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特許7439527携帯型心電装置及び生体情報管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】携帯型心電装置及び生体情報管理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/352 20210101AFI20240220BHJP
【FI】
A61B5/352
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020006254
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021112364
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 充
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2009-0064678(KR,A)
【文献】Cell, 1984, Vol.39, pp.223-232
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の心電波形を検出する電極部と、
メモリ部と、
制御部と、
を備え、
前記電極部は、
複数種の誘導法のうち、いずれか二つの誘導法において、前記被検者の身体の異なる部位に接触させられる電極を含み、
前記制御部は、
前記心電波形を特定する特徴情報を、前記複数種の誘導法のそれぞれによる前記被検者の前記心電波形に対して、該被検者の登録特徴情報として前記メモリ部に保存し、
前記被検者の、前記電極部によって検出された心電波形について取得された前記特徴情報と、該被検者の前記登録特徴情報とに基づいて、前記心電波形を検出する際の誘導法の種別を判定することを特徴とする携帯型心電装置。
【請求項2】
前記複数種の誘導法は、標準12誘導法のI誘導及びV4誘導を含み、
前記特徴情報は、R波高さ、T波高さ又はS波高さの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の携帯型心電装置。
【請求項3】
前記検出された前記心電波形及び該心電波形に対する前記誘導法の種別の判定結果を、前記メモリ部に保存することを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯型心電装置。
【請求項4】
前記被検者に情報を提供する報知部を備え、
前記制御部は、前記誘導法の指定を受け付け、
前記検出された前記心電波形に対する前記誘導法の種別の判定結果が、指定された前記誘導法と異なる場合には、前記報知部によって、前記誘導法に関する情報を提供することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の携帯型心電装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の携帯型心電装置と、
端末制御部と、前記被検者に情報を提供する端末報知部と、前記携帯型心電装置と情報
の送受信を行う端末通信部とを備えた端末と、
を含む生体情報管理システムであって、
前記被検者の前記登録特徴情報を取得するために、該被検者が前記誘導法のいずれかに従って前記電極部を身体に接触させる際に、前記端末制御部は、前記端末報知部を通じて、前記被検者に前記誘導法を教示することを特徴とする生体情報管理システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記誘導法の指定を受け付け、
前記検出された前記心電波形に対する前記誘導法の種別の判定結果が、指定された前記誘導法と異なる場合には、前記端末報知部によって、前記誘導法に関する情報を提供することを特徴とする請求項5に記載の生体情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日常生活等における心電波形測定が可能な携帯型の心電装置及びこれを含む生体情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活における胸部の痛みや動悸などの異常発生時に、すぐに心電波形を測定可能な携帯型の心電測定装置(以下、「携帯型心電装置」ともいう)が提案されている。医師等においては、家庭や外出先等で動悸等の症状が起きた際に当該心電装置によって測定された心電波形のデータ等に基づいて、心疾患の早期発見や適切な治療行為を施すことが可能になる。
【0003】
従来、このような携帯型心電装置において、同一の被検者の異なる心電波形に着目した技術が提案されている。例えば、特許文献1には、個人の心電波形をそのばらつきとともに記憶し、心電波形のばらつきに影響されずに、心電波形を用いた個人認証を行う技術が開示されている。また、特許文献2には、心電波形を登録する際に、心電センサを導体の中心、左、右、上、下に持つように指示し、心電波形のばらつきを考慮して記憶し、心電波形のばらつきに影響されずに、心電波形を用いた個人認証を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-176106号公報
【文献】特開2017-51611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に開示された技術は、いずれも、心電波形を個人認証に用いることを目的としており、同一の被検者に対応付けられるべき心電波形に現れるばらつきに着目したものである。これに対して、心電波形を測定する際の誘導法による心電波形の違いに着目した技術はなかった。しかし、誘導法によって心電波形が異なるため、複数の誘導法による心電波形検出を許容する心電装置では、いずれの誘導法による心電波形であるかが分からなければ適切な処理ができない。
【0006】
上記のような課題に鑑み、本発明は、複数の誘導法によって心電波形が検出される場合に、心電波形がいずれの誘導法によるものかを判別する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る携帯型心電装置は、
被検者の心電波形を検出する電極部と、
メモリ部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記心電波形を特定する特徴情報を、複数種の誘導法のそれぞれによる前記被検者の前記心電波形に対して、該被検者の登録特徴情報として前記メモリ部に保存し、
前記被検者の、前記電極部によって検出された心電波形について取得された前記特徴情
報と、該被検者の前記登録特徴情報とに基づいて、前記心電波形を検出する際の誘導法の種別を判定することを特徴とする。
【0008】
このようにすれば、複数の誘導法について、被検者ごとの心電波形に対する特徴情報(登録特徴情報)と、電極部によって検出された当該被検者の心電波形について取得された特徴情報とに基づいて、被検者が心電波形を検出する際の誘導法の種別を、携帯型心電装置が適切に判定することができる。このように心電波形が検出された誘導法の種別が適切に判定されれば、心電波形を適切に処理することができるので、心電波形の解析を精度よく行うことができ、また、心電波形に基づく医師の診断に有益な情報を提供することができる。
心電波形を特徴づける特徴情報としては、例えば、P波高さ及びP波幅、Q波高さ、PQ時間、R波高さ、S波高さ、QRS幅、T波高さ及びT波幅、QT時間、U波高さ及びU波幅の一つ又は複数、若しくはこれらの一つ又は複数から算出される値をパラメータとして用いることができるが、これに限られない。例えば、電極部によって検出された心電波形について取得されたパラメータと、当該被検者の登録特徴情報として保存されたパラメータとの差分をとる等の手法によって比較し、電極部によって検出された心電波形について取得されたパラメータにより近い誘導法を、当該心電波形が検出された際の誘導法であると判定する。
登録特徴情報は、各誘導法に従って、被検者が携帯型心電装置の電極に身体の一部を接触させることにより検出された心電波形から取得してもよいし、外部装置から取得した被検者の心電波形の特徴情報を用いてもよい。
【0009】
また、本発明において、
前記複数種の誘導法は、標準12誘導法のI誘導及びV4誘導を含み、
前記特徴情報は、R波高さ、T波高さ又はS波高さの少なくともいずれかを含むようにしてもよい。
【0010】
このようにすれば、I誘導及びV4誘導をより的確に特徴づける、R波高さ、T波高さ
又はS波高さの少なくともいずれかを含む特徴情報を採用することにより、精度よく誘導法の種別を判定することができる。
【0011】
また、本発明において、
前記検出された前記心電波形及び該心電波形に対する前記誘導法の種別の判定結果を、前記メモリ部に保存するようにしてもよい。
【0012】
このようにすれば、医師が携帯型心電装置から心電波形を読み出して診断等に利用する場合に、心電波形を検出する際の誘導種別に関する有用な情報を併せて提供することができる。
【0013】
また、本発明において、
前記被検者に情報を提供する報知部を備え、
前記制御部は、前記誘導法の指定を受け付け、
前記検出された前記心電波形に対する前記誘導法の種別の判定結果が、指定された前記誘導法と異なる場合には、前記報知部によって、前記誘導法に関する情報を提供するようにしてもよい。
【0014】
このようにすれば、複数種の誘導法のうち被検者が収集すべき心電波形の誘導法を医師が指定したい場合等に、誘導法の指定を受け付け、被検者が、指定された誘導法と異なる誘導法で心電測定を行った場合には、報知部によって、誘導法が誤っていることを示す情報等の誘導法に関する情報を提供することにより、被検者に注意を喚起し、指定された誘
導法による測定を促すことができる。
【0015】
また、本発明は、
前記携帯型心電装置と、
端末制御部と、前記被検者に情報を提供する端末報知部と、前記携帯型心電装置と情報の送受信を行う端末通信部とを備えた端末と、
を含む生体情報管理システムであって、
前記被検者の前記登録特徴情報を取得するために、該被検者が前記誘導法のいずれかに従って前記電極部を身体に接触させる際に、前記端末制御部は、前記端末報知部を通じて、前記被検者に前記誘導法を教示することを特徴とする。
【0016】
このようにすれば、登録特徴情報を取得する際に、被検者は、端末報知部を通じて、複数種の誘導法のいずれに従って電極部を身体に接触させればよいかを容易かつ明確に理解することができるので、適切な登録特徴情報を保存し、精度よい誘導法の種別の判定が可能となる。
端末としては、スマートフォンやタブレット端末やノートPC等の携帯可能な端末に限らず、据置型のパーソナルコンピュータ等であってもよい。
【0017】
また、本発明において、
前記制御部は、前記誘導法の指定を受け付け、
前記検出された前記心電波形に対する前記誘導法の種別の判定結果が、指定された前記誘導法と異なる場合には、前記端末報知部によって、前記誘導法に関する情報を提供するようにしてもよい。
【0018】
このようにすれば、複数種の誘導法のうち被検者が収集すべき心電波形の誘導法を医師が指定したい場合等に、誘導法の指定を受け付け、被検者が、指定された誘導法と異なる誘導法で心電測定を行った場合には、端末報知部によって、誘導法が誤っていることを示す情報等の誘導法に関する情報を提供することにより、被検者に注意を喚起し、指定された誘導法による測定を促すことができる。誘導法の指定は、端末が受け付け、端末通信部を介して、携帯型心電装置に送信するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の誘導法によって心電波形が検出される場合に、心電波形がいずれの誘導法によるものかを判別する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態1に係る携帯型心電装置の外観を示す図である。
図2図2は、実施形態1に係る携帯型心電装置の機能ブロック図である。
図3図3は、実施形態1に係るスマートフォンの機能ブロック図である。
図4図4は、実施形態1に係る携帯型心電装置の初期設定処理の手順を説明するフローチャートである。
図5図5(A)は、実施形態1に係る携帯型心電装置の初期設定におけるI誘導測定の心電波形を示すグラフであり、図5(B)はその1拍分の心電波形の拡大図である。
図6図6(A)は、実施形態1に係る携帯型心電装置の初期設定におけるV4誘導の心電波形を示すグラフであり、図6(B)はその1拍分の心電波形の拡大図である。
図7図7(A)は、心電波形を特定するパラメータを説明する図である。
図8図8は、実施形態1に係る携帯型心電装置の心電測定処理の手順を説明するフローチャートの一部である。
図9図9は、実施形態1に係る携帯型心電装置の心電測定処理の手順を説明するフローチャートの一部である。
図10図10(A)は、実施形態1に係る携帯型心電装置によって測定された心電波形を示すグラフであり、図10(B)は、その1拍分の心電波形の拡大図である。
図11図11(A)~(J)は、I誘導とV4誘導を除く標準12誘導法による1拍分の心電波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。
【0022】
<実施形態1>
以下に、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0023】
(携帯型心電装置の構成)
図1(A)~(F)は本実施形態に係る携帯型心電装置100の構成の一例を示す図である。図1(A)は、携帯型心電装置100を前面から見た図である。図1(B)は、携帯型心電装置100を下方から見た図である。図1(C)は、携帯型心電装置100を上方から見た図である。図1(D)は、携帯型心電装置100の前面から見た左側面を示す図である。図1(E)は、携帯型心電装置100の前面から見た右側面を示す図である。図1(F)は、携帯型心電装置100を背面から見た図である。上下方向は、図1(A)に示す姿勢の携帯型心電装置100に対して、紙面上での上下方向を意味する。
【0024】
図1(A)~(F)に示すように、携帯型心電装置100の本体1は、角を丸めた略四角柱形状であって前面及び背面間が扁平に形成されている。携帯型心電装置100の底部には、第1電極2が設けられている。携帯型心電装置100の上部には、前面から見て左側に第2電極3、同右側に第3電極4が設けられている。携帯型心電装置100の上部は、被検者の右手人差し指が当接しやすいように滑らかに湾曲する形状となっている。携帯型心電装置100の本体1の前面には、測定通知LED5と異常波検出LED6が上下に並んで配置されている。測定通知LED5は、心電波形の計測時に点灯あるいは明滅する発光素子である。異常波形検出LED6は、計測された心電波形に関し、異常波形が検出された際に点灯する発光素子である。異常波形検出LED6の点灯を通じて、心電波形の測定データから検出された異常波形の有無が被検者に通知される。携帯型心電装置100の本体1の、前面から見て左側面には、電源スイッチ7、電源LED8、BLE通信ボタン9、通信LED10、メモリ残表示LED11、電池交換LED12が上下に並んで配置されている。電源スイッチ7は、携帯型心電装置100の電源を投入するための押下スイッチであり、電源LED8は電源投入時に点灯する発光素子である。BLE通信ボタン9は、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)方式に準拠した機器との通信を機能させるための操作部品であり、通信LED10は、通信時に点灯する発光素子である。なお、携帯型心電装置100の備える通信機能は、BLE方式に限られず、赤外線通信、超音波による情報伝送などの無線通信方法、ケーブル又はコネクタ等を介して接続される有線通信方式であってもよい。メモリ残表示LED11は、後述するメモリ部の空き容量の状態を示す発光素子である。電池交換LED12は、携帯型心電装置100の備える電源(バッテリ)の電力が所定値を下回ったときに点灯し、電池交換を促す発光素子である。また、携帯型心電装置100の本体1の背面には、着脱可能な電池カバー13が設けられている。
【0025】
ここで、心電測定において、例えば、I誘導測定が行われる場合には、携帯型心電装置100を右手で把持しつつ、本体の底部に設けられた第1電極2を左手掌に接触させる。携帯型心電装置100を把持する際には、右手の人差し指を第2電極3に接触させ、右手
人差し指の中節を第3電極4に接触させる。被検者では、例えば、第2電極3、第3電極4が設けられた本体の上部側から、底部に設けられた第1電極2を左手掌方向に押し当てる方向に押圧しながら心電測定が行われる。ここでは、右手の人差し指及びその中節並びに左手掌が、本発明の電極部を接触させる身体に対応する。
【0026】
また、心電測定においてV4誘導測定が行われる場合では、被検者は、例えば、携帯型心電装置100を右手で把持しつつ、本体の底部に設けられた第1電極2を、左胸部の心窩部やや左方・乳頭下方の皮膚に接触させる。携帯型心電装置100を把持する際には、右手の人差し指を第2電極3に接触させ、右手人差し指の中節を第3電極4に接触させる。そして、第2電極3、第3電極4が設けられた本体1の上部側から、底部に設けられた第1電極2を、測定部位方向に押し当てる方向に押圧しながら心電測定が行われる。ここでは、右手の人差し指及びその中節並びに左胸部の心窩部やや左方・乳頭下方の皮膚が、本発明の電極部を接触させる身体に対応する。
【0027】
(携帯型心電装置の構成)
次に、携帯型心電装置100の構成を説明する。図2は、本実施形態に係る携帯型心電装置100の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0028】
図2に示すように、携帯型心電装置100は、電極部101と、アンプ部102と、AD(Analog to Digital)変換部103と、制御部104と、タイマ部105を含んで構
成される。また、携帯型心電装置100の構成には、メモリ部106と、表示部107と、操作部108と、電源部109と、通信部110が含まれる。制御部104と、タイマ部105と、メモリ部106と、表示部107と、操作部108と、電源部109と、通信部110とは相互に接続されている。
【0029】
電極部101は、一対の測定電極として機能する第1電極2及び第3電極4と、GND電極として機能する第2電極3を備える。被検者の皮膚に接触された電極部101を通じて、所定期間内における心電波形が検出される。電極部101の各電極で検出された心電波形は、それぞれ、当該電極部に接続されるアンプ部102に入力される。アンプ部102では、電極部101で検出された信号が増幅されてAD変換部103に出力される。AD変換部103では、アンプ部102を通じて増幅された心電波形の検出信号がデジタル変換されて制御部104に出力される。
【0030】
タイマ部105は、制御部104からの指示を受け付け、心電波形の計測に係る各種時間又は期間をカウントする手段である。
【0031】
メモリ部106は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などの主記憶装置の他、例えばフラッシュメモリなどの長期記憶媒体を含んで構成される。メモリ部106には、心電波形の測定及び解析に係る各種プログラム、異常波形等を検出するための各種の情報が記憶される。表示部107は、心電波形の計測に係る各種の情報を表示する手段である。表示部107には、測定通知LED5、異常波形検出LED6電源LED8、通信LED10、メモリ残表示LED11、電池交換LED12が含まれる。表示部107は、液晶ディスプレイ等の画像・映像により各種の情報を表示する手段を含んでもよい。
【0032】
操作部108は、被検者からの操作入力を受け付ける手段である。操作部108には、電源スイッチ7、BLE通信ボタン9が含まれる。電源部109は、携帯型心電装置100を機能させるための電力を供給する手段であり、バッテリや2次電池等が含まれる。通信部110は、スマートフォン200といった機器との間で信号の送受信を司る通信インターフェィスである。通信部110の提供する通信機能としてBLE通信が例示できるが
、他の公知の無線通信方式、有線通信方式が採用できる。
【0033】
(スマートフォン)
図3は、スマートフォン200の構成を示すブロック図である。後述するように、スマートフォン200は、携帯型心電装置100と連携して生体情報管理システムを構成する。
スマートフォン200は、制御部201と、タッチパネルディスプレイ202、スピーカ等の音声出力部203、メモリ部204、マイク等の音声入力部205、ボタン等の操作部206、電源部207、携帯型心電装置100との間でBLE通信等の方式による信号の送受信を司る通信インターフェースである通信部208を備える。携帯型心電装置100と通信可能な端末の一例であるスマートフォン200としては公知の構成を採用することができるので、詳述しない。ここでは、制御部201及び通信部208が、本発明の端末制御部及び端末通信部に対応する。
【0034】
(初期設定)
以下に、携帯型心電装置100とスマートフォン等の端末との間でBLE通信しながら行われる初期設定について説明する。図4は、この初期設定の処理手順を示すフローチャートである。
【0035】
まず、携帯型心電装置100において、被検者は電源スイッチ7を押下することにより電源をONする(ステップS101)。一方、スマートフォン200では、心電測定用のアプリケーションプログラム(以下、「アプリ」という。)を開き(ステップS201)、初期設定を行う。ここでは、携帯型心電装置100と、心電測定用のアプリがインストールされたスマートフォン200との関連付け、被検者のIDの登録等の準備は完了しているものとして説明する。
【0036】
アプリは、携帯型心電装置を含む心電測定装置、血圧計、体脂肪計、活動量計等の種々の生体情報測定装置の情報を収集できる設定になっている。被検者は、追加すべき生体情報測定装置がある場合には、アプリの生体情報測定機器の追加機能により、当該生体情報測定装置を追加する(ステップS202)。
アプリによって情報を収集できる心電測定装置にも種々の機種があるので、被検者はEKG(心電測定装置)の機種選択の機能により、携帯型心電装置100の該当機種を選択する(ステップS203)。
【0037】
次に、携帯型心電装置100とスマートフォン200との間で、所定の手順に従って、BLE接続を行う(ステップS102、ステップS204)。
携帯型心電装置100とスマートフォン200との間で、BLE接続が確立されると、スマートフォン200は携帯型心電装置100に対して、通信開始要求を送信する(ステップS205)。
【0038】
通信開始要求を受信した携帯型心電装置100では、被検者が、I誘導測定と、V4誘
導測定の2種の誘導法による心電波形測定を行う(ステップS103)。図5(A)は、I誘導測定により測定された心電波形を示す。心電波形は、上段から下段へと時系列で連
続している。図5(B)は図5(A)に示した心電波形の心拍1拍分を拡大して示した図である。図6(A)は、V4誘導測定により測定された心電波形を示す。心電波形は、上段から下段へと時系列で連続している。図6(B)は図6(A)に示した心電波形の心拍1拍分を拡大して示した図である。そして、制御部104は、この測定によって取得された2種の誘導法による心電波形を、メモリ部106の所定領域に保存する(ステップS104)。被検者が、I誘導測定と、V4誘導測定を行う際には、使用説明書を参照してもよいし、スマートフォン200のアプリにより、タッチパネルディスプレイ202や音声
出力部203を通じて、映像又は音声により、I誘導測定と、V4誘導測定に関する情報
を提供することにより、被検者に教示するようにしてもよい。このとき、タッチパネルディスプレイ202及び音声出力部203が本発明の端末報知部に対応する。ここでは、複数種として2種の誘導法による心電波形測定を行うが、携帯型心電装置100において3種以上の誘導法による心電波形測定を行うようにしてもよい。
【0039】
図7は、一般的な心電波形の各部の名称を示したものである。P波について、P波高さ及びP波幅、Q波について、Q波高さ、P波及びQ波について、PQ時間、R波について、R波高さ、S波について、S波高さ、Q波、R波及びS波について、QRS幅、T波について、T波高さ及びT波幅、Q波及びT波について、QT時間、U波について、U波高さ及びU波幅がそれぞれ定義されている。これらの心電図各部の一つ又は複数の数値若しくは一つ又は複数の数値に基づいて算出される値を心電図の波形を特定するパラメータとして設定する。上述のI誘導測定及びV4誘導測定を識別するためには、R波高さ、T波
高さ及びS波高さの少なくともいずれか用いることが有効であり、ここでは、R波高さ、T波高さ及びS波高さをパラメータとして用いることにより、I誘導及びV4誘導の種別
を精度良く判定することができる。心電波形を特定するパラメータは、これらに限られない。誘導法ごとに異なるパラメータを設定してもよいし、共通のパラメータを設定してもよい。誘導法に関わらず全てのパラメータを取得しておくようにしてもよい。ステップS104では、このようにして設定されたパラメータを取得し、メモリ部106の所定領域に保存する。但し、被検者の初期登録された特定の誘導種別の心電波形と、当該被検者の測定時の心電波形とのマッチング方法はこれに限られず、心電波形の特定の仕方及びメモリ部106に保存されるデータはマッチング方法に応じて適宜選択することができる。ここでは、上述のパラメータが、本発明の心電波形を特定する特徴情報に対応し、ステップS104でメモリ部106の所定領域に保存されるパラメータが本発明の登録特徴情報に対応する。
【0040】
携帯型心電装置100からスマートフォン200に心電測定終了情報が送信される(ステップS105)。スマートフォン200は、携帯型心電装置100から心電測定終了情報を受信すると(ステップS206)、初期設定を終了する(ステップS207)。
【0041】
スマートフォン200では、初期設定が終了すると、携帯型心電装置100に、通信終了要求を送信する(ステップS208)。スマートフォン200から、通信終了要求を受信した携帯型心電装置100とスマートフォン200との間で、所定の手順に従ってBLE切断を行う(ステップS106、ステップS209)。
【0042】
BLE通信が切断されると、携帯型心電装置100では、電源スイッチ7がOFFされる(ステップS107)。電源スイッチ7は、BLE切断後、所定の時間の経過により制御部104が自動的にOFFにしてもよいし、被検者による電源スイッチ7の押下によるOFFにしてもよい。一方、スマートフォン200では、BLE通信を切断した後に、アプリを閉じる(ステップS210)。このようにして、携帯型心電装置100におけるスマートフォン200と連携した初期設定が終了する。
【0043】
(心電測定処理)
図8及び図9は、携帯型心電装置100と、スマートフォン200等のBLE方式の通信機能を搭載した端末とがBLE通信しながら心電波形を測定する手順を説明するフローチャートであり、図8及び図9は、一連の手順を示す。
【0044】
まず、携帯型心電装置100の電源スイッチ7を押下することにより電源をONする(ステップS301)。一方、スマートフォン200では、心電測定用のアプリを開く(ステップS401)。被検者のIDの登録等は、上述の初期設定の際に完了しているものと
して説明する。
【0045】
携帯型心電装置100では、電極接触状態が検出される(ステップS302)。
具体的には、携帯型心電装置100によりI誘導測定を行う場合には、第2電極3に右手の人差し指の先端の指紋部を接触させ、第3電極4に右手人差し指の中節を接触させる。そして、第1電極2に左手掌を接触させる。また、携帯型心電装置100によりV4誘導測定を行う場合には、第2電極3に右手の人差し指の先端の指紋部を接触させ、第3電極4に右手人差し指の中節を接触させる。そして、第1電極2を、左胸部の心窩部やや左方・乳頭下方の皮膚に接触させる。各電極2、3、4を介して取得された電気信号をアンプ部102で増幅し、AD変換部でデジタル変換し、接触状態検出信号を生成する。このようにして生成された接触状態検出信号を制御部104に送信し、被検者と各電極2、3、4との接触状態を検出する。
【0046】
次に、携帯型心電装置100とスマートフォン200との間で、所定の手順に従ってBLE接続を行う(ステップS303、ステップS402)。
携帯型心電装置100とスマートフォン200との間で、BLE接続が確立されると、スマートフォン200は携帯型心電装置100に対して、通信開始要求を送信する(ステップS403)。
通信開始要求を受信した携帯型心電装置100では、電極接触状態を示す情報を、スマートフォン200に送信する(ステップS304)。電極接触状態を示す情報を受信したスマートフォン200では、電極接触状態をタッチパネルディスプレイ202等に表示し、各電極2、3、4に正常に接触していることを被検者に知らせる。
【0047】
制御部104は、電極接触状態が維持されて所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS305)。
ステップS305において、Noと判断された場合には、ステップS302に戻る。但し、この場合には、既に、BLE接続が確立されているので、ステップS303と、スマートフォン200側のステップS402及びS403の処理は省略される。
ステップS305において、Yesと判断された場合には、制御部104は心電測定を開始する(ステップS306)。
【0048】
心電測定が開始されると、携帯型心電装置100はスマートフォン200との間でストリーミング通信を行い、心電波形情報と測定時間情報をスマートフォン200に送信する(ステップS307)。測定時間情報は、タイマ部105でカウントされている、心電測定開始からの経過時間に関する情報であり、ここでは、心電測定開始からの経過時間を、所定時間から減算した、残りの測定時間を示す情報である。携帯型心電装置100から心電測定開始からの経過時間の情報をスマートフォン200に送信し、スマートフォン200側で所定時間からの減算処理を行ってもよい。一方、スマートフォン200では、携帯型心電装置100から心電波形情報と測定時間情報を受信する(ステップS406)。
【0049】
(誘導種別判定処理)
このとき、携帯型心電装置100の制御部104では、測定された心電波形と、メモリ部106に保存されている当該被検者の各誘導法による心電波形を特定するパラメータとから、いずれの誘導法によって測定が行われているか誘導種別の判定を行う(ステップS305)。図10(A)は、測定された心電波形の例を示す。心電波形は、上段から下段へと時系列で連続している。図10(B)は図10(A)で示した心電波形の心拍1拍分を拡大して示した図である。図10(A)及び(B)に示す測定された心電波形について上述したパラメータを抽出する。そして、このようにして抽出されたパラメータと、初期設定の際に、測定し(ステップS103)、メモリ部106に保存された(ステップS104)、被検者のI誘導測定及びV4誘導による心電波形に対するパラメータとを比較す
る。例えば、パラメータの差分(絶対値)を比較することにより、測定された心電波形がより近い方の誘導法が、当該心電測定の際の誘導法であると判定する。ここでは、図10(B)に示す心電波形は、図5(B)に示すI誘導測定による心電波形よりも、図6(B
)に示すV4誘導測定による心電波形に近いので、当該心電測定の誘導種別はV4誘導測定であると判定される。
【0050】
そして、携帯型心電装置100から、判定された誘導種別の判定結果の情報をスマートフォン200に送信する(ステップS308)。一方、スマートフォン200では、携帯型心電装置100から誘導種別の判定結果の情報を受信する(ステップS407)。
【0051】
スマートフォン200では、タッチパネルディスプレイ202に心電波形及び測定時間を表示する(ステップS408)。これにより、心電測定が正常に行われていることと、残りの測定時間が被検者に報知される。
このとき、スマートフォン200のタッチパネルディスプレイ202に、誘導種別の判定結果を表示するようにしてもよい。タッチパネルディスプレイ202に表示された誘導種別を、被検者に正しい測定姿勢を指導するのに利用することができる。また、タッチパネルディスプレイ202に、被検者が意図していた誘導法と異なる誘導種別が表示された場合には、正しい測定姿勢での再度の測定を促すことができる。
【0052】
心電波形の測定が開始されてから所定の測定時間(例えば30秒)が経過したか否かを判断する(ステップS309)。
ステップS309において、Noと判断された場合には、ステップS305に戻る。この場合に、既に心電測定の誘導種別が判定され、判定結果がスマートフォンに送信されているので、心電測定の誘導種別の判定及び送信は省略する。但し、心電測定の誘導種別の判定及び判定結果のスマートフォン200への送信を複数回行うようにしてもよい。
ステップS309において、Yesと判断された場合には、制御部104は、心電波形の解析を行う(ステップS310)。誘導種別判定結果に基づいて、心電波形を解析することにより、精度のよい解析が可能となる。
【0053】
制御部104は、心電波形の解析中に、スマートフォン200に対して、心電波形の解析中であることを示す情報を送信する(ステップS311)。スマートフォン200は、携帯型心電装置100から、心電波形の解析中であることを示す情報を受信すると(ステップS410)、心電波形の解析中であることを示す情報をタッチパネルディスプレイ202に表示する(ステップS411)。
【0054】
心電波形の解析が終了すると、制御部104は、誘導種別判定結果、心電波形及び解析結果をメモリ部106の所定領域に保存する(ステップS312)。誘導種別判定結果を心電波形と併せてメモリ部106の所定領域に保存しておくことにより、医師が心電波形を読み出して診断等に利用する場合に、有用な情報を提供することができる。誘導種別判定結果、心電波形及び解析結果を保存することなく、携帯型心電装置100のメモリ部106に保存せずに、スマートフォン200側にのみ保存するようにしてもよい。また、誘導種別判定結果、心電波形及び解析結果のいずれかのみを携帯型心電装置100のメモリ部106に保存するようにしてもよい。
心電波形の解析により、異常波が検出された場合には、制御部104は、異常波検出LED13を点滅させて、被検者に異常波検出を報知する(ステップS313)。
【0055】
また、心電波形の解析が終了すると、制御部104は、高速のデータ通信により解析結果をスマートフォン200に送信する(ステップS314)。このとき、スマートフォン200では、携帯型心電装置100から送信された解析結果を受信する(ステップS412)。
【0056】
そして、携帯型心電装置100に未送信の心電波形データ、誘導種別判定結果データ、解析結果がある場合には、制御部104は、高速のデータ通信により、これらの情報を、新しいものから順にスマートフォン200に送信する。このとき、スマートフォン200では、未送信の心電波形データ、誘導種別データ、解析結果を携帯型心電装置100から受信し(ステップS413)、メモリ部204の所定領域に保存する。そして、スマートフォン200では、最新の心電波形と心電測定結果が正常であったか異常波が検出されたか等の解析結果をタッチパネルディスプレイ202に表示する(ステップS414)。
【0057】
携帯型心電装置100において、未送信の心電波形データ、誘導種別判定結果データ、解析結果の送信が完了すると(ステップS316)、スマートフォン200から送信される通信終了要求(ステップS415)に応じて、BLE通信を切断する(ステップS317)。携帯型心電装置100におけるBLE通信の切断に対応して、スマートフォン200側でもBLE通信が切断される(ステップS416)。
【0058】
BLE通信を切断した後に、携帯型心電装置100では、電源スイッチ7がOFFされる(ステップS318)。電源スイッチ7は、BLE切断後、所定の時間の経過により制御部104が自動的にOFFにしてもよいし、被検者による電源スイッチ7の押下によるOFFにしてもよい。一方、スマートフォン200では、BLE通信を切断した後に、アプリを閉じる(ステップS417)。このようにして、携帯型心電装置100におけるスマートフォン200と連携した心電測定が終了する。
【0059】
<実施形態2>
以下に、本発明の実施形態2について説明する。携帯型心電装置100及びスマートフォン200の構成については、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。本実施形態に係る携帯型心電装置100は、心電測定の初期設定の手順及びこれに伴う誘導種別の判定が実施形態1とは異なるので、実施形態1と異なる部分についてのみ説明し、同様の手順については説明を省略する。
【0060】
実施形態1では、携帯型心電装置100では、心電測定の初期設定においてI誘導測定
とV4誘導測定を登録している。被検者がV4誘導測定について初期設定する際には、上述したように、携帯型心電装置100を右手で把持しつつ、本体の底部に設けられた第1電極2を、左胸部の心窩部やや左方・乳頭下方の皮膚に接触させる。被検者は、使用説明書を参照したり、スマートフォン200のタッチパネルディスプレイ202に表示され、又は音声出力部203から出力されるガイダンスに従ったりして、このような測定姿勢をとる。また、被検者の心臓の形状や位置には個人差があり、胸部の適切な位置に第1電極2を接触させることは難しい。I誘導については、V4誘導に比べると、被検者が第1電
極2を適切な部位に接触させることは容易ではあるが、左手掌における第1電極を接触させる位置が測定ごとにずれる可能性がある。
【0061】
このため、本実施形態では、初期設定の際に、誘導法ごとに、測定姿勢を変更し、電極の接触位置をすこしずつずらして心電波形の測定を複数回(N回)行う。そして、制御部104は、ステップS104において、誘導法ごとに、設定されたパラメータ(例えば、R波の高さ、T波の高さ及びS波の高さ)を、それぞれN個ずつ取得し、メモリ部106の所定領域に保存する。ステップS101において、測定された心電波形の誘導種別を判定する際に、測定された心電波形のパラメータごとに、これらの保存されたN回分のパラメータのそれぞれとの差分による比較を行う。
このようにすれば、被検者の心臓の形状や位置の個人差を吸収することができ、精度よく誘導種別を判定することができる。また、測定時に被検者が電極を接触させる部位がばらついたとしても、精度よく誘導種別を判定することができる。
【0062】
(変形例1)
上述の実施形態1及び2では、被検者が携帯型心電装置100によって心電波形を測定する際の誘導種別を判定し、心電波形の解析に用いているが、医師が、診断のために、被検者が携帯型心電装置100によって心電波形を測定する際の誘導種別を指定する場合がある。このような場合には、携帯型心電装置100で誘導種別を直接設定しておいたり、通信部110を介して、医師が操作する端末から誘導種別の設定情報を取り込んで設定したりすることにより、携帯型心電装置100では、メモリ部106の所定領域に、指定された誘導種別の情報を記憶しておく。そして、被検者が心電波形を測定した際の誘導種別の判定結果が指定された誘導種別と異なる場合には、制御部104は、測定通知LED12又は異常波検出LED13を測定通知又は異常波検出とは異なるモードで点滅させることにより、誘導種別が指定された誘導種別と異なる旨を被検者に報知するようにしてもよい。また、別途、携帯型心電装置100に、LED、スピーカ又はバイブレータ等を設けて、被検者に誘導種別が指定された誘導種別と異なる旨を報知するようにしてもよい。この場合には、測定通知LED12又は異常波検出LED13、別途設けられるLED、スピーカ又はバイブレータ等が本発明の報知部に対応する。また、制御部104は、スマートフォン200に誘導種別が指定された誘導種別と異なることを示す情報を送信し、タッチパネルディスプレイ202に誘導種別が指定された誘導種別と異なる旨を表示させ、又は音声出力部203を通じて音声によりその旨を報知するようにしてもよい。ここでは、タッチパネルディスプレイ202、音声出力部203が本発明の端末報知部に対応する。
【0063】
(変形例2)
上述の実施形態1及び2では、複数種の誘導法としてI誘導測定とV4誘導測定の2種
の誘導法の心電波形を初期設定の際に登録させ、これらの2種の誘導法のいずれであるかを判定しているが、登録及び判定に用いられる誘導法はこれらに限られない。図11(A)~図11(J)に、I誘導及びV4誘導を除く、標準12誘導法による心電測定におけ
る正常な心電波形の例を示す。図11(A)はV1誘導、図11(B)はV2誘導、図11(C)はV3誘導、図11(D)はV5誘導、図11(E)はV6誘導、図11(F)はII誘導、図11(G)はIII誘導、図11(H)はaVR誘導、図11(I)はaVL
誘導、図11(J)はaVF誘導、により測定された心電波形である。
【0064】
ここで、V1~V6誘導は、左右上肢及び下肢をつないだ不関電極と前胸壁の一点との電位差である。携帯型心電装置100であれば、V1誘導は第4肋間胸骨右縁、V2誘導は第4肋間胸骨左縁、V3誘導はV2誘導とV4誘導(正確には第5肋間鎖骨中線上)との中間位置、V5誘導は第5肋間前腋窩線上、V6誘導は第5肋間中腋窩線上に第1電極2を接触させ、右手の人差し指を第2電極3、右手人差し指の中節を第3電極4に接触させることによって心電測定が可能である。ここでは、右手の人差し指及びその中節並びに上述の前胸壁の各点が、本発明の電極部を接触させる身体に対応する。
【0065】
これらの誘導法についても、I誘導及びV4誘導について説明したように、初期設定時
に被検者の心電波形を特定するためのパラメータを抽出して保存し、測定時に測定された心電波形から抽出されたパラメータを比較して、いずれの誘導法の心電波形に近いかを判断することにより誘導種別を判定することができる。このようにより多くの誘導法による心電測定ができれば、被検者の心臓の活動について、多角的な情報を取得することができ、心疾患の診断や治療により有益な情報を提供することができる。
【0066】
II誘導は右上肢と下肢との電位差、III誘導は左上肢と下肢と電位差、aVR誘導は左
上肢と下肢をつないだ不関電極と右上肢との電位差、aVL誘導は右上肢と下肢をつないだ不関電極と左上肢との電位差、aVF誘導は右上肢と左上肢をつないだ不関電極と下肢との電位差である。携帯型心電装置100であれば、右上肢としては右手の人差し指、左
上肢としては左手の人差し指を第2電極3に、その中節を第3電極4に接触させ、下肢としては左足の付け根を第1電極に接触させる。ここでは、これらの部位が、本発明の電極部を接触させる身体に対応する。
【0067】
これらの誘導法についても、I誘導及びV4誘導について説明したように、心電波形を
特定するためのパラメータを用いることにより、各誘導種別を識別することができる。
【0068】
(変形例3)
上述の実施形態1及び2では、各誘導法による心電波形に関するパラメータ等の誘導種別を判定するためのデータを初期設定時に測定して保存している。心電測定時に、誘導種別が判定された心電波形のパラメータ等のデータによって、初期設定時に保存したパラメータ等のデータを更新するようにしてもよい。更新の頻度は、適宜設定すればよい。実施形態1の場合には、メモリの所定領域に保存された誘導種別の対応するパラメータを上書きして更新する。実施形態2の場合には、例えば、保存されているN回分のデータのうち古いデータから順に上書きすることにより更新する。
初期設定時から長期間経過すると、加齢や疾患の症状により、心電波形が変化することもあり得る。上述のように、初期設定時に保存した心電波形のパラメータ等のデータを、測定時のデータにより更新することにより、被検者の状態を考慮して、誘導種別の判定をより精度よく行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
1・・・携帯型心電装置
101・・・電極部
104・・・制御部
106・・・メモリ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11