IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士ゼロックス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-造形装置 図1
  • 特許-造形装置 図2
  • 特許-造形装置 図3
  • 特許-造形装置 図4
  • 特許-造形装置 図5
  • 特許-造形装置 図6
  • 特許-造形装置 図7
  • 特許-造形装置 図8
  • 特許-造形装置 図9
  • 特許-造形装置 図10
  • 特許-造形装置 図11
  • 特許-造形装置 図12
  • 特許-造形装置 図13
  • 特許-造形装置 図14
  • 特許-造形装置 図15
  • 特許-造形装置 図16
  • 特許-造形装置 図17
  • 特許-造形装置 図18
  • 特許-造形装置 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/321 20170101AFI20240220BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20240220BHJP
   B29C 64/218 20170101ALI20240220BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20240220BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240220BHJP
   B33Y 40/10 20200101ALI20240220BHJP
【FI】
B29C64/321
B29C64/118
B29C64/218
B29C64/295
B33Y30/00
B33Y40/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019237382
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104635
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝田 修弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 太一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 渡
(72)【発明者】
【氏名】中山 大輔
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-071213(JP,A)
【文献】特開2017-185788(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0129171(US,A1)
【文献】特表2019-510882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/321
B29C 64/118
B33Y 30/00
B33Y 40/00
B29C 64/218
B29C 64/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形物が造形される造形面を有した造形台と、
線状の造形材を前記造形面に向けて搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記造形材を加熱する加熱部と、
前記造形台に対して相対移動し、前記加熱部によって加熱された前記造形材を前記造形面に加圧して前記造形材の層を複数重ねる加圧部と、
前記造形材の搬送方向において前記加熱部と前記加圧部との間に配置され、前記加熱部から前記加圧部へ搬送される前記造形材の位置を規制する規制部と、を備え、
前記規制部は、前記加圧と共に前記造形台に対して相対移動し、
前記規制部は、前記造形面に沿うと共に前記相対移動する方向に対して直交する直交方向における前記造形材の位置を規制する造形装置。
【請求項2】
前記搬送部は、複数本の前記造形材を前記造形面に向けて搬送する請求項1に記載の造形装置。
【請求項3】
前記規制部は、前記直交方向で前記造形材と接触して位置を規制する接触部と、前記造形材が前記接触部と接触するように、前記造形材を案内する案内部とを有する請求項1又は2に記載の造形装置。
【請求項4】
前記接触部及び前記案内部には、離型性を有する離型処理が施されている請求項3に記載の造形装置。
【請求項5】
前記規制部は、前記造形面に直交する他の直交方向における前記造形材の位置を規制する請求項1~4の何れか1項に記載の造形装置。
【請求項6】
前記規制部は、前記他の直交方向で前記造形材と接触する他の接触部と、前記造形材が前記他の接触部と接触するように、前記造形材を案内する他の案内部とを有する請求項5に記載の造形装置。
【請求項7】
前記他の接触部及び前記他の案内部には、離型性を有する離型処理が施されている請求項6に記載の造形装置。
【請求項8】
前記加圧部は、前記造形面に沿うと共に前記相対移動する方向に対して直交する方向を軸方向として回転する断面円状で、前記造形材と接触して前記造形材を前記造形面に加圧するローラ部を有し、
前記規制部は、板状で、前記ローラ部の回転軸方向から見て、前記ローラ部の外形に沿った湾曲状とされた湾曲部を有し、前記湾曲部に前記造形材の位置を規制する形状が形成されている請求項1~7の何れか1項に記載の造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フィラメント(線状の造形材)を積層させることで造形物を製造する造形装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第10052813号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の造形装置は、搬送される線状の造形材を加熱する加熱部と、加熱部によって加熱された造形材を造形面に加圧する加圧部とを備えている。この造形装置では、造形材が搬送される搬送経路において、加熱部と加圧部との間には、他の部材が配置されておらず、造形材が加熱部から加圧部へ直接渡される。このため、造形材に巻き癖等がついている場合に、加圧部へ渡されたときの造形材の位置が、ばらついてしまう。
【0005】
本発明の課題は、造形材が加熱部から加圧部へ直接渡される場合と比して、加圧部に渡されたときの造形材の位置が、ばらつくのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る造形装置は、造形物が造形される造形面を有した造形台と、線状の造形材を前記造形面に向けて搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送される前記造形材を加熱する加熱部と、前記造形台に対して相対移動し、前記加熱部によって加熱された前記造形材を前記造形面に加圧して前記造形材の層を複数重ねる加圧部と、前記造形材の搬送方向において前記加熱部と前記加圧部との間に配置され、前記加熱部から前記加圧部へ搬送される前記造形材の位置を規制する規制部とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2態様に係る造形装置は、第1態様に記載の造形装置において、前記搬送部は、複数本の前記造形材を前記造形面に向けて搬送することを特徴とする。
【0008】
本発明の第3態様に係る造形装置は、第1又は2態様に記載の造形装置において、前記規制部は、前記加圧と共に前記造形台に対して相対移動し、前記規制部は、前記造形面に沿うと共に前記相対移動する方向に対して直交する直交方向における前記造形材の位置を規制することを特徴とする。
【0009】
本発明の第4態様に係る造形装置は、第3態様に記載の造形装置において、前記規制部は、前記直交方向で前記造形材と接触して位置を規制する接触部と、前記造形材が前記接触部と接触するように、前記造形材を案内する案内部とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の第5態様に係る造形装置は、第4態様に記載の造形装置において、前記接触部及び前記案内部には、離型性を有する離型処理が施されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第6態様に係る造形装置は、第1~第5態様の何れか1態様に記載の造形装置において、前記規制部は、前記造形面に直交する他の直交方向における前記造形材の位置を規制することを特徴とする。
【0012】
本発明の第7態様に係る造形装置は、第6態様に記載の造形装置において、前記規制部は、前記他の直交方向で前記造形材と接触する他の接触部と、前記造形材が前記他の接触部と接触するように、前記造形材を案内する他の案内部とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の第8態様に係る造形装置は、第7態様に記載の造形装置において、前記他の接触部及び前記他の案内部には、離型性を有する離型処理が施されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第9態様に係る造形装置は、第1~第8態様の何れか1態様に記載の造形装置において、前記加圧部は、前記造形面に沿うと共に前記相対移動する方向に対して直交する方向を軸方向として回転する断面円状で、前記造形材と接触して前記造形材を前記造形面に加圧するローラ部を有し、前記規制部は、板状で、前記ローラ部の回転軸方向から見て、前記ローラ部の外形に沿った湾曲状とされた湾曲部を有し、前記湾曲部に前記造形材の位置を規制する形状が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1態様の造形装置によれば、造形材が加熱部から加圧部へ直接渡される場合と比して、加圧部に渡されたときの造形材の位置が、ばらつくのを抑制することができる。
【0016】
本発明の第2態様の造形装置によれば、複数本の造形材が加熱部から加圧部へ直接渡される場合と比して、加圧部に渡されたときの複数本の造形材の位置が、ばらつくのを抑制することができる。
【0017】
本発明の第3態様の造形装置によれば、造形材が加熱部から加圧部へ直接渡される場合と比して、加圧部に渡されたときの造形材の位置が、造形面に沿った直交方向でばらつくのを抑制することができる。
【0018】
本発明の第4態様の造形装置によれば、造形材が加熱部から加圧部へ直接渡される場合と比して、加圧部に渡されたときの造形材の位置が、造形面に沿った直交方向でばらつくのを抑制することができる。
【0019】
本発明の第5態様の造形装置によれば、素材の表面が露出している場合と比して、造形材と、接触部及び案内部との間で生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0020】
本発明の第6態様の造形装置によれば、造形材が加熱部から加圧部へ直接渡される場合と比して、加圧部に渡されたときの造形材の位置が、造形面に直交する他の直交方向でばらつくのを抑制することができる。
【0021】
本発明の第7態様の造形装置によれば、造形材が加熱部から加圧部へ直接渡される場合と比して、加圧部に渡されたときの造形材の位置が、造形面に直交する他の直交方向でばらつくのを抑制することができる。
【0022】
本発明の第8態様の造形装置によれば、素材の表面が露出している場合と比して、造形材と、他の接触部及び他の案内部との間で生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0023】
本発明の第9態様の造形装置によれば、規制部が平板状で、かつ、板厚方向が相対移動方向である場合と比して、加圧部に渡されたときの造形材の位置が、ばらつくのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る造形装置の構成を示した全体構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る造形装置に備えられた加圧部、第一加熱部、第二加熱部、及び第三加熱部等を示した構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る造形装置の要部を示した構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る造形装置に備えられた規制部、及び第一加熱部を示した斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る造形装置に備えられた規制部、及び加圧部を示した斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る造形装置に備えられた規制部に形成された凹部を示した正面図である。
図7】本発明の実施形態に係る造形装置に備えられた制御部の制御系を示したブロック図である。
図8】(A)(B)本発明の実施形態に係る造形装置に用いられる繊維束、及び造形材を示した断面図である。
図9】(A)(B)(C)本発明の実施形態に係る造形装置に用いられる造形材の搬送を示した工程図である。
図10】(A)(B)(C)本発明の実施形態に係る造形装置に用いられる造形材の搬送を示した工程図である。
図11】(A)(B)本発明の実施形態に係る造形装置に用いられる造形材であって、加圧部によって加圧される前の状態と、後の状態とを示した断面図である。
図12】(A)(B)本発明の実施形態の造形装置の加圧部に渡されたときの造形材の状態と、比較形態に係る造形装置の加圧部に渡されたときの造形材の状態とを示した模式図である。
図13】本発明の実施形態に対する比較形態に係る造形装置の構成を示した全体構成図である。
図14】(A)(B)本発明の実施形態に対する比較形態に係る造形装置に用いられる造形材であって、加圧部によって加圧される前の状態と、後の状態とを示した断面図である。
図15】本発明の実施形態に係る造形装置と比較形態に係る造形装置を用いて行った評価結果を表で示した図面である。
図16】(A)(B)本発明の実施形態に対する変形例に係る造形装置に備えられた規制部を示した図面である。
図17】(A)(B)本発明の実施形態に対する変形例に係る造形装置に備えられた規制部を示した図面である。
図18】本発明の実施形態に対する変形例に係る造形装置に備えられた規制部を示した図面である。
図19】(A)(B)本発明の実施形態に対する変形例に係る造形装置の第一加熱部から排出された状態の造形材を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態に係る造形装置の一例について図1図15に従って説明する。なお、図中に示す矢印Hは装置上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは装置幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは装置奥行方向(水平方向)を示す。
【0026】
(造形装置10)
造形装置10は、溶解積層方式(FDM方式(Fused Deposition Modeling))の三次元造形装置(3Dプリンタ)であって、複数の層の層データに従って、層を複数重ねることで、造形物を造形する装置である。
【0027】
造形装置10は、図1に示されるように、造形台14と、造形台14の上方に配置されている造形ユニット12と、造形ユニット12を移動させる移動ユニット18と、各部を制御する制御部16とを備えている。
【0028】
〔造形台14、移動ユニット18〕
造形台14は、図1示されるように、造形装置10において下方の部分に配置されている。さらに、造形台14は、上方を向くと共に水平面である造形面14aを有している。
【0029】
移動ユニット18は、造形装置10において上方の部分に配置されており、既知の機構を組み合わせることで構成され、造形ユニット12を装置幅方向、装置奥行方向、及び装置上下方向に移動させ、さらに、上下方向を軸方向として造形ユニット12を回転させるようになっている。
【0030】
〔造形ユニット12〕
造形ユニット12は、図1に示されるように、装置上下方向において、造形台14と移動ユニット18との間に配置されている。造形ユニット12は、連続繊維の束(以下「繊維束110」)に樹脂が含侵された造形材100(フィラメント)が巻かれたリール22と、搬送ロール24と、搬送ロール26と、造形材100を切断する切断部28とを備えている。さらに、造形ユニット12は、搬送ロール24、26によって搬送される造形材100を支持しつつ造形材100を加熱する第一加熱部32と、造形材100を造形面14aに加圧する加圧部42とを備えている。
【0031】
また、造形ユニット12は、造形材100に対して離間した位置から造形材100を加熱する第二加熱部52と、加圧部42に対して離間した位置から加圧部42を加熱する第三加熱部56と、ユニット全体を支持するユニット支持部64とを備えている。さらに、造形ユニット12は、搬送される造形材100の位置を規制する規制部70を備えている。
【0032】
本実施形態では、図8(A)に示す繊維束110は、複数の連続繊維が撚り合わされずに束ねられたものである。連続繊維には、一例として、直径0.005〔mm〕の炭素繊維が用いられており、この連続繊維が1000本以上束ねられている。そして、束ねられた状態で、繊維束110の断面は、一例として、直径(図中D1)は、0.5〔mm〕の円形状とされている。また、造形材100は、図8(B)に示されるように、夫々の繊維間の隙間に、ポリプロピレン樹脂が含浸されており、造形材100の断面は、一例として、直径0.5〔mm〕の円形状とされている。なお、図8(A)(B)については、連続繊維の本数を少なくして断面が示されている。
【0033】
-リール22-
リール22は、図1に示されるように、造形ユニット12において装置幅方向の一方側の部分(図中右側の部分)に配置されており、リール22の回転軸方向は、装置奥行方向とされている。
【0034】
リール22は、円柱状のリール本体22aと、リール本体22aの回転軸を構成する軸部22bと、軸部22bを支持する支持ブラケット22cとを備えている。支持ブラケット22cは、一対設けられ、一対の支持ブラケット22cは、装置奥行方向で、リール本体22aを間に置いて配置されている。具体的には、支持ブラケット22cは、上下方向に延びており、支持ブラケット22cの下端部分に、軸部22bが支持されている。
【0035】
この構成において、リール22には、4本の造形材100が、装置奥行方向に並んで巻き付けられている。
【0036】
-搬送ロール24、搬送ロール26-
搬送ロール24は、図1に示されるように、リール22に対して装置幅方向の他方側に配置されている。搬送ロール24は、駆動ロール24aと、従動ロール24bと、駆動ロール24a及び従動ロール24bを支持する支持ブラケット24cとを備えている。搬送ロール24は、搬送部の一例である。
【0037】
駆動ロール24aの回転軸方向、及び従動ロール24bの回転軸方向は、装置奥行方向とされており、駆動ロール24aと従動ロール24bとは、リール22と比して下方に配置されている。そして、駆動ロール24aと従動ロール24bとは、搬送される造形材100の装置幅方向の他方側が装置幅方向の一方側に対して下方となるように、リール22から巻き出された4本の造形材100を挟み込んでいる。
【0038】
さらに、支持ブラケット24cは、一対設けられ、一対の支持ブラケット24cは、装置奥行方向で、駆動ロール24aと従動ロール24bとを間に置いて配置されている。具体的には、支持ブラケット24cは、上下方向に延びており、支持ブラケット24cの下端部分に、駆動ロール24aと従動ロール24bが支持されている。
【0039】
搬送ロール26は、搬送ロール24に対して装置幅方向の他方側に配置されている。搬送ロール26は、駆動ロール26aと、従動ロール26bと、駆動ロール26a及び従動ロール26bを支持する支持ブラケット26cとを備えている。搬送ロール26は、搬送部の一例である。
【0040】
駆動ロール26aの回転軸方向、及び従動ロール26bの回転軸方向は、装置奥行方向とされており、駆動ロール26aと従動ロール26bとは、駆動ロール24a及び従動ロール24bと比して下方に配置されている。そして、駆動ロール26aと従動ロール26bとは、搬送される造形材100の装置幅方向の他方側が装置幅方向の一方側に対して下方となるように、搬送ロール24によって搬送された4本の造形材100を挟み込んでいる。
【0041】
さらに、支持ブラケット26cは、一対設けられ、一対の支持ブラケット26cは、装置奥行方向で、駆動ロール26aと従動ロール26bとを間に置いて配置されている。具体的には、支持ブラケット26cは、上下方向に延びており、支持ブラケット26cの下端部分に、駆動ロール26aと従動ロール26bが支持されている。
【0042】
この構成において、図示せぬモータから駆動力が伝達された駆動ロール24aが回転することで、搬送ロール24が、4本の造形材100を造形面14aに向けて搬送する。さらに、図示せぬモータから駆動力が伝達された駆動ロール26aが駆動ロール24aと同様の回転数で回転することで、搬送ロール26が、4本の造形材100を造形面14aに向けて搬送する。
【0043】
このように、搬送ロール24及び搬送ロール26によって、4本の造形材100は、リール22から巻き出され、搬送される造形材100の装置幅方向の他方側が装置幅方向の一方側に対して下方となるように搬送される。本実施形態では、一例として、30〔mm/s〕以上100〔mm/s〕以下の速度で造形材100が搬送されるように、搬送ロール24、26が回転する。
【0044】
-切断部28-
切断部28は、図1に示されるように、装置幅方向において搬送ロール24と搬送ロール26との間に配置されている。切断部28は、切断刃28aと、切断刃28aが内部に配置された本体部28bと、本体部28bを支持する支持ブラケット28cとを備えている。
【0045】
本体部28bは、装置奥行方向に延びており、4本の造形材100が、本体部28bの内部を通るようになっている。支持ブラケット28cは、上下方向に延びており、支持ブラケット28cの下端部分に、本体部28bが支持されている。
【0046】
この構成において、切断部28は、切断刃28aを稼働させることで、4本の造形材100を一度に切断する。
【0047】
-第一加熱部32-
第一加熱部32は、図2に示されるように、搬送ロール26に対して装置幅方向の他方側に配置されている。第一加熱部32は、図3図4に示されるように、造形材100が通る管部材34と、管部材34を囲むように支持する本体部36と、板状のヒータ38と、支持ブラケット40とを備えている。第一加熱部32は、加熱部の一例である。
【0048】
管部材34は、金属材料で形成されており、4本備えられている。4本の管部材34は、装置奥行方向に並んでいる。さらに、装置奥行方向から見て、管部材34の装置幅方向の他方側の端部が、管部材34の装置幅方向の一方側の端部と比して下方に位置するように、管部材34は、装置幅方向に対して傾斜している。そして、管部材34は、造形材100の搬送方向に延びている。本実施形態では、管部材34の内径は、造形材100の外径を100とすると、101以上105以下とされている。これにより、管部材34は、造形材100を支持する支持手段として機能している。
【0049】
本体部36は、金属材料で形成された直方体状で、図3に示されるように、装置奥行方向から見て、造形材100の搬送方向に延びる矩形状とされている。そして、図4に示されるように、管部材34の一部が本体部36に囲まれている。本体部36において造形材100の搬送方向の下流側の部分には、4本の管部材34が上方に露出するように、開口36aが形成されている。また、4本の管部材34において造形材100の搬送方向の下流側の部分、及び上流側の部分は、本体部36から突出している。
【0050】
ヒータ38は、本体部36の内部に配置されている。具体的には、ヒータ38は、造形材100の搬送方向において本体部36の上流側の部分に配置されており、ヒータ38が、本体部36及び管部材34を、一例として、200〔℃〕以上250〔℃〕以下に加熱する。
【0051】
支持ブラケット40は、一対設けられ、一対の支持ブラケット40は、装置奥行方向で、本体部36を間に置いて配置されている。具体的には、支持ブラケット40は、図3に示されるように、屈曲した状態で上下方向に延びており、支持ブラケット40の下端部分に、本体部36が支持されている。
【0052】
この構成において、4本の造形材100は、第一加熱部32に備えられた4本の管部材34を通って搬送される。第一加熱部32は、ヒータ38によって4本の造形材100を加熱し、造形材100を構成している樹脂を軟化させる。なお、本実施形態では、造形材100が管部材34から排出される部分では、隣り合う造形材100のピッチ(中心間距離)が、一例として、1〔mm〕とされている。
【0053】
以上説明したように、第一加熱部32は、管部材34を通っている造形材100を加熱する。このように、造形材100を管部材34に通すことで、造形材100の搬送位置が規制される。つまり、第一加熱部32は、造形材100の搬送位置を規制する位置規制手段としても機能している。
【0054】
-加圧部42-
加圧部42は、図2に示されるように、第一加熱部32に対して装置幅方向の他方側に配置されている。加圧部42は、ローラ部44と、ローラ部44を支持する支持部46と、を備えている。
【0055】
ローラ部44は、軸方向を装置奥行方向とし、第一加熱部32から排出された4本の造形材100を造形台14の造形面14aとの間で挟むように配置されている。そして、ローラ部44は、装置奥行方向に延びる軸部44aと、断面円状の本体部44bとを有している。換言すれば、軸部44aは、造形面14aに沿うと共に加圧部42と造形台14との相対移動する方向に対して直交する方向に延びている。
【0056】
具体的には、図5に示されるように、装置奥行方向における本体部44bの長さ(図中L01)は、装置奥行方向において一端に配置された管部材34の内周面から他端に配置された管部材34の内周面までの最大長さ(図4のL02)と比して長くなっている。
【0057】
また、支持部46は、図2に示されるように、装置奥行方向でローラ部44を間において配置されている一対の支持板46aと、支持板46aの上端に連結される本体部46bと、ローラ部44を造形台14に向けて付勢する付勢部材46cとを備えている。
【0058】
一対の支持板46aは、板厚方向を装置奥行方向とし、上下方向に延びている。そして、支持板46aの下端部分には、ローラ部44の軸部44aが取り付けられている。支持板46aの上端部分には、付勢部材46cを介して本体部46bの下端部分が取り付けられている。また、一方の支持板46aに、第一加熱部32に備えられた一方の支持ブラケット40が取り付けられ、他方の支持板46aに、第一加熱部32に備えられた他方の支持ブラケット40が取り付けられている。
【0059】
本体部46bは、上下方向に延びており、前述したように、本体部46bの下端部分に付勢部材46cを介して支持板46aの上端部分が取り付けられている。
【0060】
この構成において、加圧部42は、付勢部材46cの付勢力によって、予め決められた荷重で造形材100を造形台14の造形面14aに加圧する。本実施形態では、一例として、20〔N/cm〕以上50〔N/cm〕以下の加圧力で、加圧部42が造形材100を造形面14aに加圧する。
【0061】
-第二加熱部52-
第二加熱部52は、図2に示されるように、第一加熱部32に対して上方側に配置されている。第二加熱部52は、筐体52aと、筐体52aの内部に配置された加熱手段の一例としての赤外線ランプ52bと、支持ブラケット52cとを備えている。
【0062】
筐体52aは、第一加熱部32側が開口した有底円筒状とされている。そして、筐体52aの開口は、第一加熱部32及びローラ部44へ向けられている。換言すれば、赤外線ランプ52bは、筐体52aの開口から赤外線を第一加熱部32及びローラ部44へ向けて照射するように配置されている。
【0063】
また、支持ブラケット52cは、L字状とされている。そして、支持ブラケット52cの一方側の部分が筐体52aの上端部に取り付けられ、支持ブラケット52cの他方側の部分が支持部46の本体部46bの側面に取り付けられている。
【0064】
この構成において、第二加熱部52は、赤外線ランプ52bによって、第一加熱部32における本体部36の開口36a(図4参照)から 管部材34を通っている部分の造形材100を加熱する。また、第二加熱部52は、赤外線ランプ52bによって、第一加熱部32から排出されてローラ部44と造形面14aとのニップ部Nに到達するまでの部分の造形材100を加熱する。このように、第二加熱部52は、第一加熱部32から排出され、ローラ部44と造形面14aとのニップ部Nに到達するまでの部分の造形材100を加熱する加熱手段として機能している。
【0065】
-第三加熱部56-
第三加熱部56は、図2に示されるように、加圧部42に対いて装置幅方向の他方側に配置されている。換言すれば、第三加熱部56は、装置幅方向において、加圧部42を間に置いて、第一加熱部32の反対側に配置されている。第三加熱部56は、筐体58と、筐体58の内部に配置された加熱手段の一例としての温風ヒータ60と、支持ブラケット62とを備えている。
【0066】
筐体58は、加圧部42のローラ部44側が開口した有底円筒状とされている。つまり、筐体58の開口は、加圧部42のローラ部44へ向けられている。換言すれば、温風ヒータ60は、筐体58の開口から温風を加圧部42のローラ部44へ向けて吹き出すように配置されている。
【0067】
また、支持ブラケット62は、L字状の本体部62aと、筐体58が取り付けられている筐体支持部62bとを備えている。筐体支持部62bは、上下方向に延びており、筐体支持部62bの下端部分に筐体58が取り付けられている。また、L字状の本体部62aの一方側の部分に筐体支持部62bの上端側の部分が取り付けられている。さらに、本体部62aの他方側の部分が支持部46の本体部46bの側面に取り付けられている。
【0068】
この構成において、第三加熱部56は、温風ヒータ60によって、加圧部42のローラ部44を加熱する。つまり、ローラ部44は、装置幅方向の一方側から第二加熱部52によって加熱され、装置幅方向の他方側から第三加熱部56によって加熱される。このように、第三加熱部56は、加圧部42のローラ部44を加熱する加熱手段として機能している。
【0069】
-ユニット支持部64-
ユニット支持部64は、図1に示されるように、移動ユニット18の下方側に配置されており、各装置が取り付けられる本体部66と下端部が本体部66に取り付けられ、上端部が移動ユニット18に取り付けられる中間部68とを備えている。
【0070】
本体部66は、板厚方向を上下方向とする板状とされている。そして、本体部66の下面66aには、加圧部42の本体部46bの上端、搬送ロール24の支持ブラケット24cの上端、及び搬送ロール26の支持ブラケット26cの上端が取り付けられている。さらには、本体部66の下面66aには、切断部28の支持ブラケット28cの上端、及びリール22の支持ブラケット22cの上端が取り付けられている。
【0071】
この構成において、ユニット支持部64が、移動ユニット18によって、装置幅方向、装置奥行方向、及び装置上下方向に移動する。換言すれば、造形ユニット12が、移動ユニット18によって、装置幅方向、装置奥行方向、及び装置上下方向に移動する。具体的には、搬送ロール24、26によって搬送される造形材100が、ローラ部44と造形面14aとのニップ部Nで順次押し付けられるように、造形ユニット12が、移動ユニット18によって移動する。
【0072】
-規制部70-
規制部70は、図3に示さるように、造形材100の搬送方向において第一加熱部32と加圧部42との間に配置され、加圧部42の支持板46aの第一加熱部32側の部分に取り付けられている。この規制部70は、矩形状の金属板を用いて形成され、装置奥行方向から見て上下方向に延びて板厚方向が装置幅方向とされた平面状の平面部72と、ローラ部44の外形に沿った湾曲状とされた湾曲部74とを有している。換言すれば、湾曲部74は、ローラ部44の外形に近づくように湾曲している。本実施形態では、規制部70は、厚さ0.5〔mm〕のステンレス鋼板を用いて形成されている。さらに、規制部70には、フッ素コーティングが施されている。フッ素コーティングは、離型性を有する離型処理の一例である。ここで、「離型性を有する離型処理」とは、造形材100との間で生じる摩擦力を低減させることができる処理である。
【0073】
規制部70は、図4図5に示されるように、造形材100の搬送方向から見て、下端部分に下方が開口した切欠き76が形成された上下方向に延びる矩形状とされている。また、装置奥行方向における規制部70の長さ(図4のL03)は、装置奥行方向において一端に配置された管部材34の内周面から他端に配置された管部材34の内周面までの最大長さ(図4のL02)と比して長くなっている。
【0074】
さらに、平面部72の装置奥行方向の一端側の部分が、一方の支持板46aの端面に接触し、平面部72の装置奥行方向の他端側の部分が、他方の支持板46aの端面に接触している。この状態で、規制部70は、一対の支持板46aに取り付けられている。
【0075】
湾曲部74は、平面部72の下端に連結されており、装置奥行方向から見て、図3に示されるように、造形材100の搬送方向において、ローラ部44と造形面14aとのニップ部Nと、第一加熱部32との間に配置されている。
【0076】
湾曲部74には、図4図5に示されるように、下方が開口した切欠き76が形成されている。切欠き76は、上下方向に延びる一対の端面78と、装置奥行方向に延びて一対の端面78の上端と夫々接続する端面80とによって形成されている。
【0077】
さらに、端面78は、図9(C)に示されるように、造形材100の搬送方向の下流側のエッジ78aと、造形材100の搬送方向の上流側のエッジ78bとの間に形成されている。そして、端面78は、造形材100の搬送方向の下流側の部分が上流側の部分に対して搬送される造形材100に近づくように、造形材100の搬送方向に対して傾斜している。エッジ78aは、接触部の一例であって、端面78は、案内部の一例である。
【0078】
さらに、端面80は、図10(C)に示されるように、造形材100の搬送方向の下流側のエッジ80aと、造形材100の搬送方向の上流側のエッジ80bとの間に形成されている。そして、端面80は、造形材100の搬送方向の上流側の部分が下流側の部分に対して搬送される造形材100に近づくように、造形材100の搬送方向に対して傾斜している。また、湾曲部74においてエッジ80bの上方側の外面82は、造形材100の搬送方向に対して傾斜している。具体的には、外面82は、造形材100の搬送方向の下流側の部分が上流側の部分に対して搬送される造形材100に近づくように、造形材100の搬送方向に対して傾斜している。エッジ80bは、他の接触部の一例であって、外面82は、他の案内部の一例である。
【0079】
また、図6に示されるように、造形材100の搬送方向から見て、一方のエッジ78aは、一端に配置された管部材34の内周面34aにおける最も外側の部分と重なっている。また、造形材100の搬送方向から見て、他方のエッジ78aは、他端に配置された管部材34の内周面34aにおける最も外側の部分と重なっている。ここで、「外側」とは、装置奥行方向における4本の管部材34の中心位置から遠ざかる側である。
【0080】
また、造形材100の搬送方向から見て、エッジ80bは、管部材34の内周面34aにおける最も上側の部分と重なっている。
【0081】
この構成において、搬送される造形材100が、エッジ78aと接触することで、造形面14aに沿った方向の造形材100の位置が規制される。具体的には、搬送される造形材100が、エッジ78aと接触することで、造形面14aに沿うと共に 造形ユニット12の移動方向に対して直交する直交方向(以下「造形材幅方向」と記載することがある)における造形材100の位置が規制される。造形材幅方向は、直交方向の一例である。
【0082】
また、搬送される造形材100が、エッジ80bと接触することで、造形面14aに直交する直交方向(以下「造形材高さ方向」と記載することがある)の位置が規制される。造形材高さ方向は、装置上下方向と同様であって、他の直交方向の一例である。
【0083】
-制御部16-
制御部16は、入力された造形物の三次元データに基づいて、図7に示されるように、移動ユニット18、搬送ロール24、26、第一加熱部32のヒータ38、第二加熱部52の赤外線ランプ52b、第三加熱部56の温風ヒータ60、及び切断部28を制御する。なお、制御部16による各部の制御については、後述する作用と共に説明する。
【0084】
(作用)
造形装置10を用いて造形物を造形する造形方法について、比較形態に係る造形装置510を用いた場合と比較しつつ説明する。先ず、比較形態に係る造形装置510の構成について、造形装置10に対して異なる部分を主に説明する。
【0085】
〔造形装置510の構成〕
造形装置510は、図13に示されるように、規制部70を備えていない点を除いて、造形装置10と同様の構成とされている。つまり、造形装置510では、造形材100が第一加熱部32から加圧部42へ直接渡されるようになっている。
【0086】
〔造形装置10、510の作用〕
図1図13に示す造形装置10、510を用いて造形物を造形する造形方法では、制御部16は、造形物の三次元データから作成された複数の層データに基づいて各部を制御する。なお、造形装置10、510の非稼働状態では、造形材100は、搬送ロール24、28に挟まれ、造形材100の先端側の部分は、第一加熱部32の管部材34の内部に挿入されている。
【0087】
造形装置10、510が非稼働状態から稼働状態に切り替えられると、図2に示す第一加熱部32のヒータ38、及び第二加熱部52の赤外線ランプ52bが、稼働して造形材100において先端側の部分を加熱する。さらに、第三加熱部56の温風ヒータ60が、稼働して加圧部42のローラ部44を加熱する。
【0088】
また、図1図13に示す移動ユニット18は、造形ユニット12、512を装置奥行方向に移動させつつ、造形ユニット12、512を回転させ、造形ユニット12を装置幅方向へ往復移動させる。さらに、搬送ロール24、26は、4本の造形材100を搬送し、4本の造形材100がリール22から巻き出される。
【0089】
造形ユニット12、512が移動しながら、第一加熱部32から排出された造形材100が、ローラ部44と造形台14の造形面14aとのニップ部Nで、加圧部42によって造形面14aに加圧されることで形成された層が一層形成されると、移動ユニット18は、造形ユニット12、512を上方側へ移動させ、前述した工程を繰り返し、層を複数重ねることで、造形物が造形される。
【0090】
ここで、造形装置510には、規制部70が備えられていない。このため、造形材100に巻き癖等がついていると、第一加熱部32から排出された造形材100が、図12(B)に示されるように、造形材幅方向に広がってしまうことがある。換言すれば、造形装置510では、第一加熱部32から加圧部42に渡されたときの造形材100の位置が、造形材幅方向で、ばらついてしまう。また、図示は省略するが、造形装置510では、第一加熱部32から加圧部42に渡されたときの造形材100の位置が、造形材の高さ方向で、ばらついてしまう。
【0091】
このため、造形装置510では、図14(A)(B)に示されるように、加圧部42によって加圧された造形材100は、造形材幅方向(紙面左右方向)に広がってしまう。また、加圧部42によって加圧された造形材100の表面が波打ってしまう。
【0092】
これに対して、造形装置10には、規制部70が備えられている。このため、造形材100に巻き癖等がついていても、第一加熱部32から排出された造形材100が、図12(A)に示されるように、造形材幅方向に広がるのが抑制される。換言すれば、造形装置10では、第一加熱部32から加圧部42に渡されたときの造形材100の位置が、造形材幅方向でばらつくのが抑制される。また、図示は省略するが、造形装置10では、第一加熱部32から加圧部42に渡されたときの造形材100の位置が、造形材の高さ方向でばらつくのが抑制される。
【0093】
具体的には、造形材100に巻き癖等がついており、第一加熱部32から加圧部42に向けて排出された造形材100が、造形材幅方向で設計値に対してずれてしまうことがある。このような場合には、図9(A)(B)(C)に示されるように、造形材100の先端が、端面78に当たり、端面78に沿って移動する。そして、造形材100の外周面がエッジ78aと接触することで、造形材幅方向における造形材100の位置が規制される。
【0094】
また、第一加熱部32から加圧部42に向けて排出された造形材100が、造形材高さ方向で設計値に対してずれてしまうことがある。このような場合には、図10(A)(B)(C)に示されるように、造形材100の先端が、外面82に当たり、外面82に沿って移動する。そして、造形材100の外周面がエッジ80bと接触することで、造形材高さ方向における造形材100の位置が規制される。
【0095】
このため、造形装置10では、図11(A)(B)に示されるように、加圧部42によって加圧された造形材100が、造形材幅方向(紙面左右方向)に広がるのが抑制される。また、加圧部42によって加圧された造形材100の表面の波打ちが抑制される。
【0096】
ここで、造形装置10と造形装置510とを用いて、加圧部42によって4本の造形材100が造形面14aに加圧された後の一体化された造形材100の幅寸法を測定した。
【0097】
図15に測定結果の表が示されている。図15の表に示されるように、加圧部42による加圧力を、30〔N/cm〕としたときも45〔N/cm〕としたときも、造形装置10を用いると、造形装置510を用いる場合と比して、造形材100の幅寸法が小さくなる。換言すれば、造形装置10では、造形装置510を用いた場合と比して、造形材100の位置が規制される。さらに換言すれば、造形装置10では、造形装置510を用いた場合と比して、加圧部42によって加圧された状態で造形材100の幅寸法がばらつくのが抑制される。
【0098】
また、目視で4本の造形材100が一体化された状態を確認すると、造形装置510を用いて加圧された4本の造形材100の表面は、造形装置10を用いて加圧された4本の造形材100の表面と比して波打っている(図14(B)、図11(B)参照)。
【0099】
(まとめ)
以上説明したように、造形装置10では、規制部70が備えられている。このため、造形材100が第一加熱部32から加圧部42へ直接渡される造形装置510を用いる場合と比して、加圧部42に渡されたときの造形材100の位置が、ばらつくのを抑制することができる。
【0100】
また、造形装置10では、複数個の造形材100が搬送ロール24、26によって搬送される。このため、複数本の造形材100が第一加熱部32から加圧部42へ直接渡される場合と比して、加圧部42に渡されたときの複数本の造形材100の位置が、ばらつくのを抑制することができる。
【0101】
また、造形装置10では、規制部70は、造形材幅方向で造形材100の位置を規制する。このため、造形材100が第一加熱部32から加圧部42へ直接渡される造形装置510を用いる場合と比して、加圧部42に渡されたときの造形材100の位置が、造形材幅方向でばらつくのを抑制することができる。
【0102】
また、造形装置10では、規制部70は、造形材幅方向で造形材100と接触するエッジ78aと、造形材100がエッジ78aと接触するように造形材100を案内する端面78を有する。このため、造形材100が第一加熱部32から加圧部42へ直接渡される造形装置510を用いる場合と比して、加圧部42に渡されたときの造形材100の位置が、造形材幅方向でばらつくのを抑制することができる。
【0103】
また、造形装置10では、規制部70には、フッ素コーティングが施されている。つまり、エッジ78a及び端面78にもフッ素コーティングが施されている。このため、素材の表面が露出している場合と比して、端面78と造形材100との摩擦力、及びエッジ78aと造形材100との摩擦力を小さくすることができる。
【0104】
また、造形装置10では、規制部70は、造形材高さ方向で造形材100の位置を規制する。このため、造形材100が第一加熱部32から加圧部42へ直接渡される造形装置510を用いる場合と比して、加圧部42に渡されたときの造形材100の位置が、造形材の高さ方向でばらつくのを抑制することができる。
【0105】
また、造形装置10では、規制部70は、造形材高さ方向で造形材100と接触するエッジ80bと、造形材100がエッジ80bと接触するように造形材100を案内する外面82を有する。このため、造形材100が第一加熱部32から加圧部42へ直接渡される造形装置510を用いる場合と比して、加圧部42に渡されたときの造形材100の位置が、造形材の高さ方向でばらつくのを抑制することができる。
【0106】
また、造形装置10では、規制部70には、フッ素コーティングが施されている。つまり、エッジ80b及び外面82にもフッ素コーティングが施されている。このため、素材の表面が露出している場合と比して、外面82と造形材100との摩擦力、及びエッジ80bと造形材100との摩擦力を小さくすることができる。
【0107】
また、造形装置10では、規制部70は、ローラ部44の回転軸方向から見て、ローラ部の外形に沿った湾曲部74を有している。そして、湾曲部74に、造形材100の位置を規制するエッジ78a、及びエッジ80bが形成されている。このため、規制部が平板状で、かつ、板厚方向が水平方向である場合と比して、造形材100の位置を規制するエッジが、ローラ部44と造形台14の造形面14aとのニップ部Nに近接することで、加圧部42に渡されたときの造形材100の位置が、ばらつくのを抑制することができる。
【0108】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、造形ユニット12を造形台14に対して移動させたが、造形ユニット12が造形台14に対して相対的に移動すればよく、造形ユニット12及び造形台14の少なくとも一方が移動すればよい。
【0109】
また、上記実施形態では、規制部70にフッ素コーティングを施すことで、規制部70と造形材100との間で生じる摩擦力を小さくしたが、規制部70は、離型性を有していればよく、離型処理が施されていればさらによく、フッ素コーティング又はシリコーンコーティングが施されていれば最もよい。
【0110】
また、上記実施形態では、規制部70は、金属板を用いて形成されたが、ガラス板を用いて形成されてもよい。この場合には、第二加熱部52の赤外線ランプ52bから照射された赤外線が規制部を通過して搬送される造形材100に達することで、造形材100を加熱することができる。
【0111】
また、上記実施形態では、規制部70は、エッジ80bに搬送される造形材100を接触させて、造形材100の高さ方向(他の直交方向の一例)における位置を規制したが、図16(A)に示されるように、造形材100の高さ方向における造形材100の位置を規制する部位が規制部に設けられなくてもよい。しかし、この場合には、造形材100の高さ方向における造形材100の位置を規制することで奏する作用は奏しない。
【0112】
また、上記実施形態では、規制部70は、エッジ78aに搬送される造形材100を接触させて、造形材100の幅方向(直交方向の一例)における位置を規制したが、図16(B)に示されるように、造形材100の幅方向における造形材100の位置を規制する部位が規制部に設けられなくてもよい。しかし、この場合には、造形材100の幅方向における造形材100の位置を規制することで奏する作用は奏しない。
【0113】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、リールに繊維束110を巻き付け、造形ユニット12が、繊維束110に樹脂を含侵させる含侵部を備えてもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、規制部70の加圧部42に対する取付け位置を調整できるようにしてもよい。これより、例えば、造形材100の径寸法が変わった場合等に規制部70の位置を調整することができる。
【0115】
また、上記実施形態では、規制部70に形成された切欠き76は、上下方向に延びる一対の端面78と、装置奥行方向に延びる端面80とによって形成されたが、図17(A)に示されるように、凹部が湾曲状であてもよく、図17(B)に示されるように、凹部が台形状であってもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、規制部70に切欠き76が形成されることで、造形材100の位置を規制したが、図18に示されるように、矩形状の開口を形成されることで、造形材100の位置を規制してもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、4本の造形材100を用いて造形物を製造したが、1本の造形材100を用いてもよく、4本以外の複数本の造形材100を用いてもよい。この場合には、例えば、図19(A)に示されるように、複数の造形材100を千鳥状に配置してもよく、図19(B)に示されるように、複数の造形材100を上下方向で重ねてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、造形材100は、繊維束110を備えたが、繊維束を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0119】
10 造形装置
14 造形台
14a 造形面
24 搬送ロール(搬送部の一例)
26 搬送ロール(搬送部の一例)
32 第一加熱部(加熱部の一例)
42 加圧部
44 ローラ部
70 規制部
74 湾曲部
78 端面(案内部の一例)
78a エッジ(接触部の一例)
80b エッジ(他の接触部の一例)
82 外面(他の案内部の一例)
100 造形材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19