IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ヒートシールシート 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ヒートシールシート
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/16 20060101AFI20240220BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20240220BHJP
   B65D 63/10 20060101ALI20240220BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20240220BHJP
   D21H 19/20 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
D21H21/16
B32B29/00
B65D63/10 M
B65D65/02 E
D21H19/20 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019238943
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107597
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】萬道 律雄
(72)【発明者】
【氏名】久保 直樹
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-155582(JP,A)
【文献】特開2004-293004(JP,A)
【文献】特開平01-221597(JP,A)
【文献】特開2004-360087(JP,A)
【文献】特開2014-185405(JP,A)
【文献】特開2000-177770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D63/00-63/18
B65D65/00-65/46
D21B 1/00-D21J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面に積層された熱接着層とを有するヒートシールシートであって、
前記ヒートシールシートは、結束帯として用いられるものであり、
前記紙基材は、パルプと内添サイズ剤とを含有し、
下記条件(a)で測定される前記パルプの変則フリーネスが50~700mlであり、
前記紙基材において、前記熱接着層が積層される面のTAPPI T558PM-97に準じて測定される水滴下0.5秒後の動的接触角が80~95°である、ヒートシールシート;
条件(a):パルプ懸濁液の固形分濃度を0.030±0.001%とし、JIS P 8121-2:2012に準じてフリーネスを測定する。
【請求項2】
ISO5-2に準じて測定される透明度が70%以上である、請求項1に記載のヒートシールシート。
【請求項3】
前記熱接着層は水系塗料塗工層である、請求項1又は2に記載のヒートシールシート。
【請求項4】
前記条件(a)で測定される前記パルプの変則フリーネスが50~500mlである、請求項1~3のいずれか1項に記載のヒートシールシート。
【請求項5】
前記内添サイズ剤はロジン系サイズ剤であり、前記ロジン系サイズ剤の含有量は、前記紙基材の全質量に対して0.1~5.0質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載のヒートシールシート。
【請求項6】
前記内添サイズ剤はアルキルケテンダイマー系サイズ剤であり、前記アルキルケテンダイマー系サイズ剤の含有量は、前記紙基材の全質量に対して0.05~5.0質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のヒートシールシート。
【請求項7】
前記内添サイズ剤はアルケニル無水コハク酸系サイズ剤であり、前記アルケニル無水コハク酸系サイズ剤の含有量は、前記紙基材の全質量に対して0.01~0.5質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載のヒートシールシート。
【請求項8】
前記紙基材はさらに外添サイズ剤を含有し、前記外添サイズ剤の塗布量は片面あたり0.05~1.0g/mである、請求項1~7のいずれか1項に記載のヒートシールシート。
【請求項9】
前記紙基材はさらに硫酸バンドを含有し、前記硫酸バンドの含有量は、前記紙基材の全質量に対して0.5~5.0質量%である、請求項1~8のいずれか1項に記載のヒートシールシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシールシートに関する。
【背景技術】
【0002】
カプセル剤、錠剤の薬剤、食品等の包装に、プレススルー包装体(以下「PTP」と略記する場合がある。)が用いられている。このようなPTPは、複数シートが結束された状態で取引される場合がある。同様に、粉薬や一包化された錠剤を内包する分包袋も複数個が結束された状態で提供される場合がある。このように複数のシート状物をまとめて結束体を構成する際には、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いたバンドテープが多用されている。結束の際には、バンドテープを構成する熱可塑性樹脂を熱融着させることで、結束体を構成している。
【0003】
また、PTPや分包袋以外にも乾麺や線香等の棒状の製品を一定量結束するために、熱可塑性樹脂製のバンドテープが用いられている。しかしながら、昨今は脱プラスチックが促進されており、結束体を構成するバンドテープについても脱プラスチックが要求されつつある。
【0004】
ここで、医薬品等を内包する分包袋を結束する場合には、誤飲防止等を目的として、結束部分の表示内容を視認できることが好ましいとされている。例えば、結束部分においても、分包袋の表示内容が、少なくとも摺りガラス越しに見える程度の視認性が要求される。脱プラスチックを達成するためには、バンドテープを紙基材と熱接着層から構成することが考えられるが、プラスチック材料を単に紙製材料に変更しただけでは、バンドテープに求められる視認性等の性能が得られない場合がある。
【0005】
そこで、紙の透明化方法として、例えばポリエーテルウレタン化合物等の透明化剤を紙基材に含浸させることが提案されている(特許文献1)。しかし、紙を透明化するためには、多量の透明化剤を紙基材に対して含浸させる必要があり、プラスチック使用量の削減の観点からは効果が限定的である。
【0006】
他の紙の透明化方法としては、グラシン紙のように高叩解パルプを原料として抄紙した原紙を強カレンダー処理する方法がある(特許文献2)。この方法の場合、プラスチック材料をほぼ使用しないため、プラスチック使用量の削減効果が高い。特許文献2では、高叩解パルプを用いた紙基材上に熱接着層を設けたPTP用蓋材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-122174号公報
【文献】特開2016-156119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、高叩解パルプを使用した紙基材は、通常の叩解パルプを用いた紙基材よりもパルプ繊維間の水素結合点がはるかに多いことが知られている。このため、熱接着層を形成するために水系塗料が紙基材上に塗工されると、パルプ繊維の膨潤による変形がシート内で吸収されず、紙基材が伸びることにより塗工機のラインテンションの低下が発生し、カールや断紙トラブルを起こすことがあり問題となっていた。このような場合、対策として、耳部(非塗工部分)の幅を大きく取ることや、塗工量を減らすこと等が考えられるが、歩留りの低下や、接着強度等が低下する等の問題があり、改善が求められていた。
【0009】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、紙基材上に熱接着層を有するヒートシールシートの製造工程において、水系の熱接着層用塗料を塗布した場合であっても、歩留りよくヒートシールシートを製造することを目的として検討を進めた。加えて、本発明者らは、得られるヒートシールシートの接着強度を改善することも目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、高叩解パルプを含む紙基材中に内添サイズ剤を添加することにより、紙基材上に熱接着層を有するヒートシールシートを歩留まりよく製造できることを見出した。さらに、本発明者らは、このようにして得られたヒートシールシートが、優れた接着強度を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0011】
[1] 紙基材と、紙基材の少なくとも一方の面に積層された熱接着層とを有するヒートシールシートであって、
紙基材は、パルプと内添サイズ剤とを含有し、
下記条件(a)で測定されるパルプの変則フリーネスが50~700mlであり、
紙基材において、熱接着層が積層される面のTAPPI T558PM-97に準じて測定される水滴下0.5秒後の動的接触角が80~95°である、ヒートシールシート;
条件(a):パルプ懸濁液の固形分濃度を0.030±0.001%とし、JIS P 8121-2:2012に準じてフリーネスを測定する。
[2] ISO5-2に準じて測定される透明度が70%以上である、[1]に記載のヒートシールシート。
[3] 熱接着層は水系塗料塗工層である、[1]又は[2]に記載のヒートシールシート。
[4] 条件(a)で測定されるパルプの変則フリーネスが50~500mlである、[1]~[3]のいずれかに記載のヒートシールシート。
[5] 内添サイズ剤はロジン系サイズ剤であり、ロジン系サイズ剤の含有量は、紙基材の全質量に対して0.1~5.0質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載のヒートシールシート。
[6] 内添サイズ剤はアルキルケテンダイマー系サイズ剤であり、アルキルケテンダイマー系サイズ剤の含有量は、紙基材の全質量に対して0.05~5.0質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載のヒートシールシート。
[7] 内添サイズ剤はアルケニル無水コハク酸系サイズ剤であり、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤の含有量は、紙基材の全質量に対して0.01~0.5質量%である、[1]~[6]のいずれかに記載のヒートシールシート。
[8] 紙基材はさらに外添サイズ剤を含有し、外添サイズ剤の塗布量は片面あたり0.05~1.0g/m2である、[1]~[7]のいずれかに記載のヒートシールシート。
[9] 紙基材はさらに硫酸バンドを含有し、硫酸バンドの含有量は、紙基材の全質量に対して0.5~5.0質量%である、[1]~[8]のいずれかに記載のヒートシールシート。
[10] 結束帯として用いられる[1]~[9]のいずれかに記載のヒートシールシート。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、紙基材上に熱接着層を有するヒートシールシートの製造工程において、水系の熱接着層用塗料を塗布した場合であっても、歩留りよくヒートシールシートを製造することができる。また、本発明によれば、優れた接着強度を有するヒートシールシートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明のヒートシールシートの構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
(ヒートシールシート)
本発明は、紙基材と、紙基材の少なくとも一方の面に積層された熱接着層とを有するヒートシールシートに関する。ここで、紙基材は、パルプと内添サイズ剤とを含有し、下記条件(a)で測定されるパルプの変則フリーネスは50~700mlである。また、紙基材において、熱接着層が積層される面のTAPPI T558PM-97に準じて測定される水滴下0.5秒後の動的接触角が80~95°である。
条件(a):パルプ懸濁液の固形分濃度を0.030±0.001%とし、JIS P 8121-2:2012に準じてフリーネスを測定する。
【0016】
図1は、本発明のヒートシールシートの構成を説明する断面図である。図1に示されるように、ヒートシールシート1は、紙基材3と熱接着層5を備える。熱接着層5は、紙基材3の両面に設けられてもよいが、熱接着層5は紙基材3の一方の面にのみ設けられることが好ましい。なお、熱接着層5と紙基材3の間には他の層が設けられてもよいが、熱接着層5と紙基材3は直接接するように積層された層であることが好ましい。
【0017】
本発明のヒートシールシートにおける紙基材は、内添サイズ剤を含有するため、紙基材上に熱接着層を形成する際に、水系の熱接着層用塗料を塗布した場合であっても、紙基材の伸びや断紙の発生が抑制される。これは、紙基材が内添サイズ剤を含むため、水系の熱接着層用塗料を塗布した際の紙基材に含まれる高叩解パルプ繊維の膨潤が抑えられることに起因するものと考えられる。このため、本発明においては、紙基材幅に対して、熱接着層用塗料の塗工幅の割合を大きくすることができ、ヒートシールシートの製造効率を大幅に高めることができる。
【0018】
また、本発明のヒートシールシートは優れた接着強度を有する。ここで、接着強度は以下の方法で測定されるものである。まず、熱接着層側の面と反対面(紙基材面)とが接するように重ね合わせ、熱プレス試験機を用いて、130℃、0.2MPa、0.2秒間熱圧着を行う。この際、重ね合わせた2枚のヒートシールシートの熱接着層側の面が重ね合わさっている方のヒートシールシートの裏面側から加熱して、熱圧着を行う。次いで、得られた熱圧着物を幅15mmに断裁して、接着強度測定用サンプルを作製し、得られたサンプルの接着強度(kN/m)を、引張試験機(型式:テンシロンRTC-1250A、オリエンテック社製)を用いて測定する。測定の際には、JIS P 8113:2006に準じて、接着強度測定用サンプルの端部をチャッキングして180°ピール法で剥離速度300mm/分で測定する。
上記方法で測定されるヒートシールシートの接着強度は、0.060~0.700kN/mであることが好ましく、0.130~0.450kN/mであることがより好ましく、0.260~0.400kN/mであることがさらに好ましい。熱接着層の接着強度が上記下限値以上であれば、結束体をピロー包装して輸送する場合でも、ヒートシールシートの熱接着部の外れの発生を抑制することができる。ここで、結束体とは、例えば分包袋や線香、乾麺等の製品を、ヒートシールシートを用いて結束した集合体である。
【0019】
さらに本発明のヒートシールシートは、その表面の面感も一様である。具体的には、表面にひじわや凹凸(ボコツキ)が発生しておらず、面感に優れている。これにより、ヒートシールシートは優れた意匠性を発揮する。また、表面の面感が一様であるため、結果として、ヒートシールシートの接着強度も高められる。
【0020】
本発明のヒートシールシートのISO5-2に準じて測定される透明度は70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。ヒートシールシートの透明度の測定には、例えば、村上色彩技術研究所製の拡散光透過率計DOT-5を用いることができる。このように、本発明のヒートシールシートは、高い透明性を有している。このため、例えば、ヒートシールシートを、医薬品等を内包する分包袋を結束するために用いられるバンドテープの用途に用いる際には、結束部分の表示内容を視認することができる。このように、本発明のヒートシールシートは、バンドテープの用途に好ましく用いられる。
【0021】
本発明のヒートシールシートの密度は、0.95~1.30g/cm3であることが好ましく、1.00~1.30g/cm3であることがより好ましく、1.00~1.25g/cm3であることがさらに好ましく、1.10~1.25g/cm3であることが特に好ましい。ヒートシールシートの密度は、JIS P 8118:1998に準拠して厚さを測定して、厚さと坪量の測定値から計算で求められる。
【0022】
本発明のヒートシールシートの厚みは14μm以上であることが好ましく、19μm以上であることがより好ましく、24μm以上であることがさらに好ましい。また、本発明のヒートシールシートの厚みは55μm以下であることが好ましく、45μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることがさらに好ましい。
【0023】
(紙基材)
紙基材は、パルプと内添サイズ剤を含有する。ここで、下記条件(a)で測定されるパルプの変則フリーネスは50ml以上であればよく、75ml以上であることが好ましく、100ml以上であることがより好ましい。また、下記条件(a)で測定されるパルプの変則フリーネスは700ml以下であればよく、650ml以下であることが好ましく、600ml以下であることがより好ましく、550ml以下であることが一層好ましく、500ml以下であることが特に好ましい。パルプの変則フリーネスを上記上限値以下とすることにより、紙基材の透明性を高めることができ、結果として、ヒートシールシートの透明性を高めることができる。また、パルプの変則フリーネスを上記下限値以上とすることにより、過剰な紙力低下を防止し、また原紙を製造する際のパルプ叩解時間を短縮することができる。さらに、パルプの変則フリーネスを上記下限値以上とすることにより、抄紙時の脱水性を高めることもできる。
条件(a):パルプ懸濁液の固形分濃度を0.030±0.001%とし、JIS P 8121-2:2012に準じてフリーネスを測定する。
【0024】
なお、上記条件(a)における変則フリーネスの測定方法は、JIS P 8121-2:2012に準じて測定されるフリーネスの測定方法において、パルプ懸濁液の固形分濃度を0.30%±0.01%から0.030%±0.001%に変更した測定方法である。パルプ懸濁液の固形分濃度の調整以外は標準フリーネスの測定方法と同様の方法である。変則フリーネスの測定では、測定に使用されるパルプの量が標準フリーネスの10分の1であるため、標準フリーネスよりも、叩解がある程度進んだ状態での評価に適している。例えば変則フリーネスの770mlは、標準フリーネスの380ml程度である。
【0025】
紙基材において、熱接着層が積層される面のTAPPI T558PM-97に準じて測定される水滴下0.5秒後の動的接触角は80°以上であればよく、82°以上であることが好ましく、84°以上であることがより好ましい。また、紙基材において、熱接着層が積層される面のTAPPI T558PM-97に準じて測定される水滴下0.5秒後の動的接触角は95°以下であればよく、93°以下であることがより好ましい。動的接触角を上記下限値以上とすることにより、水系の熱接着層用塗料を紙基材上に塗工する際の紙基材の膨潤が抑制され、紙基材のカールや断紙の発生を抑制することができる。また、動的接触角を上記上限値以下とすることにより、水系の熱接着層用塗料を紙基材上に塗工する際の塗料のハジキを防止することができる。なお、本発明のヒートシールシートにおいて、紙基材の一方の面のみに熱接着層を積層した場合は、紙基材の熱接着層を積層しなかった面のTAPPI T558PM-97に準じて測定される水滴下0.5秒後の動的接触角を、熱接着層が積層される面のTAPPI T558PM-97に準じて測定される水滴下0.5秒後の動的接触角と同じとみなすことができる。
【0026】
紙基材を構成するパルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ等が挙げられる。木材パルプとしては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等が挙げられる。紙基材においては、針葉樹パルプと広葉樹パルプを併用することも好ましい。この場合、針葉樹パルプと広葉樹パルプの配合比率は、1:9~9:1であることが好ましく、2:8~8:2であることがより好ましい。非木材パルプとしては、麻パルプ、ケナフパルプ、竹パルプ等が挙げられる。これらのパルプは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0027】
紙基材中に含まれる内添サイズ剤は特に限定されるものではないが、例えばロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤等が挙げられる。
【0028】
ロジン系サイズ剤としては、酸性抄紙用サイズ剤、弱酸性抄紙用サイズ剤、中性抄紙用サイズ剤、強化ロジン系サイズ剤等が挙げられる。内添サイズ剤としてロジン系サイズ剤を用いる場合、ロジン系サイズ剤の含有量は、紙基材の全質量に対して0.1~5.0質量%であることが好ましく、0.2~1.5質量%であることがさらに好ましい。
【0029】
内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤を用いる場合、アルキルケテンダイマー系サイズ剤の含有量は、紙基材の全質量に対して0.05~5.0質量%であることが好ましく、0.1~1.5質量%であることがより好ましい。
【0030】
内添サイズ剤としてアルケニル無水コハク酸系サイズ剤を用いる場合、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤の含有量は、紙基材の全質量に対して0.01~0.5質量%であることが好ましく、0.02~0.2質量%であることがより好ましい。なお、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤は、カチオン化澱粉溶液等の分散媒体に予め分散して用いることが好ましい。
【0031】
紙基材は、さらに外添サイズ剤を含有するものであってもよい。この場合、外添サイズ剤は、紙基材の少なくとも一方の面に包含される。なお、外添サイズは、紙基材の両面に包含されるものであってもよい。外添サイズ剤としては、例えばスチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、オレフィン-マレイン酸共重合体、オレフィン-(メタ)アクリル酸共重合体等の樹脂塩またはエマルションの他、アルキルケテンダイマー系外添サイズ剤、ポリビニルアルコール樹脂、デンプン等が挙げられる。紙基材が外添サイズ剤を含む場合、外添サイズ剤の塗布量は片面あたり0.05~1.0g/m2であることが好ましい。
【0032】
紙基材は、さらに硫酸バンドを含有するものであってもよい。この場合、硫酸バンドの含有量は、紙基材の全質量に対して0.5~5.0質量%であることが好ましい。
【0033】
紙基材には、本発明の効果が奏される範囲において、さらに任意成分を有していてもよい。任意成分としては、例えば、レーヨン繊維やリヨセル繊維等の再生繊維、ポリ乳酸繊維、ポリブチレンサクシネート繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維等の化学繊維を挙げることができる。また、紙基材は、任意成分として、各種の製紙用内添薬品、歩留向上剤、消泡剤、填料、着色剤等を含んでいてもよい。内添薬品としては、上述したサイズ剤や硫酸バンドの他に、紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、アルミン酸ソーダ、カチオン化デンプン等の各種の定着剤、カチオンポリマー等の濾水性向上剤、凝結剤等が挙げられる。
【0034】
また、紙基材は、任意成分として、外添サイズ剤以外の外添薬品を含んでいてもよい。外添薬品としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、ジイソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩、ウレタン樹脂、尿素樹脂等の水性高分子化合物、ポリアクリルアミド樹脂等の表面紙力増強剤、離型剤、消泡剤、分散剤、濡れ剤、有色染料、有色顔料、白色顔料等が挙げられる。
【0035】
紙基材の坪量は、特に限定されるものではないが、18g/m2以上であることが好ましく、20g/m2以上であることがより好ましく、25g/m2以上であることがさらに好ましい。また、紙基材の坪量は、50g/m2以下であることが好ましく、40g/m2以下であることがより好ましく、35g/m2以下であることがさらに好ましい。紙基材の坪量を上記下限値以上とすることで、ヒートシールシートをバンドテープとして使用した場合に十分な強度が得られやすくなる。また、紙基材の坪量を上記上限値以下とすることで、ヒートシールシートの透明性をより効果的に高めることができる。なお、紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0036】
紙基材の厚みは、厚みは14μm以上であることが好ましく、19μm以上であることがより好ましく、24μm以上であることがさらに好ましい。また、紙基材の厚みは55μm以下であることが好ましく、45μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることがさらに好ましい。
【0037】
(熱接着層)
熱接着層は、紙基材の少なくとも一方の面に積層されてなる層である。本発明においては、熱接着層は、水系の熱接着層用塗料を紙基材上に塗工することで形成される層であることが好ましい。すなわち、熱接着層は、水系塗料塗工層であることが好ましい。
【0038】
水系の熱接着層用塗料としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルション、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体エマルション、アクリル酸エステル重合体エマルション、ポリエチレンエマルション、ポリエチレン-ポリブテン混合体エマルション、スチレン-ブタジエン共重合体エマルション等が挙げられる。中でも、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルション、アクリル酸エステルエマルション、ポリエチレンエマルションは、安定した熱接着力を発現するため、ヒートシールシートの熱接着層面と反対側面(紙基材側面)を接着する場合に好ましく使用される。なお、熱接着層面同士を接着させる場合はこれらに加えて、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを用いることもできるが、特に限定されるものではない。
【0039】
熱接着層の坪量(水系の熱接着層用塗料の乾燥塗工量)は、特に限定されるものではないが、熱接着層が接着される被着体の材質やヒートシール条件に応じて適宜選択される。熱接着層の坪量は、0.1~30g/m2であることが好ましく、0.5~10g/m2であることがより好ましく、1.0~5.0g/m2であることがさらに好ましい。熱接着層の坪量を上記範囲内とすることにより、満足な熱接着力が得られやすく、ヒートシールシートとしての透明性も保持することができる。また、熱接着層の坪量を上記範囲内とすることにより、塗工時のトラブルの発生を抑制することもできる。
【0040】
熱接着層の厚みは0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがさらに好ましい。また、熱接着層の厚みは30μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
【0041】
(任意の層)
ヒートシールシートは、上述した紙基材と熱接着層との間に他の層を有してもよい。他の層としては、たとえば水蒸気バリア層、酸素バリア層、印刷層、印刷適性向上層、オーバープリント層、遮光層等が挙げられる。紙基材と熱接着層との間に設けられる他の層は1層でもよく2層以上でもよい。また、紙基材の熱接着層側とは反対側の面に印刷層を有してもよい。印刷層上にさらにオーバープリント層を有してもよい。
【0042】
(ヒートシールシートの製造方法)
ヒートシールシートの製造方法は、以下の工程(α1)と(α3)を有する。なお、ヒートシールシートの製造方法においては、必要に応じて、工程(α1)の後に工程(α2)を設けてもよい。
(α1)パルプを水の存在下で叩解してパルプスラリーを得、該パルプスラリーに内添サイズ剤を添加して抄紙原料を調製し、該抄紙原料を抄紙することで紙基材(原紙)を得る工程。
(α2)必要に応じて工程(α1)で形成された原紙の少なくとも一方の面に外添薬品を塗布し、乾燥して紙基材を得る工程。
(α3)紙基材の少なくとも一方の面に熱接着層を積層し、ヒートシールシートを得る工程。
【0043】
工程(α1)では、紙基材は、パルプと内添サイズ剤を含むパルプスラリーを抄紙原料として抄紙することにより製造される。パルプスラリーは、パルプを水の存在下で叩解することにより得られる。叩解により得られたパルプスラリーに内添サイズ剤や、必要に応じて他の製紙用内添薬品が添加され、抄紙原料が調製される。パルプの叩解方法、叩解装置は特に限定されるものではないが、叩解効率が高いダブルディスクリファイナー(DDR)が好ましく用いられる。叩解は、パルプの変則フリーネスが50~700mlの範囲内となるまで行われる。
【0044】
抄紙原料の抄紙は定法により実施される。工程(α1)で使用される抄紙機は特に限定されるものではないが、例えば、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機等を用いることができる。
【0045】
工程(α2)では、必要に応じて工程(α1)で形成された原紙の少なくとも一方の面に外添薬品を塗布する。外添薬品としては、上述したような外添サイズ剤や外添薬品を挙げることができる。外添薬品を塗工する場合は、オンマシンで塗工機が装備されているものを用いることが好ましい。
【0046】
工程(α3)では、紙基材の少なくとも一方の面に熱接着層を積層し、ヒートシールシートを得る。紙基材の少なくとも一方の面に熱接着層を積層する際には、紙基材の少なくとも一方の面に、水系の熱接着層用塗料が塗工されることが好ましい。水系の熱接着層用塗料の塗布方法は特に限定されず、各種公知の湿式塗布法を利用して行うことができる。例えば、抄紙機のオンマシンサイズプレス装置やトランスファーロールコーター(シムサイザー、ゲートロールコーター等)、スプレー装置等を用いて行うことも可能である。また、オフマシンでは、一般的な塗工装置、例えばブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、シムサイザー、ゲートロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、ツーロールコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーター等を用いて塗布することができる。乾燥設備については、シリンダードライヤーによる塗布面直接接触方式を用いることもできるが、塗布面と接触しないエアードラーヤーや赤外線ヒーター等の乾燥設備を用いることが好ましい。
【0047】
工程(α3)では、紙基材の幅方向の側端部に片耳幅が5~200mm程度の耳部(未塗布部分)が設けられるように、水系の熱接着層用塗料が塗工される。片耳幅は、150mm以下であることが好ましく100mm以下であることがより好ましく、80mm以下であることがさらに好ましく、60mm以下であることが特に好ましい。このように本発明においては、水系の熱接着層用塗料を紙基材上に塗工する場合においても耳幅を狭くすることができる。これにより、ヒートシールシートの製造効率をより効果的に高めることができる。
【0048】
なお、工程(α3)における水系の熱接着層用塗料の塗工幅をPとし、紙基材の幅をQとした場合、P/Q×100で表される割合は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。これにより、ヒートシールシートの製造効率をより効果的に高めることができる。
【0049】
(用途)
本発明のヒートシールシートは、結束帯として用いられることが好ましい。具体的に、本発明のヒートシールシートは、PTPや分包袋といった平板状物や、乾麺や線香といった棒状物を結束するためのバンドテープとして用いられることが好ましい。さらに、本発明のヒートシールシートは、納豆、もずく、豆腐等の個別パック商品を結束するためのバンドテープや、その他パック商品の蓋と本体とを結束するためのバンドテープとして用いられることが好ましい。本明細書においては、このようなバンドテープを結束帯とも呼ぶ。本発明のヒートシールシートをバンドテープとして用いる際には、ヒートシールシートにおける熱接着層の一部を紙基材に接触するよう重ね合わせた状態で熱圧着する。熱圧着の際には、熱プレス機を用いることができる。
【0050】
なお、本発明のヒートシールシートの用途はバンドテープに限定するものではなく、PTP用蓋材や、分包袋用包装材料としても使用できる。
【0051】
本発明のヒートシールシートは、紙製のためプラスチック使用量の削減に貢献できる。また、本発明のヒートシールシートは高い透明度を有するため、医薬品のバンドテープとして使用した場合でも結束部の表示内容が視認でき、誤飲防止効果等が期待できる。さらに、本発明のヒートシールシートの製造工程においては、紙基材のカールや断紙の発生を抑制されるため、製造上のトラブルの発生が抑制され、結果として、ヒートシールシートの製造効率を高めることができる。
【実施例
【0052】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0053】
(実施例1)
[紙基材の製造]
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)60質量%と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)40質量%を混合し、DDR(ダブルディスクリファイナー)にて、変則フリーネス(パルプ採取量0.3g/L)が600mLになるように叩解し、パルプスラリーを得た。該パルプスラリーに内添薬品として、パルプ全質量に対し、絶乾で硫酸バンド1.0質量%、絶乾で強化ロジン系サイズ剤(商品名:サイズパインN-776、荒川化学工業社製)0.3質量%を添加し、抄紙原料を得た。該抄紙原料を長網抄紙機で抄紙して原紙を得た。その後、オフマシンカレンダーにて平滑化処理を行って、坪量25g/m2、密度1.15g/cm3の紙基材を得た。
【0054】
[ヒートシールシートの製造]
上記で得られた紙基材を1000mm幅にスリット加工を行った。次いで、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルション系ヒートシール剤(商品名:EA-H700、東洋インキ社製、固形分濃度50質量%)を、水で27質量%に希釈したものを、紙基材の片面に、グラビアコーター(グラビアロール150線)を用いて、乾燥後の塗工量が3.0g/m2となるように塗布した。その後、乾燥して熱接着層を形成し、ヒートシールシートを得た。このとき、紙基材の幅方向側端部における耳部(未塗布部分)の幅は片耳あたり40mmであった。
【0055】
<実施例2>
実施例1の[紙基材の製造]において、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の配合量を78質量%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)の配合量を22質量%に変更し、DDRにて、変則フリーネス(パルプ採取量0.3g/L)が550mLになるように叩解し、さらに紙基材の坪量を40g/m2とした以外は実施例1と同様にして紙基材及びヒートシールシートを得た。紙基材の幅方向側端部における耳部(未塗布部分)の幅は片耳あたり40mmであった。
【0056】
<実施例3>
実施例1の[紙基材の製造]において、強化ロジン系サイズ剤(サイズパインN-776、荒川化学工業社製)の代わりに、アルキルケテンダイマー系サイズ剤(商品名:サイズパインK-287、荒川化学工業社製)を絶乾で0.1質量%添加した以外は実施例1と同様にして紙基材及びヒートシールシートを得た。紙基材の幅方向側端部における耳部(未塗布部分)の幅は片耳あたり40mmであった。
【0057】
<実施例4>
実施例1の[紙基材の製造]において、強化ロジン系サイズ剤(サイズパインN-776、荒川化学工業社製)の代わりに、あらかじめカチオン化澱粉(ピラー3YK、ピラースターチ社製)で分散させたアルケニルコハク酸サイズ剤(ファイブラン81K,荒川化学工業社製)を絶乾で0.04質量%を添加した以外は実施例1と同様にして紙基材及びヒートシールシートを得た。紙基材の幅方向側端部における耳部(未塗布部分)の幅は片耳あたり40mmであった。
【0058】
<実施例5>
実施例1の[紙基材の製造]において、得られた抄紙原料を長網抄紙機で抄紙し、原紙前駆体を得た。抄紙機に付属するサイズプレス機にて、スチレン-アクリル酸共重合体系外添サイズ剤(商品名:ポリマロン1308S、荒川化学工業社製)を原紙前駆体の両面に塗工した。その際、両面の合計が絶乾で0.8g/m2となるようにオンライン塗工を行った。このようにして原紙を得た。その他は、実施例1と同様にして紙基材及びヒートシールシートを得た。紙基材の幅方向側端部における耳部(未塗布部分)の幅は片耳あたり20mmであった。
【0059】
<実施例6>
実施例1の[紙基材の製造]において、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の配合量を78質量%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)の配合量を22質量%に変更し、DDRにて、変則フリーネス(パルプ採取量0.3g/L)が200mLになるように叩解し、さらに紙基材の坪量を30g/m2とした以外は実施例1と同様にして紙基材及びヒートシールシートを得た。紙基材の幅方向側端部における耳部(未塗布部分)の幅は片耳あたり40mmであった。
【0060】
<比較例1>
実施例1の[紙基材の製造]において、強化ロジン系サイズ剤を使用しなかった以外は実施例1と同様にして紙基材を得た。実施例1の[ヒートシールシートの製造]において、実施例1と同条件(グラビアロール150線)でヒートシール剤の塗布を試みたが、グラビアロールの紙基材への接触と同時にバッキングロールで押さえた途端に、紙基材の伸びによりラインテンションが低下して、ヒートシール剤塗布面側に強いカールによる断紙が発生し、塗布できなかった。このため、グラビアロールを200線のものに交換し、さらに耳部(未塗布部分)の幅を片耳あたり300mmとして、ヒートシール剤を塗布した。この際のヒートシール剤の塗工量は1.9g/m2であった。比較例1では、ヒートシール剤の紙基材への吸収ムラを起因とした凹凸(ボコツキ)が発生したため、バンドテープとしての商品価値が損なわれるものであった。
【0061】
<比較例2>
実施例5の[紙基材の製造]において、強化ロジン系サイズ剤を使用しなかった以外は実施例5と同様にして紙基材を得た。なお、熱接着層を形成する際には、[ヒートシールシートの製造]において、実施例1と同条件(グラビアロール150線)でヒートシール剤の塗布を試みた。その結果、紙基材の幅方向側端部における耳部(未塗布部分)の幅は片耳あたり40mmであったが、ヒートシール剤の紙基材への吸収ムラを起因としたひじわが発生したため、バンドテープとしての商品価値が損なわれるものであった。
【0062】
<評価>
[紙基材表面の動的接触角の測定]
紙基材表面の動的接触角は、TAPPI T558PM-97に準じて測定した。具体的には、水滴下0.5秒後の動的接触角を測定した。
【0063】
[透明度の測定]
実施例及び比較例で得たヒートシールシートの透明度をISO5-2に準じて、拡散光透過率計DOT-5(村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。
【0064】
[印刷文字の視認性の評価]
実施例及び比較例で得たヒートシールシートを粉薬分包袋上に接触させて分包袋上の印刷文字等の視認性を目視で確認した。
◎:印刷文字、マーク類とも容易に判読できる。
○:印刷文字が判読でき、マーク類は容易に確認できる。
×:印刷文字、マークとも確認できない。
【0065】
[接着強度の測定]
実施例及び比較例で得たヒートシールシートについて、結束バンドテープ用途を想定して、熱接着層側の面と反対面(紙基材面)とが接するように重ね合わせた。熱プレス試験機を用いて、130℃、0.2MPa、0.2秒間の熱圧着条件で、重ね合わせた2枚のヒートシールシートの熱接着層側の面が重ね合わさっている方のヒートシールシートの裏面側から加熱して、熱圧着物を作製した。次に、この熱圧着物を幅15mmに断裁して、接着強度測定用サンプルを作製した。得られたサンプルの接着強度(kN/m)を、引張試験機(型式:テンシロンRTC-1250A、オリエンテック社製)を用いて測定した。この際、JIS P 8113:2006に準じて、接着強度測定用サンプルの端部をチャッキングして180°ピール法で剥離速度300mm/分で測定した。
【0066】
[ヒートシールシートの面感]
実施例及び比較例で得たヒートシールシートの表面のひじわ、凹凸(ボコツキ)の具合を目視評価した。
○:ひじわや凹凸(ボコツキ)がなく、表面が一様である。
×:ひじわ、凹凸(ボコツキ)が目立ち、表面が一様ではない。
【0067】
【表1】
【0068】
上記結果に示されるとおり、実施例のヒートシールシートは、紙基材中に内添サイズ剤が使用されているため、水系の熱接着層用塗料を塗布した場合であっても、紙基材の伸びによる断紙が抑制されていた。これは、水系の熱接着層用塗料を塗布した際に、紙基材に含まれる高叩解パルプ繊維の膨潤が抑えられていることに起因するものと考えられる。また、実施例では紙基材幅に対して熱接着層用塗料の塗工幅の割合が大きく、製造効率よくヒートシールシートが得られた。一方、比較例1のヒートシールシートは、熱接着層用塗料塗布時の断紙発生を防止するために耳部幅を広く取る必要があり、製造効率の低下が認められた。
【0069】
また、実施例のヒートシールは十分な接着強度を発揮した。一方、比較例1では、製造工程において、グラビアロールについても線数を150線から200線に変更してアプリケート量を減らす必要があり、面感も芳しくなく、満足な接着強度が得られなかった。比較例2についても面感不良により、満足な接着強度が得られなかった。
【0070】
実施例で得られたヒートシールシートは、透明性、接着強度ともPTPシートや分包袋用バンドテープと同程度であり、これらの用途への展開が期待される。特に、現行のプラスチックフィルムからの代替が可能と考えられるため、プラスチック使用量の削減に寄与できるものと考えられる。
【符号の説明】
【0071】
1 ヒートシールシート
3 紙基材
5 熱接着層
図1