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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】燃料タンク装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/08 20060101AFI20240220BHJP
   F02M 37/18 20060101ALI20240220BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
F02M37/08 A
F02M37/18
F02M37/00 301R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020004104
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021110313
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】栗田 裕記
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/198075(WO,A1)
【文献】特開2007-132268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00-37/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載した車両に設けられる燃料タンクと、
前記燃料タンク内に設けられるリザーバカップと、
前記リザーバカップ内の燃料を前記エンジン側に供給する第1ポンプと、
前記燃料タンク内の燃料を前記リザーバカップ内に供給する第2ポンプと、
前記第2ポンプの駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記燃料タンク内の燃料残量が第1所定値以下となった場合、前記第2ポンプの駆動を所定時間停止させ、
前記所定時間は、前記燃料タンク内の燃料残量の減少量に応じて変更される、
燃料タンク装置。
【請求項2】
前記所定時間は、前記燃料タンク内の燃料残量の減少量多いほど短く設定される、
請求項1に記載の燃料タンク装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記燃料タンク内の燃料残量が前記第1所定値よりも小さい第2所定値以下となった場合、前記第2ポンプの停止を禁止する、
請求項1または2に記載の燃料タンク装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2ポンプを前記所定時間停止させた後再駆動させ、前記第2ポンプが再駆動後所定期間継続して駆動した場合、前記第2ポンプを再停止させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料タンク装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記車両がアイドル停車中である場合、前記第2ポンプを停止させる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料タンク装置。
【請求項6】
前記制御部は、外気温が所定温度以上である場合、前記第2ポンプを停止させる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料タンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設けられる燃料タンクにおいて、燃料タンク内に設けられる燃料ポンプ(以下インタンクポンプと記す)を用いた燃料タンク装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の燃料タンク装置では、インタンクポンプによって燃料タンク内の燃料を吸い上げるとともに、燃料供給路を介してエンジンの燃料噴射装置まで供給する。
【0003】
また、従来、エンジンに高圧ポンプ(以下サプライポンプと記す)が設けられる燃料タンク装置が知られている(例えば特許文献2参照)。特許文献2の燃料タンク装置では、サプライポンプは燃料タンクの燃料を吸い上げるとともに、燃料を昇圧してエンジンの燃料噴射装置に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-214891号公報
【文献】特開2010-281252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の燃料タンク装置では、インタンクポンプが燃料を吸入できる場合にのみインタンクポンプを駆動させることで、燃料供給路に対する空気混入を防止する。しかし、燃料タンクの燃料残量が少なくなると、燃料供給路の空気混入を完全に防止することはできない。さらに、特許文献1の燃料タンク装置のエンジン側の燃料供給路に、特許文献2の燃料タンク装置のようなサプライポンプがある場合、燃料供給路の空気は、サプライポンプによって吸い上げられる。この結果、空気混入した状態の燃料がサプライポンプに供給されやすい。空気混入した状態の燃料がサプライポンプに供給されると、燃料を昇圧する際に、燃料が炭化しやすい。
【0006】
本発明の課題は、サプライポンプにおいて燃料が炭化し難い燃料タンク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料タンク装置は、燃料タンクと、リザーバカップと、第1ポンプと、第2ポンプと、制御部と、を備える。燃料タンクは、エンジンを搭載した車両に設けられる。リザーバカップは、燃料タンク内に設けられる。第1ポンプは、リザーバカップ内の燃料をエンジン側に供給する。第2ポンプは、燃料タンク内の燃料をリザーバカップ内に供給する。制御部は、第2ポンプの駆動を制御する。制御部は、燃料タンク内の燃料残量が第1所定値以下となった場合、第2ポンプの駆動を所定時間停止させる。所定時間は、燃料タンク内の燃料残量の減少量に応じて変更される。
【0008】
この燃料タンク装置によれば、燃料タンク内の燃料残量に応じて、第2ポンプを所定時間停止させることで、燃料タンクからリザーバカップに供給される燃料の空気混入を防止できる。この結果、リザーバカップから第1ポンプに供給される燃料の空気混入を防止できる。これによって、第1ポンプにおいて燃料が炭化し難い燃料タンク装置を提供できる。
【0009】
所定時間は、燃料タンク内の燃料残量の減少量多いほど短く設定されてもよい。


【0010】
この構成によれば、燃料残量が少ないほど、第2ポンプの停止時間を短くできる。すなわち、燃料タンクの燃料残量が少ない場合、リザーバカップ内にある燃料も減りやすく、リザーバカップの燃料液面が低下する。リザーバカップの燃料液面が低下すると、リザーバカップ内の第2ポンプが空気を吸い込み、リザーバカップ内の燃料に空気混入が発生しやすい。このため、燃料残量が少ないほど、第2ポンプの停止時間を短くすることで、リザーバカップ内の燃料液面の低下を抑制できる。
【0011】
制御部は、燃料タンク内の燃料残量が第1所定値よりも小さい第2所定値以下となった場合、第2ポンプの停止を禁止してもよい。
【0012】
この構成によれば、燃料残量が第2所定値以下となった場合、第2ポンプの停止を禁止することで、リザーバカップ内に燃料を常時供給できる。これによって、制御部は、第1ポンプによってリザーバカップからエンジン12側に供給する燃料が不足するおそれを抑制できる。この結果、エンジンに供給する燃料が不足し、エンジンが停止することを防止できる。
【0013】
制御部は、第2ポンプを所定時間停止させた後再駆動させ、第2ポンプが再駆動後所定期間継続して駆動した場合、第2ポンプを再停止させてもよい。
【0014】
この構成によれば、第2ポンプが所定期間継続して駆動するため、リザーバカップ内に燃料が確実に供給される。この結果、リザーバカップ内の液面の低下を抑制できる。
【0015】
制御部は、車両がアイドル停車中である場合、第2ポンプを停止させてもよい。
【0016】
この構成によれば、アイドル停車中のエンジンが安定して運転される状態において、第2ポンプを停止させることができる。これによって、第1ポンプがリザーバカップから吸い込む燃料量が安定する。このため、リザーバカップの燃料液面の低下速度も安定する。
【0017】
制御部は、外気温が所定温度以上である場合、第2ポンプを停止させてもよい。
【0018】
この構成によれば、燃料の粘度が安定した状態において、第2ポンプを停止させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、サプライポンプにおいて燃料が炭化し難い燃料タンク装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態による燃料タンク装置のシステム図。
図2】本発明の一実施形態によるインタンクポンプ付近の拡大図。
図3】本発明の一実施形態による制御部が行う処理の示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示すように、燃料タンク装置1は、燃料タンク2と、リザーバカップ4と、サプライポンプ(第1ポンプの一例)6と、インタンクポンプ(第2ポンプの一例)8と、制御部10と、を備える。
【0023】
燃料タンク2は、エンジン12を搭載した車両に設けられる。燃料タンク2は、エンジン12と燃料供給路14を介して接続される。燃料タンク2は、エンジン12に供給する燃料を貯蔵する。本実施形態では、燃料タンク2は、主燃料タンク室2aと、副燃料タンク室2bと、を有し、主燃料タンク室2aと、副燃料タンク室2bの上部を連結して一体形成した鞍型の燃料タンク2である。このような鞍型の燃料タンク2は、例えば車両が4輪駆動車や後輪駆動車の場合、後輪に駆動力を伝達するプロペラシャフトが主燃料タンク室2aと、副燃料タンク室2bの間に設けられ、プロペラシャフトと燃料タンク2の干渉を防止する。
【0024】
リザーバカップ4は、燃料タンク2内に設けられる。本実施形態では、リザーバカップ4は、主燃料タンク室2aに設けられる。リザーバカップ4は、主燃料タンク室2aおよび副燃料タンク室2bから供給された燃料を一旦貯蔵する。このような、リザーバカップ4を設けることで、車両が旋回している場合や傾斜地を走行している場合であっても、燃料を燃料供給路14に安定して供給できる。
【0025】
サプライポンプ6は、エンジン12に取り付けられる。サプライポンプ6は、エンジン12のカムによって駆動され、燃料を昇圧してエンジン12の燃料噴射装置16に供給する。本実施形態では、エンジン12はディーゼルエンジンであり、昇圧した燃料を貯蔵するコモンレール16aと、燃料噴射弁16bと、を有する。また、サプライポンプ6は、リザーバカップ4内の燃料を、燃料供給路14および燃料供給路14上に設けられた燃料フィルタ14aを介して吸い上げ、エンジン12側に供給する。また、サプライポンプ6は、リターン配管18と接続され、燃料を昇圧する際に余った燃料をリザーバカップ4および主燃料タンク室2aに戻す。リターン配管18には、サーモバルブ18aが設けられ、燃料の温度が低い場合、リザーバカップ4に燃料を戻す。一方、燃料の温度が高い場合、主燃料タンク室2aに燃料を戻す。
【0026】
インタンクポンプ8は、燃料タンク2内の燃料をリザーバカップ4内に供給する。インタンクポンプ8は、インタンクポンプフィルタ8aを介してリザーバカップ4内の燃料を吸い上げ、レギュレータ8bに供給する。レギュレータ8bでは、燃料の一部がサプライポンプ6から吸い上げられ、残りがフィリングジェット8cおよびサクションジェット8dに流れる。インタンクポンプ8は、制御部10と電気的に接続される。
【0027】
図2に示すように、フィリングジェット8cは、絞り8fと、吐出口8gと、を有する。レギュレータ8bに流れた燃料は、絞り8fで絞られ、絞り8fの下流の圧力が下がる。絞り8fの下流には、主燃料タンク室2aに繋がる通路8eが接続される。主燃料タンク室2aの燃料は、絞り8fの下流で圧力が下がった燃料に吸い込まれて、吐出口8gを介してリザーバカップ4に供給される。
【0028】
また、サクションジェット8dは、絞り8hと、吐出口8iと、を有する。レギュレータ8bに流れた燃料は、絞り8hで絞られ、絞り8hの下流の圧力が下がる。絞り8hの下流には、副燃料タンク室2bに繋がる移送通路(以下サクション通路と記す)20(図1参照)が接続される。副燃料タンク室2bの燃料は、絞り8hの下流で圧力が下がった燃料に吸い込まれ、吐出口8iを介してリザーバカップ4に供給される。
【0029】
図1に示すように、制御部10は、ECU(Electrоnic Control Unit)22に記憶されるソフトウェアによって実現される機能構成である。ECU22は、サプライポンプ6、インタンクポンプ8、および燃料噴射弁16bなどの各種装置と電気的に接続される。ECU22は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成される。ECU22は、各センサおよび各種装置からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、燃料タンク装置1が、所望の運転状態となるように各装置を制御する。
【0030】
次に、図3のフローチャートを用いて、制御部10が実施する制御手順について説明する。制御部10は、図示しないイグニッションスイッチがオンされると、図3のフローチャートの制御手順を開始する。
【0031】
制御部10は、アイドル停車中か否か判断する(S1)。ここで、アイドル停車中とは、車両が停止し、エンジン12がアイドル運転状態であるこという。このような状態では、エンジン12は車両の走行による負荷を受けない状態となるため、エンジン12が安定して運転される。すなわち、サプライポンプ6がリザーバカップ4からエンジン12側へ供給する燃料量が安定する。また、車両が停車しているので、燃料タンク2内の燃料の液面が安定する。すなわち、インタンクポンプ8が燃料タンク2からリザーバカップ4へ供給する燃料量が安定する。制御部10は、アイドル停車中であると判断した場合(S1 Yes)、S2へ処理を進める。一方、制御部10は、アイドル停車中でないと判断した場合(S1 NO)、処理をS1の前に戻し、燃料タンク装置1がエンジン12の負荷に合わせた所望の運転状態(以下、通常運転状態と記す)なるように各装置を制御する。
【0032】
制御部10は、インタンクポンプ8を停止させる停止制御を禁止する条件が成立していないか否かを判断する(S2)。ここで、停止制御を禁止する条件は、例えば、車両に搭載されるバッテリの電圧が所定電圧以下の場合である。このような場合、インタンクポンプ8の駆動力が低下する。インタンクポンプ8の駆動力が低下すると、サクションジェット8dの負圧が下がり、サクション通路20の燃料移送量が低下する。この結果、副燃料タンク室2bからリザーバカップ4への燃料供給量が減る。また、フィリングジェット8cの負圧も低下し、主燃料タンク室2aから、リザーバカップ4への燃料供給量が減る。その他、車両の車速センサ、車輪の回転数センサ、アクセルポジションセンサの故障により、車両がアイドル停車中か否か正しく判定できない場合なども、停止制御を禁止する。また、エンジン12がアイドル運転中であっても、エンジン12の回転数が所定回転数よりも高い場合、停止制御を禁止する。このような場合は、サプライポンプ6によってリザーバカップ4からエンジン側へ供給される燃料が多くなり、リザーバカップ4の燃料液面が低下しやすい。
【0033】
また、停止制御を禁止する条件は、外気温Wが所定温度W1未満の場合を含む。すなわち、外気温Wが所定温度W1未満の場合、燃料の粘度が高くなり、燃料がフィリングジェット8c、サクションジェット8d、およびサクション通路20を通過する際の抵抗が大きくなる。この結果、インタンクポンプ8のポンプ能力が落ちる。このような状態では、インタンクポンプ8を停止しないほうが好ましい。すなわち、制御部10は、外気温Wが所定温度W1以上の場合であれば、インタンクポンプ8を停止する。さらに、制御部10は、外気温Wが高い場合であっても燃料の温度が低い温度の場合、停止制御を禁止してもよい。燃料の温度は、燃料タンク2や燃料供給路14に温度センサを設けて取得してもよい。
【0034】
制御部10は、インタンクポンプ8を停止させる停止制御を禁止する条件が成立していないと判断した場合(S2 Yes)、S3に処理を進め、燃料タンク2の燃料残量FLを検知し、S4に処理を進める。燃料残量FLは、例えば、図示しない燃料レベルセンサによって検知できる。一方、制御部10は、インタンクポンプ8を停止させる停止制御を禁止する条件が成立していると判断した場合(S2 No)、S1の前に処理を戻す。すなわち、制御部10は、停止制御を禁止する条件が成立している間は、インタンクポンプ8の停止制御を実施しない。
【0035】
S4では、制御部10は、燃料残量FLが、第1所定値FL1以下、かつ、第2所定値FL2以上であるか否かを判断する。すなわち、制御部10は、燃料残量FLが所定範囲
FLw以内であるか否か判断する。第1所定値FL1は、リザーバカップ4内に十分な燃料があることが予想される燃料残量FLである。本実施形態では、主燃料タンク室2a内の燃料の液面がインタンクポンプ8の上端よりも高くなる燃料残量FLに設定されている。一方、主燃料タンク室2aに十分な燃料があっても、副燃料タンク室2bに十分な燃料が無い場合もある。燃料残量FLが第1所定値FL1の場合、このように副燃料タンク室2bの燃料が主燃料タンク室2aよりも少なくなるおそれがある。このような場合、副燃料タンク室2bからサクションジェット8dを介してリザーバカップ4に供給する燃料に空気混入のおそれが生じる。すなわち、第1所定値FL1は、燃料タンク2の形状に応じて変化する値である。本実施形態では、第1所定値FL1は、例えば、燃料タンク2が貯蔵可能な燃料の半分以上の値である。
【0036】
また、第2所定値FL2は、第1所定値FL1よりも小さい値であり、インタンクポンプ8を停止した場合、サプライポンプ6がリザーバカップ4からエンジン12側に供給する燃料が不足するおそれが生じる燃料残量FLである。本実施形態では、第2所定値FL2は、リザーバカップ4内の液面が、フィリングジェット8cの吐出口8gやサクションジェット8dの吐出口8iよりも低いと予測される燃料残量FLに設定される。これは、インタンクポンプ8を停止した場合、サプライポンプ6により吐出口8g、吐出口8iから燃料が吸い上げられることになるが、リザーバカップ4内の液面が吐出口8g、吐出口8iよりも低い場合、サプライポンプ6により燃料と一緒に空気も吸い上げることになるためである。本実施形態では、第2所定値FL2は、例えば、燃料タンク2が貯蔵可能な燃料の5分の1以下の値である。制御部10は、燃料残量FLが、第1所定値FL1以下、かつ、第2所定値FL2以上の所定範囲FLw以内であると判断した場合(S4 Yes)、S5に処理を進める。
【0037】
S5では、制御部10は、燃料残量FLが第3所定値FL3以上か否か判断する。ここで、第3所定値FL3は、インタンクポンプ8を停止した場合、リザーバカップ4内の燃料液面が低下しすぎるおそれが生じる燃料残量FLである。リザーバカップ4内の燃料液面が低下しすぎると、サプライポンプ6がリザーバカップ4からエンジン12側に供給する燃料が不足するおそれ、および、サプライポンプ6が吸い込む燃料に空気が混入するおそれがある。すなわち、第3所定値FL3は、サプライポンプ6のポンプ能力や、リザーバカップ4の容量によって変化する値である。また、第3所定値FL3は、第2所定値FL2より大きく、第1所定値FL1より小さい値である。本実施形態では、第3所定値FL3は、例えば、燃料タンク2が貯蔵可能な燃料の4分の1以下の値である。制御部10は、燃料残量FLが第3所定値FL3以上であると判断した場合(S5 Yes)、S6に処理を進める。
【0038】
S6では、制御部10は、インタンクポンプ8の駆動時間(所定期間)Tdが第2所定時間T2経過したか否か判断する。ここで、第2所定時間T2は、インタンクポンプ8を駆動することで主燃料タンク室2aおよび副燃料タンク室2bからリザーバカップ4に十分な燃料が供給される時間である。すなわち、第2所定時間T2は、インタンクポンプ8およびサプライポンプ6のポンプ能力、ならびにリザーバカップ4の容量によって変化する時間である。制御部10は、インタンクポンプ8の駆動時間Tdが第2所定時間T2経過していないと判断した場合(S6 No)、処理をS1の前に戻す。すなわち、制御部10は、インタンクポンプ8の駆動時間Tdが第2所定時間T2経過するまでインタンクポンプ8を駆動する。制御部10は、インタンクポンプ8の駆動時間Tdが第2所定時間T2経過したと判断した場合(S6 Yes)、処理をS7に進め、インタンクポンプ8を停止する。すなわち、制御部10は、インタンクポンプ8が連続して第2所定時間T2以上駆動していない場合、インタンクポンプ8の停止を行わない。
【0039】
制御部10は、S7でインタンクポンプ8を停止し、S8に処理を進める。S8では、制御部10は、インタンクポンプ8の停止時間(所定時間)Tsが第1所定時間T1経過したか否か判断する。第1所定時間T1は、リザーバカップ4内に十分な燃料が存在する状態でインタンクポンプ8を停止した場合、リザーバカップ4内の燃料液面が低下しすぎない時間である。制御部10は、インタンクポンプ8の停止時間Tsが第1所定時間T1経過したと判断した場合(S8 Yes)、S9に処理を進め、インタンクポンプ8を駆動し(S9)、処理をS1の前に戻す。
【0040】
制御部10は、燃料残量FLが、所定範囲FLw以内にないと判断した場合(S4 No)、S10に処理を進める。S10では、制御部10は、燃料残量FLが第2所定値FL2未満か否か判断する。制御部10は、燃料残量FLが第2所定値FL2未満であると判断した場合(S10 Yes)、S11に処理を進め、インタンクポンプ8の停止を禁止し(S11)、処理をS1の前に戻す。制御部10は、このようにインタンクポンプ8の停止を禁止することで、リザーバカップ4内の燃料が無くなることを防止し、サプライポンプ6がエンジン12側に燃料を供給できず、エンジン12が停止することを防止する。一方、制御部10は、燃料残量FLが第2所定値FL2未満ではないと判断した場合(S10 No)、すなわち、燃料残量FLが第1所定値FL1よりも多い場合、処理をS1の前に戻す。つまり、制御部10は、通常運転状態のインタンクポンプ8の制御を行いつつ、再度、インタンクポンプ8を停止させるか否かの判断を行う。
【0041】
S5では、制御部10は、燃料残量FLが第3所定値FL3未満であると判断した場合(S5 No)、処理をS12に進める。S12では、S6と同様に、制御部10は、インタンクポンプ8の駆動時間(所定期間)Tdが第2所定時間T2経過したか否か判断する。制御部10は、インタンクポンプ8を第2所定時間T2駆動していないと判断すると(S12 No)、処理をS1の前に戻す。制御部10は、インタンクポンプ8を第2所定時間T2駆動したと判断すると(S12 Yes)、処理をS13に進める。S13では、制御部10は、インタンクポンプ8を停止し、処理をS14に進める。S14では、制御部10は、インタンクポンプ8の停止時間Tsが第3所定時間T3経過したか否か判断する。制御部10は、インタンクポンプ8の停止時間Tsが第3所定時間T3経過したと判断した場合(S14 Yes)、S15に処理を進める。S15では、制御部10は、インタンクポンプ8を駆動する。制御部10は、S15でインタンクポンプ8を駆動すると、処理をS1の前に戻す。
【0042】
ここで、第3所定時間T3は、第1所定時間T1よりも短い時間である。すなわち、制御部10は、燃料残量FLが少ないほど、インタンクポンプ8の停止時間Tsを短くする。これによって、制御部10はリザーバカップ4内の燃料液面の低下を抑制する。すなわち、燃料残量FLが第3所定値FL3未満の場合、インタンクポンプ8が停止すると、サプライポンプ6がリザーバカップ4内の燃料をエンジン12側に供給することで、リザーバカップ4内の燃料液面が過度に低下するおそれのある状態となる。より具体的には、燃料タンク2(本実施形態では副燃料タンク室2b)内の燃料液面の高さがリザーバカップ4内の燃料液面の高さよりも低い位置になると、リザーバカップ4内の燃料は、サプライポンプ6によって燃料が持ち去られることに加え、サイフォンの原理によってサクション通路20を通り燃料タンク2へと流れ出る。このとき、燃料残量FLが少ない(例えば、燃料残量FLが第3所定値FL3未満)場合、燃料残量FLが多い場合(例えば、燃料残量FLが第3所定値FL3以上)に比べて、リザーバカップ4内の燃料は、リザーバカップ4内の燃料液面がより低い位置となるまで、サクション通路20を通り燃料タンク2へと流れ出る。この結果、第3所定値FL3未満におけるリザーバカップ4内の液面が過度に低下するまでの時間は、燃料残量FLが第3所定値FL3以上における液面が過度に低下するまでの時間に比べて短い。制御部10は、このようにインタンクポンプ8の停止時間Tsを第1所定時間T1よりも短い第3所定時間T3とすることで、サプライポンプ6によってリザーバカップ4内の燃料が減りすぎないようにし、リザーバカップ4内の過度な液面低下を抑制する。
【0043】
S8で制御部10が、インタンクポンプ8の停止時間Tsが第1所定時間T1経過していないと判断した場合(S8 No)、インタンクポンプ8を停止させる停止制御を禁止する条件が成立していないか否かを判断する(S16)。制御部10は、停止制御を禁止する条件が成立していないと判断した場合(S16 Yes)、S17へ処理を進め、燃料残量FLが第3所定値FL3以上か否か判断する(S17)。制御部10は、燃料残量FLが第3所定値FL3以上でないと判断した場合(S17 No)、S18へ処理を進める。S18では、インタンクポンプ8の停止時間Tsが第3所定時間T3経過しているか否か判断する。制御部10は、第3所定時間T3経過していないと判断した場合(S18 No)、処理をS14の前に進める。また、制御部10は、第3所定時間T3が経過していると判断した場合(S18 Yes)、処理をS15の前に処理を進め、インタンクポンプ8を駆動する。
【0044】
すなわち、制御部10は、インタンクポンプ8が第1所定時間T1まで停止する間に、燃料残量FLが第3所定値FL3未満まで減少した場合、インタンクポンプ8の停止時間Tsを第3所定時間T3に切り替える。さらに、制御部10は、燃料残量FLが第3所定値FL3未満まで減少したときのインタンクポンプ8の停止時間Tsが第3所定時間T3経過している場合は、インタンクポンプ8を駆動する。
【0045】
一方、制御部10は、インタンクポンプ8を停止させる停止制御を禁止する条件が成立していると判断した場合(S16 No)、処理をS1の前に戻す。さらに、制御部10は、燃料残量FLが第3所定値FL3以上であると判断した場合(S17 Yes)、処理をS8の前に戻し、インタンクポンプ8の停止を続ける。
【0046】
また、制御部10は、インタンクポンプ8の停止時間Tsが第3所定時間T3経過してないと判断した場合(S14 No)、処理をS19に進める。S19では、インタンクポンプ8を停止させる停止制御を禁止する条件が成立していないか否か判断する。制御部10は、停止制御を禁止する条件が成立していないと判断した場合(S19 Yes)、処理をS14の前に戻して、第3所定時間T3が経過するまでインタンクポンプ8を停止する。制御部10は、インタンクポンプ8を停止させる停止制御を禁止する条件が成立していると判断した場合(S19 No)、処理をS1の前に戻す。
【0047】
以上説明した通り、本発明の燃料タンク装置1によれば、燃料タンク2内の燃料残量FLに応じて、インタンクポンプ8を第1所定時間T1、または、第3所定時間T3停止させることで、燃料タンク2からリザーバカップ4に供給される燃料の空気混入を防止できる。この結果、リザーバカップ4からサプライポンプ6に供給される燃料の空気混入を防止できる。これによって、サプライポンプ6において燃料が炭化し難い燃料タンク装置1を提供できる。
【0048】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0049】
(a)上記実施形態では、エンジン12は、ディーゼルエンジンを例に説明したが、本発明はこれに限定されない。エンジン12は、サプライポンプ6を有する筒内噴射型のガソリンエンジンであってもよい。
【0050】
(b)上記実施形態では、主燃料タンク室2aと副燃料タンク室2bを有する燃料タンク2を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。燃料タンク2は、主燃料タンク室2aのみ有する燃料タンク2であってもよい。この場合、サクションジェット8dおよびサクション通路20は、不要である。
【0051】
(c)上記実施形態では、燃料タンク2は、主燃料タンク室2aと副燃料タンク室2bの上部を連結して一体形成した鞍型の燃料タンク2を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。主燃料タンク室2aと副燃料タンク室2bは、別体で設けられてもよい。
【0052】
(d)上記実施形態では、インタンクポンプ8の停止時間Tsは、燃料残量FLが第3所定値FL3以上の場合に第1所定時間T1とし、第3所定値FL3未満の場合に第1所定時間T1よりも短い第3所定時間T3とする例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。インタンクポンプ8の停止時間Tsは、燃料タンク内の燃料残量FLに応じて設定すればよい。なお、インタンクポンプ8の停止時間Tsは、燃料タンク内の燃料残量FLが少ないほど長く設定してもよい。すなわち、燃料タンク内の燃料残量FLが少ないほど、インタンクポンプ8により空気を吸うことになるため、インタンクポンプ8を長く停止させてリザーバカップ4内の燃料に空気が混入することを防止してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1:燃料タンク装置,2:燃料タンク,4:リザーバカップ
6:サプライポンプ,8:インタンクポンプ,10:制御部,12:エンジン
FL:燃料残量,FL1:第1所定値,FL2:第2所定値
FL3:第3所定値,T1:第1所定時間,T2:第2所定時間
T3:第3所定時間,Td:駆動時間
Ts:停止時間,W:外気温,W1:所定温度
図1
図2
図3