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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20240220BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240220BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240220BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240220BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240220BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240220BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C11/00 B
B60C1/00 A
C08L9/00
C08K3/013
C08K3/04
C08K3/36
C08L9/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019220343
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021088305
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓治
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-013218(JP,A)
【文献】特開平07-195906(JP,A)
【文献】特開2011-189807(JP,A)
【文献】特表2019-523331(JP,A)
【文献】国際公開第2018/164245(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/110176(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0301138(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0215904(US,A1)
【文献】国際公開第2013/172699(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
B60C 11/00
C08L 9/00
C08K 3/013
C08K 3/04
C08K 3/36
C08L 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップトレッド及びベーストレッドが積層されたトレッド部を備え、
前記キャップトレッドを構成するキャップトレッドゴム組成物が、イソプレン系ゴム、シリカ及びカーボンブラックを含有し、ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が25質量%以上であり、
前記ベーストレッドを構成するベーストレッドゴム組成物が、イソプレン系ゴムを含有し、ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が45質量%以上、25℃における硬度が50以上であり、
前記ベーストレッドゴム組成物の25℃における硬度<前記キャップトレッドゴム組成物の25℃における硬度である二輪車用タイヤ。
【請求項2】
キャップトレッド及びベーストレッドが積層されたトレッド部を備え、
前記キャップトレッドを構成するキャップトレッドゴム組成物が、イソプレン系ゴム、シリカ及びカーボンブラックを含有し、ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が25質量%以上であり、
前記ベーストレッドを構成するベーストレッドゴム組成物が、イソプレン系ゴムを含有し、ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が45質量%以上、25℃における硬度が50以上53以下である二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記キャップトレッドゴム組成物において、前記カーボンブラックの含有量/前記シリカの含有量が1/5~5/5である請求項1又は2記載の二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記キャップトレッドゴム組成物がスチレンブタジエンゴムを含有し、
前記キャップトレッドゴム組成物において、前記スチレンブタジエンゴムの含有量/前記イソプレン系ゴムの含有量が20/80~50/50である請求項1~3のいずれかに記載の二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記キャップトレッドゴム組成物がオイルを含有し、ゴム成分100質量部に対する前記オイルの含有量が20質量部以上である請求項1~4のいずれかに記載の二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車用タイヤの高速耐久性を向上させるために、トレッド部を、キャップトレッド(キャップ層)と、該キャップトレッドのタイヤ半径方向内側に配されるベーストレッド(ベース層)とで構成する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年では、ウェットグリップ性能等の確保のため、シリカをキャップトレッドに配合する場合があるが、シリカは、カーボンブラックと比較して補強性に劣るため、カーボンブラックを減量してシリカを配合すると、高速耐久性が低下する傾向がある。そのため、高速耐久性の更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-223376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決し、高速耐久性に優れた二輪車用タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、キャップトレッド及びベーストレッドが積層されたトレッド部を備え、前記キャップトレッドを構成するキャップトレッドゴム組成物が、イソプレン系ゴム、シリカ及びカーボンブラックを含有し、ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が25質量%以上であり、前記ベーストレッドを構成するベーストレッドゴム組成物が、イソプレン系ゴムを含有し、ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が45質量%以上、25℃における硬度が50以上である二輪車用タイヤに関する。
【0007】
前記キャップトレッドゴム組成物において、前記カーボンブラックの含有量/前記シリカの含有量が1/5~5/5であることが好ましい。
【0008】
前記キャップトレッドゴム組成物がスチレンブタジエンゴムを含有し、前記キャップトレッドゴム組成物において、前記スチレンブタジエンゴムの含有量/前記イソプレン系ゴムの含有量が20/80~50/50であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、キャップトレッド及びベーストレッドが積層されたトレッド部を備え、前記キャップトレッドを構成するキャップトレッドゴム組成物が、イソプレン系ゴム、シリカ及びカーボンブラックを含有し、ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が25質量%以上であり、前記ベーストレッドを構成するベーストレッドゴム組成物が、イソプレン系ゴムを含有し、ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が45質量%以上、25℃における硬度が50以上である二輪車用タイヤであるので、優れた高速耐久性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、キャップトレッド及びベーストレッドが積層されたトレッド部を備え、前記キャップトレッドを構成するキャップトレッドゴム組成物が、イソプレン系ゴム、シリカ及びカーボンブラックを含有し、ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が25質量%以上であり、前記ベーストレッドを構成するベーストレッドゴム組成物が、イソプレン系ゴムを含有し、ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が45質量%以上、25℃における硬度が50以上である二輪車用タイヤである。
【0011】
上記二輪車用タイヤでは、キャップトレッドゴム組成物にシリカ及びカーボンブラックを配合するとともに、キャップトレッドゴム組成物及びベーストレッドゴム組成物の双方において、所定量のイソプレン系ゴムを配合することで、それぞれの引き裂き強度が高まるとともに、キャップトレッド及びベーストレッド間の接着性が良好となる。さらに、ベーストレッドゴム組成物の硬度を一定値以上とすることで、イソプレン系ゴムに分配されやすい充填剤がキャップトレッド及びベーストレッドの界面に存在していても、界面を起点とした破壊が生じにくくなる。これらの作用により、変形が急激に起こる高速走行時であっても、優れた耐久性が得られると推測される。
【0012】
<キャップトレッドゴム組成物>
上記キャップトレッドゴム組成物は、ゴム成分として、イソプレン系ゴムを含有する。
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム、天然ゴム(NR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0013】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、25質量%以上であればよいが、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、また、好ましくは90%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0014】
上記キャップトレッドゴム組成物において、イソプレン系ゴム以外に使用できるゴム成分としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、SBRが好ましい。
【0015】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。市販品としては、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0016】
SBRは、非変性SBR、変性SBRのいずれであってもよい。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
【0017】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0018】
上記官能基を有する化合物(変性剤)の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0019】
また、上記変性剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;
【0020】
ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;
【0021】
(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;
【0022】
エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドン;N-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類;の他、
【0023】
N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることもできる。
【0024】
SBRのスチレン量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは37質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、SBRのスチレン量は、H-NMR測定によって測定できる。
【0025】
SBRのビニル量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは14質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、SBRのビニル量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0026】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、また、好ましくは75質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは45質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0027】
上記キャップトレッドゴム組成物において、SBRの含有量(質量%)/イソプレン系ゴムの含有量(質量%)は、好ましくは20/80以上、より好ましくは40/60以上であり、また、好ましくは50/50以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0028】
上記キャップトレッドゴム組成物は、カーボンブラックを含有する。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは114m/g以上であり、また、好ましくは160m/g以下、より好ましくは140m/g以下、更に好ましくは125m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217-2:2001に準拠して測定される値である。
【0030】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは35質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0031】
上記キャップトレッドゴム組成物は、シリカを含有する。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、EVONIK社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは100m/g以上、より好ましくは150m/g以上、更に好ましくは180m/g以上であり、また、好ましくは250m/g以下、より好ましくは220m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0033】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0034】
シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは40質量部以上、より好ましくは60質量部以上、更に好ましくは70質量部以上であり、また、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは90質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0035】
上記キャップトレッドゴム組成物において、カーボンブラックの含有量(質量部)/シリカの含有量(質量部)は、好ましくは1/5以上、より好ましくは2/5以上であり、また、好ましくは5/5以下、より好ましくは4/5以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0036】
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、EVONIK社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは6質量部以上であり、また、好ましくは12質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0038】
上記キャップトレッドゴム組成物は、粘着性樹脂を含有してもよい。
粘着性樹脂としては、タイヤ工業において慣用されるフェノール系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂、インデン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)等の芳香族炭化水素系樹脂、C5系樹脂、C8系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂等の脂肪族炭化水素系樹脂や、これらの水素添加物等が挙げられる。市販品としては、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、日本ゼオン(株)、ハリマ化成(株)、東亞合成(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
粘着性樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0040】
上記キャップトレッドゴム組成物は、ワックスを含有してもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品としては、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0042】
上記キャップトレッドゴム組成物は、オイルを含んでもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等を用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、JXTGエネルギー(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0044】
上記キャップトレッドゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0046】
上記キャップトレッドゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0048】
上記キャップトレッドゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0050】
上記キャップトレッドゴム組成物は、硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0052】
上記キャップトレッドゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。市販品としては、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは8質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0054】
上記キャップトレッドゴム組成物には、上記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ等の充填剤;等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0055】
上記キャップトレッドゴム組成物は、例えば、上述の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0056】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
【0057】
<ベーストレッドゴム組成物>
上記ベーストレッドゴム組成物は、上記キャップトレッドゴム組成物と同様の薬品を用いて、同様の方法で製造できる。
【0058】
上記ベーストレッドゴム組成物は、ゴム成分として、イソプレン系ゴムを含有する。
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、45質量%以上であればよいが、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0059】
上記ベーストレッドゴム組成物は、ゴム成分として、SBRを含有することが好ましい。
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは55質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0060】
上記ベーストレッドゴム組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは60質量部以上であり、また、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0061】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは10m/g以上、より好ましくは25m/g以上、更に好ましくは35m/g以上であり、また、好ましくは80m/g以下、より好ましくは60m/g以下、更に好ましくは50m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0062】
上記ベーストレッドゴム組成物は、上記成分以外に、シリカ、ワックス、ステアリン酸、老化防止剤、酸化亜鉛、硫黄、加硫促進剤等を配合してもよい。これらの含有量は、上記キャップトレッドゴム組成物で説明したものと同様である。
【0063】
<二輪車用タイヤ>
本発明の二輪車用タイヤは、上記キャップトレッドゴム組成物及び上記ベーストレッドゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記キャップトレッドゴム組成物、上記ベーストレッドゴム組成物を、未加硫の段階で、それぞれキャップトレッド、ベーストレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、キャップトレッド及びベーストレッドが積層されたトレッド部を備える二輪車用タイヤを得る。
【0064】
なお、トレッド部が、タイヤ幅方向の中央部に配されたセンターゴムと、該センターゴムのタイヤ幅方向の両側に配されたショルダーゴムとで構成される場合、センターゴムのキャップ層に上記キャップトレッドゴム組成物を、センターゴムのベース層に上記ベーストレッドゴム組成物を使用することが好ましい。
【0065】
上記二輪車用タイヤにおいて、上記ベーストレッドゴム組成物の25℃における硬度は、50以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは60以下、より好ましくは55以下、更に好ましくは52以下である。
【0066】
上記二輪車用タイヤにおいて、上記キャップトレッドゴム組成物と、上記ベーストレッドゴム組成物とは、25℃における硬度差が小さいことが好ましい。より詳細には、上記硬度差は、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、特に好ましくは15以下であり、0(硬度が実質的に同一)であってもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
また、上記ベーストレッドゴム組成物の25℃における硬度<上記キャップトレッドゴム組成物の25℃における硬度であることが好ましい。
【0067】
なお、ゴム組成物の硬度は、シリカ、カーボンブラック等の充填剤の含有量、硫黄の含有量、加硫促進剤の含有量、オイル等の軟化剤の含有量等の調整;粒子径の異なる充填剤の使用;等の手法により調整できる。具体的には、充填剤、硫黄や加硫促進剤の増量、軟化剤の減量、小粒子径の充填剤の使用、等で加硫後の硬度を増加でき、そのような傾向に沿って調整可能である。
また、ゴム組成物の硬度は、加硫後、実施例に記載の方法で測定できる。
【0068】
上記二輪車用タイヤは、自動二輪車用タイヤとして好適に使用できる。
【実施例
【0069】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0070】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
【0071】
<キャップトレッドゴム組成物の使用薬品>
SBR(1):JSR(株)製のJSR0122(スチレン量:37質量%、ビニル量:14質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル34質量部含有)
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B(シス含量:97質量%)
カーボンブラック(1):キャボットジャパン(株)製のN220(NSA:114m/g)
シリカ:EVONIK社製のULTRASIL VN3(NSA:180m/g)
シランカップリング剤:EVONIK社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
オイル(1):三共油化工業(株)製のA/Oミックス
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS))
【0072】
<ベーストレッドゴム組成物の使用薬品>
SBR(2):JSR(株)製のJSR1502(スチレン量:24質量%、ビニル量:16質量%)
NR:TSR20
カーボンブラック(2):キャボットジャパン(株)製のN660(NSA:35m/g)
オイル(2):出光興産(株)製のPS-32(ミネラルオイル)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS))
【0073】
<実施例及び比較例>
表1に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練物を得た。次に、得られた混練物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫のキャップトレッドゴム組成物、未加硫のベーストレッドゴム組成物を得た。
未加硫のキャップトレッドゴム組成物をキャップトレッドの形状に、未加硫のベーストレッドゴム組成物をベーストレッドの形状にそれぞれ成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材と共に貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃で10分間加硫し、試験用タイヤ(二輪車用タイヤ)を得た。
【0074】
上記試験用タイヤを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
(硬度)
上記試験用タイヤのキャップトレッド、ベースレッドゴムから試験片を切り出し、JIS K6253-3(2012)の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に準じて、タイプAデュロメータを用いて、25℃における硬度(JIS-A硬度)を測定した。
【0076】
(高速耐久性)
上記試験用タイヤをドラム試験機に取り付け、回転速度を時速100kmから徐々に上げ、破壊発生時の速度を測定し、比較例1を100として指数表示した(高速耐久性指数)。指数が大きいほど、破壊発生時の速度が大きく、高速耐久性に優れることを示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1より、キャップトレッドゴム組成物が、イソプレン系ゴム、シリカ及びカーボンブラックを含有し、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が25質量%以上であり、ベーストレッドゴム組成物が、イソプレン系ゴムを含有し、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が45質量%以上、25℃における硬度が50以上である実施例は、優れた高速耐久性が得られた。