板12の上面12aには、複数のトレンチ50が設けられている。各トレンチ50は、x方向に長く伸びている。複数のトレンチ50は、y方向に間隔を開けて配列されている。IGBT領域20とダイオード領域40のそれぞれに、複数のトレンチ50が設けられている。各トレンチ50は、半導体基板12の上面12aからドリフト領域26に達する深さまで伸びている。
【0023】
IGBT領域20内の各トレンチ50の内面は、ゲート絶縁膜32によって覆われている。IGBT領域20内の各トレンチ50内には、ゲート電極34が配置されている。各ゲート電極34は、ゲート絶縁膜32によって半導体基板12から絶縁されている。各ゲート電極34の上部には、層間絶縁膜36が配置されている。各ゲート電極34は、層間絶縁膜36によって上部電極14から絶縁されている。
【0024】
ドリフト領域26は、トレンチ50の下端部で、ゲート絶縁膜32に接している。ボディ領域24及びバリア領域25は、ドリフト領域26の上部でゲート絶縁膜32に接している。エミッタ領域22は、ボディ領域24の上部でゲート絶縁膜32に接している。したがって、各ゲート電極34は、ゲート絶縁膜32を介して、エミッタ領域22、ボディ領域24、バリア領域25及びドリフト領域26に対向している。
【0025】
ダイオード領域40内の各トレンチ50の内面は、絶縁膜52によって覆われている。ダイオード領域40内の各トレンチ50内には、制御電極54が配置されている。各制御電極54は、絶縁膜52によって半導体基板12から絶縁されている。各制御電極54の上部には、層間絶縁膜56が配置されている。各制御電極54は、層間絶縁膜56によって上部電極14から絶縁されている。制御電極54の電位は、ゲート電極34の電位から独立している。例えば、制御電極54の電位を、上部電極14と同電位に固定してもよい。
【0026】
ドリフト領域26は、トレンチ50の下端部で、絶縁膜52に接している。アノード領域42及びバリア領域25は、ドリフト領域26の上部で絶縁膜52に接している。したがって、各制御電極54は、絶縁膜52を介して、アノード領域42、バリア領域25及びドリフト領域26に対向している。
【0027】
図3は、カソード領域48のn型不純物の濃度分布を示す。
図3の符号38は、y方向(IGBT領域20とダイオード領域40の繰返し方向)におけるIGBT領域20とダイオード領域40の境界を示す(
図2参照)。
図3に示すように、カソード領域48のn型不純物の濃度は、ダイオード領域40の周辺部と中央部が薄く調整されており、ダイオード領域40の周辺部と中央部の間の部分がピークとなるように調整されている。ここで、ダイオード領域40の周辺部とは、IGBT領域20とダイオード領域40の境界38の近傍の範囲に対応する。ダイオード領域40の中央部は、ダイオード領域40のy方向の中央位置を含む範囲である。なお、
図3に示す濃度分布の具体的な数値(例えば、ダイオード領域40の周辺部及び中央部のy方向の幅、及び、カソード領域48の濃度)は、要求される特性に応じて適宜に調整される。
【0028】
このような濃度分布を有するカソード領域48を形成するために、例えば、イオン注入技術を利用してn型不純物をドーピングするためのマスクの開口率を変えてもよい。半導体基板12の下面12bに、ダイオード領域40の周辺部と中央部で開口率が小さく、それらの間の部分で開口率が大きいマスクを成膜し、そのマスクを介してn型不純物を半導体基板12の下面12bにイオン注入すると、開口率が小さい周辺部及び中央部には低濃度のカソード領域48が形成され、開口率の大きい部分には高濃度のカソード領域48が形成される。この手法を利用すれば、1枚のマスクで
図3に示す濃度分布を有するカソード領域48を形成することができる。
【0029】
次に、半導体装置10において、還流電流が流れるモードについて説明する。ダイオード領域40の上部電極14と下部電極16の間には、アノードコンタクト領域41、アノード領域42、ドリフト領域26、バッファ領域28及びカソード領域48によってダイオードが形成されている。上部電極14に下部電極16よりも高い電位が印加されると、ダイオードがオンする。すなわち、下部電極16から、カソード領域48、バッファ領域28、ドリフト領域26、アノード領域42及びアノードコンタクト領域41を介して上部電極14へ向かって電子が流れる。同時に、上部電極14から、アノードコンタクト領域41及びアノード領域42を介してドリフト領域26へホールが流れる。このように、半導体装置10では、還流電流が流れるモードにおいて、ダイオード領域40の上部電極14から下部電極16に向けて還流電流が流れる。
【0030】
また、ダイオード領域40とIGBT領域20の境界38には、ボディコンタクト領域23、ボディ領域24、ドリフト領域26、バッファ領域28及びカソード領域48によって、寄生ダイオードが形成されている。このため、還流電流が流れるモードにおいて、寄生ダイオードもオンし、IGBT領域20からダイオード領域40にホールが流入する。このようなホールの流入量が多いと、後述するように、スイッチング損失が増加してしまう。半導体装置10では、
図3に示すように、カソード領域48のn型不純物の濃度が周辺部で薄く調整されており、カソード領域48の周辺部が高抵抗となっている。このため、IGBT領域20からダイオード領域40に流入するホールの流入量が抑えられる。
【0031】
ダイオードがオンした後に、上部電極14の電位を下部電極16の電位よりも低い電位まで引き下げると、ダイオードがリカバリ動作を行う。すなわち、ドリフト領域26内に存在するホールが、上部電極14へ排出される。このため、ダイオードに、瞬間的にリカバリ電流(逆電流)が流れる。上述したように、半導体装置10では、IGBT領域20からダイオード領域40に流入するホールの流入量が抑えられているので、リカバリ電流が抑えられる。これにより、半導体装置10では、リカバリ電流に起因したスイッチング損失の増加が抑えられる。
【0032】
また、半導体装置10では、
図3に示すように、カソード領域48のn型不純物の濃度が中央部で薄く調整されている。仮に、カソード領域48のn型不純物の濃度を周辺部のみで薄くした場合、カソード領域48のn型不純物の濃度のピークが中央部となる。このため、ダイオードがオンしたときに流れる電流は、ダイオード領域40の中央部を多く流れる。このような局所的な電流集中は、熱破壊の原因となることが懸念される。一方、半導体装置10では、カソード領域48のn型不純物の濃度が中央部で薄く調整されており、その中央部の周囲にピークが分散している。これにより、ダイオードがオンしたときに流れる電流は、ダイオード領域40を均一化して流れることができる。このように、半導体装置10では、局所的な電流集中が緩和され、熱破壊が抑制される。
【0033】
なお、上述した実施形態では、カソード領域48のn型不純物の濃度分布が調整されていた。これに代えて、またはこれに加えて、コレクタ領域30のp型不純物の濃度分布を調整してもよい。
図3に示すカソード領域48の濃度分布と同様に、コレクタ領域30のp型不純物の濃度が、周辺部と中央部が薄く調整され、周辺部と中央部の間の部分がピークとなるように調整されていてもよい。この場合も同様に、コレクタ領域30のp型不純物の濃度がIGBT領域20の周辺部で薄いので、IGBT領域20からダイオード領域40に流入するホールの流入量を抑制することができ、スイッチング損失の増加を抑えることができる。さらに、コレクタ領域30のp型不純物の濃度がIGBT領域20の中央部で薄いので、IGBTがオンしたときにIGBT領域20を流れる電流が均一化され、局所的な電流集中が緩和される。
【0034】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0035】
10 :半導体装置
12 :半導体基板
14 :上部電極
16 :下部電極
20 :IGBT領域
22 :エミッタ領域
23 :ボディコンタクト領域
24 :ボディ領域
25 :バリア領域
26 :ドリフト領域
28 :バッファ領域
30 :コレクタ領域
32 :ゲート絶縁膜
34 :ゲート電極
36 :層間絶縁膜
38 :境界
40 :ダイオード領域
41 :アノードコンタクト領域
42 :アノード領域
48 :カソード領域
50 :トレンチ
52 :絶縁膜
54 :制御電極
56 :層間絶縁膜