(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】アフィニティ担体、クロマトグラフィーカラム、及び抗体又はその断片の単離方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/22 20060101AFI20240220BHJP
C07K 14/31 20060101ALI20240220BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240220BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C07K1/22 ZNA
C07K14/31
C07K19/00
C12M1/00 Z
(21)【出願番号】P 2019230471
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金原 雅晃
(72)【発明者】
【氏名】小林 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】西田 貴也
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-037069(JP,A)
【文献】TOSOH Research & Technology Review, 2014年,Vol.58,p.31-34
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質粒子と、当該多孔質粒子に結合されたイムノグロブリン結合タンパク質とを備えるアフィニティ担体であって、
湿潤状態での空孔率が70~95%(v/v)であり、
湿潤状態での平均細孔径が22~35nmであり、
湿潤状態での見掛密度が
100~200g/Lであり、
前記イムノグロブリン結合タンパク質が、ポリペプチド鎖を含み、
前記ポリペプチド鎖が、配列番号1のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列、配列番号3のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸配列と
90%
以上の同一性を有するアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列と
90%
以上の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号3のアミノ酸配列と
90%
以上の同一性を有するアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列であり、
前記イムノグロブリン結合タンパク質に含まれる前記ポリペプチド鎖の数が
3~10個である、アフィニティ担体。
【請求項2】
前記多孔質粒子が合成高分子系多孔質粒子であり、当該合成高分子系多孔質粒子が、多官能ビニルモノマー由来の構造単位及びモノビニルモノマー由来の構造単位を有するポリマーを含み、前記多官能ビニルモノマーが、芳香族系多官能ビニルモノマーである、請求項
1に記載の担体。
【請求項3】
前記多孔質粒子が多糖類系多孔質粒子である、請求項
1に記載の担体。
【請求項4】
前記空孔率が80~90%(v/v)である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の担体。
【請求項5】
平均粒子径が30~100μmである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の担体。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の担体を含む、クロマトグラフィーカラム。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の担体又は請求項7に記載のクロマトグラフィーカラムを用いる、抗体又はその断片の単離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アフィニティ担体、クロマトグラフィーカラム、及び抗体又はその断片の単離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アフィニティクロマトグラフィーは、イオンクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー等の他のクロマトグラフィーに比べて、高収率且つ高速で経済的な単離が可能なため、抗体等の単離に広く用いられている。
【0003】
アフィニティクロマトグラフィーを用いて抗体やその断片を単離する場合、アフィニティクロマトグラフィーに使用されるアフィニティ担体には、抗体やその断片に対する動的結合容量を備えることが求められる。例えば、メジアン粒径を特定範囲に調整するなどすることで、抗体に対する動的結合容量を大きくした担体が知られているが(特許文献1)、動的結合容量の更なる改善が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、抗体又はその断片に対する動的結合容量が大きいアフィニティ担体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、特定のポリペプチド鎖を2~10個含むイムノグロブリン結合タンパク質が多孔質粒子に結合され、且つ湿潤状態での空孔率が70~95%(v/v)であるアフィニティ担体が、抗体又はその断片に対する動的結合容量が大きいものであることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の<1>~<7>を提供するものである。
<1> 多孔質粒子と、当該多孔質粒子に結合されたイムノグロブリン結合タンパク質とを備えるアフィニティ担体であって、湿潤状態での空孔率が70~95%(v/v)であり、前記イムノグロブリン結合タンパク質が、ポリペプチド鎖を含み、前記ポリペプチド鎖が、配列番号1のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列、配列番号3のアミノ酸配列、及びそれらの変異体配列から選ばれるアミノ酸配列であり、前記イムノグロブリン結合タンパク質に含まれる前記ポリペプチド鎖の数が2~10個である、アフィニティ担体(以下、本発明のアフィニティ担体とも称する)。
【0008】
<2> 前記ポリペプチド鎖の数が3~10個である、<1>に記載の担体。
<3> 湿潤状態での平均細孔径が22~35nmである、<1>又は<2>に記載の担体。
<4> 前記空孔率が80~90%(v/v)である、<1>~<3>のいずれかに記載の担体。
<5> 平均粒子径が30~100μmである、<1>~<4>のいずれかに記載の担体。
【0009】
<6> <1>~<5>のいずれかに記載の担体を含む、クロマトグラフィーカラム(以下、本発明のクロマトグラフィーカラムとも称する)。
<7> <1>~<5>のいずれかに記載の担体又は<6>に記載のクロマトグラフィーカラムを用いる、抗体又はその断片の単離方法(以下、本発明の抗体又はその断片の単離方法とも称する)。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアフィニティ担体は、抗体又はその断片に対する動的結合容量が大きい。したがって、本発明によれば、抗体又はその断片に対する動的結合容量が大きいクロマトグラフィーカラムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<アフィニティ担体>
本発明のアフィニティ担体は、多孔質粒子と、当該多孔質粒子に結合されたイムノグロブリン結合タンパク質とを備えるアフィニティ担体であって、湿潤状態での空孔率が70~95%(v/v)であり、前記イムノグロブリン結合タンパク質が、ポリペプチド鎖を含み、前記ポリペプチド鎖が、配列番号1のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列、配列番号3のアミノ酸配列、及びそれらの変異体配列から選ばれるアミノ酸配列であり、前記イムノグロブリン結合タンパク質に含まれる前記ポリペプチド鎖の数が2~10個であることを特徴とするものである。
なお、本明細書において、数値範囲を表すa~b等の記載は、a以上、b以下と同義であり、a及びbを数値範囲内に含む。また、本明細書において、「アフィニティ担体」とは、担体が備えるイムノグロブリン結合タンパク質に、単離の標的物質である抗体(イムノグロブリン)又はその断片が、特異的な分子間の親和力(アフィニティ)に基づいて結合することを利用した担体をいう。
【0012】
(空孔率)
本発明のアフィニティ担体の湿潤状態での空孔率は、70~95%(v/v)である。湿潤状態での空孔率をこのような範囲とすることによって、抗体及びその断片に対する動的結合容量が大きくなる。
湿潤状態での空孔率は、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、好ましくは75%(v/v)以上、より好ましくは78%(v/v)以上、更に好ましくは80%(v/v)以上、特に好ましくは84%(v/v)以上であり、また、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、好ましくは93%(v/v)以下、より好ましくは92%(v/v)以下、特に好ましくは90%(v/v)以下である。具体的な範囲としては、75~93%(v/v)が好ましく、78~92%(v/v)がより好ましく、80~90%(v/v)が更に好ましく、84~90%(v/v)が特に好ましい。
本明細書において、湿潤状態での空孔率は、湿潤状態で測定したときの多孔質粒子の非空孔部と多孔質粒子の空孔部とイムノグロブリン結合タンパク質との合計体積に対する多孔質粒子の空孔部の体積の割合を意味し、例えば、カラム容器に充填したときのアフィニティ担体の容積、担体の容積を求めたカラムに500mM 塩化ナトリウム水溶液50μLを打ち込んだときの塩化ナトリウムの溶出体積、及び担体の容積を求めたカラムにデキストランを含有する20mMリン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウム水溶液50μLを打ち込んだときのデキストランの溶出体積から求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法に従い測定すればよい。
【0013】
(平均細孔径)
本発明のアフィニティ担体の湿潤状態での平均細孔径は、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、好ましくは15nm以上、より好ましくは18nm以上、更に好ましくは22nm以上、特に好ましくは23nm以上であり、また、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、好ましくは45nm以下、より好ましくは40nm以下、更に好ましくは35nm以下、更に好ましくは27nm以下であり、特に好ましくは26nm以下である。具体的な範囲としては、15~45nmが好ましく、18~40nmがより好ましく、22~35nmが更に好ましく、22~27nmが更に好ましく、23~26nmが特に好ましい。
本明細書において、アフィニティ担体の湿潤状態での平均細孔径は、“Hagel,et.al,Journal of Chromatography A,Vol.743(1996)32-42”に記載の方法を用いて湿潤状態で測定したときの平均細孔径を意味し、例えば、カラム容器に充填したときのアフィニティ担体の容積、担体の容積を求めたカラムに500mM 塩化ナトリウム水溶液50μLを打ち込んだときの塩化ナトリウムの溶出体積、担体の容積を求めたカラムにデキストランを含有する20mMリン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウム水溶液50μLを打ち込んだときのデキストランの溶出体積、及びプルランのスタンダードサンプルを含有する20mMリン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウム水溶液50μLを打ち込んだときのプルランの溶出体積から求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法に従い測定すればよい。
【0014】
(体積平均粒子径)
本発明のアフィニティ担体の平均粒子径は、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、好ましくは30μm以上、より好ましくは35μm以上、特に好ましくは40μm以上であり、また、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、特に好ましくは80μm以下である。具体的な範囲としては、30~100μmが好ましく、35~90μmがより好ましく、40~80μmが特に好ましい。
本明細書において、アフィニティ担体の平均粒子径は、JIS Z 8825(2013)に従いレーザ回折散乱法で測定される体積平均粒子径をいう。具体的には、後述する実施例に記載の方法のようにして、JIS Z 8825(2013)に従って、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製 LS13320等)により体積基準の粒径分布を測定することで求めることができる。
また、体積平均粒子径の変動係数は、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。変動係数は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置で測定される値をいう。
【0015】
(見掛密度)
本発明のアフィニティ担体の湿潤状態での見掛密度は、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、好ましくは80g/L以上、より好ましくは90g/L以上、特に好ましくは100g/L以上であり、また、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、好ましくは400g/L以下、より好ましくは300g/L以下、更に好ましくは250g/L以下、特に好ましくは200g/L以下である。具体的な範囲としては、80~400g/Lが好ましく、90~300g/Lがより好ましく、100~250g/Lが更に好ましく、100~200g/Lが特に好ましい。
本明細書において、アフィニティ担体の湿潤状態での見掛密度は、例えば、粒子状のアフィニティ担体を水に分散させたスラリーを加えたメスシリンダー内でアフィニティ担体を沈降させ、アフィニティ担体の重量をアフィニティ担体の沈降体積で割ることにより求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法に従い測定すればよい。
【0016】
(多孔質粒子)
本発明のアフィニティ担体は、多孔質粒子を備える。
多孔質粒子としては、合成高分子系多孔質粒子、天然高分子系多孔質粒子等の有機系多孔質粒子;無機系多孔質粒子;これらを組み合わせた有機-有機複合系多孔質粒子や有機-無機複合系多孔質粒子等が挙げられる。天然高分子系多孔質粒子としては、例えば、セルロース、アガロース、デキストラン等の多糖類系多孔質粒子(好ましくは架橋多糖類系多孔質粒子)が挙げられる。多糖類の中では、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、アガロースが特に好ましい。無機系多孔質粒子としては、ガラス、シリカゲル、金属、金属酸化物等で構成されるものが挙げられる。
これら多孔質粒子の中では、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、有機系多孔質粒子が好ましく、高分子系多孔質粒子がより好ましく、合成高分子系多孔質粒子が特に好ましい。また、多孔質粒子は、好ましくは水不溶性多孔質粒子である。
【0017】
なお、多孔質粒子は、WO2019/039545、特開2011-252929号公報、WO2017/155105、特開昭62-25102号公報等に記載の架橋構造の導入や表面変性を行ったものであってもよい。
架橋構造を与える架橋剤としては、例えば、オキサリルジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、2,3-ジヒドロキシコハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、オクタン二酸ジヒドラジド、ノナン二酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、キノリン酸ジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド類;シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド等のトリカルボン酸トリヒドラジド類;N1,N1-(エタン-1,2-ジイル)ビス(コハク酸モノアミド)等の(アルキレンビスイミノ)ビス(オキソアルカン酸)類;エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ジクロロヒドリン等のハロヒドリン類;レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヒドロゲナートビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、ジグリシジルオルトフタレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等のビスオキシラン類;3官能以上のポリオキシラン類等が挙げられる。
また、表面変性としては、例えば、多孔質粒子の表面に、水酸基を有するポリマーによりグラフト層を設ける手法が挙げられる。
【0018】
また、合成高分子系多孔質粒子に含まれるポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート系モノマー由来の構造単位、(メタ)アクリル酸由来の構造単位、(メタ)アクリルアミド系モノマー由来の構造単位、(メタ)アクリロニトリル系モノマー由来の構造単位、芳香族ビニル系モノマー由来の構造単位、ビニルアルコール系モノマー由来の構造単位、オレフィン系モノマー(例えばエチレン等)由来の構造単位、ビニルエーテル系モノマー由来の構造単位、ビニルケトン系モノマー由来の構造単位、N-ビニルアミド系モノマー由来の構造単位、ビニルアルキレンオキシド系モノマー由来の構造単位、三重結合を有するアルキレンオキシド系モノマー(例えば2,3-エポキシプロピルプロパルギルエーテル等)由来の構造単位、アリル系モノマー由来の構造単位、不飽和ジカルボン酸無水物系モノマー由来の構造単位、及び不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系モノマー由来の構造単位から選ばれる1種又は2種以上を有するポリマーが挙げられる。
上記ポリマーとしては、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、(メタ)アクリレート系モノマー由来の構造単位、(メタ)アクリル酸由来の構造単位、(メタ)アクリルアミド系モノマー由来の構造単位及び芳香族ビニル系モノマー由来の構造単位から選ばれる1種又は2種以上を有するポリマーが好ましく、(メタ)アクリレート系モノマー由来の構造単位及び芳香族ビニル系モノマー由来の構造単位から選ばれる1種又は2種以上を有するポリマーがより好ましく、(メタ)アクリレート系モノマー由来の構造単位及び芳香族ビニル系モノマー由来の構造単位を少なくとも有するポリマーが特に好ましい。
【0019】
また、合成高分子系多孔質粒子に含まれるポリマーとしては、多官能ビニルモノマー由来の構造単位及びモノビニルモノマー由来の構造単位から選ばれる構造単位を有するポリマーが好ましく、多官能ビニルモノマー由来の構造単位及びモノビニルモノマー由来の構造単位を有するポリマーがより好ましい。
【0020】
(多官能ビニルモノマー)
多官能ビニルモノマーは、1分子内に重合性ビニル基を2個以上有するビニルモノマーである。
多官能ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリレート系多官能ビニルモノマー、(メタ)アクリルアミド系多官能ビニルモノマー、芳香族系多官能ビニルモノマーの他、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、トリメリット酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル等のポリアリル系モノマーや、ジアミノプロパノール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、グルコサミン等のアミノアルコールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合反応物、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン等が挙げられる。
これらの中では、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、(メタ)アクリレート系多官能ビニルモノマー、(メタ)アクリルアミド系多官能ビニルモノマー及び芳香族系多官能ビニルモノマーから選ばれる1種又は2種以上のモノマーが好ましく、(メタ)アクリレート系多官能ビニルモノマー及び芳香族系多官能ビニルモノマーから選ばれる1種又は2種以上のモノマーがより好ましく、芳香族系多官能ビニルモノマーが特に好ましい。
また、多官能ビニルモノマーに含まれる重合性ビニル基の個数としては、1分子内に、2~5個が好ましく、2又は3個がより好ましい。
【0021】
(メタ)アクリレート系多官能ビニルモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ブタントリオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、イノシトールジ(メタ)アクリレート、グルコースジ(メタ)アクリレート、マンニトールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート系モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イノシトールトリ(メタ)アクリレート、グルコーストリ(メタ)アクリレート、マンニトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート系モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イノシトールテトラ(メタ)アクリレート、グルコーステトラ(メタ)アクリレート、マンニトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート系モノマー;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、マンニトールペンタ(メタ)アクリレート等のペンタ(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。なお、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0022】
芳香族系多官能ビニルモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルエチルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族系ジビニルモノマー;トリビニルベンゼン等の芳香族系トリビニルモノマー等が挙げられる。なお、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
多官能ビニルモノマー由来の構造単位の含有量は、ポリマー中の全構造単位に対して、1~90質量%が好ましく、2.5~80質量%がより好ましく、5~70質量%が更に好ましく、10~60質量%が特に好ましい。
なお、ポリマー中の各構造単位の含有量は、NMR等により測定すればよい。
【0024】
(モノビニルモノマー)
モノビニルモノマーは、1分子内に重合性ビニル基を1個有するビニルモノマーである。
モノビニルモノマーは、イムノグロブリン結合タンパク質と反応性を有する反応性官能基を分子内に有するモノビニルモノマーと、イムノグロブリン結合タンパク質と反応性を有する反応性官能基を分子内に有さないモノビニルモノマーとに大別でき、これらのうち1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、スペーサーを介さずに多孔質粒子をイムノグロブリン結合タンパク質と結合させるためには、イムノグロブリン結合タンパク質と反応性を有する反応性官能基を分子内に有するモノビニルモノマーが好ましい。
イムノグロブリン結合タンパク質と反応性を有する反応性官能基としては、例えば、環状エーテル基、カルボキシ基、-C(=O)-O-C(=O)-、N-スクシンイミジル基、ホルミル基、イソシアネート基、アミノ基、ヒドラジド基等が挙げられる。これらの中では、環状エーテル基が好ましく、環を構成する原子数が3~7個の環状エーテル基がより好ましい。環状エーテル基は、置換基としてアルキル基を有していてもよい。環状エーテル基の具体例としては、以下の式(1)~(6)で表される環状エーテル基が挙げられるが、式(1)、(5)又は(6)で表される環状エーテル基が好ましく、式(1)で表される環状エーテル基がより好ましい。
【0025】
【0026】
〔式中、R1~R4は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示し、*は、結合手を示す。〕
【0027】
R1~R4で示されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1又は2である。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。また、R1~R4としては、水素原子が好ましい。
【0028】
イムノグロブリン結合タンパク質と反応性を有する反応性官能基を分子内に有するモノビニルモノマーとしては、例えば、エポキシ基を分子内に有するモノビニルモノマー;(メタ)アクリル酸等のカルボキシ基を分子内に有するモノビニルモノマー;イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を分子内に有するモノビニルモノマー;マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、グルタコン酸無水物等の不飽和ジカルボン酸無水物系モノマーの他、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
エポキシ基を分子内に有するモノビニルモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3-オキシラニルプロピル(メタ)アクリレート、4-オキシラニルブチル(メタ)アクリレート、5-オキシラニルペンチル(メタ)アクリレート、6-オキシラニルヘキシル(メタ)アクリレート、7-オキシラニルヘプチル(メタ)アクリレート、8-オキシラニルオクチル(メタ)アクリレート、(3-メチルオキシラニル)メチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、α-(メタ)アクリル-ω-グリシジルポリエチレングリコール、グリセリンモノ(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート系モノビニルモノマー;ビニルベンジルグリシジルエーテル、イソプロペニルベンジルグリシジルエーテル、ビニルフェネチルグリシジルエーテル、ビニルフェニルブチルグリシジルエーテル、ビニルベンジルオキシエチルグリシジルエーテル、ビニルフェニルグリシジルエーテル、イソプロペニルフェニルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-3-(4-ビニルベンジル)プロパン等のエポキシ基含有芳香族系モノビニルモノマー;アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有アリルエーテル系モノビニルモノマー;3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン等のビニルアルキレンオキシド系モノビニルモノマー等が挙げられる。なお、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
イムノグロブリン結合タンパク質と反応性を有する反応性官能基を分子内に有さないモノビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ブタントリオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、イノシトールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系モノビニルモノマー;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノビニルモノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、エチルビニルベンゼン、4-イソプロピルスチレン、4-n-ブチルスチレン、4-イソブチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等の芳香族系モノビニルモノマー;エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、イソプロピルビニルケトン等のビニルケトン系モノビニルモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル系モノビニルモノマー;N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオンアミド等のN-ビニルアミド系モノビニルモノマー等が挙げられる。なお、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0031】
モノビニルモノマー由来の構造単位の含有量は、ポリマー中の全構造単位に対して、10~99質量%が好ましく、20~97.5質量%がより好ましく、30~95質量%が更に好ましく、40~90質量%が特に好ましい。
【0032】
また、ポリマー中に含まれる多官能ビニルモノマー由来の構造単位(P)とモノビニルモノマー由来の構造単位(M)との含有割合〔(P):(M)〕としては、質量比で、1:99~90:10が好ましく、2.5:97.5~80:20がより好ましく、5:95~70:30が更に好ましく、10:90~60:40が特に好ましい。
【0033】
(イムノグロブリン結合タンパク質)
本発明のアフィニティ担体が備えるイムノグロブリン結合タンパク質は、ポリペプチド鎖を含むものであり、また、当該ポリペプチド鎖は、配列番号1のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列、配列番号3のアミノ酸配列、及びそれらの変異体配列から選ばれるアミノ酸配列である。このポリペプチド鎖は、イムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖であり、イムノグロブリン結合ドメインとして機能する。以下、このポリペプチド鎖を「特定イムノグロブリン結合ドメイン」とも称する。また、上記イムノグロブリン結合タンパク質に含まれる特定イムノグロブリン結合ドメインの数は2~10個である。
なお、本明細書において、「イムノグロブリン結合ドメイン」とは、イムノグロブリン結合タンパク質に含まれる、抗体(イムノグロブリン)又はその断片に対する結合活性を単独で有するポリペプチドの機能単位をいう。また、特定イムノグロブリン結合ドメインのうち、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖は、プロテインAのイムノグロブリン結合ドメイン(Cドメイン)であり、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖は、プロテインLのイムノグロブリン結合ドメイン(C4ドメイン)であり、配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖は、プロテインGのイムノグロブリン結合ドメイン(β1ドメイン)である。
【0034】
ここで、本明細書において、アミノ酸配列やヌクレオチド配列の「同一性」は、カーリンとアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Pro.Natl.Acad.Sci.USA,1993,90:5873-5877)を用いて決定することができる。このBLASTアルゴリズムに基づいて、BLASTN、BLASTX、BLASTP、TBLASTN及びTBLASTXとよばれるプログラムが開発されている(J.Mol.Biol.,1990,215:403-410)。これらのプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いることができる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である([www.ncbi.nlm.nih.gov]参照)。
【0035】
また、本明細書において、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列に関する「少なくとも85%の同一性」とは、85%以上の同一性、好ましくは90%以上の同一性、より好ましくは95%以上の同一性、さらに好ましくは97%以上の同一性、さらに好ましくは98%以上の同一性、特に好ましくは99%以上の同一性をいう。
【0036】
また、本明細書において、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列上の「相当する位置」は、目的配列と参照配列(例えば、配列番号1のアミノ酸配列)とを、各アミノ酸配列又はヌクレオチド配列中に存在する保存アミノ酸残基又はヌクレオチドに最大の相同性を与えるように整列(アラインメント)させることにより決定することができる。アラインメントは、公知のアルゴリズムを用いて実行することができ、その手順は当業者に公知である。例えば、アラインメントは、Clustal Wマルチプルアラインメントプログラム(Thompson, J. D. et al, 1994, Nucleic Acids Res., 22:4673-4680)をデフォルト設定で用いることにより行うことができる。Clustal Wは、例えば、欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute: EBI [www.ebi.ac.uk/index.html])や、国立遺伝学研究所が運営する日本DNAデータバンク(DDBJ [www.ddbj.nig.ac.jp/index.html])のウェブサイト上で利用することができる。
【0037】
また、本明細書において、アミノ酸残基は次の略号でも記載される:アラニン(Ala又はA)、アルギニン(Arg又はR)、アスパラギン(Asn又はN)、アスパラギン酸(Asp又はD)、システイン(Cys又はC)、グルタミン(Gln又はQ)、グルタミン酸(Glu又はE)、グリシン(Gly又はG)、ヒスチジン(His又はH)、イソロイシン(Ile又はI)、ロイシン(Leu又はL)、リジン(Lys又はK)、メチオニン(Met又はM)、フェニルアラニン(Phe又はF)、プロリン(Pro又はP)、セリン(Ser又はS)、トレオニン(Thr又はT)、トリプトファン(Trp又はW)、チロシン(Tyr又はY)、バリン(Val又はV)、及び任意のアミノ酸残基(Xaa又はX)。また、本明細書において、ペプチドのアミノ酸配列は、常法に従って、アミノ末端(以下N末端という)が左側、カルボキシル末端(以下C末端という)が右側に位置するように記載される。
【0038】
また、本明細書において、アミノ酸配列の特定の位置に対する「前」及び「後」の位置とは、それぞれ、該特定の位置のN末端側及びC末端側に隣接する位置をいう。例えば、特定の位置の「前」及び「後」の位置へアミノ酸残基を挿入する場合、該特定の位置のN末端側及びC末端側に隣接する位置に、挿入後のアミノ酸残基が配置される。
【0039】
本明細書において、「イムノグロブリン結合タンパク質」とは、抗体又はその断片に対する結合活性を有するタンパク質をいう。
また、本明細書において、「抗体」は、例えば、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、及びこれらのサブクラス等の任意のクラスのイムノグロブリン、それらの変異体を包含する概念である。また、本明細書において「抗体」は、ヒト化抗体等のキメラ抗体、抗体複合体、及び抗原認識部位を含む他のイムノグロブリン修飾体などであってもよい。
また、本明細書において、「抗体の断片」は、抗原認識部位を含む抗体の断片であっても、抗原認識部位を含まない抗体の断片であってもよい。抗原認識部位を含まない抗体の断片としては、例えば、イムノグロブリンのFc領域のみからなるタンパク質、Fc融合タンパク質、及びそれらの変異体や修飾体などが挙げられる。
【0040】
ここで、特定イムノグロブリン結合ドメインにおける上記「変異体配列」について詳細に説明する。変異体配列の親ドメインとしては、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)の細胞壁成分であるプロテインA(以下、SpAとも称する)のイムノグロブリン結合ドメインであるAドメイン、Bドメイン、Cドメイン、Dドメイン、Eドメイン、及びBドメインの改変型ドメインであるZドメイン;Finegoldia magna 312株又は3316株が産生するプロテインLのイムノグロブリン結合ドメインであるB1ドメイン、B2ドメイン、B3ドメイン、B4ドメイン、B5ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、C3ドメイン、及びC4ドメイン;Gグループの連鎖球菌(Streptococci)の細胞壁成分であるプロテインGのイムノグロブリン結合ドメインであるβ1ドメイン、β2ドメイン、及びβ3ドメインが挙げられる。これらの中でも、ポリペプチド鎖が上記変異体配列からなる場合における親ドメインとしては、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、SpAのCドメイン、プロテインLのC4ドメイン、プロテインGのβ1ドメインが好ましく、SpAのCドメインがより好ましい。
【0041】
SpAのCドメイン、プロテインLのC4ドメイン、及びプロテインGのβ1ドメインは、上記変異体配列からなるポリペプチド鎖の親ドメインとして使用され得る。
SpAのCドメインは、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖である。該Cドメインの変異体としては、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。プロテインLのC4ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖である。該C4ドメインの変異体としては、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。プロテインGのβ1ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖である。該β1ドメインの変異体としては、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つイムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が挙げられる。
したがって、上記変異体配列からなるポリペプチド鎖の親ドメインの例としては、配列番号1~3のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖が挙げられる。この中でも、親ドメインとしては、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖が好ましい。
【0042】
上記変異体配列からなるポリペプチド鎖としては、SpAのCドメインに対して、配列番号1のアミノ酸配列の1位に相当する位置及び29位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換若しくは欠失、又は当該位置の前若しくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入をして得られるポリペプチド鎖が挙げられ、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し、且つ配列番号1のアミノ酸配列の1位に相当する位置及び29位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置におけるアミノ酸残基の、他のアミノ酸残基への置換若しくは欠失、又は当該位置の前若しくは後の位置への他のアミノ酸残基の挿入を変異として有するアミノ酸配列からなり、イムノグロブリン結合活性を有するポリペプチド鎖が好ましい。
1位に相当する位置において、置換前のアミノ酸残基はAlaであり、これと置換される他のアミノ酸残基は、Ala以外のアミノ酸残基であればよく、好ましくはValである。また、29位に相当する位置において、置換前のアミノ酸残基はGlyであり、これと置換される他のアミノ酸残基は、Gly以外のアミノ酸残基であればよいが、好ましくはAla、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Thr、Ser、Asp、Glu、Arg、His又はMetであり、より好ましくはAla、Glu又はArgであり、特に好ましくはAlaである。
SpAのCドメインに対する上記変異は、配列番号1のアミノ酸配列の1位又は29位に相当する位置におけるアミノ酸残基の単独変異であっても、上記1位及び29位に相当する位置における2つのアミノ酸残基が変異した多重変異であってもよい。例えば、SpAのCドメインに対する上記変異は、配列番号1のアミノ酸配列の1位又は29位に相当する位置におけるアミノ酸残基の単独置換であっても、上記1位及び29位に相当する位置における2つのアミノ酸残基を置換した多重置換であってもよい。
【0043】
上記のような変異体配列からなるポリペプチド鎖の中でも、形質転換体におけるタンパク質発現量を増加させるために(PNAS,1989,86:8247-8251,Fig.2)、また、複数のドメインを連結したイムノグロブリン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの作製を容易にするために(WO2010/110288)、配列番号1のアミノ酸配列の1位に相当する位置におけるAlaをValとする置換を含むものが好ましい。また、上記変異体配列からなるポリペプチド鎖としては、イムノグロブリン結合タンパク質の化学的安定性及びアルカリ耐性を改善させるために(Journal of Chromatography B,2007,848(1):40-47)、配列番号1のアミノ酸配列の29位に相当する位置におけるGlyをAlaとする置換をさらに含むものが特に好ましい。
【0044】
また、上記変異体配列からなるポリペプチド鎖は、イムノグロブリン結合活性を有する限りにおいて、タンパク質構造の安定性を高めるために(WO2013/109302、WO2017/194596等)、配列番号1~3のいずれかのアミノ酸配列のN末端から少なくとも2残基(例えば、2残基、4残基、6残基又は7残基)に相当するアミノ酸残基を欠失した変異イムノグロブリン結合ドメインであってもよい。このような変異体としては、配列番号1のアミノ酸配列のN末端から2~7残基を欠失した変異イムノグロブリン結合ドメインが挙げられる。
【0045】
上記変異体配列からなるポリペプチド鎖において、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列の1位に相当する位置にValを含むか、及び/又は配列番号1のアミノ酸配列の29位に相当する位置にAlaを含んでいてもよい。
変異体配列からなるポリペプチド鎖の中では、配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチド鎖が特に好ましい。
【0046】
上記変異体配列からなるポリペプチド鎖は、SpAのCドメイン、プロテインLのC4ドメイン、プロテインGのβ1ドメインのアミノ酸配列に対して、アミノ酸残基の挿入、削除、置換又は欠失や、アミノ酸残基の化学的修飾等の改変を施すことによって作製することができる。アミノ酸残基の挿入、削除、置換又は欠失の手段としては、そのドメインをコードするポリヌクレオチドに対する部位特異的突然変異等の公知の手段が挙げられる。
【0047】
本発明のアフィニティ担体が備えるイムノグロブリン結合タンパク質に含まれる特定イムノグロブリン結合ドメインの数は2~10個である。
イムノグロブリン結合タンパク質に含まれる特定イムノグロブリン結合ドメインの数は、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、好ましくは3個以上、より好ましくは4個以上、特に好ましくは5個以上であり、また、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、好ましくは8個以下、より好ましくは7個以下である。具体的な範囲としては、3~10個が好ましく、4~10個がより好ましく、4~8個が更に好ましく、4~7個が更に好ましく、5~7個が更に好ましく、6個が特に好ましい。なお、イムノグロブリン結合タンパク質に含まれる2~10個の特定イムノグロブリン結合ドメインは、同種のものでも異種のものでもよいが、好ましくは同種である。
【0048】
また、本発明のアフィニティ担体が備えるイムノグロブリン結合タンパク質は、特定イムノグロブリン結合ドメイン以外のイムノグロブリン結合ドメインを含んでいてもよい。このようなドメインとしては、例えば、Cドメイン以外の天然型SpAのイムノグロブリン結合ドメイン(例えば、SpAのAドメイン、Bドメイン、Dドメイン、Eドメイン)、SpAのBドメインの改変型ドメインであるZドメイン、C4ドメイン以外の天然型プロテインLのイムノグロブリン結合ドメイン(B1ドメイン、B2ドメイン、B3ドメイン、B4ドメイン、B5ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、C3ドメイン)、β1ドメイン以外の天然型プロテインGのイムノグロブリン結合ドメイン(β2ドメイン、β3ドメイン)、これらの変異体等が挙げられる。
【0049】
イムノグロブリン結合タンパク質としては、抗体及びその断片に対する動的結合容量を大きくするために、特定イムノグロブリン結合ドメインのアミノ酸配列が直鎖状に2~10個(好ましくは3~10個、より好ましくは4~10個、更に好ましくは4~8個、更に好ましくは4~7個、更に好ましくは5~7個、特に好ましくは6個)連結されたポリペプチドが好ましく、配列番号1のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列、配列番号3のアミノ酸配列、及びそれらの変異体配列から選ばれるアミノ酸配列のうちいずれか1種のアミノ酸配列が直鎖状に2~10個(好ましくは3~10個、より好ましくは4~10個、更に好ましくは4~8個、更に好ましくは4~7個、更に好ましくは5~7個、特に好ましくは6個)連結されたポリペプチドがより好ましい。
なお、本明細書において、アミノ酸配列が「直鎖状に連結された」とは、2~10個のアミノ酸配列がリンカーを介して又はリンカーを介さずに直列に連結されていることを意味する。例えば、リンカーを介する場合、「直鎖状に連結された」とは、1つのアミノ酸配列のC末端と別のアミノ酸配列のN末端とがリンカーを介して直列に連結された構造を意味し、一方、リンカーを介さない場合、「直鎖状に連結された」とは、1つのアミノ酸配列のC末端と別のアミノ酸配列のN末端とがペプチド結合によって直列に連結された構造を意味する。
【0050】
なお、本発明のアフィニティ担体が備えるイムノグロブリン結合タンパク質は、特定イムノグロブリン結合ドメインのN末端、C末端及びドメイン間のうちいずれか1箇所以上に、任意のアミノ酸残基又はペプチドが付加又は挿入されていてもよい。当該付加又は挿入されるアミノ酸残基又はペプチドとしては、Cys、Lys、Pro、(Pro)m、(Ala-Pro)n、(Glu-Ala-Ala-Ala-Lys)pが挙げられる。なお、mは、2~300の整数、好ましくは12~24の整数であり、nは、4以上の整数、好ましくは4~10の整数であり、pは、2以上の整数、好ましくは2~6の整数である。
【0051】
本発明のアフィニティ担体が備えるイムノグロブリン結合タンパク質は、例えば、アミノ酸配列に基づく化学合成法や、リコンビナント法などで製造できる。例えば、Frederick M. AusbelらによるCurrent Protocols In Molecular Biologyや、Sambrookら編集のMolecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press,3rd edition,2001)等に記載されている公知の遺伝子組換え技術を利用して製造することができる。
すなわち、本発明のアフィニティ担体が備えるイムノグロブリン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを大腸菌等の宿主に形質転換し、得られた組換え体を適切な液体培地で培養することにより、培養後の細胞から、目的のタンパク質を大量且つ経済的に取得することができる。発現ベクターとしては、宿主細胞内で複製可能な既知のベクターのいずれをも用いることができる。例えば、米国特許第5,151,350号明細書に記載されているプラスミドや、Sambrookら編集のMolecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 3rd edition, 2001)等に記載されているプラスミドが挙げられる。また、形質転換のための宿主としては、大腸菌等のバクテリア、真菌類、昆虫細胞、哺乳類細胞等の組換えタンパク質を発現させるために用いられる公知の宿主を用いることができる。宿主中に核酸を導入することにより宿主を形質転換させるためには、各宿主に応じて当該技術分野において知られるいずれの方法を用いてもよく、例えば、Sambrookら編集のMolecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press,3rd edition,2001)等に記載されている公知の方法を利用することができる。なお、得られた形質転換体(好ましくは細菌等の細胞)を培養して発現されたタンパク質を回収する方法は、当業者によく知られている。また、イムノグロブリン結合タンパク質は、無細胞タンパク質合成系を用いて発現させてもよい。
【0052】
本発明のアフィニティ担体は、上記のようなイムノグロブリン結合タンパク質が多孔質粒子に結合されたものであるが、当該結合は、直接的な化学結合でもスペーサー分子を介した間接的な結合でもよい。直接的な化学結合としては、例えば、多孔質粒子に含まれる「イムノグロブリン結合タンパク質と反応性を有する反応性官能基」の残基(開環エポキシ基等)とイムノグロブリン結合タンパク質との共有結合が挙げられる。なお、イムノグロブリン結合タンパク質と反応性を有する反応性官能基としては、イムノグロブリン結合タンパク質と反応性を有する反応性官能基を分子内に有するモノビニルモノマーが有するものとして挙げた反応性官能基と同様のものが挙げられる。
【0053】
また、イムノグロブリン結合タンパク質の多孔質粒子に対する結合量は、空孔率を所望の範囲にしやすくするために、多孔質粒子の乾燥重量1gに対して、好ましくは30~150mg、より好ましくは40~120mgである。
なお、イムノグロブリン結合タンパク質の結合量は、Bicinchoninic acid(BCA)を用いたアッセイ(BCAアッセイ)等で測定できる。
【0054】
<アフィニティ担体の製造方法>
本発明のアフィニティ担体は、アフィニティ担体の湿潤状態での空孔率が70~95%(v/v)となるように、(工程1)原料となる多孔質粒子の調製と(工程2)当該多孔質粒子への上記イムノグロブリン結合タンパク質の結合を行うことにより、製造することができる。
【0055】
(工程1)
原料となる多孔質粒子は公知の方法を参考にして適宜調製すればよいが、天然高分子系多孔質粒子を多孔質粒子として備えるアフィニティ担体を製造する場合、原料となる天然高分子系多孔質粒子は、例えば、Hjerten,Biochim Biophys Acta 79(2),393-398(1964)、WO97/38018、特開2012-87202号公報、特開2012-126796号公報等に記載されている逆相懸濁ゲル化法やイオン液体に溶解させて懸濁させる方法等の常法により調製すればよい。このとき、原料天然高分子の使用量やゲル化温度やゲル化時間を調節することによって、空孔率が所望の範囲になりやすくなる。なお、懸濁に用いる有機溶媒としては、多孔化剤として後述する有機溶媒が挙げられる。また、空孔率を所望の範囲にしやすくするために、工程2に先立って、上記で得られた天然高分子系の原料多孔質粒子に分級処理を行うのが好ましい。
また、架橋化及び/又はエポキシ基導入をする場合は、エピハロヒドリン、ビスエポキシド、1,2,3-トリハロ置換された低級炭化水素類等と反応させてもよい。なお、この反応は、分級処理前に行っても分級処理後に行ってもよい。
【0056】
一方、合成高分子系多孔質粒子を多孔質粒子として備えるアフィニティ担体を製造する場合、原料となる合成高分子系多孔質粒子は、例えば、WO2015/80174、WO2015/119255等に記載の公知の方法を参考にして適宜調製すればよい。具体的には、モノマーを、重合開始剤及び多孔化剤を用いて懸濁重合させる方法が挙げられる。懸濁重合に用いるモノマーとしては、合成高分子系多孔質粒子を与えるモノマーとして上記で述べたものが挙げられる。
【0057】
重合開始剤としてはラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等が挙げられる。より具体的には、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ベンゾイル-ジメチルアニリン等が挙げられる。
【0058】
多孔化剤は、油滴内でモノマーと共に存在し、非重合成分として孔を形成する作用を有する。多孔化剤は、モノマーの種類やその使用量等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;シクロヘキサノール等の脂環式アルコール類;2-フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール類;ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトフェノン、2-オクタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、アニソール、エトキシベンゼン等のエーテル類;酢酸イソペンチル、酢酸ブチル、酢酸-3-メトキシブチル、マロン酸ジエチル等のエステル類の他、非架橋性ビニルモノマーのホモポリマー等の線状重合物が挙げられる。なお、このうち1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多孔化剤の使用量は、モノマーの種類やその使用量、多孔化剤の種類等に応じて適宜調整すればよいが、空孔率を所望の範囲にしやすくするために、モノマー総量100質量部に対して、好ましくは100~600質量部、より好ましくは150~550質量部、特に好ましくは250~500質量部である。
【0059】
なお、上記懸濁重合は、上記各成分に加えて必要に応じて、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ゼラチン等の水溶性高分子;分散安定剤;各種界面活性剤;重合禁止剤;重合調整剤等を用いて行ってもよい。なお、このうち1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
懸濁重合の重合温度は、重合開始剤の種類等に応じて適宜決定すればよいが、通常2~100℃程度であり、アゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤として用いる場合は、65~95℃が好ましい。また、重合時間は、通常5分間~48時間である。なお、得られた多孔質粒子には、WO2019/039545、特開2011-252929号公報、WO2017/155105、特開昭62-25102号公報等に記載の上記の架橋構造の導入や表面変性を行ってもよい。
また、天然高分子系多孔質粒子の場合と同様、空孔率を所望の範囲にしやすくするために、工程2に先立って、上記で得られた合成高分子系の原料多孔質粒子に分級処理を行うのが好ましい。
【0061】
(工程2)
工程1で得た多孔質粒子に上記イムノグロブリン結合タンパク質を結合させる方法は、Biomacromolecules 2007,8,6,1775-1789等に記載の一般的な方法でよい。例えば、工程1で得た多孔質粒子が、イムノグロブリン結合タンパク質と反応性を有する反応性官能基を有する場合は、当該反応性官能基にイムノグロブリン結合タンパク質を結合させる方法が挙げられる。工程1で得た多孔質粒子が環状エーテル基を有する場合は、当該環状エーテル基に、イムノグロブリン結合タンパク質のアミノ基、ヒドロキシ基又はチオール基を反応させればよい。また、工程1で得た多孔質粒子がカルボキシ基を有する場合は、当該カルボキシ基をN-ヒドロキシコハク酸イミド等で活性化させ、イムノグロブリン結合タンパク質のアミノ基と反応させる方法や、水溶性カルボジイミド等の脱水縮合剤存在下でイムノグロブリン結合タンパク質のアミノ基と反応させる方法が挙げられる。
また、特開2017-83363号公報、WO2015/119288等に記載の公知の手法を参考にして、ポリアルキレングリコール鎖や糖類等のスペーサー分子を介して、工程1で得た多孔質粒子に上記イムノグロブリン結合タンパク質を結合させてもよい。
【0062】
また、工程1で得た多孔質粒子が環状エーテル基を有する場合、これに由来する環状エーテル基が、工程2を行った後も残存することがあるが、この残存した環状エーテル基は公知の手法で開環させてもよい。例えば、酸又はアルカリ;メルカプトエタノール、チオグリセロール等のメルカプト基を有するアルコール;グリセロール等の多価アルコール;モノエタノールアミン等を用いて開環させることができる。
【0063】
<クロマトグラフィーカラム>
本発明のクロマトグラフィーカラムは、本発明のアフィニティ担体を含むものである。
本発明のクロマトグラフィーカラムは、本発明のアフィニティ担体を含む以外は、通常のクロマトグラフィーカラムと同様である。具体的には、カラム容器と当該カラム容器に充填された本発明のアフィニティ担体とを備えるクロマトグラフィーカラムが挙げられる。
【0064】
<抗体又はその断片の単離方法>
本発明の抗体又はその断片の単離方法は、本発明のアフィニティ担体又は本発明のクロマトグラフィーカラムを用いるものである。
本発明の抗体又はその断片の単離方法は、本発明のアフィニティ担体又は本発明のクロマトグラフィーカラムを用いること以外は、抗体又はその断片の一般的な単離方法と同様にして行えばよい。具体的には、本発明のアフィニティ担体と、抗体又はその断片を含む試料とを接触させる工程を含む方法が挙げられる。また、この工程によって抗体又はその断片をアフィニティ担体に捕捉させて抗体又はその断片から夾雑物(例えば、抗体又はその断片以外のタンパク質等)を分離した後、アフィニティ担体に捕捉された抗体又はその断片を溶出させる溶出工程を行うことが好ましい。この溶出液を回収することで、試料から抗体又はその断片を単離することができる。溶出工程には、イムノグロブリン結合タンパク質と抗体又はその断片とを解離させる解離液が通常使用される。解離液のpH(25℃)は、好ましくは2~7の範囲、より好ましくは3~5の範囲である。
また、単離は、本発明のクロマトグラフィーカラムを用いて行ってもよい。このような方法としては、本発明のクロマトグラフィーカラムに、抗体又はその断片を含む試料を通液する工程を含む方法が挙げられ、この工程によって抗体又はその断片をアフィニティ担体に捕捉させて抗体又はその断片から夾雑物を分離した後、上記と同様に溶出工程を行うことが好ましい。
【0065】
なお、抗体又はその断片を含む試料は特に限定されないが、例えば、全血、血清、血漿、各種血球、血餅、血小板等の血液組成成分、尿、精液、母乳、汗、間質液、間質性リンパ液、骨髄液、組織液、唾液、胃液、関節液、胸水、胆汁、腹水、羊水等の体液、菌体液、細胞培養の培地、細胞培養上清、組織細胞の破砕液等の各種液体試料が挙げられる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。但し、実施例3、5、11、13、14及び17は参考例である。
【0067】
(実施例1)
(1)448gの純水にポリビニルアルコール(クラレ社製 PVA-217)2.69gを添加し、加熱撹拌することでポリビニルアルコールを溶解させ、水溶液Sを調製した。
一方、ジビニルベンゼン(和光純薬工業製)2.97g及びグリシジルメタクリレート(三菱ガス化学社製)11.9gからなる単量体組成物を、2-オクタノン23.4gに溶解させ、単量体溶液を調製した。
次いで、前記水溶液Sを、セパラブルフラスコ内に全量投入し、温度計、撹拌翼及び冷却管を装着して、温水バスにセットし、窒素雰囲気下で撹拌を開始した。セパラブルフラスコ内に前記単量体溶液を全量投入して、温水バスにより加温し内温が85℃に到達したところで2,2’-アゾイソブチロニトリル(和光純薬工業社製)1.38gを添加し、内温を86℃にした。
【0068】
(2)その後、86℃に温度を維持したまま、1時間撹拌を行った。次いで、反応液を冷却した後、斯かる反応液をろ過し、純水とエタノールで洗浄した。
(3)次に、洗浄後の粒子を、篩目開き32μm及び篩目開き75μmの試験篩にて湿式分級した。この分級後の多孔質粒子を多孔質粒子(P1)ともいう。
【0069】
(4)次に、イムノグロブリン結合タンパク質PrAtを取得した。なお、イムノグロブリン結合タンパク質PrAtは、プロテインAのCドメイン(配列番号1)のA1V/G29A変異体(配列番号4)がペプチド結合によって直列に連結したホモテトラマーからなるイムノグロブリン結合タンパク質(ドメイン数:4個)である。
イムノグロブリン結合タンパク質PrAtの発現と精製は以下のようにして行った。すなわち、PrAtをコードするプラスミドを用いて大腸菌BL21(DE3)(NEW ENGLAND BIOLABS社製)を形質転換し、得られた形質転換体を富栄養培地中37℃で対数増殖期まで培養した。その後、培地にイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(和光純薬工業社製)を終濃度1mMで添加して、さらに37℃で4時間培養することにより、目的タンパク質を発現させた。続いて培養液を遠心分離して上清を除き、得られた菌体に、卵白由来リゾチーム(和光純薬工業社製)及びポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(和光純薬工業社製)を含むpH9.5の30mMトリス緩衝液を添加して菌体を破砕した。得られた細胞破砕液から、陽イオン交換クロマトグラフィー(SP-セファロースFF、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)及び陰イオン交換クロマトグラフィー(Q-セファロースFF、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)によって、組み換え型イムノグロブリン結合タンパク質を精製した。精製したイムノグロブリン結合タンパク質を、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)に対して透析した。SDS-PAGEによって組み換え型イムノグロブリン結合タンパク質の純度を確認したところ、95%以上であった。
【0070】
(5)次いで、1.1M硫酸ナトリウムを含む0.1M炭酸緩衝液(pH8.8)450μLに、上記(4)で得たイムノグロブリン結合タンパク質PrAtを1.16mg溶解させ、これを上記(3)で得た多孔質粒子(P1)8mgに加え、混合液を25℃で5時間振とうすることで、イムノグロブリン結合タンパク質PrAtを多孔質粒子(P1)に結合させた。粒子に残存するエポキシ基をチオグリセロールで開環させた後、0.5M NaOH及び0.1Mクエン酸バッファー(pH3.2)を用いて洗浄することで、アフィニティ担体を得た。
【0071】
(実施例2~7、19、比較例4、5)
各モノマー及び有機溶媒(多孔化剤)の仕込量を、表1、3、5に記載の量とした以外は、実施例1と同様にして、アフィニティ担体を得た。
【0072】
(調製例1 イムノグロブリン結合タンパク質(ドメイン数:2個)の調製)
イムノグロブリン結合タンパク質PrAdiを取得した。なお、イムノグロブリン結合タンパク質PrAdiは、プロテインAのCドメイン(配列番号1)のA1V/G29A変異体(配列番号4)がペプチド結合によって直列に連結したホモダイマーからなるイムノグロブリン結合タンパク質(ドメイン数:2個)である。
イムノグロブリン結合タンパク質PrAdiの発現と精製は、イムノグロブリン結合タンパク質PrAtの発現と精製と同様にして行った。SDS-PAGEによって確認された組み換え型イムノグロブリン結合タンパク質の純度は95%以上であった。
【0073】
(調製例2 イムノグロブリン結合タンパク質(ドメイン数:6個)の調製)
イムノグロブリン結合タンパク質PrAhを取得した。なお、イムノグロブリン結合タンパク質PrAhは、プロテインAのCドメイン(配列番号1)のA1V/G29A変異体(配列番号4)がペプチド結合によって直列に連結したホモヘキサマーからなるイムノグロブリン結合タンパク質(ドメイン数:6個)である。
イムノグロブリン結合タンパク質PrAhの発現と精製は、イムノグロブリン結合タンパク質PrAtの発現と精製と同様にして行った。SDS-PAGEによって確認された組み換え型イムノグロブリン結合タンパク質の純度は95%以上であった。
【0074】
(調製例3 イムノグロブリン結合タンパク質(ドメイン数:10個)の調製)
イムノグロブリン結合タンパク質PrAdeを取得した。なお、イムノグロブリン結合タンパク質PrAdeは、プロテインAのCドメイン(配列番号1)のA1V/G29A変異体(配列番号4)がペプチド結合によって直列に連結したホモデカマー(10量体)からなるイムノグロブリン結合タンパク質(ドメイン数:10個)である。
イムノグロブリン結合タンパク質PrAdeの発現と精製は、イムノグロブリン結合タンパク質PrAtの発現と精製と同様にして行った。SDS-PAGEによって確認された組み換え型イムノグロブリン結合タンパク質の純度は95%以上であった。
【0075】
(調製例4 イムノグロブリン結合タンパク質(ドメイン数:1個)の調製)
イムノグロブリン結合タンパク質PrAmを取得した。なお、イムノグロブリン結合タンパク質PrAmは、プロテインAのCドメイン(配列番号1)のA1V/G29A変異体(配列番号4)を1個含むイムノグロブリン結合タンパク質(ドメイン数:1個)である。
イムノグロブリン結合タンパク質PrAmの発現と精製は、イムノグロブリン結合タンパク質PrAtの発現と精製と同様にして行った。SDS-PAGEによって確認された組み換え型イムノグロブリン結合タンパク質の純度は95%以上であった。
【0076】
(調製例5 イムノグロブリン結合タンパク質(ドメイン数:12個)の調製)
イムノグロブリン結合タンパク質PrAddを取得した。なお、イムノグロブリン結合タンパク質PrAddは、プロテインAのCドメイン(配列番号1)のA1V/G29A変異体(配列番号4)がペプチド結合によって直列に連結したホモドデカマー(12量体)からなるイムノグロブリン結合タンパク質(ドメイン数:12個)である。
イムノグロブリン結合タンパク質PrAddの発現と精製は、イムノグロブリン結合タンパク質PrAtの発現と精製と同様にして行った。SDS-PAGEによって確認された組み換え型イムノグロブリン結合タンパク質の純度は95%以上であった。
【0077】
(実施例8~18、20、比較例1~3、6~8)
各モノマー及び有機溶媒(多孔化剤)の仕込量を、表2、3及び5に記載の量とし、且つイムノグロブリン結合タンパク質PrAtを、A1V/G29A変異体ドメイン数が表2、3及び5に記載の数であるイムノグロブリン結合タンパク質(イムノグロブリン結合タンパク質PrAdi、PrAh、PrAde、PrAm又はPrAdd)に変更した以外は、実施例1と同様にして、アフィニティ担体を得た。
【0078】
(実施例21)
アガロース(株式会社日本ジーン社製Agarose H)24g及び精製水400gをバッフル付きセパラブルフラスコに投入し、温水バスにセットし95℃で2時間加熱することによりアガロース水溶液を調製した。
アガロース水溶液を60℃まで冷却した後、イソオクタン(和光純薬社製)440g及び界面活性剤(三洋化成社製S-80)24gを投入し撹拌することによってアガロース水溶液の懸濁液を調製した。その後、この懸濁液を2時間かけて25℃まで冷却し、その後4時間保持した。
次に、水-エタノール溶液にて粒子を洗浄後、水で回収した。この洗浄後の粒子を、篩目開き32μm及び篩目開き100μmの試験篩にて湿式分級し、32~100μmの間の粒子を水で回収し分級後粒子を得た。
次いで、分級後粒子の50%(v/v)スラリー100mLに硫酸ナトリウム50gを加え、さらに50%(w/v)水酸化ナトリウム溶液(和光純薬社製)及びエピクロロヒドリン(和光純薬社製)をそれぞれ10mL投入し、45℃で8時間反応させることにより、アガロースにエポキシ基を導入した。
その後、実施例1の(3)で得た多孔質粒子(P1)を、上記で得たエポキシ基導入アガロース粒子に変更する以外は、実施例1の(5)と同様の操作を行うことでイムノグロブリン結合タンパク質PrAtを結合させ、アフィニティ担体を得た。
【0079】
(実施例22)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(Aldrich社製)60g及びセルロース粉末(フナコシ株式会社製)3.5gを、バッフル付きセパラブルフラスコに投入し、温水バスにセットし95℃に加熱し、2時間撹拌を行うことで、セルロース溶液を得た。
別のセパラブルフラスコ内で、トルエン(和光純薬工業社製)200mLにエチルセルロース45(平均分子量150000)(和光純薬工業社製)16gを加え、温水バスにセットし80℃で2時間撹拌を行い溶解させた。この溶液を「エチルセルロース45含有溶液X」とも称する。
さらに別のセパラブルフラスコ内で、トルエン150mLにエチルセルロース45を12g加え、温水バスにセットし80℃で2時間撹拌を行い溶解させた後、0.2M硫酸ナトリウム水溶液62.5mLを加え、30分間撹拌を行うことでW/O型エマルジョンを得た。
次に、エチルセルロース45含有溶液Xを、上記セルロース溶液に加えて、400rpm、90℃で10分間撹拌し、セルロース溶液の液滴分散液(IL/O型エマルジョン(ここで、ILはイオン液体))を調製した後、上記で得られたW/O型エマルジョンを加えて、400rpmで撹拌しながら25℃に冷却し、3時間保持した。その後、エタノール1500mL中に注ぎ、撹拌後静置しデカンテーションにより上澄み液を除去した。
その後、水とエタノールで濾過洗浄を行い、セルロース粒子を得た。この洗浄後の粒子を、篩目開き32μm及び篩目開き100μmの試験篩にて湿式分級し、32~100μmの間の粒子を水で回収し分級後粒子を得た。
分級後のセルロース粒子に、実施例21と同様の手法でエポキシ基導入を行うことで、エポキシ基導入セルロース粒子を得た。
その後、実施例1の(3)で得た多孔質粒子(P1)を、上記で得たエポキシ基導入セルロース粒子に変更する以外は、実施例1の(5)と同様の操作を行うことでイムノグロブリン結合タンパク質PrAtを結合させ、アフィニティ担体を得た。
【0080】
(実施例23)
360gの純水にポリビニルアルコール2.15gを添加し、加熱撹拌することでポリビニルアルコールを溶解させ、水溶液S2を調製した。
一方、グリシジルメタクリレート(三菱ガス化学社製)4.56g及びエチレンジメタクリレート(東京化成社製)6.84gからなる単量体組成物を、2-オクタノン(東洋合成社製)12.3gに溶解させ、単量体溶液を調製した。
次いで、上記水溶液S2を、セパラブルフラスコ内に全量投入し、温度計、攪拌翼及び冷却管を装着して、温水バスにセットし、窒素雰囲気下で撹拌を開始した。セパラブルフラスコ内に上記単量体溶液を全量投入して、温水バスにより加温し内温が85℃に到達したところで2,2’-アゾイソブチロニトリル(和光純薬工業社製)0.65gを添加し、86℃に温度を維持しながら2時間撹拌を行った。
その後、純水とエタノールで多孔質粒子を洗浄した。この洗浄後の粒子を、篩目開き32μm及び篩目開き100μmの試験篩にて湿式分級し、32~100μmの間の粒子を水で回収し分級後粒子を得た。
その後、実施例1の(3)で得た多孔質粒子(P1)を、上記で得た分級後粒子に変更する以外は、実施例1の(5)と同様の操作を行うことでイムノグロブリン結合タンパク質PrAtを結合させ、アフィニティ担体を得た。
【0081】
(実施例24~26)
イムノグロブリン結合タンパク質PrAtを、調製例2で取得したイムノグロブリン結合タンパク質PrAhに変更した以外は、実施例21~23と同様にして、アフィニティ担体を得た。
【0082】
試験例1 (空孔率及び平均細孔径の測定)
20mMリン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウム水溶液を用いて、各実施例及び比較例で得られたアフィニティ担体4mL(5mmφ×200mm長)をカラム容器に充填した。500mM 塩化ナトリウム水溶液、プルランのスタンダードサンプル(昭和電工社製P-82)を含有する20mMリン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウム水溶液、及びデキストラン(分子量:5,000,000~40,000,000(和光純薬社製))を含有する20mMリン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウム水溶液それぞれをカラムに50μLずつ打ち込み、溶出体積を記録した。カラム容積からデキストランの溶出体積(粒子空隙容積)を引いた値を「粒子容積」とし、塩化ナトリウムの溶出体積からデキストランの溶出体積を引いた値を「細孔容積」とした。得られた細孔容積を粒子容積で割った値を「湿潤状態での空孔率」として算出した。湿潤状態での空孔率を表1~5に示す。
さらに湿潤状態での平均細孔径を、“Hagel,et.al,Journal of Chromatography A,Vol.743(1996)32-42”に記載の方法で算出した。すなわち、プルランの分子サイズと分配係数Kdのプロットを作成し、近似直線を引き、Kd=ε(1-分子サイズ/平均ポアサイズ)^(1/2)が成り立つことから、切片と傾きから平均細孔径を算出した。湿潤状態での平均細孔径を表1~5に示す。なお、分配係数Kdは、Kd=(プルランの溶出体積-デキストランの溶出体積)/(塩化ナトリウムの溶出体積-デキストランの溶出体積)で表される値である。
【0083】
試験例2 (平均粒子径の測定)
各実施例及び比較例で得られたアフィニティ担体の体積平均粒子径を、JIS Z 8825(2013)に従って、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製 LS13320)により測定した。なお、溶媒(水)の屈折率は1.333に、粒子(アフィニティ担体)の屈折率は1.50に、それぞれ設定した。
結果を表1~5に示す。なお、表中の数値は、小数点以下を四捨五入した値である。
【0084】
試験例3 (見掛密度の測定)
実施例1で得られたアフィニティ担体を水に分散させ、スラリーを得た。このスラリーをメスシリンダーに測りとった後、24時間以上静置することにより、メスシリンダー内で担体を完全に沈降させた。沈降した粒子層の容積をメスシリンダー内で読み取り、アフィニティ担体の湿潤状態での見掛密度を下記式により算出した。
(メスシリンダー内に投入したスラリー重量×スラリー中の固形分濃度[質量%](Total solid content))/沈降した粒子層の容積 × 100
なお、スラリーの固形分濃度は、アルミカップにスラリーを秤量した後、アルミカップを200℃で10分間加熱することで水を除去し、残った固形分の重量から算出した。
また、実施例2~7のアフィニティ担体の湿潤状態での見掛密度についても、上記と同様にして測定した。
その結果、実施例1の担体の湿潤状態での見掛密度は182g/L、実施例2の担体の湿潤状態での見掛密度は152g/L、実施例3の担体の湿潤状態での見掛密度は145g/L、実施例4の担体の湿潤状態での見掛密度は180g/L、実施例5の担体の湿潤状態での見掛密度は155g/L、実施例6の担体の湿潤状態での見掛密度は135g/L、実施例7の担体の湿潤状態での見掛密度は130g/Lであった。
【0085】
試験例4 (DBCの測定)
GEヘルスケア社製AKTAprime plusを用いて、線流速300cm/hrにおけるタンパク質(ヒトIgG抗体、Equitech Bio社製 HGG-1000)に対する実施例及び比較例の各アフィニティ担体のDBCを測定した。カラム容器は容量4mL(5mmφ×200mm長)のものを、タンパク質は20mMリン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウム水溶液(pH7.5)にタンパク質を5mg/mL溶解したものをそれぞれ使用し、溶出先端10%ブレークスルーのときのタンパク質捕捉量とカラム充填体積からDBCを求め、以下の基準で評価した。結果を表1~5に示す。
【0086】
(DBCの評価基準)
AAA:65mg/mL以上
AA :60mg/mL以上65mg/mL未満
A :53mg/mL以上60mg/mL未満
B :50mg/mL以上53mg/mL未満
C :50mg/mL未満
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
表中の記号は、それぞれ以下を示す。
GMA:グリシジルメタクリレート
DVB:ジビニルベンゼン
MHK:2-オクタノン
AcPh:アセトフェノン
GMA+EDMA:グリシジルメタクリレートとエチレンジメタクリレートとの重合体
【配列表】