(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20240220BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240220BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240220BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240220BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240220BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H04N1/00 127A
G05B23/02 Z
B41J29/38 401
B41J29/38 202
G06N20/00
G06T7/00 350B
H04N1/00 002A
G06F3/12 303
G06F3/12 330
G06F3/12 373
(21)【出願番号】P 2019224240
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧 研司
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-077697(JP,A)
【文献】特開平03-248672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
G05B 23/02
B41J 29/38
G06N 20/00
G06T 7/00
G06F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置とサーバとを備える画像処理システムであって、
前記画像処理装置は、
画像形成部と、
前記画像形成部の所定の制御パラメータに関する機械学習を実行する機械学習実行部と、
前記機械学習の結果に基づき新たな制御パラメータを変更後の制御パラメータとして仮決定する仮決定部と、
前記変更後の制御パラメータを前記画像処理装置で実行する制御パラメータとして更新する前に、前記変更後の制御パラメータを前記サーバに送信する通信部と、を備え、
前記サーバは、
前記変更後の制御パラメータにおける
、電磁妨害波の規制に係る規格試験の合否結果を判定して前記画像処理装置に送信する合否結果送信部を備え、
前記画像処理装置はさらに、
前記合否結果に応じて前記変更後の制御パラメータを前記画像処理装置で実行する制御パラメータとして更新する更新部を備える、
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
前記サーバには、前記画像処理装置と同型の画像処理装置が接続されており、
前記合否結果送信部は、当該同型の画像処理装置の制御パラメータを前記変更後の制御パラメータに変更し、当該同型の画像処理装置を使って前記規格試験を行わせる、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記サーバの記憶部には、前記規格試験に合格した制御パラメータが記憶され、
前記合否結果送信部は、前記変更後の制御パラメータが前記合格した制御パラメータに含まれる場合には、前記規格試験に合格と送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記画像処理装置の記憶部には、前記規格試験の合否に影響する制御パラメータ群と、前記規格試験に影響しない制御パラメータ群とが記憶され、
前記更新部は、
前記規格試験の合否に影響する制御パラメータ群に含まれる制御パラメータについては、前記通信部によって前記サーバからの合格を受信した後に変更し、
前記規格試験の合否に影響しない制御パラメータ群に含まれる制御パラメータについては、前記合否結果によらずに変更する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記画像処理装置の記憶部には、前記規格試験に影響しない制御パラメータの範囲が記憶され、
前記更新部は、
前記規格試験に影響しない制御パラメータの範囲外に含まれる制御パラメータについては、前記通信部によって前記サーバからの合格を受信した後に変更し、
前記規格試験に影響しない制御パラメータの範囲内に含まれる制御パラメータについては、前記合否結果によらずに変更する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記サーバの記憶部には、前記規格試験に合格した制御パラメータの範囲である合格範囲と、前記規格試験に不合格であった制御パラメータの範囲である不合格範囲とが記憶され、
前記合否結果送信部は、
前記変更後の制御パラメータが前記合格範囲に含まれる場合には、前記規格試験に合格と送信し、
前記変更後の制御パラメータが前記不合格範囲に含まれる場合には、前記規格試験に不合格と送信し、
前記変更後の制御パラメータが前記合格範囲にも前記不合格範囲にも含まれない場合には、前記合格範囲のなかで前記変更後の制御パラメータに対応する制御パラメータに最も近い制御パラメータ値を送信する、または、前記同型の画像処理装置の制御パラメータを前記変更後の制御パラメータに対応するように変更して前記規格試験の合否結果を判定して送信し、
前記更新部は、
前記通信部が前記制御パラメータ値を受信した場合には、当該制御パラメータ値に変更する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理システム。
【請求項7】
前記画像処理装置の通信部は、前記変更後の制御パラメータとともに前記サーバに環境情報および使用履歴情報の何れか1つまたは両方を送信し、
前記サーバの記憶部には、前記環境情報と前記使用履歴情報と関連付けて前記規格試験に合格したときの制御パラメータが記憶され、
前記合否結果送信部は、前記変更後の制御パラメータが、前記画像処理装置が送信した環境情報および使用履歴情報の何れか1つまたは両方に関連付けられた前記規格試験に合格したときの制御パラメータに対応する場合には、前記規格試験に合格と送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項8】
前記サーバの記憶部には、前記画像処理装置の型ごとに前記規格試験に合格した制御パラメータ、およびファームウェアが記憶され、
前記合否結果送信部は、当該型における前記規格試験に合格した制御パラメータ値が、当該型のファームウェアの規定値となるように当該型のファームウェアを変更する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項9】
前記サーバの記憶部には、前記画像処理装置の型ごと、使用履歴ごと、および環境ごとに前記規格試験に合格したときの制御パラメータ、およびファームウェアが記憶され、
前記合否結果送信部は、前記型、前記使用履歴、および前記環境における前記規格試験に合格した制御パラメータ値が、当該型、当該使用履歴、および当該環境のファームウェアの規定値となるように当該ファームウェアを変更する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項10】
前記制御パラメータは、前記画像処理装置を制御する物理パラメータである
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項11】
前記機械学習は、所定の報酬判定を伴う強化学習である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項12】
画像処理装置であって、
画像形成部と、
前記画像形成部の所定の制御パラメータに関する機械学習を実行する機械学習実行部と、
前記機械学習の結果に基づき新たな制御パラメータを変更後の制御パラメータとして仮決定する仮決定部と、
前記変更後の制御パラメータを前記画像処理装置で実行する制御パラメータとして更新する前に、前記変更後の制御パラメータをサーバに送信する通信部と、
前記サーバから受信した前記変更後の制御パラメータにおける
、電磁妨害波の規制に係る規格試験の合否結果に応じて前記変更後の制御パラメータを前記画像処理装置で実行する制御パラメータとして更新する更新部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
前記制御パラメータは、前記画像処理装置を制御する物理パラメータである
ことを特徴とする請求項1
2に記載の画像処理装置。
【請求項14】
コンピュータである画像処理装置に実行させるためのプログラムであって、
画像を形成するステップと、
前記画像の形成に係る制御パラメータに関する機械学習を実行するステップと、
前記機械学習の結果に基づき新たな制御パラメータを変更後の制御パラメータとして仮決定するステップと、
前記変更後の制御パラメータを前記画像処理装置で実行する制御パラメータとして更新する前に、前記変更後の制御パラメータをサーバに送信するステップと、
前記サーバから受信した前記変更後の制御パラメータにおける
、電磁妨害波の規制に係る規格試験の合否結果に応じて前記変更後の制御パラメータを前記画像処理装置で実行する制御パラメータとして更新するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項15】
前記制御パラメータは、前記画像処理装置を制御する物理パラメータである
ことを特徴とする請求項1
4に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭やオフィスで利用される電気製品や電子機器、工場に設置される製造装置、医療機器に対して、安全確保や環境保護などに係る規制(規格)がある。一例として、電磁妨害波の規制がある。複合機などの電子写真方式の画像処理装置に備わる現像器には、高電圧の直流成分と、高周波矩形波の交流成分とを含む電圧が掛かっている。交流成分は矩形波であるため多くの高周波成分を含み、電圧が高いため電磁妨害波が発生しやすい。このため、画像処理装置の製造者は、電磁妨害波の規制をクリアしていること(電磁妨害波の電波強度が規制の限度値以下であること)を試験して確認した後に出荷している。
【0003】
一方、画像処理装置に対しては、画像の高画質化、高耐久化、多くの紙種への対応が求められており、出荷後も電圧や周波数の調整が求められている。さらに、画像処理装置が設置された環境(温度や湿度など)に対応するための調整も求められる。なお、高耐久化とは、画像処理装置が経年変化を起こしても、電圧や周波数などの制御パラメータを調整することで、使用期間を長くすることを意味する。このような出荷後の制御パラメータの調整は、画像処理装置に限らず、製造装置や医療機器などを含めさまざまな装置や機器で求められる。
【0004】
一般には、装置や機器の製造ないしは販売業者が、保守サービスの一環として制御パラメータの調整を行っている。また、機械学習技術の進展にともない、装置や機器がその状態に応じて制御パラメータを調整する技術が現れている。例えば、特許文献1に記載の発明は、工作機械において、加工誤差量、機械稼働率の観点から工具補正間隔を、強化学習を用いて最適化している。また、特許文献2に記載の発明は、ロボットの制御装置において、動作時間、目標位置からの乖離、振動などの観点からロボットの動作パラメータを、強化学習を用いて最適化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5969676号公報
【文献】特開2018-126796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載の発明では、機械の動作精度や動作時間、効率などの観点から制御パラメータの最適化が行われている。一方、装置や機器には、国や業界の規制、規格への準拠が求められる。例えば、電磁妨害波に関する情報処理装置等電波障害自主規制協議会(略称VCCI(Voluntary Control Council for Interference by Information Technology Equipment))が定める規制やEUのEMC(ElectroMagnetic Compatibility)指令、電気製品の安全性に関するEUの低電圧指令などを遵守する必要がある。
【0007】
制御パラメータが変更されると、規制の対象となる値(例えば、EMC指令における装置が発する電磁妨害波の電波強度)が変化し、限度値を超える可能性がある。しかしながら、上記発明には規制に関する記載はなく、考慮されていない。
【0008】
本発明は、このような背景を鑑みてなされたものであり、機械学習で算出された制御パラメータの規格に準拠した範囲内での変更を可能とする画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)画像処理装置とサーバとを備える画像処理システムであって、前記画像処理装置は、画像形成部と、前記画像形成部の所定の制御パラメータに関する機械学習を実行する機械学習実行部と、前記機械学習の結果に基づき新たな制御パラメータを変更後の制御パラメータとして仮決定する仮決定部と、前記変更後の制御パラメータを前記画像処理装置で実行する制御パラメータとして更新する前に、前記変更後の制御パラメータを前記サーバに送信する通信部と、を備え、前記サーバは、前記変更後の制御パラメータにおける、電磁妨害波の規制に係る規格試験の合否結果を判定して前記画像処理装置に送信する合否結果送信部を備え、前記画像処理装置はさらに、前記合否結果に応じて前記変更後の制御パラメータを前記画像処理装置で実行する制御パラメータとして更新する更新部を備える、ことを特徴とする画像処理システム。
【0010】
(2)前記サーバには、前記画像処理装置と同型の画像処理装置が接続されており、前記合否結果送信部は、当該同型の画像処理装置の制御パラメータを前記変更後の制御パラメータに変更し、当該同型の画像処理装置を使って前記規格試験を行わせる、ことを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0011】
(3)前記サーバの記憶部には、前記規格試験に合格した制御パラメータが記憶され、前記合否結果送信部は、前記変更後の制御パラメータが前記合格した制御パラメータに含まれる場合には、前記規格試験に合格と送信する、ことを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0012】
(4)前記画像処理装置の記憶部には、前記規格試験の合否に影響する制御パラメータ群と、前記規格試験に影響しない制御パラメータ群とが記憶され、前記更新部は、前記規格試験の合否に影響する制御パラメータ群に含まれる制御パラメータについては、前記通信部によって前記サーバからの合格を受信した後に変更し、前記規格試験の合否に影響しない制御パラメータ群に含まれる制御パラメータについては、前記合否結果によらずに変更する、ことを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0013】
(5)前記画像処理装置の記憶部には、前記規格試験に影響しない制御パラメータの範囲が記憶され、前記更新部は、前記規格試験に影響しない制御パラメータの範囲外に含まれる制御パラメータについては、前記通信部によって前記サーバからの合格を受信した後に変更し、前記規格試験に影響しない制御パラメータの範囲内に含まれる制御パラメータについては、前記合否結果によらずに変更する、ことを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0014】
(6)前記サーバの記憶部には、前記規格試験に合格した制御パラメータの範囲である合格範囲と、前記規格試験に不合格であった制御パラメータの範囲である不合格範囲とが記憶され、前記合否結果送信部は、前記変更後の制御パラメータが前記合格範囲に含まれる場合には、前記規格試験に合格と送信し、前記変更後の制御パラメータが前記不合格範囲に含まれる場合には、前記規格試験に不合格と送信し、前記変更後の制御パラメータが前記合格範囲にも前記不合格範囲にも含まれない場合には、前記合格範囲のなかで前記変更後の制御パラメータに対応する制御パラメータに最も近い制御パラメータ値を送信する、または、前記同型の画像処理装置の制御パラメータを前記変更後の制御パラメータに対応するように変更して前記規格試験の合否結果を判定して送信し、前記更新部は、前記通信部が前記制御パラメータ値を受信した場合には、当該制御パラメータ値に変更する、ことを特徴とする(2)に記載の画像処理システム。
【0015】
(7)前記画像処理装置の通信部は、前記変更後の制御パラメータとともに前記サーバに環境情報および使用履歴情報の何れか1つまたは両方を送信し、前記サーバの記憶部には、前記環境情報と前記使用履歴情報と関連付けて前記規格試験に合格したときの制御パラメータが記憶され、前記合否結果送信部は、前記変更後の制御パラメータが、前記画像処理装置が送信した環境情報および使用履歴情報の何れか1つまたは両方に関連付けられた前記規格試験に合格したときの制御パラメータに対応する場合には、前記規格試験に合格と送信する、ことを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0016】
(8)前記サーバの記憶部には、前記画像処理装置の型ごとに前記規格試験に合格した制御パラメータ、およびファームウェアが記憶され、前記合否結果送信部は、当該型における前記規格試験に合格した制御パラメータ値が、当該型のファームウェアの規定値となるように当該型のファームウェアを変更する、ことを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0017】
(9)前記サーバの記憶部には、前記画像処理装置の型ごと、使用履歴ごと、および環境ごとに前記規格試験に合格したときの制御パラメータ、およびファームウェアが記憶され、前記合否結果送信部は、前記型、前記使用履歴、および前記環境における前記規格試験に合格した制御パラメータ値が、当該型、当該使用履歴、および当該環境のファームウェアの規定値となるように当該ファームウェアを変更する、ことを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0018】
(10)前記制御パラメータは、前記画像処理装置を制御する物理パラメータであることを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0020】
(11)前記機械学習は、所定の報酬判定を伴う強化学習であることを特徴とする(1)に記載の画像処理システム。
【0021】
(12)画像処理装置であって、画像形成部と、前記画像形成部の所定の制御パラメータに関する機械学習を実行する機械学習実行部と、前記機械学習の結果に基づき新たな制御パラメータを変更後の制御パラメータとして仮決定する仮決定部と、前記変更後の制御パラメータを前記画像処理装置で実行する制御パラメータとして更新する前に、前記変更後の制御パラメータをサーバに送信する通信部と、前記サーバから受信した前記変更後の制御パラメータにおける、電磁妨害波の規制に係る規格試験の合否結果に応じて前記変更後の制御パラメータを前記画像処理装置で実行する制御パラメータとして更新する更新部と、を備えることを特徴とする画像処理装置。
【0022】
(13)前記制御パラメータは、前記画像処理装置を制御する物理パラメータであることを特徴とする(12)に記載の画像処理装置。
【0024】
(14)コンピュータである画像処理装置に実行させるためのプログラムであって、画像を形成するステップと、前記画像の形成に係る制御パラメータに関する機械学習を実行
するステップと、前記機械学習の結果に基づき新たな制御パラメータを変更後の制御パラメータとして仮決定するステップと、前記変更後の制御パラメータを前記画像処理装置で実行する制御パラメータとして更新する前に、前記変更後の制御パラメータをサーバに送信するステップと、前記サーバから受信した前記変更後の制御パラメータにおける、電磁妨害波の規制に係る規格試験の合否結果に応じて前記変更後の制御パラメータを前記画像処理装置で実行する制御パラメータとして更新するステップと、を実行させるためのプログラム。
【0025】
(15)前記制御パラメータは、前記画像処理装置を制御する物理パラメータであることを特徴とする(14)に記載のプログラム。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、機械学習で算出された制御パラメータの規格に準拠した範囲内での変更を可能とする画像処理システム、画像処理装置、プログラム、制御管理システムおよび装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係る画像処理システムの全体構成図である。
【
図2】本実施形態に係る画像処理装置の内部構成図である。
【
図3】本実施形態に係る画像処理装置の機能ブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る画像処理装置の現像器に加わる電圧を例示する図である。
【
図5】電磁妨害波の規格限度値の一例を説明するための図である。
【
図6】本実施形態に係るサーバの機能ブロック図である。
【
図7】本実施形態に係るサーバが記憶する試験用画像処理装置データベースのデータ構成図である。
【
図8A】本実施形態に係る画像処理システムの制御パラメータ変更処理のシーケンス図(1)である。
【
図8B】本実施形態に係る画像処理システムの制御パラメータ変更処理のシーケンス図(2)である。
【
図9A】本実施形態に係る画像処理装置(ユーザ機)の印刷処理のフローチャート(1)である。
【
図9B】本実施形態に係る画像処理装置(ユーザ機)の印刷処理のフローチャート(2)である。
【
図10】本実施形態の変形例1に係るサーバの機能ブロック図である。
【
図11】本実施形態の変形例1に係るサーバが記憶する合格値パラメータデータベースのデータ構成図である。
【
図12A】本実施形態の変形例1に係る画像処理システムの制御パラメータ変更処理のシーケンス図(1)である。
【
図12B】本実施形態の変形例1に係る画像処理システムの制御パラメータ変更処理のシーケンス図(2)である。
【
図13】本実施形態の変形例2に係る画像処理装置が記憶するパラメータ種別データベースのデータ構成図である。
【
図14】本実施形態の変形例3に係る画像処理装置が記憶する試験免除パラメータデータベースのデータ構成図である。
【
図15】本実施形態の変形例4に係るサーバが記憶する合否履歴パラメータデータベースのデータ構成図である。
【
図16】本実施形態の変形例5に係るサーバが記憶する合格履歴パラメータデータベースのデータ構成図である。
【
図17】本実施形態の変形例6に係るサーバの機能ブロック図である。
【
図18】本実施形態の変形例6に係るサーバが記憶する平均合格値パラメータデータベースのデータ構成図である。
【
図19】本実施形態の変形例7に係るサーバが記憶する平均合格値パラメータデータベースのデータ構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明を実施するための形態(実施形態)における画像処理システムについて説明する。画像処理システムは、ユーザが利用する画像処理装置(ユーザ機)、サーバ、および試験室に設置される画像処理装置(試験対象機)を含む。ユーザ機は、テストチャートを印刷し、印刷結果を読み取って、現在の制御パラメータにおける画像を評価し、新しい制御パラメータを決定する。ユーザ機は、新しい制御パラメータをサーバに送信する。サーバは、試験対象機に新しい制御パラメータを設定して、試験対象機が電磁妨害波の規制を満たすか否かを試験して、合否をユーザ機に通知する。ユーザ機は、合格なら新しい制御パラメータを設定し、不合格なら現在の設定のままとする。
【0032】
ユーザ機が新しい制御パラメータ値を決定する手法の一つとして、強化学習がある。制御パラメータの設定値を状態とし、設定値の変更を行動として、テストチャートの印刷結果に基づいて報酬を定めることで、強化学習による画像品質を向上するための制御パラメータの変更(最適化)が可能となる。強化学習以外の機械学習技術を用いてもよい。
試験対象機で制御パラメータの電磁妨害波の規制を満たすかの試験(規格試験)を実行することで、ユーザ機においても規制を満たすことが保証できるようなり、規制を満たす範囲内でのユーザ機ごとの画像品質向上が可能となる。画像処理装置(ユーザ機)の部品のばらつきやユーザ機が設置されている環境、経年変化まで考慮した制御パラメータの最適化が可能となる。
なお、以下の実施形態では、規制(規格)として電磁妨害波を例にして説明するが、他の規制や規格であってもよい。
【0033】
≪画像処理システムの全体構成≫
図1は、本実施形態に係る画像処理システム100の全体構成図である。画像処理システム100は、画像処理装置200(ユーザ機)、サーバ300、および画像処理装置600(試験対象機)を含んで構成される。画像処理装置200は、ユーザが利用する画像処理装置であって、ネットワーク800を介してサーバ300と通信可能である。
画像処理装置600(試験対象機)は、試験室500(電波暗室)に設置され、規格試験器550により画像処理装置600が発する電磁妨害波の強度が測定される。規格試験器550の測定結果は、サーバ300に送信される。
【0034】
図1では、1つの試験室500に1つの画像処理装置600と1つの規格試験器550が設置されているが、これに限らず、複数の画像処理装置600や複数の規格試験器550が設置されてもよい。また、1つのサーバ300に複数の試験室500が接続されているが、1つの試験室500であってもよい。
【0035】
≪画像処理装置(ユーザ機)の構成≫
図2は、本実施形態に係る画像処理装置200の内部構成図である。画像処理装置200は、給紙トレイ281,282,283、搬送路270、画像形成部260、スキャナ291、および排紙トレイ292を含んで構成される。給紙トレイ281,282,283には、用紙(記録媒体)がセットされる。用紙は、搬送路270上を搬送され、画像形成部260で印刷(画像が形成)されて、排紙トレイ292に排出される。画像形成部260と排紙トレイ292との間の搬送路270上にスキャナ291が備えられ、印刷された用紙上の画像を読み取る。
【0036】
画像形成部260は、レーザ264、感光体261、現像器263、帯電極265、一次転写ローラ262、一次転写ベルト268、二次転写ローラ267、および定着器266を含んで構成される。レーザ264、感光体261、現像器263、帯電極265、および一次転写ローラ262は、YMCK4色に対応して、それぞれ4つずつ備わる。
【0037】
画像形成部260は、電子写真方式により搬送路270を搬送される用紙に画像を形成する。詳しくは、感光体261が帯電極265で帯電され、レーザ264で感光体261上に潜像が形成され、現像器263によりトナーが感光体261にのる。感光体261上のトナーは、一次転写ローラ262により一次転写ベルト268に転写され、一次転写ベルト268上で4色のトナーが重なり、トナー像が形成される。一次転写ベルト268上のトナー像は、二次転写ローラ267により搬送路270上の用紙に転写される。
【0038】
図3は、本実施形態に係る画像処理装置200の機能ブロック図である。画像処理装置200は、全体制御CPU(Central Processing Unit)211、記憶部212、プリンタ制御部220、ネットワークインタフェース219(
図3では「ネットI/F」と記載、通信部とも記す)、レーザ264、およびスキャナ291を備える。
【0039】
全体制御CPU211は、記憶部212が記憶するプログラム214を実行することで、画像処理装置200全体を制御する制御部として機能する。また、全体制御CPU211は、レーザ264のON/OFFを制御して、感光体261上に潜像を形成する。他の制御として、画質に係る制御パラメータの変更(調整)がある。画像処理装置200を含む画像処理システム100の制御パラメータ変更処理については、後記する
図8Aおよび
図8Bで説明する。
【0040】
記憶部212は、プログラム214の他に、後記する機械学習モデル213を記憶する。ネットワークインタフェース219(通信部)は、画像処理システム100の構成要素であるサーバ300との間で通信データを送受信する。また、ネットワークインタフェース219は、パソコンなどの他の装置との通信データを送受信し、印刷ジョブのデータを受信する。スキャナ291は、搬送路270上の用紙に形成された画像を読み取り、全体制御CPU211に出力する。
【0041】
プリンタ制御部220は、プリンタ制御CPU221、ROM(Read Only Memory)222、RAM(Random Access Memory)224、I/O部225、D/A部226を備えて構成される。プリンタ制御CPU221は、ROM222に記憶されるファームウェア223に従って動作して画像形成部260を制御し、制御に必要な一時的なデータはRAM224に記憶する。プリンタ制御CPU221は、I/O部225を介して搬送路270に備わる搬送ローラ271と定着器266とを制御する。また、プリンタ制御CPU221は、D/A部226を介して、レーザ264、帯電極265、現像器263、一次転写ベルト268、および二次転写ローラ267を制御する。
【0042】
≪現像電圧と画像との関係≫
図4は、本実施形態に係る画像処理装置200の現像器263に加わる電圧を例示する図である。現像器263のトナーに電圧を印加することで、感光体261上の潜像にトナーが移動する。印加する電圧には、直流成分と交流成分とがある。
【0043】
図4における直流成分の電圧(現像電圧)V1は800Vである。交流成分は矩形波であり、振幅V2は200V、周波数fは3KHzである。時刻t1以前、および時刻t2以後は、アイドリング状態であり、電圧は印加されない。時刻t1と時刻t2との間は、印刷状態であり、図示する電圧が現像器263に印加される。
直流成分の電圧V1を調整することによって、画像の最高濃度が変化する。また、交流成分の振幅V2を調整することで中間濃度が変化し、周波数fを調整することで画像ノイズ、ムラが変化する。これらの電圧や周波数を調整することで、画質を調整、向上させることができる。しかしながら、矩形波は高周波成分を含み電圧が高いので、電磁妨害波が発生しやすく、VCCIなどの規制の範囲内で、調整する必要がある。
【0044】
図5は、電磁妨害波の規格限度値の一例を説明するための図である。
図5のなかで、PK(peak)、QP(quasi-peak)、AV(average)は、それぞれ電磁妨害波の尖頭値、準尖頭値、平均値を示し、単位はdBμV/mである。
図5において一番下の行は、3GHz~6GHzの電磁妨害波の測定距離3mでの限度値は、平均値で54dBμV/mであり、尖頭値で74dBμV/mであることを示している。
【0045】
≪画像処理装置(試験対象機)の構成≫
画像処理装置600(試験対象機)の構成は、記憶部212(
図3参照)を除いて画像処理装置200(ユーザ機)と同様である。画像処理装置600は機械学習モデル213を備えない。また、画像処理装置600は、サーバ300から制御パラメータを受信して印刷を実行する。規格試験器550は、印刷実行時の画像処理装置600が発する電磁妨害波を測定して、測定結果をサーバ300に送信する。画像処理装置600を含む画像処理システム100の制御パラメータ変更処理については、後記する
図8Aおよび
図8Bで説明する。
【0046】
≪サーバの構成≫
図6は、本実施形態に係るサーバ300の機能ブロック図である。サーバ300は、コンピュータであって、制御部310、記憶部320、および通信部340を備える。サーバ300は、画像処理装置200(ユーザ機)から制御パラメータの変更値を受信し、画像処理装置600(試験対象機)を利用して制御パラメータの変更値が規制(規格)に準拠するか否かを試験する。詳しくは、サーバ300の制御部310(合否結果送信部)は、画像処理装置600の制御パラメータを変更値に設定して規格試験の実施を指示する。制御部310は、規格試験器550から電磁妨害波の強度の測定結果を受信して、規格試験の合否を判定して、判定結果を画像処理装置200に通知する。サーバ300を含む画像処理システム100の制御パラメータ変更処理については、後記する
図8Aおよび
図8Bで説明する。
通信部340は、画像処理装置200,600や規格試験器550との通信データを送受する。記憶部320は、試験用画像処理装置データベース330(後記する
図7参照)を記憶する。
【0047】
図7は、本実施形態に係るサーバ300が記憶する試験用画像処理装置データベース330のデータ構成図である。試験用画像処理装置データベース330は、表形式のデータであり、1つの行(レコード)は、1つの画像処理装置600(試験対象機)を示す。試験用画像処理装置データベース330のレコードは、識別情報331、機種332、アドレス333、試験室334、および試験器335の列(属性)を含んで構成される。
識別情報331、機種332、およびアドレス333は、画像処理装置600の識別情報、機種名、ネットワークアドレスである。試験室334は、画像処理装置600が設置されている試験室500(
図1参照)の識別情報である。試験器335は、画像処理装置600が発する電磁妨害波の強度を測定する規格試験器550(
図1参照)の識別情報である。
【0048】
機種332に含まれる機種名は、1つとは限らず、電磁妨害波の試験について同等と見なせるならば、複数の機種名を含んでも構わない。また、試験器335に含まれる規格試験器550の識別情報は、1つとは限らず、複数の規格試験器550で電磁妨害波を測定する場合には、複数の識別情報が含まれる。
レコード339は、識別情報331が「T1234」である画像処理装置600の情報であって、機種名は「C1234」であり、ネットワークアドレスは「111.22.3.4」である。また、この画像処理装置600は、「R34」の試験室500に設置され、識別情報が「A1234」である規格試験器550により測定される。
【0049】
≪制御パラメータ変更処理≫
制御パラメータの変更処理を説明する前に、画像処理装置200(ユーザ機)の全体制御CPU211(制御部)が実行する制御パラメータの強化学習について説明する。本実施形態における強化学習の対象である制御パラメータは、直流成分の電圧V1、交流成分の振幅V2および周波数f(
図4参照)を設定する制御パラメータであって、それぞれ別の強化学習によって最適になるように調整される。
【0050】
最適な状態とは、テストチャートの印刷結果が最良であるということである。詳しくは、テストチャートを印刷して、印刷結果の画像をスキャナ291が読み取り、読み取った画像における最高濃度の誤差、中間調濃度の誤差、および画像ノイズがないことが最適である。画像処理装置200は、強化学習を実行して、最適となる電圧V1、振幅V2、周波数fの設定値(制御パラメータ値)を求める。
【0051】
電圧V1の強化学習(強化学習Aとも記す)における状態は電圧V1の設定値(制御パラメータ値)であり、行動は設定値の変更であって、報酬は変更前後における最高濃度の誤差の減少量(改善量)である。振幅V2の強化学習(強化学習Bとも記す)における状態は振幅V2の設定値であり、行動は設定値の変更であって、報酬は変更前後における中間調濃度の誤差の減少量である。周波数fの強化学習(強化学習Cとも記す)における状態は周波数fの設定値であり、行動は設定値の変更であって、報酬は変更前後における画像ノイズの減少量である。
【0052】
画像処理装置200は、最高濃度の誤差改善の強化学習A(現像電圧V1に対応)、中間調濃度の誤差改善の強化学習B(振幅V2に対応)、画像ノイズ改善の強化学習C(周波数fに対応)の3つの強化学習を同時並行して実行する。詳しくは、画像処理装置200(全体制御CPU211)は、現在設定されている現像電圧V1(現像バイアスの直流成分)近傍の複数の現像電圧による複数のテストパッチ、振幅V2(現像バイアスの交流成分)近傍の複数の振幅による複数のテストパッチ、および周波数f近傍の複数の周波数による複数のテストパッチを含むテストチャートを印刷して(後記する
図9AのステップS35参照)、印刷結果をスキャナ291で読み取る(ステップS36参照)。
【0053】
続いて、画像処理装置200は、読み取った画像においける最高濃度の誤差の減少量、中間調濃度の誤差の減少量、画像ノイズの減少量から、報酬を算出し、上記強化学習A,B,Cを実行する(ステップS37参照)。なお、減少量が大きいほど報酬は大きい。強化学習としてQ学習を採用し、画像処理装置200は、報酬に基づいて状態(設定値)における行動(設定値の変更)の価値(行動価値)を更新するようにしてもよい。この報酬に基づき、画質向上のための機械学習モデル213が更新される。なお、機械学習モデル213(
図3参照)は、この行動価値を示すデータである。その後、上述のように得られた機械学習モデル213に基づき、より画質を向上させるために制御パラメータの変更値(電圧V1’、振幅V2’、および周波数f’)を仮決定する(ステップS38参照)。
【0054】
制御パラメータの変更処理では、画像処理装置200は、電圧V1、振幅V2、および周波数fの変更値を仮決定した(ステップS38参照)後に、変更値をサーバ300に送信する(ステップS39参照)。画像処理装置200は、変更値が電磁妨害波の試験に合格することを確認した後に変更する(後記する
図9BのステップS41~S47参照)。
【0055】
≪制御パラメータ変更処理:画像処理システム全体の動作≫
図8Aは、本実施形態に係る画像処理システム100の制御パラメータ変更処理のシーケンス図(1)である。
図8Bは、本実施形態に係る画像処理システム100の制御パラメータ変更処理のシーケンス図(2)である。
図8Aおよび
図8Bを参照しながら、画像処理システム100が実行する制御パラメータの変更処理を説明する。なお、画像処理装置200(ユーザ機)が実行する強化学習については、後記する
図9Aおよび
図9Bを参照して説明する。
【0056】
ステップS11において画像処理装置200(制御部または機械学習実行部として機能する全体制御CPU211)は、強化学習を実行する。このとき、画像処理装置200は、機械学習モデル213を仮に更新する。
ステップS12において画像処理装置200(仮決定部として機能する全体制御CPU211)は、電圧V1、振幅V2、および周波数fの変更値(制御パラメータ値)を仮に決定(仮決定)する。なお、ステップS11~S12の処理の詳細は、後記する
図9Aで説明する。
【0057】
ステップS13において画像処理装置200は、自身の機種名と3つの変更値をサーバ300に送信する。なお、電圧V1、振幅V2、および周波数fの変更値(変更後の制御パラメータとも記す)をそれぞれ電圧V1’、振幅V2’、および周波数f’と記す。
ステップS14においてサーバ300は、電圧V1’、振幅V2’、および周波数f’の組み合わせごとにステップS15~S19を実行する。組み合わせとしては、3つの変更値の組み合わせが1つ、2つの変更値の組み合わせが3つ、および、1つの変更値の組み合わせが3つの合計7つの組み合わせがある。なお、1つの変更値は、変更値の組み合わせとは言えないが、便宜上組み合わせと記す。
【0058】
ステップS15においてサーバ300は、組み合わせに含まれる変更値を画像処理装置600(試験対象機)に送信して、画像処理装置600の制御パラメータの設定値を変更値に変更するように指示する。詳しくは、サーバ300は、試験用画像処理装置データベース330(
図7参照)のなかで機種332に受信した機種名を含むレコードを検索して、画像処理装置200(ユーザ機)と同一機種の画像処理装置600(試験対象機)を特定する。次に、サーバ300は、特定した画像処理装置600に変更値を送信して、画像処理装置600の制御パラメータの設定値を送信した変更値に変更するように指示する。
【0059】
ステップS16においてサーバ300(制御部310(合否結果送信部))は、画像処理装置600と規格試験器550とに試験を指示する。なお、規格試験器550は、ステップS15で特定された画像処理装置600に対応する試験器335(
図7参照)に示される規格試験器550(
図1参照)である。
ステップS17において画像処理装置600(試験対象機)は、ステップS15で受信した変更値を制御パラメータとして設定し、テストチャートを印刷する。この際、各パラメータでステップS15で受信した変更値(電圧V1’、振幅V2’、および周波数f’の何れか)とデフォルト値を組み合わせて印刷を実行する。なお、印刷後に画像処理装置600は、設定を戻す。
ステップS18において規格試験器550は、上記印刷処理ごとに電磁妨害波を測定する。
ステップS19において規格試験器550は、測定結果をサーバ300に送信する。
【0060】
ステップS20においてサーバ300は、電圧V1’、振幅V2’、および周波数f’の組み合わせ全てについてステップS15~S19を実行したならばステップS21に進み、未処理の組み合わせがあれば、ステップS15に戻る。
ステップS21においてサーバ300は、電圧V1’、振幅V2’、および周波数f’の上記組み合わせ(7パターン)ごとに測定結果と規制の規格限度値(
図5参照)とを比較して、合否を判定し、ぞれぞれの合否結果と測定結果を画像処理装置200に送信する。
【0061】
図8Bに移って、画像処理装置200(更新部として機能する全体制御CPU211)は、受信した上記組み合わせごとの合否結果と測定結果に応じて、後記するステップS23,S25,S27,S28の何れか1つの処理を行う。
ステップS22において画像処理装置200は、電圧V1’、振幅V2’、および周波数f’の3つの組み合わせが合格ならば(ステップS22→YES)ステップS23に進み、不合格ならば(ステップS22→NO)ステップS24に進む。
ステップS23において画像処理装置200は、電圧V1、振幅V2、および周波数fの制御パラメータを全て仮決定されている変更値(電圧V1’、振幅V2’、周波数f’)に更新する。また、画像処理装置200は、電圧V1、振幅V2、および周波数fの強化学習全て(強化学習A,B,C)に対し正の報酬を与えて機械学習モデル213を更新する。
【0062】
ステップS24において画像処理装置200は、電圧V1’、振幅V2’、および周波数f’のうちで2つの組み合わせに合格の組み合わせがあれば(ステップS24→YES)ステップS25に進み、2つの変更値の組み合わせ全てが不合格ならば(ステップS24→NO)ステップS26に進む。
ステップS25において画像処理装置200は、合格だった2つの変更値の組み合わせを抽出する。抽出された組み合わせが1つの場合、画像処理装置200は、制御パラメータをこの組み合わせの変更値に更新する。抽出された組み合わせが複数の場合、画像処理装置200は、測定結果が最もよかった(例えばステップS18の測定結果が最も低い)組み合わせを選択し、制御パラメータをこの組み合わせの変更値に更新する。次に画像処理装置200は、変更値に更新された2つの制御パラメータに対応する強化学習に対して正の報酬を与え、更新されなかった制御パラメータに対応する強化学習に対して負の報酬を与えて機械学習モデル213を更新する。
【0063】
ステップS26において画像処理装置200は、電圧V1’、振幅V2’、および周波数f’のうちで1つの組み合わせに合格の組み合わせがあれば(ステップS26→YES)ステップS27に進み、1つの変数値の組み合わせ全てが不合格ならば(ステップS26→NO)ステップS28に進む。
ステップS27において画像処理装置200は、合格だった1つの変更値の組み合わせを抽出する。抽出された組み合わせが1つの場合、画像処理装置200は、制御パラメータをこの組み合わせの変更値に更新する。抽出された組み合わせが複数の場合、画像処理装置200は、測定結果が最もよかった(例えばステップS18の測定結果が最も低い)組み合わせを選択し、制御パラメータをこの組み合わせの変更値に更新する。次に画像処理装置200は、変更値に更新された1つの制御パラメータに対応する強化学習に対して正の報酬を与え、更新されなかった制御パラメータに対応する強化学習に対して負の報酬を与えて機械学習モデル213を更新する。
ステップS28において画像処理装置200は、何れの制御パラメータについても更新は行わず、電圧V1、振幅V2、および周波数fの強化学習全て(強化学習A,B,C)に負の報酬を与えて機械学習モデル213を更新する。
【0064】
≪制御パラメータ変更処理:画像処理装置の動作≫
図9Aは、本実施形態に係る画像処理装置200(ユーザ機)の印刷処理のフローチャート(1)である。
図9Bは、本実施形態に係る画像処理装置200(ユーザ機)の印刷処理のフローチャート(2)である。
図9Aおよび
図9Bを参照しながら、
図8Aおよび
図8BのステップS11~S13,S21~S28に対応する画像処理装置200(全体制御CPU211(制御部))が実行する印刷処理を説明する。
ステップS31において画像処理装置200は、印刷指示があれば(ステップS31→YES)ステップS32に進み、印刷指示がなければ(ステップS31→NO)ステップS31に戻る。
【0065】
ステップS32において画像処理装置200は、現在の制御パラメータの設定値に基づく設定電圧(現像電圧)を現像器263に加える。
ステップS33において画像処理装置200は、前回のテストチャート印刷から所定枚数印刷していれば(ステップS33→YES)ステップS35に進み、印刷していなければ(ステップS33→NO)ステップS34に進む。
ステップS34において画像処理装置200は、1枚印刷してステップS31に戻る。
【0066】
ステップS35において画像処理装置200は、テストチャートを印刷する。
ステップS36において画像処理装置200は、スキャナ291が読み取ったテストチャート印刷の印刷結果を取得し、最高濃度の誤差、中間調濃度の誤差、および画像ノイズ量を算出する。
ステップS37において画像処理装置200は、まず強化学習を実行する。詳しくは、画像処理装置200は、ステップS36で算出した値から、前回の変更(強化学習の行動)における誤差やノイズ量の減少量(改善量)を報酬として算出し、行動価値(
図3の機械学習モデル213)を仮に更新して強化学習を実行する。本更新は、ステップS41~S47(
図9B参照)で行う。
【0067】
ステップS38において画像処理装置200は、ステップS37で仮更新された機械学習モデルに基づき電圧V1、振幅V2、および周波数fの変更値(電圧V1’、振幅V2’、および周波数f’)を仮決定する。仮決定後には、画像処理装置200は、ステップS37における機械学習モデル213の仮の更新を元に戻す。
ステップS39において画像処理装置200は、ステップS38で仮決定した変更値をサーバ300に送信する。
ステップS40以降は
図8Aおよび
図8BのステップS21以降と同様である。
【0068】
≪制御パラメータ変更処理の特徴≫
制御パラメータ変更処理において、画像処理装置200は、電圧V1、振幅V2、および周波数fの変更値を仮決定(
図8AのステップS12、
図9AのステップS38参照)する。続いて、画像処理装置200は、変更後の電磁妨害波が限度値を超えない(規格試験に合格した)変更値について、制御パラメータの変更や機械学習モデル213の更新(
図8BのステップS23,S25,S27、
図9BのステップS42,S44,S46参照)を行う。このため、画像処理装置200は、規格を守ったうえで、画像の品質向上(最高濃度の誤差や中間調濃度の誤差、画像ノイズの削減)を行うことができる。
【0069】
なお、上記した実施形態では、直流成分の電圧V1、交流成分の振幅V2、および周波数fに係る制御パラメータの変更処理を説明した。画像処理装置200の制御パラメータには、この3つに限らず、他の制御パラメータも存在しており、強化学習による最適化の対象としてもよい。報酬については、画質に限らず、例えば、処理時間の短さ、騒音の低さ、消費電力の低さ、消費トナー量の少なさなどから算出されてもよい。
【0070】
≪変形例1:サーバが合格値パラメータデータベース≫
上記した実施形態において、サーバ300は、画像処理装置200(ユーザ機)から送信された制御パラメータの変更値を画像処理装置600(試験対象機)に設定し試験して合否結果を通知している(
図8AのステップS14~S21参照)。これに対して、サーバ300は、合格した変更値(制御パラメータ値)を記憶しておき、合格実績のある変更値に対しては、試験なしに合格を通知してもよい。
【0071】
図10は、本実施形態の変形例1に係るサーバ300Aの機能ブロック図である。サーバ300(
図6参照)と比較して、サーバ300Aは、合格値パラメータデータベース410(後記する
図11参照)をさらに記憶する。
【0072】
図11は、本実施形態の変形例1に係るサーバ300Aが記憶する合格値パラメータデータベース410のデータ構成図である。合格値パラメータデータベース410は、表形式のデータであり、機種とパラメータ別に合格値を記憶する。合格値パラメータデータベース410の列(属性)は、機種411、パラメータ412、および合格値413を含む。機種411は画像処理装置200の機種名であり、パラメータ412は当該機種の制御パラメータの名称を示し、合格値413は合格した制御パラメータ値を示す。
【0073】
レコード419は、機種名が「C1234」である画像処理装置200において制御パラメータ「AC周波数」が「2.9KHz」で試験に合格したことを示す。
図12Aは、本実施形態の変形例1に係る画像処理システムの制御パラメータ変更処理のシーケンス図(1)である。
図12Bは、本実施形態の変形例1に係る画像処理システムの制御パラメータ変更処理のシーケンス図(2)である。
ステップS51~S53は、ステップS11~S13(
図8A参照)と同様である。
【0074】
ステップS54においてサーバ300Aは、受信した変更値が合格値であるか否かを判断する。詳しくは、サーバ300Aは、合格値パラメータデータベース410のレコードであって、機種411が受信した機種名に一致して、変更値がパラメータ412と合格値413に対応するレコードを検索する。サーバ300Aは、レコードがあれば(ステップS54→YES)ステップS55に進み、レコードがなければ(ステップS54→NO)ステップS56に進む。
【0075】
ステップS55においてサーバ300Aは、合格を通知する。合格を受信した画像処理装置200は、ステップS66(
図12B参照)に進む。
ステップS56~S61は、ステップS14~S19(
図8A参照)と同様である。
ステップS62においてサーバ300Aは、測定結果と規制の規格限度値(
図5参照)とを比較して、合否を判断し、合格ならば(ステップS62→YES)ステップS63に進み、不合格ならば(ステップS62→NO)ステップS64に進む。
【0076】
ステップS63においてサーバ300Aは、合格した変更値を合格値パラメータデータベース410に追加する。詳しくは、サーバ300Aは、合格値パラメータデータベース410にレコードを追加する。次に、サーバ300Aは、追加したレコードの機種411をステップS53で受信した機種名に更新し、パラメータ412と合格値413とをそれぞれ変更値のパラメータとその値に更新する。
ステップS64~S72は、ステップS20~S28(
図8Aおよび
図8B参照)とそれぞれ同様である。
【0077】
サーバ300Aが、合格値パラメータデータベース410を備えることで、サーバ300Aの応答が速くなる。詳しくは、画像処理装置200が送信した変更値が、過去に合格した変更値であれば、サーバ300Aは、試験することなく合格を通知する(ステップS55参照)。このため、画像処理装置200の印刷処理(
図9A参照)において、ステップS39~S40における、変更値を送信してから合否結果を受信するまでの待ち時間が短縮される。また、合格実績がある無駄な試験を削減することができ、試験に必要な電力が削減される。また、同じ機種の複数の画像処理装置200(ユーザ機)から連続して変更値を受信した場合でも、サーバ300Aは、合格実績のある変更値の試験は省略でき、合格実績のない試験を早く開始することができ、画像処理システム100全体の性能が向上する。
【0078】
≪変形例2:画像処理装置のパラメータ種別データベース≫
本実施形態の変形例1では、サーバ300Aが合格値パラメータデータベース410を記憶しており、記憶している変更値に関する試験を行うことなく合格を通知している。これに対して、画像処理装置200(ユーザ機)が試験不要な制御パラメータを記憶して、変更値の問い合わせ(
図12AのステップS53参照)を削減するようにしてもよい。
【0079】
図13は、本実施形態の変形例2に係る画像処理装置200が記憶するパラメータ種別データベース420のデータ構成図である。パラメータ種別データベース420は、制御パラメータ値の変更が、電磁妨害波の強度に影響のある制御パラメータと影響のない制御パラメータとを記憶する。
図13では、電磁妨害波の強度に影響のあるパラメータとして交流成分の周波数fである「AC周波数」と、直流成分の電圧V1である「DC電圧」とが記憶されている。また、電磁妨害波の強度に影響のないパラメータとして定着器266(
図2参照)に備わる定着ローラモータの回転数が記憶されている。
【0080】
画像処理装置200は、変更値を仮決定したとき(
図8AのステップS12参照)に、当該変更値が電磁妨害波の強度に影響のあるパラメータの変更値ならば、サーバ300に問い合わせ(ステップS13参照)、影響なければサーバに問い合わせることなく変更する。このように、影響がない場合には、サーバ300への問い合わせをしないことで、画像処理装置200の制御パラメータの変更処理が高速化できる。また、サーバ300の負荷を減らすことができる。
【0081】
≪変形例3:画像処理装置の試験免除パラメータデータベース≫
変形例1では、サーバ300Aが合格値パラメータデータベース410を記憶し、無駄な試験をしないようにしている。画像処理装置200(ユーザ機)が、試験不要な制御パラメータ値を記憶して、サーバ300に対して無駄な問い合わせをしないようにしてもよい。
【0082】
図14は、本実施形態の変形例3に係る画像処理装置200が記憶する試験免除パラメータデータベース430のデータ構成図である。試験免除パラメータデータベース430は、表形式のデータであり、試験に合格すると判明していて試験が免除される(試験に影響のない)制御パラメータ値を記憶している。試験免除パラメータデータベース430は、試験が免除されるパラメータ名称を示すパラメータ431の属性と、パラメータ値を示す値432の属性を含んで構成される。レコード439は、交流成分の周波数fである「AC周波数」について、2.8KHz~3.2KHzならば試験が免除されることを示す。
【0083】
画像処理装置200は、仮決定した変更値(
図8AのステップS12参照)に対応するレコードが試験免除パラメータデータベース430にあれば、サーバに問い合わせることなく変更し、なければサーバに問い合わせる。試験免除パラメータデータベース430を参照することで、サーバ300への問い合わせを削減でき、画像処理装置200の制御パラメータの変更処理が高速化できる。また、サーバ300の負荷を減らすことができる。
【0084】
≪変形例4:サーバの合否履歴パラメータデータベース≫
変形例1では、サーバ300Aは、問い合わせにある変更値が合格値パラメータデータベース410(
図11参照)に含まれれば(
図12AのステップS54→YES参照)、試験することなく合格を通知(ステップS55参照)している。これに対して、サーバ300Aは、合格値と不合格値とを記憶するようにしてもよい。
【0085】
図15は、本実施形態の変形例4に係るサーバ300Aが記憶する合否履歴パラメータデータベース440のデータ構成図である。合否履歴パラメータデータベース440は、表形式のデータであり、機種と制御パラメータ別に制御パラメータ値の合格値と不合格値を記憶する。合否履歴パラメータデータベース440は、機種441、パラメータ442、合格履歴443、および不合格履歴444の属性を含む。
【0086】
機種441は画像処理装置200の機種名を含み、パラメータ442は、制御パラメータの名称を含む。合格履歴443(合格範囲)は、合格実績があり試験不要な制御パラメータ値が含まれる。不合格履歴444(不合格範囲)は、不合格実績があり試験不要な制御パラメータ値が含まれる。レコード449は、機種が「C1234」である画像処理装置200について、「AC周波数」の制御パラメータ値が2.9KHz~3.1KHzであれば合格で試験不要であり、2.1KHz以下、または4.5KHz以上であれば不合格で試験不要であることを示す。
【0087】
サーバ300Aは、画像処理装置200からの問い合わせ(
図12AのステップS53参照)にある変更値が合格履歴443に含まれれば合格を通知し、不合格履歴444に含まれれば不合格を通知する。変更値が合格履歴443と不合格履歴444の何れにも含まれない場合には、サーバ300Aは、試験を実行して合否結果を画像処理装置200に通知する。続いて、サーバ300Aは、合否に応じて変更値(制御パラメータ値)を合格履歴443または不合格履歴444に追加する。
【0088】
変更値が合格履歴443と不合格履歴444の何れにも含まれない場合には、サーバ300Aは、試験を実行する替わりに変更値に最も近い合格履歴443の制御パラメータ値、または不合格履歴444の制御パラメータ値を、合否と合わせて通知するようにしてもよい。例えば、機種名が「C1234」である画像処理装置200から、「AC周波数」の制御パラメータ(交流成分の周波数f)が3.2KHzの問い合わせがあったとする。サーバ300Aは、合格履歴443と不合格履歴444に含まれる制御パラメータ値のなかで3.2KHzに最も近い制御パラメータ値を検索する。3.2KHzに最も近い制御パラメータ値は、合格履歴443に含まれる3.1KHzであり、サーバ300Aは、画像処理装置200に3.1KHzを条件付き合格の制御パラメータとして画像処理装置200に通知する。
【0089】
3.1KHzの条件付き合格を受信すると、画像処理装置200は、交流成分の周波数fを3.1KHzに変更する(
図8BのステップS22以降参照)。問い合わせの変更値が4.3KHzならば、サーバ300Aは、画像処理装置200に4.3KHzを条件付き不合格の制御パラメータとして画像処理装置200に通知する。画像処理装置200は、変更値4.3KHzについて負の報酬で行動価値を更新する(
図8BのステップS25,S27,S28参照)。
【0090】
≪変形例5:サーバの合格履歴パラメータデータベース≫
合格値パラメータデータベース410(
図11参照)や合否履歴パラメータデータベース440(
図15参照)は、合格した制御パラメータ値を記憶している。サーバ300Aは、画像処理装置200の周辺環境や使用履歴と関連付けて合格した制御パラメータ値を記憶するようにしてもよい。
【0091】
図16は、本実施形態の変形例5に係るサーバ300Aが記憶する合格履歴パラメータデータベース450のデータ構成図である。合格履歴パラメータデータベース450は、表形式のデータであり、機種の他に画像処理装置200の周辺環境や使用履歴も関連付けて合格履歴を記憶する。合格履歴パラメータデータベース450は、機種451、パラメータ452、環境453、使用履歴454、および合格履歴455の属性を含んで構成される。
【0092】
機種451、パラメータ452、および合格履歴455は、合否履歴パラメータデータベース440(
図15参照)の機種441、パラメータ442、および合格履歴443とそれぞれ同様である。環境453は、画像処理装置200の周辺環境を示し、例えば、「高湿」や「低湿」などがある。使用履歴454は、累計の印刷枚数を示す。
レコード459は、設置された環境453が「高湿」で、累計印刷枚数が20万枚未満の機種451が「C1234」である画像処理装置200について、「AC周波数」の制御パラメータ値の合格履歴455が2.9KHz~3.1KHzであることを示している。
【0093】
画像処理装置200は、問い合わせ(
図8AのステップS13参照)の際に、機種に加えて自身の環境や使用履歴を含めて変更値を送信する。サーバ300Aは、変更値が合格履歴455に含まれるならば合格を通知し、含まれないならば試験を実行する。
【0094】
≪変形例6,7:ファームウェアの更新≫
上記した実施形態では、画像処理装置200は、合格通知を受信してから自身の制御パラメータを変更する。これに加えて、ファームウェアに含まれる制御パラメータを更新するようにしてもよい。ファームウェアとは、プリンタ制御CPU221が実行するファームウェア223(
図3参照)のことである。画像処理装置200は、定期的に、またはサーバが記憶するマスタのファームウェアの更新があるたびに、サーバからファームウェアをダウンロードして、ファームウェア223を更新する。
【0095】
図17は、本実施形態の変形例6に係るサーバ300Bの機能ブロック図である。サーバ300(
図6参照)と比較すると、サーバ300Bは、平均合格値パラメータデータベース460(後記する
図18参照)およびファームウェアリポジトリ470をさらに記憶する。ファームウェアリポジトリ470は、プリンタ制御部220のファームウェア223のリポジトリであり、画像処理装置200の機種別にファームウェア223を記憶する。
【0096】
図18は、本実施形態の変形例6に係るサーバ300Bが記憶する平均合格値パラメータデータベース460のデータ構成図である。平均合格値パラメータデータベース460は、表形式のデータであり、機種と制御パラメータ別に、現バージョンにファームウェアに含まれる制御パラメータの規定値と、規格試験に合格した制御パラメータの平均値を含む。平均合格値パラメータデータベース460は、機種461、パラメータ462、現規定値463、および合格平均値464の属性を含む。
【0097】
機種461は画像処理装置200の機種名を含み、パラメータ462は制御パラメータの名称を含む。現規定値463は、現バージョンにファームウェアに含まれる制御パラメータの規定値であり、合格平均値464は、規格試験に合格した制御パラメータの平均値である。
レコード469は、機種が「C1234」である画像処理装置200について、現在のファームウェア223に含まれる「AC周波数」の制御パラメータの規定値が3.0KHであり、試験に合格した平均値は3.1KHzであることを示す。
【0098】
サーバ300Bは、試験を実行し、その結果が合格ならば、合格平均値464を更新する。サーバ300Bは、定期的にファームウェアリポジトリ470に記憶される機種461用のファームウェアに含まれるパラメータ462を合格平均値464に更新する。次にサーバ300Bは、現規定値463を合格平均値464に更新する。更新以降、画像処理装置200がサーバ300Bからダウンロードするファームウェアに含まれる制御パラメータは、更新された合格平均値となっている。
【0099】
サーバ300Bは、現規定値463と合格平均値464との差が所定の値より大きくなったときに更新するようにしてもよい。また、平均合格値パラメータデータベース460は、環境や使用履歴と関連付けて現規定値や合格平均値を記憶するようにしてもよい。この場合、ファームウェアリポジトリ470は、機種に加え、環境および使用履歴と関連付けてファームウェア223を記憶する。
【0100】
図19は、本実施形態の変形例7に係るサーバ300Bが記憶する平均合格値パラメータデータベース460Aのデータ構成図である。平均合格値パラメータデータベース460(
図18参照)と比較して、環境465および使用履歴466の属性が追加されている。環境465および使用履歴466は、合格履歴パラメータデータベース450(
図16参照)の環境453および使用履歴454とそれぞれ同様である。サーバ300Bは、ファームウェアリポジトリ470に記憶される機種461、環境465および使用履歴466に関連付けられたファームウェアに含まれるパラメータ462を合格平均値464に更新する。
【0101】
≪変形例8:画像処理装置からサーバへの送信データ≫
上記した実施形態では、画像処理装置200からサーバ300への送信データは、機種名と3つの変更値である(
図8AのステップS13参照)。また、画像処理装置600(試験対象機)は、機械学習モデル213を記憶していなかった。
これに対して、画像処理装置600と画像処理装置200(ユーザ機)とが同じ構成になるようにしてもよい。詳しくは、画像処理装置200と同様に画像処理装置600も機械学習モデル213も記憶するようにする。さらに、変更値(制御パラメータ値)と機械学習モデル213との双方が、画像処理装置200からサーバへ、さらに、サーバから画像処理装置600に送信される(ステップS13,S15参照)。このようにして、画像処理装置600と画像処理装置200(ユーザ機)とが同じ構成になるようにしたうえで、試験する(ステップS15~S18参照)ようにしてもよい。
このようにすることで、画像処理装置200(ユーザ機)と画像処理装置600(試験対象機)とが同じ構成になり、より正確な試験が実行できるようになる。
【0102】
≪変形例9:複数の制御パラメータについての強化学習≫
上記した実施形態において、強化学習の対象は、直流成分の電圧V1、交流成分の振幅V2および周波数f(
図4参照)であり、それぞれの制御パラメータごとに強化学習を実行している。これは、直流成分の電圧V1、交流成分の振幅V2および周波数fは独立しており、1つの制御パラメータの変更が他に影響を及ぼさないからである。例えば、電圧V1を変更しても、中間調濃度への影響がない。
【0103】
他の制御パラメータにおいて、複数の制御パラメータ間で相互影響がある場合には、これらの制御パラメータをセットとして強化学習を実行してもよい。この場合には、状態は制御パラメータ値のセットであり、行動は複数の制御パラメータ値の変更となる。また、変更値ごとに試験(
図8AのステップS14~S20)するのではなく、画像処理装置600(試験対象機)の複数の制御パラメータを同時に変更してから試験する。
【0104】
≪変形例10:用紙種類ごとの強化学習≫
上記した実施形態では、テストチャートを印刷する用紙の区別はしていない。用紙種類(上質紙やマット紙など)に応じて制御パラメータの最適値を定めるために、画像処理装置200は、制御パラメータと用紙種類別に強化学習を実行してもよい。機械学習モデル213(行動価値)は、制御パラメータと用紙種類別に存在することになる。
【0105】
≪その他の変形例≫
上記した実施形態では、画像処理装置200は、所定枚数出力するごとにテストチャートを印刷して、強化学習を実行している(
図9AのステップS33~S37参照)。画像処理装置200は、別のタイミングで強化学習を実行してもよい。例えば、画像処理装置200は、実行する印刷ジョブがないアイドリング時間中に制御パラメータ変更処理を実行してもよい。または、変形例10において、画像処理装置200は、新しい用紙種類を使用する印刷ジョブの開始時に制御パラメータ変更処理を実行してもよい。
【0106】
上記した実施形態は、画像処理装置200を含む画像処理システム100の実施例である。画像処理装置200に限らず、制御パラメータを有する製造装置や医療機器、家電製品などの装置であっても、同様に規制の範囲内で装置の制御パラメータの最適化が可能である。詳しくは、装置とサーバとを含んで構成される制御管理システムにおいて、装置が、機械学習を用いて制御パラメータの変更値を決定して、サーバに送信する。サーバは、装置と同型の装置の制御パラメータを変更値に設定して規格試験を実行して、合否結果を装置に通知する。装置は、合格ならば制御パラメータを変更する。
【0107】
上記した実施形態では、機械学習技術を用いて制御パラメータの変更値を決定し、この変更値が規制を満たすか試験している。機械学習技術とは異なる技術を用いて制御パラメータの変更値を決定してもよい。例えば、山登り法などの局所探索アルゴリズムを用いて、最適となる制御パラメータの変更値を決定してもよい。
【0108】
変形例6,7においてサーバ300Bは、制御パラメータの変更値の合否を判定するサーバであって、ファームウェアリポジトリ470を記憶している。これに対して、制御パラメータの変更値の合否を判定するサーバと、ファームウェアリポジトリ470を記憶し、画像処理装置200にファームウェアを送信するサーバとが、異なるサーバであってもよい。
【0109】
以上、本発明の実施形態やその変形例について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他のさまざまな実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0110】
100 画像処理システム(制御管理システム)
200 画像処理装置(ユーザ機、装置)
211 全体制御CPU(制御部、機械学習実行部、仮決定部、更新部、機械学習処実行段、仮決定手段、更新手段)
212 記憶部
213 機械学習モデル
214 プログラム
219 ネットワークインタフェース(通信部、通信手段)
223 ファームウェア
260 画像形成部
300,300A,300B サーバ
310 制御部(合否結果送信部、合否判定手段)
320 記憶部
330 試験用画像処理装置データベース
340 通信部
410 合格値パラメータデータベース
420 パラメータ種別データベース
430 試験免除パラメータデータベース
440 合否履歴パラメータデータベース
450 合格履歴パラメータデータベース
460,460A 平均合格値パラメータデータベース
470 ファームウェアリポジトリ(ファームウェア)
550 規格試験器
600 画像処理装置(試験対象機)