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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】付加製造装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/073 20060101AFI20240220BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240220BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20240220BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20240220BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240220BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240220BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20240220BHJP
   B23K 26/342 20140101ALI20240220BHJP
【FI】
B23K26/073
B33Y30/00
B22F3/105
B22F3/16
B23K26/00 N
B23K26/21 Z
B23K26/34
B23K26/342
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020002751
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2021109204
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田野 誠
(72)【発明者】
【氏名】長濱 貴也
(72)【発明者】
【氏名】椎葉 好一
(72)【発明者】
【氏名】溝口 高史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩平
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 翔
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/108491(WO,A1)
【文献】特表2019-507236(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0232428(US,A1)
【文献】特開平03-015632(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1787718(KR,B1)
【文献】特開平09-314364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
B33Y 10/00-50/00
B22F 3/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質材及び超硬バインダを含む材料を前記材料の融点以上に加熱する内側光ビームを照射する内側光ビーム照射装置と、
前記内側光ビームの外側にて前記材料を前記融点未満に加熱する外側光ビームを照射する外側光ビーム照射装置と、
前記内側光ビーム照射装置及び前記外側光ビーム照射装置の各々について、前記内側光ビーム及び前記外側光ビームの照射、並びに、基台に対する前記内側光ビーム及び前記外側光ビームの相対的な走査を制御する制御装置と、
を備え、
前記超硬バインダは、コバルト(Co)であり、
前記制御装置は、
前記内側光ビームが照射されて前記材料が溶融することにより形成された溶融池を前記外側光ビームが照射する際、前記外側光ビームの単位面積当たりの出力を表すパワー密度を、前記溶融池における単位時間当たりの温度低下を表す冷却速度が前記溶融池に含まれる前記超硬バインダの凝固点において540℃/s以下となるように制御する、付加製造装置。
【請求項2】
前記外側光ビームによる外側光照射範囲の前記外側光ビームの前記走査の方向における長さは、前記内側光ビームによる内側光照射範囲の前記内側光ビームの前記走査の方向における長さに対して1.5倍以上である、請求項1に記載の付加製造装置。
【請求項3】
前記外側光ビームは、円形状の前記内側光ビームと同軸となる円環状に照射される、請求項1又は2に記載の付加製造装置。
【請求項4】
前記外側光ビームは、四角形状に照射される、請求項1又は2に記載の付加製造装置。
【請求項5】
前記外側光ビームは、前記走査の方向に沿った長軸を有する楕円形状に照射される、請求項1又は2に記載の付加製造装置。
【請求項6】
前記内側光ビームによる内側光照射範囲が前記外側光ビームによる外側光照射範囲に含まれる場合、前記外側光ビームは前記内側光ビームの前記走査の方向において前側よりも後側が長くなる前記楕円形状に照射される、請求項5に記載の付加製造装置。
【請求項7】
前記外側光ビームは、前記走査の方向に沿った長辺を有する四角形状に照射される、請求項1又は2に記載の付加製造装置。
【請求項8】
前記内側光ビームによる内側光照射範囲が前記外側光ビームによる外側光照射範囲に含まれる場合、前記外側光ビームは前記内側光ビームの前記走査の方向において前側よりも後側が長くなる前記四角形状に照射される、請求項7に記載の付加製造装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記基台上における前記材料の温度に基づいて、少なくとも前記外側光ビームの前記パワー密度を変更する、請求項1-8のうちの何れか一項に記載の付加製造装置。
【請求項10】
前記外側光ビームは、前記材料の融点未満且つ前記材料を600℃以上に加熱する、請求項1-9のうちの何れか一項に記載の付加製造装置。
【請求項11】
前記制御装置に制御されることにより、前記基台に対し前記材料の粉末材料を噴射して供給する付加材料供給装置を備え、
前記内側光ビーム照射装置は、前記付加材料供給装置が前記基台に対して供給した前記粉末材料に前記内側光ビームを照射して前記粉末材料を溶融し、
前記外側光ビーム照射装置は、前記内側光ビームの照射によって前記粉末材料が溶融して形成された前記溶融池に前記外側光ビームを照射する、請求項1-10のうちの何れか一項に記載の付加製造装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記内側光ビーム照射装置によって照射された前記内側光ビームの前記走査の軌跡を追従するように、前記外側光ビーム照射装置によって照射された前記外側光ビームの前記走査を制御する、請求項1-11のうちの何れか一項に記載の付加製造装置。
【請求項13】
前記制御装置は、少なくとも前記内側光ビームの前記走査の方向に対して後側における前記外側光ビームの前記パワー密度を制御する、請求項1-12のうちの何れか一項に記載の付加製造装置。
【請求項14】
前記硬質材の融点は、前記超硬バインダの融点よりも高い、請求項1-13のうちの何れか一項に記載の付加製造装置。
【請求項15】
前記硬質材は、炭化タングステン(WC)である、請求項14に記載の付加製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造には、例えば、指向性エネルギー堆積(Directed Energy Deposition)方式、粉末床溶融結合(Powder Bed Fusion)方式等があることが知られている。指向性エネルギー堆積方式は、光ビーム(レーザビーム及び電子ビーム等)の照射と材料の供給を行う加工ヘッドの位置を制御することで付加製造を行う。指向性エネルギー堆積方式には、LMD(Laser Metal Deposition)、DMP(Direct Metal Printing)等が含まれる。粉末床溶融結合方式は、平らに敷き詰められた粉末材料に対して、光ビームを照射することで付加製造を行う。粉末床溶融結合方式には、SLM(Selective Laser Melting)、EBM(Electron Beam Melting)等が含まれる。
【0003】
例えば、指向性エネルギー堆積方式のLMDは、硬質材を含む粉末材料等を噴射しながら光ビームを照射することにより、粉末材料等を溶融させた後に凝固させることができる。これにより、LMDは、例えば、基台に対して部分的に硬質材の造形物を付加する肉盛技術として利用されている。
【0004】
そして、例えば、下記特許文献1には、超硬合金複合材が開示されている。従来の超硬合金複合材は、炭化タングステン(WC)とコバルト(Co)を含む超硬合金部とニッケル(Ni)又はコバルト(Co)を含む基材部とを有し、超硬合金部と基材部との間に、超硬合金部の成分と基材部の成分を含む中間層を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/069701号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
付加製造においては、粉末材料を溶融した後に凝固させることにより、造形物を製造する。ところで、硬質材を含む粉末材料を溶融した状態から急冷によって凝固する状況では、硬質材の靭性に起因して造形物に割れが発生する虞があり、硬質の造形物の品質が低下する。この場合、粉末材料を予熱しておくことによって急冷を抑制することができる。
【0007】
しかしながら、例えば、LMDでは種々の形状の基台に対して材料粉末を噴射して部分的に造形物を付加するため、SLMのようにベースプレート等の付加製造装置の一部を用いて粉末材料を予熱する方法は現実的ではない。又、LMDにおいては、ヒータ等を用いて粉末材料を予熱することも考えられるが、例えば、加工ヘッドとの干渉や制御系が複雑になる等の問題がある。
【0008】
本発明は、簡単な構成により割れを抑制して高品質な造形物を付加製造することができる付加製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
付加製造装置は、硬質材及び超硬バインダを含む材料を材料の融点以上に加熱する内側光ビームを照射する内側光ビーム照射装置と、内側光ビームの外側にて材料を融点未満に加熱する外側光ビームを照射する外側光ビーム照射装置と、内側光ビーム照射装置及び外側光ビーム照射装置の各々について、内側光ビーム及び外側光ビームの照射、並びに、基台に対する内側光ビーム及び外側光ビームの相対的な走査を制御する制御装置と、を備え、超硬バインダは、コバルト(Co)であり、制御装置は、内側光ビームが照射されて材料が溶融することにより形成された溶融池を外側光ビームが照射する際、外側光ビームの単位面積当たりの出力を表すパワー密度を、溶融池における単位時間当たりの温度低下を表す冷却速度が溶融池に含まれる超硬バインダの凝固点において540℃/s以下となるように制御する。
【0010】
これによれば、制御装置は、内側光ビームが照射されて硬質材を含む材料が溶融することにより形成された溶融池を外側光ビームが照射する際、外側光ビームのパワー密度を、溶融池の冷却における冷却速度が溶融池に含まれる超硬バインダの凝固点において540℃/s以下となるように制御することができる。
【0011】
このように、溶融池(造形物)の冷却速度が540℃/s以下となるように、外側光ビームのパワー密度を制御して保温処理することにより、造形物の急冷凝固を抑制することができる。従って、簡単な構成により、造形物の割れの発生を防止することができ、高品質な造形物を付加製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】付加製造装置を示す図である。
図2図1の付加製造装置によって造形物を付加製造する基台を示す斜視図である。
図3】造形物を付加した図2の基台を中心軸方向から見た図である。
図4図1の付加製造装置による造形物を付加製造する際の基台に付加した造形物の初期状態を示す断面図である。
図5図4の状態から走査が進んだときの基台に付加製造した造形物の途中状態及び付加状態を示す断面図である。
図6図1の付加製造装置において基台に造形物を付加製造する場合のパワー密度と光照射範囲との関係を示すビームプロファイルである。
図7】予熱温度と造形物の割れの発生数との関係を示すグラフである。
図8】超硬バインダであるコバルト(Co)の凝固点における冷却速度を説明するためのグラフである。
図9】内側光ビームの直径と外側光ビームの直径の大きさを説明するための図である。
図10】内側光ビームの直径に対する外側光ビームの直径の比を変更した場合の冷却速度の変化を説明するための図である。
図11】第一別例に係るパワー密度と光照射範囲との関係を示すビームプロファイルである。
図12】第二別例に係り、外側光ビームの光照射形状とビームプロファイルとの関係を示すグラフである。
図13】第三別例に係り、外側光ビームの光照射形状に応じてビームプロファイルを変更する場合を説明するための図である。
図14】第三別例に係り、外側光ビームの光照射形状に応じてビームプロファイルを変更する場合を説明するための図である。
図15】付加製造装置に適用される光照射装置の他の構成を示す図である。
図16】付加製造装置に適用される光照射装置の他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1.付加製造装置の概要)
本例の付加製造装置は、例えば、指向性エネルギー堆積方式であってLMD方式を採用する。本例において、付加製造装置は、硬質材である硬質粉末材料に結合粉末材料を混合した粉末材料を基台に向けて噴射しながら光ビームを照射することにより、基台に硬質の造形物を付加製造する。粉末材料、特に、硬質粉末材料と基台は、異なる材料でも良く、同一種類の材料でも良い。
【0014】
本例では、硬質材である炭化タングステン(WC)の硬質粉末材料を用いて造形される硬質の造形物を、炭素鋼(S45C)を用いて形成された基台に付加製造する場合について説明する。ここで、結合粉末材料は、炭化タングステン(WC)同士を結合する超硬バインダとして作用するコバルト(Co)を用いる。ここで、炭化タングステン(WC)の融点(凝固点)は、2870℃であり、超硬バインダであるコバルト(Co)の融点(凝固点)の1495℃よりも高い。尚、本例においては、超硬バインダとしてコバルト(Co)を用いる。しかし、超硬バインダはコバルト(Co)に限られず、例えば、ニッケル(Ni)を超硬バインダとして用いることも可能である。
【0015】
(2.付加製造装置100の構成)
図1に示すように、付加製造装置100は、付加材料供給装置110、光ビーム照射装置120及び制御装置130を主に備える。ここで、本例においては、付加製造装置100は、図2及び図3に示すように、大径の円盤部材B1の両側面に小径の円筒部材B2,B2が同軸に一体化された形状を有する基台Bに造形物FFを付加製造する場合を例示する。具体的に、付加製造装置100は、基台Bにおける円筒部材B2,B2の開放端部側の格子で示す周面(図示を省略する軸受の支持部)B2S,B2Sに造形物FFを付加製造する。
【0016】
基台Bに造形物FFを付加製造する場合、図1に示すように、付加製造装置100は、モータM1を回転させて基台Bを中心軸線Cの回りに回転させる。又、付加製造装置100は、モータM2を回転させて基台Bを中心軸線Cの方向に移動させる。これにより、円筒部材B2,B2の周面B2S,B2Sの全体に亘って層状に造形物FFを付加製造することができる。
【0017】
付加材料供給装置110は、ホッパ111、バルブ112、ガスボンベ113及び噴射ノズル114を備える。ホッパ111は、結合粉末材料P2が混合された硬質粉末材料P1を貯蔵する。本例においては、造形物FFは、大量の硬質粉末材料P1と少量の結合粉末材料P2で形成されるため、硬質粉末材料P1に混合する結合粉末材料P2の量は、造形物FFにおける結合粉末材料P2に対応した量とする。
【0018】
バルブ112は、粉末導入バルブ112a、粉末供給バルブ112b及びガス導入バルブ112cを備える。粉末導入バルブ112aは、配管111aを介してホッパ111と接続される。粉末供給バルブ112bは、配管114aを介して噴射ノズル114と接続される。又、ガス導入バルブ112cは、配管113aを介してガスボンベ113と接続される。
【0019】
噴射ノズル114は、例えば、ガスボンベ113から供給される高圧の窒素により、硬質粉末材料P1及び結合粉末材料P2を、基台Bの円筒部材B2の周面B2Sに対して噴射して供給する。噴射ノズル114は、本例では、2本を180度隔てて配置した場合を示すが、1本若しくは等角度間隔で配置される3本以上の噴射ノズル114を備える構成としても良い。或いは、噴射ノズル114は、光ビーム照射装置120が光ビームを照射する照射孔周りに配置された環状の噴射孔を備える構成としても良い。又、硬質粉末材料P1及び結合粉末材料P2を噴射するガスは、窒素に限定されるものではなく、アルゴン等の不活性ガスでも良い。
【0020】
光ビーム照射装置120は、内側光ビーム照射装置121と、外側光ビーム照射装置122とを主に備える。内側光ビーム照射装置121は、内側光ビーム照射部121a及び内側光ビーム光源121bを主に備える。外側光ビーム照射装置122は、外側光ビーム照射部122a及び外側光ビーム光源122bを主に備える。
【0021】
内側光ビーム照射装置121は、基台Bの周面B2Sに対し、内側光ビーム光源121bから内側光ビーム照射部121a内にて配置された図示省略のコリメータレンズや集光レンズを通して内側光ビームLCを照射する。又、外側光ビーム照射装置122は、基台Bの周面B2Sに対し、外側光ビーム光源122bから外側光ビーム照射部122a内にて配置された図示省略のコリメータレンズや集光レンズを通して外側光ビームLSを照射する。
【0022】
ここで、本例においては、内側光ビーム照射装置121は、円形状の照射形状(内側光照射範囲CS)となる内側光ビームLCを照射する。又、外側光ビーム照射装置122は、内側光ビームLCと同軸で外周を囲う円環状の照射形状(外側光照射範囲SS)となる外側光ビームLSを照射する。内側光ビームLCは、主として、基台Bの周面B2Sにおいて硬質粉末材料P1及び結合粉末材料P2を溶融して造形物FFを付加製造する。外側光ビームLSは、主として、基台Bの周面B2Sに付加製造された造形物FF(より詳しくは、後述する溶融池MP)の温度低下を抑制即ち保温する。尚、本例においては、内側光ビームLC及び外側光ビームLSとして、レーザ光を用いる。しかしながら、内側光ビームLC及び外側光ビームLSはレーザ光に限られず、電磁波であれば例えば電子ビームを用いることも可能である。
【0023】
又、本例においては、円形状の内側光ビームLCと円環状の外側光ビームLSを照射するが、内側光ビームLC及び外側光ビームLSは円状に限られるものではない。例えば、内側光ビームLC及び外側光ビームLSの各々を四角形状にしたり、内側光ビームLCを円状又は四角形状とし且つ外側光ビームLSを四角形状又は円状として組み合わせたりすることも可能である。
【0024】
制御装置130は、付加材料供給装置110の粉末供給を制御する。具体的に、制御装置130は、粉末供給バルブ112b及びガス導入バルブ112cの開閉を制御して、噴射ノズル114からの硬質粉末材料P1及び結合粉末材料P2の噴射供給を制御する。
【0025】
制御装置130は、光ビーム照射装置120即ち内側光ビーム照射装置121及び外側光ビーム照射装置122の光照射を制御する。又、制御装置130は、基台Bの周面B2Sに対する内側光ビームLC及び外側光ビームLSの相対的な走査を制御する。具体的に、制御装置130は、モータM1の回転を制御して基台Bを中心軸線Cの回りに回転させると共に、モータM2の回転を制御して基台Bを中心軸線Cの方向に移動させる。これにより、基台Bの周面B2Sに対する内側光ビームLC及び外側光ビームLSの相対的な走査を制御する。
【0026】
尚、本例においては、制御装置130が基台Bを回転及び移動させるようにする。しかしながら、光ビーム照射装置120即ち内側光ビーム照射装置121及び外側光ビーム照射装置122を基台Bに対して相対的に移動させるように構成可能であることは言うまでもない。
【0027】
又、制御装置130は、内側光ビーム光源121b及び外側光ビーム光源122bの動作をそれぞれ制御する。これにより、制御装置130は、内側光ビームLC及び外側光ビームLSの各出力条件をそれぞれ独立して制御する。ここで、出力条件としては、例えば、それぞれのレーザ出力や、内側光照射範囲CS及び外側光照射範囲SSの各単位面積当たりのレーザ出力(W)であるパワー密度の分布形状、即ち、ビームプロファイルを挙げることができる。
【0028】
(2-2.造形物FFの付加製造方法)
次に、造形物FFの付加製造方法について説明する。造形物FFの付加製造方法では、第一段階として、外側光ビームLSにより、造形物FFの付加製造処理における前処理として初期の予熱処理を行う。基台Bの周面B2Sの温度が低い状態では、レーザ照射による熱エネルギーが基台Bに逃げ易い。これにより、第二段階において造形物FFを基台Bに付加製造する場合、スパッタの発生等の溶融の不良要因となり易いため、第一段階で基台Bの周面B2Sを予熱する。このとき、初期の予熱処理における内側光ビームLC及び外側光ビームLSのレーザ出力は、基台Bの周面B2Sが溶融せずに所定の温度となるように制御される。尚、付加製造においては、必要に応じて、第一段階を省略することも可能である。
【0029】
次に、第二段階として、図4に示すように、内側光ビームLCを照射することにより、内側光照射範囲CSにおいて、基台Bの周面B2S及び硬質粉末材料P1を溶融して溶融池MPを形成する溶融処理を行う。又、この溶融処理においては、外側光ビームLSの外側光照射範囲SSの走査方向SDにおける前側の照射範囲SSFにて、外側光ビームLSの一部である第一光ビームBe1により溶融池MPの形成処理の前処理としての予熱処理を行う。
【0030】
そして、図5に示すように、内側光ビームLCを走査する走査方向SDに走査する(本例では、基台Bが回転して走査するが、図5では便宜上、内側光ビームLCを走査するものとして説明する)ことで溶融池MPを拡大させることにより、造形物FFを付加製造する。ここで、造形物FFは、硬質粉末材料P1の炭化タングステン(WC)がバインダとして作用する結合粉末材料P2のコバルト(Co)によって結合されて、基台Bに部分的に付加される。
【0031】
又、内側光ビームLCは、溶融池MPを拡大させるように硬質粉末材料P1及び結合粉末材料P2を溶融させた後、走査方向SDに順次移動する。このため、外側光ビームLSの外側光照射範囲SSの走査方向SDにおける後側の照射範囲SSBで外側光ビームLSの一部である第二光ビームBe2が溶融池MPを照射する。これにより、第二光ビームBe2は、造形物FFの付加製造の後処理としての保温処理を行う。
【0032】
このとき、制御装置130は、図6に示すように、内側光ビームLCのパワー密度のビームプロファイルにおけるピークLCP1を、外側光ビームLSのパワー密度のビームプロファイルにおけるピークLSP1より増加させる制御を行う。内側光ビームLCのレーザ出力は、硬質粉末材料P1及び結合粉末材料P2を溶融して溶融池MPを形成できる温度となるように制御される。又、外側光ビームLS即ち第一光ビームBe1及び第二光ビームBe2のレーザ出力は、硬質粉末材料P1及び結合粉末材料P2を溶融させることがない所定の温度となるように制御される。
【0033】
(3.外側光ビームLS(第二光ビームBe2)による保温処理)
ここで、第二光ビームBe2による造形物FFの保温処理について具体的に説明する。結合粉末材料P2であるコバルト(Co)は、硬質粉末材料P1である炭化タングステン(WC)を結合するバインダとして作用する。即ち、コバルト(Co)は、付加製造において溶融池MPが溶融状態から凝固状態に遷移する場合、バインダとして炭化タングステン(WC)の粒子同士を結合する。コバルト(Co)をバインダとして作用させて造形物FFの割れを抑制するためには、コバルト(Co)が凝固点(換言すれば、融点であり約1500℃)から冷却するときの単位時間当たりの温度低下即ち冷却速度を適切に管理して保温処理を行う必要がある。
【0034】
(3-1.冷却速度について)
発明者等は、種々の予備的な実験を繰り返し行った結果、結合粉末材料P2のコバルト(Co)が適切にバインダとして作用し、保温処理後において造形物FFの割れを抑制する冷却速度(℃/s)を見出した。以下、このことを具体的に説明する。
【0035】
上述したように、炭化タングステン(WC)等の硬質材を含む造形物FFにおいては、付加製造後において急冷されると、靭性が低いために割れが生じ易くなる。このため、LMDにより基台Bに造形物FFを付加製造した場合、造形物FFの急冷を防止するために保温処理を行うことが有効である。ここで、発明者等は、造形物FFの割れの発生に対する急冷の影響を確認する予備的な実験を行った。具体的に、発明者等は、例えば、コバルト(Co)が溶融する1500℃以上からの急冷の程度を異ならせるように、硬質粉末材料P1及びコバルト(Co)を含む結合粉末材料P2を種々の温度に予熱(加熱)し、造形物FFの割れの有無を確認した。その結果、図7に示すように、予熱温度(加熱温度)が600℃未満のとき、即ち、凝固点からの急冷の程度が大きい場合には、造形物FFに割れが発生し、予熱温度(加熱温度)が600℃以上のとき、即ち、凝固点からの急冷の程度が小さい場合には、造形物FFに割れが発生しないことを確認した。
【0036】
このことは、図8に造形物FFにおける温度の時間変化の線図を示すように、コバルト(Co)を含む材料の予熱が行われない場合(図8にて破線により示す)には、コバルト(Co)の凝固点即ち融点を超えるまで加熱された後において急速に造形物FFの温度が低下する。つまり、予熱がない場合には、凝固後において予め与えられている熱エネルギーが相対的に小さい。このため、従って、図8にて太い二点鎖線により示すように、コバルト(Co)の凝固点における冷却速度(℃/s)、即ち、コバルト(Co)の凝固点における接線の傾きは大きくなる。
【0037】
一方、コバルト(Co)を含む材料が予熱されて予熱温度(加熱温度)が600℃以上の場合(図8にて実線により示す)には、コバルト(Co)の凝固点即ち融点を超えるまで加熱された後において緩やかに造形物FFの温度が低下する。つまり、予熱がある場合には、凝固した後において予め与えられている熱エネルギーが相対的に大きい。このため、図8にて太い二点鎖線により示すように、コバルト(Co)の凝固点における冷却速度(℃/s)は、予熱がない場合に比べて、小さくなる。
【0038】
このことから、発明者等は、結合粉末材料P2のコバルト(Co)の凝固点における冷却速度(℃/s)を適切に設定することにより、造形物FFの割れを抑制できるという知見を得た。そして、発明者等は、コバルト(Co)の凝固点(約1500℃、より詳しくは、1495℃)における最適な冷却速度(℃/s)を特定するための種々の実験を行った。その結果、コバルト(Co)の凝固点における冷却速度(℃/s)を540℃/s以下となるように保温した場合に、造形物FFの急冷が防止され、造形物FFの割れが生じないことを見出した。
【0039】
このことに基づき、制御装置130は、外側光ビームLSのパワー密度のビームプロファイルを、冷却速度が540℃/s以下となるように設定し、外側光ビーム照射装置122の作動を制御する。これにより、外側光ビームLSが照射される外側光照射範囲SSにおいては、540℃/s以下となる冷却速度となり、換言すれば、600℃以上の状態で保温され、急冷が防止される。その結果、造形物FFの割れを抑制することができる。
【0040】
(3-2.外側光照射範囲SSの大きさについて)
上述したように、制御装置130は、外側光ビームLSのパワー密度のビームプロファイルを設定する、換言すれば、外側光照射範囲SSにおいてコバルト(Co)の凝固点での冷却速度を540℃/s以下となるように設定する。ところで、このように冷却速度を設定した場合であっても、冷却により凝固していく溶融池MPが外側光照射範囲SSに含まれている時間が短くなると、結果として、溶融池MP即ち造形物FFが急冷される可能性がある。
【0041】
そこで、発明者等は、冷却速度を540℃/s以下に設定し、且つ、走査方向SDに向けた光ビームの走査速度を適宜想定した場合において、最適な外側光照射範囲SSの大きさを特定した。図9に示すように、本例においては、円形の内側光ビームLCが照射される円形の内側光照射範囲CSに対して外側光ビームLSが照射される外側光照射範囲SSは同心円状に配置される。ここで、図9に示すように、内側光ビームLCによる内側光照射範囲CSの内側光ビームLCの走査方向SDにおける長さに相当する直径を直径φ1とし、外側光ビームLSによる外側光照射範囲SSの外側光ビームLSの走査方向SDにおける長さに相当する直径を直径φ2とする。尚、内側光照射範囲CS及び外側光照射範囲SSの各々の直径は、「ビームスポット径」とも称呼される。
【0042】
内側光ビームLC及び外側光ビームLSが一体に走査方向SDに向けて走査された場合、走査速度が大きい場合には、図9において内側光照射範囲CSに対応する溶融池MPは、相対的に走査方向SDと反対側に向けて速やかに外側光照射範囲SSの外側に移動する。従って、この場合には、溶融池MPが外側光照射範囲SSの内部に存在している時間が短くなるため、保温時間が短くなる。一方、走査速度が小さい場合には、溶融池MPは、相対的に走査方向SDと反対側に向けて移動するものの、外側光照射範囲SSの内側に存在する時間が長くなるため、保温時間が長くなる。
【0043】
ここで、発明者等は、例えば、走査速度を通常の付加製造において設定される速度に設定した場合を想定し、内側光照射範囲CSの直径φ1に対する外側光照射範囲SSの直径φ2の比αを異ならせた。そして、発明者等は、比αを異ならせた場合において、溶融池MPにおいて冷却速度540℃/s以下を満たす比αを実験的に確認した。この結果、図10にて太い長破線により示すように、例えば、比αの値が1.2(直径φ1に対して直径φ2が1.2倍に相当)となる「W」の場合、外側光ビームLSのパワー密度を変化させても、冷却速度540℃/s以下を満たすことができない。
【0044】
尚、図10に示すパワー密度「A」は、硬質粉末材料P1及び結合粉末材料P2を融点以上に加熱して溶融させることができるパワー密度である。即ち、「A」よりも小さいパワー密度は、硬質粉末材料P1及び結合粉末材料P2を融点未満に加熱するのみで溶融させないパワー密度である。
【0045】
一方、図10にて実線により示すように、例えば、比αの値が1.5(直径φ1に対して直径φ2が1.5倍に相当)となる「X」の場合、「W」に比べて、外側光照射範囲SSの直径φ2が大きくなる。これにより、「X」の場合には、冷却速度540℃/s以下を満たす。但し、「X」の場合には、外側光ビームLSにパワー密度を「A」に近づけるように大きくする必要がある。これにより、コバルト(Co)の凝固点における冷却速度540℃/s以下を満たした状態で溶融池MP、即ち、造形物FFを保温処理することができる。従って、造形物FFの割れを抑制することができる。
【0046】
又、図10にて一点鎖線により示すように、例えば、比αの値が2.0(直径φ1に対して直径φ2が2倍に相当)となる「Y」の場合、「X」の場合に比べて、外側光照射範囲SSの直径φ2が更に大きくなる。従って、「Y」の場合には、相対的に溶融池MP(造形物FF)が外側光照射範囲SSの内部に存在する時間が長くなる。このため、「Y」の場合には、外側光ビームLSのパワー密度が比較的小さくなっても、冷却速度540℃/s以下を満たした状態で溶融池MP(造形物FF)を保温処理することができる。即ち、造形物FFの割れを抑制することができる。
【0047】
更に、図10にて二点鎖線により示すように、例えば、比αの値が3.0(直径φ1に対して直径φ2が3倍に相当)となる「Z」の場合、「Y」の場合に比べて外側光照射範囲SSの直径φ2がより大きくなる。従って、「Z」の場合には、相対的に溶融池MP(造形物FF)が外側光照射範囲SSの内部に存在する時間がより長くなる。このため、「Z」の場合には、外側光ビームLSのパワー密度がより小さくなっても、冷却速度540℃/s以下を満たした状態で溶融池MP(造形物FF)を保温処理することができる。即ち、造形物FFの割れを抑制することができる。
【0048】
これらの知見に基づき、本例においては、溶融池MP(造形物FF)の保温処理において、溶融池MPに含まれるコバルト(Co)の凝固点での冷却速度が540℃/s以下とする。そして、本例においては、溶融池MP(造形物FF)の保温処理において、内側光照射範囲CSの直径φ1に対して外側光照射範囲SSの直径φ2が1.5倍以上となるように、外側光照射範囲SSの大きさを設定する。そして、これらの条件を満たすように、制御装置130は、外側光ビームLSのパワー密度のビームプロファイルを設定し、溶融池MP(造形物FF)の保温処理を行う。
【0049】
(4.本例の効果)
上述した本例によれば、制御装置130は、内側光ビームLCが照射されて硬質粉末材料P1及び結合粉末材料P2が溶融することにより形成された溶融池MPを外側光ビームLSが照射する際、外側光ビームLSのパワー密度のビームプロファイルを、溶融池MPにおける冷却速度(℃/s)が溶融池MPに含まれるコバルト(Co)の凝固点において540℃/s以下となるように制御することができる。
【0050】
このように、溶融池MP(造形物FF)の冷却速度が540℃/s以下となるように、外側光ビームLSのビームプロファイルを設定し、外側光ビーム照射装置122を制御して保温処理することにより、造形物FFの急冷凝固を抑制することができる。従って、簡単な構成により、造形物FFの割れの発生を防止することができ、高品質な造形物FFを付加製造することができる。
【0051】
(5.本例の第一別例)
例えば、造形物FFを層状に繰り返し付加製造を行う場合、内側光ビームLC及び外側光ビームLSが繰り返し照射されることにより、基台Bや造形物FFの温度が上昇する場合がある。上述したように、溶融池MP(造形物FF)が適切に保温されることにより、造形物FFの割れを抑制することができる。そこで、この第一別例においては、例えば、放射温度計等によって検出された基台Bや造形物FFの温度に基づいて、制御装置130が検出された温度に応じて少なくとも外側光ビームLSのパワー密度のビームプロファイルにおけるピークLSP1を低下させる。
【0052】
即ち、第一別例においては、付加製造の繰り返しにより、基台Bや造形物FFが結果的に予熱(加熱)されている場合、図11に示すように、外側光ビームLSのパワー密度のピークLSP1を低下させる。この場合においても、上述した本例と同様に、溶融池MPにおいて、コバルト(Co)の凝固点における冷却速度540℃/sを満たし、造形物FFの割れを抑制することができる。更に、この場合には、付加製造に要するエネルギーの低減、ひいては、付加製造に要する製造コストを低減することができる。
【0053】
(6.本例の第二別例)
上述した本例においては、外側光照射範囲SSを円形とし、外側光照射範囲SSが内側光照射範囲CSと同心円状となるようにした。これに代えて、第二別例においては、例えば、外側光ビーム照射装置122を構成する図示省略の光学系を適宜設定することにより、図12に示すように、外側光照射範囲SSの形状を走査方向SDに沿った方向の長軸を有する楕円形状とする。更に、第二別例において、内側光照射範囲CSが外側光照射範囲SSに含まれており、走査方向SDにおいて内側光照射範囲CSよりも後側、即ち、溶融池MP(造形物FF)を保温する側が、基台Bを予熱する側より大きくなるように、外側光照射範囲SSを内側光照射範囲CSに対して配置する。
【0054】
これにより、溶融池MP(造形物FF)を保温するための時間を上述した本例よりも長く確保することができる。このため、保温処理に要する外側光ビームLSのパワー密度のピークLSP1を低減することが可能であり、例えば、付加製造における省エネルギーや製造コストの低減を達成することができると共に確実に溶融池MP(造形物FF)を保温することができる。尚、第二別例においては、外側光照射範囲SSの形状を走査方向SDに沿った方向の長軸を有する楕円形状としたが、図12において長鎖線により示すように、外側光照射範囲SSの形状を走査方向SDに沿った方向の長辺を有する四角形状とすることも可能である。この場合においても、上述した第二別例と同様の効果が得られる。
【0055】
(7.本例の第三別例)
上記本例においては、第一光ビームBe1及び第二光ビームBe2のパワー密度のビームプロファイルに関し、ピークLSP1を同じとした。例えば、造形物FFを精密に付加製造する場合、上述した比αを「1.5」に設定する可能性が高く、この場合には、図10に示したように、上記本例では第一光ビームBe1のパワー密度も大きくなってしまう。又、例えば、上述した第二別例のように、走査方向SDにおいて内側光照射範囲CSよりも後側となる外側光照射範囲SSを大きくした場合、保温時間が長くなるため第二光ビームBe2のパワー密度をより小さくすることが好ましい。尚、この場合には、光ビーム照射装置120における光学系や第一光ビームBe1及び第二光ビームBe2のパワー密度のビームプロファイルを独立して変更可能な構成とすることがより好ましい。
【0056】
従って、付加製造の状況に応じて、図13及び図14に示すように、第一光ビームBe1のパワー密度のビームプロファイルのピークLSP1と、第二光ビームBe2のパワー密度のビームプロファイルのピークLSP2と、を異ならせることも可能である。これにより、付加製造に必要なエネルギーを効率良く利用することができ、その結果、付加製造の生産性の向上や省エネルギー及びコスト低減を達成することができる。
【0057】
(8.その他)
上述した本例においては、光ビーム照射装置120は、内側光ビーム照射装置121及び外側光ビーム照射装置122を同軸的に配置するようにした。そして、上述した本例においては、外側光ビーム照射装置122は、外側光ビームLSとして円環状の光ビームを照射することにより、内側光ビームLCによる内側光照射範囲CSの外周に外側光照射範囲SSを形成するようにした。
【0058】
このように、内側光ビーム照射装置121に対して同軸的に外側光ビーム照射装置122を備えて外側光ビームLSを円環状に照射することに代えて、図15に示すように、光ビーム照射装置120を構成することも可能である。即ち、光ビーム照射装置120が、外側光ビーム照射装置として、後側光ビーム照射装置123及び前側光ビーム照射装置124を備えても良い。尚、前側光ビーム照射装置124については、必要に応じて省略することができる。
【0059】
後側光ビーム照射装置123は、後側光ビーム照射部123a及び後側光ビーム光源123bを主に備え、内側光ビームLCの走査方向SDにて後側に円形照射形状の後側光照射範囲BSSとなる後側光ビームBLSを照射する。前側光ビーム照射装置124は、前側光ビーム照射部124a及び前側光ビーム光源124bを主に備え、内側光ビームLCの走査方向SDにて前側に円形照射形状の前側光照射範囲FSSとなる前側光ビームFLSを照射する。これにより、前側光ビームFLSの前側光照射範囲FSSにおいて溶融池MPの形成処理の前処理として予熱処理を行い、後側光ビームBLSの後側光照射範囲BSSにおいて溶融池MP(造形物FF)の付加処理の後処理として保温処理を行う。
【0060】
ここで、図15に示すように光ビーム照射装置120が構成される場合、制御装置130は、少なくとも、後側光ビーム照射装置123による後側光照射範囲BSSが内側光ビーム照射装置121による内側光照射範囲CSの走査軌跡を追従するように、後側光ビーム照射装置123の走査を制御する。これにより、内側光ビーム照射装置121によって形成された溶融池MP(造形物FF)は、後側光ビーム照射装置123による後側光照射範囲BSS内に存在する。従って、後側光ビーム照射装置123は、上述の本例と同様に、溶融池MP(造形物FF)の保温処理を行うことができる。
【0061】
又、光ビーム照射装置120は、後側光ビーム照射装置123及び前側光ビーム照射装置124の少なくとも一方を備えることができる。このため、例えば、前側光ビーム照射装置124を備える場合、図16に例示するように、内側光照射範囲CSに対して前側光照射範囲FSSを重ねるようにすることも可能である。即ち、内側光照射範囲CSに対して後側光照射範囲BSS及び前側光照射範囲FSSの少なくとも一方を重ねるようにすることも可能である。このように、2つの光ビームを重ねることにより、上述の本例と同様に、溶融池MP(造形物FF)の保温処理を行うことができる。
【0062】
又、上記本例では、付加製造装置100において、付加材料供給装置110により、基台Bに対して硬質粉末材料P1及び結合粉末材料P2からなる粉末材料を噴射して供給するようにした。しかしながら、基台Bへの材料供給に関しては、粉末材料に限定されず、金属製の線形材料からなる、例えば、ワイヤ等を付加材料供給装置により供給することも可能である。この場合においては、供給された線形材料が光ビーム照射装置120から照射された内側光ビームLCにより溶融され且つ外側光ビームLSにより保温されることにより、基台Bに造形物FFを付加製造することができる。従って、上記本例と同様の効果が期待できる。
【0063】
更に、上述した本例等では、付加製造装置100がLMD方式を採用した場合を説明した。これに代えて、付加製造装置100がSLM方式を採用した場合であっても、外側光ビーム照射装置が溶融池(造形物)の冷却に際してコバルト(Co)の凝固点における冷却速度を540℃/s以下として保温することが可能である。但し、SLMを採用した場合、通常、光ビームの走査速度はLMDの光ビームの走査速度よりも速い。このため、付加製造装置100がSLMを採用した場合には、例えば、通常の付加製造時よりも内側光ビームLC及び外側光ビームLSの走査速度を低下させることが好ましい。走査速度を低下させるほど、外側光ビームLSによる保温効果がより発揮される。
【符号の説明】
【0064】
100…付加製造装置、110…付加材料供給装置、120…光ビーム照射装置、121…内側光ビーム照射装置、121a…内側光ビーム照射部、121b…内側光ビーム光源、122…外側光ビーム照射装置、122a…外側光ビーム照射部、122b…外側光ビーム光源、123…後側光ビーム照射装置、123a…後側光ビーム照射部、123b…後側光ビーム光源、124…前側光ビーム照射装置、124a…前側光ビーム照射部、124b…前側光ビーム光源、130…制御装置、B…基台、Be1…第一光ビーム(外側光ビーム)、Be2…第二光ビーム(外側光ビーム)、P1…硬質粉末材料、P2…結合粉末材料、FF…造形物、MP…溶融池、LC…内側光ビーム、LS…外側光ビーム、SD…走査方向
図1
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