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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】液体収容体
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
B41J2/175 143
B41J2/175 201
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019215494
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021084352
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香月 清輝
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-74103(JP,A)
【文献】米国特許第5805189(US,A)
【文献】中国特許出願公開第1607095(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体収容体であって、
可撓性を有し、内部に液体を収容する袋と、
前記袋の一端部に取り付けられ、前記液体を液体噴射装置へ導出するための液体導出部を有する液体導出部材と、
前記袋内に配置され、前記液体を濾過するフィルターが配置されたフィルター室を有するスペーサー部材と、
前記袋内に配置され、前記フィルター室と前記液体導出部とに接続され、前記フィルターによって濾過された前記液体を前記液体導出部へ流す液体導出管と、
を備え
前記フィルター室は、開口部を有し、
前記開口部に、前記開口部を封止するフィルムが接合されている、液体収容体。
【請求項2】
液体収容体であって、
可撓性を有し、内部に液体を収容する袋と、
前記袋の一端部に取り付けられ、前記液体を液体噴射装置へ導出するための液体導出部を有する液体導出部材と、
前記袋内に配置され、前記液体を濾過するフィルターが配置されたフィルター室を有するスペーサー部材と、
前記袋内に配置され、前記フィルター室と前記液体導出部とに接続され、前記フィルターによって濾過された前記液体を前記液体導出部へ流す液体導出管と、
を備え、
前記スペーサー部材は、前記液体収容体が使用される使用状態において、高さ方向の異なる位置に、前記フィルター室に前記液体を取り入れる複数の液体導入口を備える、液体収容体。
【請求項3】
請求項に記載の液体収容体であって、
前記複数の液体導入口は、第1液体導入口と第2液体導入口とを含み、
前記使用状態において、前記第2液体導入口は前記第1液体導入口よりも前記高さ方向において高い位置に配置され、
前記第1液体導入口の開口面積は、前記第2液体導入口の開口面積よりも大きい、液体収容体。
【請求項4】
請求項または請求項に記載の液体収容体であって、
前記フィルター室は、前記フィルターと前記複数の液体導入口との間に、前記複数の液体導入口から流入した前記液体が合流する合流部を有する、液体収容体。
【請求項5】
液体収容体であって、
可撓性を有し、内部に液体を収容する袋と、
前記袋の一端部に取り付けられ、前記液体を液体噴射装置へ導出するための液体導出部を有する液体導出部材と、
前記袋内に配置され、前記液体を濾過するフィルターが配置されたフィルター室を有するスペーサー部材と、
前記袋内に配置され、前記フィルター室と前記液体導出部とに接続され、前記フィルターによって濾過された前記液体を前記液体導出部へ流す液体導出管と、
を備え、
前記袋内に、前記液体導出部材と前記スペーサー部材とを連結する連結部材を備える、液体収容体。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の液体収容体であって、
前記液体収容体の使用状態において、前記液体導出部材と前記液体導出管と前記スペーサー部材とは、水平方向に沿って並ぶ、液体収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
液体収容体に関し、例えば、特許文献1には、印刷濃度を安定させるため、インクが収容されたインクパック内にスペーサー部材を配置し、そのスペーサー部材内に、沈降成分を多く含む濃度の高い液体を残留させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-65373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体収容体には、印刷濃度の安定させること以外にも、インクパック内で発生またはインクパック内に混入した異物がプリンター等の液体噴射装置に流入することを抑制することが求められている。しかし、特許文献1に記載された技術では、異物の流入を抑制することについては十分に検討されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、液体収容体が提供される。この液体収容体は、可撓性を有し、内部に液体を収容する袋と、前記袋の一端部に取り付けられ、前記液体を液体噴射装置へ導出するための液体導出部を有する液体導出部材と、前記袋内に配置され、前記液体を濾過するフィルターが配置されたフィルター室を有するスペーサー部材と、前記袋内に配置され、前記フィルター室と前記液体導出部とに接続され、前記フィルターによって濾過された前記液体を前記液体導出部へ流す液体導出管と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】液体噴射装置の斜視図である。
図2】装着部の斜視図である。
図3】接続機構の斜視図である。
図4】装着体の斜視図である。
図5】装着体を構成する液体収容体と容器の斜視図である。
図6】アダプターの分解斜視図である。
図7】内部構造体の分解斜視図である。
図8】内部構造体の第1の斜視図である。
図9】内部構造体の第2の斜視図である。
図10】内部構造体内の構造を模式的に示す図である。
図11】内部構造体を+D方向側から見た図である。
図12】スペーサー部材の平面図である。
図13】スペーサー部材の下面図である。
図14】スペーサー部材の第1の側面図である。
図15】スペーサー部材の第2の側面図である。
図16】スペーサー部材を-D方向側から見た図である。
図17】スペーサー部材を+D方向側から見た図である。
図18】スペーサー部材を+T方向側から見た第1の斜視図である。
図19】スペーサー部材を-T方向側から見た第2の斜視図である。
図20】液体噴射装置の他の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、液体噴射装置11の斜視図である。液体噴射装置11は、例えば、用紙などの媒体に液体の一例であるインクを噴射することによって印刷を行うインクジェットプリンターである。液体噴射装置11は、略直方体状の外装体12を備える。外装体12の前面部分には、底部側から上に向かって順に、容器13が着脱可能に装着される装着部14を覆う回動可能な前蓋15と、媒体を収容可能なカセット16が装着される装着口17とが配置されている。さらに、装着口17の上側には、媒体が排出される排出トレイ18と、液体噴射装置11の操作を行うための操作パネル19とが配置されている。なお、外装体12の前面とは、高さと幅を有し、液体噴射装置11に対する操作を主に行う側面のことをいう。
【0008】
本実施形態の装着部14には、複数の容器13が幅方向に並ぶ態様で装着可能である。例えば、複数の容器13として、第1容器13Sと、第1容器13Sよりも幅の長さが長い第2容器13Mと、を含む3以上の容器13を装着部14に装着可能である。そして、これら容器13には、液体収容体20が取り外し可能に載置される。すなわち、液体収容体20は、液体噴射装置11に着脱可能に装着される容器13に載置される。容器13は、液体収容体20を保持しない単体の状態でも装着部14に着脱可能に装着可能であり、液体噴射装置11に備えられる構成要素である。以下では、液体収容体20が液体噴射装置11に装着されて使用される状態のことを、「装着状態」または「使用状態」と呼ぶ。
【0009】
外装体12内には、ノズルから液体を噴射する液体噴射部21と、液体噴射装置11の幅方向と一致する走査方向に沿って往復移動するキャリッジ22とが設けられている。液体噴射部21は、キャリッジ22と共に移動し、容器13に載置された液体収容体20から供給される液体を媒体に向かって噴射することにより、この媒体に印刷する。なお、他の実施形態では、液体噴射部21は往復移動することなく位置が固定されたラインヘッドでもよい。
【0010】
本実施形態では、容器13が装着部14に装着されるときの移動経路と交差、好ましくは直交する方向が幅方向となり、移動経路が延びる方向が奥行方向となる。また、幅方向と奥行方向は実質的に水平面に沿う。図面では、外装体12が水平面上に置かれているものとして重力の方向をZ軸で示し、容器13が装着部14に装着されるときの移動方向をY軸で示す。移動方向は、装着部14への装着方向または収容空間への挿入方向とも表記することがあり、移動方向の反対方向を取出方向と表記することがある。また、幅方向は、Z軸及びY軸と直交するX軸で示す。すなわち、幅方向、重力方向及び装着方向は相互に交差、好ましくは直交し、それぞれ幅、高さ及び奥行の長さを表記する場合の方向となる。
【0011】
図2は、装着部14の斜視図である。装着部14は、1つ以上、本実施形態では4つ、の容器13を収容可能な収容空間を形成する枠体24を有している。枠体24は、前蓋15側となる手前側から収容空間に連通する挿入口25を形成する。さらに、枠体24は、容器13の着脱時の移動を案内するために、奥行方向に延びる1または2以上の凸形状または凹形状からなる線状の案内レール26を複数組有することが好ましい。
【0012】
容器13は、挿入口25を通じて収容空間に挿入され、奧に向かって延びる移動経路に沿って移動することにより、装着部14に装着される。なお、図2では、枠体24について、挿入口25を形成する前板付近のみ実線で図示している。収容空間の奥側には、容器13に個別に対応するように1つ以上、本実施形態では4つ、の接続機構29が設けられている。
【0013】
液体噴射装置11は、容器13と共に装着部14に装着された液体収容体20から液体噴射部21に向けて液体を供給する供給流路30と、液体収容体20に収容された液体を供給流路30に送るように構成された供給機構31と、を備えている。
【0014】
供給流路30は、液体の色あるいは種類毎に設けられ、液体収容体20が接続されるインク導入針32と、可撓性を有する供給チューブ33と、を含む。インク導入針32と供給チューブ33の間には図示しないポンプ室が設けられる。インク導入針32の下流端と供給チューブ33の上流端はポンプ室に連通している。ポンプ室は、図示しない変圧室と可撓膜を介して区画されている。
【0015】
供給機構31は、変圧機構34及び変圧機構34の駆動源35と、変圧機構34と上記の変圧室とを繋ぐ変圧流路36と、を備える。そして、モーター等の駆動源35の駆動により変圧機構34が変圧流路36を通じて変圧室を減圧すると、可撓膜が変圧室側に撓み変位することにより、ポンプ室の圧力が下がる。このポンプ室の圧力低下に伴って、液体収容体20に収容された液体がインク導入針32を通じてポンプ室に吸引される。これを吸引駆動という。その後、変圧機構34が変圧流路36を通じて変圧室の減圧を解除すると、可撓膜がポンプ室側に撓み変位することにより、ポンプ室の圧力が上がる。すると、ポンプ室の圧力上昇に伴って、ポンプ室内の液体が加圧された状態で供給チューブ33に流出する。これを吐出駆動という。そして、供給機構31は、吸引駆動と吐出駆動とを交互に繰り返すことにより、液体収容体20から液体噴射部21に液体を供給する。
【0016】
図3は、接続機構29の斜視図である。接続機構29は、幅方向においてインク導入針32を挟む位置に、それぞれ第1接続機構29Fと第2接続機構29Sとを有する。第1接続機構29Fは、インク導入針32よりも鉛直下方に配置され、取出方向に突出するアーム38を備える。アーム38の先端には係止部39が設けられる。アーム38は基端側を中心に先端側が回動可能に構成されている。係止部39は、例えばアーム38から鉛直上方に突出するなどして、装着部14に装着されるときの容器13の移動経路上に配置される。係止部39は、容器13が装着部14に装着されたときに、容器13の裏面に設けられた係合溝78に嵌まり、容器13が装着部14から容易に外れることを規制する。
【0017】
第1接続機構29Fは、インク導入針32よりも鉛直上方に配置されて取出方向に突出する端子部40を備える。端子部40は、フラットケーブル等の電気回線41を介して制御装置42と接続されている。端子部40は、上端が下端よりも取出方向に突出して、斜め下を向くように配置することが好ましい。また、幅方向において端子部40の両側には、幅方向に突出するとともに装着方向に沿って延びる一対の案内凸部40aを配置することが好ましい。
【0018】
第2接続機構29Sは、インク導入針32よりも鉛直上方に配置され、取出方向に突出する誤挿入防止用のブロック44を備えることが好ましい。ブロック44は下方に向いて配置される凹凸形状を有する。この凹凸の形状は、接続機構29毎に異なる。
【0019】
接続機構29は、一対の位置決め突部45,46と、インク導入針32を囲むように配置される押出機構47と、インク導入針32の下方で取出方向に突出する液受部48と、を備える。一対の位置決め突部45,46は、それぞれ第1接続機構29Fと第2接続機構29Sとに含まれるようにインク導入針32を挟んで幅方向に並ぶ。位置決め突部45,46は、例えば、互いに平行をなして取出方向に突出する棒状の突部とすることができる。位置決め突部45,46の取出方向への突出長さはインク導入針32の取出方向への突出長さより長くすることが好ましい。
【0020】
押出機構47は、インク導入針32の基端部分を囲む枠部材47aと、枠部材47aから取出方向に突出する押圧部47bと、押圧部47bを介して容器13を取出方向に付勢する付勢部47cと、を備える。付勢部47cは、例えば枠部材47aと押圧部47bの間に介装されたコイルばねとすることができる。
【0021】
図4は、装着部14に装着される装着体50の斜視図である。本実施形態では、略直方体状の外形をなす容器13と、容器13に載置される液体収容体20により装着体50が構成される。図4および後述する図5には、容器13として、第2容器13Mの斜視図を示している。なお、第1容器13Sと第2容器13M、および、それらに載置される液体収容体20は、幅方向のサイズのみ異なり、構造は同一である。
【0022】
液体収容体20は、沈降成分を有する液体を液体噴射装置11に供給するためのものである。液体収容体20は、袋60とアダプター61とを備える。袋60は可撓性を有している。袋60の形状は、ピロータイプでもよいし、ガゼットタイプでもよい。本実施形態の袋60は、長方形状のフィルムを2枚重ねて、その周縁部を互いに接合することによって形成されたピロータイプの袋である。袋60を構成するフィルムは、可撓性とガスバリア性を有する素材で形成されている。例えば、フィルムの素材としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリエチレンなどが挙げられる。また、これらの素材で構成されたフィルムを複数積層した積層構造を用いてフィルムが形成されてもよい。このような積層構造では、例えば、外層を耐衝撃性に優れたPET又はナイロンによって形成し、内層を耐インク性に優れたポリエチレンによって形成してもよい。さらに、アルミニウムなどを蒸着した層を有するフィルムを積層構造の1つの構成部材としてもよい。
【0023】
袋60には、その内部に、液体を収容する液体収容部60cが設けられている。液体収容部60cには、液体として、沈降成分としての顔料が溶媒中に分散されたインクが収容されている。袋60は、一端部60aと、一端部60aの反対側に位置する他端部60bとを有する。アダプター61は、袋60の一端部60aに取り付けられている。アダプター61は、液体収容部60c内の液体を液体噴射装置11へ導出するための液体導出部52を備える。液体導出部52のことを、「供給口」と呼ぶことも可能である。
【0024】
図4には、互いに直交する3つの方向であるD方向、T方向、及びW方向が示されている。本実施形態では、D方向は、図1に示したY方向に沿った方向であり、袋60が延びる方向である。以下の説明では、D方向のうち、液体導出部52から袋60の他端部60b側に向かう方向を+D方向とし、+D方向と逆の方向を-D方向とする。また、液体収容体20の外形のうち、最も寸法が小さい方向をT方向とする。そして、D方向及びT方向と直交する方向をW方向とする。本実施形態では、T方向はZ方向に沿った方向であり、+T方向は-Z方向に対応する。また、W方向はX方向に沿った方向であり、+W方向は+X方向に対応する。本実施形態において、T方向は、袋60の厚み方向である。以下において、単に、上方向というときは、装着状態における+T方向を指し、単に下方向というときは、装着状態における-T方向を指す。
【0025】
装着体50は、図2に示した装着部14に装着されるときに先に進む方を先端とし、先端の反対側の端を基端とすると、先端部分に接続構造51を備える。接続構造51は、幅方向において液体導出部52を挟む両側にそれぞれ第1接続構造51Fと第2接続構造51Sとを有する。
【0026】
第1接続構造51Fは、液体導出部52よりも鉛直上方に配置される接続端子53を備える。接続端子53は、例えば回路基板の表面に設けられ、この回路基板は、液体収容体20に関する各種の情報を記憶する記憶部を含む。液体収容体20に関する情報には、例えば、液体収容体20の種類や液体の収容量等を表す情報が含まれる。
【0027】
接続端子53は、上方及び装着方向に開口する態様で設けられた凹部53a内に、斜め上を向くように配置することが好ましい。また、幅方向において接続端子53の両側には、装着方向に延びる案内凹部53gを配置することが好ましい。
【0028】
第2接続構造51Sは、液体導出部52よりも鉛直上方に配置された誤挿入防止用の識別部54を備えることが好ましい。識別部54は、図3に示した、対応する接続機構29のブロック44に嵌まり合う形状の凹凸を有する。
【0029】
接続構造51は、一対の位置決め穴55,56と、図3に示した付勢部47cの付勢力を受ける付勢受部57と、液体導出部52の下方において延びる挿入部58と、を備える。位置決め穴55,56は、それぞれ第1接続構造51Fと第2接続構造51Sとに含まれるように液体導出部52を挟んで幅方向に並ぶ。第1接続構造51Fに含まれる第1位置決め穴55は円形の穴とするのに対して、第2接続構造51Sに含まれる第2位置決め穴56は幅方向に長い略楕円形状の長穴とすることが好ましい。
【0030】
図5は、装着体50を構成する液体収容体20と容器13の斜視図である。容器13の先端には、液体収容体20のアダプター61に設けられた挿入部58と係合する切欠き65aが形成されている。さらに、切欠き65aの幅方向の両側には、第1穴55aと第2穴56aが形成されており、アダプター61の先端には、第1穴55bと第2穴56bが形成されている。そして、液体収容体20が容器13に載置されると、第1穴55a,55b同士と、第2穴56a,56b同士とがそれぞれ奥行方向に並び、第1穴55a,55bにより第1位置決め穴55が構成され、第2穴56a,56bにより第2位置決め穴56が構成される。
【0031】
アダプター61は、取っ手部62を備えている。取っ手部62は、アダプター61とは別部材で構成され、アダプター61に対して移動可能である。具体的には、取っ手部62は、アダプター61に設けられた回動軸63を中心として回動することにより移動可能である。回動軸63は、幅方向の両側に開口するように形成され、有底の半円筒状の部分がアダプター61の上面から突出している。
【0032】
取っ手部62は、ユーザーに把持される把持部62aを有している。把持部62aは、回動軸63に軸支される軸部62bよりも、奥行方向においてアダプター61から離れた袋60側に位置している。そして、取っ手部62は、把持部62aと回動軸63とが同じ高さもしくは把持部62aが回動軸63よりも低い位置に位置する第1姿勢と、把持部62aが回動軸63よりも高い位置に位置する第2姿勢との間で回動可能である。
【0033】
容器13は、先端部分に、液体収容体20のアダプター61が係合可能な係合受部65を有する。アダプター61は、接続端子53、凹部53a、案内凹部53g、識別部54、第1穴55b及び第2穴56bを含む。容器13の係合受部65は、付勢受部57、第1穴55a及び第2穴56aを含む。アダプター61は、係合受部65に係合したときに、容器13の先端部に位置する。
【0034】
容器13は、底面を構成する底板67と、底板67の幅方向の両端から鉛直上方に立設する側板68と、底板67の基端から鉛直上方に立設する前板69と、底板67の先端から鉛直上方に立設する先板70とを備えている。
【0035】
容器13において、底板67、側板68、前板69及び先板70は、液体収容体20を収納する収納空間を形成する本体部を構成する。容器13は、収納空間に対して液体収容体20を出し入れするための開口13aを有する。本実施形態において、容器13の開口13aは、容器13が装着部14に装着されるときに進む装着方向と異なる向きである鉛直方向上向きに開いている。
【0036】
アダプター61には、案内方向に貫通して形成された略丸穴状の被案内部72が複数設けられている。本実施形態では、2つの被案内部72が幅方向に並ぶように形成されている。
【0037】
また、容器13の係合受部65には、底板67から案内方向に突出する略円柱形状の複数の案内部73が設けられている。本実施形態では、2つの案内部73が幅方向に並ぶように形成されている。なお、案内方向とは、底板67もしくは開口13aと交差、好ましくは直交し、側板68に沿う方向である。本実施形態において案内方向は、T方向に沿っている。
【0038】
容器13に設けられた案内部73は、アダプター61に設けられた被案内部72を案内方向に案内する。一方、アダプター61に設けられた被案内部72は、容器13に設けられた案内部73により案内方向に案内される。
【0039】
本実施形態では、案内部73が略半円柱状をなす凸形状であり、案内方向に沿う案内部73の側面は、先端側に位置する平面状の規制部73aと、規制部73aよりも基端側の曲面部73bとを有している。
【0040】
そして、被案内部72は、案内部73の形状に沿うように規制部72aと曲面部72bとを有する形状に形成されている。規制部72a,73aは、容器13に載置される液体収容体20の逃げや回転を規制する。
【0041】
さらに、アダプター61の先端面には、少なくとも案内方向の角が面取りされた例えばドーム型の突起部75が形成されている。また、容器13の先板70には、突起部75と係合する係合穴76が形成されている。このようにすると、容器13に液体収容体20が載置されたときに、容器13と液体収容体20との係合が完了した、というクリック感のような感覚または感触をユーザーに与えることができる。本実施形態の突起部75と係合穴76は、液体導出部52と容器13の切欠き65aとを挟んでそれぞれ幅方向の両側に対をなして並ぶように形成されている。
【0042】
ここで、図3図4を参照して、装着体50が備える接続構造51の接続機構29に対する接続について説明する。装着体50が収容空間に挿入されて先端が接続機構29に近づくと、まず、取出方向への突出長さが長い位置決め突部45,46の先端が装着体50の位置決め穴55,56に入る態様で係合し、装着体50の幅方向への移動を規制する。第2位置決め穴56は幅方向に延びる楕円形状の長穴なので、円形状の第1位置決め穴55に入る位置決め突部45が位置決めの基準になる。
【0043】
位置決め突部45,46が位置決め穴55,56に係合した後、さらに装着体50が奧に進むと、付勢受部57が押圧部47bと接触して付勢部47cの付勢力を受け、液体収容体20の液体導出部52がインク導入針32に接続される。液体収容体20が新品の状態では、液体導出部52の先端にはフィルムが溶着されており、このフィルムがインク導入針32によって破られる。位置決め突部45,46は、インク導入針32が液体導出部52に接続される前に、装着体50の位置決めをすることが好ましい。
【0044】
装着体50が正しい位置に挿入された場合、識別部54が接続機構29のブロック44と適切に嵌合する。これに対して、装着体50を間違った位置に装着しようとした場合、識別部54がブロック44と嵌合しないので、装着体50はそれ以上奧に進むことができず、誤装着が防止される。
【0045】
また、装着体50が装着方向に進むと、端子部40が装着体50の凹部53a内に入り、案内凹部53gが案内凸部40aに案内されることで位置が調整されて、接続端子53に接触する。これにより、接続端子53が端子部40と電気的に接続され、回路基板と制御装置42の間で情報の授受が行われる。このように、第1接続構造51Fと第2接続構造51Sのうち、接続端子53を含む第1接続構造51Fの方に位置決めの基準となる第1位置決め穴55を配置することが好ましい。
【0046】
液体収容体20の液体導出部52がインク導入針32に対して液体を供給可能な状態に接続され、接続端子53が端子部40と接触して電気的に接続されたときに、接続構造51の接続機構29に対する接続が完了する。
【0047】
図6は、アダプター61の分解斜視図である。アダプター61は、T方向に分割可能であり、蓋部材61aと底部材61bとを備えている。蓋部材61aには、主に識別部54が形成されている。底部材61bには、主に、挿入部58や凹部53aが形成されている。袋60の内部には、内部構造体200が配置されている。袋60の-D方向の端部からは、内部構造体200の一部を構成する液体導出部材66の一部が露出している。液体導出部材66の露出した部分には、液体導出部52と固定部66sとが備えられている。
【0048】
本実施形態では、底部材61bには、第1突起61cと第2突起61dとが、+T方向に向けて設けられている。第1突起61cと第2突起61dとは、W方向において挿入部58を挟む位置に設けられている。固定部66sには、液体導出部52を幅方向から挟む位置に、第1貫通孔66cと第2貫通孔66dとが設けられている。第1貫通孔66cには第1突起61cが挿入され、第2貫通孔66dには第2突起61dが挿入される。蓋部材61aと底部材61bとによって、固定部66sを+T方向側と-T方向側とから挟み込むことにより、蓋部材61aと底部材61bとの間に、固定部66sとともに、袋60の-D方向側の端部の一部が挟み込まれ、袋60がアダプター61に固定される。
【0049】
図7は、内部構造体200の分解斜視図である。図8は、内部構造体200の第1の斜視図である。図9は、内部構造体200の第2の斜視図である。図10は、内部構造体200内の構造を模式的に示す図である。図11は、内部構造体200を+D方向側から見た図である。
【0050】
図7~9に示すように、内部構造体200は、液体導出部材66と、スペーサー部材90と、液体導出管80とを備える。液体収容体20の使用状態において、液体導出部材66と液体導出管80とスペーサー部材90とは、水平方向に沿って並ぶ。本実施形態では、液体導出部材66と液体導出管80とスペーサー部材90とは、この順で、-D方向側から+D方向側に向けて並んでいる。
【0051】
液体導出部材66は、袋60の一端部60aに取り付けられ、袋60内の液体を液体噴射装置11へ導出するための液体導出部52を備える部材である。液体導出部材66は、袋60の開口部分60dが溶着される溶着部66aを備えている。溶着部66aは、液体導出部材66の中で最も外周が大きい部位を含む。
【0052】
図7に示すように、液体導出部材66の+D方向側の端部には、筒状の2つの第1凸部661,662が設けられている。第1凸部661,662の内部空間は、液体導出部52の内部空間に連通する。第1凸部661,662には、チューブ状の液体導出管80が接続される。液体導出管80は、第1流路部81と第2流路部82とを含む。第1凸部661には、第1流路部81の-D方向側の端部が接続される。第1凸部662には、第2流路部82の-D方向側の端部が接続される。
【0053】
図12は、スペーサー部材90の平面図である。図13は、スペーサー部材90の下面図である。図14は、スペーサー部材90の第1の側面図である。図15は、スペーサー部材90の第2の側面図である。図16は、スペーサー部材90を-D方向側から見た図である。図17は、スペーサー部材90を+D方向側から見た図である。図18は、スペーサー部材90を+T方向側から見た第1の斜視図である。図19は、スペーサー部材90を-T方向側から見た第2の斜視図である。図12~19には、後述するフィルター111およびフィルム112が接合されていない状態のスペーサー部材90を示している。
【0054】
スペーサー部材90は、袋60の内部に一定の容積の領域を区画するための構造物である。スペーサー部材90は、袋60の厚み方向への収縮を規制する。スペーサー部材90は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂によって形成されている。図7~11に示すように、スペーサー部材90は、液体収容部60c内において、液体導出部52の中心軸CXを通るTD面と交わる位置に設けられる。TD面とは、T方向とD方向とを含む面である。
【0055】
スペーサー部材90は、規制構造体901とフィルター部902とを一体的に備えている。規制構造体901は、スペーサー部材90の+D方向側の端部に配置されている。フィルター部902は、スペーサー部材90において規制構造体901よりも-D方向側に配置されており、かつ、+T方向側の端部に配置されている。
【0056】
図7に示すように、スペーサー部材90は、D方向に沿って延びる棒状の連結部材85によって液体導出部材66+D方向側の端部に連結される。より具体的には、規制構造体901の-D方向側の端部付近にW方向に沿って設けられた図14~16に示す差込口903に、連結部材85の+D方向側の端部に設けられた図7に示す差込部904が、-W方向から+W方向に向けて圧入されることで、連結部材85が規制構造体901に固定される。一方、連結部材85の-D方向側の端部は、液体導出部材66の+D方向側の端部付近に設けられた係止突起86に係止されて固定される。
【0057】
規制構造体901は、袋60の厚み方向への収縮を規制するスペーサーとしての機能を果たす部分である。規制構造体901は、+D方向側から-D方向側に向かうにつれ、T方向に沿った寸法が大きくなるように傾斜する傾斜面91を+D方向側に有する。図8~11に示すように、本実施形態では、規制構造体901は、中心軸CXよりも+T方向側と-T方向側とにそれぞれ傾斜面91を有する。そのため、規制構造体901は、図10に示すように、W方向から見た場合に、+D方向側に向けて尖った形状を有している。本実施形態では、傾斜面91には、D方向に沿った溝やW方向に沿った溝が形成されている。なお、本実施形態において、「面」とは、平面だけで構成された面だけではなく、その表面に溝や凹部などが形成された面や、その表面に突起や凸部が形成された面、枠に囲われた仮想的な面、も含む。つまり、全体として「面」として把握可能であれば、その面が占める一定領域に、凹凸や貫通穴があっても構わない。
【0058】
図7に示すように、フィルター部902は、連結部材85の+D方向側の端部よりも+T方向側に位置しており、規制構造体901と一体形成されている。フィルター部902は、フィルター室110を有している。なお、フィルター部902と規制構造体901とは別体のものとして形成された後に、一体的に接合あるいは組み立てられてもよい。
【0059】
フィルター室110は、袋60の内面に対向する部分に開口部905を有する。つまり、フィルター室110は、+T方向側の端面に開口部905を有している。開口部905には、開口部905を封止するフィルム112が配置される。フィルム112は、開口部905の縁部に溶着されることにより接合される。フィルター部902の開口部905にフィルム112が溶着されることによって、フィルター部902にフィルター室110が区画形成される。
【0060】
図7,10に示すように、フィルター室110には、液体を濾過するフィルター111が配置される。フィルター室110内において、フィルター111は、WD面に沿って配置されている。WD面とは、W方向とD方向とを含む面である。図10に示すように、フィルター室110は、フィルター111によって上部空間S1と下部空間S2とに区画される。本実施形態において、フィルター111は、SUS製の金属メッシュによって形成されている。フィルター111は、金属不織布によって形成されてもよい。フィルター111は、フィルター室110において、上部空間S1と下部空間S2との間に位置する内部開口部906の縁部に溶着されている。フィルター111は、袋60内に混入した異物、あるいは、袋60内で発生した異物を濾過する。なお、フィルター111は、フィルター室110に流れ込んだ液体が濾過されるように配置されていればよく、WD面に傾斜して配置されていてもよいし、T方向に沿って配置されていてもよい。
【0061】
図10,11に示すように、スペーサー部材90は、複数の液体導入口910を備える。液体導入口910は、フィルター室110に液体を取り入れるための開口である。複数の液体導入口910は、第1液体導入口92と第2液体導入口93とを含む。第1液体導入口92および第2液体導入口93は、それぞれ、フィルター室110の上部空間S1に連通する。フィルター室110は、フィルター111と複数の液体導入口910との間に、複数の液体導入口910から流入した液体が合流する合流部907を有する。換言すれば、合流部907は、液体の流れ方向において、フィルター111よりも上流に設けられ、かつ、複数の液体導入口910よりも下流に設けられている。図7,12に示すように、合流部907には、フィルム112が合流部907の底面に接触することを防止するためのリブ908が、+T方向に向けて設けられている。
【0062】
図10,11に示すように、複数の液体導入口910は、液体収容体20の使用状態において、高さ方向において異なる位置に配置されている。具体的には、液体収容体20の使用状態において、第2液体導入口93は第1液体導入口92よりもT方向において高い位置に配置されている。第2液体導入口93は、フィルター室110の+D方向側の端部であって、規制構造体901の上端付近に、+D方向を向くように形成されている。一方、第1液体導入口92は、規制構造体901の下端付近に、-T方向および+D方向を向くように形成されている。本実施形態において、第1液体導入口92の開口面積は、第2液体導入口93の開口面積よりも大きい。開口面積とは、それぞれの導入口が、袋60内の空間に向けて開口する部分の面積である。
【0063】
図11,13,19に示すように、規制構造体901の、第1液体導入口92よりも+D方向側には、下側の傾斜面91から中心軸CXを通るWD面までの部分に第1溝912が形成されている。第1溝912は、第1液体導入口92に繋がるように形成されている。第1液体導入口92には、この第2溝913を通じて+D方向側から液体が流入しやすい。また、図11,12,18に示すように、規制構造体901の、第2液体導入口93よりも+D方向側には、上側の傾斜面91から中心軸CXを通るWD面までの部分に、第2溝913が形成されている。第2溝913は、第2液体導入口93に繋がるように形成されている。第2液体導入口93には、この第2溝913を通じて+D方向側から液体が流入しやすい。
【0064】
図7および図16に示すように、フィルター部902の-D方向の端部には、W方向に2つの筒状の第2凸部141,142が並んで配置されている。第2凸部141,142の内部空間は、フィルター室110の下部空間S2に連通する。第2凸部141には、第1流路部81の+D方向側の端部が接続され、第2凸部142には、第2流路部82の+D方向側の端部が接続される。
【0065】
図10に示すように、第1液体導入口92および第2液体導入口93から流入した液体は、フィルター室110内において、合流部907で合流した後に、フィルター111を通じて上部空間S1から下部空間S2に流れ込むことによってフィルター111によって濾過される。フィルター111によって濾過された液体は、第2凸部141,142、液体導出管80、第1凸部661,662内の流路を通り、液体導出部材66の液体導出部52から外部に導出される。
【0066】
以上で説明した本実施形態の液体収容体20によれば、スペーサー部材90に備えられたフィルター室110のフィルター111を通じて袋60内の液体が液体噴射装置11に導出されるので、液体収容体20から液体噴射装置11に異物が流入することを抑制できる。また、スペーサー部材90とフィルター室110とが一体として形成されているため、万が一、液体収容体20が落下しても、スペーサー部材90とフィルター室110とが衝撃から分離されることを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、フィルム112を開口部905に接合することによってフィルター室110が形成されているので、フィルター室110を容易に形成できる。また、フィルター室110をフィルム112の接合によって形成できるので、フィルター111の表面を向く方向に限らず、フィルター室110に連通する液体導入口910を任意の位置に設けることによって様々な方向からフィルター111に液体を供給することができる。そのため、液体導入口910を袋60内の最適な位置に設けることによって液体噴射装置11に対して安定してインクを供給することができる。
【0068】
また、本実施形態では、スペーサー部材90は、高さ方向の異なる位置に、フィルター室110に液体を取り入れる複数の液体導入口910を備えている。そのため、液体収容体20の使用状態において袋60内に液体中の沈降成分が沈降した場合でも、袋60内の上部における濃度の低い液体と、袋60内の下部における濃度の高い液体とをスペーサー部材90内で混合して液体噴射装置11に供給できる。そのため、液体噴射装置11に供給する液体の濃度を安定させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、複数の液体導入口910のうちの第2液体導入口93は第1液体導入口92よりも高さ方向において高い位置に配置され、第1液体導入口92の開口面積は、第2液体導入口93の開口面積よりも大きい。そのため、低い位置に配置された第1液体導入口92の流路抵抗を小さくすることができるので、袋60内の下部における濃度の高い液体を、積極的に液体噴射装置11に供給できる。この結果、液体噴射装置11に供給する液体の濃度を安定させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、フィルター室110は、フィルター111と複数の液体導入口910との間に、複数の液体導入口910から流入した液体が合流する合流部907を有している。例えば、液体導入口910ごとにフィルターが設けられている構成では、複数の液体導入口910のそれぞれから流入する液体中の異物の分布にばらつきがあった場合に、特定のフィルターのみが目詰まりし、液体噴射装置11に供給される液体の濃度が不均一になる可能性がある。これに対して、本実施形態の構成であれば、複数の液体導入口910から導入された液体は、合流部907によって合流してからフィルター111を通過するため、液体噴射装置11に供給する液体の濃度が不均一になる可能性を低減できる。
【0071】
また、本実施形態では、液体収容体20の使用状態において、液体導出部材66と液体導出管80とスペーサー部材90とが、水平方向に沿って並んでいる。そのため、袋60内の液体をスムーズに液体噴射装置11に供給できる。
【0072】
また、本実施形態では、袋60内に、液体導出部材66とスペーサー部材90とを連結する連結部材85を備えており、スペーサー部材90が、この連結部材85を介して液体導出部材66に固定されている。そのため、ユーザーによる攪拌動作などによって袋60が動いた場合にも、スペーサー部材90が袋60内で柔軟にその動きに追従できる。また、例えば、フィルター部902がスペーサー部材90から分離して液体導出部材66に直接的に固定される構造では、フィルター部902と液体導出部材66との固定部に応力が集中する可能性があるが、本実施形態のようにフィルター部902が液体導出部材66ではなくスペーサー部材90に一体的に備えられている構造であれば、そのような応力の集中を抑制することができる。この結果、ユーザーによる攪拌動作などに対する液体収容体20の耐久性を高めることができる。
【0073】
また、本実施形態では、第1液体導入口92に繋がるようにスペーサー部材90に第1溝912が設けられ、また、第2液体導入口93に繋がるようにスペーサー部材90に第2溝913が設けられている。そのため、袋60内の液体の消費に伴って袋60が収縮し、袋60の内面がスペーサー部材90に密着したとしても、第1溝912および第2溝913を通じて、フィルター室110内に、スムーズに液体を導入することができる。
【0074】
また、本実施形態では、袋60内にスペーサー部材90が配置されているため、液体収容体20が消費された後において、スペーサー部材90内およびその周辺に、沈降成分を多く含む濃度の高い液体を残留させることができる。そのため、液体噴射装置11に供給する液体の濃度を安定させることができる。特に、本実施形態では、フィルター部902が連結部材85よりも上側に配置されるため、フィルター部902よりも下方に濃度の高い液体を効率的に残留させることができる。
【0075】
B.他の実施形態:
(B-1)図20は、液体噴射装置11の他の形態を示す図である。上記実施形態では、図1に示したように、液体噴射装置11の下部に配置された装着部14に、液体収容体20および容器13が収容される。しかし、液体噴射装置11の形態は、このような形態に限られない。例えば、図20に示すように、液体噴射装置11Aの本体と、容器13および液体収容体20が収容される装着部14Aとが分離されていてもよい。この場合に、装着部14Aと液体噴射装置11Aの本体とは、チューブ等により構成された供給流路30Aによって接続され、供給流路30A内を液体が流れる。
【0076】
(B-2)上記実施形態では、液体導出部材66と、スペーサー部材90のフィルター室110とが、2本の液体導出管80によって接続されている。これに対して、液体導出管80は、1本でもよいし3本以上であってもよい。液体導出部材66に設けられた第1凸部661,662と、スペーサー部材90に設けられた第2凸部141,142とは、液体導出管80の本数に応じた数だけ設けられていればよい。
【0077】
(B-3)上記実施形態では、フィルター室110は、袋60の内面に対向する部分に開口部905を有している。これに対して、フィルター室110に開口部905が設けられる位置は任意であり、例えば、開口部905は、フィルター室110において、袋60の内部を向く部分に設けられてもよい。また、フィルター室110は、内部に、液体を濾過するためのフィルター111を備え、袋60から液体が導入される構造であればよく、開口部905やフィルム112を備えていなくてもよい。
【0078】
(B-4)上記実施形態では、スペーサー部材90は、液体収容体20が使用される使用状態において、高さ方向の異なる位置に、複数の液体導入口910を備えている。これに対して、スペーサー部材90は、液体収容体20が使用される使用状態において、複数の液体導入口910を、同じ高さの位置に備えてもよい。
【0079】
(B-5)上記実施形態では、液体収容体20の使用状態において、第1液体導入口92の開口面積は、第2液体導入口93の開口面積よりも大きく形成されている。これに対して、第1液体導入口92と第2液体導入口93とは、同じ開口面積であってもよいし、第1液体導入口92の開口面積の方が、第1液体導入口92の開口面積よりも小さくてもよい。また、第1液体導入口92とフィルター室110とを繋ぐ流路の最小の流路断面積が、第2液体導入口93とフィルター室110とを繋ぐ流路の最小の流路断面積よりも大きく形成されていてもよい。そのほか、第1液体導入口92とフィルター室110とを繋ぐ流路の流路抵抗が、第2液体導入口93とフィルター室110とを繋ぐ流路の流路抵抗よりも小さくなるように、それぞれの流路が形成されていてもよい。
【0080】
(B-6)上記実施形態では、フィルター室110は、フィルター111と複数の液体導入口910との間に、複数の液体導入口910から流入した液体が合流する合流部907を有している。これに対して、合流部907は、これとは異なる位置に設けられてもよい。例えば、合流部907は、フィルター室110よりも上流側に設けられていてもよい。また、液体導入口910毎にフィルターを設け、合流部907は、それらのフィルターよりも下流側に配置されていてもよい。
【0081】
(B-7)上記実施形態では、液体収容体20の使用状態において、液体導出部材66と液体導出管80とスペーサー部材90とは、水平方向に沿って並んでいる。これに対して、液体導出部材66と液体導出管80とスペーサー部材90とは、液体収容体20の使用状態において、垂直方向に沿って並んでいてもよいし、水平方向に傾斜した方向に沿って並んでいてもよい。
【0082】
(B-8)上記実施形態では、スペーサー部材90と液体導出部材66とが連結部材85によって連結されている。これに対して、スペーサー部材90は、袋60に対して固定されていてもよく、液体導出部材66に連結されていなくてもよい。この場合、液体収容体20は、連結部材85を備えていなくてもよい。
【0083】
(B-9)本開示は、インクジェットプリンター、及び、インクジェットプリンターにインクを供給するための液体収容体に限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の液体噴射装置及びそれらの液体噴射装置に用いられる液体収容体にも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体噴射装置およびその液体収容体に適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置。
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置。
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置。
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置。
(5)精密ピペットとしての試料噴射装置。
(6)潤滑油の噴射装置。
(7)樹脂液の噴射装置。
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置。
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置。
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する液体噴射装置。
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体消費ヘッドを備える液体噴射装置。
【0084】
なお、「液滴」とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体噴射装置が消費できるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。
【0085】
C.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0086】
(1)本開示の第1の形態によれば、液体収容体が提供される。この液体収容体は、可撓性を有し、内部に液体を収容する袋と、前記袋の一端部に取り付けられ、前記液体を液体噴射装置へ導出するための液体導出部を有する液体導出部材と、前記袋内に配置され、前記液体を濾過するフィルターが配置されたフィルター室を有するスペーサー部材と、前記袋内に配置され、前記フィルター室と前記液体導出部とに接続され、前記フィルターによって濾過された前記液体を前記液体導出部へ流す液体導出管と、を備える。
このような形態によれば、スペーサー部材に備えられたフィルター室のフィルターを通じて袋内の液体が液体噴射装置に導出されるので、液体収容体から液体噴射装置に異物が流入することを抑制できる。
【0087】
(2)上記形態の液体収容体において、前記フィルター室は、開口部を有し、前記開口部に、前記開口部を封止するフィルムが接合されていてもよい。このような形態によれば、フィルムを開口部に接合することによってフィルター室を容易に形成できる。
【0088】
(3)上記形態の液体収容体において、前記スペーサー部材は、前記液体収容体が使用される使用状態において、高さ方向の異なる位置に、前記フィルター室に前記液体を取り入れる複数の液体導入口を備えてもよい。このような形態であれば、高さの異なる位置に液体導入口を設けるため、液体収容体の使用状態において袋内に液体中の沈降成分が沈降した場合でも、袋内の上部における濃度の低い液体と、袋内の下部における濃度の高い液体とを混合して液体噴射装置に供給できる。そのため、液体噴射装置に供給する液体の濃度を安定させることができる。
【0089】
(4)上記形態の液体収容体において、前記複数の液体導入口は、第1液体導入口と第2液体導入口とを含み、前記使用状態において、前記第2液体導入口は前記第1液体導入口よりも前記高さ方向において高い位置に配置され、前記1液体導入口の開口面積は、前記第2液体導入口の開口面積よりも大きくてもよい。このような形態であれば、低い位置に配置された第1液体導入口の流路抵抗を小さくすることができるので、袋内の下部に存在する濃度の高い液体を、積極的に液体噴射装置に供給できる。
【0090】
(5)上記形態の液体収容体において、前記フィルター室は、前記フィルターと前記複数の液体導入口との間に、前記複数の液体導入口から流入した前記液体が合流する合流部を有してもよい。このような形態であれば、複数の液体導入口から導入された液体は、合流部によって合流してからフィルターを通過するため、液体噴射装置に供給する液体の濃度が不均一になる可能性を低減できる。
【0091】
(6)上記形態の液体収容体は、更に、前記袋内に、前記液体導出部材と前記スペーサー部材とを連結する連結部材を備えてもよい。このような形態であれば、ユーザーによる攪拌動作等によって袋が動いた場合に、スペーサー部材をその動きに柔軟に追従させることができる。
【0092】
(7)上記形態の液体収容体において、前記液体収容体の使用状態において、前記液体導出部材と前記液体導出管と前記スペーサー部材とは、水平方向に沿って並んでいてもよい。このような形態であれば、袋内の液体をスムーズに液体噴射装置に供給できる。
【0093】
本開示は、上述した液体収容体としての形態に限らず、液体噴射装置や、液体噴射システムなどの種々の形態として実現可能である。
【符号の説明】
【0094】
11,11A…液体噴射装置、12…外装体、13…容器、13M…第2容器、13S…第1容器、13a…開口、14,14A…装着部、15…前蓋、16…カセット、17…装着口、18…排出トレイ、19…操作パネル、20…液体収容体、21…液体噴射部、22…キャリッジ、24…枠体、25…挿入口、26…案内レール、29…接続機構、29F…第1接続機構、29S…第2接続機構、30,30A…供給流路、31…供給機構、32…インク導入針、33…供給チューブ、34…変圧機構、35…駆動源、36…変圧流路、38…アーム、39…係止部、40…端子部、40a…案内凸部、41…電気回線、42…制御装置、44…ブロック、45,46…突部、47…押出機構、47a…枠部材、47b…押圧部、47c…付勢部、48…液受部、50…装着体、51…接続構造、51F…第1接続構造、51S…第2接続構造、52…液体導出部、53…接続端子、53a…凹部、53g…案内凹部、54…識別部、55…第1位置決め穴、55a…第1穴、55b…第1穴、56…第2位置決め穴、56a…第2穴、56b…第2穴、57…付勢受部、58…挿入部、60…袋、60a…一端部、60b…他端部、60c…液体収容部、60d…開口部分、61…アダプター、61a…蓋部材、61b…底部材、61c…第1突起、61d…第2突起、62…取っ手部、62a…把持部、62b…軸部、63…回動軸、65…係合受部、65a…切欠き、66…液体導出部材、66a…溶着部、66c…第1貫通孔、66d…第2貫通孔、66s…固定部、67…底板、68…側板、69…前板、70…先板、72…被案内部、72a…規制部、72b…曲面部、73…案内部、73a…規制部、73b…曲面部、75…突起部、76…係合穴、78…係合溝、80…液体導出管、81…第1流路部、82…第2流路部、85…連結部材、86…係止突起、90…スペーサー部材、91…傾斜面、92…第1液体導入口、93…第2液体導入口、110…フィルター室、111…フィルター、112…フィルム、141,142…第2凸部、200…内部構造体、661,662…第1凸部、901…規制構造体、902…フィルター部、903…差込口、904…差込部、905…開口部、906…内部開口部、907…合流部、908…リブ、910…液体導入口、912…第1溝、913…第2溝、CX…中心軸、S1…上部空間、S2…下部空間
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