(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ガラスコア多層配線基板の製造方法、ガラスコア多層配線基板および高周波モジュール基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240220BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20240220BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240220BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K3/46 B
H05K1/16 B
H05K1/16 D
H05K1/02 D
H01L23/12 B
H01L23/12 N
H01L23/12 Q
(21)【出願番号】P 2019230331
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬庭 進
【審査官】原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-106429(JP,A)
【文献】特開2019-134016(JP,A)
【文献】特開2017-103329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/16
H05K 1/02
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャパシタとインダクタを内蔵したガラスコア多層配線基板の製造方法であって、
貫通孔を有するガラスコアの一方の面に接着剤層を介して、第1の支持板を貼り付ける工程と、
ガラスコアの第1の支持板が貼り付けられていない面に、セミアディティブ工法を用いて、第一金属層と第二金属層の積層体からなる、配線層と、キャパシタの一方の電極と、インダクタの一部となる配線層と、貫通孔内の導体層と、を形成した後、それらの上から誘電体層を形成する工程と、
リフトオフ法を用いて誘電体層の上にキャパシタのもう一方の電極を前記積層体と同様の層構成からなる積層体により形成する
ことでキャパシタを形成した後、該電極を保護層により被覆する工程と、
保護層により被覆されていない積層体と誘電体層を除去した後、保護層を除去する工程と、
誘電体層を除去する
ことによって露出した電極と配線層になる以外の部分に残留している第一金属層を除去した後、絶縁樹脂層を形成する工程と、
絶縁樹脂層の上に接着剤層を介して第2の支持板を貼り付けた後、第1の支持板を剥離する工程と、
第1の支持板を剥離する
ことにより露出した面に、セミアディティブ工法を用いて配線層を形成する
ことにより、配線層と、ソレノイド型インダクタと、を形成する工程と、
絶縁樹脂層を形成する工程と、
第2の支持板を剥離する工程と、
表裏面の絶縁樹脂層の所望の位置に貫通孔を形成する工程と、
セミアディティブ工法を用いて配線層を形成する工程と、
必要に応じて、表裏面にビルドアップ法を用いて配線層と絶縁樹脂層からなるビルドアップ層を少なくとも1層形成する工程と、を備えており、
前記第二金属層と前記絶縁樹脂層の界面剥離強度が、3N/cm以上であり、且つ第一金属層と第1の支持板の界面剥離強度の2倍以上であることを特徴とするガラスコア多層配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記第一金属層が、スパッタ法により形成されたチタン薄膜と銅薄膜の積層膜であることを特徴とする請求項1に記載のガラスコア多層配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記第二金属層が、電解めっき法により形成された銅めっき被膜であることを特徴とする請求項1または2に記載のガラスコア多層配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記第1の支持板と前記第2の支持板が、キャリアガラスであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のガラスコア多層配線基板の製造方法。
【請求項5】
インダクタとキャパシタを内蔵したガラスコア多層配線基板であって、
貫通孔を有するガラスコアと、ガラスコアの表裏面に形成された第1層目の配線層と、第1層目の配線層の上に形成された1層以上のビルドアップ層と、を備えており、
インダクタは、ガラスコアの表裏面の第1層目の配線層を、貫通孔内に形成された導体層により直列接続する
ことで形成されたソレノイド型インダクタであり、
キャパシタは、ガラスコアの一方の面に形成された第1層目の配線層をキャパシタ下電極として、その上に誘電体層とキャパシタ上電極をこの順に形成する
ことにより備えられており、
表裏面の第2層目以降の多層配線層は、第1層目の配線層とキャパシタ上電極の上に絶縁樹脂層を介して形成されたビルドアップ層であり、
ガラスコアの表裏面の配線層は、貫通孔内に形成された導体層により接続されており、
第1層目の配線層および導体層は、第一金属層と第二金属層からなる積層体であり、
キャパシタが形成されていない側の貫通孔の開口部は、第一金属層により塞がれて
おり、
前記第一金属層は、チタン層と銅層からなる積層体であることを特徴とするガラスコア多層配線基板。
【請求項6】
前記第二金属層は、電解銅めっき層であることを特徴とする
請求項5に記載のガラスコア多層配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔を設けたガラス基板を有する多層配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信産業、通信機器を取り巻く状況をみると、動画配信サービス拡大などを背景として通信データ量が増大しており、この傾向は今後も続くと予想されている。代表的な通信機器であるスマートフォンを例にとると、通信量増大に対応する為に、HighBand(2.3~6.0GHz)、TDD(Time Division Duplex)、CA(Carrier Aggregation)、MIMO(Multi Input Multi Output)等の新たな通信技術が普及し、それに伴い1台のスマートフォンが使用するRF(Radio Frequency)フィルタの数が増加している。
【0003】
セルラー通信の送受信二重化方式には、TDDとFDD(Frequency Division Duplex)とがある。TDDは一つの通信帯域を時分割で二重化連続し、FDDは隣接した1組の通信帯域(送信帯域をUL:UpLink、受信帯域をDL:DownLink、と呼ぶ)を使用して二重化する。
【0004】
送受信で電波を対称に使用するFDDに対し、TDDは非対称な使用が可能で有り、電波利用効率において原理的に優位である。また、2波長帯を使うFDDに対し、1波長帯で実現するTDDは、回路構成もよりシンプルになる。
【0005】
この様に、TDDは原理的優位性を有するものの、デジタルセルラー通信サービス開始当初は端末・基地局同期精度が低く、送信期間と受信期間の間に長いブランク期間を設ける必要があり、電波利用効率でもFDDが優位だった為、FDDから普及が進んだ。
【0006】
現在のセルラー通信の周波数は460MHzから6GHzまでの帯域が割り当てられており、電波はより低周波において伝達特性(減衰特や障害物回避など)に優れる為、1GHz以下の帯域を用いたFDDから普及が進んだ。
【0007】
しかし、近年の通信量拡大に伴い、1GHz以下の帯域の利用状況は早々に過密化し、現在は2GHzまで過密化が進んでいる。この様な状況に対し、近年の基地局・端末同期技術の進歩が、TDDのブランク期間を短縮し、TDDの普及を加速している。
【0008】
また、同期技術の進歩は、ブロードバンドによる高速通信にも繋がっている。サービス開始当初のFDD帯域幅は20MHz以下であったが、現在のTDDは200MHzのブロードバンドで利用されており、更なる広帯域化が決まっている。この様な状況を背景とし、今後は未使用帯域が広がる2.3~6.0GHzでブロードバンドTDDの普及が進む。
【0009】
一方、スマートフォンは、ノイズとなる外来通信波から使用通信帯域を隔離する為に、帯域毎にバンドパスフィルタ(以降、BPFと略す、又は周波数フィルタと呼ぶ場合がある)を使用する。
【0010】
各国の各キャリアが使用する通信帯域は、3GPP(Third Generation Partnership Project、米国、ヨーロッパ、日本、韓国などの標準化団体による移動体通信システムの標準規格に関する合同プロジェクト)が仕様の検討・作成を行っており、通信キャリアに割り当てられる帯域にはbandナンバーが付与される。
一例としてband12は、FDD方式、UL699~716MHz、DL729~746MHzと規定されている。これは、幅17MHzの狭い帯域を13MHzの近接した間隔で利用する仕様であり、周波数フィルタにはシャープなバンドパス特性をもつAW(Acoustic Wave)が用いられる。
【0011】
AWフィルタには、SAW(SuRFace Accoustic Wave)フィルタと、BAW(Bulk Acoustic Wave)フィルタがある。
SAWフィルタは、圧電体の上に櫛歯型対向電極を形成し、表面弾性波の共振を利用するフィルタである。
BAWフィルタには、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)型とSMR(Solid Mounted Resonator)型がある。
FBARは、圧電体フィルムの下にキャビティを設けバルク弾性波の共振を利用するフィルタである。
SMRは、キャビティの代わりに圧電膜の下に音響多層膜(ミラー層)を設けることで弾性波を反射させ共振を利用するフィルタである。
FBARは、フィルタ特性の急峻性と許容挿入電力においてSMRに優れ、現在のBAWの主流となっている。また、FBARは前述したキャビティを高度なMEMS技術で形成するため、SAWより高価であるといわれている。
【0012】
BAWはSAWと比較し、許容入力電力などの点で高周波特性に優れ、利用周波数において下記の棲み分けがある。
LowBand(~1.0GHz) :SAW
MiddleBand(1.0~2.3GHz) :SAW又はBAW
HighBand(2.3GHz~) :BAW
【0013】
世界各国で使用するハイエンド・スマートフォンは、各国地域とキャリアに応じband(帯域または周波数帯)を切替えて通信する為、10~20bandの複雑なRF(Radio Frequency)回路を内蔵している。回路基板配線の複雑化は信号干渉を生じるため、ハイエンド・スマートフォンでは、帯域や通信方式毎に、周波数フィルタ、アンプ、スイッチをまとめてモジュール化し、回路基板配線を単純化している。
【0014】
また、スマートフォンでは、厚さ6mm程度の筐体に、回路基板と表示素子を重ねて実装する為、モジュール厚は、0.6~0.9mm程度に納める必要がある。
【0015】
ソレノイドコイルとキャパシタを組み合わせたLCフィルタも、周波数フィルタとして使用できる。しかしながら、AWフィルタに比較し閾値特性がブロードな為、隣接2帯域を同時使用するFDDに利用することはできなかった。ところが、1帯域で運用するTDDでは、LCフィルタを周波数フィルタとして用いることが可能である。
【0016】
また、LCフィルタはAWフィルタと比較し、許容入力電力、通信帯域の広さ、温度ドリフトなどに於ける優位性を有する一方で、通過対象の周波数帯に対する減衰特性が穏やかであるため、これまでは受信規格を満足しない場合があったが、3.5GHz帯の標準仕様の最適化が行われたことにより状況が好転し、LCフィルタは、今後普及するHigh Band(3.5~6.0GHz)TDD用の周波数フィルタとして有望な技術となった。しかしながら、従来のLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)で製造するチップLCフィルタは、AWフィルタに比べサイズが大きく、特に厚みの問題から、ハイエンド・スマートフォンの薄型モジュールに搭載することは困難だった。
【0017】
同様に、今後普及が進むCA(Carrier Aggregation)は、複数bandの同時使用により高速通信を実現する技術であり、同時使用する複数bandの中には2.3~6.0GHz帯TDDも含まれる。
CAの周波数フィルタでは、同時使用する他のband信号が抑制対象ノイズとなり、従来の外来信号に比べ、ノイズの強度が非常に大きい為、モジュール化においても、従来帯域や通信方式単位から、CA単位での最適化に変更する必要がある。
【0018】
以上に説明した様に、スマートフォンの薄型モジュール内に、いかにしてLCフィルタを実装するかという課題がある。
【0019】
この課題に対し、特許文献1に、回路基板にコイルを内蔵することで、よりコンパクトな回路構成を実現する技術が開示されている。
特許文献1においてポイントとなるのは、ガラス基板をコアとすることと、コアの周りを巻くようにソレノイドコイルを形成する点であるが、近年は、最終形態の多層配線基板の厚さを薄く抑える要請が強く、その為に、孔を設けた薄いガラス基板に対し、破損することなくいかにして加工するか、とくに孔内の導電化処理をいかにして施すか、ということが重要な技術となる。
【0020】
この技術については、たとえば特許文献2にあるように、ガラス基板の片面または両面にキャリアとなるシート状の材料を貼付してから加工し、プロセスの適切な段階にて、それを取り除く方法がある。この様な技術の一例について、以下に説明する。
【0021】
まず、
図5(a)に示す様に、ビア26が形成されたガラスコア11を用意する。
次に、
図5(b)に示す様に、ガラスコア11の第1面側12の孔径が第2面側13の孔径より小さいビア26が形成されたガラスコア11の第1面側12にキャリアガラス25を貼付する。
【0022】
次に、
図5(c)に示す様に、第2面側13からビア26内に導電シード層であるチタン層27と銅層28をスパッタ法により形成する。
【0023】
続いて
図5(e)に示すように、電気めっきなどの等方的な手段によって、導電シード層のうえに導電層である電解銅層32を積層する。
【0024】
その後に、
図8(t)に示すように、ガラス基板(ガラスコア11)の第2面側にキャリアガラス29を貼付する。
【0025】
続いて
図8(u)に示すように、ガラス基板(ガラスコア11)の第1面側のキャリアガラス25を剥離する。その後に、ガラス基板(ガラスコア11)の第1面側に以下に説明する加工を行う。
【0026】
ところが、この方法において問題となるのは、第1面側のキャリアガラス25を剥離する際に、貫通孔(ビア26)内部の導電層(具体的にはスパッタチタン層/スパッタ銅層/電解銅めっき層32)、とくに第1面側の底面にあたる部分がキャリアガラス25側にとられて破損する虞があることである(
図12(a)、(c)参照)。導電層が大規模に剥離した場合に、導通不良の原因となるのはもちろん、わずかな破損であっても、クラック等のきっかけになり、信頼性低下を引き起こす可能性がある。
図12(b)の様に、第1面側の底面にあたる部分がキャリアガラス25側にとられて破損しない事が求められる。
【0027】
とくに、導電シード層(スパッタチタン層/スパッタ銅層)をスパッタリングなどの異方性の高い方法にて積層した場合、積層する化学種の入射角が直角に近い部分は厚く積層
されるのに対し、入射角が0°に近い部分には積層しにくいという性質がある。具体的には、ガラスコアの第2面の真上に近い方向からスパッタリングを行った場合、貫通孔の内部において、入射側から遠いほうの底面にあたる部分は、キャリアガラス25とガラスコアの第1面を接着するキャリアガラス材接着層24になるが、ここには比較的厚く積層されることになる。それに対して、貫通孔内側面には積層は進みづらく、とくに入射側から遠い底面との境界付近は、もっとも積層しづらい部分になる。
【0028】
このため、導電シード層の積層のあとに、電解銅めっき層32まで積層して、第1面側のキャリアガラス25を剥離する際に、キャリアガラスと導電シード層の密着強度、あるいは導電層(電解銅めっき層32)自体の強度が、キャリアガラスと導電シード層の密着性に対して、十分強くない場合に、キャリアガラス25側に、導電シード層の一部もしくは全部が取られるおそれがある。
【0029】
この対策として、ひとつには導電シード層(スパッタチタン層/スパッタ銅層)形成後の導電層(電解銅めっき層32)形成において、貫通孔内部の大部分を充填するように、例えば電解フィルドメッキのような方法をとることが考えられる。こうすれば、貫通孔内部の導電層は、各部が一体となって強固な構造となり、キャリアガラス剥離の際に、破損してキャリアガラス側にとられることが起こりにくくなる。
【0030】
しかし、本来的にフィルドビアめっきで貫通孔を完全に充填またはそれに近い状態にするのは、難易度が高く、また加工に時間もかかる。とくに貫通孔の径が小さくなり、ガラスコアが厚くなると、貫通孔のアスペクト比が大きくなり、フィルドビアメッキの難易度は上がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【文献】特開2005-268447号公報
【文献】特開2018-157187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、貫通孔付きの薄ガラスにキャリアガラスを貼付して補強したうえで、貫通孔の導電化を行う工法において、キャリアガラスを除去する際の導電層の破損を防ぐことが可能なガラスコア多層配線基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上述した課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、キャパシタとインダクタを内蔵したガラスコア多層配線基板の製造方法であって、
貫通孔を有するガラスコアの一方の面に接着剤層を介して、第1の支持板を貼り付ける工程と、
ガラスコアの第1の支持板が貼り付けられていない面に、セミアディティブ工法を用いて、第一金属層と第二金属層の積層体からなる、配線層と、キャパシタの一方の電極と、インダクタの一部となる配線層と、貫通孔内の導体層と、を形成した後、それらの上から誘電体層を形成する工程と、
リフトオフ法を用いて誘電体層の上にキャパシタのもう一方の電極を前記積層体と同様の層構成からなる積層体により形成する事でキャパシタを形成した後、該電極を保護層により被覆する工程と、
保護層により被覆されていない積層体と誘電体層を除去した後、保護層を除去する工程と、
誘電体層を除去する事によって露出した電極と配線層になる以外の部分に残留している第一金属層を除去した後、絶縁樹脂層を形成する工程と、
絶縁樹脂層の上に接着剤層を介して第2の支持板を貼り付けた後、第1の支持板を剥離する工程と、
第1の支持板を剥離する事により露出した面に、セミアディティブ工法を用いて配線層を形成する事により、配線層と、ソレノイド型インダクタと、を形成する工程と、
絶縁樹脂層を形成する工程と、
第2の支持板を剥離する工程と、
表裏面の絶縁樹脂層の所望の位置に貫通孔を形成する工程と、
セミアディティブ工法を用いて配線層を形成する工程と、
必要に応じて、表裏面にビルドアップ法を用いて配線層と絶縁樹脂層からなるビルドアップ層を少なくとも1層形成する工程と、を備えており、
前記第二金属層と前記絶縁樹脂層の界面剥離強度が、3N/cm以上であり、且つ第一金属層と第1の支持板の界面剥離強度の2倍以上であることを特徴とするガラスコア多層配線基板の製造方法である。
【0034】
貫通孔内に充填された絶縁樹脂と、ガラスコア上に積層するビルドアップ層の絶縁樹脂層と、を一体化させることによって、貫通孔内の絶縁樹脂は、構造上より強固になり、それと密着する貫通孔内の導体層を支持する能力がより高くなる。
【0035】
なお、ビルドアップ層のための絶縁樹脂層と貫通孔内の絶縁樹脂を一体とする方法であるが、ビルドアップ層のための絶縁樹脂として、シート状の絶縁樹脂をガラス基板の第2面上に乗せた状態しにて真空プレス法にて積層することが挙げられる。これにより、ボイドが入ることなく、絶縁樹脂が貫通孔内へと充填される。
【0036】
貫通孔内の導電層の剥離を防ぐことのみを考えると、キャリアガラスと第二金属層の密着力は小さいほうがよいが、本来の、「工程の間、基板を補強し続ける」という目的を考えると、ある程度の密着力で基板と一体であり続けなければならない。また、第一金属層とガラスの密着性は、基本的に強いほどよいが、物理的、化学的制約より、その強さは制限され、実験的事実に基づき、この発明に係るガラスコア多層配線基板の加工プロセス、完成後の使用環境に対して、必要と考えられる最低限の値は3N/cmと考察された。キャリアガラスの剥離に際して、貫通孔内の導電層が剥離しないための、両密着力の関係について、実験結果より考察した結果、キャリアガラスと第二導電層の密着力の2倍の密着力があれば、導電層はガラスより剥離しないと結論した。請求項1および2は、この点について主張したものである。なお、キャリアガラスと第二金属層の間の密着強度が適切に設定されており、キャリアガラスの剥離の際に導電層が破損することがない場合を
図12(b)に、適切に設定されておらず、キャリアガラス側に導電層がとられた場合を
図12(c)に示す。
【0037】
また、請求項2は、前記第一金属層が、スパッタ法により形成されたチタン薄膜と銅薄膜の積層膜であることを特徴とする請求項1に記載のガラスコア多層配線基板の製造方法である。
【0038】
ガラス上に直接積層される第一金属層に関しては、なるべく高い密着性を得る方法にて積層するのが望ましい。この観点よりスパッタリングを選択した。本請求項は、この点について主張したものである。なお、第一金属層に関しては必ずしも単層である必要はなく、複数の層の積層であっても構わない。具体的には、ガラスに直接積層する層に、チタン、クロムなど、ガラスとの密着性の高い金属を採用し、その上に、第二金属層との密着力の高い金属を積層してもよい。
【0039】
また、請求項3は、前記第二金属層が、電解めっき法により形成された銅めっき被膜であることを特徴とする請求項1または2に記載のガラスコア多層配線基板の製造方法である。
【0040】
第二金属層は導電層の主層であり、全体の厚さのほとんどを占めることを想定している。そして、第一金属層を積層した段階において、孔の内壁すべては導電層で覆われている。そこで第第二金属層の積層方法としては、積層対象部の導電化を前提として、ある程度厚い層を比較的早く成膜できる方法が適していると考えた。そこで、成膜方法として、電解めっきを採用することによって、より高品質なガラスコア多層配線基板が得られるというのが、請求項4の主張するところである。
【0041】
また、請求項4は、前記第1の支持板と前記第2の支持板が、キャリアガラスであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のガラスコア多層配線基板の製造方法である。
【0042】
また、請求項5は、インダクタとキャパシタを内蔵したガラスコア多層配線基板であって、
貫通孔を有するガラスコアと、ガラスコアの表裏面に形成された第1層目の配線層と、第1層目の配線層の上に形成された1層以上のビルドアップ層と、を備えており、
インダクタは、ガラスコアの表裏面の第1層目の配線層を、貫通孔内に形成された導体層により直列接続することで形成されたソレノイド型インダクタであり、
キャパシタは、ガラスコアの一方の面に形成された第1層目の配線層をキャパシタ下電極として、その上に誘電体層とキャパシタ上電極をこの順に形成することにより備えられており、
表裏面の第2層目以降の多層配線層は、第1層目の配線層とキャパシタ上電極の上に絶縁樹脂層を介して形成されたビルドアップ層であり、
ガラスコアの表裏面の配線層は、貫通孔内に形成された導体層により接続されており、
第1層目の配線層および導体層は、第一金属層と第二金属層からなる積層体であり、
キャパシタが形成されていない側の貫通孔の開口部は、第一金属層により塞がれており、
前記第一金属層は、チタン層と銅層からなる積層体であることを特徴とするガラスコア多層配線基板である。
【0043】
コア材料としてガラスを採用する理由として、平滑な表面をもつため、その上に形成する配線層についても、高い寸法安定性などが期待できたり、その誘電率の低さから、高周波回路に対する適性が高いことが挙げられる。そのことを積極的に利用して、高周波用のインダクタをガラスコアの周りに作りこむことができる。
【0045】
また、請求項6は、前記第二金属層は、電解銅めっき層であることを特徴とする請求項5に記載のガラスコア多層配線基板である。
【0048】
ガラスコア多層配線基板内に、インダクタとキャパシタから構成される周波数フィルタを作りこむことで、薄くて良質なフィルタ内蔵基板が得られる。
【発明の効果】
【0049】
本発明のガラスコア多層配線基板の製造方法によれば、貫通孔を有するガラスコアの一方の片面に支持板を貼り付けた状態で、支持板を貼り付けていない面に配線層やキャパシタの形成と、貫通孔内の導電化を行う。この時に貫通孔の側壁と底部に第一金属層と第二金属層が形成される事で導電化がなされる。その後、絶縁樹脂層を形成し、もう1つの支持板を貼り付けた後、最初の支持板を剥がす。この時、貫通孔は絶縁樹脂で充填されているため、貫通孔の底部の第一金属層と第二金属層は、絶縁樹脂で第二金属層側が支持されている。絶縁樹脂と第二金属層との界面剥離強度は3N/cm以上であり、これは第一金属層と第1の支持板(キャリアガラス)との界面剥離強度の2倍以上であるため、貫通孔の底部の第一金属層と第二金属層には損傷を与える事無く、第1の支持板の剥離を良好に実行可能である。その後、露出した面に、配線パターンを形成する事により、キャパシタとソレノイド型インダクタが形成された基板が形成される。その基板の表裏面にビルドアップ層を1層以上形成する事により、本発明のガラスコア多層配線基板を作製することができる。
【0050】
本発明のガラスコア多層配線基板によれば、インダクタとキャパシタから構成される周波数フィルタをガラスコア多層配線基板内に作りこむことで、薄くて良質なフィルタ内蔵基板を作製する事が可能となる。
【0051】
本発明の高周波モジュール基板によれば、ハイエンド・スマートフォンの薄型モジュールにインダクタとキャパシタから構成される周波数フィルタを搭載することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明のガラスコア多層配線基板を例示する断面説明図である。
【
図2】本発明のガラスコア多層配線基板に含まれるキャパシタを例示する断面説明図である。
【
図3】本発明のガラスコア多層配線基板に含まれるインダクタを例示する断面説明図である。
【
図4】本発明のガラスコア多層配線基板に含まれるバンドパスフィルタの回路図を例示す説明図である。
【
図5】本発明のガラスコア多層配線基板の製造工程を例示する断面説明図である。
【
図6】本発明のガラスコア多層配線基板の製造工程を例示する断面説明図である。
【
図7】本発明のガラスコア多層配線基板の製造工程を例示する断面説明図である。
【
図8】本発明のガラスコア多層配線基板の製造工程を例示する断面説明図である。
【
図9】本発明のガラスコア多層配線基板の製造工程を例示する断面説明図である。
【
図10】本発明のガラスコア多層配線基板の製造工程を例示する断面説明図である。
【
図11】本発明のガラスコア多層配線基板の製造工程を例示する断面説明図である。
【
図12】ガラスコア多層配線基板の製造方法の問題点を説明する断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
<ガラスコア多層配線基板>
本発明のガラスコア多層配線基板は、インダクタとキャパシタを内蔵したガラスコア多層配線基板である。
【0054】
本発明のガラスコア多層配線基板は、貫通孔を有するガラスコアと、ガラスコアの表裏面に形成された第1層目の配線層と、第1層目の配線層の上に形成された1層以上のビルドアップ層と、を備えている。
【0055】
インダクタは、ガラスコアの表裏面の第1層目の配線層を、貫通孔内に形成された導体層により直列接続する事で形成されたソレノイド型インダクタである。
【0056】
キャパシタは、ガラスコアの一方の面に形成された第1層目の配線層をキャパシタ下電極として、その上に誘電体層とキャパシタ上電極をこの順に形成する事により備えられている。
【0057】
表裏面の第2層目以降の多層配線層は、第1層目の配線層とキャパシタ上電極の上に絶縁樹脂層を介して形成されたビルドアップ層である。
【0058】
ガラスコアの表裏面の配線層は、貫通孔内に形成された導体層により接続されている。
【0059】
第1層目の配線層および導体層は、第一金属層と第二金属層からなる積層体である。
【0060】
キャパシタが形成されていない側の貫通孔の開口部は、第一金属層により塞がれている事が特徴である。
【0061】
また、第一金属層は、チタン層と銅層からなる積層体であっても良い。
【0062】
また、第二金属層は、電解銅めっき層であっても良い。
【0063】
また、キャパシタが形成された側のガラスコアの貫通孔の孔径が、貫通孔の反対側の孔径より大きい事が好ましい。
【0064】
本発明のガラスコア多層配線基板を使用して、高周波モジュール基板を作製する事が可能である。
【0065】
以下、本発明の高周波モジュール用のガラスコア多層配線基板の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明は、本発明の一例に関するものであり、本発明は、これらによって限定されるものではない。
また、本明細書中、特に断らない限り、「上」とはガラスコアから遠ざかる方向をいい、「下」とはガラスコアに近づく方向をいう。
【0066】
まず、高周波フィルタとしての回路設計を行うため、通過又は遮断する電波の周波数帯域に応じて、必要なキャパシタとインダクタンスを、シミュレーションソフトによって算出する。例えば3300MHz以上、3700MHz以下の帯域を透過するフィルタについては、
図4に示したような、キャパシタとインダクタから構成されたものとなる。
【0067】
そしてそれを実現するために、キャパシタについては、電極の大きさ、電極間の距離、誘電体の誘電率、インダクタについては、巻きの断面積、巻き数、長さなどを、加工性やスペース効率を加味しながら設計する。その一例を表1および表2に示す。なお、表2においてインダクタンスL1とL2の巻き数が空欄となっているが、これは両素子に求められるインダクタンスが非常に小さいため、1巻きすら必要でなく、直線状の配線の状態で生じる自己インダクタンスで足りることを意味している。
【0068】
【0069】
【0070】
高周波モジュール用基板に搭載される他の帯域用のBPFについても、同様の手順によって、キャパシタのキャパシタンス(静電容量)、インダクタのインダクタンスを計算し、必要な回路の設計を行う(数値については省略)。
【0071】
次に、ガラス基板をコア材として、その両面に配線層と絶縁樹脂層を交互に形成した基板を例にとって、LC回路を構成する回路素子としてのキャパシタとインダクタの例を、それぞれ説明する。
【0072】
キャパシタについては、二枚の導体板の間に誘電体を挟んだ構造とする。キャパシタの例としては、
図2に示すように、不図示のガラス基板直上、又はガラス基板上に形成した絶縁樹脂層42の上に、下電極30を積層して導体パターンを形成し、かかる導体パターンの上に誘電体層33を積層し、さらにその上に上電極36となる導体を積層したものである。下電極30と上電極36は、一般的に、下地との密着力が強いシード層と、導電性が高い導電層からなる多層構造を有する。シード層としては、その上に形成される導電層との密着力を強くする層を備えている場合もある。
【0073】
インダクタについては、らせん状のコイルと同様の性能を、貫通穴を備えた基板に内蔵することができる。
図3においては、2列に並んだ貫通穴を有する平行平板状のガラス基板を透明化して図示している。
図3において、ガラス基板の表裏面において隣接する貫通穴の開口部同士を接続するように銅配線層22、31を形成し、またガラス基板の表裏面を連通する貫通穴の内壁に導体層を形成し、貫通導電ビア39(以下、TGVと記す。)とする。
【0074】
ここで、1列目n番目のTGVを、TGV(1、n)とし、2列目n番目のTGVを、TGV(2、n)とする。裏面側の銅配線層22によりTGV(1、n)とTGV(2、n)とを接続し、表面側の銅配線層31によりTGV(1、n)とTGV(2、n+1)とを接続すると、銅配線層22と、TGV(1、n)と、銅配線層31と、TGV(1、n+1)とで、ガラス基板の内部(貫通穴)と表面を導体が一周(一巻き)するコイルを構成することができる。このコイルに電流を流すことで、インダクタとして機能させることができる。インダクタの特性は、たとえばコイルの巻き数を変えることで調整することができる。
【0075】
<ガラスコア多層配線基板の製造方法>
本発明のガラスコア多層配線基板の製造方法は、キャパシタとインダクタを内蔵したガラスコア多層配線基板の製造方法である。
【0076】
本発明のガラスコア多層配線基板の製造方法は、次の工程を備えている事が特徴である。
・貫通孔を有するガラスコアの一方の面に接着剤層を介して、第1の支持板を貼り付ける工程。
・ガラスコアの第1の支持板が貼り付けられていない面に、セミアディティブ工法を用いて、第一金属層と第二金属層の積層体からなる、配線層と、キャパシタの一方の電極と、インダクタの一部となる配線層と、貫通孔内の導体層と、を形成した後、それらの上から誘電体層を形成する工程。
・リフトオフ法を用いて誘電体層の上にキャパシタのもう一方の電極を前記積層体と同様の層構成からなる積層体により形成する事でキャパシタを形成した後、該電極を保護層により被覆する工程。
・保護層により被覆されていない積層体と誘電体層を除去した後、保護層を除去する工程。
・誘電体層を除去する事によって露出した電極と配線層になる以外の部分に残留している第一金属層を除去した後、絶縁樹脂層を形成する工程。
・絶縁樹脂層の上に接着剤層を介して第2の支持板を貼り付けた後、第1の支持板を剥離する工程。
・第1の支持板を剥離する事により露出した面に、セミアディティブ工法を用いて配線層を形成する事により、配線層と、ソレノイド型インダクタと、を形成する工程。
・絶縁樹脂層を形成する工程。
・第2の支持板を剥離する工程。
・表裏面の絶縁樹脂層の所望の位置に貫通孔を形成する工程。
・セミアディティブ工法を用いて配線層を形成する工程。
・必要に応じて、表裏面にビルドアップ法を用いて配線層と絶縁樹脂層からなるビルドアップ層を少なくとも1層形成する工程。
【0077】
上記の工程において、第二金属層と絶縁樹脂層の界面剥離強度が、3N/cm以上であり、且つ第一金属層と第1の支持板の界面剥離強度の2倍以上である事が必要である。
【0078】
また、第一金属層が、スパッタ法により形成されたチタン薄膜と銅薄膜の積層膜であっても良い。
【0079】
また、第二金属層が、電解めっき法により形成された銅めっき被膜であっても良い。
【0080】
また、第1の支持板と第2の支持板が、キャリアガラスであっても良い。
【0081】
次に、本発明のガラスコア多層配線基板の製造方法について、具体例を用いて説明するが、この具体例に限定するものではない。なお、複数の断面図を用いて説明するにあたって、図中の各数字は「符号の説明」で説明する内容に対応しているのであるが、前段の図で示した数字(符号)は、後段の図では省略する場合がある。
【0082】
図5(a)に示すように、まず、低膨張のガラスコア11(厚さ150μm、320mm×400mmの長方形の板状、CTE:3.5ppm/K)の所定の位置に、貫通孔26が形成されたものを準備する。貫通孔26はガラスコア11の第1面12側(
図5(a)の下側)から第2面13側(
図5(a)の上側)にかけてその径が大きくなってゆくテーパー形状をなしている場合を例示しているがこれに限定する必要は無い。設計としては、例えば、第1面12側の開口径を60μm、第2面13側の開口径を90μmとすることができる。
【0083】
次に、
図5(b)に示すように、ガラスコア11の第1面12側に、例えば厚さ500μmの、キャリアガラス25を貼付する。キャリアガラス25の片面には、例えば、10μmの厚さにて、弱密着性の接着剤層24が全面に形成されているものを使用すれば良い。また、例えば、ガラスコア11とキャリアガラス25を剥離する際の密着強度は1.0N/cmであり、キャリアガラス25とチタン層27の密着強度は、前者より強い1.1N/cmとなるものを使用するのが好ましい。
【0084】
次に、
図5(c)に示すように、ガラスコア11の第2面13上方より、スパッタリングにてガラスコア11の第2面13と貫通孔26の内壁を含む表面に、チタン層27と銅層28を積層する。例えば、チタン層27の厚さは50nm、銅層28の厚さは300nmに設定することができる。この様な加工条件にて成膜した場合、貫通孔26の内壁への膜の付きまわりについては、側壁に関しては、第2面13側から第1面12側まで一貫して覆っていて、第1面12側の底面に関しては、蓋をしているガラスキャリア25上に、まんべんなく成膜される。
【0085】
次に、
図5(d)に示すように、ガラスコア11の第2面13側にフォトレジスト層17を設け、後に配線パターンとする部分が露出するように、フォトリソグラフィーのパターニングを行う。フォトレジスト層17の厚さは、例えば20μmとすれば良い。
【0086】
次に、
図5(e)に示すように、ガラスコア11の第2面13のフォトレジスト層17のうちフォトレジストが除去されて下地が露出しているところに電解めっき法にて、銅配線層18を積層する。銅配線層18の厚さは、例えば12μmを狙い値として、予め電解銅めっき装置の条件設定を行っておけば良い。
【0087】
次に、
図5(f)に示すように、所定の剥離液と剥離条件によって、フォトレジスト層17を除去する。
【0088】
次に、
図5(g)に示すように、キャパシタの誘電体層33の形成を行なう。手順としては、不要な箇所はあとで除去するものとして、まずはガラスコア11の第2面13側最上面全体に、誘電体層33を形成する。誘電体としては、例えば、窒化アルミニウムを選択し、スパッタリングを用いて積層することができる。厚さは、形成するキャパシタの静電容量に対応して決めれば良いが、例えば200nmに設定すれば良い。
【0089】
次に、
図6(h)に示すように、誘電体層33の上全面にチタン層34を形成する。これはこの後でキャパシタの上電極を形成するための密着層の役割を持っている。積層する厚さは、例えば50nmに設定し、積層方法はスパッタリング法を用いて成膜すればよい。
【0090】
次に、
図6(i)に示すように、前記のガラスコア11の第2面13上の最上層のチタン層34の上全面に銅層35を積層する。これは、その後の電解銅めっきのための導電シードの役割を持つ。積層する厚さは、例えば300nmとし、積層方法はスパッタリングを選択すれば良い。
【0091】
次に、
図6(j)に示すように、前記のガラスコア11第2面13上の最上層にあるスパッタ銅層35の上に、フォトレジスト層17を塗布し、その後にフォトリソグラフィーによって、後に電解銅めっきによってキャパシタの上電極を形成する部分のフォトレジストを取り除いた形状にパターニングする事によって、フォトレジスト層17を形成する。
【0092】
次に、
図6(k)に示すように、ガラスコア11第2面13に対して、電解銅めっきを施す。めっき厚としては、例えば8μmにすれば良い。
【0093】
電解めっきの後、
図6(l)に示すように、レジストパターンを剥離する事により、キャパシタ上電極36を形成する。
【0094】
この段階におけるガラスコア11の第2面13の状態として、キャパシタの上電極36が形成された部分以外には、余分な層が積層されていることになる。まず、ガラスコア11の第2面13に配線パターンが形成されている部分については、その上に、誘電体層、チタン層、銅層が余分に積層されており、ガラスコア11の第2面13に配線パターンがない部分については、ガラス表面上に下から、チタン層、銅層、誘電体層、チタン層、銅層の順に余分な層が積層されている。そこで、次の工程から、それら余分な層を、順次除去して行く。
【0095】
まず、
図6(m)に示すように、フォトレジスト17´によって、キャパシタの上電極36およびその下の誘電体層33、キャパシタの下電極30を覆う。これは、後に不要な層を除去する工程において、一緒に除去されないように保護するためのものである。
【0096】
続いて、
図7(n)に示すように、ソフトエッチングによって、不要な層のうち、一番上に位置しているスパッタリングによる銅層35を除去する。
【0097】
続いて、
図7(o)に示すように、チタン層34およびその下の窒化アルミニウムからなる誘電体層33を除去する。方法としてはドライエッチング法を選択したが、これについては、この方法に限定されるものではなく、適宜自由に選択が可能である。
【0098】
続いて、
図7(p)に示すように、キャパシタを覆っているフォトレジスト17´を除去する。これ以降において、不要な層を除去する工程においては、配線パターンを形成している銅層が、それ自体とその下の層を保護する役割を担うことができるからである。
【0099】
続いて、
図7(q)に示すように、ガラスコア11の第2面13上の配線が形成されてない部分に、余分に積層されているスパッタリングによる銅層28を、ソフトエッチング法にて除去する。
【0100】
続いて、
図7(r)に示すように、ガラスコア11の第2面13上に配線の形成されていない部分に、余分に積層されている、スパッタリングによるチタン層27を、エッチング法にて除去する。これで、ガラスコア11第2面13上において、配線が配置されてない部分については、ガラス面が露出した状態になった。
【0101】
続いて、
図7(s)に示すように、ガラスコア11の第2面13側に絶縁樹脂シートを積層して、絶縁樹脂層19を形成する。
絶縁樹脂シートとしては、味の素ファインテクノ株式会社製の絶縁樹脂(商品名「ABF-GX-T31R」)を使用し、積層に際しては真空プレス式のラミネータを用いる事ができるが、必ずしもこれに限るものではなく、適宜選択してよい。絶縁樹脂シートの厚さは25μmとする事ができるが、これは、ガラスコア11の第2面13上の配線層およびキャパシタを完全に覆うことができる厚さであれば良い。例えば、ガラスコア11の第1面12の表面からキャパシタ上電極までの厚さは、各下地層なども込みで、21μm程度であるので、絶縁樹脂シートの厚さは、25μmで十分である。
【0102】
なお、上記の絶縁層形成の工程において、貫通孔の内部にも絶縁樹脂が充填される。真空プレスラミネータを用いているため、ボイドが入ることもなく、導電樹脂層がコンフォーマルに積層された貫通孔の内部を完全に埋めて、そのままガラスコア11の第2面13の上の絶縁樹脂層19と一体化している。
【0103】
次に、
図8(t)に示すように、ガラスコア11の第2面13側の絶縁樹脂層19の上にキャリアガラス29を貼付する。キャリアガラス29の厚さは、例えば500μmとすれば良い。またキャリアガラス29の片面に、例えば10μmの厚さにて、弱密着性の接着剤層24を全面に形成した場合、「ABF-GX-T31R」による絶縁樹脂層19とキャリアガラス29を剥離する際の密着強度は、1.2N/cm以上とすることが好ましい。
【0104】
次に、
図8(u)に示すように、ガラスコア11の第1面12側のキャリアガラス25を剥離する。剥離は手作業によって行い、剥離後の接着面を光学顕微鏡(倍率100倍)にて観察し、剥離したキャリアガラス25の接着剤層24に、付着した異物があるかどうかをチェックする。異常が無い場合は、異物は認められない。
【0105】
続いて、ガラスコア11の第1面12側に配線層を形成する。
図8(v)と(w)に示すように、まずガラスとの密着性の高いチタン層40を、ガラスコア11の第1面12上に製膜し、続いて、その上に銅層41を製膜する。成膜は、スパッタリングによって、二種類の成膜の間に、成膜装置のチャンバーを開放することなく、連続して行う事ができる。例えば、チタン膜の厚さは50nm、銅膜の厚さは300nmに設定して成膜を行えば良い。
【0106】
次に、
図8(x)に示すように、ガラスコア11の第1面12側にフォトレジスト層を塗布し、後に配線パターンとするところが露出するように、フォトリソグラフィーのパターニングをおこなう事によりフォトレジスト層17´´を形成する。フォトレジスト層17´´の厚さは、例えば20μmとすれば良い。
【0107】
次に、
図9(y)に示すように、ガラスコア11の第1面12に対して、電解銅めっきを施し、銅配線層31を形成する。めっき厚としては、例えば8μmと設定すれば良い。
【0108】
電解めっきの後、
図9(z)に示すように、レジストパターンを剥離する。
この段階におけるガラスコア11の第2面13の状態として、配線パターンが形成してある部分以外には、スパッタリングによるチタン層41とスパッタリングによる銅層40が、余分な層として残っていることになる。続いて、これらの層を順次除去する。
【0109】
まず、
図9(aa)に示すように、ソフトエッチングによってスパッタリングによる銅層41を溶解除去する。この場合、配線を形成する銅も解けるが、配線の厚さは、スパッタリングによる銅層41の厚さと比較して非常に大きいため、相対的に、配線はこの工程によって、ほとんど影響を受けない。
【0110】
次に、
図9(ab)に示すように、エッチングによって、スパッタリングによるチタン層40を溶解除去する。
この段階において、ガラスコア11第1面12において、配線パターンのない部分は、ガラスが露出していることになる。
【0111】
次に、
図9(ac)に示すように、ガラスコア11の第1面12側に絶縁樹脂シートを積層して、絶縁樹脂層19を形成する。
絶縁樹脂シートとしては、味の素ファインテクノ株式会社製の絶縁樹脂(商品名「ABF-CX-T31R」)を使用し、積層に際しては真空プレス式のラミネータを用いる事ができるが、必ずしもこれに限るものではなく、適宜選択してよい。絶縁樹脂シートの厚さは25μmとしたが、これに関しては、ガラスコア11の第1面12上の配線層、を完全に覆う厚さであれば良い。ガラスコア11の第2面13表面から配線層上面までの厚さは、各下地層なども込みで、10μm程度であるので、第2面13とバランスをとるという意味でも、25μmの厚さで十分である。
【0112】
次に、
図10(ad)に示すように、ガラスコア11第2面13側のキャリアガラス29を剥離する。
剥離は手作業によって行い、剥離後のキャリアガラス29の接着面を光学顕微鏡(倍率100倍)にて観察する。異常が無ければ、絶縁層が接着面にとられていない。
この段階で、ガラスコア11の両面には配線層が形成されており、配線層の上に絶縁樹脂層19が積層された状態になっている。この段階になれば、基板は相応の剛性を有しているため、ハンドリングなどによる破損の懸念はないため、その後の工程は、キャリアガラスを貼付することなく行う事ができる。
【0113】
まず、
図10(ae)に示すように、ガラスコア11の第1面12側と第2面13側の絶縁樹脂層19に順次、導通のための貫通孔(ビア)20を加工する。加工に際しては、レーザー加工機を使用して、孔径は入り口側が60μmで、孔底側が45μmのテーパー形状となるように設定すれば良い。ただし、加工方法や孔径、形状に関しては、これに限るものではなく、目的に合わせて、適宜選択してよい。なお、図示はしていないが、レーザー加工の後に、過マンガン酸カリウム水溶液を主成分とする液によって、デスミア処理を行う。デスミア処理を行う理由は、レーザー加工による樹脂の溶解分を孔底部分から取り除き、孔底部に導体を完全に露出させることと、樹脂表面を適度に粗らして、後述する配線シード層の密着性を高めるためである。
【0114】
次に、
図10(af)に示すように、ガラスコア11の第1面12側と第2面13側の絶縁樹脂層19の表面および絶縁樹脂層19に加工した貫通孔(ビア)20の内壁に対し、導電シード層として、無電解銅めっき層21を積層する。層の厚さは、例えば500nmに設定すれば良い。この工程においては、基板全体を薬液槽に浸漬しての加工であり、第1面と第二面を同時に加工する事ができる。なお、導電シード層の形成については、材料、加工法ともに、これに限るものではなく、目的に合わせて適宜選択してよい。
【0115】
続いて、
図10(ag)に示すように、ガラスコア11の第1面12側と第2面13側に積層されている無電解銅めっき層21のうえに、フォトレジスト17によるパターンを形成し、配線層としたいところのみが露出するようにする。
【0116】
次に、
図10(ah)に示すように、電解めっきによって、フォトレジストパターンから露出した部分に電解銅めっきを施す。銅厚は、例えば12μmに設定すれば良い。なお、銅厚や積層方法は、これに限るものではなく、目的に合わせて適宜選択してよい。
【0117】
次に、
図11(ai)に示すように、フォトレジストパターンを剥離除去する。
【0118】
続いて、
図11(aj)に示すように、ガラスコア11の第1面12側と第2面13側に積層された絶縁体層19上の無電解銅めっき層21のうち、その上に配線用の電解銅めっき層19が形成されていない部分を、ソフトエッチング法にて除去する。
以上をもって、本発明の高周波モジュール用のガラスコア多層基板が完成する。
【0119】
なお、本発明の実施形態においては、多層基板の層構成は、ガラスコアとその表裏面に直接設置された配線層、加えて、ガラスコア両面に設けられた絶縁樹脂層とその上に設けられた配線層で成り立っているが、必要に応じて、さらにこれに絶縁樹脂層、配線層を重ねていってもよい。
【符号の説明】
【0120】
11・・・ガラスコア
12・・・第1面
13・・・第2面
17、17´・・・レジスト層
18・・・銅配線層
19・・・絶縁樹脂層
20・・・(絶縁樹脂層の)ビアまたは貫通孔
21・・・無電解銅めっき層
22・・・銅配線層
24・・・接着剤層
25・・・第1の支持板
26・・・(ガラスコアの)ビアまたは貫通孔
27・・・チタン層
28・・・銅層
29・・・第2の支持板
30・・・キャパシタ下電極
31・・・銅配線層
32・・・電解銅めっき層
33・・・誘電体層
34・・・チタン層
35・・・銅層
36・・・キャパシタ上電極
37・・・銅配線層
39・・・貫通導電ビア
40・・・チタン層
41・・・銅層
42・・・絶縁樹脂層