IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-媒体給送装置、画像読取装置 図1
  • 特許-媒体給送装置、画像読取装置 図2
  • 特許-媒体給送装置、画像読取装置 図3
  • 特許-媒体給送装置、画像読取装置 図4
  • 特許-媒体給送装置、画像読取装置 図5
  • 特許-媒体給送装置、画像読取装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】媒体給送装置、画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20240220BHJP
   B65H 7/18 20060101ALI20240220BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240220BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B65H3/06 350A
B65H7/18
G03G15/00 107
H04N1/00 567Q
H04N1/00 567K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019231087
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021098582
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】宮城 洋平
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-069491(JP,A)
【文献】特開2008-019069(JP,A)
【文献】特開2000-159370(JP,A)
【文献】特開2019-104591(JP,A)
【文献】特開平05-132194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00- 3/68
B65H 7/00- 7/20
B65H 43/00-43/08
G03G 15/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給送前の複数の媒体を載置する媒体載置部と、
前記媒体載置部に載置された複数の媒体のうち最も下に位置する媒体と対向する位置に設けられ、媒体に対し送り力を付与する送り出しローラーと、
媒体を前記送り出しローラーに向けて押圧する媒体押圧部と、
前記媒体押圧部が媒体を前記送り出しローラーに向けて押圧する押圧力を調整する押圧力調整手段と、
媒体給送方向において前記送り出しローラーの下流に位置し、前記送り出しローラーにより送り出された媒体を前記媒体給送方向の下流に送る給送ローラーと、
前記給送ローラーとの間で媒体をニップして媒体の分離を促す分離ローラーと、
前記媒体給送方向において前記給送ローラーの上流に位置し、媒体の通過を検出する第1検出部と、
前記媒体給送方向において前記給送ローラーの下流に位置し、媒体の通過を検出する第2検出部と、
前記第1検出部の検出情報及び前記第2検出部の検出情報、並びに予め定められた第1設定時間、予め定められた第2設定時間、及び予め定められた第3設定時間に基づき媒体の給送を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
媒体の給送開始指示を受けると、前記媒体押圧部の前記押圧力を第1押圧力にして前記送り出しローラー及び前記給送ローラーの正転駆動を行い、
前記媒体押圧部の前記押圧力を前記第1押圧力にして前記送り出しローラーの正転駆動を開始してから、前記第2設定時間が経過しても前記第1検出部により媒体先端の通過を検出しない場合、前記媒体押圧部の前記押圧力を前記第1押圧力より大きい第3押圧力にして、前記送り出しローラーの回転を継続し、
前記媒体押圧部の前記押圧力を前記第3押圧力にした後、前記第3設定時間が経過するまでに前記第1検出部により媒体先端の通過を検出した場合、前記押圧力を前記第3押圧力から前記第1押圧力に切り換え、
前記第3設定時間が経過しても前記第1検出部により媒体先端の通過を検出しなかった場合、前記送り出しローラー及び前記給送ローラーを停止してアラートを発出し、
前記第1検出部により媒体先端の通過を検出した後、前記第1設定時間が経過しても前記第2検出部により媒体先端の通過を検出しない場合、前記媒体押圧部の前記押圧力が前記第1押圧力以上の第2押圧力の状態で、前記送り出しローラーと前記給送ローラーの回転を継続する、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項2】
請求項に記載の媒体給送装置において、前記分離ローラーと前記給送ローラーとの間で媒体をニップするニップ力を調整するニップ力調整手段を備え、
前記制御部は、前記第1検出部により媒体先端の通過を検出した後、前記第1設定時間が経過しても前記第2検出部により媒体先端の通過を検出しない場合、前記ニップ力を、媒体の送り出しを開始した際の第1ニップ力よりも大きい第2ニップ力の状態にして、前記送り出しローラーと前記給送ローラーの回転を継続する、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の媒体給送装置において、
前記媒体載置部の傾斜角を調整する傾斜角調整手段を備え、
前記制御部は、
媒体の給送開始指示を受けると、前記媒体載置部の前記傾斜角を第1傾斜角にして前記送り出しローラー及び前記給送ローラーの正転駆動を行い、
次いで前記第1検出部により媒体先端の通過を検出した後、前記第1設定時間が経過しても前記第2検出部により媒体先端の通過を検出しない場合、前記媒体載置部の前記傾斜角を前記第1傾斜角より大きい第2傾斜角にした状態で、前記送り出しローラーと前記給送ローラーの回転を継続する、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項4】
媒体の面を読み取る読み取り手段と、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の前記媒体給送装置と、
を備えた画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を給送する媒体給送装置、およびこれを備えた画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置の一例であるスキャナーや記録装置の一例であるプリンターでは、媒体を分離する分離ローラーと、媒体送り方向に回転する給紙ローラーとで媒体をニップして分離する方式が採用される場合がある。また特許文献1に示される様に、給紙ローラー及び分離ローラーの上流にピックローラーを設けるとともに、媒体をピックローラーに向けて押圧する押圧部を設け、ピックローラーによって媒体を給紙ローラーと分離ローラーに向けて送り出す構造が採用される場合もある。尚、特許文献1では、分離ローラーはリタードローラーと称されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-016484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の原稿搬送装置では、給紙ローラーの上流に設けられた第1検出部により媒体を検出すると、押圧部による押圧力を低減させ、且つ、ピックローラーの回転速度を下げる。その後、所定時間経過しても、給紙ローラーの下流に設けられた第2検出部により媒体を検出しない場合には、ジャムが発生したと判断する。
上記の様に、給紙ローラーの上流に設けられた第1検出部により媒体を検出すると、押圧部による押圧力を低減させ、且つ、ピックローラーの回転速度を下げるので、その時点でピックローラーによる送り力は弱まる。従って特に多数枚の媒体が載置されている場合の様に送り出される媒体に作用するバックテンションが大きいと、ピックローラーによる送り力が弱まった時点で媒体が停止してしまい、給紙ローラーに到達できずにジャムと判断される虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明の媒体給送装置は、給送前の複数の媒体を載置する媒体載置部と、前記媒体載置部に載置された複数の媒体のうち最も下に位置する媒体と対向する位置に設けられ、媒体に対し送り力を付与する送り出しローラーと、媒体を前記送り出しローラーに向けて押圧する媒体押圧部と、前記媒体押圧部が媒体を前記送り出しローラーに向けて押圧する押圧力を調整する押圧力調整手段と、媒体給送方向において前記送り出しローラーの下流に位置し、前記送り出しローラーにより送り出された媒体を前記媒体給送方向の下流に送る給送ローラーと、前記給送ローラーとの間で媒体をニップして媒体の分離を促す分離ローラーと、前記媒体給送方向において前記給送ローラーの上流に位置し、媒体の通過を検出する第1検出部と、前記媒体給送方向において前記給送ローラーの下流に位置し、媒体の通過を検出する第2検出部と、前記第1検出部及び前記第2検出部の検出情報に基づき媒体の給送を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記媒体押圧部の前記押圧力を第1押圧力にして前記送り出しローラー及び前記給送ローラーの正転駆動を行い、次いで前記第1検出部により媒体先端の通過を検出した後、予め定めた第1設定時間が経過しても前記第2検出部により媒体先端の通過を検出しない場合、前記媒体押圧部の前記押圧力が前記第1押圧力以上の状態で、前記送り出しローラーと前記給送ローラーの回転を継続することを特徴とする。
【0006】
また上記課題を解決する為の、本発明の媒体給送装置は、給送前の複数の媒体を載置する媒体載置部と、前記媒体載置部の傾斜角を調整する傾斜角調整手段と、前記媒体載置部に載置された複数の媒体のうち最も下に位置する媒体と対向する位置に設けられ、媒体に対し送り力を付与する送り出しローラーと、媒体を前記送り出しローラーに向けて押圧する媒体押圧部と、媒体給送方向において前記送り出しローラーの下流に位置し、前記送り出しローラーにより送り出された媒体を前記媒体給送方向の下流に送る給送ローラーと、前記給送ローラーとの間で媒体をニップして媒体の分離を促す分離ローラーと、前記媒体給送方向において前記給送ローラーの上流に位置し、媒体の通過を検出する第1検出部と、前記媒体給送方向において前記給送ローラーの下流に位置し、媒体の通過を検出する第2検出部と、前記第1検出部及び前記第2検出部の検出情報に基づき媒体の給送を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記媒体載置部の前記傾斜角を第1傾斜角にして前記送り出しローラー及び前記給送ローラーの正転駆動を行い、次いで前記第1検出部により媒体先端の通過を検出した後、予め定めた第1設定時間が経過しても前記第2検出部により媒体先端の通過を検出しない場合、前記媒体載置部の前記傾斜角を前記第1傾斜角より大きい第2傾斜角にした状態で、前記送り出しローラーと前記給送ローラーの回転を継続することを特徴とする。
また本発明の画像読取装置は、媒体の面を読み取る読み取り手段と、前記媒体給送装置とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係るスキャナーの原稿送り経路の側面図。
図2】本発明に係るスキャナーの原稿送り経路の側面図。
図3】本発明に係るスキャナーの制御系統を示すブロック図。
図4】制御部が行う原稿給送制御の流れを示すフローチャート。
図5】制御部が行う原稿給送制御の流れを示すフローチャート。
図6】制御部が行う原稿給送制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る媒体給送装置は、給送前の複数の媒体を載置する媒体載置部と、前記媒体載置部に載置された複数の媒体のうち最も下に位置する媒体と対向する位置に設けられ、媒体に対し送り力を付与する送り出しローラーと、媒体を前記送り出しローラーに向けて押圧する媒体押圧部と、前記媒体押圧部が媒体を前記送り出しローラーに向けて押圧する押圧力を調整する押圧力調整手段と、媒体給送方向において前記送り出しローラーの下流に位置し、前記送り出しローラーにより送り出された媒体を前記媒体給送方向の下流に送る給送ローラーと、前記給送ローラーとの間で媒体をニップして媒体の分離を促す分離ローラーと、前記媒体給送方向において前記給送ローラーの上流に位置し、媒体の通過を検出する第1検出部と、前記媒体給送方向において前記給送ローラーの下流に位置し、媒体の通過を検出する第2検出部と、前記第1検出部及び前記第2検出部の検出情報に基づき媒体の給送を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記媒体押圧部の前記押圧力を第1押圧力にして前記送り出しローラー及び前記給送ローラーの正転駆動を行い、次いで前記第1検出部により媒体先端の通過を検出した後、予め定めた第1設定時間が経過しても前記第2検出部により媒体先端の通過を検出しない場合、前記媒体押圧部の前記押圧力が前記第1押圧力以上の状態で、前記送り出しローラーと前記給送ローラーの回転を継続することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、前記制御部は前記第1検出部により媒体先端の通過を検出した後、予め定めた第1設定時間が経過しても前記第2検出部により媒体先端の通過を検出しない場合、前記媒体押圧部の前記押圧力が前記第1押圧力以上の状態で、前記送り出しローラーと前記給送ローラーの回転を継続するので、前記送り出しローラーによる媒体の送り力の低下を回避でき、前記第2検出部による媒体検出位置に媒体先端が到達することが期待できる。
【0010】
第2の態様は、第1の態様において、前記制御部は、前記媒体押圧部の前記押圧力を前記第1押圧力にして前記送り出しローラーの正転駆動を開始してから、予め定めた第2設定時間が経過しても前記第1検出部により媒体先端の通過を検出しない場合、前記媒体押圧部の前記押圧力を前記第1押圧力より大きい第3押圧力にして、前記送り出しローラーの回転を継続することを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記制御部は、前記媒体押圧部の前記押圧力を前記第1押圧力にして前記送り出しローラーの正転駆動を開始してから、予め定めた第2設定時間が経過しても前記第1検出部により媒体先端の通過を検出しない場合、前記媒体押圧部の前記押圧力を前記第1押圧力より大きい第3押圧力にして、前記送り出しローラーの回転を継続するので、前記送り出しローラーによる媒体の送り力を上げることで、前記第1検出部による媒体検出位置に媒体先端が到達することが期待できる。
【0012】
第3の態様は、第2の態様において、前記制御部は、前記媒体押圧部の前記押圧力を前記第3押圧力にした後、予め設定した第3設定時間が経過するまでに前記第1検出部により媒体先端の通過を検出した場合、前記押圧力を前記第3押圧力から前記第1押圧力に切り換え、前記第3設定時間が経過しても前記第1検出部により媒体先端の通過を検出しなかった場合、前記送り出しローラー及び前記給送ローラーを停止してアラートを発出することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記制御部は、前記媒体押圧部の前記押圧力を前記第3押圧力にした後、予め設定した第3設定時間が経過するまでに前記第1検出部により媒体先端の通過を検出した場合、前記押圧力を前記第3押圧力から前記第1押圧力に切り換えるので、前記押圧力が過剰となって媒体の重送を招くことを抑制できる。
【0014】
第4の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、前記分離ローラーと前記給送ローラーとの間で媒体をニップするニップ力を調整するニップ力調整手段を備え、前記制御部は、前記第1検出部により媒体先端の通過を検出した後、前記第1設定時間が経過しても前記第2検出部により媒体先端の通過を検出しない場合、前記ニップ力を、媒体の送り出しを開始した際の第1ニップ力よりも大きい第2ニップ力の状態にして、前記送り出しローラーと前記給送ローラーの回転を継続することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記制御部は、前記第1検出部により媒体先端の通過を検出した後、前記第1設定時間が経過しても前記第2検出部により媒体先端の通過を検出しない場合、前記ニップ力を、媒体の送り出しを開始した際の第1ニップ力よりも大きい第2ニップ力の状態にして、前記送り出しローラーと前記給送ローラーの回転を継続するので、前記分離ローラーと前記給送ローラーとによる媒体の送り力を上げることで、前記第2検出部による媒体検出位置に媒体先端が到達することが期待できる。
【0016】
第5の態様は、給送前の複数の媒体を載置する媒体載置部と、前記媒体載置部の傾斜角を調整する傾斜角調整手段と、前記媒体載置部に載置された複数の媒体のうち最も下に位置する媒体と対向する位置に設けられ、媒体に対し送り力を付与する送り出しローラーと、媒体を前記送り出しローラーに向けて押圧する媒体押圧部と、媒体給送方向において前記送り出しローラーの下流に位置し、前記送り出しローラーにより送り出された媒体を前記媒体給送方向の下流に送る給送ローラーと、前記給送ローラーとの間で媒体をニップして媒体の分離を促す分離ローラーと、前記媒体給送方向において前記給送ローラーの上流に位置し、媒体の通過を検出する第1検出部と、前記媒体給送方向において前記給送ローラーの下流に位置し、媒体の通過を検出する第2検出部と、前記第1検出部及び前記第2検出部の検出情報に基づき媒体の給送を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記媒体載置部の前記傾斜角を第1傾斜角にして前記送り出しローラー及び前記給送ローラーの正転駆動を行い、次いで前記第1検出部により媒体先端の通過を検出した後、予め定めた第1設定時間が経過しても前記第2検出部により媒体先端の通過を検出しない場合、前記媒体載置部の前記傾斜角を前記第1傾斜角より大きい第2傾斜角にした状態で、前記送り出しローラーと前記給送ローラーの回転を継続することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、前記制御部は、予め定めた第1設定時間が経過しても前記第2検出部により媒体先端の通過を検出しない場合、前記媒体載置部の前記傾斜角を前記第1傾斜角より大きい第2傾斜角にした状態で、前記送り出しローラーと前記給送ローラーの回転を継続するので、前記傾斜角を前記第2傾斜角とすることで媒体に作用する搬送負荷を低減でき、前記第2検出部による媒体検出位置に媒体先端が到達することが期待できる。
【0018】
第6の態様に係る画像読取装置は、媒体の面を読み取る読み取り手段と、第1から第5の態様のいずれかに係る媒体給送装置とを備えたことを特徴とする。
本態様によれば、画像読取装置において、上述した第1から第5の態様のいずれかの作用が得られる。
【0019】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では画像読取装置の一例として、媒体の一例である原稿の表面及び裏面のうち少なくとも一面を読み取り可能なスキャナー1を例に挙げる。スキャナー1は、読み取り手段に対して原稿を移動させつつ読み取りを行う、所謂ドキュメントスキャナーである。
【0020】
尚、各図において示すX-Y-Z座標系は、X軸方向が装置幅方向であり原稿幅方向でもある。Y軸方向は装置奥行き方向であり、水平方向に沿った方向である。Z軸方向は鉛直方向に沿った方向である。
以下では原稿が搬送されていく方向(+Y方向)を「下流」といい、これと反対の方向(-Y方向)を「上流」という場合がある。+Y方向が、原稿給送方向となる。
【0021】
図1においてスキャナー1は、略直線状の原稿送り経路を備えており、その最も上流に、複数枚の原稿を載置する原稿載置部5を備えている。
原稿載置部5による原稿載置領域には、給送モーター52(図3参照)により駆動される送り出しローラー13が設けられている。送り出しローラー13は、原稿載置部5に載置された複数枚の原稿のうち、最も下の原稿と対向する位置に設けられている。図1において符号P1は、原稿載置部5に載置された複数枚の原稿のうち、最も下の原稿を示しており、符号P1は、その上の原稿を示している。
【0022】
送り出しローラー13の上方には、原稿を送り出しローラー13に向けて押圧する原稿押圧部6が設けられている。原稿押圧部6は、原稿載置部5に載置された複数枚の原稿のうち最も上の原稿に接する図1の状態と、最も上の原稿から離間する状態(不図示)とを、不図示の切り換え機構によって切り換え可能となっている。この切り換え機構は、制御部50(図3参照)の制御のもと、通電状態と非通電状態とを切り換える不図示のソレノイドで構成できる。
【0023】
原稿押圧部6が原稿を送り出しローラー13に向けて押圧する状態で、送り出しローラー13が正転、即ち図1の反時計回り方向に回転することで、原稿載置部5に載置された複数枚の原稿のうち最も下の原稿P1が、送り出しローラー13から送り力を受け、下流に向けて送り出される。
【0024】
尚、原稿押圧部6は、押圧手段の一例である圧縮コイルばね8により送り出しローラー13に向けて押圧されている。圧縮コイルばね8の上部には回転可能な偏心カム9が設けられており、偏心カム9の位相によって圧縮コイルばね8のばね長さが変化し、これにより原稿押圧部6が原稿を押圧する押圧力を調整できる様に構成されている。尚、偏心カム9は制御部50(図3参照)により制御される不図示のモーターから動力を受けて回転する。このモーターと、偏心カム9と、圧縮コイルばね8は、原稿押圧部6が原稿を送り出しローラー13に向けて押圧する押圧力を調整する押圧力調整手段7を構成する。
【0025】
原稿押圧部6の下流には間口規制部10が設けられており、この間口規制部10により、後述する給送ローラー14と分離ローラー15とによる原稿ニップ位置に入り込む原稿の枚数が規制される。
原稿載置部5は、下流の先端部近傍に不図示の揺動軸を備えており、この揺動軸を中心に揺動することで、姿勢切り換え可能に構成されている。原稿載置部5の姿勢切り換えは、制御部50(図3参照)のもとで制御される不図示のモーターにより行われる。原稿載置部5は、通常時は図1に示す水平姿勢をとり、載置される原稿も水平姿勢をとっている。そして原稿載置部5は、必要に応じて図2に示す傾斜姿勢をとる。図2において角度θaは、載置される原稿の傾斜角度を示している。原稿載置部5の姿勢切り換えを行う為のモーターは、傾斜角調整手段40(図3参照)を構成する。
【0026】
送り出しローラー13の下流には、原稿を下流に向けて送る給送ローラー14と、給送ローラー14との間で原稿をニップして分離する分離ローラー15とが設けられている。
給送ローラー14には、給送モーター52(図3参照)からワンウェイクラッチ23を介して図1において反時計回り方向、即ち原稿を下流に送る方向のトルクが伝達される。
給送ローラー14にはワンウェイクラッチ23を介してトルクが伝達されるので、給送モーター52(図3参照)が逆回転しても、給送ローラー14は逆回転しない。また、給送モーター52が停止した状態においては、給送ローラー14は搬送される原稿と接して、正転方向に従動回転することができる。
【0027】
分離ローラー15には、分離モーター54(図3参照)から、トルクリミッター24を介して回転トルクが伝達される。分離モーター54からは、分離ローラー15に対して原稿を下流に送る正転方向(図3において時計回り方向)のトルク、または、原稿を上流に戻す逆転方向(図3において反時計回り方向)のトルクが伝達される。
【0028】
給送ローラー14と分離ローラー15との間に原稿が介在しない場合、或いは1枚のみ介在する場合、給送ローラー14が分離ローラー15を正転方向に回転させようとする回転トルクがトルクリミッター24のトルク上限値を越え、これによりトルクリミッター24において滑りが生じることにより、分離モーター54から受ける回転トルクに拘わらず分離ローラー15は正転方向に従動回転し、つまり空転する。
原稿の給送動作中、基本的に分離モーター54は逆回転しており、即ち分離ローラー15を逆回転させる様な駆動トルクを発生させている。
【0029】
次に、給送ローラー14と分離ローラー15との間に、給送されるべき原稿に加えて更に2枚目以降の原稿が入り込むと、原稿間で滑りが生じることにより、分離ローラー15は分離モーター54から受ける駆動トルクにより、逆回転する。これにより、重送されようとする2枚目以降の原稿が上流に戻され、即ち重送が防止される。従って重送が生じた場合に分離ローラー15による分離力を大きくする場合は、分離モーター54の逆転速度を高速にすることが好適である。
【0030】
分離ローラー15は、押圧手段の一例である圧縮コイルばね36により給送ローラー14に向けて押圧されている。圧縮コイルばね36の上部には回転可能な偏心カム37が設けられており、偏心カム37の位相によって圧縮コイルばね36のばね長さが変化し、これにより分離ローラー15と給送ローラー14との間で原稿をニップするニップ力を調整可能となっている。尚、偏心カム37は制御部50(図3参照)により制御される不図示のモーターから動力を受けて回転する。このモーターと、偏心カム37と、圧縮コイルばね36は、分離ローラー15と給送ローラー14との間で原稿をニップするニップ力を調整するニップ力調整手段35を構成する。
【0031】
以上説明した原稿載置部5、送り出しローラー13、原稿押圧部6、押圧力調整手段7、給送ローラー14、分離ローラー15、ニップ力調整手段35、のこれらは、原稿を給送する原稿給送装置2の一部である。また後述する制御部50、給送モーター52、分離モーター54、のこれらも原稿給送装置2の一部である。
原稿給送装置2は、別の観点では、スキャナー1から原稿読み取りに係る機能即ち後述する読取部20を省いた装置と捉えることもできる。従って原稿読み取りに係る機能を備えていても、原稿給送の観点に着目すれば、スキャナー1そのものが原稿給送装置と捉えることもできる。
【0032】
次に給送ローラー14及び分離ローラー15の下流には、搬送ローラー対16が設けられ、更にその下流には、原稿画像を読み取る読み取り手段としての読取部20が設けられ、更にその下流には、排出ローラー対17が設けられている。搬送ローラー対16は、搬送モーター53(図3参照)により駆動される搬送駆動ローラー16aと、従動回転する搬送従動ローラー16bとを備えて成る。
給送ローラー14及び分離ローラー15によりニップされて下流に給送された原稿は搬送ローラー対16にニップされて、搬送ローラー対16の下流に位置する上部センサーユニット20A及び下部センサーユニット20Bと対向する位置に搬送される。
【0033】
読取部20は、原稿送り経路に対して上に位置する上部センサーユニット20Aと、原稿送り経路に対して下に位置する下部センサーモユニット20Bと、を備えている。上部センサーユニット20A及び下部センサーユニット20Bは、密着型イメージセンサーモジュール(CISM)である。
原稿送り経路に対して上に位置する上部センサーユニット20Aにより、原稿の上面が読み取られ、原稿送り経路に対して下に位置する下部センサーユニット20Bにより、原稿の下面が読み取られる。
【0034】
読取部20において上面及び下面の少なくとも一方の面の画像を読み取られた原稿は、読取部20の下流に位置する排出ローラー対17にニップされて、排出口18から排出される。
排出ローラー対17は、搬送モーター53(図3参照)により回転駆動される排出駆動ローラー17aと、従動回転する排出従動ローラー17bとを備えて成る。
【0035】
続いて図3及び必要に応じて図1を参照しつつスキャナー1における制御系統について説明する。
制御部50は原稿の給送、搬送、排出制御及び読み取り制御を含め、その他スキャナー1の各種制御を行う。制御部50には操作パネル51からの信号が入力され、また、操作パネル51の表示、特にユーザーインターフェース(UI)を実現する為の信号が制御部50から操作パネル51に送信される。
【0036】
操作パネル51は、本実施形態では表示と入力の双方が行える所謂タッチパネルであり、各種操作を行う為の操作部と、各種情報を表示する為の表示部とを兼ねる。
そして制御部50は、給送モーター52、搬送モーター53、分離モーター54、のこれらモーターを制御する。本実施形態では各モーターはDCモーターである。
制御部50には、読取部20からの読み取りデータが入力され、また、読取部20を制御する為の信号が制御部50から読取部20に送信される。
制御部50には、第1検出部26、第2検出部27、第3検出部28、重送検出部29、のこれら検出部からの信号も入力される。
また制御部50には、給送モーター52、搬送モーター53、分離モーター54、のこれらモーターに対しそれぞれ設けられたロータリーエンコーダー(不図示)の検出値も入力され、これにより制御部50は各モーターの回転量を把握できる。
【0037】
制御部50は、CPU55、フラッシュROM56、及びRAM57を備えている。CPU55はフラッシュROM56に格納されたプログラムに従って各種演算処理を行い、スキャナー1全体の動作を制御する。記憶手段の一例であるフラッシュROM56は読み出し及び書き込みが可能な不揮発性メモリであり、原稿の送り制御や読み取りに必要な各種制御プラグラム、パラメーター等が記憶されている。また操作パネル51を介してユーザーが入力した各種設定情報も、フラッシュROM56に記憶される。記憶手段の一例であるRAM57には、一時的に各種情報が格納される。
制御部50はインターフェース58を備えており、このインターフェース58を介して外部コンピューター90との通信が可能となっている。
【0038】
続いて、原稿送り経路に設けられた各検出部について主として図1を参照して説明する。
第1検出部26は給送ローラー14の上流に位置する検出部であり、より詳しくは原稿給送方向において送り出しローラー13と給送ローラー14との間であって給送ローラー14寄りに位置する検出部である。制御部50は、第1検出部26から受信する信号により、第1検出部26の配置位置での原稿先端及び原稿後端の通過を検出できる。
第2検出部27は、原稿給送方向において給送ローラー14の下流に位置する検出部であり、より詳しくは給送ローラー14と搬送ローラー対16との間であって給送ローラー14寄りに位置している。制御部50は、第2検出部27から受信する信号により、第2検出部27の配置位置での原稿先端及び原稿後端の通過を検出できる。
【0039】
第3検出部28は、原稿給送方向において搬送ローラー対16と読取部20との間に位置する検出部である。制御部50は、第3検出部28から受信する信号により、第3検出部28の配置位置での原稿先端及び原稿後端の通過を検出できる。
尚、第1検出部26、第2検出部27、第3検出部28、のこれら検出部は非接触式のセンサーで構成しても良いし、接触式のセンサーで構成しても良い。
【0040】
重送検出部29は、給送ローラー14と搬送ローラー対16との間に設けられた検出部であり、原稿送り経路を挟んで対向配置される超音波発信部及び超音波受信部を備えて成る。制御部50は、重送検出部29から送信される信号により、原稿の重送を検知できる。
【0041】
続いて主として図4以降を参照して原稿給送時に制御部50が行う制御について説明する。
図4において制御部50は、給送開始指示を受けると、原稿押圧部6による押圧力を第1押圧力に設定する(ステップS101)。また、分離ローラー15と給送ローラー14とにより原稿をニップする際のニップ力を第1ニップ力に設定する(ステップS102)。尚、以下では前記ニップ力を「分離ニップ力」と称する。
また原稿載置部5の傾斜角を第1傾斜角に設定する(ステップS103)。第1傾斜角は、本実施形態では0°であり、これにより原稿載置部5は水平姿勢をとる。
【0042】
次いで制御部50は、送り出しローラー13と給送ローラー14の正転駆動を開始し(ステップS104)、それと同時にタイムカウントTbのタイムカウントを開始する(ステップS105)。
そして制御部50は、第1検出部26の検出信号がOFF即ち原稿なし状態から、ON即ち原稿あり状態に変化するか否かを監視する(ステップS106)。その結果第1検出部26の検出信号がOFFからONに変化する前に、タイムカウントTbが予め定められた第2設定時間を超えた場合(ステップS110においてYes)、図5に示すフローチャートの位置B1に移る。第2設定時間は、予め実験的に求めることができ、正しく原稿が送られた場合の想定時間にある程度のマージンを加えた時間とすることができる。
【0043】
図5において制御部50は、先ず原稿押圧部6による押圧力を第1押圧力よりも大きい第3押圧力に設定する(ステップS201)。またこれとともに、原稿載置部5の傾斜角を、第1傾斜角より大きい第2傾斜角に設定する(ステップS202)。またこれとともに、タイムカウントTcのカウントを開始する(ステップS203)。そして制御部50は、送り出しローラー13の正転駆動を継続する。尚、ステップS201、S202の処理を行う際、送り出しローラー13の正転駆動は中断することなく行っていても良いし、或いは一時的に停止していても良い。
原稿押圧部6による押圧力を第1押圧力よりも大きい第3押圧力に設定することで、送り出しローラー13による原稿送り力を上げることができる。また、原稿載置部5の傾斜角を第1傾斜角より大きい第2傾斜角に設定することで、原稿載置部5に載置された原稿に作用する搬送負荷を低減できる。
以上により、第1検出部26による原稿検出位置に原稿先端が到達することが期待できる。
【0044】
次いで制御部50は、第1検出部26の検出信号がOFF即ち原稿なし状態から、ON即ち原稿あり状態に変化するか否かを監視する(ステップS204)。
その結果、第1検出部26の検出信号がOFFからONに変化する前に、タイムカウントTcが予め定められた第3設定時間を超えた場合(ステップS207においてYes)、制御部50は送り出しローラー13及び給送ローラー14の駆動を停止し(ステップS208)、操作パネル51に原稿が詰まった旨のアラートを発出させる。
【0045】
一方、タイムカウントTcが予め定められた第3設定時間を超える前に(ステップS207においてNo)、第1検出部26の検出信号がOFF即ち原稿なし状態から、ON即ち原稿あり状態に変化した場合は(ステップS204においてYes)、原稿押圧部6による押圧力を第1押圧力に戻す(ステップS205)。またこれとともに、原稿載置部5の傾斜角を、第2傾斜角から第1傾斜角に戻す(ステップS206)。そして図4に示すフローチャートの位置B2に移り、ステップS107からの処理を実行する。
この様に制御部50は、原稿押圧部6の押圧力を第3押圧力にした後、予め設定した第3設定時間が経過するまでに第1検出部26により原稿先端の通過を検出した場合、前記押圧力を第3押圧力から第1押圧力に戻すので、前記押圧力が過剰となって原稿の重送を招くことを抑制できる。また制御部50は、原稿載置部5の傾斜角を第2傾斜角にした後、予め設定した第3設定時間が経過するまでに第1検出部26により原稿先端の通過を検出した場合、前記傾斜角を第2傾斜角から第1傾斜角に戻すので、原稿の重送を抑制できる。
【0046】
図4に戻り、タイムカウントTbが予め定められた第2設定時間を超える前に(ステップS110においてNo)、第1検出部26の検出信号がOFF即ち原稿なし状態から、ON即ち原稿あり状態に変化した場合(ステップS106においてYes)、または図5のステップS206の処理から戻ってきた場合には、タイムカウントTaのカウントを開始する(ステップS107)。
【0047】
そして制御部50は、第2検出部27の検出信号がOFF即ち原稿なし状態から、ON即ち原稿あり状態に変化するか否かを監視する(ステップS108)。その結果第2検出部27の検出信号がOFFからONに変化する前に、タイムカウントTaが予め定められた第1設定時間を超えた場合(ステップS111においてYes)、図6に示すフローチャートの位置A1に移る。第1設定時間は、予め実験的に求めることができ、正しく原稿が送られた場合の想定時間にある程度のマージンを加えた時間とすることができる。
【0048】
図6において制御部50は、先ず原稿押圧部6による押圧力を第1押圧力よりも大きい第2押圧力に設定する(ステップS301)。そしてまた分離ニップ力を第1ニップ力以上の第2ニップ力に設定する(ステップS302)。そしてまた原稿載置部5の傾斜角を、第1傾斜角より大きい第2傾斜角に設定する(ステップS303)。またこれらとともに、タイムカウントTdのカウントを開始する(ステップS304)。そして制御部50は、送り出しローラー13の正転駆動を継続する。尚、ステップS301、S302、S303の処理を行う際、送り出しローラー13の正転駆動は中断することなく行っていても良いし、或いは一時的に停止していても良い。
【0049】
原稿押圧部6による押圧力を第1押圧力以上の第2押圧力に設定することで、送り出しローラー13による原稿送り力の低下を回避できる。また分離ニップ力を第1ニップ力以上の第2ニップ力に設定することで、分離ローラー15と給送ローラー14とによる原稿送り力を上げることができる。また、原稿載置部5の傾斜角を第1傾斜角より大きい第2傾斜角に設定することで、原稿載置部5に載置された原稿に作用する搬送負荷を低減できる。
以上により、第2検出部27による原稿検出位置に原稿先端が到達することが期待できる。
ここで、第2押圧力は第1押圧力以上であれば良い。従って第2押圧力が、第1押圧力と同じであっても構わない。
また第2押圧力は、第3押圧力(図5においてステップS201)と同じであっても良く、或いは第3押圧力より小さくても良いし、或いは第3押圧力より大きくても良い。
【0050】
次いで制御部50は、第2検出部27の検出信号がOFF即ち原稿なし状態から、ON即ち原稿あり状態に変化するか否かを監視する(ステップS305)。
その結果、第2検出部27の検出信号がOFFからONに変化する前に、タイムカウントTdが予め定められた第4設定時間を超えた場合(ステップS309においてYes)、制御部50は送り出しローラー13及び給送ローラー14の駆動を停止し(ステップS310)、操作パネル51に原稿が詰まった旨のアラートを発出させる。
【0051】
一方、タイムカウントTdが予め定められた第4設定時間を超える前に(ステップS309においてNo)、第2検出部27の検出信号がOFF即ち原稿なし状態から、ON即ち原稿あり状態に変化した場合は(ステップS305においてYes)、原稿押圧部6による原稿押圧を解除する(ステップS306)。またこれと同時に、分離ニップ力を第1ニップ力に戻す(ステップS307)。またこれと同時に、原稿載置部5の傾斜角を、第1傾斜角に戻す(ステップS308)。
この様に制御部50は、原稿押圧部6の押圧力を第2押圧力にした後、予め設定した第4設定時間が経過するまでに第2検出部27により原稿先端の通過を検出した場合、原稿押圧部6による原稿の押圧を解除するので、原稿の重送を抑制できる。また制御部50は、原稿載置部5の傾斜角を第2傾斜角にした後、予め設定した第4設定時間が経過するまでに第2検出部27により原稿先端の通過を検出した場合、前記傾斜角を第2傾斜角から第1傾斜角に戻すので、原稿の重送を抑制できる。
そして図4に示すフローチャートの位置A2に移り、ステップS109からの処理を実行する。
【0052】
図4に戻り、タイムカウントTaが予め定められた第1設定時間を超える前に(ステップS111においてNo)、第2検出部27の検出信号がOFF即ち原稿なし状態から、ON即ち原稿あり状態に変化した場合(ステップS108においてYes)、または図6のステップS308の処理から戻ってきた場合には、以降の給送動作を継続する(ステップS109)。
【0053】
尚、第3検出部28の検出信号がOFF即ち原稿なし状態から、ON即ち原稿あり状態に変化する前に、重送検出部29が原稿の重送を検出した場合、制御部50は、給送ローラー14、分離ローラー15、送り出しローラー13、のこれらを所定量逆転駆動し、重送原稿を上流へ戻す様に試みても良い。
重送原稿の上流への戻し動作については、間口規制部10を給送方向に沿って変位可能に設けた上で、間口規制部10を上流に変位させる様にしても良い。これにより、重送原稿をより効果的に上流に戻すことができる。間口規制部10を動作させる機構としては、モーターと、このモーターにより駆動されるラックピニオン機構とで構成することができる。
【0054】
本発明は上記において説明した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
例えば、本実施形態では図3に示す様に押圧力調整手段7、ニップ力調整手段35、傾斜角調整手段40、のこれら3つの調整手段を備えているが、押圧力調整手段7及び傾斜角調整手段40の少なくともいずれか一つを備えていれば良い。
そして図5において示すステップS201とステップS202の処理は、いずれか一方のみを行っても良い。またそれに応じて、ステップS205とステップS206の処理を適宜省略できる。
また図6において示すステップS301、S302、S303の処理は、ステップS301及びステップS303のいずれか一方のみを行っても良いし、またステップS302の処理を省略しても良い。またそれに応じて、ステップS306、S307、S308の処理を適宜省略できる。
【0055】
また図4のステップS106においてYesの場合、つまり第1検出部26により原稿先端を検出した後に、原稿押圧部6の押圧力を、第1押圧力よりも小さい押圧力に切り換えて、第2検出部27の検出信号の監視(ステップS108)を行う様にしても良い。
また上述した実施形態では、分離ローラー15と給送ローラー14とにより原稿をニップする際のニップ力を上げることで、分離ローラー15と給送ローラー14とによる原稿送り力を上げたが、これに代えて、或いはこれに加えて、給送ローラー14の回転速度を高速にして原稿送り力を上げることも好適である。
また上述した実施形態では原稿載置部5の傾斜角を増やすことで原稿の不送りの解消を促すが、これに代えて、或いはこれに加えて、送り出しローラー13の原稿載置部5からの突出量を調整可能に構成した上で、前記突出量を増やすことも好適である。
【符号の説明】
【0056】
1…スキャナー、2…原稿給送装置、5…原稿載置部、6…原稿押圧部、7…押圧力調整手段、8…圧縮コイルばね、9…偏心カム、10…間口規制部、13…送り出しローラー、
14…給送ローラー、15…分離ローラー、16…搬送ローラー対、16a…搬送駆動ローラー、16b…搬送従動ローラー、17…排出ローラー対、17a…排出駆動ローラー、17b…排出従動ローラー、18…排出口、19…前面カバー、20…読取部、20A…上部センサーユニット、20B…下部センサーユニット、23…ワンウェイクラッチ、24…トルクリミッター、26…第1検出部、27…第2検出部、28…第3検出部、29…重送検出部、35…ニップ力調整手段、36…圧縮コイルばね、37…偏心カム、40…傾斜角調整手段、50…制御部、51…操作パネル、52…給送モーター、53…搬送モーター、54…分離モーター、55…CPU、56…フラッシュROM、57…RAM、58…インターフェース、90…外部コンピューター
図1
図2
図3
図4
図5
図6